愛 総 研 ・研 究 報 告
第16号2014年
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有機金属錯体を複合化 した多孔質炭素の電気化学特性評価
InvestigationoftheElectrochemicalPropertiesofOrganometallicComplexes-LoadedPorousCarbons
糸 井 弘 行 †,三
岡 雅 尚 †,猪
飼 智 三 †,静
山 寛 大 †,大
澤 善 美 †
HiroyukiItoi†,MasanaoMitsuoka†,TomomiIkai†,MotohiroShizuyama†,YoshimiOhzawa†
AbstractPorouscarbonsincludingactivatedcarbonshavetheporesofvarioussizesandlargesurfaceareas.
Especially,theporeslessthan2nmindiameter,whicharecalledmicropore,havethestronginteractionwith
moleculesandionsbecausethevanderWaalsradiifacedtogetheroverlapinthepore.Inthisstudy,we
investigatedtheelectrochemicalpropertiesoforganometalliccomplexes-loadedporouscarbons.
1.緒 言
活 性 炭 を は じめ とす る多 孔 質炭 素 は様 々 な大 き さの 細 孔
を 有 し、 高 い表 面 積 を有 す る多 孔性 の炭 素 材 料 で あ る。 細
孔 の 中で も特 に2nm以
下 の ミク ロ孔 と呼 ばれ る細 孔 は 、細
孔 内部 で 向 か い合 う細 孔 壁 の フ ァ ンデ ル ワー ル ス半 径 が 重
な る た め に分 子 や イ オ ン と強 く相 互作 用 し、強 い 吸 着 能 を
有 す る。 本 研 究 で は、 酸 化 還 元反 応 を有 す る有 機 金 属 錯 体
を担 持 した多 孔 質 炭 素 が どの よ うな電 気 化 学 特 性 を示 す か
の評 価 を行 っ た。
2.実 験
2.1議 勿 譲
本 研 究 で は 多 孔 質 炭 素 と し て 中 空 状 の 多 孔 性 カ ー ボ ン ブ
ラ ッ ク で あ る ケ ッチ ェ ン ブ ラ ッ ク(KB、BET表 面 積:1270
m2/g)、 有 機 金 属 錯 体 と し て フ ェ ロセ ン(FeCp2)お よ び ル
テ ノ セ ン(RuCp2)を 用 い て 試 料 を調 製 した 。 は じ め にKB
を 減 圧 下 で150°C、6hの 真 空 加 熱 処 理 を行 う こ と で 、KB
に 吸 着 し た 水 分 を 取 り除 い て 乾 燥 させ た 。 続 い て 乾 燥 後 の
KBの 重 量 と 同 じ重 量 の 錯 体 を 量 り取 っ て ア ン プ ル 管 に 封
入 し 、100°Cで24h保 持 し て 錯 体 を蒸 気 と してKBに 吸 着
させ る こ と で 、 錯 体 をKBに 担 持 させ た 。 こ の と き 、 錯 体
を キ ャ ピ ラ リ ー 管 に 入 れ て か ら ア ン プ ル 管 に 加 え る こ と
で 、KBと 錯 体 が 接 触 し な い よ うに した 。
愛 知 工 業 大 学
工 学 部
応 用 化 学科(豊
田市)
尚 、KBにFeCp2とRuCp2を 担 持 さ せ た 試 料 を そ れ ぞ れ
KB/FeCp2、KB/FeRu2と 表 記 す る 。
2.2二 分汐7θ評 砺
KBに 担 持 させ た 錯 体 の 分 散 状 況 を 確 認 す る た め に 、X線
回 折(XRD)測 定 と透 過 型 電 子 顕 微 鏡(TEM)に よ る 試 料
の 観 察 を 行 っ た 。 尚 、TEM観 察 に お け る 加 速 電 圧 は200kV
と し た 。 電 気 化 学 測 定 は 水 系 電 解 液 を 用 い て3極 式 セ ル に
よ り評 価 を 行 っ た 。 は じ め に 、 調 製 し た 試 料 中 の 錯 体 の 重
量 を 差 し引 い たKBの 重 量 に 対 し、 導 電 補 助 剤 で あ る カ ー
ボ ン ブ ラ ッ ク(CB)と バ イ ン ダ ー で あ るPTFEと を18:1:1
の 重 量 比 で 量 り取 り、 混 練 す る こ と で 試 料 を シ ー ト状 に 成
形 し た 。 こ の 電 極 シ ー トをKBの 重 量 が8∼9mgに な る よ
うに 切 り出 し 、 白金 メ ッ シ ュ に圧 着(4.3kN)す る こ とで 作
用 極 を 作 製 し た 。 対 極 は 市 販 の 活 性 炭 を 用 い て 作 用 極 と 同
様 の 操 作 で 作 製 した 。 作 用 極 と 対 極 は 問 に セ パ レー タ ー を
挟 み 、 ガ ラ ス ス リ ッ トで 固 定 した 。 電 解 液 はlMKCI水 溶
液 とlMH2SO4を 用 い て そ れ ぞ れ 評 価 を 行 っ た 。 尚 、 参 照
電 極 に は 銀 一塩 化 銀 電 極(飽 和KCl)を 用 い た 。 測 定 は サ イ
ク リ ッ ク ボ ル タ ン メ トリ ー(CV)に よ り 、1mV/sの 掃 引 速
度 で 電 位 幅 を 徐 々 に 広 げ な が ら測 定 を 行 っ た 。
3.結 果 と考 察
†
3.1講 の 評 脅;
Fig.1に 各 試 料 のxRDパ タ ー ン を 示 す 。KBは23.5° 付 近
に 炭 素 の(002)面 に 由 来 す る ブ ロ ー ドな ピ ー ク が 確 認 で き
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愛 知 工 業 大 学 総 合 技 術 研 究 所 研 究 報 告,第16号,2014年
る。 ま た 、FeCp2とRuCp2は そ れ ぞ れ の 結 晶 構 造 に 由 来 す る
シ ャ ー プ な ピ ー ク を 示 す こ とが 分 か る 。一 方 でKB/FeCp2と
KB/RuCp2は16° 付 近 に ブ ロー ドな ピ ー ク を 示 し 、錯 体 の 結
晶 構 造 に 由 来 す る ピ ー ク を 示 さ な い こ と が 分 か る 。 こ の 結
果 は 、 担 持 され た 錯 体 が 数 分 子 程 度 の 極 め て 小 さい 微 粒 子
と し てKB全 体 に 高 分 散 し て い る こ と を 示 唆 し て い る 。Fig.
2にTEMに よ る観 察 結 果 を示 す 。TEM写 真 が 示 す よ うに 、
錯 体 の 担 持 量 が50wt%で あ る に も か か わ らず 、 担 持 前 後 で
全 く変 化 が 確 認 で き ず 、担 持 され た 錯 体 がTEMで 確 認 で き
な い 程 小 さ な 微 粒 子 と し て 高 分 散 し て い る こ と が 分 か る 。
とこ ろ、0.5∼0.6Vに お け る錯 体 の 酸化 還 元 反 応 に起 因す る
ピー クが サ イ クル 数 と と もに低 下 す る と同時 に 、0.1∼0.3V
に お いて 徐 々に増 加 す る ピー ク を確 認 した 。この0.1∼0.3V
に お け る新 た な ピー クは担 持 され たRuCp2が
徐 々 に分 解 し
て 生成 したRuO2の
硫 酸 中 にお け る酸 化 還元 反 応(RuO2+
xH++xe-⇔RuO2_X(OH)x)に
よ る もの で あ る。 以 上 の こ と
か ら、KBに 担持 され た錯 体 は電 気 化 学 キ ャパ シ タ容 量 を増
大 させ る も の の、 電 気 化 学 的 に 分解 され て金 属 酸 化 物 にな
りや す く、 サ イ クル 特性 に優 れ な い こ とが 分 か か った 。
一 方
、 錯 体本 来 の酸化 還 元 電位 とKBに
担 持 され た錯 体
の 酸化 還 元 電 位 が 大 き く異 な る こ とが分 か っ た。 また 、 同
じ錯 体 で も電 解 液 を変 え る こ とに よ り酸 化 還 元 電 位 に変 化
が 現れ る こ とか ら、 錯 体 が ミ ク ロ孔 に 吸着 す る こ とで 細 孔
壁 か ら強 く相 互 作 用 を受 け、錯 体 の 電子 状 態 が変 化 した こ
とが示 唆 され た。
1500
.一.1000
階喜
5。
。
農
壱
ao
U
-500
一1000
-0 .100.10.20.30.40.50.60.70.80.9
Potential(Vvs.Ag/AgCI)
Fig.3CVsforKB/FeCp2measuredinIMKCIat25°C.
一1stCycle--4th
Cyclel
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3.2鞍 ブ左学 癬 島 線
Fig.3に1MKOH水 溶 液 中 で 測 定 し たKB/FeCp2の サ イ ク
リ ッ ク ボ ル タ モ グ ラ ム を 示 す 。 ま た 、 比 較 と してKBのCV
結 果 も示 し た 。 ボ ル タ モ グ ラ ム に お け る 縦 軸 は 電 気 化 学 容
量(Capacitance/Fg-1)に 対 応 し て お り、 値 が 大 き い ほ ど電
気 化 学 キ ャ パ シ タ 容 量 と し て よ り 多 く の 電 気 エ ネ ル ギ ー を
貯 蔵 で き る こ と を 示 して い る 。KBの み で は 電 気 化 学 キ ャ パ
シ タ 容 量 は イ オ ン の 物 理 的 な 吸 脱 着 に よ る 電 気 二 重 層 に 起
因 す る 電 気 二 重 層 容 量 の み に 対 応 す る 。 一 方 、KBにFeCp2
を 複 合 化 させ る こ と で 二 重 層 容 量 に さ ら に フ ェ ロ セ ン の 酸
化 還 元 反 応 に よ る 疑 似 容 量 が 加 わ り 、 よ り多 く の 電 気 エ ネ
ル ギ ー が 貯 蔵 で き る こ と が 分 か る。 し か し な が らサ イ ク ル
数 を 重 ね る に つ れ て 容 量 が 低 下 し 、 測 定 電 位 を 広 げ る こ と
で さ ら に 容 量 が 低 下 す る こ と か ら 、 担 持 され た フ ェ ロ セ ン
が 電 気 化 学 的 に 不 安 定 で 分 解 しや す い こ とが 分 か っ た 。Fig.
4にKB/RuCp2の サ イ ク リ ッ ク ボ ル タ モ グ ラ ム を 示 す 。
KB/RuCp2はKB/FeCp2よ り も は る か に 高 い 電 気 化 学 キ ャ パ
シ タ 容 量 を示 す が 、FeCp2と 同 様 に サ イ ク ル 数 と 電 位 幅 を 増
加 させ る に つ れ て 電 気 化 学 容 量 が 低 下 す る こ と か ら、KBに
担 持 され たRuCp2も 電 気 化 学 的 に 分 解 しや す い こ と が 分 か
る。lMH2SO4中 で も 同 様 にKB/RuCp2のCV測 定 を 行 っ た
4.結 言
本 研 究 結 果 か ら、 酸 化 還 元反 応 を示 す 金 属 錯 体 を担 持 し
た 多 孔質 炭 素 は極 めて 高 い 電 気 化 学 キ ャパ シ タ容 量 を示 し
た が 、電 気 化 学 的 に分 解 され や す い こ とが分 か った 。 した
が っ て よ り安 定 な錯 体 の 担 持 が サ イ クル 特 性 の 向上 につ な
が る と期 待 で き る。 一 方 、 ミ ク ロ孔 に 吸着 され る こ とで 酸
化 還 元 電 位 が大 き く変 化 す る こ とか ら、 ミク ロ孔 内で は錯
体 の電 子 状 態 が大 き く変化 して い る こ とが 示 唆 され た 。