63 香川大学農学部学術報告 第28巻第60号63∼66,1977
植物試料の硝酸一過塩素酸分解時のマンガンの損失
星 川 玄 児,柳 原
勇*MANGANESE LOSSIN NITRIC−PERCHLORIC ACID
DIGESTION OF PLANT R4ATERIAL
GertjiHosHIKAWAandIsamuYANAGIHARA
Thenitric−PCrChloricaciddigcstionmcthodgaVeaSigniiicantlylowcr valucfor manganeSe
inplantmatcrialthandidthedry−aShingmcthod・Thefbrmermethoduscdherewasasfo1low:
OnegOfdricd,grOundplantsamplcwasdigestedwith20mlofnitricacidand5mlofpcrchloric
acidin100−mlKjcldahlflask”Pcrchloricacidintheflaskwasevaporateduptoapproximately
3mi… ThedigcstwasBlteredanddilutedtolOOml・Manganeseinthesolutionwasdetcr−
minedbyatomicabsorptlOnSPeCtrOphotometry・ThelowrecovcryofmanganeSeWaSductotheconversionofmanganesetothedi侃cultlysoluble
oxidcforms,Whichincreascdwithdecreaslngthevolumeofresidualperchloricacidinthe月・aSk・
Upontrcatlngthedigcstwithhydroxylaminchydrochloridcasthereducingagent)eSSentiallyall
Ofmangancscwasrccovercdaftcrnitric・IPerChloricaciddigcst′ion」・Inadditiontomanganese)
onecanalsodctcrmincpotassium)Calcium)magneSium,iron,COPPer)andzinconthesesame
plantdigcstswithoutinter危一/enCC丘・Omtheaddcdhydroxylaminehydr・OChloridc・
植物試料中マンガンを庶子吸光法で定盈するにあたって,硝酸一過塩素酸分解法(残留過塩素酸盟約3ml)は乾式 灰化法より低値を示した.このマンガンの損失は,分解過程での難溶性マンガン酸化物の生成に基づくものであり, その生成程度は,残留過塩素酸故の減少とともに増大した.難溶化マンガンを可溶化するために,分解液に塩酸ヒド ロキシルアミンを添加したところ,植物試料中のマンガンは完全に回収された,.塩酸ヒドロキシルアミンの共存は, マンガンのほかカリウム,カルシウム,マグネシウム,鉄,飼および亜鉛の原子吸光分析に影響がなかった. 緒 口 植物試料中マンガンの原子吸光分析は,試料を直接塩酸抽出して得た供試液についても行をわれるが(1),一腰には 試料の有機物を乾式灰化法あるいは湿式灰化法で酸化分解して得た供試液について行をわれている.このうち,乾式 灰化法については,とくにケイ酸含有率の高い植物試料では,マンガンがケイ酸にとりこまれて回収率が低下するの で,フッ化水素処理が必要とされている(2).また,乾式灰化に用いられる温度では,マンガンは二酸化マンガンや四 三酸化マンガンに酸化されて不溶化するので,その不溶性マンガンを完全に回収するには,塩酸による加熱抽出が必 要とされている=)い あるいは,この不溶性マンガンを塩酸ヒドロキシルアミンによって還元溶解する方法も提案され ている(4)… 一・方,湿式灰化法については,上記のような現象は指摘されておらず,マンガン定盈の好適な試料前処理 法として推奨されている(5)。.最近,著者らは,湿式灰化法のうち硝酸一過塩素酸分解法において,条件によっては, 試料中の マンガン回収率が低下する事実を認めたので以下にその結果を報告する. *現在勤務先:香川県庁OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
香川大学農学部学術報告 星 川 玄 児,柳 原 勇 64 実験および結果 1り 試薬および装置 試薬はすべて特級品を使用した.. マンガン標準溶液:金属マンガン(純度99,99%)を硝酸に溶解後塩化物としたものについて,塩酸あるいは過塩 素酸酸性のMnlOOOppm溶液を調製した。 塩酸ヒドロキシルアミン溶液:2000ppm. 原子吸光分析装置:乱立製207型原子吸光分光光度計を使用した.′ヾ−ナーほ水冷式スリットパーサーを用い,空 気アセチレン炎を使用した.光源には日立製Mn中空陰極ランプを使用した. 試料分解装置:柴田製電熱式セミミクロ窒素分解装置を使用した‖ 2.標準操作 (1)乾式灰化法 通風乾燥後粉砕した植物試料1gを白金皿にとり,ホットプレ・−・ト上で炭化したのち500∼5500Cの電気炉で8時 間灰化する.冷却後1:1塩酸5mlを加え湯浴上で蒸発乾固する.この操作を2回くり返したのち,1:1塩酸5m】 を加え水で希釈したのち東洋炉紙No‖6で炉過水洗後100ml定容とする.. (2)硝酸一過塩素酸分解法 上記試料1gを100mlケルダールフラスコにとり,硝酸20ml,過塩素酸5mlを加えて一破放置後分解装置で静か に加熱分解する.分解終了後内容物が約3mlになったところで放冷する.フラスコ内に残存するガスを吸引除去し たのち水を加えて東洋炉紙Noい6で済過水洗後100ml定容とするい 本分解法で過塩素酸の残存盈を多くするとカリウムヤカルシウムの過塩素酸塩が結晶状に沈でんするこ.とがあるの で,過塩素酸の残存盈は約3mlとした.本供試液について,マンガン以外にカリウム,カルシウム,マグネシウム, 鉄,鋼および亜鉛をどの原子吸光分析を行をったが,いずれもほほ完全に回収されることを認めた・ (3)マンガンの原子吸光分析法 波長2795A,ランプ電流値5mA,アセチレン流盈3L/min,空気流盈13L/minの測定条件下で直接法で定盤す る. なお,供試液のマンガン濃度が標準測定範囲外のときは,精度の低下しない範囲でバーナ・−の回転あるいはスケー ルの拡大を行なって定蓋した.また,検量線は供試液と同一魔類の酸を同一偲皮にして作成した.硝酸一過塩素酸分 解液の残留酸盈は正確には測定しなかったが,実験範囲内での過塩素酸盈の変動は測定値に影響を与えなかった. 3い 硝酸一過塩素酸分解法と乾式灰化法のマンガン回収率の比較 カンキツ菜の乾燥粉砕試料を上記の方法で灰化して得た供試液についてマンガンを定盈した山 岡時に各試料にマン ガン標準溶液を添加して回収率を検討した.得られた結果をTablelに示す. Tablel”Comparisonof■twomethodsofcitrusleavcsashingfbrMndcterminationbyatomic absorption spectrophotometry HNO訂一HClO4digestion* Dry−aShing Mn(ppm) Recovery(%)** Mn(ppm) Recovery(%)** 0 0 3 1 0 0 0 0 0 0 0 7 0 0 9 9 ︻J ■.〇 4 4 1 3 2 2 9 9 9 9 ウJ 6 3 1 6 5 6 6 ﹂丁 4 4 4 aVer−age *HClO4WaSeVapOrateduptoapproximately3ml・ **Ba5edonadditionof200pgtolgofcitrusleaves・ マンガン定盤償および回収率ともに,乾式灰化法に比して硝酸一過塩素酸分解法が低値を示した.乾式灰化法では 回収率がほほ100%を示し,本試料についてはマンガンの不溶化は認められをかった.
OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
第28巻第60号(1977) 植物試料の硝酸一過塩素酸分解時のマンガンの損失 65 4、マンガン標準溶液による硝酸一過塩素酸分解法のマンガン回収率の検討 硝酸一過塩素酸分解法における・マンガン回収率の低下の原因を明らかにするために,マンガン標準溶液について本 分解法を行をった.マンガンの外観的変化を観察するため,実際の植物試料に比して多盈のマンガンを使用した..得 られた結果をTable2に示す Table2.RecovcryofMnfkomaliquotsofMnstandardsolutionafterHNO8−HC104 digestion* Mndetermined (mg) Mn taken (mg) AppearanCeCha一喝eS 3 7 0 1 0 8 −.︶ 0 9 9 8 9 0 0 nW ︵u 4−〇 l l 1 0 0 ResidualHClO4SOlution showed apinkcolor InrcsidualHClO4SOlutionfiOmed blackishpurplepreclpltateS *HClO4WaSeVapOratCduptoapproximatcly3mi・ 植物試料の場合と同様に残留過塩素酸盈が約3mlになるように漁船したが,マンガン回収率はゃはり低く,採取 鼠1mgで約90%,10mgで約50%であった…分解終了時の残留液の状態は,マンガン採取最1mgではややピンク に着色したが,液ほ透明で着色沈殿物はみられをかった.マンガン採取盈10mgではマンガンの不溶性酸化物と思わ れる黒紫色の微粉状沈殿物を生成した.なお,この沈殿物は塩酸ヒドロキシルアミンによって容易に溶解された.す なわち,硝酸一過塩素酸分解法では過塩素酸を濃縮する過程でマンガンの不溶化が起り,そのためマンガンの回収率 が低下すると考え.られる. 5い 残留過塩素酸盈および塩酸ヒドロキシルアミン処理がマンガン回収率に及ぼす影響 上記の分解液の外観的夜変化が過塩素酸の濃縮過程に関係があることを認めたので,マンガン標準溶液を使用して, 分解終了時の過塩素酸盈を3段階に変えて,マンガンの不溶化程度の差異を検討した一.さらに,乾式灰化法で不溶化 したマンガンが塩酸ヒドロキシルアミンの添加で完全に回収される(4)こ.とから,分解終了後ケルダ・−リレフラスコウど塩 酸ヒドロキシルアミン40mgを添加し,約10分間反応させたのち炉週足容とした供試液についてもマンガンを定盈し て,本分解法における塩酸ヒドロキシルアミンの効果を検討した.得られた結果をTable3に示す. Tablc3.RclationshipofMnrccovcrytovolumeof rcsidualHC10dandtreatment with NH20HHCI afier digestion
Volume of residual HC104(ml) Treatmentwith NH20H・HCl** Mntaken(mg) + + + 5 5 5 Mndetermincd(mg) 4.83 5小00 4154 4”98 4、64 5102 RecoveIy(%) 97 100 91 100 93 100
*Approximatefigures
**Tocach鱒jeldahlflaskwasaddcd20mlof2000ppmNH20HHClTheadditionof NH20H‥HCldidnota能ctthereadingsofstandardsolutionsof■Mn 残留過塩素酸盈が約4mlではマンガン不溶化程度ほ小さいが,本分解法で採用している約3mlではマンガン不溶 化はかなり進行した.しかし,塩酸ヒドロキシルアミンの添加によって,不溶化したマンガンは完全に回収された. 塩酸ヒドロキンルアミンの共存はマンガンの原子吸光分析には影響がなかった.OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
香川大学農学部学術報告 星 川 玄 児,柳 原 勇 66 6.カンキツ菜のマンガンの定盈
Tablelの実験で使用されたカンキツ葉試料に上記の塩酸ヒドロキシルアミン処理を含めた分解法を適用した.,得
られた結果をTable4に示す. Tablc4.DeterminationofMnincitrusleavesdigestedbyHNO8−HClO4method Volume of residual HClO4(ml) Trcatmcntwith NH90H・HCl Mndetcrmined(mg)* 492 495 460 494 460 502 RecoveIy(%)** 99 100 93 99 93 101 *Eachvalucisthcmeanof’3samplcs**Based on Mn contcnt dctcrminedin citrusleaves digcst pleParCd by dry−aShing method