MgO(100)表
面の研究
西 守 克 巳*・ 徳 高 平 蔵*・ 井 上 健 太 郎*・ 石 原 永 伯* (1973年
5月
1日 受 理)Smdies of KGl(100)and MgO(100)Surfaces by
Low Encrgy Electron Diffraction
Katsunli NIsIIMORI*,Heizo ToKUTAKA*,
Kentaro INOUE*, and Naganori lsHIHARA*,
(Received Mav l,197の
Abstract i
The apparatus for LEED intensity measurment was made. After selecting a LEED sPot through an eye―PieCe of the telescope,the intensity measurement can
be carried outだ or this spot only by tilting a retlecting mirror.
Using an above apparatus,the air cleaved(10の KCl and MgO sur£ aces were observed. Following T, N. Rhodin's theoryS)these freshly cleaved surfaces have shown super periodic structures.However, after annealing at 300° C or electron bombardment,these(100)KCl surfaces have shown simple cubic structures,
1。 ま え が き 団体表面あるいは薄膜のエピタキシャル成長などの研 究手段 として
LEED(低
速電子線回折)が
用い られる ことはよく知 られている。1)2)LEEDでは電子の劇達距 離が表面か らわずか数原子層にすざないので,結
晶のバ ルクとしての構造を観察するより,表
面,あ
るいは薄膜 の原子の配列構造を観察するのに最も適 している 普通LEEDで
は結晶か らの回折パ ター ンと,そ
の回 折スポ 、ットの入射電子 ビームの加速電圧依存性を観察 し て結晶表面の配列状態を調べることが行なわれている。 我 々は,特
に,そ
の回折 スポ ットのIntensityの電圧依 存性を定量的に把握す るため,望
遠鏡 と光電子増倍管を 組み合わせた,LEED sPot lntensity‐ Voltage(I― V) 測定装置を製作 した。 この報告では,まず I― vカ ーブに於 けるBraggピ
―クか らはずれた分数次オーダーの ピークの発生す るこ との原理的な説 明を述べ,次
に製作 した I― Vカ ーブ測 定装置の概略を示 し,そ
してそれを用いて行なった測定 例 とその検討を述べ る。 特に空気中 努 開したKClと
MgOの
(100)面 か らの(00)ビ
ームの I― Vカ ー ブを比較 した場合,MgOに
比べ てKClの
表面構造は 大変に不安定であることが この実 験 か ら も 結 論 さ れ る3)。2.理
論 格子面間隔dを有す る平行な格子面に入射角 θで入射 する波長 λの電子波の反射は
Braggの
条件に よって 2 dsinθ=nえ の時結晶か らの回折線は強め合い,この時I ― vカ ーブはIntenSityの ピークを示す。 ここで nは 整 数である。 ところで実験結果では,時
にはnが分数であ るような入射電子の加速電圧に於いてもピークが見 ら漁鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第
4巻
第1号
る こ と が あ る 。 こ の 現 象 を J・ J・Lander4)及 び T,N.― Rhodin5)に よ り説 明 す る と,まず J・ J・Landerは 一 般 の (hk)ス ポ ッ トの 構 造 因 子 に つ い て 次 の 式 を 提 案 し た 。 Fル (え,θ力つ=Σ ウ(つ 乃 (え,θ力の eXP 2πJ〔力″′ ′十
rt・7ノ+(1+θ
膀
)ヽ
許〕
,(1)
ここで ″0)は
入射電子の格子面か ら次の格子面への透 過因子である。 力 ●,θ Zの は単位格子内のi番目の原 子の電子波長 え における角度 θル に於ての散乱因子で ある。 最後に 々,",々
は単位胞に於てのj番目の 原子の位置である。 このLanderの
式をFig.laに
示す ような2種の格 子面の繰返 し構造をもつ と仮定す る結晶モデルに適用す ると,T・N.Rhodin5,に
より構造因子 F(⊃ は次式の (c) (d)Fig。 1 時つ A schematic view of a crystal with two repeating layers.The surface atoms are circled,D is the distance perpendicular to the surface between identical layers,d = 1/2 D is the distance between attacent layers。
(b) For the case of(a),intensity vso wave length calculated from eq。 (3).
(c) A schematic view of a crystal with four repeating layerso The surface atomS are circled.I)is the distance perpendicular to the surface between identical layers and d = 1/4 D is the distance between adiacent layers.
(d) For the case of(c)a intensity vs,wave length drawn with the same idea of(a)。
Incident electron
Electron Volts
Incident electrOn
ように書 くことができる。 ′
0)∝
1+Ff2(え)eXP o″ゲD/χヮ)1_T2(ぇ
)eXP C4π ガD/⊃ スポ ットのIntensity I(た)は
r(っ=IF(λ
)12,と
ぁ らゎされるか らr∞
∝1瑞
紛│げ
ω 【ぁ となる。 ここで,Dは
繰 り返 し格子面間隔であ り,Fig. laの例では2dで
ぁる。そして, λ とTは
それ ぞれ 結晶を 入射電子が 通過する 時の波長 と 透過係数である が,光っはFig.12に
示す ように特に表面 の 2層 がそれ 以下の層 と違 うとい うことか らくるところの,電
子がそ の 2層 を通過する時の電子の有効波長である。また, Ff2(⊃=T2d2(λ
)/T2sl(⊃, (4) であり,Ts2,Tslも表面の2層 を通過する時のそれぞれ 第1,第
2層 での透過係数である。ここで,Kと
んιを 適当に選ぶことによりFig.lbに
示すような1//2オダ
ーのピークを発生させることができる。このモデルを拡 張してFig。 lcに示すような場合に適用するとFig.ld に示すようにウ4オーダーのピークを得ることもできる。3.実
験 装 置本実験に於ては日電 Varian ttC)製 のdiSPlay type
の
LEED装
置を用いた。その概観をFig.2に
示す。 ここで用いた ス ポットIntenSity測 定用光学系は,測
光電子増倍管へ導 くため,apertureを設けた。 以上に述べた装置に より鏡を上に上 げて肉限でアイ ピ デ(⊃・12)
―スを通 して回折スポ.ン トに照準を合わせ,十
字線の中 央 と回折スポ ットの中心が一致する状態で鏡を下 げるとFig,2 Schematic diagram of the LEED‐
Auger
apparatus with a relative positiOn of an
lntensity‐VOltage instrument.
photo―multiplier
C(cross wire) fOr the lnte― 定に際して目指す スポ 、ット以外の光 が光電子増倍管へ達 しないように若 干の改良を加えた。
Fig,3に
その 概観を示す。すなわち望遠鏡の接眼 レンズと対物 レンズの間 に 光 軸 を 90° 転向させ る鏡を内 蔵 した真 鍮 製のケースを取 り付 け た。Llは
LEEDの
スポ 、ントを観察す る 時に 用いる凸レンズであってこれにより 約45cm前にあるスポ,ッ トがアイピーFig。 3 A detailed schetch of the instrument
nsityttvOhage measurement. スにより肉眼で観察できる。また図のC面にはスポ.ッ ト に照準を合わせるための十字線を入れてある。鏡は可動 に して肉眼で観察する時には上に上げ
,光
電子増倍管で 測定する時には下 げる。 レンズLと, L2を
通 って鏡, またはL3に
達す る光は回折スポット以外の光 を 合 ん でいるので, これ らの光のうち回折スポ ットの光だけを 光電子増倍管の受光面には回折スポ ットの光だけが達す るようになる。光電子増倍管で この光による光電子を増 倍 し測定す る。なお用いた光電子増倍管は 浜 松 テ レビ 製7)HTv 931Aで
,光
電子増倍管へ印加 した陽極加速 電圧 1150Vは Fluke電 源8)を 利用 した。光電子増倍管 か らの出力を μμ アンメーターで増幅 し,出
力をX一
Y
鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第
4巻
第1号
︵∽ , ︻E ” ぁ k。 Hや いつ 角ヽ ︶ ぁ , “ ∽〓 ωP〓 ︼ ︵∽ , 4 ・戸 、 ﹁硝 角や ︻やH S ︶ ム , ︻∽ oや E︼ レコーダのY軸へ,そ
してX軸
には入射電子の加速電圧 を ウ10に分圧 して入れた。以上に述べた装置を用いて 行なった実験結果を次に示す。4.実
験結果と検討 空気中努開 したKCl,MgOの
(100)面,及
びそれ 90 1 1 0 50 100 150 Primary electrOn energy(V)Fig。
4 The ntensity of the Qの
diffractionを
罷亀デ
F津4,輩
:牝だ
鳥
Hil題
hel議
Tn
face Of One KCl sample.The sample was rotated 70 about the こ100i directiOn from れOrmatt hcidence of the electrOn beam.
0 50 1oo 150
Prinary eLctrOn energy(け
Fig。 5 The I‐V curve of the (00) diffraction beam for an air claeved ft・esh (100)face
of another KCi sample.The sample was
rotated 3° abOut the r100〕 direction from normal incidence of the electro4 beam.呻
鞠
of the electron beam。
に電子衝撃
,熱
処理を加 えた面か らの (00)ビ ームのI 一 vカ ーブをFig.4か
ら Fig.9に 示す。 まず,空
気 中男開 したKCl清
浄(100)面
について その(00)ビ ームの I一 Vカ ーブに於 ける各 ピークの反 射の次数 nを 決める際にInner―Potential(V。)を
考 0 50 100 150Primary electrOn energy(V)
Fig。 7 The I‐V curve of the (00)dffraction
甕盈撲♯観礎甕躙
独縣
:about the [100] direction froコ
n 40rmal
incidence of the electron beam.
︵ の P ︼ E , ぁ H ゛ ” ゛ ︻ や 角 0 ︶ ヽ r 一 ∽ E o ゃ E 溜 ● 一堰 o r s 一︼ f じ ネ o増台 o こ H
翁 や E , ぁ 鷺 s “ 石 冑 ヽ ︶ る ち E 9 遷 0 50 100 150
Primary electron energy (V)
聴
8紬
鞘 螂 絲
慇
e輩
駐乱智脇 推
°
為下指甚群驚
from aOrmal incidence of the electron
beam.
0 10t' 2()0 3()() 4(X) 5()() Primary clcctrot,ellcrgy(V)
町
9幾
緯離軽聯
nce of the electron beam。
慮せねばな らないが
,Vo
はBraggの
回折条件か ら次 のように与え られる。乃
=7-幾
粋
,
ぃ
) ここでdは 格子面間隔であ り,Vは
加速電圧である。 こ の式を用いてVo, nを
同時に決めることは不可能であ るが,Voは
0>V。
>-15vの
値を持 っていることが 予め知 られている9)10)1つ 。格子定数 dに ついては温度の 上昇 と共に増加 し,またバルクの格子定数 と表面 のそれ とは異るが,我
々の実験では熱処理や電子衝撃を受けた サ ンプルも受 けていないサ ンプルも存在するピークの位 置は変わ らな く,そ
して測定は室温で行なったので ここ では25℃におけるバルクとしての値 (d=6.2929A)129 を用いる。 したがって, 7。=7-0.949″
ツ, (6)
となる。今,空
気中男開したKCIの
(100)面
か らの 各 ピークFig.4
とFig。5に
ついてその反射次数nと Inne‐POtential V。 を求め
,そ
の結果を Table I に掲げる。以前にも述べたVoの範囲9)1。)1つ のうちで一 応0>Vo>-10Vの
値をもつVOの値の所に○印をつ け た。そ してそれに対応す るnの 値を採用する。Table I 内の30v,38v,45v,55v,59v,63v,89v,95
v,132vの
各 ピークに対 し,そ
れぞれ対応す るnと し て,6,6】 ,7与 ,8,8キ
Ю,10キ
,12
が得 られた。このように nが 整数次のピークの他にウ4, 1//2といつた分数次のピークが観察された。これは理論の ところで仮定 したモデルを使 うと,同
等な格子面間距離D,隣
接格子面間星熙ヒd*と
す る周期的な原子配列をし ている結晶を考えた場合はd/Dの
整数倍の分数次オー ダー ピークが現われることが示 さ浄ている4)空気中労開 したKCl(100)面
が,ウ4,94とい った分数次オーダー のピータを示す ということはその 表面がFig.lcに
示 す ような超構造を示すものと考え られる。 さて(A)電
子衝撃を受 けたサ ンプルは Fig.6に ,(B) それを290℃で熱処理 し.たサ ンプルは Fig.8に,(C)空 気中労開 した新 しい面はFig.4と Fig.5に
それぞれ 示 しているが,(A)の
場合を除いて大体常に38±lV, 45±lV,59± lV,89± lV,132±lvの
5っ のピークは 観測できてい る。(A)の
サ ンプルは,加
速電圧 800v ︵ ∽ や〓 宗 , ォ ︼ S ︻や 一わ ︻o ︶ ヽ ぉや 一のg O︶ 〓︻*こ
のようなNaCl型
結晶の場合には,メ タルか ら次のメタル金属迄の格子面間隔を dと とっている。鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第
4巻
第1号
Thble I Inner Potential for the n… th order peak from the(00)diffraction beam for an air cleaved (100)KCi face is calculated by inserting the experilnental results of Fig,4 and Fig.5 into eq。
(4)where d
is assumed 6。
29A12)and Vo is assuned between O and
…15V。9)と。)11)Especially VO is circled when it exists between O and Ⅲ10V.9)11)
の
LEED Gunで
約 6時 間にわたる電子 衝 撃を受 けて お り, このLEED像
はかな りぼや けていた。 このこと か ら表面はかな り破壊 されているものと思われるが,他
の比較的清浄 と思われる(B),(C)の
場合の上記の5 つの ピークの近 くにbroadな
が らもピークの存 在 は見 られた。Fig,4か
らFig.8ま
での ピークの形 状 に 注意す ると以下のことがわかる。(A)(B)処
理 のサ ンプルのピークは全て単一であるが(C)の
清浄なサ ン プル表面では59v付近,89V付
近でい くつかのピークが 分れて見 られた。 この事は(C)の
サ ンプルでは結晶表 面の対称性が複雑で,Fig.lcに
示 した ような4枚
周 期の超構造を形成 しているものと考え られる。電子衝撃 を加えた後の(A)の
サ ンプルで も,そ
れを熱処理 した(B)の
サ ンプルでも I一 Vカ ーブは単一な ピークだけ であるので清浄な表面に比べて超構造の存在する確率は 少ない。 またMgOの
(100)面 か らの (00)ビ ームの I一V
カーブをFig,9に
示す。MgOは
表面の非常に安定な 物質で電子衝撃に よるLEED像
のぼやけは観察 されなか っ た 。 Fig.9に 示 す MgOの I一 Vカ ー ブ は 熱 処
理 (300℃,40分
)を
経た清浄な表面であるが,
そ浄に もかかわ らず多 くの分数次オーダーの ピークが Table 正 に示す ように観測 されている。 この結果 もKCl清
浄面 と非常によく似た結果を示 してお り,KCl,MgO
の清浄表面は Fig。 lcに示す ような 超構造を 示すので はないか と考えている。なお,す
べでのサ ンプルは測定 までに超高真空中で150℃ 以下,10時間のベーキングを 経ているが,これはサ ンプル熱処理約300℃に くらべて 非常に低いために K Cl(100)面でもその熱処理を受け ないで超格子構造は観測 されてい ると考え られ る。ま た,空
気中労開した各サ ンプルの結晶表面における不純 物は,
オージェ電子分光測定4)によっても観測 されな かった。 謝辞 この研究を遂行す るにあた って
,電
子工学科加藤教授 よりいろいろ貴重な御助言をいただいた。そ して,電
気 工学科小林助教授 よりX一
Yレコーダを借用 し,電
子工 学科松浦助教授,
月ヽ西助手 より 酔 アンメーが一をお 借 りした。筆者 らは ここに深 く感謝いた します。 鉤1調
│ち
1弱
1開
1偶
Table II Inner potential for the n‐th order peak from the (00) dlrracton beam for an air cleaved o00)MgC)face is calculated by inserting the experimental results of Fig.9 into eq。
(4)where d iS assumed
4,87A12)and Vois assumed detween O and Ⅲ15V.9)10)11)EsPecially VO is cとcled when it exists between O and‐ 10V.9)11)-16.6 つ り の り の の 参 考 文 献
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との 西守克己