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心電図33-3

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Academic year: 2021

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Ⅰ.序   文  心房細動(AF)の興奮パターンはランダムなもの で,固定された回路は存在しないという考え方が現 在のところ通説である.また,発作性 AFは肺静脈 周囲を起源とする心房期外収縮から引き起こされる ことが多いため,固定された回路がない AFのアブ レーションターゲットは AFの基質ではなく発作の 誘因となる心房期外収縮という説が一般的である. さらに,持続性 AFに対する肺静脈隔離術単独での 成績が不十分であるのは,持続性 AFでは不整脈基 質の関与が多いためと考えられており,各種付加的 な治療が試みられている.しかし,われわれは AF の機序は必ずしもランダムなものではなく,時間 的・空間的に安定した基質が存在し,その基質が主 に perpetuatorとして AFの持続に関与し,併せて initiator,triggerとしても関与していると考えてい る.それが complex fractionated atrial electrogram (CFAE)である.CFAEは時間的・空間的に安定し ており,AFのすべての病期において,良いアブレー ションターゲットとなりうると考えられている.今 回,第 29回日本心電学会のサテライトシンポジウ ムで述べたことを中心に概説したい. Ⅱ.方   法  まずは,方法論・エンドポイントについて述べる. 発作性 AFは誘発し,持続性 AFは AFのままで左 心房・冠状静脈,必要に応じて右心房の 3次元マッ  心房細動(AF)の興奮パターンはランダムで,固定された回路は存在しないとい

う考え方が現在のところ通説である.しかし,われわれは AF は必ずしもランダム なものではなく,時間的・空間的に安定した基質が存在すると考えている.それが complex fractionated atrial electrogram(CFAE)である.CFAE は AF のすべての 病期における基質を示しており,よいアブレーションターゲットとなりうる.方法 論については,① AF 中に左房・冠状静脈の 3 次元マップを作成し,CFAE を認め た領域にタグをつける,②マップを完成させた後,タグ,ならびに好発部位を中心 に“時間的・空間的に安定している”CFAE を“領域として”アブレーションする,こ とにより高率に AF を停止させうるというものである.なお,心臓副交感神経節 (GP)存在部位は CFAE の好発部位である.本稿ではこれらとともに,著者の留学 先の指導者である Nademanee 先生についてもふれたい. 桶谷直也

Complex Fractionated Atrial Electrogram Guided Catheter Ablation of Atrial

Fibrillation

心房細動の CFAE アブレーション

第 1 回アブレーション・デバイスサミット 

心房細動を極める—最先端施設の現状を識る

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心臓血管・高血圧内科学(〒 890-8544 鹿児島県鹿児島市桜ヶ丘 8-35-1)

Naoya Oketani

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プを作成する.その際,CFAEを認めた領域にタグ をつけ,その後のアブレーションの指標とする. CFAEは,時間的・空間的に安定しているため,そ れらのタグは治療終了まで高い精度で CFAEの領 域を示してくれる.大まかなマップを完成させた 後,タグ,ならびに好発部位を中心に CFAEを “領 域として ”アブレーションすることにより,高率に AFを停止させうる.発作性 AFは誘発されなくな るまで,持続性 AFは停止するまでアブレーション し,終了とする.一通りアブレーションした後にも AFが持続している場合には,ニフェカラントを使 用して,残存する CFAEを探す.そのときに,そ れまでにアブレーションした領域周辺を探すと,効 率よく見つけられる.図 1に発作性 AF症例のアブ レーション後の 3Dマップ(図 1A)と,アブレーショ ン前の 3Dマップを作る段階での,図 1Aの左上肺 静脈後方の心内心電図(LSPV)(図 1B)と,図 1Aの 右下肺静脈(RIPV)後方の心内心電図(図 1C)を示 す1).左上肺静脈後方の電位は CFAEを認めるが, 右肺静脈後方は非常に規則正しい心内心電図を示 す.前者のような領域を中心にアブレーションを行 う.ただ,同じ肺静脈でも,前方には CFAEが存 在し,後方には存在しないということはよくあり, 本症例でも RIPVの前方には存在するが後方には存 在していなかった.そのため,どの肺静脈が原因と いうのではなく,ある一定の領域に CFAEが存在 するという認識が前提となる. Ⅲ.結   果  発作性ならびに持続性 AF に対して,CFAE を 指標にアブレーションを行った症例の 3D マップ を示す(図 2)1).図 2Aは発作性 AF症例,図 2Bは 長期持続性 AF症例のアブレーション後の 3Dマッ プである.この発作性 AFの症例に対しては,左肺 静脈はまったくアブレーションしていないが,その 後の再発はなく,少なくともこの症例において左肺 静脈は治療の必要はなかった “バイスタンダー ”の 肺静脈であったと考える.CFAEアブレーションに 際し,AFの持続に必須でない CFAEもアブレー ションをしているのではないか,との指摘を受ける ことがあるが,われわれにとってはこのような症例 の左肺静脈はアブレーション不要であり,全症例に 両側の肺静脈を一律に隔離することは,必須とは思 われない.ただ,肺静脈隔離は画一的に治療を行え るというメリットがあり,特に発作性 AFにおいて 肺静脈隔離術を行うことを否定するつもりはない. 次に長期持続性 AF症例を見ると,AFが持続すれ ばするほど CFAEの分布は広がりを見せ,心房の 形もリモデリングにより丸みを増すことがわかる. その結果として心房の中隔壁,左房天蓋部,左房前 壁,僧帽弁輪などの圧負荷がかかるような部位を中 心に CFAEを認める範囲が広がり,アブレーショ ン時間・手技時間が発作性 AFに比べて長くなる. 発作性 AFは肺静脈が原因で,持続性 AFは不整脈 基質が関与するという,別の疾患のような考え方も あるようだが,われわれは単に CFAEが増加する こ と で 持 続 し て い る と 考 え て い る. も ち ろ ん, CFAEの領域が狭い持続性 AFの症例もあるが,平 均すると持続性 AFのほうが,発作性 AF よりも CFAEの領域が広くなる.そのため範囲の広狭はあ るにせよ,いずれの病期においても CFAEを指標 にアブレーションを行えば,AFの治療は可能と考 えている.ただ,CFAEの領域が広いほど不完全な アブレーション部位が残存する確率が高くなる可能 性があり,1回での成績を上げるためには,より確 実なアブレーションを行えるデバイスの進歩が必要 と思われる.その根拠としては,Heart Rhythm 2009で発表を行った2)再治療症例において,初回の アブレーション領域と再治療時のアブレーション領 域が高い頻度で一致していたことがあげられる.な お現在,初期に比べて肺静脈を周辺の領域を含めて 拡大して隔離し,併せて後壁も隔離する施設が増え ているが,より多くの領域を隔離すれば,AFが持 続しづらくなることは,Maze手術からも明らかで ある.ただし,現在の解剖学的なアブレーションの みでは,Maze手術後の AF残存・再発などの治療

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A B C LSPV RIPV 図 1 CFAEアブレーションの実際 A:発作性心房細動症例の 3D マップ.アブレーション部 位を小豆色のタグで示す. B: アブレーション前の 3Dマッ プを作る段階での図 Aの矢 印部位の心内心電図.左上 肺静脈後方の電位(LSPV) は complex fractionated atrial electrogram(CFAE) を認める. C: アブレーション前の 3Dマッ プを作る段階での図 A の 破線矢印部位の心内心電 図.右下肺静脈後方の電位 (RIPV)は,非常に規則正 しい心内心電図であった. 右肺静脈の前方に CFAE を認めたため,アブレー ションすることとなったが, 同じ肺静脈でも前方と後方 での心内心電図は異なる. 〔文献 1)より引用改変〕

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は行えない.また,肺静脈隔離術が普及し,肺静脈 隔離が完成しているにもかかわらず,AF再発例が 増加しているのはどうしたわけであろうか.さらに 今後,CFAEアブレーションの重要性が増すものと 考えている. Ⅳ.心房細動の停止  AFに対する CFAEアブレーションを行っても成 績が芳しくないとの報告もあるが,その多くは CFAEアブレーションによる AFの停止率が極端に 低い.Nademanee先生の施設での AF停止率につ いては,私が AHA 2008で報告した1)が,610症例 において,発作性 AFの 99%,持続性 AF(約半分 の長期持続性 AFを含む)の 80%が,ibutilideを使 用したものを含めて,cardioversionを使用せずに 洞調律化している.当施設では初期から 283例の肺 静脈隔離を併用しない群で,発作性 AF の 99%, 持続性 AF(約 4分の 1の長期持続性 AFを含む)の A B 図 2 発作性心房細動症例(A)と長期持続性心房細動症例(B)のアブレーション後の 3Dマップ A:左は前後像,右は後前像.この症例では右肺静脈の前方のみのアブレーションで,左肺静脈周 囲はまったくアブレーションを必要としなかった. B:左は前後像,右は後前像.発作性と比較して丸みをおび,左房天蓋や心房の中隔壁が膨らんで いる.心臓副交感神経節領域は complex fractionated atrial electrogram(CFAE)の好発部位 であるが,長期持続性心房細動の症例では物理的に負荷のかかるような部位にも CFAEを認 めることが多い.

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79%が,ニフェカラントを使用したものを含めて, cardioversionを使用せずに洞調律化している.な お,ibutilideの使用の有無は再発率に影響を与えな いことがわかっており2),当科でもニフェカラント の使用が再発率に影響を与えていないことがわかっ ている.それであれば最初からニフェカラントを使 用したらよいのでは,との意見もあると思うが,使 用目的は停止をさせることではなく,残存する CFAEを見つけることである.また,アブレーショ ン前に使用しても AF周期が延長せず,半減期が短 いこともあり,治療の終盤で使用しないと効果を発 揮しない.図 3に AFの停止の好発部位を示す1) Ⅴ.心臓副交感神経節との関係  AFのアブレーションにおいて,心臓副交感神経 節(GP)の 役 割 が 注 目 さ れ て い る. 図 3 に 示 す CFAEを指標にした AFの停止の好発部位は,まさ に GP存在部位(図 4)3)と一致している.GPを指標 とした AFのアブレーションで素晴らしい成績が報 告されていることからも,その重要性がわかる.た だ,われわれのデータでは,長期持続性 AFでは CFAE の好発部位は GP の存在しない領域にも広 Posterior LA Anterior LA Superior LA LSPV LIPV RSPV RIPV LSPV LIPV Lateral LA Septal LA LSPV LIPV RSPV RIPV FO Septal RA FO CS CS 42 : Cavo-Tricuspid Ithmus 43 : Low lateral RA 44 : SVC-RA junction A B C 8% LAA 12% LAA 10% 10% 11% 7% 図 3 心房細動停止の好発部位 A:左が左房後壁,右が左房前壁.左上肺静 脈後方,左心耳周囲が好発部位である. B:左が左房側壁,右が左房側の中隔.右肺 静脈の前方が好発部位である. C:左が右房側の中隔.右が冠状静脈とその 他.冠状静脈近位部とその周囲が好発部 位である. 〔文献 1)より引用改変〕

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がっている.そのため,GPアブレーションにおい ても,特に再発例では CFAEアブレーションで補 完できる可能性があると考えている. Ⅵ.Nademanee先生とそのラボ  サテライトシンポジウムの目的のひとつが,留 学先の紹介ということであったので,本稿でも著者 の留学先である Pacific Rim EP Research Institute ならびに指導者の Nademanee先生についてもふれ てみたい.アジア人の活躍を心良く思わないため か,Nademanee先生の発表を信用せず,中傷する 医師もいるが,実際にはその卓越した能力と飽くな き向上心はもちろんのこと,その人柄も多くの人を 魅了する.カテ室でご一緒させていただくことも多 かったが,コメディカルの方々ともいつも気さくに 話されるので,大変楽しいラボであった.私がフェ ローとしてお邪魔した初日にアブレーションを 5例 されたのだが,4例が終わったところでもう 1例と 仰ったので,思わずもう 1例ですか? と聞き返し たところ,発作性 AFだから大丈夫とのご返答.終 わったのが 18時であったのにも驚かされたが,初 日の私にも誰しもが好意的で,ラボの雰囲気が非常 に良く,カテラボはぴりぴりしているものと思って いた私にはそれも驚きだった.コメディカルの方々 もレベルが高く,集中すべきときにはものすごい一 体感がある.雰囲気が良いとコメディカルの方とも 気軽に意見を交換できるので,実際コメディカルの 方々の一言で,助けられることも多かった.現在, 当科でもそれを踏襲しているつもりであり,楽し く,また助けてもらいながら治療を行っている. Nademanee先生は「妙な奴が来たら頭痛の種だ」と いわれ,多くのオファーがあるにもかかわらず,あ まりフェローをとることを好まれていない.その Nademanee先生のところに留学をさせてもらえた のは,当科の前教授の鄭忠和先生と Nademanee先 生が UCLA時代から友人であったお陰であり,鄭 先生に対しても深く感謝している.Nademanee先 生には留学中のみならず,現在も親しくさせていた だいている.日本では何度もお会いしていたが,こ の発表の後に AHA 2012がロサンゼルスで開かれ AP PA LAA LSPV LIPV anterior descending LA GP

Left Posterior Oblique

posterolateral LA GP

LOM

Right Posterior Oblique

RAA RSPV RIPV SVC CS posteromedial LA GP posterior RA GP superior RA GP superior LA GP 図 4 両心房の心臓副交感神経節の分布 図 3で示した心房細動停止の好発部位と一致して いる. 〔文献 3)より引用改変〕

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たため,4年ぶりにラボにお邪魔させていただいた. 以前よりカテ室を増設し,2つ使って次々に治療さ れていたが,現在ステレオタキシスも導入し,一段 と充実していた.カテラボ見学の後は当時お世話に なったコメディカルの方々も参集し,オフィスで パーティーを開いていただいた.翌日は骨髄移植で 有名な血液内科医の奥様もお連れになり,私は家族 とともに高級イタリアンをごちそうになった.前 回,帰国前にもこのレストランにお連れいただいた ことを思い出し,心もおなかも満たされた.11月 生まれの丑年で,63歳になられた今も,常に向上 心をもっておられることにいつも敬服している.自 分に対しても,私に対しても「Keep improving ! 」 といわれ,帰国前にいただいた,「お前は俺に追い つくように頑張れ.俺はお前に追いつかれないよう に頑張るから」とのありがたい言葉を胸に,いつも 向上できるように努めている.CFAEアブレーショ ンにとどまらず,Brugada症候群のアブレーション についても発表され,今年の AHAでは J波症候群 のアブレーションについても発表されていた.私 が,次にこれをやって Nademanee先生を驚かせよ うと思っていることを先んじて進められるので,10 年たっても,20年たっても,追いつけない気がし 〔文   献〕

1 ) Oketani N, Lockwood E, Nademanee K : Incidence and mode of AF termination during substrate ablation of AF guided solely by complex fractionated atrial electrograms mapping. Circulation, 2008 ; 118(Suppl): S925 [Abstract]

2 ) Oketani N, Gidney B, Nademanee K : Clinical predictors of a redo ablative procedure after the first catheter ablation for atrial fibrillation guided by complex fractionated atrial electrograms. Heart Rhythm, 2009 ; 6(Suppl): S342

3 ) Nademanee K, Lockwood E, Oketani N, Gidney B : Catheter ablation of atrial fibrillation guided by complex fractionated atrial electrogram mapping of atrial fibrillation substrate. J Cardiol, 2010 ; 55 : 1〜 12 てならない.このような素晴らしい先生の施設で充 実した留学をさせていただいたことに対し,すべて の当科の先生方,協力してくださっているコメディ カルの方々や医療機器メーカーの方々に感謝申し上 げたいと思う.引き続きわれわれは,不整脈治療に 貢献できるよう努力したいと思っているが,今後を 担う若い先生方が内向きにならずにどんどん留学 し,われわれ世代を飛び越えていってくれることを 期待して,筆を置かせていただく.

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