Title
Studies on structure and synthesis of β-dicarbonyls(
Abstract_要旨 )
Author(s)
Ogoshi, Hisanobu
Citation
Kyoto University (京都大学)
Issue Date
1969-11-24
URL
https://doi.org/10.14989/doctor.r1518
Right
Type
Thesis or Dissertation
Textversion
author
「 一一~一一~ 氏 名 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与 の 日付 学位授 与の要件 学 位 論 文 題 目 論 文 調 査 委 員
【
198
】
生
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学
博
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諭 工 博 第
31
9
号
昭 和 44年 11
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日
学 位 規 則 第
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(β-
ジカル ボニルの構造 と合成 に関す る研究) (主 査 )教 授 吉 田 善 一
教 授 小 田 良 平
教 授 古 川 淳 二
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ノ
論 文 内 容 の 要 旨 本論文 はβ
-
ジケ トン, β
-
ケ トエステル とい ったβ
- ジカル ボニル化合物 につ き, 赤外吸収法, 紫外 吸収法 な らびに核磁気共 鳴吸収法 によ る研究 と基準振動の理論解析 な らびに電子状態 の量子化学的研究 を 併用す ることによ り, その分子構造 を究明す ると共 にβ
-
ジカル ボニルの合成 な らびに新 しい反応 につ い て研究 した もので,8
章 か らな ってい る。 第1茸 は本研究 の端緒 とな った, 直線型水 素結合を有す る酸性炭酸 イオ ン二量体 の振動 スペ ク トルを赤 外領域か ら遠赤外領域 まで測定 し, さ らに, ラマンスペ ク トルを測定 し, 得 られ たスペ ク トル をUr
e
y-Br
a
dl
e
y
の力 の場 を用 いて理論 的に解析 した ものであ る。 その結果, 測定 され たスペ ク トルの理論的帰 属 を明確 にす ると共 に, 各結合 の力 の定数 を明 らか に してい る。 また, 直線型水素結合0-E-
--
0
系 のカ の定数 (0 - H 伸縮振動, 0 - H・・・・・・0 変 角振動, 0- - ・H 伸縮振動) と 0 - ・・・0 問距離の問 に直線 関係 が成立す ることを見 出 してい る。 第2童 はアセチル アセ トンの エノル体 におけ る屈 曲型分子 内水素結合 を研究す るため, アセチル アセ ト ン, ヘキサ フル オル アセチル アセ トンおよびその重水素化物等の赤外吸収 スペ ク トル を40
0
0
c
m
1か ら7
0c
m-
1まで測定 し, 基準振動 の理論解析を行 な っものであ る。 その結果 , 屈 曲型水素結合系 は直線型水 素結合系 とは異 った分子 内ポテ ンシ ャルを有す ることを明 らか に してい る。 さ らに, アセチル アセ トンの 両 メチル基 を トリフル オ ロメチル基 にお きかえた場合のキ レー ト環 を形成す る各結合 の力 の定数の変化か ら, 置換基 の分子 内水素結合 に及 ぼす効果 を考察 してい る。 また,4
種 のβ
- ジケ トンのエノル プ ロ トン の化学 シフ トと正確 に帰属 したカニボニル伸縮振動 の問に直線 関係 が成立す ることを見 出 してい る。 第3章 はアセチル アセ トンの中央 の炭素原子 に種 々の置換基 を導入 し, これ ら置換基 が エノル体 の分子 内水素結合系 な らびに共役7T 電子系 に どのよ うな効果 を示すかを対応す る金属 キ レー トと対比 して研究 し第
4童 は β- ジカル ボニルのα位 の炭 素原子 にアル キル (または ア リール) チオ基 の求 核 的導入 と, 得 られ たアル キル (また はア リ- ル) チオ置換体 の構造 に関 し研究 した もので あ るO その結果, 本 研究 で行 な った α- クロル- β- ジカルボニル とメル カプ タン類 の反応 に よ る α- アル キル (または ア リー ル チ オ) - β- ジカル ボニルの合成 は従来 知 られてい たスル フ ェニル クロ リ ドと β- ジカル ボニル との反応 よ り容 易で, かつ応 用範 囲の大 きな ことを見 出 してい る。 ま た, β- ジカル ボニル の α位 に イオ ウ原 子 が入 ることによ り, 実質上100% エノル化 し, エノル構造, 分子 内水 素結 合 ともに異 常 に安定化 され る こ と を 核 磁気共 鳴吸収 な らびに赤外吸収 スペ ク トルか ら見 出 してい る。 そ して, このよ うな安定化 が起 るのは基 底状態 で, イオ ウ原子 の3d軌道 の関与す る p7r-d7r 共役 に帰因す るもの と結 論 してい るO 第5
茸 は3
- - ロー2
,4-
ペ ンタン ジオ ンの金層 (Ⅱ) キ レー ト (金 属 : アル ミニ ウム, コバ ル ト, ク ロム) に対す る置換 チオ フ ェノ- ルの求 核 的反応 を研 究 した ものであ る。 その結果 ア リール チオ基 が3
-位 に容易 に導入 され ることを見 出 して い る。 この反応 は β- ジカル ボニル の金属錯体 におけ る求核置換 の 最 初の成 功例で あ る。 反応 に及 ぼす置換 チオ フェノール の置換基 の種塞 , 中心 金属 の種類 , 溶媒 の種類 , および- ロゲ ンめ 種類 の影 響を検討 し, 本反応 の機構 につ いて考察 して い る. 第6章 は1,3-ジケ トンの 1 位 にシ クロプ ロピル基 を有 す る ものを合成 し, その エノル体 の 核 磁 気 共 鳴, 赤外 および紫外 スペ ク トルを測定 し, それ らを対応す るイソプ ロピル基 を有す る1
,
3
- ジケ トンの値 と比 較, 検討 した ものであ る。 その結果, シ クロプ ロピル基 は共役 相互作用 によ り, 1,3-
ジケ トンの基 底状態を多少 安定 化 させ るが, 基 底状態 よ り励起 (一重項) 状態 の方を よ り強 く安定化 させ る ことを見 出 し, 遷移双極子 によ り基底状態 よ り強 く分極 した励起一重項状態 とシ クロプ ロピル基 の共役 が大 きい こと を明 らか に してい るO - 方, 分子 内水 素結合 した エノル体 を銅(
Ⅱ
) 錯体 に変 えた場 合 には シ クロプ ロ ピ ル基 によ る共役相互作用 は明 白には認 め られ ない。 非 対称 β- ジケ トンの場合 には可能 な両 エノル構 造 に 対す るシ クロプ ロピル基 の相互作用 は相 違す る結果, シ クロプ ロピル基 との共役 相互作用 によ り安定化 さ れ るエノル構造 が優 位構造 とな る ことを明 らか に してい る。 第7章 は量子化学 的計算 によ って, β- ジカル ボニル の 7r電子分布, 結合次数 等 を求 め, これ らの値 を, 著者 が これ まで に得 た実験結果 とを対 比 して検討 した ものであ る。 まず, 単純Ht
l
c
ke
l
によ る取扱 いによ り, 置換基 を変化 した場合 の エノル酸素 の電子密度 と分子 内水素結 合強度 との問 に平行 関係 が成立す るこ とを確か め, 第3
章 に述 べ た置換基 効果 の解 釈 の妥 当な ことを示 してい る。さ らに,
Pa
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法(
SCF-
LCAO-
MO)
によ って, β- ジカル ボニル類 の分光学 的値 を矛盾 な く 解釈 してい る。 第8
章 では,3
- メチル チオー2
,4
- ペ ンタンジオ ンの エノル環 の異 常 な安定性 を究 明す るた め, その 振動 スペ ク トルをS
に近 い質 量を有 す るC
1 を置換基 として もつ3
- クロルー2
.4 - ペ ンタ ジオ ンの エノ ル体 の スペ ク トル と比較 して い る。 そ して, 両者 の基 準 振動 の理論解析 を し, 力 の定数 を対比 してい る。 そ して, その結果, 後者 と異 な り前者 の エノル類 で は 7T電子 の非局在 化 が大 き く, 分子 内水素結合 も強 い ことを明 らかに してい る。 また, この結果 は核磁気共 鳴スペ ク トルか ら得 た結果 と一 致 して い る。 -633-論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 β- ジカルボニルの内, β- ケ トエンテルは有機合成上重要であ り, β- ジケ トンは金属に対す るキレ-ト剤 として重要性を増 して きてい るものであ る。 ところが, β- ジカル ボニルの分子構造については不明 の点が多 く, と くに, β- ジカル ボニル (ェノル体) における屈曲型分子 内水素結合 な らびに共役 7r 電子 系 に対す るキレー ト環上の置換基 の影響は全 く不明のまま残 されて きた。 そ こで著者 は赤外, 核磁気共鳴 な らびに紫外吸収 スペ ク トル法によ る研究 に加 えて, 振動 スペ ク トルの理論解析, 電子状態の量子化学的 研究を適切 に併用 して これ らの問題を研究 している。 他方, β- ジケ トンの金属錯体のキレー ト環上での求核置換 については これまで成功した例がなか った。 著者 は この点 について も研究 した結果, 始 めて求核置換 に成 功 し, これを置換- βジカルボニルの合成 に 応用 してい る。 これ らの研究の主要 な成果を示す と次のよ うであ る。
(
1
)
β- ジケ トン0
) エノル体 における屈曲型水素結合を直線型水素結合 と対比 して研究す るため, 後 者 の例 として酸性炭酸 イオ ン二量体を選 び, 水素結合の研究 に最 も適切 な振動 スペク トルの測定を赤外か ら 遠赤外領域 まで行ない, かつUr
e
y-Br
a
dl
e
y
の力の場を用 いて基準振動の理論解析を行 な うことによ り 測定 スペ ク トルの理論 的帰属を適確 に行 な うと共に, 各結合の力の定数を決定 してい る。 その結果, 屈 曲 型水素結合 は直線型水素結合 とは異 った分子 内ポテンシャルを有す ることを明 らか に してい る。 また, 両 カルボニル基 に結合す る置換基を変えた数種の β- ジケ トンについて, キレ- ト環を形成す る 各結合のカの定数 の変化か ら分子 内水素結合に及ぼす これ ら置換基 の電子効果を考察 してい る。 なお, こ の研究 は分子 内水素結合を直接遠赤外部 に観測 した最初のケース として注 目すべ きものである。(
2
)
β… ジカルボニルの中央 の メチ レン基 に各種 の置換基を導入 した置換- β- ジカルボニルにつ き, 赤外な らびに核磁気共鳴法 によ り, 置換基 がエノル体の分子 内水素結合な らびに共役 TC電子系 にどのよ う な効果を示すかを研究 した結果, 置換基, 電子吸引性共鳴効果 の大 な ものほど分子 内水素結合を強め, か つ キレー ト環の 7T 電子の非局在化を高 め ることを明 らかに してい る。 注 目すべ きは, アルキル (あ るいはア リール) チオ基 の効果であ って, これ らの置換基 は電子吸引性共 鳴基 と同様, エノル化を1
0
0%
進行 させ ると共 に, アセチル基 と同程度 に分子 内水素結合を強め, キレー ト環の 7T電子の非局在化を起 させ る。 含 イオウ置換基 によるこのよ うな効果 は基底状態のイオ ウ 原 子 の 3d軌道 とキレ- ト環の打電子 との問の pTr-dTC 共役 によ り解釈 しうることを示 している。 また, 各種 の置換- β- ジカルボニルのエノルプロ トンの化学 シフ トとカルボニル基 の伸縮振動の 問 に 傾斜正の直接 関係が成立す ることを見 出 してい る。(
4
)
3
- ハ ロ- 2
,
4
- ペ ンタンジオンの金属 (Ⅱ) 錯体 (金属 :Al
,
Co,
Cr
)
に対す る求核 置換反応 と して, 置換 チオフェノ- ル との反応を試み,3
- 位 にア リ- ルチオ基 が高収率で導入 され ることを見 出 し てい るO この反応 は β- ジカルボニルの金属錯体のキレ- ト環上での求核置換の最初の成功例である。 反 応 に及ぼす置換基 の効果, - ロゲ ン, 金属な らびに溶媒 の種類 の影響を検討 し, 本反応 の機構 を考察 して換 が起 ることを明 らか に してい る。 (5)