Title TNFα, PDGF and TGFβ synergistically induce synoviallining hyperplasia via inducible PI3Kδ( Abstract_要旨 )
Author(s) Shibuya, Hideyuki
Citation Kyoto University (京都大学)
Issue Date 2015-03-23
URL http://dx.doi.org/10.14989/doctor.k18886
Right
Type Thesis or Dissertation
Textversion ETD
京都大学 博士(医学) 氏 名 澁谷 秀幸
論文題目
TNF, PDGF and TGF synergistically induce synovial lining hyperplasia via inducible PI3K (TNF・PDGF・TGFはPI3Kを介して相乗的に滑膜の重層化を誘導する) (論文内容の要旨) 関節リウマチ(RA)では、増殖性の滑膜が骨・軟骨・関節破壊などの病態に大きく関わっ ている。RA が進行するに従い滑膜の重層化も著明となり、血中の炎症マーカーよりも滑膜 肥厚による関節腫脹の方が構造的な変化に関与することが臨床上も明らかとなっている。 生体内の滑膜組織は、fibroblast-like synoviocyte(FLS)を中心とした数層の細胞層から なる intimal lining layer(ILL)と、リンパ球や血管に富んだ sublining の 2 層から成って いるが、関節リウマチでは特に ILL の肥厚・重層化が顕著である。通常行われる FLS の単 層培養ではこれらの構造の再現は困難であるが、3 次元培養を用いることにより再現するこ とが可能である。今回この3 次元培養を用いて ILL の重層化の要因について解析を行った。 まず TNFα・PDGF・TGFβの 3 種のサイトカインを様々に組み合わせて付加した環境下で 3 次元培養を行った。培養後に凍結切片を作成し HE 染色を行ったところ TNFα・PDGF・TGF β全て付加したもの(TPT 条件)で最も ILL の重層化が著明であった。また PI3K isoform の発現を RT-PCR で調べたところ、TPT 条件で PI3Kδ の発現が有意に上昇していた一方で、 PI3Kα・β・γについては重層化と相関性を認めなかった。
次に TPT 条件によるシグナル経路を調べるために単層培養での解析を行った。3 次元培養と 同様に TPT 条件で PI3Kδ の発現が最も上昇していた一方、α・β・γについては一定した 傾向を認めなかった。さらに western blot・ELISA にて PI3K/Akt 経路の活性化について調 べたところ、TPT 条件にて P-Akt の著明な持続的上昇を認めた。
次に siRNA で PI3Kδをノックダウンした FLS を TPT 条件にて刺激したところ、PI3K/Akt 経 路の活性化が抑制された。またこの FLS を用いて 3 次元培養を行ったところ、TPT 条件下で の重層化の抑制を認めた。
以上の結果により、TPT 条件では FLS において誘導性の PI3K isoform である PI3Kδによる PI3K/Akt 経路の持続的活性化がもたらされ、その結果滑膜 ILL の重層化が誘導されること が明らかとなった。PI3K/Akt 経路の抑制による滑膜増殖の制御が、関節リウマチにおける 新たな治療標的となる可能性が示された。
(論文審査の結果の要旨)
滑膜組織は fibroblast-like synoviocyte(FLS)が中心の intimal lining layer(ILL)とリンパ球や血 管に富む sublining の 2 層から成り、FLS の 3 次元培養では同様の構造が形成される。関節リウマチ (RA)で特徴的な ILL 重層化の機序を解明するために、本研究では最初に TNFα・PDGF・TGFβを組合せ て加え 3 次元培養を行ったところ、全ての付加(TPT 条件)で最も重層化が著明であった。次に 3 次 元培養と単層培養で PI3K isoform の発現を調べたところ、共に TPT 条件で PI3Kδ の発現が上昇して いた一方 PI3Kα・β・γは相関性が無かった。さらに TPT 条件での単層培養にて P-Akt の持続的上昇 を認めた。 次に PI3Kδをノックダウンした FLS を TPT 条件にて刺激したところ、PI3K/Akt 経路が抑制され、また この FLS を用いた 3 次元培養では ILL 重層化が抑制された。 以上から TPT 条件では FLS において PI3Kδが誘導され、PI3K/Akt 経路の持続的な活性化により ILL 重層化が誘導されることが明らかとなった。従って PI3K/Akt 経路の抑制による滑膜重層化の制御が RA の新たな治療標的となる可能性が示された。 以上の研究は関節リウマチの病態の解明に貢献し、今後のリウマチ性疾患に対する新たな治療法 の開発に寄与するところが多い。 したがって、本論文は博士(医学)の学位論文として価値あるものと認める。 なお、本学位授与申請者は、平成27年2月16日実施の論文内容とそれに関連した試問を受け、 合格と認められたものである。 要旨公開可能日 年 月 日