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イラク・ビジネス・セミナー

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Academic year: 2021

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講演4「日本の対イラク復興支援とJICAの取り組み」 独立行政法人 国際協力機構 中東・欧州部長 山田 順一 氏 ご紹介にあずかりましたJICAの中東・欧州部長の山田です。本日はよろしくお願いします。 時間も30分と限られていますので、かいつまんでご説明いたします。 目次に沿って、「現状」、「課題」、「対応」、「展望と意義」の流れでお話しますが、最 初の「現状」は、前のセッションでもかなり詳しく話されましたので、ここは割愛して、3ペ ージ目の「課題」からご説明します。 まず、自立発展へのボトルネックということで書いてございますが、イラクの場合、まだま だ膨大なインフラ需要があるということです。これは、2003年に戦争が終わってからも、さ ほど復興が進んでいない現実があります。マドリッド会合のときに、アメリカも200億ドルと いう高額の支援をコミットいたしましたが、その効果も限定的です。まだまだインフラの復興、 それから開発の需要があるということです。 具体的には、石油は2016年に日量600万バレルという生産目標を立てていますが、まだ現在、 241万バレルと、半分にも達しておりません。それから、原油の輸出量は日量約200万バレル で、目標の450万バレルには足りない。 電力においても、9,400メガワットのところを5,000メガワットしか供給されていないとい うことで、1日のうちの半分がまだまだ停電をしているという状況です。上下水道においても 1日のうち半分程度が断水になる都市もかなり多いということでして、前のセッションにもご ざいますが、昨夏には電力とか水がないということで暴動まで起きたという深刻な状況です。 自立発展の阻害要因としては、ここにありますようなPolitical Risk、Security Risk、加 えてCommercial Riskという長い間の経済制裁に起因する、国際的な商習慣から隔離されてき たことによる弊害がございます。それから、政府機能のCapacity不足ということで、本来で あればビジネスの第一線に立っているような30から40代の方は、いわゆる80年代からのイ ラ・イラ戦争、その後の湾岸戦争、それから今回の戦争等で、一般的なビジネスの経験を積ま ないままキャリアを経ています。実際我々もイラク側の実施機関といろいろとお話をいたしま すけれども、第一線でお話ができるのは、50代以上の70から80年代にビジネスの第一線で活 躍していた方となります。それから、あと若い方になるということで、中間層がかなり不足し ているなというところが否めない事実です。 こうした背景を持ちまして、4ページ目ですけれども、2003年、我が国はマドリッド会合

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におきまして50億ドルの資金供与を表明しています。アメリカは200億ドルの供与を約束しま したが、うち真水で復興開発に使われたのは半分以下(注:他は人件費等)だと言われていま す。 片や日本の場合は、無償の15億ドルはほぼ完了しています。それから円借款35億ドルとい うことで今やっていますけれども、これまでに32.8億ドル、15件の借款契約を結んでいます。 今後、ディスバースは本格化します。 いずれにしてもお伝えしたいのは、我が国の50億ド ルのほとんどが真水で復興開発資金としてイラク政府に行っている、もしくは今後行くだろう ということであります。 また、JICAとJBICの一部が組織統合してから、私ども円借款とともに技術協力もやってい ます。技術協力では、2003年以降、4,200人以上のイラク人が、日本及びヨルダンやエジプト で開催した研修に参加しています。 円借款の進捗状況としては、資料が鮮明ではないかもしれませんが、①と書いてあるのがコ ンサルタント・サービスの契約でして、赤で囲ってあるものはすべて終わったということです。 それから、②が本体工事の入札公示ということで、赤の部分は既に手続きが開始されており、 ③は契約締結ということで、一番上の「港湾セクター復興事業」ですと、契約数9のうち、3 つの契約が締結済です。これはどういうかというと、9つのパッケージ、港湾セクターであれ ば、例えば浚渫を1パッケージ、それから浚渫船の調達に1パッケージ、更にはクレーン等の 機器、埠頭整備などの港湾施設整備も別パッケージにし、合計9つの調達パッケージのうちの 3つが既に入札手続きを経て、本体契約に至っているということです。 灌漑セクターローンにつきましては、6つのパッケージのうちの2つが本体契約締結済で、 3番目のアルムサイブ火力発電所についても現在本体契約の評価中です。なお、これはイラク で最大の火力発電所で、1号基と3号基のリハビリを行うものです。 4番目は自衛隊も活躍したサマーワで橋と道路をつくる事業ですけれども、これは既にPQ を終わっておりまして、現在本体の入札評価中です。それから、バスラの製油所についてはE /Sというエンジニアリング・サービスに対する借款でして、いわゆる詳細設計と入札書類を つくるところまでが今回のファイナンス対象です。その後、本体部分への借款もつけるという ことで、これは後で申しますけれども、可及的速やかに本体の円借款をつけたいと考えていま す。 6番目がコール・アルズベールの肥料工場、これも本体契約の評価中。 7番目が原油の輸出基地、これは円借款501億円を供与いたしまして、最大の円借款のうち

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の一つなのですが、後で説明いたしますけれども、現在160万バレル輸出しています。これが できれば、もう1ライン160万バレル輸出できるような、要するに輸出量が倍増する、そうし た事業でして、PQの評価が終わりました。何社か合格しておりまして、うち数社、日本業者 も入っていますので、今後の入札の結果次第では、日本の企業の方のご活躍も期待できると考 えています。 8番目が電力セクター。これも本体契約5件のうち、1つは契約済で、先般、豊田通商・明 電舎が80億円の変圧器を受注したという新聞報道も出ております。 バスラの上水道整備については、コンサルティング・サービスの契約が締結され、現在展開 中です。それから10番目がクルド地域向けの電力セクター復興事業ですけれども、本体契約 5つのうち4つが既に契約済です。 11番目は、クルド地区の上水道で、現在PQが行われています。12番目がバグダッドの下水 で、E/Sということで、コンサルティング・サービスだけです。これもバスラ製油所同様、 なるべく早急に本体工事をつけたいと思っています。 13番目が中西部の上水道。14番目がアル・アッカーズ火力発電、これは中西部にある火力 発電所の新設。それから、15番目がデラロック。これはクルド地区のドホーク県にある水力 発電所の新設です。 ただ、最後の3件は、コンサルタント契約がほぼ結ばれるところまで選定手続きが進んでい ますけれども、イラクの国会が開かれていませんので、円借款契約が未発効という状況です。 新政権の発足後、早急にコンサルタント契約が動き出すと考えています。 次の資料が4,200人の研修生、先ほど言いました一部日本、それから周辺国で行った研修の 内訳です。ヨルダン、エジプト、そうしたところで電力、農業、医療、それからガバナンス、 上水道といった分野での各種研修を展開してきましたが、現在は円借款事業との相乗効果が見 込まれる対象を中心に展開している状況です。また、ガバナンス分野に含まれる警察官や行政 官など、必ずしも円借款事業と直接結びつかない分野も、イラク側の要望を踏まえて人材育成 をしっかりやっています。7年で4,200人ですから、年間500人以上私どもは呼んでおりまし て、うち200人以上が日本に参ります。関係機関が来たときには、日本企業の方にご紹介をす るというようなこともいたしています。日本人がイラクに行けない分、こういった機会が非常 に重要な機会になると考えています。 また、JICAでは実施促進のために、エルビルに事務所を設けておりまして、日本人が現状 4名行っています。それからバクダッドには1名、日本大使館に出ております。坂本参事官

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(会場にて紹介)が外務省に出向という形で、現地大使館にて活動しておりますので、バグダ ッドにいらした際には、ぜひコンタクトいただければと考えます。 それから、レッドゾーンにJICAの現地職員の連絡事務所も維持しています。1つこの場 で申し上げたいのは、来年度、治安状況が許せば、バグダッドにJICAの事務所を正式に開 設したいと思っています。2つ具体的な条件がありまして、一つは、イラクの政府ができて、 JICAの法律的なステータスが確立できること。2番目にバグダッドにおいてそれなりの安 全なところに物件が確保できるということです。ただし、バクダッドに移設後もエルビルの拠 点を引き揚げるとは考えておりません。駐在員を残し、クルド地区に関係の企業の方にご迷惑 はおかけしないようにしたいと思っています。 それから、事業サイトですけれども、訪問にも制約はありますが、09年であれば3回、10 年には2回、バスラに行っています。そのたびに、民間企業・コンサルタントの方にもお声が けして行っています。 それから、3番目がキャパシティビルディングということでして、我々は事業をやっている だけじゃなくて、learning by doingということで、事業の実施を通じて、入札手続きや支払 い手続きを学ばせ、イラクの人材育成を行っております。 また、日本の企業の方の受注機会にも繋がるよう、調査等を通じて様々な形でイラクとのか かわりを増やして頂けるような機会をご提供したいと思っています。この関連で、STEP (Special Term for Economic Partner)という日本企業タイドの円借款も供与できるようni 検討したいと思っています。ただし、借款契約を結んだ15件についてSTEPの事例は1件 もありません。日本企業からよくSTEPにしてくださいと言われるのですけれども、逆に私 が聞きたいのは、STEPにすれば本当に入っていただけるのですかということです。それも 1社だと競争条件が働きませんので、最低でも2社以上応札をしていただいて、受注したら本 当に日本人も含めて現地に入っていただけるということです。それらが確保されれば、我々は 積極的にSTEP供与を検討したいと思っています。 戻りまして、いくつか事例をご紹介します。10ページ目ですけれども、原油の輸出基地の 拡充事業は現在実施中で、入札が行われているところです。現在、原油160万バレル、イラク の輸出総量の80%をここで賄っていますけれども、もう1ライン海底パイプラインを引くと いう事業で、それに500億円の円借款を供与しています。今のところ、4月あたりの契約を見 込んでいます。それから、石油の流出事故ですね、メキシコ湾などで起きたことを繰り返さな

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いためにも、そうした技術協力も一緒に行っています。 13ページにありますように、バスラの製油所にE/S借款を供与しています。本体部分へ のファイナンスも期待されていますので、速やかに進めたいと思っています。また、ベイジに 製油所がございまして、そこもイラク側から円借款でやってくれという期待が高いので、ガソ リンを精製するFCCプラントの設置に、円借款を供与すべく検討を開始しております。 農業分野について触れます。治安と雇用の問題というのは裏表でして、昨年11月にJICA理 事長と共にイラクに行きまして、マーリキ首相、それからクルドにおいてはバルザーニー大統 領とお会いした際にも、両方の首脳の方から、ぜひ農業分野の支援をお願いしたいとありまし た。これは、国連の制裁、Oil for Food Programの前は、クルドなんかいい例ですけれども、 かなり農業が盛んだったということです。ただ、Oil for Food Programで安い穀物が入った ことがあって、農地が使われなくなってもう10年、20年たっています。これを復興させ、雇 用の創出にも対応したいと思っています。円借款で灌漑、それから肥料工場をやっており、技 術協力では専門家をクルドに送りました。今度は果樹の生産にも日本の専門家を送ろうと考え ています。 最後ですが、先ほどご説明いたしましたように、我々、民間資金の「呼び水」と円借款をと らえていますので、ぜひ我々を利用していただいて民間の投資につなげたいと思っています。 具体的にはPPPということで、JICAでは民間連携室を立ち上げまして、PPP案件のF/ Sをつくるということもやっています。それから、まだ具体的にはわからないのですけれども、 将来的には海外投融資というエクイティーファイナンスもできればと思っています。 今のところ、日本政府と「イラクへの円借款は、35億ドルで止めるのでなく、その後も需 要があれば続けていくべき」という議論をしています。私どもとしては、先ほど紹介した新規 の需要がある限りは、日本政府と相談して円借款による支援を実施していきたいと思っていま す。 どうもありがとうございます。(拍手)

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