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公職の候補者等に関する寄附行為の制限について 第 1 部はじめに 1 第 2 部寄附の概要 2 第 3 部寄附の禁止 4 1 公職の候補者等の寄附の禁止 4 (1) 公職の候補者等が行う寄附の禁止 4 コラム1 選挙区と寄附の関係 5 コラム2 寄附を受ける側の認識 9 (2) 公職の候補者等を寄附

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(1)

横浜市選挙管理委員会 「SENKYOFORKIDS あかるい選挙」の頁から引用

公職選挙法上の寄附

禁止となる寄附行為

寄附の禁止についての行政実例、裁判例

罰則の種類、内容

公民権の停止

<参考> 東京都府中市議の失職事例

市会ジャーナル

寄附とは 寄附の禁止 寄附の禁止に違反した場合の罰則 第

159

平成 28 年度 Vol.10

公職の候補者等に関する寄附行為の制限につい

〈特別編・法制レポート⑮〉

(2)

公職の候補者等に関する寄附行為の制限について

はじめに

・・・ 1

寄附の概要

・・・ 2

寄附の禁止

・・・ 4

(1)公職の候補者等が行う寄附の禁止 … 4 コラム① 選挙区と寄附の関係 … 5 コラム② 寄附を受ける側の認識 … 9 (2)公職の候補者等を寄附の名義人とする寄附の禁止 … 9 コラム③ 匿名の寄附 … 10 (3)寄附の勧誘や要求の禁止 … 10 コラム④ 公職にある者の「有志一同」による寄附の可否 … 12 (1)特定の寄附の禁止 … 13 (2)後援団体に関する寄附等の禁止 … 13 参考 政治資金規正法による寄附の禁止 … 14

3 公職の候補者等の氏名等を冠した団体の寄附の禁止 … 12

2 公職の候補者等の関係会社等の寄附の禁止 … 11

1 公職の候補者等の寄附の禁止 … 4

4 その他の寄附に関する規定 … 13

(3)

罰則規定

・・・ 15

(1)公職の候補者等の寄附の禁止違反 … 15 裁判例① 「通常一般の社交の程度を超えて」の意義 … 16 コラム⑤ 香典について … 18 裁判例② 公職選挙法違反となった事例 … 18 (2)公職の候補者等を寄附の名義人とする寄附の禁止違反 … 19 (3)公職の候補者等に対する寄附の勧誘又は要求の禁止違反 … 19 (4)公職の候補者等を寄附の名義人とする寄附の勧誘又は要求の禁止違反 … 19 参考事例 東京都府中市議の寄附行為による失職事例 … 23

1 公職の候補者等の寄附の制限違反 … 15

4 その他寄附の制限違反 … 21

2 公職の候補者等の関係会社等の寄附の制限違反 … 20

3 公職の候補者等の氏名等を冠した団体の寄附の制限違反 … 20

5 選挙権及び被選挙権の停止 … 21

(4)

はじめに

寄附(※)は社会生活の中で身近なものとして存在し、結婚や出産のお祝い、香典、 病気見舞いをはじめ、お中元、お歳暮、災害の際に被災地・被災者へ送られる義捐金・ 義援金、教育機関(学校や博物館、図書館など)や医療機関などへの寄贈、さらには 社寺への寄進までも寄附といえます。 しかしながら、公職の候補者等が、当該選挙区内にある者に対して寄附を行うと、 候補者の地盤培養行為と結びつき、選挙に金のかかる大きな要因となっているほか、 買収と結びつきやすいこと等を理由として、公職選挙法(昭和 25 年法律第 100 号)では、 このような寄附行為を原則禁止とし、罰則の対象としています。 総務省においてもホームページで、「政治家と有権者のクリーンな関係を保ち、選 挙や政治の腐敗を防止するために。」として「選挙の有無に関わらず、政治家が選挙 区内の人に寄附を行うことは、名義のいかんを問わず特定の場合を除いて一切禁止さ れています。有権者が求めてもいけません。冠婚葬祭における贈答なども寄附になる ので、注意してください。」と寄附に対する注意喚起を行っています。 ※総務省HP「寄附の禁止」の頁から引用 そこで、本稿では、平成 28 年 12 月に発行しました、法制レポート⑭で取り上げた 「議員の兼業禁止」と同様に、禁止規定に抵触すると、失職にまで至る恐れがある強 い規制のある、公職選挙法における「公職の候補者等に関する寄附行為の制限」につ いて、過去の裁判例や行政実例、他自治体での事例等を取りまとめ、ご紹介します。 (※)公職選挙法上は「寄附」を使用しているため、本稿においても「寄附」を使用しますが、文献によっては 「寄付」と記載されているものもあり、引用する場合は原文のまま「寄付」とします。

(5)

寄附の概要

公職選挙法上の寄附とは ①金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付(党費、会費その他債務の履行と してなされるものを除く。) ②金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付の約束(党費、会費その他債務の 履行としてなされるものを除く。) とされており、現実に供与又は交付を行うことのみならず、交付の約束だけでも寄 附に該当するとされており、一般的な寄附の概念よりも広く捉えられています。(安田 充、荒川敦.「逐条解説 公職選挙法 下」.ぎょうせい.1340 頁参照) ○公職選挙法 (収入、寄附及び支出の定義) 第 179 条 2 この法律において「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は 交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるも の以外のものをいう。 4 前3項の金銭、物品その他の財産上の利益には、花輪、供花、香典又は祝儀と して供与され、又は交付されるものその他これらに類するものを含むものとする。 第4項の規定は、昭和 50 年の公職選挙法改正により、特に寄附の定義に関連し、 日常の地盤培養行為として問題となっている花輪、供花、香典、祝儀等の供与又は交 付は、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付に含まれるものとされました。 これらの行為自体は、従前から寄附の概念に含まれるものと解されていましたが、 現実には日常の地盤培養行為として行われることが多く、金のかかる選挙の大きな原 因となっているばかりでなく、これらの名目をもって買収の脱法行為として行われる おそれもある等弊害が多かったので、特に第4項を新たに設け、これらの行為が寄附 に当たるものであることを明らかにしたものとされています。(安田充、荒川敦.「逐条解説 公 職選挙法 下」.ぎょうせい.1341 頁参照) 上記の第4項のほかにも、財産上の利益とは、経済的価値を有する利益全般を意味 することから、債務の免除、連帯保証、不動産や物品の無償貸与、あるいは著名な芸 能人の無料公演等もこれにあたることになるとされています。(三好規正.「最新 事例解説 す ぐわかる選挙運動[第三版]」.イマジン出版.84 頁参照) ※総務省HP「寄附の禁止」の頁から引用

(6)

<「寄附」にあたるとされた行政実例> ○優勝カップの貸与 (平成2年1月 31 日 質疑集) 問 候補者等が町内会の野球大会に際して優 勝者の持ち回りとするためのカップを貸与 することは罰則の対象となるか。 答 物品の貸与も財産上の利益の供与に該当 するので、罰則の対象となる。 ※ 本稿で引用する「行政実例」とは、多くの行政機関が法令の適用等に関して疑義がある場合に、上級庁・関 係行政機関に対し照会し意見を求め、得られた回答を行政の参考とするために、これを公にした行政事務の解 釈指針です。しかし、この「行政実例」も法令解釈の一つにすぎず、実例に依拠して行った事務であっても、 裁判所において違法と判断される場合がある旨(最高裁昭和 59 年 5 月 31 日判決など)、ご留意ください。 (以下、例示する行政実例は(選挙制度研究会編.「選挙関係実例判例集 第 16 次改訂版」.ぎょうせい)に収 録のものです。) 一方で、「寄附」には該当しないものとして、次のような例が挙げられています。 ○三好規正.「最新 事例解説 すぐわかる選挙運動[第三版]」.イマジン出版.85 頁参照 「寄附」とは財産上の利益の供与等にあたるものをさし、債務の履行としてなされるものは除かれ る。候補者等が会費制の会合に出席した場合に当該会費を支払うこと、特定の団体の会員資格を得る ために定められた額の会費を支払うことは、当該会費が提供されるサービス等に見合った妥当な対価 の支払いであれば、それは債務の履行として差支えはない。しかしながら、会費の額を超えて支払い を行えば超えた部分は寄附ということになり、また、会費の額が提供されるサービス等に比して不相 当に高額に設定されている場合(たとえばある団体の「特別会費」として一般の会費よりも社会通念 上著しく高額な金銭を支払うような場合)はそれ自体が贈与的性質をもつものとして、寄附にあたる 場合もある。葬儀や法事に際して僧侶に出される「お布施」や祭礼における神主への祈祷料について は、所定の役務の提供に対する債務の履行と認められる限りは寄附にはあたらない。 ○大塚康男.「議会人が知っておきたい危機管理術 改訂版」.ぎょうせい.50 頁参照 党費や会費のほか香典返しとして品物等を贈ることは債務の履行として寄付に含まれないとされ ています。会費制の会合に出席し、定められた会費を支払うことは、それが妥当な額の会費であり単 なる債務の履行と認められる場合は寄付とは認められず、禁止されていないものとされます。 なお、会費制の実体をともなわない会合に会費としての名目で支払った場合は寄付に当たります。 ※下線部は寄附に該当する事例です。 <「寄附」に当たらないとされた行政実例> ○香典返しの提供と寄附 (平成2年 12 月 27 日 質疑集) 問 当該地域において香典返しが社会慣習上 定着した一種の義務的な性格をもったもの となっている場合、もらった香典に対して返 戻の程度(香典の半額程度)の香典返しをす ることは、公職選挙法第 179 条にいう寄付に 当たらないと解するがどうか。 答 お見込みのとおり。(※該当しない)

(7)

寄附の禁止

公職の候補者等は、選挙に関すると否かにかかわらず、特定の場合(公職選挙法第 199 条の2第1項ただし書)を除き、選挙区内にある者に対してする寄附は全面的に禁止さ れています。 第2部でも述べたように、寄附とは財産上の利益の供与を指すものであり、中元や 歳暮ばかりでなく、知人等への祝儀や餞別、福祉施設への寄附に至るまで禁止され、 罰則の対象となる厳しい規制となっています。 このような規制が設けられた趣旨は、さまざまな機会に、各種の名目でなされる寄 附が、候補者の地盤培養行為に結びつき、選挙に金のかかる大きな要因となっている ほか、寄附行為自体が買収と結びつきやすく、その弊害が指摘されてきたことを鑑み、 公職にある者又は公職に就こうとする者は、すべてにわたって身辺を清潔にし、きれ いな選挙、金のかからない選挙を実現しようという目的によるものです。 公職の候補者等は、当該選挙区内にある者に対し、特定の場合(第1項ただし書) を除き、いかなる名義をもってするを問わず寄附をすることはできません。 また、何人も、特定の場合(第3項ただし書)を除き、公職の候補者等に対して、 当該選挙区内にある者に対する寄附を勧誘し、又は要求してはなりません。 (1) 公職の候補者等が行う寄附の禁止(第 1 項) ○公職選挙法 (公職の候補者等の寄附の禁止) 第 199 条の2 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下 この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行 われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問 わず、寄附をしてはならない。ただし、政党その他の政治団体若しくはその支部又は当該公職 の候補者等の親族に対してする場合及び当該公職の候補者等が専ら政治上の主義又は施策を 普及するために行う講習会その他の政治教育のための集会(参加者に対して 饗きょう応接待(通常 用いられる程度の食事の提供を除く。)が行われるようなもの、当該選挙区外において行われ るもの及び第 199 条の5第4項各号の区分による当該選挙ごとに当該各号に定める期間内に 行われるものを除く。以下この条において同じ。)に関し必要やむを得ない実費の補償(食事 についての実費の補償を除く。以下この条において同じ。)としてする場合は、この限りでな い。 ア 「公職の候補者等」とは 公職選挙法が適用される衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員 及び長の職の候補者や候補者となろうとする者、現に前記の職にある者とされていま す。 また、「候補者となろうとする者」は、これから立候補しようとする意思を有する 者のほか、本人の行動、マスコミの報道、政党による公認等から客観的に立候補の意 思を有していると認められるものも含まれると解されています。(大塚康男. 「議会人が知っ ておきたい危機管理術 改訂版」.ぎょうせい.49 頁参照)

1 公職の候補者等の寄附の禁止

(公職選挙法第 199 条の2)

(8)

イ 「選挙区内にある者」とは 選挙権、被選挙権の有無に関わらず、当該選挙区内に住所を有するか、あるいは当 該選挙区内に住所を有しないものの、寄附を受ける際に、一時的に当該選挙区内に滞 在しているものも含まれるとされています。 また、自然人だけでなく、会社などの法人や同好会、クラブなど法人格なき社団そ の他の団体も含まれます。この法人等の場合、主たる事務所が当該選挙区内にある場 合はもちろん、従たる事務所や支部の類が当該選挙区内にある場合にも「選挙区内に ある者」に含まれます。(三好規正. 「最新 事例解説 すぐわかる選挙運動[第三版]」.イマジン出版 85 頁参照)

<コラム①>選挙区と寄附の関係

選挙区のない参議院比例代表選出議員の候補者等に係る、ふるさと納税の可否に ついて、国会(第 189 回国会)において次のような質問及び答弁がなされています。 ○ふるさと納税に関する質問主意書(平成 27 年2月 12 日 質問第 23 号) 公職の候補者等は、公職選挙法第 199 条の2により選挙区内あるいは選挙の行われる区域内 にある者に対するいかなる寄附も禁止されているところ、全都道府県の区域を通じて選挙する 参議院比例代表選出議員の候補者等は、いかなる地方公共団体に対してもふるさと納税を行う ことができないということになるのか。他方、その他の国会議員選挙の候補者等が、自身の選 挙区に属さない地方公共団体に対してふるさと納税を行うことは可能であるのか。 →ふるさと納税に関する質問に対する答弁書(平成 27 年2月 20 日 内閣参質 189 第 23 号 内閣総 理大臣) 公職選挙法(昭和 25 年法律第 100 号)第 199 条の2第1項において、公職の候補者又は公 職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下「公職の候補者等」という。)は、 当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域)内にある者に対し、同項ただし書に規 定する場合を除き、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならないこととされて おり、同項の規定により禁止される寄附の相手方には、地方団体も含まれる。 参議院(比例代表選出)議員の選挙には選挙区がないため、当該選挙の公職の候補者等は、 全国の地方団体に対し寄附を行うことが禁止される。 他方、衆議院議員の選挙又は参議院(選挙区選出)議員の選挙の公職の候補者等が当該選 挙区の区域外の地方団体に対し寄附を行うことは禁止されない。 このように、参議院比例代表選出議員の候補者等は、全国どこの自治体にも寄附 ができないとされています。 また、赤い羽根共同募金については、以下のような文献もあります。 主たる事務所が選挙区内にあればもちろん、従たる事務所や支部の類が選挙区内 にある場合にも「選挙区内にある者」に含まれる。赤い羽根共同募金会のように都 道府県単位で募金活動を行うものについては自己の選挙区外での募金であっても 「選挙区内にある者」にあたるため、候補者等は県内全ての市町村で募金に応じる ことは禁止される。(三好規正. 「最新 事例解説 すぐわかる選挙運動[第三版]」.イマジン出版.85 頁参照)

(9)

ウ 「いかなる名義もってするを問わず」とは どのような理由をもってするを問わずという意味であり、公職の候補者等の行う寄 附であれば経済活動として行うものであっても、また、宗教活動として行うものであ ってもすべて本条に違反するとされています。(安田充、荒川敦.「逐条解説 公職選挙法 下」.ぎょう せい.1421 頁参照) エ 寄附の禁止の例外(第1項ただし書) 公職の候補者等の寄附の禁止の例外として、次の3つがあります。 ① 政党その他の政治団体又はその支部に対してする場合 ② 当該公職の候補者等の親族に対してする場合 ③ 専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会その他の政治教育のた めの集会に関し、必要やむを得ない実費の補償としてする場合 (ア) ①に関しては、その政党その他の政治団体又はその支部が、候補者等の後援団 体である場合は、後述の公職選挙法第 199 条の5第3項に抵触するため、留意す る必要があります。 (イ) ②の「親族」の範囲は、民法上の親族と同じもので、六親等内の血族、配偶者 及び三親等内の姻族とされています。 (ウ) ③の「集会」であっても次の場合には、寄附が認められません。 a 通常用いられる程度の食事の提供以外の供応接待が行われる場合 b 地方公共団体の議会の議員又は長にあっては、任期満了による選挙等の前の一 定期間に行われる集会の場合(公職選挙法第 199 条の5第4項に該当) (大塚康男. 「議会人が知っておきたい危機管理術 改訂版」.ぎょうせい.52 頁参照) また、「必要やむを得ない実費の補償」とは、参加者が政治教育のための集会に 参加するために最小限度必要である旅費、宿泊費等をいうものであるが、その金 額も社会通念上やむを得ないと認められる最小限度のものでなければならない とされています。 ※ 「政治集会」における実費の補償が禁止の例外となった背景には、公職の候補者等が純粋な 政治活動として常時から選挙人に対し政治上の主義又は施策を普及するための講習会その他 の政治教育のための集会を開催することは、それが純粋なものである限り選挙人の政治意識を 向上させるためにも望ましいことであり、必要やむを得ない実費に相当する額を補償すること まで禁止にすべきでないという考えによるものです。(安田充、荒川敦.「逐条解説 公職選挙法 下」. ぎょうせい.1422 頁参照) ※ 「実費の補償」については、金銭による実費の弁償だけでなく、現物支給も含まれるものと 解されています。 なお、「必要やむを得ない実費の補償」の具体例としては、選挙区内の過疎地 で交通不便な場所において行う政治講習会に関し、候補者等がバスをチャーター してその参加者を会場まで運ぶことや、湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度 の茶菓を選挙区内にある者に対して提供することが想定され、食事の実費補償は 含まれないとされています。(三好規正. 「最新 事例解説 すぐわかる選挙運動[第三版]」.イマジン出 版.84 頁参照)

(10)

<公職の候補者等が行う寄附に関する行政実例> ・禁止事由に該当するとされた実例 ○会費制でない出版祝賀会における実費相 当額の支払(平成2年1月 31 日 質疑集) 問 会費制でない出版祝賀会に候補者等が招待さ れた場合において、提供される料理代等に見合う 実費程度の金銭を相手方(親族でない選挙区内に ある者)に出すことは、差し支えないか。 答 罰則をもって禁止される。 ○駅舎建設資金と寄附の禁止 (昭和 60 年5月 31 日 宮城県選管あて電話回答) 問 新幹線の駅舎建設時に、A町が負担する費用に 充てるため、A町で「新幹線駅舎建設資金を集め るための会」を町議会議員有志が組織し、議員は 毎月一定額をこの会に支払うことは差し支えな いか。 答 法第 199 条の2に違反する。 ○町議会議員が花火大会を主催することの 可否(昭和 60 年8月7日 石川県選管あて電話回答) 問 町議会議員が選挙区内で花火大会を主催し、住 民に花火を見せることは差し支えないか。 答 法第 199 条の2に違反する。 また、時期、態様によっては法第 129 条、第 221 条に違反する場合もある。 ○給与の返上(昭和 50 年 11 月 20 日 質疑集) 問 市長や市議会議員が支給された給与のうちの 一定部分を返還することはどうか。また、具体的 に生ずる給与請求権の一定部分をあらかじめ放 棄することはどうか。 答 いずれも寄附に該当するものと解され る。したがって給与の辞退又は返上の問 題の処理については、その行為が直ちに 社会的公正に反するものとは言い切れな い場合もあろうが、そのような場合にお いても、条例を改正し、給与の暫定的な 減額措置をとることが相当であると思わ れる。 ○酒食の提供(昭和 50 年9月 19 日 質疑集) 問 候補者等は、正月に自宅に来た選挙区内にある 者に対し酒食を提供することはできないか。 ※親族に対してする場合を除く。 答 お見込みのとおり。(※できない) ○国又は地方公共団体に対する寄附 (昭和 50 年 11 月 20 日 質疑集) 問 市長が自己の財産を次の相手に対して寄附す ることは、法第 199 条の2に違反するか。 (1)当該市 (2)当該市を包括する県 (3)国 答 いずれもお見込のとおり。 (※違反する)

(11)

○他の候補者等への献金 (昭和 50 年9月 19 日 質疑集) 問 候補者等は、選挙区内の他の選挙の候補者等に 政治献金や選挙献金ができないか。 (注)親族に対してする場合を除く。 問 お見込みのとおり。(※できない) ○日赤の社費(平成2年3月 20 日兵庫県選管あて電話回答) 問 日本赤十字社に対して社費(年額 500 円以上) を公職の候補者が払うことは寄附にあたるか。 答 社員になるための必要最低限の社費 (年額 500 円)を納付することは寄附に はあたらないが、当該金額を超えて納付 する場合には寄附にあたる。

(12)

・禁止事由には該当しないとされた実例 ○葬儀の際のお布施 (昭和 50 年 11 月 20 日 質疑集) 問 候補者等が葬儀の際に神官、僧侶等に、いわゆる お布施を出すことは寄附に当たるか。 答 役務の提供に対する債務の履行と認めら れる限り寄附には当たらない。 ○色紙の贈呈等(昭和 50 年 11 月 20 日 質疑集) 問 1 候補者等が選挙区内にある者に対し色紙を贈る ことは寄附の禁止に該当するか。 2 選挙区内にある者から差し出された色紙に候補 者等はサインをすることができるか。 3 候補者等が購入した色紙について実費をもらい、 これにサインをして選挙区内にある者に渡すこと はどうか。 答 1 お見込のとおり。(※該当する) ※1は寄附に該当する事例 2 一般には、差し出された色紙にサインを することは、寄附には当たらない。 3 相手方が色紙代を払って色紙を購入し、 それにサインを求める場合は、2と同様と 考える。 ○湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度 の菓子(平成2年 1 月 26 日 質疑集) 問 事務所開きにおいてお茶及びお茶うけの提供は できるか。 答 通常用いられる程度のものなら差し支え ない。 公職選挙法第 199 条の2違反の罪が成立するには、寄附を受ける側に、寄附を行 った主体が、公職の候補者等であったことを認識している必要があるか否かが争わ れた事例があります(最高裁平成9年4月7日)。 最高裁の判断 公職選挙法第 199 条の2第1項、第 249 条の2第1項の罪が成立するためには、 寄附を受ける者において、当該寄附が公職の候補者等により行われたことや当該選 挙に関して行われたことの認識は必要としないと解すべき。 (2) 公職の候補者等を寄附の名義人とする寄附の禁止(第2項) ○公職選挙法 第 199 条の2 2 公職の候補者等を寄附の名義人とする当該選挙区内にある者に対する寄附につ いては、当該公職の候補者等以外の者は、いかなる名義をもつてするを問わず、 これをしてはならない。ただし、当該公職の候補者等の親族に対してする場合及 び当該公職の候補者等が専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会 その他の政治教育のための集会に関し必要やむを得ない実費の補償としてする場 合は、この限りでない。

<コラム②>寄附を受ける側の認識

(13)

公職の候補者等以外の者が行う当該公職の候補者等を寄附の名義人とする当該選 挙区内にある者に対する寄附は、特定の場合を除き、いかなる名義をもってするを問 わず、罰則をもって禁止されています。 これは、公職の候補者等以外の者があたかも公職の候補者等が寄附をしているかの ように相手方に認知させて寄附することが考えられるので、公職の候補者等の寄附禁 止の脱法的な形態である寄附を禁止することとしたものです。(選挙制度研究会編.「実務と研修 のためのわかりやすい公職選挙法(第14次改訂版)」.ぎょうせい.249 頁参照) 例えば、候補者等の秘書や配偶者などが、候補者等の氏名を記載したのし紙を付し た祝儀を供与することや「○○議員からです」といって贈答品を贈ることが該当する と解されています。(大塚康男. 「議会人が知っておきたい危機管理術 改訂版」.ぎょうせい.53 頁参照) 前述のとおり、公職選挙法第 199 条の2第2項では、公職の候補者等以外の者が、 公職の候補者等を寄附の名義人としてする寄附を禁止しています。 では、公職の候補者等が匿名や他人名義で寄附を行うと、どうなるのでしょうか? このことについては、次のような行政実例があります。 ○匿名又は他人名義の寄附 (昭和 50 年 11 月 20 日 質疑集) 問 候補者等が選挙区内にある者に対して匿名で 寄附をすることはどうか。また、配偶者や秘書 などの名義で寄附することはどうか。 答 匿名であっても他人名義であっても実質 上候補者等が寄附をするものである限り、 法(公職選挙法)第 199 条の2の違反とな る。 (3) 寄附の勧誘や要求の禁止(第3項及び第4項) ○公職選挙法 第 199 条の2 3 何人も、公職の候補者等に対して、当該選挙区内にある者に対する寄附を勧誘 し、又は要求してはならない。ただし、政党その他の政治団体若しくはその支部 又は当該公職の候補者等の親族に対する寄附を勧誘し、又は要求する場合及び当 該公職の候補者等が専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会その 他の政治教育のための集会に関し必要やむを得ない実費の補償としてする寄附を 勧誘し、又は要求する場合は、この限りでない。 4 何人も、公職の候補者等を寄附の名義人とする当該選挙区内にある者に対する 寄附については、当該公職の候補者等以外の者に対して、これを勧誘し、又は要 求してはならない。ただし、当該公職の候補者等の親族に対する寄附を勧誘し、 又は要求する場合及び当該公職の候補者等が専ら政治上の主義又は施策を普及す るために行う講習会その他の政治教育のための集会に関し必要やむを得ない実費 の補償としてする寄附を勧誘し、又は要求する場合は、この限りでない。

<コラム③>匿名の寄附

(14)

公職の候補者等については、前掲の1(1)及び(2)のように、一定の例外を除き、厳 しい禁止規定が設けられていますが、寄附の禁止の趣旨を一層徹底させるためには、 寄附の勧誘や要求も禁止する必要があり、公職選挙法第 199 条の2第3項及び第4項 でこれらの行為について、一部の例外を除き、禁止規定を設けています。 なお、候補者等に対して「威迫」により寄附の勧誘又は要求を行うことや、候補者 等の当選又は被選挙権を失わせる目的のために勧誘や要求を行うことは、公職選挙法 第 249 条の2第5項及び第6項において罰則の対象とされています。 ※「威迫」とは、相手方に不安の念を抱かせるに足る行為をすることであり、相手方の意思を制圧するに足る 程度に至る必要はないとされています。(三好規正. 「最新 事例解説 すぐわかる選挙運動[第三版]」.イ マジン出版.88 頁参照) ○公職選挙法 (公職の候補者等の関係会社等の寄附の禁止) 第 199 条の3 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を 含む。)がその役職員又は構成員である会社その他の法人又は団体は、当該選挙区 (選挙区がないときは選挙の行われる区域)内にある者に対し、いかなる名義を もつてするを問わず、これらの者の氏名を表示し又はこれらの者の氏名が類推さ れるような方法で寄附をしてはならない。ただし、政党その他の政治団体又はそ の支部に対し寄附をする場合は、この限りでない。 本条は、公職の候補者等が属する会社その他の団体が、当該選挙区内にある者に対 して、候補者等の氏名を表示し又はその氏名が類推されるような方法で寄附をするこ とは、寄附を受ける立場から見れば、候補者等が行う寄附と変わらないため、会社そ の他の団体の広告・宣伝その他いかなる理由であっても、これらの寄附を禁止したも のです。 ア 「会社その他の法人又は団体」とは 本条の規定する「会社その他の法人又は団体」には、地方公共団体は含まれないと 解されています。 地方公共団体は、「その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をするこ とができる」(地方自治法第 232 条の2)こととなっており、また、地域住民の福祉 の増進を目的として行われる地方公共団体の経費の支出については、それが憲法及び それに基づく法律の規定に従った手続により行われるものである以上、そもそも本条 で「法人又は団体」の行為として違法の判断の対象とするのは適当ではなく、むしろ 地方公共団体の行う寄附が「公益上必要である場合において」行われているかどうか について、地方自治法上の問題として判断されるべきと解されています。(安田充、荒川敦. 「逐条解説 公職選挙法 下」.ぎょうせい.1429 頁参照) しかしながら、仮に市が公費を用いて市内にある者に寄附をした場合(記念品贈呈 や葬儀における花輪の掲出など)において「○○市長□□」と表示することは、□□ 市長自身が行った寄附(199条の2により禁止)と誤解される恐れがあるため、この ような場合「○○市」とのみ表示することが望ましいとされています。(三好規正. 「最新 事例解説 すぐわかる選挙運動[第三版]」.イマジン出版.95頁参照)

2 公職の候補者等の関係会社等の寄附の禁止

(公職選挙法第 199 条の3)

(15)

イ 「氏名が類推されるような方法」とは 直接公職の候補者等の氏名の表示がなくても、その会社その他の法人又は団体名を 記載することによってその氏名が類推されるような場合に、その会社名等を記載する ことをいいます。 例えば候補者「甲山乙夫」が代表取締役社長である会社の社名が「甲山商事株式会 社」であるとした場合に、この社名を表示して寄附をした場合は、「これらの者の氏 名が類推されるような方法」によって寄附をしたことになると解されています。(安田 充、荒川敦.「逐条解説 公職選挙法 下」.ぎょうせい.1429頁参照) <行政実例> ○表彰状の授与と記念品の贈呈 (昭和 50 年 11 月 20 日 質疑集) 問 候補者等が会長である団体が候補者等の氏名を 表示した表彰状を授与することは法第 199 条の3 に違反しないと解するがどうか。また、記念品やカ ップを贈ることはどうか。 答 前段 お見込みのとおり(※違反しない) 後段 法第 199 条の3に違反する。 なお、候補者等の氏名等を表示しない で記念品やカップを贈ることは法第 199 条の3の違反にはならない。 議員有志による寄附については、以下のような解説があります。 兵庫県加西市選挙管理員会事務局のホームページ 「政治家の寄附禁止 Q&A」から引用 ○公職選挙法 (公職の候補者等の氏名等を冠した団体の寄附の禁止) 第 199 条の4 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を 含む。)の氏名が表示され又はその氏名が類推されるような名称が表示されている 会社その他の法人又は団体は、当該選挙に関し、当該選挙区(選挙区がないとき は選挙の行われる区域)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、 寄附をしてはならない。ただし、政党その他の政治団体若しくはその支部又は当 該公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。) に対し寄附をする場合は、この限りでない。

3 公職の候補者等の氏名等を冠した団体の寄附の禁止

(公職選挙法第 199 条の4)

<コラム④>公職にある者の「有志一同」による寄附の可否

Q 地元の高等学校野球部が全国大会に出場 することになり、市議会議員有志で激励金を出 し合い、「市議会」名義で渡すことはできるか? A 名義上「市議会」となっていても実質的に 個々の議員からの寄附である場合は、罰則(50 万円以下の罰金)をもって禁止される。

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前条においては、公職の候補者等の氏名を表示したり、又はこれらの者の氏名が類 推されるようにしたりして寄附をすることを禁止するという、寄附の方法について規 制をかけているのに対し、本条においては、公職の候補者又は公職になろうとする者 (公職にある者も含まれます)の氏名が表示され又はその氏名が類推されるような名 称が表示されている会社その他の法人又は団体は、選挙にかかる寄附をしてはならな いとし、寄附の主体に規制をかけています。※ 公職選挙法第 199 条の2及び第 199 条の3が、選挙に 関するか否かを問わないのに対し、本条においては、「当該選挙に関し」寄附することのみが禁止されている点に留意が必要で す。 ア 「その氏名が類推されるような名称が表示されている会社その他の法人又は団体」とは 例えば、「甲山一郎」という議員がいて、その後援団体に「甲一会」という名称 の団体があるとすれば、これに該当するものと解されています。(大塚康男. 「議会人が知っ ておきたい危機管理術 改訂版」.ぎょうせい.54頁参照) イ 除外規定 上記の団体が、政党その他の政治団体若しくはその支部又は当該公職の候補者等に 対して寄附をすることは、本条では認められています。 公職選挙法では、ほかにも寄附に関し禁止規定を設けています。 (1) 特定の寄附の禁止(第 199 条) 国又は地方公共団体と請負その他特別の利益を伴う契約関係にある者及び 国又は地方公共団体が交付する利子補給金に係る融資を受けている会社その他 の法人がそれぞれの選挙に関し寄附することを禁止しています。(安田充、荒川敦.「逐 条解説 公職選挙法 下」.ぎょうせい.1414頁参照) (2) 後援団体に関する寄附等の禁止(第 199 条の5) ① 後援団体が花輪、供花、香典、祝儀その他これらに類するものを出したり、 後援団体の設立目的により行う行事や事業に関する寄付以外の寄付をするこ とはその時期のいかんを問わず罰則をもって禁止されています。 ただし、設立目的により行う行事・事業に関する寄付であっても選挙期日 前の一定期間は罰則をもって禁止されています。 そして、「選挙期日前の一定期間」とは、a.任期満了の目前 90 日に当たる 日から選挙の期日まで、b.任期満了による選挙以外の選挙は、解散の日の翌 日又は選挙事由の告示日の翌日から選挙期日までをいいます。 ② また、何人も後援団体の総会その他の集会又は後援団体が行う見学、旅行 その他の行事において、上記の一定間期中、その選挙区内にある者に対し、 饗応接待(通常用いられる程度の食事の提供は除きます。)をし、又は金銭若 しくは記念品その他の物品を供与することは禁止されています(第2項)。 さらに、公職の候補者等が、上記の一定期間中、自分の後援団体に対して 寄付することも罰則をもって禁止されています(第3項)。(大塚康男. 「議会人が知っ ておきたい危機管理術 改訂版」.ぎょうせい.54 頁参照)

4 その他の寄附に関する規定

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参考

政治資金規正法による寄附の禁止

政治資金規正法においても、寄附について様々な規制を設けていますが、公職の 候補者等に関連する部分について、ご紹介します。 (公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止) 第 21 条の2 何人も、公職の候補者の政治活動(選挙運動を除く。)に関して寄附 (金銭等によるものに限るものとし、政治団体に対するものを除く。)をしては ならない。 2 前項の規定は、政党がする寄附については、適用しない。 本条は、公職の候補者の政治活動に関する寄附のうち金銭等によるものの禁止に ついて定めているものです。 公職の候補者の政治活動に関する寄附については、昭和 55 年の政治資金規正法の 改正により、公職の候補者の政治資金と私的経済との峻別の見地から、指定団体・ 保有金制度が定められたところですが、政治と金をめぐる問題を契機として、公職 の候補者個人の政治資金に関して公私混同が指摘され、そのあり方の検討が求めら れ、平成6年の政治資金規正法改正により、公職の候補者の公私の峻別の徹底を制 度的に担保するため、公職の候補者の政治活動に関する寄附で金銭等によるものに ついては、選挙運動に関するもの、政治団体に対するもの及び政党の行うものを除 き、これを禁止することとされました。(政治資金制度研究会.「逐条解説 政治資金規正法(第2 次改訂版)」.ぎょうせい.176 頁) なお、政治資金規正法第 21 条第1項により、会社、労働組合、職員団体その他の 団体は、政党及び政治資金団体以外の者に対しては、政治活動に関する寄附をする ことはできません。 したがって、これらの者が公職の候補者に対して政治活動に関して寄附すること は一切できません。

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罰則規定

前章のとおり、公職選挙法では、公職の候補者等の寄附に関して様々な制限を設け ており、これらの規定に反する場合は、一部の例外を除き、罰則の対象としています。 (1) 公職の候補者等の寄附の禁止違反(第1項から第3項まで) ○公職選挙法 (公職の候補者等の寄附の制限違反) 第 249 条の2 第 199 条の2第1項の規定に違反して当該選挙に関し寄附をした者 は、1年以下の禁 錮こ 又は 30 万円以下の罰金に処する。 2 通常一般の社交の程度を超えて第 199 条の2第1項の規定に違反して寄附をし た者は、当該選挙に関して同項の規定に違反したものとみなす。 3 第 199 条の2第1項の規定に違反して寄附(当該選挙に関しないもので、かつ、 通常一般の社交の程度を超えないものに限る。)をした者で、次の各号に掲げる寄 附以外の寄附をしたものは、50 万円以下の罰金に処する。 (1) 当該公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。 以下この条において「公職の候補者等」という。)が結婚披露宴に自ら出席しその 場においてする当該結婚に関する祝儀の供与 (2) 当該公職の候補者等が葬式(告別式を含む。以下この号において同じ。)に自ら 出席しその場においてする香典(これに類する弔意を表すために供与する金銭を 含む。以下この号において同じ。)の供与又は当該公職の候補者等が葬式の日(葬 式が2回以上行われる場合にあつては、最初に行われる葬式の日)までの間に自 ら弔問しその場においてする香典の供与 ア 選挙に関する寄附の禁止違反(第1項) 公職の候補者等が第 199 条の2第1項の規定に違反して、当該選挙に関し、当該選 挙区内にある者に対し寄附をすることにより本罪が成立するものです。 罪となる行為の主体には、 公職の候補者のみならず、 公職の候補者となろうとす る者、また現に公職にある者も含まれ、これらの者が当該選挙に関してする寄附は、 すべて本項により処罰され、1年以下の禁錮又は 30 万円以下の罰金に処せられます。 なお、本項の罪は、重大な過失により罪を犯したときも科せられ、また、禁錮と罰 金とを併科することができるものとされています(公職選挙法第 250 条)。 <行政実例> ○「当該選挙に関し」の意義 (昭和 30 年1月 質疑集) 問 「当該選挙に関し」の意義如何 答 (1) 現に公職にある者に関しては次回に行われ るべき当該公職の選挙をいう。従ってその選挙 が特定されていることを要しない。 (2) 候補者又は候補者となろうとする者につい ては選挙が特定されていることを必要とする。

1 公職の候補者等の寄附の制限違反

(公職選挙法第 249 条の2)

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イ 通常一般の社交の程度を超える寄附の禁止違反(第2項) 公職の候補者等が通常一般の社交の程度を超えて第 199 条の2第1項の規定に違 反して寄附をした場合については、当該選挙に関して同項の規定に違反して寄附をし たものとみなされ、第 249 条の2第1項と同じ罰則が科されます。 「通常一般の社交の程度」とは、その寄附の金額、 相手方、 交際の状況等により、 社会通念上社交の程度と思われる程度をいうもので、判例においても、「社会通念上、 通常されるであろう程度」としています。したがって、例えば、平素は何らの交際も なく、特に格別のことをすべき相手方でもないにもかかわらず、選挙間近になってか ら、特別に祝金を贈ったり、香典を贈ったりする場合、また、通常は千円程度の寄附 をすれば足りるような場合であるにもかかわらず、1万円を寄附したような場合は、 通常一般の社交の程度を超えるものと考えられています。(安田充、荒川敦.「逐条解説 公職選挙 法 下」.ぎょうせい.1930頁参照) <裁判例①>「通常一般の社交の程度を超えて」の意義 【最高裁判所】平成5年 11 月 15 日判決(福島県石川町の事例) 事案 裁判所の判断 現職の町長が町議会議員選挙の立候補 予定者らに陣中見舞として現金 30 万円を 贈ったことが、公職選挙法第 249 条の2 第2項に規定する「通常一般の社交の程 度を超えて寄附をした者」に当たるかが 争われた事例 公職選挙法 249 条の2第2項にいう「通 常一般の社交の程度を超えて…寄附をし た者」とは、その寄附にかかる財産上の 利益の種類及び価額、寄附の趣旨、相手 方との交際の状況等に照らし、社会通念 上、通常されるであろう程度を超えて寄 附をした者をいうと解するのが相当 ※本件については「通常一般の社交の程度」を超えたと判断 されました。 ウ ア及びイ以外の禁止違反(第3項) 選挙に関しない場合で、かつ、通常一般の社交の程度を超えない場合についても、 一部の例外を除き、50 万円以下の罰金に処されます。 この規定の背景には、公職の候補者等の選挙区内にある者に対してする寄附につい ては、昭和 50 年の公職選挙法改正により、選挙に関すると否とを問わずできないこ ととされたものの、罰則については、例えば平素親交のある者の冠婚葬祭、近所づき あい等公職の候補者等が社会生活を営むうえに必要不可欠な寄附についてまでも罰 則をもって担保すべき可罰性は認められないとして、従前どおり、当該選挙に関して 寄附をした場合又は通常一般の社交の程度を超えて寄附をした場合に限って罰則を 科すこととしていました。 しかしながら、「実際において寄附禁止がなかなか実現しなかった」、「いわゆる地 盤培養行為に大変多額のお金を要する」との指摘がなされ、金のかからない政治の実 現と選挙の公正を確保するという観点から、平成元年の法改正において昭和50年の法 改正により禁止された寄附をした者については、一部の例外を除き、罰則が科される こととなったとされています。(安田充、荒川敦.「逐条解説 公職選挙法 下」.ぎょうせい.1931頁参照)

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○ 第3項の除外規定について 第 249 条の2第3項では、以下のような寄附の場合には、罰則の対象としないこと としています。 (ア) 公職の候補者等が結婚披露宴に自ら出席しその場においてする当該結婚に関 する祝儀の供与 (イ) 公職の候補者等が葬式(告別式を含む。(ウ)において同じ。)に自ら出席しその 場においてする香典(これに類する弔意を表すために供与する金銭を含む。(ウ) において同じ。)の供与 (ウ) 公職の候補者等が葬式の日(葬式が2回以上行われる場合にあっては、最初 に行われる葬式の日)までの間に自ら弔問しその場においてする香典の供与 これらの寄附については、例えば、結婚披露宴に出席して祝儀を出さないことは心 理的な抵抗感が強く、また、これらの例外を設けても公職の候補者等本人が出席する 場合に限定されているので金のかかるという弊害が少ないことが考慮されたものと 考えられています。 なお、これらの祝儀や香典が選挙に関するものである場合又は通常一般の社交の程 度を超える場合には従前どおり罰則の対象となります。 「公職の候補者等が自ら出席し」とは、逆にいえば、公職の候補者等の秘書や親族 が代わりに出席してする祝儀の供与については罰則の対象とするということを意味 するものとされています。 「その場において」とは、事前又は事後に祝儀を供与することを罰則の対象とする ことを意味するとされ、したがって、結婚披露宴に出席することが確実な場合であっ ても、事前に祝儀を届けることは罰則の対象となりますし、また、事前に祝儀を届け ておいて結婚披露宴に出席しても可罰性がなくなるものではないと解されています。 (安田充、荒川敦.「逐条解説 公職選挙法 下」.ぎょうせい.1932頁参照) <行政実例> ○事前に祝儀や香典を届けること (平成2年1月 31 日 質疑集) 問 候補者等が出席を予定している結婚披露宴 や葬式に係る祝儀や香典を事前に相手方(親 族でない選挙区内にある者)に届けることは どうか。 答 罰則をもって禁止される。 「香典」については、一定の条件のもと供与が認められていますが、「供花」・「花 輪」については、以下のような行政実例があります。 ○葬式の際の供花、花輪 (平成2年1月 31 日 質疑集) 問 候補者等が葬式の際、供花・花輪を親族で ない選挙区内にある者に対して出すことはど うか。 答 罰則をもって禁止される。

(21)

また、「祝儀」については、次のように解されています。 ○「祝儀」の範囲(平成2年1月 31 日 質疑集) 問 「祝儀」は金銭に限らず、品物も含むと解 してよいか。 答 お見込のとおり。(※金銭以外も含む)

<コラム⑤>香典について

祝儀については、金銭に限らないとする行政実例がありますが、「香典」について は、次のように解されています。 「香典」については、祝儀と異なり「香に代わる金銭」と解されることから、金 銭に限られるものであるので、たとえ、公職の候補者等が葬式に出席していたとし ても供花や花輪あるいは線香を出すことは罰則の対象となるものと解される。 なお、香典には「(これに類する弔意を表すために供与する金銭を含む。)」とい う括弧書が法文上も付されていることから、仏式でいう「御供花料、御供物料」、 神式でいう「御神前、御玉串料」、キリスト教式にいう「御花料、御花輪料」など の表書きで、金銭を供与することは香典の供与にあたるものと解される。 (安田充、荒川敦.「逐条解説 公職選挙法 下」.ぎょうせい.1933 頁参照) <裁判例②> ○ 公職選挙法違反となった事例 【最高裁判所 平成 12 年 11 月 20 日判決】(千葉県御宿町の事例) 事案 裁判所の判断 被告人が、町長選挙への立候補を決意して 助役を退職した際、同町職員で構成される親 睦団体からせん別金 19 万円、同町から報奨 金 20 万円を贈呈されたことから、在職中世 話になったことに対する謝礼等の趣旨で、退 職後間もない時期に、同町職員 92 名に対し、 手交し又は郵送するなどの方法により、ビー ル券各5枚(時価 3,670 円相当)を供与した という公職選挙法違反の事案 被告人は、右供与につき、公職の候補者と なろうとする者が、選挙区内にある者に対 し、当該選挙に関せず、かつ、通常一般の社 交の程度を超えない寄附をしたことに当た るとして、同法 199 条の2第1項、249 条の 2第3項の寄附の制限違反の罪により起訴 された事案 本件寄附が右せん別金等を受けたことに 対する返礼等の趣旨の下にその合計金額の 範囲内でされたものであり、かつ、右返礼等 をすることが同町役場において慣行化して いたというが、これらの事情は右の罪の成立 を妨げるものではないから、これと同旨の原 判決の判断は、正当である。 ※原判決は、町職員らに対してビール券を寄 附した行為が、公職選挙法199条の2第1項、 249条の2第3項の罪に当たるとしていま す。

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(2) 公職の候補者等を寄附の名義人とする寄附の禁止違反(第4項) 第 249 条の2 4 第 199 条の2第2項の規定に違反して寄附をした者(会社その他の法人又は団 体にあつては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)は、50 万円 以下の罰金に処する。 公職の候補者等を寄附の名義人とする寄附を行った場合には、本条の規定に基づき、 罰則が科されることになります。 なお、重大な過失により、本罪を犯した時も罰せられます。(公職選挙法第 250 条 第2項) (3) 公職の候補者等に対する寄附の勧誘又は要求の禁止違反(第5項及び第6項) 第 249 条の2 5 第 199 条の2第3項の規定に違反して、公職の候補者等を威迫して、寄附を勧 誘し又は要求した者は、1年以下の懲役若しくは禁 錮こ 又は 30 万円以下の罰金に 処する。 6 公職の候補者等の当選又は被選挙権を失わせる目的をもつて、第 199 条の2第 3項の規定に違反して第3項各号に掲げる寄附(当該選挙に関しないもので、か つ、通常一般の社交の程度を超えないものに限る。)以外の寄附を勧誘し又は要求 した者は、3年以下の懲役若しくは禁 錮こ 又は 50 万円以下の罰金に処する。 平成元年の公職選挙法改正により、当該公職の候補者等を威迫して寄附を勧誘し又 は要求した者及び当該公職の候補者等の当選又は被選挙権を失わせる目的をもって 寄附(公職の候補者等が寄附をしても刑罰を科せられない寄附を除く。)を勧誘し又 は要求した者に罰則が科せられることとなりました。 なお、公職の候補者等の当選又は被選挙権を失わせる目的をもってする寄附の勧 誘・要求行為は、いわば、相手を陥しいれるために、おとり的にするものであり、極 めて悪質であるため、法定刑も威迫して寄附を勧誘し又は要求する場合よりも重くな っています。(安田充、荒川敦.「逐条解説 公職選挙法 下」.ぎょうせい.1935 頁参照) (4) 公職の候補者等を寄附の名義人とする寄附の勧誘又は要求の禁止違反(第7項) 第 249 条の2 7 第 199 条の2第4項の規定に違反して、当該公職の候補者等以外の者(当該公 職の候補者等以外の者が会社その他の法人又は団体であるときは、その役職員又 は構成員)を威迫して、寄附を勧誘し又は要求した者は、1年以下の懲役若しく は禁 錮こ 又は 30 万円以下の罰金に処する。 平成元年の公職選挙法改正において、新たに、公職の候補者等を名義人とする寄附 をすることが禁止され、この禁止の趣旨を徹底するために、このような違法な寄附に ついての勧誘又は要求行為を禁止することとしたものです。 具体的には、公職の候補者等の知人や親族等が、公職の候補者等が寄附の主体であ ると相手方に認知させて寄附をすることが禁止された訳ですので、この知人や親族等 に対してこのような寄附を勧誘し又は要求するケースが考えられます。

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こうした勧誘又は要求行為を禁止して、公職の候補者等を寄附の名義人とする寄附 禁止の趣旨を徹底することとしたものです。 しかし、罰則については、違法な寄附を勧誘し又は要求した者のすべてを処罰する ことは苛酷にすぎるということで、威迫して寄附を勧誘し又は要求した場合のみを罰 則の対象としたものと考えられています。(安田充、荒川敦.「逐条解説 公職選挙法 下」.ぎょうせい.1936 頁参照) (公職の候補者等の関係会社等の寄附の制限違反) 第 249 条の3 会社その他の法人又は団体が第 199 条の3の規定に違反して当該選 挙に関し寄附をしたときは、その会社その他の法人又は団体の役職員又は構成員 として当該違反行為をした者は、50 万円以下の罰金に処する。 本条の構成要件は、選挙に関し、公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者 (公職にある者を含む。)がその役職員又は構成員である会社その他の法人又は団体 が当該選挙区内にある者に対し「これらの者の氏名を表示し又はこれらの者の氏名が 類推されるような方法で寄附をする」ことにより成立します。 名目は会社等の名称で寄附をすることによって法第 249 条の2の罪を免れる行為 をしようとするものであり、たとえ表面は当該会社等の名称を冠するものであっても、 それに添えて公職の候補者等の氏名を表示し又は公職の候補者等の氏名が類推され るような方法で寄附をすることは禁止されているため、これが選挙に関し行われたと きは本罪が成立し、罰則が科されます。(安田充、荒川敦.「逐条解説 公職選挙法 下」.ぎょうせい.1938 頁参照) (公職の候補者等の氏名等を冠した団体の寄附の制限違反) 第 249 条の4 会社その他の法人又は団体が第 199 条の4の規定に違反して寄附を したときは、その会社その他の法人又は団体の役職員又は構成員として当該違反 行為をした者は、50 万円以下の罰金に処する。 本罪は、公職の候補者又は公職の候補者になろうとする者(公職にある者を含む。) の氏名が表示され又はその氏名が類推されるような名称が表示されている会社その 他の法人又は団体が、当該選挙に関し、当該選挙区内にある者に対し寄附をすること により成立します。 この罪も要するに公職の候補者等の寄附の禁止(公職選挙法第 199 条の2及び第 249 条の2)の脱法行為を禁止するものであるので、このような団体が政党その他の 政治団体やその支部又は氏名等を冠されている当該公職の候補者等に寄附をするこ とは禁止されず、本罪は成立しません。(安田充、荒川敦.「逐条解説 公職選挙法 下」.ぎょうせい.1939 頁参照)

2 公職の候補者等の関係会社等の寄附の制限違反

3 公職の候補者等の氏名等を冠した団体の寄附の制限違反

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前述の規定のほか、公職選挙法第 199 条(特定の寄附の禁止)の禁止規定に違反し た場合は第 248 条に、第 199 条の5(後援団体に関する寄附等の禁止)の禁止規定に 違反した場合は第 249 条の5で罰則が規定されています。 また、政治資金規正法による規定に違反した場合については、同様に、同法による 罰則規定があります。 (選挙犯罪による処刑者に対する選挙権及び被選挙権の停止) 第 252 条 この章に掲げる罪(第 236 条の2第2項、第 240 条、第 242 条、第 244 条、第 245 条、第 252 条の2、第 252 条の3及び第 253 条の罪を除く。)を犯し罰 金の刑に処せられた者は、その裁判が確定した日から5年間(刑の執行猶予の言 渡しを受けた者については、その裁判が確定した日から刑の執行を受けることが なくなるまでの間)、この法律に規定する選挙権及び被選挙権を有しない。 2 この章に掲げる罪(第 253 条の罪を除く。)を犯し禁 錮こ 以上の刑に処せられた 者は、その裁判が確定した日から刑の執行を終わるまでの間若しくは刑の時効に よる場合を除くほか刑の執行の免除を受けるまでの間及びその後5年間又はその 裁判が確定した日から刑の執行を受けることがなくなるまでの間、この法律に規 定する選挙権及び被選挙権を有しない。 本条は、一定の選挙犯罪を犯し、刑に処せられた者の選挙権及び被選挙権の停止、 いわゆる公民権の停止について規定したものです。 ・選挙権及び被選挙権を停止される期間 実刑の者 執行猶予の者 罰金刑 裁判確定の日から5年間 裁判確定の日から刑の執行を受ける ことがなくなるまでの間 禁錮以上の刑 裁判が確定した日から刑の 執行を終わるまでの間及び その後5年間 裁判確定の日から刑の執行を受ける ことがなくなるまでの間 (三好規正. 「最新 事例解説 すぐわかる選挙運動[第三版]」.イマジン出版.248頁参照)

4 その他寄附の制限違反

5 選挙権及び被選挙権の停止

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○公民権停止期間の短縮等 (第 252 条第4項) 第 252 条 4 裁判所は、情状により、刑の言渡しと同時に、第1項に規定する者(第 221 条 から第 223 条の2までの罪につき刑に処せられた者を除く。)に対し同項の5年間 若しくは刑の執行猶予中の期間について選挙権及び被選挙権を有しない旨の規定 を適用せず、若しくはその期間のうちこれを適用すべき期間を短縮する旨を宣告 し、第1項に規定する者で第 221 条から第 223 条の2までの罪につき刑に処せら れたもの及び第2項に規定する者に対し第1項若しくは第2項の5年間若しくは 刑の執行猶予の言渡しを受けた場合にあつてはその執行猶予中の期間のうち選挙 権及び被選挙権を有しない旨の規定を適用すべき期間を短縮する旨を宣告し、又 は前項に規定する者に対し同項の 10 年間の期間を短縮する旨を宣告することがで きる。 前述のとおり、選挙に関する罪を犯して刑に処せられた者は、一定期間選挙権及び 被選挙権を停止されますが、裁判所は、情状によって、刑の言い渡しと同時に選挙権 及び被選挙権を停止しない旨又は停止する期間を短縮する旨を宣告することができ ることとされています。(安田充、荒川敦.「逐条解説 公職選挙法 下」.ぎょうせい.1983頁参照) なお、同一人が複数の選挙犯罪を犯し、刑に処せられた場合には、本条の公民権停 止はそれぞれに適用され、その結果、そのような者に係る選挙権及び被選挙権の停止 期間は、最初の犯罪により公民権停止が開始した時から、複数の選挙犯罪に係る公民 権停止のうち最後に公民権停止が終了した時までということになります。(安田充、荒川敦. 「逐条解説 公職選挙法 下」.ぎょうせい.1984頁参照)

選挙犯罪により公民権を失った場合

被選挙権は、議員になるための要件であるとともに、議員としての身分を維持する ための要件でもあります。したがって、これを有しなくなった場合にはその職を失い ます(地方自治法第 127 条)。 ○地方自治法 (失職及び資格決定) 第 127 条 普通地方公共団体の議会の議員が被選挙権を有しない者であるとき又 は第 92 条の2(第 287 条の2第7項において準用する場合を含む。以下この項 において同じ。)の規定に該当するときは、その職を失う。その被選挙権の有無 又は第 92 条の2の規定に該当するかどうかは、議員が公職選挙法第 11 条 、第 11 条の2若しくは第 252 条又は政治資金規正法第 28 条の規定に該当するため被 選挙権を有しない場合を除くほか、議会がこれを決定する。この場合においては、 出席議員の3分の2以上の多数によりこれを決定しなければならない。 選挙犯罪のために選挙権及び被選挙権を停止されているものについては、議会での 認定手続を経ることなく、宣告あるいは判決の確定により直ちにその職を失います。 これは、裁判所による宣告や判決により客観的に事実が確定されていることから、 議会による認定手続は不要と考えられたものといえます。 (大塚康男. 「議会人が知っておきたい危機管理術 改訂版」.ぎょうせい.96 頁参照)

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<参考事例> 東京都府中市議の寄附行為による失職事例

【起訴に至る経緯】 東京都府中市議が平成 24 年5月から平成 26 年5月までの3年間、市内3自治 会が合同で行うこどもみこしの奉納名目で、各自治会に現金8万円の寄付を行っ ていたため、公職選挙法違反(寄附の禁止)で、立川簡易裁判所に起訴された。(公 職選挙法 199 条の2に違反) 【起訴後の経過】 ○平成 27 年8月7日 判決 判決の言い渡しが行われ「罰金 30 万、公民権停止3年」の有罪判決となった。 (公職選挙法 252 条第4項により、情状) 市議側は「違法性は認めるが、議員として奉納したわけでなく、公民権の停止 までは行き過ぎ」と主張し、控訴 ○平成 27 年 12 月9日 控訴棄却 東京高等裁判所は市議の控訴を棄却、市議側は上告を行った。 ○平成 28 年3月 28 日 失職 市議側が上告を取り下げたことにより判決が確定し、平成 28 年3月 28 日をも って失職した。(公職選挙法 252 条、地方自治法 127 条) 東京読売新聞から引用

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[参考資料]

◆ 書籍 ・『逐条解説 公職選挙法(下)』 (著:安田充、荒川敦 ぎょうせい) ・『わかりやすい公職選挙法〔第 14 次改訂版〕』(編:選挙制度研究会 ぎょうせい) ・『議会人が知っておきたい危機管理術 改訂版』 (著:大塚康男 ぎょうせい) ・『最新 事例解説 すぐわかる選挙運動[第三版]‐ケースでみる違反と罰則-』 (著:三好規正 イマジン) ・『選挙関係実例判例集 第 16 次改訂版』 (編:選挙制度研究会 ぎょうせい) ・『公職選挙法違反 判例集』 (編:国政情報センター出版局 国政情報センター) ・『逐条解説 政治資金規正法[第二次改訂版]』 (編: 政治 資 金 制度 研究 会 ぎ ょう せ い) ・『逐条 地方自治法 第8次改訂版』 (著:松本英昭 学陽書房) ・『地方財務実務提要』 (編:地方自治制度研究会 ぎょうせい) ・『質疑応答 議会運営実務提要』 (編:議会運営実務研究会 ぎょうせい) ◆ 参照ホームページ ・総務省「寄附の禁止」 http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo08.html ・横浜市選挙管理員会「寄附禁止」 http://www.city.yokohama.lg.jp/senkyo/akarui/kihu.html ・兵庫県加西市「政治家の寄附禁止 Q&A」 http://www.city.kasai.hyogo.jp/04sise/09senk/01senk18.htm

「法制レポート」は、「市会ジャーナル」の特別編として、議会活動

を法制面でも積極的にサポートすることを目的として、議会局政策調

査課(法制等担当)が編集・発行しているものです。

参照

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