2013
年
5
月
9
日
拓殖大学大学院教授 安保公人 1海洋技術フォーラム
シンポジウム
「新たな海洋基本計画:海洋産業の振興と創出」
パ ネ ル 討 論
②
「海洋利用と開発へ向けた包括的法整備について」資料
海洋の安全
海洋の安全
海洋の安全
海洋の安全保障
保障
保障および権益保全
保障
および権益保全
および権益保全の
および権益保全
の
の観点
の
観点
観点
観点
(領域主権の保全を除く)海洋の安全保障・権益保全に関する海洋基本計画の重要ポイント
○ 国際協調と国際社会への貢献 ・ ・ ・ ・ 国連憲章、国連海洋法条約等の関連国際法規を遵守国連憲章、国連海洋法条約等の関連国際法規を遵守国連憲章、国連海洋法条約等の関連国際法規を遵守国連憲章、国連海洋法条約等の関連国際法規を遵守(p.1) ➩➩➩➩ 大前提大前提大前提大前提 ○ 海洋の開発・利用による富と繁栄 ・ 海洋資源の開発等を進め・・・海洋産業の振興と創出や国際展開を図る(p.2) ○ 「海に守られた国」から「海を守る国」へ ・安全で、効率的かつ安定的な海上輸送ルートを確保する安全で、効率的かつ安定的な海上輸送ルートを確保する安全で、効率的かつ安定的な海上輸送ルートを確保する安全で、効率的かつ安定的な海上輸送ルートを確保する ・排他的経済水域等を守り抜く排他的経済水域等を守り抜く排他的経済水域等を守り抜く排他的経済水域等を守り抜く これにより・・・国民生活や経済活動の維持・発展に大きく寄与する(p.2)。 ○ 海洋権益保全等をめぐる国際情勢の変化 ・ 近隣諸外国の海洋安全保障や海洋権益をめぐる主張や活動が近隣諸外国の海洋安全保障や海洋権益をめぐる主張や活動が近隣諸外国の海洋安全保障や海洋権益をめぐる主張や活動が近隣諸外国の海洋安全保障や海洋権益をめぐる主張や活動が 活発化活発化活発化活発化しており、 ・・・わが国の同意を得ない外国船舶による海洋調査等の事案も発生・・・、 シーレーンの安全の確保の観点からの取組みの促進が必要 シーレーンの安全の確保の観点からの取組みの促進が必要 シーレーンの安全の確保の観点からの取組みの促進が必要 シーレーンの安全の確保の観点からの取組みの促進が必要(p.5-6) ○ 排他的経済水域等の確保・保全 ・ 東シナ海等においては、・・・国際法に基づいた解決に向けて全力を尽くし、 排他的経済水域等の権益を確保する 排他的経済水域等の権益を確保する排他的経済水域等の権益を確保する 排他的経済水域等の権益を確保する(p.22-23) ○ 海洋に関する国際的連携 ・我が国の安全の確保の基盤である長大な海上交通路における航行の自由及び安全を確保我が国の安全の確保の基盤である長大な海上交通路における航行の自由及び安全を確保我が国の安全の確保の基盤である長大な海上交通路における航行の自由及び安全を確保我が国の安全の確保の基盤である長大な海上交通路における航行の自由及び安全を確保 (p.46) 2EEZ・
EEZ・
EEZ・
EEZ・大陸棚
大陸棚
大陸棚
大陸棚
すべての国の権利
及び
沿岸国の権利
(国連海洋法条約) ○ すべての国の権利 EEZで、航行・飛行等の自由、関連するその他の国際的に適法な EEZで、航行・飛行等の自由、関連するその他の国際的に適法な EEZで、航行・飛行等の自由、関連するその他の国際的に適法な EEZで、航行・飛行等の自由、関連するその他の国際的に適法な海洋海洋海洋海洋 の利用のの利用のの利用のの利用の自由自由を享受自由自由を享受を享受を享受(58条1) (安全保障のための活動を含む) ※ ただし、沿岸国のEEZの権利に妥当な考慮を払い、また、沿岸国がEEZの権利確保のために国連海洋法条約 第5部(EEZ)の規定に従って制定した法令を遵守する(58条3)。 ○ 沿岸国の権利 EEZ(日本1996年設定) ① 天然資源の探査、開発、保存、管理に主権的権利 (56条1a) ② 他の経済的探査開発活動(海水、海流、風力からエネルギー生産等)に主権的権利 (56条1a) 大陸棚(日本1996年範囲画定、200海里を超える部分は2012年に国連大陸棚限界委員会が承認) ① 非生物資源・定着性生物資源開発に主権的権利 (77条1,4) ② 大陸棚の掘削を許可・規制する権利 (81条) EEZ・大陸棚共通 ③ 人工島・施設・構築物に排他的管轄権 (56条1b(i),60条,80条)、500m安全水域設定(60条4-7) ④ 海洋の科学的調査を規制、許可、実施する権利 (56条1b(ii),246条1,2,248条) (他国が実施するためには6月前までの許可申請が必要、日中間(東シナ海)は2月前までの事前通報で実施) ⑤ 海洋環境の保護・保全に管轄権 (56条1b(iii),210条5,216条) ①~⑤の権利行使に当たり、国連海洋法条約に従って制定する法令の遵守を確保するため、他国船舶に乗船、 検査、拿捕等の必要な措置実施可 ※ 自国EEZ内における外国船舶・航空機の適法な海洋の利用等を禁止・制限する権利は有さない。 ☆すべての国の海洋利用等の権利と沿岸国の資源開発等の権利との合理的なバランスが確保されている。 3海洋の安全保障・権益をめぐる情勢の大きな変化
1 意図の明確化
※ 国連海洋法会議で、中国はEEZで外国の軍事活動に対するコントロールコントロールコントロールコントロール権を持つ等と主張したが反対多数で認められず(1976年) ① 中国は南シナ海に中国の「核心的利益」があると表明(2010年) ② 中国のEEZでは許可を得ていない如何なる国の如何なる軍事活動にも反対と声明(2010年) ③ 軍機関紙「中国国防報」は、中国の管轄権が及ぶ「国家海洋国土の主要部分」の上空は公海の 上空と異なることから他国航空機の飛行は制限されると指摘(2010年) ④ 人民日報で尖閣諸島を中国の「核心的利益」と表明(2012年) ⑤ 中国は尖閣諸島に直線基線的な領海基線を設定し国連に提出(2012年) ⑥ 中国は沖縄トラフまでの大陸棚延伸を国連大陸棚限界委員会に申請(2012年) ⑦ 中国は第18回党大会政治報告で「海洋強国を建設する」方針明示。国家海洋局長は「海洋強国」 の意味を「海洋開発、海洋利用、海洋保護、海洋支配海洋支配海洋支配海洋支配にお いて強大な総合力 を持つ国」と説明 (人民日報日本語版では「海洋管理統制」と表現)(2012年)2 能力の強化
① 中国国防費5年で2倍、海軍力強化(135.2万トン、潜水艦・水上戦闘艦・揚陸艦等戦力増強) ② 政府船舶も増強(2012年海監36隻新造計画表明等)3 行動のエスカレーション
① 中国政府船舶の尖閣諸島領海侵入・主権侵害発生(2008年)、主権侵害の拡大・常態化(2012年~) ② 中国海軍は活動を拡大・活発化(2008年~南西諸島付近から太平洋への行動常態化) 尖閣諸島への近接(2012年)、射撃管制レーダー照射(2013年) ③ 中国政府船舶による日本EEZ・大陸棚の権利侵害拡大(2010年~) ④ 南シナ海EEZ等で「海洋の利用の自由」に対する中国の違法な挑戦(2009年インペッカブル事件等) ◆ 重大な主権侵害・海洋権益侵害・海上交通に対する脅威増大重大な主権侵害・海洋権益侵害・海上交通に対する脅威増大重大な主権侵害・海洋権益侵害・海上交通に対する脅威増大重大な主権侵害・海洋権益侵害・海上交通に対する脅威増大 ➩➩➩➩ 実効的な実効的な対処が緊要実効的な実効的な対処が緊要対処が緊要対処が緊要 4鉄鉱石 鉄鉱石鉄鉱石 鉄鉱石 天然ガス 天然ガス 天然ガス 天然ガス 天然ガス 天然ガス天然ガス 天然ガス 原油 原油 原油 原油 石炭等 石炭等 石炭等 石炭等 公 海 EEZ EEZ EEZ サウジアラビア オーストラリア インドネシア
海上交通路における航行の自由と安全の確保
(大半が他国EEZに位置)
東シナ海 南シナ海 ペルシャ湾 ホルムズ海峡ⒸProf. Kimito Abo 5
公
公
公
公
海
海
海
海
EEZ
EEZ
EEZ
EEZ
一部は領海・群島水域他国EEZに位置する海上交通路の自由と安全の確保の必要性
○
日本は海上貿易立国
・ 輸出入総量の99.6%が海上輸送、海上貿易総量は世界全体の約11%(2011年9.15億トン) ・ 資源は、ほとんどを輸入し、船舶で輸送(原油99.6% 天然ガス96.4% 鉄鉱石100% 石炭100% )○
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○
○
日本
日本の
日本
日本
の
の
の重要な海上交通路の大半は他国のEEZ内に位置している。
重要な海上交通路の大半は他国のEEZ内に位置している。
重要な海上交通路の大半は他国のEEZ内に位置している。
重要な海上交通路の大半は他国のEEZ内に位置している。
○
○
○
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他国EEZにおける海上交通
他国EEZにおける海上交通路
他国EEZにおける海上交通
他国EEZにおける海上交通
路
路
路の航行の自由と安全は、わが国にとって不可欠であり、
の航行の自由と安全は、わが国にとって不可欠であり、
の航行の自由と安全は、わが国にとって不可欠であり、
の航行の自由と安全は、わが国にとって不可欠であり、
また、
また、
また、
また、国際
国際
国際
国際貿易・
貿易・
貿易・
貿易・国際経済
国際経済
国際経済
国際経済の基盤
の基盤であることから国際
の基盤
の基盤
であることから国際
であることから国際
であることから国際社会全体の安定と発展
社会全体の安定と発展
社会全体の安定と発展に不可欠。
社会全体の安定と発展
に不可欠。
に不可欠。
に不可欠。
○
○
○
○
海洋国の海軍等
海洋国の海軍等は、平素
海洋国の海軍等
海洋国の海軍等
は、平素
は、平素
は、平素から、他国EEZで安全保障のための活動を実施。
から、他国EEZで安全保障のための活動を実施。
から、他国EEZで安全保障のための活動を実施。
から、他国EEZで安全保障のための活動を実施。
・脅威となる潜水艦の探知を容易にするため海水温度や水中音響等のデータ収集を実施 ・自由で開かれた海上通商を支え、また海上テロリズム等に対処するためにMSO (Maritime Security Operations)を実施 ・海洋法が認める範囲を逸脱した違法な主張に対し、 抗議するとともに、海軍部隊を問題海域に送り、 航行の自由等を守る意思をその行動で示すFON(Freedom of Navigation) プログラムを実施・他国EEZ上空で弾道ミサイル発射監視を実施 ・日本も、2001~10年テロとの戦い給油支援(インド洋北西部)、2009年~護衛(ソマリア沖)、 2011年米英日共同掃海訓練(ペルシャ湾)、2011年日米豪共同訓練(南シナ海)等を実施
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他国
他国EEZにおける「海洋の利用の自由」
他国
他国
EEZにおける「海洋の利用の自由」
EEZにおける「海洋の利用の自由」
EEZにおける「海洋の利用の自由」
(安全保障(安全保障(安全保障(安全保障ののののためのための活動ためのための活動活動活動を含む)を含む)を含む)を含む)を
を
を
を認める
認める
認める
認める
現行海洋法の
現行海洋法の
現行海洋法の
現行海洋法の効力を維持していくことは、極めて重要。
効力を維持していくことは、極めて重要。
効力を維持していくことは、極めて重要。
効力を維持していくことは、極めて重要。
◆ 中国は自国EEZの支配(外国の安全保障活動排除等)へ向かっている。海上交通路の航行の自由と 安全の確保が困難となる。同調する国が現れると、海洋法の本質的変化を招く可能性もある。 ◆ EEZを支配(管理統制)する主張に与してはならない。 6日韓大陸棚 共同開発区域 1974年署名 1978年発効
韓国
済州島 九州中
中
中
中
国
国
国
国
日
日
日
日
本
本
本
本
台湾
中間線 中間線 中間線 中間線 中間線 中間線 中間線 中間線 2008年 日中合意区域 樫ガス田 白樺ガス田 ガス田 尖閣諸島 先島諸島 沖縄東
シ
ナ
海
状
況
図
ⒸProf. Kimito Abo
7 ▲ ▲ ▲ ▲ 熱水鉱床 熱水鉱床