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在外邦人の安全確保は外務省業務の1 丁目 1 番地 本日はよろしくお願い致します 最初に外務省領事局海外邦人安全課の具体的な活動について教えてください 石瀬 : まず外務省の方針として 海外における邦人の安全確保が非常に重要な責務であると考えています 先日可決した2016 年度予算案にかかわる 岸田

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Academic year: 2021

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(1)

海外における邦人の人的リスクと、

日本企業に求められている取組み

 ビジネス環境のグローバル化に伴い、海外に活躍の場を求める日本企業が増えている。それに応じて、企業や社員がリスク にさらされる機会も増えている。最近では、事件・事故だけでなく、テロや自然災害など、リスクも多様化している。このような 状況下で、日本企業はどのように対応すべきなのか。  外務省の中でも、海外における日本人の安全対策や保護の要となる、海外邦人安全課長 石瀬 素行氏に聞いた。 話し手 : 外務省領事局 海外邦人安全課長

石瀬 素行

氏 聞き手 : デロイト トーマツ 企業リスク研究所 主席研究員

茂木 寿

    デロイト トーマツ 企業リスク研究所 主任研究員

中澤 可

か む

(2)

在外邦人の安全確保は

外務省業務の1丁目1番地

●本日はよろしくお願い致します。最初に

外務省領事局 海外邦人安全課の具体

的な活動について教えてください。

石瀬:まず外務省の方針として、海外における邦人の安 全確保が非常に重要な責務であると考えています。  先日可決した2016年度予算案にかかわる、岸田文雄 外務大臣と麻生太郎財務大臣との折衝において、岸田大 臣は「海外における在外邦人の安全確保は、外務省業務 の1丁目1番地である」として折衝に臨みました。私は昨 年末に現部署に着任したばかりですが、その言葉を踏ま え、非常に重要な仕事を任されたとつくづく思いました。  昨年には、シリアにおける邦人殺害テロ事件で邦人 が2人亡くなられました。チュニジアの首都チュニスの バルドー博物館で起きた銃撃テロ事件でも3人の邦人 の方が亡くなられました。その後も各地で爆発などのテ ロ事件が続いています。  これまでは、「海外に行くと、テロに巻き込まれる」と いった表現でしたが、今はそれを一段階上げて、「日本人 が標的になるということもあり得る」と認識すべきだ と考えています。  また地域についても、中東や北アフリカ、西アフリカ は危険度が高いことは確かです。しかし今年に入ってか らも、ジャカルタやアフリカのマリなど、世界のいろい ろなところでテロ事件が起こっています。フランスのパ リでも、ベルギーでも起こりました。これまでのように、 先進国と途上国の違い、宗教などの違いにより、こっち は安全で、こっちは危険ということがなかなか言いにく くなっています。世界中のどこでも起こりうるのです。  現地の駐在員の方など、長期で滞在されている在留邦 人の方は、そこで生活するためにそれなりに準備をされ ていると思いますが、旅行者のように短期で滞在される 方もそういった危険な目に遭遇することもあり得ます。 滞在期間の長さにかかわらず、注意する必要があります。  外務省は昨年5月、こうした新しい認識を踏まえたう えで、いくつかの注意点に関し、私たちの考えを発表し ました(「在外邦人の安全対策強化に係る検討チーム」の 提言*1)。そういった認識に基づいて、海外における邦 人の安全確保を非常に重要な責務として対応している というのが、基本的な考えです。  もちろん世の中の状況を見ると、テロだけではなく 一般犯罪などもあります。さらに最近でいえばエボラ出 血熱、MERSやジカウイルス感染症なども発生していま すから、さまざまなリスクに対応していく必要があると 考えています。  海外邦人安全課は、ほかにもいろいろな取組みを行っ ています。邦人の安全に関わることは外務省全体で行って いますが、「外務省 海外安全ホームページ*2」の制作は 当課の担当業務の一つです。危険情報やスポット情報、広 域情報、安全対策基礎データやテロ・誘拐情勢など、いろ いろなものを海外安全情報として掲載しています。  「外務省 海外安全ホームページ」では、海外に行かれ る方にとって必要な情報を24時間体制で更新し提供し ています。ホームページの中身は、領事局だけではなく、 在外公館や地域課からも情報をもらって充実させ、外務 省全体で作っています。したがって、海外邦人安全課の仕 事を他の課と切り離して説明することはあまり望まし くないと思います。  領事局では最近、「たびレジ*3」というサービスを *1 「在外邦人の安全対策強化に係る検討チーム」の提言 (http://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/jnos/page3_001228.html ) *2 外務省 海外安全ホームページ (http://www.anzen.mofa.go.jp/index.html)

(3)

スタートさせました。これは、いざというときに、在外 公館などから緊急時情報提供を受けられる海外旅行 登録システムです。  外国に住所または居所を定めて3カ月以上滞在す る日本人は、その住所または居所を管轄する日本の 大使館又は総領事館(在外公館)に「在留届」を提出 するよう旅券法によって義務付けられています。ただ し、先ほど申し上げたように、長期に住んでいる人だ けが危ないわけではありません。短期で渡航される方 もいろいろなリスクがあります。そこで短期渡航をさ れる方のための情報提供手段として、「たびレジ」を作 りました。  ちなみに、「邦人テロ対策室」という名前を耳にさ れたことのある方は多いかと思いますが、同対策室 も海外邦人安全課の中に設けられています。つまり海 外邦人安全課では、自然災害、事故、病気、窃盗被害な どにおける邦人保護全般に対応しておりますが、誘 拐、ハイジャック、テロなどについては邦人テロ対策 室で集中して対応しています。

海外における邦人の人的リスクが

ますます多様化している

●次に、海外における邦人の人的リスクに

ついてお伺いしたいと思います。今、お

話にありましたように、最近、海外にお

ける邦人を取り巻く人的リスクは多様

化しているように思います。2015年に

は、テロによる死者が複数名発生して

います。そういったものも含め、海外で

亡くなる邦人が年間数百人いるとのこ

とですが、どのような原因で亡くなる方

が多いのかを教えてください。

石瀬:私は先般、英国とフランスに行き、それぞれの国 の自国民の安全対策について、意見交換や情報交換を してきました。  その中で、先方から言われた話では、当たり前と言 えば当たり前なのですが、数値で言えば、海外で亡く なる方は、通常の犯罪や病気が多いのです。しかし、い わゆるテロは、社会的なインパクトが非常に強いと いう性質があります。「では、テロで何人亡くなったの か」という人数の比較だけで議論できるものではあ りません。海外で亡くなる邦人も、人数でいえば、圧倒 的に病気が多いのです。少し嫌な話ですけれども、病 気の次に多いのは実は自殺なのです。もちろん、その 人数だけをとらえて、病気と自殺に気を付けていれば 9割がた対策ができるといった認識は、間違ったメッ セージになると思います。  海外邦人援護統計における海外邦人援護件数の事 件別内訳を見ると、犯罪被害は年間約5000件、もっ とも多いのが窃盗被害で、以下、詐欺、強盗となってい ます。  テロでは昨年、シリアで2人、チュニジアで3人が亡 くなられています。さらに8月にはタイのバンコクで 起きた爆発事件で1人負傷、10月にはバングラデシュ で1人が殺害されています。今年3月のベルギーにお けるテロ事件では2人が負傷されています。繰り返し

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になりますが、やはり、こういったテロ等の事件が与え るインパクトは非常に大きく、かつ、たまたま日本人が 被害に遭わなかったけれども、遭っていてもおかしく なかった状況が、ほかにもたくさんあるのです。

●最近の国際情勢の流動化に鑑み、日本

企業が特に留意すべき点には、どのよう

なことが挙げられるでしょう?

石瀬:私が企業の方々にもっとも申し上げたいこと は、社員の安全は企業の責任であり、企業の方が主役 ということです。すでに自覚を持たれている方も多い とは思うのですけれども。  これは、政府や外務省が責任を放棄しているという ことではありません。企業が海外に進出をし、海外の 方とのやりとりの中で経済を大きくし、活性化してい くことは、日本政府として望ましく、これからのあるべ き姿だろうと思っています。私は、前職で内閣官房の環 太平洋経済連携協定(TPP)政府対策本部にいました ので、まさにそのような仕事をしていました。  ですので、外にどんどん出ていっていただきたい、海 外の活力を取り込んで日本経済を元気にしていただ きたいという気持ちがあります。ただし、同時に、それ をうまく軌道に乗せるためには安全確保に十分留意 していただかないと途中で頓挫することになります。  だからこそ、まず企業の皆さんが、自分たちが主役 であるという強い意識を持っていただきたいと願って います。  しかし、それはご担当者の方がそう思うだけでは不 十分です。組織として考えていただく必要があります。 外務省では、外務大臣自らが「海外における在外邦人 の安全確保は外務省業務の1丁目1番地である」とい う意識を持っているのと同じように、企業の方々も、 自分たちの社員の安全が、企業の経営基盤を揺るがす  さらに、これは蛇足になるかもしれませんが、一時 的な営業上の損失は、翌年度に頑張って取り返すこと ができるでしょう。しかし、「この会社は社員の命を軽 く見ている」といった風評、レピュテーション(世評・ 評判)は、いったんそれが毀損されると、なかなか取り 返しがつかなくなります。  テロが起こる可能性は低く、日常はあまり気になら ないかもしれません。しかし、いったん事件が起こる と、リスクが大きくなるスピードが非常に速く、素早 い対応が求められます。  ビジネスの売り上げが今月どうだとか、来月どうだ というテンポではなく、一瞬にして、企業を襲ってくる 可能性があるという認識で準備をしていただく必要 がある。これが私の一番言いたいところです。

日本企業が特に留意すべき事項と

必要な対応とは

●企業として事前に準備すべき点や、実際

に事件や事故が起きたらどう行動すべ

きか、アドバイスをお願いします。

石瀬:一番の要になるのは、現地で何かが起こったと きに、情報を集める仕組みです。日ごろの情報はテレ ビやラジオで入手できるでしょう。インターネットも あります。しかし、有 事 に 頼 りに な る の は 、や は り 人 で す。 人から入ってくる情 報が大事ですので、 現 地 の い ろ い ろ な 方とのコンタクトを き ち ん と 取 る こ と

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 外務省は、主役である企業の方々を支援するため に情報を提供しています。「海外安全ホームページ」や 「海外安全アプリ」などのツールもありますので、ぜ ひご活用いただきたいところです。  何より大事なのは、情報を集め、その集めた情報を 共有するということです。先ほどお話ししましたが、企 業の本社やトップの方など、意思決定ができる方にど うやって迅速に情報を届けていくかという事です。  企業規模や業種・業態によっては、現地で長期間 の工事をやっている場合もあるかもしれません。そ のようなときに現地情勢が悪化したら、そこから退 避するということもあり得るわけです。社員の安全 を確保するための退避であっても、相手側から見る と「契約に基づいて仕事をしているのに、いなくなっ ては困る」という話だと思います。このような際に、 ビジネスを継続するかどうかは非常に大きな意思決 定になります。すなわち、ビジネスの継続をどうする か、社員の命をどう考えるのか、現地の情勢をどう分 析し、どう判断を下すかというのはやはりマネジメ ントの役目だと思うのです。そのような点について 迅速な決定を誰が下すのか、事前に明確化しておく ということが大切です。  それから、若干外務省からのお願いになって恐縮な のですが、企業や団体などにおいては、どなたかに情 報をまとめていただきたいという思いがあります。  現地の邦人の安全確保は外務省の非常に重要な 責務です。ただ、現地の在留邦人が30人ぐらいであ れば、一人ひとりに電話して確認ができるのですが、 規模が大きくなると、それも難しくなります。そこ で、企業や組織、グループなどまとまった単位をお持 ちの場合、それをまとめていらっしゃる方にコンタ クトポイントのお願いをしたいところです。会社側か ら見ても、外務省にレポートしてあるということは、 悪い話ではないと思います。  たとえば日本人学校であれば、校長先生なり教頭 先生なりに、児童・生徒や先生がたの安否をまとめて いただくわけです。国際協力機構(JICA)でも、コンタ クトできる方を置いています。日本の大企業でも、す でに何らかの仕組みをお持ちであるとは思います。 旅行者の方々は、旅行代理店がまとめていらっしゃ ればいいですけれども、個人で行かれる方は、私たち が直接確認するしかありません。  そういう意味で、日ごろから何かあったらその会 社のコンタクトポイントは誰で、外務省、在外公館の 場合は在外公館の誰なのか、ということをちゃんと 把握をしておいていただきたいですね。  また、「着任のあいさつをして以来、3年会っていな い」というようだと、なかなか機能しないので、私た ちも在外公館において一定の間隔で、「安全対策連絡 協議会」のような形で、現地の主だった方々を集めて コンタクトを取るようにしています。  企業の方々からすると、私たちがホームページで提 供している情報が、ちょっと自分たちの実感と違うと 思われることもあるでしょう。そういう点をカバー するために、私たちは在留届を出していただいてい る方や「たびレジ」に登録されている方に、「領事メー ル」と呼ぶ、現地の生の情報をお届けしています。  先日はある企業の方から、メールの件名に、どこで 何があったかのかわかりやすく記載してほしいとい

(6)

う要望をいただきました。そういう使う側に立った ご意見もお待ちしています。  企業のコンタクトポイントになるような方は、日ご ろから私たちが提供している情報を、ぜひ批判的な 目で見ていただきたいと思います。安全情報が古い、 場所を特定して地図を載せてほしいなど、何でもいい と思います。私たちのサービスがよくなるようなご提 言をきっかけに、我々も緊急事態の際には、あの人が コンタクトポイントだと認識しますから、ぜひ、大使 館、総領事館などとの密な連絡をお願いしたいと思 います。  さらにこれは基本的なことですが、社内の意思決 定ルートだけではなく、社員の方の緊急連絡網は必 要だと思います。安否確認の方法や電話などの連絡 手段も、きちんと決めておいてほしいところです。

情報提供に加え「たびレジ」や

海外安全アプリなど新たなサービスもスタート

●「たびレジ」など、外務省が提供している

情報・サービスなどについてもう少し詳

しくお教えください。

石瀬:「たびレジ」の登録者数は順調に伸びています。 ただし、登録のペースには波があります。  たとえば3月の場合、1日の登録者数が30件、40件 となって、ある日は78件、その翌日に181、次は150、 100となって、30となっています。ベルギーの同時テ ロが発生した3月22日を受けて、翌日の23日が181 という山を迎えたのです。  やはり人は、何かが起こると真剣になるのです。と ころが、それも3日ぐらいたつと元に戻ってしまう。こ れはやむを得ないことかもしれません。 ものです。旅行に行く人の数はゴールデンウィークや 夏など、増える時期はありますけれども、だいたい、一 定数はいるはずです。日本からの海外渡航者は年間延 べ約1700万人とされていますので、毎日、万単位で人 が動いているのです。ところが、その中で1日に登録さ れる数が30とか40、テロが起こると180とか、その レベルなのですね。  私は今年に入って2回出張していますが、2回とも 「たびレジ」に登録しています。本来、1人が年間10 回海外に行けば10回登録されるわけですから、延べ 1700万人が渡航するなら1700万回の登録があって いいと思うのです。現状はまだ2~3%程度です。  皆さんに「たびレジ」を使っていただくためには、ぜ ひお願いしますというだけでは限界があると思いま す。皆さんにメリットや必要性を感じていただくには どうしたらいいかということになりますが、これだと いう答えはまだ出ていません。

●私も先日出張の際に「たびレジ」を活用

しました。ただ、もしかすると、個人任せ

での登録ですと失念したり、面倒に感じ

る人が多いと思います。また、企業単位

でもなかなか進まないかもしれません。

たとえば旅行代理店などに対して働き

かけはされているのでしょうか。

(7)

石瀬:旅行代理店には、海外に旅行される方の旅行日 程・滞在先・連絡先などのデータがあります。それが 自動的に「たびレジ」に連携されるようになれば便利 です。旅行者の方にとっても、同じ情報を何度も登録 するのは面倒でしょう。そこで現在、旅行会社各社と データ連携について調整を進めているところです。企 業では、出張の手配について特定の代理店と契約して いることも多いと思います。そこと連携し、自動的に まとめて登録してもらえるようになるのが理想です。  あまりよくないことかもしれませんが、今回のベル ギーのテロ事件などが発生するたびに理解が深まっ ていると感じます。

●先ほどのお話ですが、私たちも、事件な

どが起きたときにはたくさん問い合わ

せが来るのですが、1カ月もすると落ち

着いてしまいますね。最近、いろいろな

ことが立て続けに起きているので、本当

は、企業に本腰を入れないとまずいと

思ってもらいたいのですが。

石瀬:日本人の特長なのでしょうか。フランスで去年、 テロ事件が起こりました。フランス政府によると、日 本からはビジネスパーソンは戻っていますが、旅行客 の戻りは遅いようです。一方で、ほかの国の旅行者は 2、3日後には戻っているというのです。韓国の方々も 日本人と同じ傾向で、ビジネスパーソンは残っている けれども、観光に行く人はすごく減ってしまいなかな か回復していない状況だそうです。

●タイもそうですね。今までテロとは縁遠

い場所だと思っていたのに、何か起きる

と、急に行かなくなります。企業も「不要

不急の出張は自粛」と言っています。

石瀬:「不要不急の」という言葉は、外務省からの案内 でも使っています。ただ、ビジネスで必要な出張につい ては、安全対策をしっかり取った上で、ぜひ行って、業 績を伸ばしてほしいと思っています。

●新興国に行った際に、携帯電話で、現地

の治安情報などを知るために在外公館

のウェブサイトを見るケースがあると思

います。ただ、一部の新興国は通信会社

の定額制サービスの対象外なので、たと

えばホームページを1ページ開くだけで

通信料が数千円かかってしまうことも

あります。宿泊施設等のWiFi接続もセ

キュリティの観点からは推奨されない

ケースがあります。そういった点に関し

て、外務省として何かできることをお考

えですか。

石瀬:「海外安全アプリ」を用意しています。海外にお住 まいの方や海外旅行・出張中の方に、安全に係る情報を お届けすることを目的としたアプリです。スマートフォン のGPS機能を利用して現在地および周辺国・地域の海外 安全情報を表示することができます。また、任意の国・地 域を選択することで、その国・地域に対する海外安全情 報が出された場合にプッシュ通知で受信することがで きます。また、各国・地域の緊急連絡先も確認できます。  「海外安全アプリ」を事前に日本でダウンロードし ておけば、自分の欲しい情報だけを入手することもで きます。それでもお金はかかりますけれども、無駄な ページを開くことは少なくなると思います。

●将来的に、

「たびレジ」などの情報提供を

もっと拡充させる予定や計画はありま

すか。

(8)

石瀬:ある企業の方は、出張の稟議書が回ってきて、最 後にハンコを押す人が必ず、「たびレジ」に登録してい るかどうか確認するらしいです。登録をしてなければ ハンコを押さないらしいのです。  また、今までは、たとえば中東やアフリカに行くとき は「たびレジ」がマスト(必須)だけれど、米国や欧州は 推奨にとどめていたという会社もありましたが、今度 からはマストにしますとおっしゃってくださいました。  この機会にぜひ会社の手続きの一環として位置付 けていただきたいという思いがあります。たとえば企 業のリスク管理部門や人事部の方などが、自分の社 員が出張しそうな国や地域を指定する簡易登録と呼 ぶ方法もあります。簡易登録すれば、メールアドレス と国・地域を指定するだけで、対象国・地域の最新海外 安全情報メール、在外公館が発出する緊急一斉通報を 入手できます。最初に申し上げた情報収集の部分で役 立ちます。  他の国でも、自国民の安全対策はもちろん行ってい ますが、彼らは基本的に、情報を提供するだけなので す。YouTubeやソーシャル・ネットワーキング・サービ ス(SNS)などを使って、できるだけ情報は提供するけ れども、それに対する反応は国民次第というように 思えます。  それに対して日本政府は、安否確認のため一人ひ とりに電話をします。外務省の職員が病院にも行くこ ともあります。日本以外の国は、一人ひとりに至るま で直接安否確認をするところまでは、なかなかやり ません。  もちろん、私たちも万単位で邦人がいるような大 都市では外務省職員が直接一人ひとりに連絡するこ とはできません。できないけれども、先ほど申しまし たように、それぞれの大きな組織の方々の協力を得 ながら、緊急事態なので日本全体で一人ひとり確認を しましょう、ということをやるわけです。そのために う手法を取っており、これはもう私たち日本人の文化 なんですね。政府だけでなく、自分が所属する組織に 求める期待のレベルがほかの国とは違うのです。  それもあって、宿泊先のホテル、電話番号、現地で通 じる電話番号、メールアドレスなどの情報も、大変面 倒ではありますが、是非登録いただきたいのです。そ れをやっていただかないと、いざというときの確認が 難しくなります。  たとえば島国などの場合です。2月には、フィジーを 巨大なサイクロンが直撃しました。フィジーのように たくさんの島があるところでは、あの島にまだ何人 取り残されているといったことが起こります。私たち としては、普通の電話線、インターネット、衛星電話な ど、いろいろな通信手段のどれかが使用できれば何 とかなるという思いがあります。緊急事態に対応する ために、複数のコミュニケーション手段を確保したい ところです。外務省の職員もそういう思いで「たびレ ジ」を作っているので、ご理解いただき、登録をお願い できればと思います。

(9)

日本企業が留意すべき点を意識したうえで、

世界の市場に挑戦してほしい

●最後に日本企業に伝えたいことがあれ

ば、教えてください。

石瀬:繰り返しになりますが、日本経済の将来を考え ると、1960年代の高度経済成長の再現は難しいで しょう。  先日、アジア開発銀行(ADB)がアジア途上国(日・ 豪・NZをのぞくアジア・太平洋の45カ国・地域)の 2016年の経済成長率予想を6.0%から5.7%に引き 下げたと発表しました。下がっても5.7%です。  私が大学生のときに、世界各国の国内総生産(GDP) の分布図を持っていました。今とは全然違う世界です。 西アジアも含めたアジア全域で日本のGDPは70%で した。今や、中国のほうが大きいですね。まさに、世界の 経済構造、あるいは世界の成長センターがどんどん移 り変わっています。最近ではさらにADBも中国よりも インドの成長率が高いと言っています。  日本企業にはやはり、アジア太平洋地域を中心に勢 いよく成長しているところ、少なくとも先進国と比べ ると、まだまだ成長力の高い国の成長の活力をぜひ取 り込んでいただきたいと思います。  ビジネスチャンスが世界に多くある一方で、テロや 自然災害などの発生件数が増えています。ぜひ気をつ けて、会社としてトップまで日本企業として留意すべき 点を意識したうえで、果敢に挑んでいただきたいと思 います。

●「海外における在外邦人の安全確保は

外務省業務の1丁目1番地である」とい

うフレーズは頼もしいですね。また、企

業における意志決定の仕組みを設けて

おくことが大事だという話も参考にな

りました。決してマニュアルをつくれば

いいというわけではないですね。本日

は、ありがとうございました。

Ò

左から、トーマツ 茂木、外務省 領事局 海外邦人安全課 岡林氏、石瀬氏、都築氏、トーマツ 中澤

参照

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