1
1.
2次元量子液体・固体・液晶の磁性と超流動
1.1 超固体
... 3
1.2 量子スピン液体 ... 7
1.3 2次元
3Heの液化 ... 10
2.
グラフェンとカーボンナノチューブ(CNT)の電子物性
2.1 ジグザグ端のスピン偏極
... 14
2.2 朝永ラッティンジャー液体 ... 18
2.3 CNT超高圧環境下での超伝導 ... 20
3.
極低温技術の開発
3.1 小型・連続冷却型の核断熱消磁
冷凍機
... 21
平成29年 5月26日 (v2)福山研究室の研究紹介
東京大学 大学院理学系研究科 物理学専攻
(福山居室) 1号館中央棟 4階 433号室 (研究室) 同 437号室 電話:03-5841-4193 メール:[email protected] URL: http://kelvin.phys.s.u-tokyo.ac.jp/コ
コスタリッツサウレス転移
(2次元のトポロジカル相転移)
David J. Thouless J. Michael Kosterlitz
J.M. Kosterlitz and D.J. Thouless, Phys. 5, L124 (1972); ibid. 6, 1181 (1973)
位相欠陥の対解離によるトポロジカル相転移
1. 転移対の解離 (2次元固体の融解)
2. 渦対の解離 (2次元超流動、 2次元XYスピン系)
+
D.J. Bishop and J.D. Reppy, PRL 40, 1727 (1978)
KT理論は
マイラーシートに吸着した4He 薄膜の2次元超 流動転移の観測で初めて、その正しさが実証された。 ユニバーサル ジャンプ ρs TKT −(
)
= 2kBm 2 π2 TKT John D. Reppy 超流動面密度のトビ 振動の散逸ピーク TKT Δρs ねじれ振り子実験 22
2次元固体の融解現象
2次元固体は2段階の連続相転移で融解し、中間 温度域に6回対称のボンド配向準長距離秩序の みをもつ特異な相 (ヘキサティック相:液晶) が 現れるはず。KTHNYモデル
(Kosterlitz-Thouless-Halperin-Nelson-Young)
T
mT
iB.I. Halperin and D.R. Nelson, PRL 41, 121 (1978), D.R. Nelson and B.I. Halperin, PRB 19, 2457 (1979), A.P. Young, PRB 19, 1855 (1979)
固体
translational quasi-LO bond-orientational LO等方的な液体
ヘキサティック相
bond-orientational quasi-LOtemperature
dissociation of dislocation pairs dissociation of disclination pairs 自由な転位が熱励起 (= 回位対が熱励起) Burgers vector 転位対対が熱励起 自由な回位が熱励起 5-fold 7-fold b1 + b2 = 00
§1.1
32
2次元Heの比熱測定で見出した量子液晶状態 (C2相)
可能性-2
絶対零度でも空格子点が発生して、
量子力学的に動き回り、流動性を併
せもつ「結晶」
(「固体 (ずれ弾性係数㱠0) 」ではない)零点欠陥を内包する整合相
下地層が作る周期ポテンシャルの振幅が 大きい場合量子ゆらぎのため、絶対零度でも
回位対が発生して、量子力学的に動き
回り、流動性を併せもつ
量子ヘキサティック相
drawn by S. Nakamura based on MC calculation by K. Wierschem and E. Manousakis, PRB 83, 214108 (2011)
可能性-1
下地層が作る周期ポテンシャルの振幅が 小さい場合
S. Nakamura et al., PRB 94, 180501 (2016)
4
4
He-C2相は超液晶または超結晶か
有限の
超流動密度
(
ρ
s) が、ねじれ振り子測定
で見出されているが、3つのグループでその発
現密度が異なる。
L2 + C2 G2 + L2 (gas+liquid) L2 (等方的液相) F2(uniform fluid) IC2
(不整合固相) C2 + IC2 C2 G2 + L2 (gas+liquid) (等 F2
(uniform fluid) IC2
(不整合固相)
(1) P.A. Crowell and J.D. Reppy, PRB 53, 2701 (1996) (2) Y. Shibayama et al., J. Phys.: 150, 032096 (2009) (3) J. Nyéki et al., Nature Phys. 13, 455 (2017)
6)
Ref. [3]
比熱との同時測定が急務
我々の比熱測定から決めた相図 ねじれ振り子測定で検出された超流動密度 量子液晶相§1.1
超
超結晶
(
一般には超固体と呼ばれる)
とは何か?
1969年に理論予測された
物質の新しい状態
A.F. Andreev and I.M. Lifshitz, Sov. Phys. JETP 29, 1107 (1969)
1. 気体
2. 液体
3. 固体
4. 超流体
5. 超固体
Alexander F.Andreev Ilya M. Lifshitz
E. Kim and M.H.W. Chan, Nature 427, 225 (2004); Science 305, 1941 (2004)
Hcp
4Heで超固体相発見(?)の報告
(2004年)
torsional oscillator+
超固体
並進対称性 の破れ 結晶の周期性 超流動性 ゲージ対称性 の破れ=
winding-circle map by PIMC calculation 最近の研究によれば、 スクリュー転移の芯に 沿った1次元ネット ワーク超流動か? M. Boninsegni et al., PRL 99, 035301 (2007)§1.1
量
量子スピン液体(QSL)状態とは何か?
ギャップレス量子スピン液体
• 強くフラストレートした新奇な磁気基底状態 • 絶対零度でも各サイトのスピンの期待値がゼ ロ (スピン座標の量子液体)スピングラス
• 強磁性と反強磁性相互作用の競合 • 残留エントロピースピン固体
(反強磁性体/強磁性体) • 磁気素励起はスピン波 (マグノン) P.W. Anderson (1973, 1987) singlet pairRVB
状態 (resonating valence bond)
gapful (Δ ∼ J) 三角格子上S =1/2 ハイゼンベルク 反強磁性体 (HAFT)
§1.2
7初めて提案されたQSLの具体的なモデル
量
量子スピン液体状態の最初の具体例
多体リング交換+
2次元三角格子+
量子スピン(S =1/2) K. Ishida et al., PRL 79, 3451 (1997) 10-2 10-1 100 101 0.1 1 10 18.2 nm-2 18.4 nm-2 C / R T (mK) (24.13 cm3/mol) MSE model bcc solid 3He • 磁気比熱のダブルピーク • 励起がギャップレス (C T)現実の物質として、初めて2次元
固体
3Heで発見 (
3He-C2相)
全エントロピー変化を観測 ΔS ≈ N2kBln2その後、2003年以降、有機物、遷移金属
酸化物の電子スピン系でも同様の量子ス
ピン液体状態の実験報告が相次ぐ。
関連発表論文数 : 2767本•
低温極限で本当に
C
T
なのか?
•
磁気素励起
は何か?
8水
水素膜上2次元固体
3
Heで新たなQSL相を発見
This work C T2/3 C T2/3C
T
2/3
!
Ref. [2] Ref. [1] χ T-1/3 χ T-1/3
χ
T
-1/3
!
[1] H. Ikegami et al., PRL 85, 5146 (2000) [2] R. Masutomi, et al., PRL 92, 025301 (2004) 3He
/
HD
/
HD
/gr
SU(2)対称性をもつ基底状態 ?
S
=1 のマヨナラ粒子が素励起?
§1.2
• 水素膜と4:7の密度比のごく狭い範囲(δρ ≤ 2%) でしか安定化しないことから、これこそ4/7整合 固相と思われる。 • 比熱も帯磁率も特異な分数冪乗則の温度依存性 自前のNMR測定 (帯磁率, スピン-スピン 緩和時間)が急務M. Kamada et al., to appear (2017)
2
2次元
3
Heの自己凝集現象の発見
graphite 3He自然界で最も低密度の液体
臨界密度ρc 㲔 0.6 nm-2 平均粒子間距離 㲔 1.4 nm 3次元換算の比重 㲔 0.002
D. Sato at al., Phys. Rev. Lett. 109, 235306 (2012)
フェルミ流体の低温比熱(C)は温度に比例し、その比例係 数(γ)は粒子質量(m*)と面積(A)だけに比例するはず (密度 に依存しない)。
γ
= (
π
k
B2/3
2)
A
m
* そのγ 係数が、ある臨界密度 (= 0.6 nm-2) 以下で密度 に線形に依存することを見出した。C
(T) =
γ
T ,
絶対零度近くでは気液が相分離しており、 液相の 水たまり が存在する!理論的に予測されていなかった
2次元
3Heの
液化現象を
縮退温度域の比熱測定から
発見
10理
理論予測を覆す実験結果 ー大きな反響ー
毎日新聞 (2013年1月15日付) Physics Today (2013年1月号) (パリティ2013年9月号) 日本経済新聞 (2012年12月21日付) 0 0.5 1 -0.5 -1 一粒子当たりのエネルギー (K) 1 3 5 7 面密度 (nm-2) 3 555 面密度 (nm-2) 2D 4He (ボース粒子) 3 3 3 3 3 3 1 1 1 2D 3He (ボース粒子) 2D 3He (フェルミ粒子) 本実験従来の第一原理計算の予測
(量子モンテカルロ法)V. Grau, J. Boronat and J. Casulleras, PRL,89, 045301 (2002)
• M. Ruggeri at al., PRB 93, 104102 (2016)
• M.C. Gordillo and J. Boronat, PRL 116, 145301 (2016); PRB 93, 104102 (2016)
• M. Takano, T. Suzuki, and N. Sakumichi, J. Phys. Conf. Ser. 702, 012016 (2016)
• N. Sakumichi and H. Suno, to appear
我々の実験以後の理論の展開
準安定な液相は出現可能
少数クラスター計算は液化を支持?
§1.3
臨
臨界点での比熱異常の観測が必要
2D-4Heに比べて、2D-3Heは気 液臨界点での液相密度がはるか に低いため、潜熱による比熱異 常が観測しづらいのか? 0 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 C (mJ/K) T (K) 3He: 12.19 nm-2 (13.847 ccSTP)degenerate ideal Fermi gas
1.0 nm-2 1st layer solid 3He ? 0 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 C (mJ/K) T (K) 3He: 11.39 nm-2 (12.938 ccSTP) C (mJ/K) ρ2 = 0.2 nm-2 puddle region? 0 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 C (mJ/K) T (K) 3He: 11.70 nm-2 (13.280 ccSTP) 0.5 nm-2 puddle region? ? 2層目4He 0 1 2 0 0.4 0.8 1.2 1.6 C/N 2 kB T (K) Greywall (15.00/Grafoil) This work (15.00/ZYX) 4He Nakamura et al. ZYX基盤を使った予備実験は、SatoらのGrafoil基板の結果を支持しているように見える。 ヒーター 抵抗温度計 機械式熱スイッチ (液体4Heで駆動) 圧力計 (P < 2 bar) 超伝導熱スイッチ (未搭載) ZYX試料セル ZYX (19g, 30.5 m2) + Agフォイル
B.K. Bhattacharyya and F.M. Gasparini, PRL 49, 919 (1982); PRB 31, 2719 (1985)
4He薄膜上の3He単原子層
?
福
福山研の超低温走査トンネル分光装置 (ULT-STS)
T
= 30 mK,
B
= 13 T,
P
<< 10
-8Pa
の多重極限環境下でトンネル顕微/分光が可能
50 µm 2017年4月、これに電気伝導測定と 原子間力顕微の2つの機能が追加さ れ、さらにパワーアップ 電気伝導測定用試料台 (6端子)§2.1
13U
ULT-STSでこれまで行ったグラフェン電子物性研究
ジグザグ端にのみ 存在する電子状態
Y. Niimi et al., Appl. Surf. Sci. 241, 43 (2005); PRB 73, 085421 (2006)
ジグザグ端状態の初めての観測
K K’ ε k εF ホールゼロエネルギー・ランダウ準位
の初めての観測
T. Matsui et al., PRL 94, 226403 (2005)§2.1
ディラック・フェルミオン (線型分散関係) 14グ
グラフェン・ジグザグ端とスピン偏極
ジグザグ端で挟まれたグラフェン・ナノリボン
(a) 1種類の副格子のみで構成された端→電子局在状態 (b) 平坦バンドなので、電子間相互作用のもとで、スピン偏極するはず (c) 端磁性と伝導特性が連動するので、次世代機能素子に応用できるはず (スピントロニクス) F. Munoz-Rojas et al., PRL 102, 136810 (2009) スピン偏極の磁場制御の可能性 (理論) (巨大磁気抵抗素子への応用) 状態密度 電子相関ジグザグ端
(AまたはB副格子原子のみで構成) (AとBの副格子原子で構成) アームチェア端 A副格子原子 B副格子原子§2.1
スピン偏極 15ジ
ジグザグ端ナノリボンの先行研究
§2.1
ジグザグ端ナノリボン アームチェア端ナノリボン • リボン幅7 nmを境にエネルギーギャップの大きさが大きく変化した。 →スピン偏極がup-downとup-upの間で変化した? • しかし、アームチェアリボンでも、不思議な振る舞いが見られており、再現性に疑問 幅7 nm近傍のリボンを作成し、外部磁場印加によってエネルギー ギャップ (あるいは伝導度) のトビを観測できれば、スピン偏極 の変化であることが直接的に分かるはず。我々の狙い:
G. Z. Magda et al., Nature 514, 608 (2014)
STMトンネル電流で加工
H2 gas Matching Box RF Power supply (13.56 MHz) Flow Meter Copper Coil Furnace Furnace Pressure Gauge to Rotary Pump ~40 cm sample
水素プラズマエッチングによるジグザグ端
ナノリボンの作成
• 単原子ステップの六角ナノピットをグラファイト表面に多数形成できる • ピット端は原子スケールでほぼジグザグ端のみで構成されている§2.1
ジグザグ端ナノリボンの作成に成功
17カ
カーボンナノチューブ (CNT) の1次元電子物性
個々のCNTに対する実験
bulk contact raw data CB correctedM. Bockrath et al., Nature
397, 598 (1999) TL液体を示す実験が 多いが、試料依存性や クーロン閉塞など、 (メソスコピック系特 有の補正が必要
1次元金属
R
T
−αdI/dV
V
α金属 半導体 フェルミ液体ではなく、 朝永・ラッティンジャー (TL)液体 (物理量の冪乗 則) 5 nm DWCNTバンドル 500 nm
Buckypaper
: CNTバンドルの3次元ランダムネットワーク (バルク試料)CNT-CNT接合間距離はわずか
100-200 nmなのに、マクロな大き
さのネットワーク試料が1次元的な
伝導特性を示すだろうか....?
18二
二層CNT-buckypaperの電気伝導度
K. Nakayama, et. al., to appear (2017) 信州大学との共同研究 二層CNT--buckypaper試料でTL液体理論から期 待される指数をもつ冪乗則が安定して観測された Egger et al., PRL 79, 5082 (1997) Kane et al., PRL 79, 5086 (1997)
α
= 0.24 for CNT
TL液体理論
§2.2
19 位相緩和長 (サウレス長) がCNT-CNT 接合間距離より短い温度域では、1次 元伝導が観測されて良い 磁気抵抗測定から求めたサウレス長 (不思議な温度依存性)CNT内は超高圧環境
(内包1次元金属の超伝導の可能性)
気相反応法でCNT中に硫黄(S)の安定した 金属1次元鎖ができる
T. Fujimori et al., Nat. Commun. 4, 2162 (2013)
CNT中にドープした硫黄(S)が1次元
金属
鎖
を形成
2 nm S@SWCN S@DWCT 2 nm CN TS CN T CN TS CN T 0.68 nmφ 1.0 nmφ Ar@CNTの分子動力学計算Y. Long et al., Phys. Chem. Chem. Phys.
13, 17163 (2011)
V. V. Struzhkin et al., Nature 390, 382(1997)
3次元バルクの硫硫黄は超高圧 下(P ≥ 90 GPa)で金属化し、 T ≤ 18 K以下で超伝導を示す。 3次元バルクの硫硫化水素(HxS) はP 㲔 200 GPaで高温超伝導 を示す (Tc = 203 K)
A. P. Drozdov et al., Nature 525, 73 (2015)
福
福山研の核断熱消磁冷凍機
Y. Matsumoto et al., J. Low Temp. Phys. 134, 61 (2004); Physica B 329-333, 146 (2003)
Bi = 8 T Ti = 11 mK3He-4He
最低到達温度
T
f= 51 μK
T
≤ 200 μKを1週間保持
Magnetic fi eld (T esla) T e mperature (mK)§3.1
非常に高性能だが、大型で特殊 仕様の実験室にしか設置できず、 専門家しか扱えない。 211 mK以下を連続発生する小型核断熱消磁冷凍機の開発
2つのPrNi
5核ステージを
直列接続して連
連続冷却する
実際の配置図
希釈冷凍機必要な高さ:
20 cm
核ステージ-1 温度計 試料 希釈冷凍機 混合器 (20 mK) 核ステージ-2 熱スイッチ-1 熱スイッチ-2 試料ステージの熱浴 核ステージ-1のエン トロピーポンピング 試料ステージ PrNi5 超伝導電磁石 (1.2 T) 磁気シールド概念図
非常に小型かつ軽量
• 物性研究 (量子臨界現象、重い 電子系、分数量子ホール効果) • 量子情報 (量子ドット、超伝導) • 各種検出器の高分解能化 (衛星 搭載可)§3.1
小型・軽量で運転が容易
広い応用範囲
村川研との共同研究 22N
NASAが開発した
T
=
50
mKのX線検出器
ASTRO-H プレスキットより
P.J. Sharron et al., Cryogenics 552, 165 (2012)
軟X線分光検出器(SXS)を3段
の断熱消磁冷凍機で
T
= 50 mK
まで冷却
常磁性塩の電子スピン磁気作業物質 CPA: Cr23+(SO 4)3•K2SO4•24H2O軟X線分
の断熱消
まで冷却
Hitomi Collaboration Nature 535, 117 (2016)Suzaku X-ray imaging spectrometer
(XIS: T = 180 K) (2014)
soft X-ray spectrometer (SXS; T = 50 mK)
ペルセウス座銀河団中心からの高温ガスのX線スペクトル