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過去 10 年 サプライチェーン管理 (SCM) の改革によって 調達や製造 物流といった目に見えるコストダウンが進んできました しかし 製品ライフサイクルが短くなりグローバル競争が激化する中 コストダウンだけの改革では企業内は疲弊するばかりです 本コラム エンジニアリング チェーン改革 は 製品の

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Academic year: 2021

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世界で戦うための

製品の製造装置メーカーA社 は現在、“業界で世界一”を目指 した業務改革プロジェクトを進めてい る。前回(2011年6月号)は、この改革 プロジェクトの実行計画を策定する活 動のうち、あるべき姿と現状のギャッ プ、つまり現状の課題を明確化するこ とで、その解決策(重要施策)を仮決 定するプロセスを紹介した。今回は、 仮決定した重要施策を深掘り検討す る活動について解説する(図1)。

解決策の効果を実感

 重要施策として前回、「標準化・モ ジュール化」と「部品表(BOM)の活用」 の2つを取り上げた。改革のスケジュー ルとして定義した5カ年計画の3ステッ プのうち、第1段階の「既存業務の負 荷を下げる」に対応した施策だ(図2)。  しかし、このような施策を掲げても、 個々の技術者がその効果に納得でき なければ改革はうまくいかない。実際、 「標準機を売って利益を出せるのか」 「一般的にはそうかもしれないが、我 が社の場合でも本当にもうかるのか」 といった意見が多く出てきた。  そこで、重要施策を深掘り検討する。 A社が実際に業務で使用している図 面やデータを用いながら、仮決定した 課題解決策のうち、特に重要と思われ る施策の有効性および妥当性を確認 するのである。  この深掘り検討では、A社の技術 者の知見が不可欠だった。彼らなら、 実際の設計業務の深い部分を詳細に 調査して改善ポイントを抽出して具体 的な姿を提示できる。一方、筆者らは コンサルタントの立場で、現状から目 指す姿への改革を一直線に導くため の方法をトップダウン的にまとめ上げ る。こうすることで、初めの一歩を踏 み出すための期間を長くせずに、計画 を立案できるように配慮した。それで は、実際の活動内容を紹介しよう。

15の活用シーンを検討

 重要施策の1つであるBOMの活 用では、BOMで管理されている製品 の構成情報や技術資料などを有効に 利用する体制を築くことが目標であ る。しかし、単にBOMの活用といって も適用範囲は幅広いし、具体的にどう 活用するかというイメージは持ちにく い。深掘り検討ではまず、BOMを活

図1●改革プロジェクトの計画フェーズ

効果を納得させる

團野 晃

●O2 技術ディビジョン シニアコンサルタント

重要施策の深掘り検討

事例1

(その2) 改革実行計画策定フェーズ 実行 フ ェ ー ズ へ ①あるべき姿の設定 (現状把握を含む) ④解決策を仮策定 ⑦実行計画の作成 ⑤重要施策の深掘り検討 ⑥投資対効果の確認 施策の評価・決定 優先順位の設定 ②課題の明確化 ギャップ原因の分析 ③重要施策の仮説と 深掘り検討項目の決定 コ ン サ ル タ ン ト 中 心 技術者 中 心

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的に決める必要がある。そこで、深掘 り検討する業務シーンを選択するため に、15の業務シーンを話し合いの中で 列挙していった(表)。  この中で選択されたのが、4つめの 「設計BOMの先行公開によるコンカレ ントな業務の遂行」である。理由は、A 社にとって最も効果が大きい施策とな るからだ。  A社では、部分的な図面が断続的に 出される、いわゆる「五月雨出図」を行 うことで、全体の設計終了を待たずに 先行して調達を行うようにしていた。 五月雨出図は、個別受注でかつ納期ま でが長い製品にありがちな出図のやり 方である。  このため調達部門では、出図(設計 の部分確定)のたびに部品や材料など の手配を行うという業務に追われてし まい、調達・生産の最適化検討を行う ことができなかった。結果、QCD(品質、 コスト、納期)が安定しないという悩み を抱えていた。これを解決するための 施策として、BOMの先行公開によるコ ンカレント業務の加速が挙げられ、大 きな効果が予想されたのだ。  ただし、BOMの先行公開に関して も、懐疑的な技術者は少なくなかった。 例えば「設計の部品構成だけ見ても、 図面を見なければ何も始まらない」「先 に部品表を出すと、早く図面を出せと フォローされるだけじゃないのか?」と いった意見だ。  こうした意見や疑問に対しては、標 準化が進んでくると流用率が上がるこ とを説明し、その中には図番が同じ共 通品や少し寸法を変更するが形が似 ている流用部品、現状では類似部品や 流用できる技術がなく、新しく設計し なければならない新規部品、があるこ とを整理した上で、新規部品が実際に は少ないことを確認した。  さらに、流用部品をBOM上で登録 する際に、品番の付属情報として流用 元の情報を付加する方法を提案した。 流用部品は新しい品番になるが、似て いる過去の部品が付属情報として分 かれば、ある程度の計画や手配しなけ ればならない材料などが分かるので はないかと聞いてみた。  前述の懐疑的な意見を持っていた 技術者も、「そうか、それが分かれば、 並行している他の案件を含めて、まと めて手配したり、歩留まりを検討したり、 在庫を引き当てたりすることが可能に なる」と納得した。  このような議論を続けていると、「い つ出図してくれるかという情報もあっ た方がよい」「類似図面でも十分だか ら、おのおのの品番からすぐに図面を 見られるようにしたい」という提案も出 てくる。このような提案は、生産管理で 実績を持っている生産リードタイム(L T)の情報を使って、組み立てる期日 から遡って算出した「手配しなければ ならない日程」「図面を出してほしい日 程」を教えられるような仕組みの構築 へとつながる。  実際、A社における深掘り検討の中 では、そこで出てきた意見から新たな 施策を計画に追加することになった例 も少なくない。例えば、「今の生産管理 内のLTのデータはかなりバラついて いる上、余裕を見ている。そのデータ を活用するなら、もっと正確なデータに 整備する必要がある」といったものだ。 業界で 世 界 一 既存業務の負荷を下げる 製品の標準化・モジュール化 BOM情報の活用 余力を利用して、新商品を企画・具現化する 新商品を拡販し、売り上げを拡大する 図2●改革ステップと深掘り検討する重要施策の関係

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世界で戦うための そのため、そのデータを整備するルー ルを作成することと、実際に整備する という施策を追加した。  さらに、「もっと流用品が増えたら、何 もしなくても、自動で発注がかかるよう にならないのか」といった意見もあった。 実際、そのような仕組みを導入してい る企業は存在するが、BOMで管理す る付属情報が多いとかなり難しい取り 組みになる上、新たなシステムの構築 も必要になる。そこで、高度な活用に なるため実現するには時間がかかる が、長期的な計画として組み込むこと にした。

簡易ツールで業務を可視化

 A社では生産計画を詳細に立案す る部門がなく、手配や生産する部品全 体が、最終出図が終わるまで分からな い状態で業務を行っていた。実務者は、 日々忙しく業務を行っていてスピード 感があるように見えるが、実際はまと めれば1回で完了するような手配業務 を分割して行っていることが多く、必 ずしも効率的とはいえなかった。しかも、 生産計画を行うことで、どんなメリット があり、業務がどう変わるのか言葉や 資料で説明しても、ワークショップ(WS) メンバーの間で一部しか理解できてい ない状態だった。  深掘り検討のゴールは、あるべき姿 の是正、詳細課題、実行施策を抽出し て、改革計画を立案することである。 従って、具体的な業務シーンで活用す るデータ、簡易画面を表したツールな どを用意し、それらを討議中に見せな がら業務のウオークスルーを行った。  注意した点は、システム要件を定義 する方向に議論が流れるのを防ぐこ とである。こういった活動を行うとツー ルやシステムに目が行きがちで、シス テムの機能要件を詳細に討議してしま う傾向にある。そうではなく、業務のシ 表●BOMを活用した業務シーン 1 提案型の営業 顧客要求を体系的にヒアリングでき、そのヒアリング結果から加工機の構成を速やかに提案できるようになる 2 カスタム品の開発 A社としての技術面のロードマップが明確になり、加工機だけではなく製品を含めた提案型活動が実施できるようになる 3 受注仕様の展開 営業・設計が中心となって実施した提案の内容を速やかに共有することで、ボトルネックとなる要因・要素がないかが明確になる 4 設計BOMの先行公開によるコンカレントな業務の遂行 下流工程(技術・製造)の課題をより早く共有できることで、対策が必要なのは加工機構成のどの箇所かが明確になり、図面完成度が向上する。課題と対策の内容が加工機構成にひも付くことで、案件終了後にナレッジの蓄積が可能となる 5 出図 コンカレント活動で前倒しした課題とその対応策を盛り込んだ図面をデザインレビューで承認することで、各組織が納得し、QCD(品質、コスト、納期)の観点から完成度の高い図面が展開される 6 生産計画(設計BOMと生産BOMの連携を含む) 出図状況に応じて生産計画を見直すことが容易になり、工程上/内外製検討/物流検討などのボトルネックを可視化できる 7 部品手配 生産計画の結果を受けて、手配を効率化するポイントやタイミングが明確になる 8 保守 保守内容の特定が速やかに実施でき、より効率的な保守部品の構成や内容の検討が可能となる 9 案件マネジメント(品質管理) 品質の定量・定性目標が明確になり、その達成度が可視化され、対策検討が次案件においても活用可能となる 10 案件マネジメント(原価管理) 販価や製造原価の目標値が明確になり、その達成度が可視化され、対策検討が次案件においても活用可能となる 11 案件マネジメント(進捗管理) 同時に受注されている他案件も含めた、案件ごとの納期の目標が明確になり、その進捗状況・負荷状況が可視化され、対策検討が次案件においても活用可能となる 12 海外拠点との連携 海外拠点における、標準品/オプション品/カスタム品ごとの設計情報や工程情報が可視化され、案件マネジメントが可能となる 13 要求仕様変更 顧客からの要求仕様変更の内容に応じて、その加工機構成上の該当箇所が速やかに明確になり、営業交渉に必要な事柄や金額が速やかに把握できる 14 設計変更対応 設計変更によって影響を受ける加工機構成が明確になり、設計変更の内容を速やかに共有・管理できる 15 クレーム対応 顧客からのクレーム内容に該当する加工機構成箇所が速やかに明確になることに加え、過去の不具合を有効活用し、迅速かつ正確な暫定対応・恒久対応の実施が可能となり、その対応状況を正確に管理できる

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ンと達成したい内容を定義する。具体 的には、 [1] 設計BOMを先行で公開した際に、 構成ごとの設計ステータス(完了して いるか否か)が分かるようにしたい [2] 流用を考えている部品は、その流 用元が何かを分かるようにしたい [3] 出図された図面は構成とひも付け、 手配以降の後工程で最新版を管理し、 いつでも見られるようにしたい 規」の区分、②公開したタイミングでの 「確定(設計が完了→手配可能)/未確 定(設計が未完了→手配不可)」の情 報、を付与することにした。調達、生産 部門で活用できる情報を伝達できるよ うなデータの構造を意図した結果だ。  その後、実際のデータ分析と可視 化の作業を行った。これには、データ ベース管理システムである「Microsoft Access」で簡易ツールを作成した(図 めに新しく定義した、「流用/新規」「確 定/未確定」の情報は、属性情報とし て持たせた。  一方で、完了予定日(加工したもの の組み立てを開始する予定日)から出 図納期を自動で計算する演算ロジック を追加し、出図必要期限なども可視化 できるようにした。出図納期の自動計 算では、生産システムから抜き出した 情報(生産LT)を活用した。 図3●効果を 実感するため の簡易ツール 設計構成情報 (既存のシステムから) 流用度区分を明確にするために追加した属性情報。 修正の場合には、 修正元の品番が付与される リリース時の設計完了状態を 明確にするために追加した 属性情報 生産システムの リードタイム情報を基に 完了予定日を入力すると、 自動計算される

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世界で戦うための  ここまで準備した上で、簡易ツール による結果を見ながら、実務者メンバー とWSを行う。実際の業務シミュレー ションを行うことで、今までぼんやり としか理解できていなかったWSメン バーも新業務のイメージが固まり、実 現するための詳細課題として、主に以 下の効果と課題を得ることができた。  さらに、簡易ツールでの検証を行う 中で新たに発覚した課題がある。そ れは、同一品番でも品目名称に大きな バラつきがあったことだ。例えば、品番 「A」に対して名称が「シリンダ」だった り、「シリンダー」だったりする。  これは、多くのメーカーで見られる 現象だが、同一部品かどうかをシステ ムが判断する際に不具合の原因となる 場合がある。データ名称を修正する計 画も追加することにした。  このように実施した深掘り検討の結 果、以下のような施策の効果を確認で きたとともに、課題も明確になった。 効果の検証 ・ BOMの先行公開を行うことで、コン カレントにさまざままな検討ができるよ うになる ・ 生産計画の業務を、設計から後工程 に移管することで、設計業務に集中で きるようになる ・ このデータで原価検討・調達検討を 行うと、コスト・納期を低減できる ・ 出図納期が明確になるので、計画的 な設計・手配が行える 実現するための課題 ・ 設計が保有している部品表のデータ は属性が少なく、データの構造もフラッ トに近く、業務と乖かいり離している(データ の課題) ・ LTなどの基礎情報のデータ精度向 上と、業務サイクルの中で確実に入力 ができる仕組みが必要となる(データ・ 業務の課題) ・ 調達・生産計画を専任で検討する 人材・組織を定義しなければならない (人・組織の課題) ・ リソースおよび工程負荷を考慮した、 山崩しの機能が必要である(システム の課題)  このように、具体的に抽出された課 題と想定効果を基に詳細計画を立案 し、計画に盛り込む。A社においては、 この深掘り検討を継続して行うこと が有効であることが分かり、次の実行 フェーズにおいても、検討結果を検証 する目的で活用していくこととなった。

投資対効果の確認

 深掘り検討が完了した後は、今まで 検討してきた施策の網羅性を再度確 認し、各施策の効果や施策間の相互 互換関係・難易度の視点で優先順位 を策定する。より多くの効果をもたらし、 他の施策に影響がある項目を明確に して、後戻りがないように順序を定義 した。  最後に、今までの検討結果を実行 計画書としてまとめる。実行計画書は、 今後5年間の業務改革プロジェクトの 基本となるので、A社の社員全てが理 解できるよう、社内で使っている言葉 で分かりやすくまとめることが大切で ある。  仕上げとして、改革メンバーを中心 に説明会を開催した。この説明会では、 各WSのリーダーが代表として内容を 説明する。さらに、最終的な改革の社 内意識を高めるために、改革プロジェ クトのネーミングを社内公募した。社 員自らが、改革プロジェクトの名称を 付けることで、当事者意識をより高め ることができる。  業務改革プロジェクトには多くの社 員が参加するので、全社員の意識を 高めることが非常に重要になってくる。 そのため、自らが実行責任者として活 動するように、意識付けをしっかり行う ことが大切だ。  次にはいよいよ、作成した計画に基 づく実行フェーズとなる。実行フェー ズの体制は初期に決めたWSと同様の グループとし、おのおののリーダー/メ ンバーを選定した。改革を監視するも のとして、経営陣を中心とした会議を 週1回のペースで開催することも決め た。次回は、実行フェーズでの取り組 みについて説明する。

参照

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