平 成 27年 度 特 許 庁 産 業 財 産 権 制 度 問 題 調 査 研 究 報 告 書
商標制度におけるコンセント制度についての
調査研究報告書
平 成 2 8 年 2 月
( xiv) メ キ シ コ
メ キ シ コ で は 、商 標 法 に は コ ン セ ン ト に 関 す る 規 定 は な い が 、実 務 上 コ ン セ ン
ト 制 度 が 運 用 さ れ て い る 。
同 意 書 の 採 用 の 可 否 は 審 査 官 の 判 断 に よ る こ と と な る が 、採 用 さ れ る よ り も 拒
否 さ れ る 場 合 が 多 い 。そ れ は 、商 標 が 混 同 が 生 じ る 類 似 範 囲 で あ り 、指 定 商 品 役
務 が 同 一 又 は 類 似 す る 場 合 に は 、出 願 は 拒 絶 さ れ る 傾 向 に あ る た め で あ る 。こ の
基 準 は 裁 判 所 に お い て も 同 様 で あ る 。
( xv) ブ ラ ジ ル
ブ ラ ジ ル で は 、コ ン セ ン ト 制 度 が 運 用 で 認 め ら れ て い る 。BPTO( ブ ラ ジ ル 特 許
商 標 庁 ) の 意 見 ( INPI/CPAPD No 001/2012) に お い て 、 以 下 の 基 準 が 示 さ れ て い
る
7。
1. 特 定 の 状 況 に お い て 、 共 存 協 定 契 約 書 と 題 さ れ た 書 類 は 、 審 査 官 の 意 思 形
成 の 十 分 な 関 連 要 素 と し て 斟 酌 さ れ る 。
2. 言 及 し た 共 存 協 定 契 約 書 は 、 審 査 の 負 担 を 軽 減 す る た め に の み 審 査 さ れ な
け れ ば な ら ず 、署 名 者 間 で 混 同 又 は 関 連 性 の 可 能 性 が 否 定 さ れ る 意 見 が な さ
れ て い る 場 合 に の み 採 用 さ れ る 。
3. 当 該 軽 減 は 、 LPI 135 条 に 規 定 さ れ る 取 消 規 定 を 回 避 す る た め に 、 商 標 の
移 転 登 録 の 申 請 の 審 査 に お い て も 評 価 さ れ る 。
4. INPI は 、 さ ら に 、 混 同 又 は 組 織 的 関 連 付 け の リ ス ク を 軽 減 す る こ と を 目 的
と し て 、各 当 事 者 の 商 標 で 包 含 さ れ て い る 商 品 又 は 役 務 を 最 適 な 範 囲 に 縮 減
す る た め に オ フ ィ ス ア ク シ ョ ン を 発 行 す る こ と が あ る 。
な お 、 コ ン セ ン ト に よ る 登 録 で あ る 旨 の 情 報 は 、 公 開 さ れ な い 。
( xvi) 英 国
英 国 に お い て は 、 商 標 法 第 5 条 (5)に お い て 、 コ ン セ ン ト に 関 す る 規 定 が 定 め
ら れ て い る 。た だ し 、相 対 的 拒 絶 理 由 の 審 査 が 行 わ れ な い た め 、特 許 庁 に 対 し て
7
http://manualdemarcas.inpi.gov.br/attachments/download/2099/Parecer_n_01-2012(CPAPD)conviv
encia.pdf
[最 終 ア ク セ ス 日 : 2016 年 2 月 17 日 ]
が 必 要 と さ れ る 、 と い う 回 答 も な か っ た 。
( vi) 統 計 情 報
コ ン セ ン ト に つ い て の 統 計 的 な デ ー タ は 、ほ と ん ど の 国・地 域 で 公 開 さ れ て い
な い と い う こ と で あ っ た 。唯 一 、ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド か ら は 、コ ン セ ン ト に よ る 年
間 の 登 録 件 数 に つ い て 回 答 が あ っ た( 2014 年:520 件 、2013 年:587 件 、2012:568
件 )。
( 3 ) 対 象 国 ・ 地 域 ご と の 調 査 結 果 の 比 較
各 国 の 制 度 の 比 較 結 果 を 一 覧 と し て 示 し た も の を 、 図 表 1 に 掲 載 す る 。
図 表 1 各 国 の コ ン セ ン ト 制 度 比 較
制 度 の
根 拠
完 全 型 か
留 保 型 か
同 意 書 の
提 出 時 期
同 意 書 の
所 定 の フ ォ
ー マ ッ ト
同 意 書 の
必 須 内 容 ・
実 務 上 推 奨
さ れ る 内 容
同 一 商 標
同 一 商 品
に 関 す る
コ ン セ ン ト
周 知 ・ 著 名
商 標 に 関 す
る コ ン セ ン
ト
公 報 ・ 登 録
簿 ・ デ ー タ
ベ ー ス で の
公 開
中 国
内 部 ガ イ ド
ラ イ ン
留 保 型
拒 絶 査 定
不 服 審 判 時
有
通 常 難 し い
可
韓 国
コ ン セ ン ト 制 度 は 存 在 し な い 。
た だ し 、 商 標 法 全 面 改 正 法 律 案 に コ ン セ ン ト 制 度 が 含 ま れ て い る 。
米 国
審 査 便 覧
留 保 型
拒 絶 理 由
対 応 時
有
可
可
EU(CTM)
規 則
相 対 的
拒 絶 理 由 の
審 査 な し
提 出 不 要
可
可
台 湾
法 律
留 保 型
審 査 係 属 中
有
不 可
可
有
香 港
法 律
留 保 型
出 願 時 ・
拒 絶 理 由
対 応 時
有
(サ ン プ ル )
有
可
可
有
シ ン ガ
ポ ー ル
法 律
留 保 型
拒 絶 理 由
対 応 時
有
可
可
有
ベ ト ナ ム
運 用
留 保 型
制 限 は な い
有
不 可
可
マ レ ー シ ア 審 査 基 準
留 保 型
審 査 係 属 中
有
可
可
有
イ ン ド
法 律
留 保 型
(実 務 上 は
ほ ぼ 完 全 型 )
審 査 係 属 中
有
可
可
有 ( デ ー タ
ベ ー ス に は
掲 載 無 し )
オ ー ス ト
ラ リ ア
運 用
留 保 型
(実 務 上 は
ほ ぼ 完 全 型 )
拒 絶 理 由
対 応 時
有
有
可
可
ニ ュ ー ジ ー
ラ ン ド
法 律
完 全 型
出 願 か ら
12 か 月
有
有
可
可
有
カ ナ ダ
審 査 基 準
留 保 型
審 査 係 属 中
有
通 常 難 し い
可
メ キ シ コ
運 用
留 保 型
審 査 係 属 中
通 常 難 し い
不 可
ブ ラ ジ ル
運 用
留 保 型
制 限 は な い
有
可
英 国
法 律
相 対 的
拒 絶 理 由 の
審 査 な し
提 出 不 要
有
可
可
ス ペ イ ン
コ ン セ ン ト 制 度 は 存 在 し な い 。
た だ し 、相 対 的 拒 絶 理 由 の 審 査 が な く 、当 事 者 間 の 同 意 に よ り 異 議 申 立 て の 解 決 が な さ れ る こ と が あ る 。
ス ウ ェ ー デ
ン
法 律
留 保 型
拒 絶 理 由
対 応 時
可
可
ハ ン ガ リ ー
法 律
相 対 的
拒 絶 理 由 の
審 査 な し
審 査 係 属 中
有
可
可
ロ シ ア
法 律
留 保 型
審 査 係 属 中
有
不 可
不 可
【15.ブラジル】
質問 回答 A.コンセント制度の有無 採用 B.コンセント制度は何で規定されるか (法令か運用か) BPTOの意見(INPI/CPAPD No 001/2012)において以下の基準が示された。 1. 特定の状況において、共存協定契約書と題された書類は、審査官の意思形成の十分な関 連要素として斟酌される。 2. 言及した共存協定契約書は、審査の負担を軽減するためにのみ審査されなければなら ず、署名者間で混同又は関連性の可能性が否定される意見がなされている場合にのみ採用さ れる。 3. 当該軽減は、LPI 135条に規定される取消規定を回避するために、商標の移転登録の 申請の審査においても評価される。 4. INPIは、さらに、混同又は組織的関連付けのリスクを軽減することを目的として、各当 事者の商標で包含されている商品又は役務を最適な範囲に縮減するためにオフィスアクショ ンを発行することがある。 C.コンセント制度の対象 需要者 C.1.先登録商標に基づく職権による拒 絶理由通知への対応が可能か 可能である。 C.2.先登録商標に基づく商標登録に対 する異議申立への対応が可能か 可能である。 C.3.先登録商標に基づく商標登録に対 する無効審判・取消審判への対応が可 能か 可能である。 C.4.コンセントによる登録商標に対し て異議申立・無効審判請求等が可能か はい。 A.同意書提出のタイミングは限られる か(出願時や拒絶理由の対応時に限ら れるか) いつでも。拒絶の前又は後。例えば、異議申立の回答時、或いは拒絶の審判の提出時。 B.同意書の所定のフォーマットがある か いいえ。 C.同意書の記載内容は決まっているか 契約内容(出所混同が生ずるおそれが 存在しない理由や混同の回避のための 取り決め)を記載するか いいえ。しかしながら、通常、特定の情報を記述する必要がある。それは、当事者が提供す る事業、それぞれの商品役務、そして市場において混同が生じないことである。商品役務の リストを縮減する必要も求められる。 D.同一商標・同一商品に関するコンセ ントは可能か いいえ。 E.周知・著名商標に関するコンセント は可能か はい。ブラジル特許庁は混同の可能性について常に審査する。 F.コンセントは審査官の判断を拘束す るか(完全型か)、それとも審査官の 類否判断に当たって参酌されるか(留 保型か) ・留保型の場合、提出された同意書は どのように審査されるのか(コンセン トを認めない場合等の判断基準、手法 等) ・グループ会社であることの考慮の有 無 裁量。利用できる基準は前記のもののみである。ブラジル特許庁は、商標及びそれぞれの商 品役務の間で混同の可能性が認められるか審査する。出願人が、先行商標権者と同一の経済 グループに属することを証明した場合には、引例は克服されることとなる。かかる場合、両 企業が同一の統制者を有していることを示す明確な証拠が求められ、同意書の提出は必要と されない(ブラジル特許庁の意見(INPI/proC/DIRAD No. 12/8))。 G.先願商標がコンセントを得た登録の 場合の対応 (先願商標の同意者すべてからコンセ ントを得る必要があるか) ブラジル特許庁による基準はない。直接引用されている商標については、通常、全ての商標 権者からの同意を得ることが必要とされる。 A.同意に基づく商標の移転の制限の有 無 いいえ。しかし、知的財産法135条の規定に留意する必要がある。 135条:移転は、同一又は類似、同種の商品又は役務に関する同一又は類似の商標の全て の登録又は出願を含まなければならない。 B.登録後の同意の取り消しの可否 取り消した場合、自動的に商標が失効 するか? いいえ。 C.更新時の手続(同意書の写しの提出 が必要か) いいえ。A.コンセントによる登録例 第3類の商標「COLOR TOUCH SUNLIGHTS (&Design)」が先行商標「SUNLIGHT」(第3類)に 基づいて拒絶され、審判を同意書と共に請求した結果、登録が許可された。 B.コンセントに関する統計 いいえ。 C.コンセントに関する裁判例 いいえ。 D.公報、登録簿、商標検索サーチツー ル(例:TESS(アメリカのインター ネット商標検索システム))等におい て、コンセントにより登録された商標 であることを明示しているか否か 同意書によって登録されたかどうかは登録のデータには示されない。 1.制度概要 2.制度詳細 3.登録後 4.付加情報
資料Ⅰ-1
【15.ブラジル】
E.制度概略
F.関連する法律 BPTO`s opinion INPI/CPAPD nº. 001/2012 and Brazilian IP law - article 124, XIX. G.関連する審査基準 Trademark Manual - Resolution INPI/PR nº 142/2014 - Version of December 2014
H.サンプル なし。
4.付加情報