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第1章 地域の概要と関連計画

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Academic year: 2021

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はじめに

観光消費が地域にもたらす経済効果は、主に以下の3項目から構成されます。

① 観光客数 × ②消費単価 × ③域内調達率

これら3項目をバランス良く高めていくことが、地域の観光産業をより付加 価値の高い、持続力のある力強い産業へと発展させることにつながります。 佐野市においても、引き続き観光客数の維持・増加に努めるとともに、観光 客の消費単価ならびに観光関連事業者の域内調達率をより高めていくことが大 切です。そうすることで、観光消費の経済波及効果は観光関連産業のみならず、 佐野市内の様々な産業や地域住民の所得へと波及していきます。 佐野市は周辺市町村に比べて多くの観光客が訪れています。その大半は関東 地方からの日帰り客であり、リピーター率がおよそ 8 割と高い点が特徴です。 こうした特徴を踏まえ、観光振興による佐野市経済の活性化に向けて佐野市の 事業者ならびに行政が取り組むべき方策の3つの方向性を示します。

 ① 観光客数

を増やす     (来訪頻度を高める)

 ② 消費単価

を増やす

 ③ 域内調達率

を増やす  【方向性③】 佐野の良いもの・サービスを積極的に売る  【方向性②】 来訪客が集まるところでの消費機会を増やす  【方向性①】 佐野リピーターを大事にする

図表 4-1 観光振興による佐野市経済の活性化に向けた取り組みの方向性

観光振興による佐野市経済の活性化に向けて

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観光振興による佐野市経済の活性化に向けて

【方向性①】佐野リピーターを大事にする

佐野市の来訪客は、リピーター(再訪者)の割合が 8 割と高いことが大きな 特徴です。佐野市訪問経験 10 回以上のヘビーリピーターも 3 割存在しており、 彼らの佐野市内における支出総額の大きさは測りしれません。こうした佐野リ ピーターの再訪行動がとぎれることのないよう、引き続き再訪を促す取り組みを 進めることが大切です。佐野リピーターを大事にすることで、彼らの口コミ効 果により初来訪者の増加にもつながります。

【方向性②】来訪客が集まるところでの消費機会を増やす

消費単価を増やすためには、良質の商品・サービスの存在もさることながら、 来訪客がそれらを購入する機会を増やすことが大切です。そのためには、多く の来訪客が立ち寄るエリアにおいて、来訪客のための消費機会を充実させるこ とが求められます。

【事例】「産業観光プラザ すみだ まち処」(墨田区)

墨田区(東京都)では、長年にわたり地域のものづくり文化の振興に取り組 んでいます。平成 24 年の東京スカイツリー開業を契機に、区内の優れた商品な ど「すみだの魅力」を通じて、すみだの知名度を高めていくことを目指して、 「すみだ地域ブランド戦略」の取り組みを開始しました。 この取り組みの目玉は、東京スカイツリータウン併設の商業施設「東京ソラ マチ」内にオープンした「産業観光プラザ すみだ まち処(どころ)」です。平 成 23 年度に約 2.8 億円(整備費)、平成 24 年度に約 1.6 億円(運営費)を計上 して 650 ㎡の床面積を確保。墨田区を回遊してもらうための観光情報などの提 供に加えて、「ものづくりのまち すみだ」の区内企業の製品の数々を展示・実演・ 即売(年間売上目標額:2.8 億円)しており、好評を博しています。

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【方向性③】佐野の良いもの・サービスを積極的に売る

佐野市内で作られた新鮮な食材を活用した料理や、佐野市内の製造業者が生 産した商品、佐野市内のサービス業者が提供する体験メニューなどのサービス を来訪客に向けて積極的に販売することが、観光消費に係る域内調達率の向上 につながります。さらに、観光客には多少割高でも地場のものを選んで購入す る傾向があることから、消費単価の向上も期待できます。 なお、佐野市の商品・サービスの認知度を高めるためには、商品の性質にも よりますが、佐野市外での販路拡大を図ることも効果的です。

【コラム】地元食材を活かした料理の提供

観光客は地元産の食材を利用 した料理を好んで選ぶ傾向が高 く、多少割高であってもこれを 選ぶ人々が多いものと考えられ ます。したがって、域内調達率 の向上とともに、消費単価の向 上も期待できます。 佐野市では、飲食業と宿泊業 を中心に地元野菜の利用率が高 い傾向が見られました。一方で、 仕入れ価格や量、質という観点から日常的に使用することは厳しい状況にある ことも、事業者アンケート調査やヒアリング調査からうかがえました。 佐野市内における地元食材活用の一例をあげると、農協による規格外品の野 菜(特に餃子に使うニンニクなど)の市内での販売が不定期ではありますが既 に行われており、地元ラーメン店での活用事例も見られました。このような仕 組みを拡充していくことも検討に値するでしょう。 道の駅「どまんなか たぬま」では、地産地消を積極的に進める一方で、全国 各地から優れた食材を取り寄せて効果的に活用することで、順調に売上を伸ば しています。消費者の支持を得るためには、地産地消を目指すとともに、商品 やサービスの質の高さを追求することも併せて求められます。 34.6% 25.3% 10.4% 9.9% 7.7% 6.9% 6.3% 6.0% 4.7% 0% 10% 20% 30% 40% 地場産の食材利用 あらかじめ決まっていた そこでしか食べられない 同行者・知人のすすめ 価格・値頃感 この時期にしか食べられない 知名度 店のおすすめ 以前食べて美味しかった 観光客が旅行先で料理を選んだ理由(複数回答) 出典:地域観光の地域自立型産業への展開に向けて (釧路公立大学地域経済研究センターほか、2004 年)

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【コラム】定住人口 1 人分の市内消費支出は観光客 82 人分

佐野市来訪客が何人増えると、定住人口 1 人増加分の消費拡大効果が期待で きるのでしょうか。佐野市居住者が佐野市内で使うお金は 1 人当たり年間でお よそ99 万円※。一方、佐野市来訪客が佐野市内で使うお金は 1 人当たり 1 万 2 千円です。したがって、佐野市来訪客を82 人誘客することで、佐野市の定住人 口1 人分の消費拡大効果が期待できることになります。 ※人口5 万人以上 15 万人未満の市の、1 人 1 ヶ月当たり消費支出 94,138 円(平 成23 年家計調査より算出)に、佐野市の地元購買率 87.6%を乗じて推計。

【コラム】消費単価を 500 円上げると経済効果はこれだけ高まる!

最後に、佐野市で観光消費拡大に向けたさらなる取り組みを進めることによ り、どれだけの経済効果の伸びが期待できるのかを試算した結果を紹介します。 具体的には、飲食費および買物代が来訪者 1 人当たり 500 円増えた場合の、 年間の経済効果の伸びを推計しました。

■ 飲食費が1人平均500円増えると…

観光消費による経済波及効果の増加分 5 4 億円 付加価値効果の増加分 2 0 億円 雇用効果の増加分 4 1 1 人 来訪客の飲食費が1人平均500円増えると、地域にもたらされる経済波及効果は54億円増 え、雇用効果は411人増えるものと推計されます。

■ 買物代が1人平均500円増えると…

観光消費による経済波及効果の増加分 4 9 億円 付加価値効果の増加分 1 1 億円 雇用効果の増加分 2 3 2 人 来訪客の買物代が1人平均500円増えると、地域にもたらされる経済波及効果は49億円増 え、雇用効果は232人増えるものと推計されます。

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さいごに

最後に、佐野市の観光振興政策に求められる基本的な考え方や取るべき施策 について整理します。

(1)観光関連産業の裾野の広さを認識する必要性

観光関連産業は非常に幅広い業種によって構成されており、さらに観光消費 の経済効果はほぼ全ての業種へと波及していきます。 しかし、今回の事業所調査において観光関連産業向けの調査票を送付した事 業所のうち、観光との関連性があると回答した事業所は 7 割弱に留まり、25% は「ほとんど関係ない」という回答でした。 今後は、佐野市内のより多くの方々に、観光関連産業の裾野の広さを認識し ていただくことが、佐野市の観光振興政策を効果的に進めていく上で重要です。 共通の問題意識を持ち、各主体が各場面にて意識的に観光による経済波及効果 を高めていく取り組みを進めていくことで、高い相乗効果が期待できます。 図表 3-2 業種別にみる観光消費の経済波及効果 出典:社団法人日本ツーリズム産業団体連合会 0 2 4 6 8 農林水産 食料品 繊維製品 パルプ・紙・木製品 化学製品 石油・石炭製品 その他製造業 建設 電気・ガス・水道 卸売業 小売業 金融・保険・不動産 鉄道輸送 道路輸送 航空輸送 運輸付帯サービス その他運輸 通信・放送 娯楽サービス 飲食店 旅館その他の宿泊所 その他サービス等 兆円 直接効果 1次効果(原材料波及効果) 2次効果(家計迂回効果) 0 20 40 60 80 農林水産 食料品 繊維製品 パルプ・紙・木製品 化学製品 石油・石炭製品 その他製造業 建設 電気・ガス・水道 卸売業 小売業 金融・保険・不動産 鉄道輸送 道路輸送 航空輸送 運輸付帯サービス その他運輸 通信・放送 娯楽サービス 飲食店 旅館その他の宿泊所 その他サービス等 万人 直接効果 1次効果(原材料波及効果) 2次効果(家計迂回効果)

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(2)広域連携による効果的な経済循環の形成

佐野市の立地や交通環境条件などを鑑みると、近隣の館林市、栃木市、足利 市などとの生活圏上のつながりは大きなものがあります。今回の事業所ヒアリ ングにおいても、観光関連産業の仕入れや雇用、ツアールートなどにおいても 深いつながりがあることが明らかになりました。 域内調達率を意識する際には、佐野市内という観点に加えて、両毛地域のよ うな広域エリアを意識した取り組みを推進することで、観光消費を起点とした、 より効果的な経済循環を形成することが期待できます。

(3)効果的な施策立案のための観光統計の充実

地域の経済効果向上に資する観光政策を進めていくためには、データに基づ いた施策の立案を行うとともに、各施策の効果検証を定期的に実施し、その結 果に基づき必要に応じて資源の配分や施策内容の見直しを図ることが大切です。 この効果検証を適切に実施するためには観光統計の充実が不可欠であり、具体 的には来訪客(観光客)数、消費単価、域内調達率などの指標について、できる だけ正確な数値を把握することが求められます。 ①来訪客数と消費単価 観光客立寄施設でのカウント調査(着地調査)をより充実させるとともに、 定期的に一般消費者を対象とした観光動態調査(発地調査)を実施することに よって、より正確な来訪客数の把握を目指すことが望まれます。 1)観光客入込数カウント調査(着地調査)のルールの統一と徹底 観光客の正確な入込数を把握するために、観光客立寄施設における入込数カ ウント方法の統一ルールを定め、これを徹底させることが求められます。 2)消費者を対象とした旅行動態調査(発地調査)の定期的な実施 本調査で実施した「A.観光客アンケート」と同様の方法により、佐野市へ の年間来訪回数(この数値をもとに来訪客数を算定)や観光客立寄施設への立 ち寄り箇所数といった旅行動態、ならびに佐野市内での消費実態などを把握す ることが望まれます。この際、観光目的のみならず、ビジネス客や親族・知人 訪問客など、幅広い範囲での佐野市来訪客数を把握し、佐野市外からの来訪客

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来訪客の動向は年単位での変動が大きいため、毎年調査を実施する必要があ ります。また、季節毎の変動も大きいことや、回答者の記憶力の限界を考慮す ると、年2回以上の調査実施が望ましいです。 ②域内調達率 本調査では「B.事業者アンケート」において、観光事業者はもちろんのこ と、一般事業者も含めた佐野市内の幅広い事業者から域内調達率や経費構造に ついて把握しました。これらの指標は、毎年大きく変動する性質のものではな いことから、数年置きに調査を実施することが望まれます。

参照

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