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長期保存食品中ビタミンB12の保存による変化

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研究報文

長期保存食品中ビタミン B

12

の保存による変化

桂 博美,中上 奈緒

Effect of storage on vitamin B

12

in long-term storage foods

Hiromi Katsura and Nao Nakagami

Ⅰ.はじめに

 ビタミン B12は,ヘム色素に似たテトラピロール 骨格を持ち,中心にコバルトを配した分子量の大き なビタミンであり(図 1),微生物によって合成さ れる。コバルトの上方配位子は,主に4種であるが, ヒトの体内では,メチル基とアデノシル基を配する 場合のみ,補酵素として働くことができる。ビタミ ン B12を含むサプリメントの多くは,シアノコバラ ミン(シアノ基を配するビタミンB12)のみを含むが, シアノコバラミンは,その他の3種よりも補酵素型 への変換効率が低いとされており,非シアノコバラ ミンを多く含む食品をビタミン B12供給源とするこ とは望ましい。ビタミン B12は,動物性食品や発酵 食品に含まれるが,多量に含まれる食品は非常に限 定されている。その上,これらの動物性食品に含ま れるビタミン B12のほとんどはタンパク質に結合し ている。図2に示したようにこのビタミンの吸収は, 胃酸とペプシンによって食品の塊やビタミン B12結 合タンパク質が分解を受けて胃内で遊離したビタミ ン B12と唾液腺由来のハプトコリンが結合すること から始まる1)。次いで,十二指腸でハプトコリンが 部分分解を受けて再び遊離したビタミン B12は次に 胃壁細胞由来の内因子と結合する。ビタミンB12-内 因子複合体は回腸上皮細胞から突き出た多機能受容 体であるキュビリンと結合して,腸管細胞に取り込 京都女子大学調理学第一研究室 Abstract

Vitamin B12 is bound to proteins in foods. In order to be absorbed by the body, after food is chewed and

mixed with saliva, vitamin B12 is liberated in the stomach. The vitamin B12 binds with haptocorrin, which is

secreted from salivary gland. Elderly people have reduced digestion and absorption potential. It is possible to make processed in which vitamin B12 is easily released in the stomach. In addition, long-term storage food

is indispensable to lives for the elderly, who have been called “shopping refugee”. However, it is not known whether long-term storage of food affects the ease of absorption of vitamin B12 contained in the foods. In this

study, we analyzed the percentage of free vitamin B12 and amount of vitamin B12 in canned mackerel in water

that had been stored for 4-330 days and in long-life milk that had been stored for 1-70 days. We found that the amount of vitamin B12 in long-life milk of the same lot was reduced by about 40% by day 70 compared with

that immediately after production. In addition, the proportion of free vitamin B12 in the canned mackerel was

reduced significantly at 9-11 months after production compared with that at 4-10 days after production. (Received September 26, 2013)

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まれる(図 2 )。このような複雑な吸収経路を辿る のは,ビタミン B12が微量である事に加え,その構 造(図1)が複雑であり,テトラピロール骨格のみ ならず,コバルトの下方に配する5,6-ジメチルベン ズイミダゾールも判別して吸収しようと試みている ためであると考えられている。  萎縮性胃炎など消化吸収能力の衰えた高齢者にお いては,胃内におけるタンパク質の消化能力が低下 するためビタミン B12を遊離することができず,ビ タミン B12の吸収率が低下する2)–5)。これは,食物 結合型ビタミン B12吸収不全(タンパク質結合型ビ タミン B12吸収不全)と呼ばれる。このような吸収 不全によって,ビタミン B12が不足しメチオニンシ ンターゼの活性が低下すると,血中ホモシステイン の濃度が上昇し,循環器疾患のリスクファクターと なる。ビタミン B12欠乏症として知られる巨赤芽球 貧血の発症は極めて稀であるが,欠乏症には至る前 の,不足の状態が長期化して引き起こされる高ホモ システイン血漿は高齢者においてしばしば見られ, 改善が望まれている。そこで高齢者がビタミン B12 不足に陥らないための情報が必要とされる。しかし, 具体的には,食品ごとおよび調理・加工形態ごとに ビタミン B12の体内への吸収のしやすさが異なって いることから,これらを明らかにしていく必要があ る。  ところで近年,地域の事情により,自動車という 交通手段を持たない高齢者が買い物難民と呼ばれる など,食品を頻繁に購入できない高齢者が存在する。 そのような高齢者にとっては,長期保存食品は買い 置きができるものであり,非常に便利である。しか しながら,長期保存食品を長期保存している際のビ タミン B12の量的変化や吸収のしやすさへの影響に ついては,情報が少ない。そこで,長期保存食品中 のビタミン B12の量について保存期間中の変動を検 討することを目的とした。また,長期保存食品は長 期の保存を可能にするために加圧加熱を行うが,そ の処理がビタミン B12の吸収にどのような影響を与 えるのか,さらにビタミン B12吸収への加圧加熱の 影響が長期保存によってどのように変化するのかに ついても興味が持たれる。ビタミン B12はその特異 な吸収経路から,胃内において塩酸とペプシンでタ ンパク質が消化されて,ビタミン B12が遊離し,唾 液腺由来のハプトコリンと結合するための準備がな されることが吸収の第一段階として重要である。こ のため,胃内の状況を再現するために胃内人工消化 試験を行い,胃内における総ビタミン B12量に占め る遊離型ビタミン B12割合を決定することで,吸収 のしやすさとして評価できる。そこで,長期保存食 品に含まれるビタミン B12の吸収のされやすさに与 える長期保存の影響を明らかにするために,これら の食品を長期保存し,遊離型ビタミン B12の割合の 経時的変化を検討することを目的とした。  本研究は,日本人のビタミン B12供給源として寄 与率の高い6)魚介類(84%)・乳類(6%)の中で, 長期保存食品として知られているサバ水煮缶詰およ びロングライフ牛乳(LL 乳)をに着目し,<実験 1>LL乳の長期保存期間中のビタミンB12量の変化 を検討,<実験2>サバ缶詰の胃内人工消化試験前 後の遊離型ビタミンB12割合について検討を行った。

Ⅱ.方法

1.材料・試薬  LL 乳はA社より,市販前の製造直後で同じロッ トのものを提供していただき,常温で保存し,経日 変化を追うため製造日より1~ 70 日目まで 1 ~数 日おきに開封して試料とした。また,市販のLL乳は, 京都市内のスーパーマーケットで入手した 4 社の 4 商品を購入し,市販されている LL 乳に含まれるビ タミンB12量を明らかにするために実験に用いた。  保存期間の影響を検討したサバの水煮缶詰はB社 より,市販前の製造直後のものを提供していただき, 常温で保存し経日変化を追うため製造日より 4 ~ 330 日まで数日から数十日おきに開缶し,煮汁(煮 汁試料)と固体に分けて重量測定を行い,固体には 同量の蒸留水を加えて 15000 rpm で 5 秒間粉砕し, 図 2.食物からのビタミン B12の吸収経路  口腔内に取り込まれたビタミン B12は,胃に運ば れて胃酸とペプシンの作用により結合タンパク質が 分解されると遊離し,唾液腺由来のハプトコリンと 結合する。次に十二指腸に運ばれて膵プロテアーゼ の作用を受け,ハプトコリンが部分分解を受けると 再び遊離し,胃壁細胞由来の内因子と結合する。そ の後,回腸上皮細胞表面に存在する多機能レセプ ターであるキュビリンに結合し体内に取り込まれる。

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遠心分離(3100 rpm,15分)後,上澄み(固体試料) を回収し以後の実験に用いた。また,市販のサバ缶 詰は,京都市内のスーパーマーケットにて5社の11 商品(みそ煮,味付,水煮)を購入して保存せずに 市販されているサバ缶詰の購入時のビタミン B12含 有量を明らかにするための実験に用いた。なおこの 実験は固体,煮汁に分画して行った。  標品ビタミン B12はシグマ社(アメリカ合衆国) より,ペプシン(1:10000)はナカライテスク株式 会社(京都)より,ビタミンB12定量用基礎培地は, 日水製薬株式会社(東京)より,ATCC7830 株は, American Type Culture Collection(アメリカ合衆国) より購入した。その他一般的な試薬はナカライテス ク株式会社(東京)のものを用いた。また,サバの 粉砕にはBLAS-101(日本精機株式会社)を使用し, ゲル濾過用のカラムは Amersham Biosciences 社の PD-10 Columnを,プロテインアッセイCBB溶液(5 倍濃縮)および牛血清アルブミンはナカライテスク 株式会社より購入して用いた。その他一般的な機器 を使用した。 2.LL 乳のビタミン B12定量方法  A 社より購入し1~ 70 日間常温保存した LL 乳ま たは市販の LL 乳 70 ml に 0.02% KCN 含む 0.25 mol/l 酢酸緩衝液(pH 4.9)30 ml を加えて混和し,沸騰水 浴中で1時間シアノ化熱水抽出を行った。冷却後は, 重ねたガーゼでこし,遠心分離(3000 rpm,5 分) を行って上清を得て小分けして冷凍保存し,定量の 際に随時解凍し,定量用試料とした。  ビタミンB12の定量は,ビタミンB12要求菌である Lactobacillus leichmannii(ATCC7830 株)の増殖活性 を利用した微生物学的定量法を用いて行った。な お,本法は日本標準食品成分表の定量において採用 されている方法であり,ビタミン B12定量用培地に 前培養した前述の菌を接種して18時間培養した後, 菌の増殖活性(770 nm,濁度;100 -% T)を測定 した。また,アルカリ耐性因子と呼ばれるビタミン B12以外の菌の増殖因子を除外するため,シアノ化 した試料 0.05 ml に対し 0.1 mol/L の NaOH 1.1 ml を 加えて混和し,オートクレーブで 120 ℃ 30 分加熱 した。これを室温に戻した後に1mol/L の酢酸溶液 を用いて中和した。このアルカリ処理を行った因子 についても上記の菌の増殖活性を測定し,アルカリ 処理を行っていない試料のB12定量値から差し引き, 真のビタミンB12量を求めた。 3.サバ缶詰の胃内人工消化試験および遊離型ビタ ミン B12割合の決定方法  常温で4 ~ 330日間保存し,開缶後煮汁試料およ び固体試料に分け,それぞれ人工消化試験を行った。 胃内人工消化試験は,アンソン法をもとに一部改変 して行った。食品 1 g を褐色試験管に取り,0.01% ペプシン溶液 2 ml および 0.06 M-HCL 溶液 29 ml を 加え,恒温槽で30分間消化した。1 M-NaHCO3溶液 5 ml を加えて反応を停止し,氷中で 5 分間冷却した 後,遠心分離(3100 rpm,15分間)してその上清を 胃内人工消化後試料とした。人工消化試験前後の煮 汁試料および固体試料のそれぞれ0.5 mlにグリセリ ン0.15 mlを加えて混和し,PD-10を用いてゲル濾過 し,ろ液を 0.5 ml ずつ回収し 24 本に分画した。24 本の各画分についてビタミン B12を前述の方法に準 じてシアノ化して定量し,さらに CBB 溶液を用い た色素結合法によりタンパク質を定量した。高分子 であるタンパク質結合型ビタミン B12はフラクショ ン7前後に溶出し,遊離型ビタミンB12はフラクショ ン 11 前後に溶出したことを予め確認していたこと から,先の定量結果から得られた溶出パターンと ピークの位置より,タンパク質結合型ビタミン B12 割合および遊離型ビタミンB12割合を決定した。 4.市販サバ缶詰に含まれるビタミン B12量の定量  5社11商品の市販サバ缶詰(みそ煮,味付,水煮) から分画した固体,煮汁は,固体試料と煮汁試料と して定量を行った。固体試料は,25 gを計量し,水 55 mlと0.02% KCN含む0.25 mol/l酢酸緩衝液(pH 4.9) 30ml を加えて,沸騰水浴中で 30 分シアノ化熱水抽 出を行い,3100 rpmで15分間加熱して上清を回収し, ビタミン B12の定量用試料とした。煮汁試料は, 70 ml計り取り,これに0.02% KCN含む0.25 mol/l酢 酸緩衝液(pH 4.9)30 ml を加え,シアノ化熱水抽出 は固体試料と同様に行った。ビタミン B12の微生物 学的定量は,ビタミンB12要求菌であるLactobacillus leichmannii(ATCC7830 株)の増殖活性を利用し LL 乳の項に記載した方法で行った。

Ⅲ.結果および考察

1.LL 乳に含まれるビタミン B12量の長期保存期間 中の変化  製造直後の LL 乳を入手し,1 日目から 70 日目ま で常温で保存したLL乳に含まれるビタミンB12量の 変化を検討した。その結果を図3に示した。LL乳は, 135 ~ 150℃で 2 ~ 4 秒間滅菌が行われた後に遮光

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可能な紙パックに無菌充填包装されるため,常温保 存可能であり賞味期限が長い。しかしながら,同じ ロ ッ ト の LL 乳 を 長 期 保 存 し た 結 果, 製 造 直 後 (0.35 µg/100 ml)に比べて 70 日目までにビタミン B12 は,製造直後の60%(0.20 µg/100 ml)まで減少した。 牛乳中のビタミン B12の分解については,超高温短 時間殺菌乳(UHT 乳)について渡辺らの報告7) あるが,その際は,店頭販売の際の照明によるリボ フラビンの光分解によって生じるフリーラジカルが 関与していると説明されていた。しかしながら, LL乳については遮光パックが採用されており,光 以外の原因が考えられる。LL 乳の保存中の品質に 関しては,1984 年に財団法人日本乳業技術協会よ り報告8)されているが,その中で遮光パック中のリ ボフラビンは,長期保存においてもほとんど消失し ていなかったことが示された。また,同文献によれ ば,30℃で保存した場合には,90日間でビタミンC が大部分消失し,ビタミン B12は 50%に減少してい たと報告されていた。このアスコルビン酸の酸化分 解がビタミン B12の減少に影響した可能性も考えら れる。このように LL 乳などの長期保存可能食品で あってもビタミン B12は安定ではなく減少していく 事から,できるだけ早く消費される方が望ましいこ とが明らかにされた。 2.サバ水煮缶詰の遊離型ビタミン B12割合の長期 保存期間中の変化  次に,サバ水煮缶詰の魚肉に含まれるビタミンB12 の遊離型割合の長期保存に伴う変動を検討した。そ の際,ビタミン B12吸収の仕組みを考慮し,胃内人 工消化試験前および胃内人工消化試験後の試料を用 意して行った。なお,保存期間は,4,6,10,17, 34,48,150,180,210,270,300,330 日 後 と し, 結果を 4 ~ 10 日,17 ~ 48 日,5 ~ 7 か月,9 ~ 11 か月に区分して平均値で図4に示した。実験結果よ り,胃内人工消化試験前の試料の保存期間 9 ~ 11 か月において製造直後の 4 ~ 10 日のものより有意 に遊離型ビタミン B12割合が減少していることが分 かった。また,全体を通しても保存期間が長くなる につれて遊離型ビタミンB12割合の減少が見られる。 このことは,タンパク質結合型ビタミン B12の方が 遊離型より安定であり,より長期の保存に耐え得る ことを示している。缶詰に含まれるビタミンB12は, 缶の遮光性によって光によるビタミン B12への影響 を避けることができるが,遊離型ビタミン B12は安 定しているとは言えない状況であることが分かっ た。サバの缶詰の賞味期限は3年間とされているが, 1 年あまりでも変化があることが分かり,ビタミン B12の吸収のしやすさの上では,長期保存食品では あってもできるだけ早めの消費が望ましいことが示 唆された。さらに,サバの水煮は今回の実験と同条 件の胃内人工消化前後を通じて 80%~ 90%の遊離 型ビタミンB12が含まれており(論文投稿中),高齢 者にとっては,缶詰よりも鍋で調理されたサバの方 がビタミンB12供給源としてより有効である。 3.市販のサバ缶詰および LL 乳に含まれるビタミ ン B12量  京都市内の一般的なスーパーマーケットで入手が 可能であった5社11商品のサバ缶詰について,固体 試料100 g中に含まれるビタミンB12量および,固体 試料 100 g に相当する缶詰内の煮汁試料あたりのビ タミン B12量を定量した。その結果を,表 1 にまと 図 3.LL 乳に含まれるビタミン B12量の長期保存中 の変化  製造直後の LL 乳を入手し,1 日目から 70 日目ま で常温で保存した LL 乳のビタミン B12量の変化を 検討した。その結果,LL 乳中のビタミン B12量は 70 日目には製造直後の約 60%まで減少していた。 値は,平均値±標準偏差で示した(n=3)。 図 4.サバ缶詰の遊離型ビタミン B12割合の長期保存 期間中の変化  サバ缶詰の魚肉中に含まれる総ビタミンB12に占め る遊離型ビタミンB12の割合は,胃内人工消化試験前 には,製造直後と 9~11 か月保存のもので有意に低 下していた。値は,平均値±標準偏差で示した(n=3)。

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めた。これらの結果から,サバ缶詰に含まれるビタ ミン B12量は,最小値と最大値の間で約 4 倍も異な ることが分かった。しかし,最大値を示したC社の 商品は今回用いた 11 商品の中で唯一,寒サバを使 用しているものであり,サバの種差が影響したと考 えられた。種類別では,味付で他よりビタミン B12 量が高いものがあったが,有意差は見られなかった。 味付の調味料に魚介エキスなどのビタミン B12含有 量の高い調味料が用いられているとの表示はなされ ていないので,他より高い原因は分からない。また, 煮汁に溶出したビタミンB12の割合は,D社で高く, これは加圧加熱殺菌時間が他社より長い可能性が考 えられる。  次に,4 社 4 商品の市販の LL 乳 100ml に含まれる ビタミン B12量を定量し,表 2 にまとめた。その範 囲は 0.25 ~ 0.39 µg/100 ml であった。市販の LL 乳 の保存期間は概ね2週間から1カ月程度であったが, 保存期間とビタミン B12量に相関性は見られなかっ たが,これは産地,メーカーごとの殺菌条件の詳細, ビタミン B12含有量など原乳の状況が異なるためで あると考えられる。 4.まとめ  サバの缶詰や LL 牛乳などの商品は,長期保存を 可能にするため加圧加熱殺菌が行われる。この加圧 加熱は,加熱にさらに圧力が加わりタンパク質周囲 の水が排除され体積が減少し,また,疎水的な会合 などが起こるため消化性が低下する可能性がある。 また,保存期間中にビタミン B12量は低下し,吸収 しやすい遊離型ビタミン B12の割合も保存期間とと もに低下していくことが今回明らかにされた。長期 保存食品は,常温で長期間保存できることから買い 物が困難な地域の高齢者を一時的に助けるものであ るが,一方でビタミン B12の吸収を考える上では, 長期保存された長期保存食品は高齢者にとってより 望ましい食品とは言えない可能性が示唆された。加 圧加熱殺菌を伴わない長期保存食品としては,冷凍 保存食品が挙げられる。今後は冷凍食品の長期保存 におけるビタミン B12量やその吸収のされやすさな どの冷凍保存期間による影響を検討し,加圧加熱処 理された長期保存食品との比較を行っていきたい。

Ⅳ.要約

 ビタミン B12は,食品中でタンパク質と結合した 状態で存在しているが,体内で吸収されるためには, 唾液と混ぜられて咀嚼された後,胃に移行して消化 作用を受けて遊離し,唾液腺由来のハプトコリンと 結合する必要がある。よって,消化吸収能力が低下 した高齢者などにおいて効率よくビタミン B12を吸 収するためには,胃において遊離しやすい状態に調 理加工することが望まれる。また,買い物難民と呼 ばれる高齢者にとって長期保存食品は生活に欠かせ ないものであるが,これらの食品に含まれるビタミ ン B12の吸収のしやすさに与える保存の影響は検討 されてこなかった。そこで本研究では, LL 乳は 1 ~ 70 日目まで,サバの水煮缶詰は 4 ~ 330 日まで 保存し,それぞれに含まれるビタミン B12の量また は遊離型ビタミン B12割合を検討した。その結果, 同じロットの LL 乳のビタミン B12量は 70 日目まで に製造直後の約 60%に低下した。また,サバ缶詰 に含まれる遊離型ビタミン B12の割合は保存期間 9 ~ 11 か月において製造直後の 4 ~ 10 日のものより 有意に減少していた。

Ⅴ.謝辞

 本研究は,平成 19 年度の科学研究費補助金およ び平成 21 年度までの京都女子大学の個人研究費を 使用して行いました。製造直後で市販前の LL 乳お よびサバ缶詰をそれぞれご提供いただいたメーカー の方々に心より御礼申し上げます。本研究に協力し て下さった桂(橘髙)研究室の学生諸姉に感謝の意 表 1.市販のサバ缶詰に含まれるビタミン B12量 種類 メーカー 固体試料 煮汁試料 固体試料平均値±SD ビタミン B12(µg/ サバ 100g) みそ煮 C社-1 4.87 2.06 3.91±0.67 C社-2 4.41 1.44 D社 2.96 2.1 E社 3.53 1.08 F社 3.79 0.96 味付 C社 8.97 2.91 8.51±4.09 C社(寒サバ) 14.9 1.32 D社 3.99 2.69 G社 6.17 2.28 水煮 C社 3.21 1.67 3.40±0.19 D社 3.58 3.28 表 2.市販の LL 乳に含まれるビタミン B12量 商品 ビタミン B12 (µg/100ml) 平均値± SD a 0.25 0.32±0.06 b 0.27 c 0.35 d 0.39

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を表します。

文献

1) Castle WB and Hale TH, ʻThe Vitamins, Fundamental Aspects in Nutrition and Healthʼ(3rd ed) ed by Gerald

F. Combs, Jr., pp381–398, 2008 Elsevier Academic Press, Burlington, MA (USA)

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参照

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