令和二年度「プラスチックの持続可能な利用」に向けた新たなビジネスモデル事業
ワンウェイプラスチックの水平リサイクルに 向けた資源循環型モデル事業
実施報告書
花王株式会社
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目次
1.背景... 2
2.目的...3
3.事業内容...3
4.実施体制...3
5.令和二年度の事業内容 ...5
-1 再生材ボトル ...5
-2 単一素材詰め替えパック...9
-3 詰め替えパックモニター調査...11
-4 江東区立小中学校、公共施設での配布、使用、回収...17
-5 回収詰め替えパックのリサイクル、ボトル成形... .. ...21
6.まとめ...28
2 1.背景
洗剤やシャンプーなどの日用品の容器は、これまで環境負荷低減の一環として、容器のコ ンパクト化によるプラスチック使用量削減、詰め替え・付け替え用製品などにより容器材 料・包装の削減を図ってきた。
容器包装リサイクル法で対象となっているプラスチック(以下「容リプラ」)は分別回収、
リサイクルされているが、焼却、埋め立て等のワンウェイプラスチックとなっているものも ある。今後は、リサイクルされたプラスチックを日用品の容器・包装製品、例えば、ボトル へ応用すること、また、資源循環可能なリサイクルしやすい容器・包装製品の開発を進めて いくことが求められている。
後者において、容器・包装からもう一度容器・包装=同じ用途に戻す「水平リサイクル」
ができる容器・包装、その循環システムがゴールの一つの形と考えられている。この「水平 リサイクル」を実現するための一つの手段として、容器・包装を構成する素材を単一にする ことが挙げられる。一方で、現在の容器・包装製品は、その中身を保護するために、様々な 素材を組み合わせて構成されているものも多い1。それらを単一素材で達成するためには、
新しい技術が必要であり、様々な取り組みがメーカー等で進められている。
また、資源循環を達成するためには、分別回収も重要である。東京都江東区では容リプラ の分別回収とは別に、食品用ポリスチレン容器(食品トレイや納豆容器、カップ麺容器など)
を住民が分別洗浄しており、それら容器は個別回収され、NPO 法人 地球船クラブ エコミラ 江東(以下「エコミラ江東」)でペレット化されている。
容リプラは多種多様であるとともに複合素材も多いため、回収後に機械選別をしたとし ても様々な素材が混ざりやすい。それに対し、江東区の食品用ポリスチレン容器分別回収で は、住民がポリスチレン容器のみを分別洗浄して、回収しているため、異物が混ざりにくく、
純度の高いポリスチレンペレット(以下「ポリスチレン再生材」)がつくられる仕組みにな っている。
1 J. Jpn. Soc. Colour Mater., 80 〔1〕, 32-39 (2007) J. JPn. Soc. Colour Mater., 80 〔2〕, 80-89 (2007)
3 2.目的
本事業では、エコミラ江東のポリスチレン再生材を日用品用容器(ボトル)に活用する実 証実験と、資源循環を考慮した単一素材から成る詰め替えパックを設計、使用、回収、再生 し、もう一度容器に戻す実証実験を行う。
この実証によって、現状ではワンウェイプラスチックとして利用されている容器を水平リ サイクルしていく可能性と課題を把握し、その社会実装を目的としている。
3.事業内容
本事業では、下記①~⑤を実証する(図1)。
① エコミラ江東のポリスチレン再生材を用いてボトルを製造すること
② 資源循環を考慮した単一素材から成る詰め替えパックを製造し、ハンドソープを充填 すること
③ ②の詰め替えパックについて、生活者にモニター調査を実施し、意見を得ること
④ ①、②を江東区の区立小中学校、他公共施設で使用、回収すること
⑤ 回収した使用済み詰め替えパックを洗浄、ペレット化し、ボトルを作製すること 回収したボトルの外観等を確認し、社会実装に向けた課題を洗い出すこと
4.事業体制
図 2 のように資源循環システム全体の関係者、すなわち消費財メーカー:花王、容器・包 装材メーカー:凸版印刷株式会社(以下「凸版印刷」)、リサイクラー:株式会社市川環境エ ンジニアリング(以下「市川環境エンジニアリング」)とエコミラ江東、自治体:江東区、
物流:株式会社ヴィアックス(以下「ヴィアックス」)、NPO(生活者):NPO 法人 持続可能な 社会をつくる元気ネット(以下「NPO 元気ネット」)からなる協業体制にて、本事業を実施 した。
図 1 本事業内容
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具体的には図 3 に示すように、(1)花王が循環型製品、システム全体設計を行い、(2)
凸版印刷が単一素材の詰め替えパックの製造、(3)市川環境エンジニアリング(及び同社 協力企業)/エコミラ江東が加工しやすい再生ペレットを開発/ボトルを製造、回収した詰め 替えパックのリサイクル、ボトル成形を行い、(4)NPO 元気ネットが生活者モニター調査 を担い、(5)ヴィアックスが通販事業の物流ネットワークを活用して試作品を江東区内の 小学校中学校、公共施設等へ配布、使用後の回収など、各々の役割分担のもとに実行した。
図 2 資源循環
図 3 事業体制
5 5.事業内容
令和 3 年 9 月 30 日までに実施した図 1 の①~⑤について、以下報告する。
5-1 再生材ボトル
(1)再生材について
背景で述べたように、江東区では、ポリスチレン(以下「PS」)製食品トレイ等は各家庭で 分別洗浄されたのち、回収され、エコミラ江東で再生されている。エコミラ江東には月間 20 t以上の使用済み PS 製品が搬入されている。(図 4,5)。
エコミラ江東に搬入される PS 製品は食品トレイ(polystyrene paper PSP:発泡倍率 10
~20 倍)に限らず、発泡スチロール(expanded polystyrene EPS:発泡倍率 50~100 倍)、弁当容器(oriented polystyrene OPS:発泡無)など様々である。
その中で、白色食品トレイとそれ以外の色付きのものを選別して、再生を行っている。
本事業では、白色食品トレイ由来の再生 PS をボトル用の素材とした(図 7,8)。 図 4 分別された食品トレイ等を
江東区が回収
図 5 福祉施設(エコミラ江東)
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(2)ペレットコンパウンド
PS はポリエチレン(以下「PE」)などに比べてボトル成形などには不向きとされている。
再生材になると更に条件は悪くなり、今回のベース素材(再生 PS)のみでボトル成形する 場合、強度不足や割れなどが発生しやすくなる(図 9)。
これら弱点を補うため、ベース素材(再生 PS)と別素材(補助素材)とのコンパウンド2 による改質が必要となるが、補助素材にバージンプラスチック3を使用することは本事業の 主旨(リサイクル率向上)に合わないため、ポストコンシューマー材料4の中から最適な素 材を見出す作業を行った。ストレッチフィルムやポリ袋など様々な素材で実証を行い、最 適な補助素材(PE)を見出した。
2 一種類又は複数の重合体の充てん材,可塑剤,触媒及び着色剤のような他の成分との本 質的な混合物。 JIS K6900-1994
3 使用されていないか又はその最初の製造に必要な工程以外の工程を受けていないペレッ ト,か粒,粉末,凝集塊などの形状のプラスチック材料。 JIS K6900-1994
4 家庭から排出される材料、または製品のエンドユーザとしての商業施設、工業施設及び 各種施設から本来の目的のためにはもはや使用できなくなった製品として発生する材料。
これには、流通経路から戻される材料を含む。 JIS Q14021
図 7 食品トレイ(白色)の選別 図 8 再生 PS ペレット製造
図 9 再生 PS のみでのボトル成形時の割れ
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ただし、PS と PE は本来混ざりにくいため、相溶化材の選定も重要であった。混合が不十 分だと成形性に悪影響を及ぼし、満足できる強度などは得られないため、多くの相溶化材 を試しながら選定した。
(3)金型作製
本事業では学校等でハンドソープ用容器として使用することから、作製するボトルには既 存のポンプヘッドにフィット(ネジ部篏合性、ハンドソープ使用性、形状面など)すること、
容量 500ml 以上など、様々な条件をクリアする必要があった。リサイクル材使用ではボトル サイズが大きくなるほど成形性や成形後の強度等に不安要素があるため、リサイクル材の 伸び性なども考慮し、2 種類(丸型とオーバル型)の形状にてボトル設計及び金型作製を行 った(図 10)。
(4)ボトル製造
本事業ではハンドソープ用ボトルとして提供するため、衛生面などもクリアする必要があ る。そのため、ボトルの構成を「バージン層(PE)/接着層/バリア層(EVOH エバール)
/接着層/リサイクル層/バージン層(PE)」の 6 層とした(図 11)。 ボトルに占めるリサイクル層(再生 PS を含む)の割合は約 50%である。
図 10 金型(左 外観、右 内観)
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前述した金型を使用し、上記構成にて、丸型とオーバル型の 2 種類のボトルをそれぞれ 2000 本製造した(図 12)。
丸型もオーバル型も成形時にトラブルなどは発生せず、割れや色むらなども見られなかっ た。今回は丸型について、本事業期間、安全に使用できることを確認し、配布用とした。
(5)ラベル、梱包
江東区関係者と協議の上、本ボトルが江東区で分別、リサイクルされた由来の材料が使わ れていることを使用者が認知できるよう図 13 に示すラベルとした。
図 12 製造したボトル外観(左 オーバル型、右 丸型)
図 11 ボトル層構造
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ラベルに加えて、使用者に本取り組みに内容を伝えられるように、図 14 に示す掲示物を 作製し、図 15 のように、ボトル 4 本、掲示物 1 枚、回収用の袋 1 枚、説明資料 1 枚を 1 セ ットとして、配布用に梱包した。
図 13 ボトルラベル(左 図案、右 貼付けイメージ)
図 14 掲示物
10 図 15 梱包
11 5-2 単一素材詰め替えパック
(1)設計
本事業での詰め替えパックは、①単一素材フィルムから製作すること、②極力、容器に着 色や印刷せず、必要な表示はラベルで行うこととした。
①、②とも水平リサイクルに向けた設計であるが、②は、詰め替えパックに直接印刷をせ ずに、回収後ラベルを剥離し、詰め替えパックと分離することで、印刷成分が詰め替えパッ ク再生材の品質(色や物性)に影響を与えないようにするためである。
今回、単一素材として、ヒートシール性に優れるオレフィン系樹脂を用いた。また、ハン ドソープ 400ml を充填することから、サイズ高さ 230mm×幅 150mm×折込 45mm のスタンデ ィングタイプの詰め替えパックを設計した。(図 16)
つめかえ時の注ぎ口は、ハサミでカットする仕様とした。このハサミカット線(図 16 左 図 左上)とパウチ製造時に必要不可欠なマーカー(図 16 右図 左下)の 2 か所のみ詰 め替えパックに直接印刷した。他に必要な情報はラベルにて表示した。
(2)製造、ハンドソープ充填
単一素材詰め替えパックは、オレフィン系樹脂フィルムを用いて、容器の側面、底面をヒ ートシールし、製造した。容器のシール強度と安定生産の両立において、ヒートシール温度、
時間等の条件設定が重要であった。今回は、製造行程毎に細かく品質確認を行い、条件を調 整しながら、製造を実施した。今後、連続生産を安定して実施していくには、更なる検討が 必要であった。
単一素材詰め替えパックは、4 万枚を製造した。1 万枚(ラベルあり)は、ハンドソープ充 図 16 詰め替えパック 左:表、右:裏
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填用、3 万枚(ラベルなし)は、今後の詰め替えパックリサイクルにおける洗浄、ペレット 化条件検討用である。
充填するハンドソープとして、花王製の市販製品を用いて充填を行った。配布用の目標数 8000 個を問題なく充填でき、段ボール(16 個入り)に梱包した(図 17)。
単一素材の詰め替えパック及び充填品は、今回の事業期間、安全に使用できることを確認 した。
図 17 左 詰め替えパック充填品 右 段ボール梱包
13 5-3 詰め替えパックモニター調査
詰め替えパックの実態調査と、今回の単一素材の詰め替えパックの使い勝手・受け入れ性 確認のため、生活者へのモニター調査を行った。
(1)モニター調査概要 実施機関;NPO 元気ネット
実施期間;令和 2 年 12 月 7 日~令和 3 年 1 月 5 日
実施方法;モニターへ、送り状、サンプル(詰め替えパックと空ボトル)、アンケート用紙、
返信用封筒を送付。
郵送にて使用済みの詰め替えパック、用紙を回収。
詰め替えパック:本事業の単一素材詰め替えパック、
ラベルとハサミ線無し(図 18)
ボトル:本事業の再生材を使用したボトルではなく、市販品(500ml)
モニター;東京都内在住 94 名 うち回答 86 名
(2)モニター属性
今回のモニターの属性は図 19 に示した通りである。女性が多く、20 歳代が不在で若干 50, 60 歳代が多く、居住地域では、容リプラの分別を行っている地域が多かった。最近の関心 事のうち「環境・資源問題」を挙げた人が全体の 84.9%で、その内容を伺うと、「プラスチッ ク問題・ごみ分別」が非常に多く、環境意識の高い集団であった。
図 18 配布詰め替えパック
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図 19 モニターの属性
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(3) 詰め替えパックの購入実態
これまでの詰め替えパックの購入実態を図 20 に示した。約 9 割のモニターに購入経験が あり、具体的な製品については、食器、お風呂、衣料用洗浄剤やシャンプー、ハンドソープ などで多く、衣類用柔軟剤、漂白剤、スタイリング剤・化粧品が少なかった。詰め替えパッ クを良く利用する製品は使うものが決まっている場合が多いのではないかと考えている。
(4) 詰め替えパックの購入理由と不便さ
詰め替えパックを購入している理由と、詰め替えパックの不便さについての結果を図 21 に示す。詰め替えパックの購入理由としては、「ボトルよりもごみが少なくなるから」、「環 境に良いから」といった環境に対する理由が多かったが、「ボトルよりも安いから」という
図 20 詰め替えパックの購入 実
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価格についてのポイントも高かった。また「いつも使用しているから」という理由も一定の 割合で見られた。詰め替えパックの不便さについては、「注ぐときにこぼすことがある」、「ボ トル等の容器に注ぎにくい」といった「注ぎにくさ」についての不便さが多かった。
図 21 詰め替えパックの購入理由と不便さ
(5) アンケート品についての感想
今回のアンケート品に対する感想についての結果と自由記述からの抜粋を図 22 に示す。
「シンプルで良い」、「エコな感じがする」、「透明で中身の量が分かりやすい」、「ごみが少な くなりそう」といったポイントが非常に高く、このようなシンプルなデザインが、エコなイ メージに繋がりそうだということは確認できた。一方で、「ハサミが面倒」、「詰め替え易い と思わない」というように、詰め替えにくさが最大の課題であった。
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(6)インタビュー
今回のモニターの中から、さらに深堀りするため 6 名を抽出し、オンラインによるイン タビューを実施した。インタビューの日時と属性は以下の通り。
令和 3 年 2 月 08 日 40 代、50 代、70 代各 1 名 計 3 名 令和 3 年 2 月 12 日 50 代 1 名、60 代 2 名 計 3 名
インタビューで質問した主な項目と回答は以下の通り。
1)容リプラのリサイクルに関して普段感じていること
容リプラの分別回収がある地域の方は、分別は面倒という気持ちもあるが、リサイク ルのことを考えると分別した方が良い。自分は慣れているが、家族に洗って出してもら うのはやや大変。
図 22 アンケート品に対する感想
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容リプラの分別がない地域の方は、コロナ禍でプラのごみが増えているように感じて いて分別せずに捨てることに罪悪感がある。
2)アンケート品のパッケージについて
リサイクルしやすいように、透明で印刷がないということについて、最低限の表示さ えあればシンプルで良いと思う。カラフルである必要はない。通販でまとめ買いするの であればあのパッケージで良いと思う。店頭なら中身の説明が欲しい。
3)どんな回収法だったら協力するか?
容器を洗って排出することに関しては、あまり面倒に感じない。仕組みができて慣れ ればできるのでは。普段もやっているので苦にならない。
回収方法については、回収拠点は多い方が良い(区の施設、学校、スーパー、ドラッ グ、駅、郵便局など)。現在もスーパーで食品トレイや紙パックを出している。買ったと ころに出せると良い。
4)商品選択の優先順位について
①中身、②価格、③メーカー、④新製品、⑤CM、⑥環境配慮、⑦その他
価格を重視する人もいたが、多くは価格のみでは決めないということであった。環境 配慮重視の人は、日用品の価格は大きくは変わらないので環境配慮しているものを多少 高くても購入する。
5)どんなところやモノ、情報で企業が環境に配慮していると感じるか
使用済みのペットボトルを原料とした製品。植林や被災地支援など、例えば、ボルネオ 島の環境保全への寄付など会社のエコ活動に注目している。
インタビューでは、普段分別排出をしている地域としていない地域に住んでいる消費者で 若干の違いが見られた。しかし、昨年からのコロナ禍において、テイクアウトが増えたこと で、容リプラが家庭においても増えていることを実感し、可燃ごみにしてしまうことのため らいも見られた。今回のモニター品である詰め替えパックの回収には、賛同とともに回収に 協力したいという意見が多かった。
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5-4 江東区立小中学校、公共施設での配布、使用、回収
(1)配布
令和 3 年 4 月 8、9 日にて、図 23 に示す江東区立小中学校、公共施設に、作製したボト ル、詰め替え品等(図 14,15,17 参照)を配布した。配布数は、生徒数や希望数から配分 した。充填した詰め替えパック 7834 本(製造 8000 本)、ボトル 1956 本(製造 2000 本)を 配布し、残りは評価及び関係者での使用テストに用いた。
図 23 配布先、数(江東区立小中学校、公共施設)
ボトル 詰め替えパック ボトル 詰め替えパック
箱(4本入) 箱(16本入) 箱(4本入) 箱(16本入)
明治小 12 12 深川第一中 2 2
深川小 5 5 深川第二中 5 5
八名川小 5 5 深川第三中 8 8
臨海小 4 4 深川第四中 6 6
越中島小 7 7 深川第五中 7 7
数矢小 9 9 深川第六中 3 3
平久小 7 7 深川第七中 3 3
東陽小 8 8 深川第八中 6 6
南陽小 11 11 有明中 4 4
川南小 5 5 辰巳中 2 2
扇橋小 7 7 東陽中 3 3
元加賀小 9 9 亀戸中 7 7
毛利小 4 4 第二亀戸中 3 3
東川小 4 4 第三亀戸中 4 4
豊洲小 13 13 大島中 4 4
豊洲西小 11 11 第二大島中 2 2
豊洲北小 13 13 大島西中 5 5
東雲小 12 12 砂町中 5 5
有明小 5 5 第二砂町中 6 6
枝川小 10 10 第三砂町中 5 5
辰巳小 4 4 第四砂町中 2 2
第二辰巳小 10 10 南砂中 1 1
第一亀戸小 8 8 第二南砂中 6 6
第二亀戸小 8 8 有明西学園後期課程 2 2
香取小 3 3 計(中学校) 101 101
浅間竪川小 12 12
水神小 4 4
第一大島小 7 7 ボトル 詰め替え容器
第二大島小 4 4 箱(4本入) 箱(16本入)
第三大島小 7 7 有明スポーツセンター 9 9
第四大島小 5 5 亀戸スポーツセンター 6 6
第五大島小 4 4 亀戸図書館 2 2
大島南央小 3 3 亀戸文化センター 2 2
砂町小 6 6 江東区文化センター 6 6
第二砂町小 7 7 江東区役所 2 2
第三砂町小 7 7 砂町文化センター 2 2
第四砂町小 7 7 スポーツ会館 10 10
第五砂町小 9 9 東大島文化センター 2 2
第六砂町小 3 3 東砂スポーツセンター 3 3
第七砂町小 7 7 深川北スポーツセンター 6 6
小名木川小 4 4 深川スポーツセンター 5 5
東砂小 4 4 古石場文化センター 2 2
北砂小 6 6 森下文化センター 3 3
南砂小 5 5 江東公会堂(ティアラ江東) 2 2
亀高小 4 4 深川江戸資料館 3 3
有明西学園前期課程 11 11 中川船番所資料館 2 2
計(小学校) 320 320 芭蕉記念館 1 1
計(公共施設) 68 68
小学校 中学校
公共施設
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(2)使用
使用期間は、令和 3 年 4 月上から 5 月 31 日までの 2 カ月であった。ただし、この期間は、
新型コロナウィルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言もあり、多くの公共施設が休館の期間 と重なった。図 24 に小学校、江東区役所、亀戸図書館での設置、使用時の様子を示す。図 14 の掲示物も使用場所に掲示し、ボトルの由来など分別やリサイクル、本取り組みについ て周知した。また、江東区立小学校(1 校)で、オンラインで本取り組みを説明する環境授 業を実施し、リサイクルについて理解を深めて頂いた。
(3)回収
令和 3 年 6 月 1、2 日に各学校、施設に訪問し、ボトルや使用済みの詰め替えパックと未 使用品や掲示物他も含む配布物の全てを回収した。詰め替えパックについて、約 75%(未 使用品含む)を回収することができた(詳細は、次項の図 26 を参照)。
配布、使用、回収において、トラブルの報告はなく、無事に実施することができた。
回収されたボトルについて、抜き取り(N=10)し、状態確認を行った。中身の漏れが起 こる傷や割れがないこと、ポンプヘッドのねじ込みにもガタつくなどの不具合ないことを 確認した。さらに、ボトルを割断し、内部にも同様にキズや変色ないことを確認した。一 方で、1 サンプルにおいて、割断した断面において、異なる樹脂層間でわずかに剥離が見 られた(図 11 参照)。剥離している層の特定など解析中であるが、より長期使用いただく には、層間の接着等に改善が必要と考えている。
図 24 使用時の様子(小学校、区役所、図書館)
21 5-5 回収詰め替えパックのリサイクル、ボトル成形
回収した詰め替えパックは、下記の図 25 の流れで、リサイクルし、ボトル成形を行った。
(1)分別
回収された詰め替えパックをボトルなど他物品と分けること、詰め替えパックからラベ ルを剥がすことを行った。未使用で回収された詰め替えパックについて、中身を出し、ラベ ルを剥がして、使用済み品と混ぜて、分別後のリサイクルに用いた。
使用済み詰め替えパックを 50 枚(回収場所ごとに 5 枚、10 か所)サンプリング、計量し、
ラベルを剥がした状態での 1 枚当たりの重量、残っている液量の平均値を算出した。結果、
ラベルを剥がした状態での平均重量は 10.7g/枚、残存している液量は 0.3g/枚であった。
ラベルを剥がしたサンプルの総重量と平均重量 10.7g から、未使用品も含む、全回収詰め 替えパックの枚数を算出した。また、未使用品から中身を除いた液の容量から、未使用品の 枚数を算出し、全回収詰め替えパックの枚数から、未使用品枚数を引くことで、使用済みで 回収された枚数を算出した。結果を図 26 に示す。
(2)破砕洗浄
今回、実施した設備は、ポリオレフィン系樹脂のリサイクルに用いられている設備であり、
洗浄水は、地下水を使用している。
図 27 に示すフローに従って、①未使用の詰め替えパックの破砕処理、②使用済みの詰め 替えパックの破砕処理、③②の水洗浄と遠心脱水を実施した。なお、③の工程を 2 回繰り返 し、水洗浄 1 回の効果を評価した。
図 25 詰め替えパックリサイクルフロー
図 26 詰め替えパック 回収 数
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使用済みつめかえ容器の洗浄二回、遠心脱水後の回収率も 90%を超えており、大きなロス なく実施できた(図 27)。破砕は 1cm 以下のサイズに裁断できた(図 28)。水洗浄、遠心脱 水後の含水率は 1%程度であった。その後、1 週間乾燥させることで、未使用詰め替えパッ ク破砕品と同等の含水率となった。また、洗浄 1 回で十分中身が除去できることを確認し た。
ただし、写真では分かりにくいが、図 28 に示す洗浄二回した使用済み品と未使用の破砕 品を比較すると使用済み品の方がやや黄色に着色していることが目視で確認された。この 色ついては、別途検討を行った結果を後述する。
図 27 破砕洗浄フロー
図 28 破砕洗浄サンプル(左:未使用品破砕品、右:使用済み洗浄 2 回品)
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(3)溶融混錬
(2)で得た未使用詰め替えパック(以下、「未使用」と記載)破砕品と使用済み詰め替 えパック(以下、「使用済み」と記載)破砕洗浄品の二品を用いて、溶融混錬してペレット を作製した。
図 29 に示すフローにて実施した。②使用済みは、回収率 86%であった。ペレットについ て、未使用と使用済みで比較すると使用済みの方が着色していることが目視で確認された
(図 30)。この色ついては、別途検討を行った結果を後述する。
得られたペレットにて、高分子構造解析、樹脂物性評価を行った。実施した項目において、
未使用と使用済みで同等であった。
図 29 溶融混錬フロー
図 30 溶融混錬サンプル(左:①未使用、右:②使用済み 図 29 参照)
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(4)ボトル成形
(3)で得た未使用と使用済みのペレットを用いて、図 31 に示す層構成のボトルを成形 した。
今回、詰め替えパックに用いられる樹脂は、フィルム用途に適したものであり、ボトルへ の成形性や容器強度に合っていないことが想定された。その改良方法として、「他樹脂や強 化剤を混合するコンパウンド」や「ボトルに適した樹脂と積層した形で成形すること」等が 挙げられる。今回は、後者を選択した。理由は、日用品容器への応用を考えた場合、容器の 中身と触れる部分(容器の再内層)については、中身への影響の懸念からバージン樹脂を用 いるケースも想定される。そこで、図 31 に示すように再生樹脂を中心に、バージン樹脂で サンドイッチする積層構造での成形を行った。使用済みは、その比率を変えて 2 種類成形し た。また、バージン樹脂は、ボトル成形、用途に適したポリオレフィン樹脂を用いた。
また、ボトルのサイズは容量 100ml の小型容器とした。使用済み、未使用ともに再生樹脂 について、成形性(例えば、冷却での体積変化率など)が不明であったため、その影響が小 さい小型容器にて検討を行った。評価用にボトルは 50 本づつ作製した。
リファレンスとして、使用済み、未使用のペレット及びバージン樹脂のみからなるボトル も成形した(図 31 中の①~⑤ 全て同じ樹脂を使用)。
得られたボトルの寸法測定の結果を図 32 に示す。また、得られたボトルの外観を図 33 に 示す。
図 31 ボトル層構成
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1 2 3 4 5 6 R X
重量 14.01 13.88 13.87 13.95 14.04 13.96 0.17 13.95
P/L 118.34 118.32 118.33 118.29 118.36 118.30 180℃ 118.15 118.14 118.14 118.19 118.17 118.17 P/L 23.34 23.32 23.33 23.33 23.30 23.32 90℃ 23.30 23.29 23.28 23.32 23.28 23.29 P/L 21.39 21.40 21.42 21.43 21.41 21.38 90℃ 21.42 21.41 21.42 21.43 21.39 21.41
P/L 38.97 38.88 38.90 38.96 38.92 38.91 0.09 38.92 90℃ 39.43 39.44 39.41 39.44 39.51 39.45 0.10 39.45
重量 14.18 14.54 14.10 14.11 14.18 14.28 0.44 14.23
P/L 118.23 118.19 118.23 118.27 118.26 118.19 180℃ 118.13 118.10 118.13 118.12 118.17 118.09 P/L 23.34 23.38 23.32 23.35 23.33 23.32 90℃ 23.33 23.21 23.33 23.35 23.34 23.27 P/L 21.36 21.41 21.36 21.33 21.36 21.38 90℃ 21.41 21.34 21.38 21.39 21.36 21.36
P/L 38.73 38.83 38.81 38.83 38.79 38.76 0.10 38.79 90℃ 39.45 39.41 39.49 39.53 39.47 39.51 0.12 39.48
重量 13.86 14.06 13.94 13.86 13.97 13.81 0.25 13.92
P/L 118.34 118.33 118.33 118.29 118.29 118.33 180℃ 118.19 118.17 118.23 118.20 118.15 118.16 P/L 23.31 23.33 23.34 23.34 23.35 23.26 90℃ 23.30 23.32 23.34 23.34 23.35 23.26 P/L 21.40 21.39 21.39 21.35 21.41 21.42 90℃ 21.42 21.41 21.38 21.41 21.41 21.41
P/L 38.96 38.95 38.96 38.94 38.96 38.88 0.08 38.94 90℃ 39.42 39.46 39.45 39.41 39.50 39.45 0.09 39.45
重量 12.84 12.32 12.98 12.55 12.86 12.73 0.66 12.71
P/L 118.09 118.07 118.01 117.96 118.05 118.03 180℃ 118.04 118.08 117.94 117.92 118.03 118.04 P/L 23.39 23.43 23.45 23.39 23.41 23.39 90℃ 23.33 23.22 23.23 23.33 23.32 23.32 P/L 21.39 21.40 21.37 21.42 21.42 21.40 90℃ 21.28 21.30 21.23 21.34 21.31 21.34
P/L 38.92 38.91 38.88 38.77 39.09 39.14 0.37 38.95 90℃ 39.40 39.32 39.21 39.48 39.40 39.01 0.47 39.30
重量 12.99 13.09 13.13 13.47 13.20 13.54 0.55 13.24
P/L 118.05 117.97 118.04 118.03 118.01 118.04 180℃ 118.00 118.04 117.97 117.98 118.05 117.98 P/L 23.38 23.39 23.44 23.38 23.42 23.42 90℃ 23.37 23.36 23.31 23.37 23.35 23.34 P/L 21.37 21.36 21.39 21.38 21.39 21.36 90℃ 21.34 21.34 21.33 21.30 21.32 21.33
P/L 39.02 38.99 39.03 38.98 39.09 39.00 0.11 39.02 90℃ 39.41 39.42 39.46 39.40 39.37 39.46 0.09 39.42
重量 14.03 14.01 14.02 14.08 14.00 14.02 0.08 14.03
P/L 118.04 118.22 118.25 118.26 118.26 118.24 180℃ 118.18 118.14 118.10 118.13 118.10 118.16 P/L 23.34 23.33 23.32 23.33 23.32 23.31 90℃ 23.36 23.34 23.35 23.37 23.35 23.36 P/L 21.39 21.44 21.40 21.44 21.42 21.41 90℃ 21.41 21.45 21.44 21.45 21.45 21.44
P/L 39.00 39.01 39.03 39.03 38.99 38.97 0.06 39.01 90℃ 39.43 39.45 39.44 39.42 39.44 39.42 0.03 39.43 Ref1 使用済み100%
全高 0.17 118.02
ネジ山径 0.23 23.35
ネジ谷径 0.19
Ref2 未使用100%
全高 0.08 118.01
ネジ山径 0.13 23.38
Ref3 バージン100%
全高 0.22 118.17
ネジ山径
ネジ谷径 0.06 21.43
胴径中部
ネジ谷径 0.09 21.35
胴径中部
0.06 23.31
ネジ谷径 0.05
0.06 23.34 23.35 胴径中部
21.41 胴径中部
B 使用済み80%
全高 0.18 118.18
ネジ山径 0.17 23.32
A 使用済み50%
全高 0.22 118.24
ネジ山径
C 未使用50%
全高 0.19 118.25
ネジ山径
胴径中部
ネジ谷径 0.08 21.37
胴径中部
0.09 23.32
ネジ谷径 0.07 21.40
図 32 成形したボトルの寸法
(P/L:パーティングライン、R:測定値の最大値と最小値の差、X:測定値の平均値)
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原料(ペレット)の色を反映して、使用済み由来の再生樹脂が多いほど、着色する傾向が 確認される。
使用済み由来の再生樹脂 50%ボトル(図 32、33 中の A)は、バージン樹脂のみから成形 したボトル(同 Ref3)と同等の寸法で得られ、厚みなどの振れも少なく、安定して成形可 能であった。一方、使用済み、未使用に関わらず、再生樹脂 100%で成形したボトル(同 Ref1,2)は、樹脂が柔らかく、ドローダウンしやすいため、ボトルの薄肉化や成形不良が発 生した。
得られた容器について、硬さと落体での破損性を評価した結果、硬さについては、再生樹 脂の割合に比例して、軟化していく傾向が確認された。また、落下での破損性については、
Ref も含む成形した 6 種の全ボトルで破損は見られなかった。
外観の色以外、使用済み品と未使用品で差異は確認されなかった。
最後に、使用済み由来の再生樹脂ペレット、容器での着色について、原因を検討した結果 を次に示し、現時点で把握できている課題とその改良点の一つを提示する。
図 33 ボトル外観(Ref1:使用済み 100%、Ref2:未使用 100%、Ref3:バージン 100%、
A:使用済み 50%、B:使用済み 80%、C:未使用 50%)
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(5) 課題 使用済み詰め替えパックの再生プロセスでの着色
図 34 に示す各プロセスのサンプルについて、その着色度合いを評価した。溶融混錬は、
熱がかかり、着色に影響を与えるため、全て実験室(ラボ)にて同条件で行った。結果を図 35 に示す。回収された使用済み詰め替えパックを実験室にて水道水で洗浄したサンプル(図 34,35 ③)は、未使用品(同 ①、②)と同等の着色レベルであったのに対して、今回リ サイクルを行った設備で水洗したサンプル(同 ⑤、⑥)にて大きく着色していることが確 認された。洗浄で用いた水(地下水)は鉄分の影響か何かで着色しており、その着色が原因 の一つであると示唆された。
また、前述したように物性面では、未使用品と使用済み品は同等であったことと合わせる と、再生プロセスの最適化で、水平リサイクルにつながる未使用品同等の再生樹脂が得られ ることが期待される。
図 34 評価サンプル
図 34 工程毎の色変化
28 6. まとめ
本事業では下記①~⑤を、容器個数として数千~万個、使用者として数万人(小中学校生 徒数で約 3 万人)という規模で実施できた。各取り組みで確認できたこと、見いだせた課題 について、まとめる。
① エコミラ江東のポリスチレン再生材を用いてボトルを製造すること
② 資源循環を考慮した単一素材から成る詰め替えパックを製造し、ハンドソープを充填 すること
③ ②の詰め替えパックについて、生活者にモニター調査を実施し、意見を得ること
④ ①、②を江東区の区立小中学校、他公共施設で使用、回収すること
⑤ 回収した使用済み詰め替えパックを洗浄、ペレット化し、ボトルを作製すること
再生材ボトル(①、④)
今回の期間において、トラブルなく使用可能であった。一方で、市場の商品同様に長期使 用には、層間の接着強度に課題があることが分かった。今後、改良してく必要がある。
モノマテリアル詰め替えパック(②、③、④)
モニター調査から透明であること、シンプルであることとエコであることがリンクし、高 評価であった。一方で、今回、はさみで切る仕様になっており、より使いやすい容器設計が 必要である。
また、詰め替えパック自体の生産性について解決する必要があることが分かった。
今回の期間において、トラブルなく使用可能であった。今後、店頭販売等で提供するため には、より長期間中身を保護する機能が求められ、材料、容器の技術開発が必要である。
使用済み詰め替えパックのリサイクル、ボトル容器への活用(⑤)
ポリオレフィン素材のリサイクルを行っている実際の設備で、再生を実施でき、使用済み 品由来の再生樹脂を 50%用いたボトルを安定して成形することができた。
樹脂物性も使用済み品と未使用品由来で差がないことを確認した。一方で、水洗浄で着色 が起こっていることが確認された。異なる品質の水を用いることで着色は未使用品と同等 に抑えられることから、未使用品同等の外観を達成するためには、再生プロセスの条件改良 が必要である。
今回の事業で、モノマテリアル詰め替えパックのポストコンシューマー樹脂、それを用い たボトル容器、また、各行程のサンプルを得ることができており、検討を継続し、見出して いる着色以外の課題の有無を確認していく。
また、プラスチック資源循環の最重要課題は CO2 削減と経済性(機能、コストなど)の両
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立であり、これが環境ビジネスを回す上でのポイントであると考えている。その為には、再 生プロセス以外にも、安価で無駄のない分別回収システムの開発、ソーターなどを用いたプ ラスチック容器の精密選別の開発、環境配慮型容器設計の標準化(基準/規格作り)などが 必要であると考えている。本事業で得られた成果(知見、課題)を活かして、図 2 に示すル ープに関係する全ステークスホルダーと連携しながら検討を進め、持続可能な資源循環型 社会の構築に貢献していきたい。