35 京都女子大学生活福祉学科紀要 第 11 号 平成 27 年(2015 年)2月 わたしは,原田先生より多くのことを学んだ。とりわ け,介護福祉教育とは何かということ,この真髄を先生 から学んだと思う。むろん,この年になっても道半ばで あるが。 研究面では,ホームヘルパーを中心とした生活援助の 究明から深く学ばせていただいた。原田先生は一貫して, 次の点を強調されている。ホームヘルパーの援助におけ る裁量権の担保と,意思決定への参加が認められるよう なシステムの構築である。 要するに,1.労働の細分化と援助過程における裁量 権,自己決定の剥奪は,労働意欲の喪失,労働の生産性 と質の低下をもたらしていることを先生はまず強調さ れ,そして, 2.技能の向上や精神的ストレスの回避・緩和に有効 な職場でのコミュニケーションがもてない組織体制は, ヘルパー同士はもとより,他職種やインフォーマルな援 助との共同性を喪失していくと指摘される。それは,離 職率を上昇させる要因でもある。 3.どのような職業であれ,仕事における自由裁量, 意思決定への参加,チームによる協働は,仕事に対する 責任感を生む。とりわけ,人間を対象とする労働は,計 画のたえざる見直しが求められる。この意味でも労働に おける裁量権の付与は不可欠であると原田先生は指摘さ れている。 周知のごとく,ホームヘルプサービスにおける認知症 高齢者やターミナルケアへのかかわりがますます重要に なってきている。ホームヘルプサービスの質的向上とヘ ルパーの確保において,原田先生の指摘は先見性があり, こんにち,改めて深めていかねばならない社会的課題で あると思う。 こうした,先生の研究の実践的基盤は倉敷市における 公的ヘルパー,および,労働組合にあつたと私は思って いる。当時の実践研究のまとめは「措置制度上のホー ムヘルプ制度調査の概要」にまとめられている。調査 は,老人保健福祉計画の見直し年度をとらえて,各市町 村におけるホームヘルプ事業の整備状況を把握するため に,都市規模別にランダムに 80 区市町村を対象にして, ①運営主体の状況②ヘルパーの雇用形態③登録ヘルパー の身分保障や活動内容,常勤へルパーの役割と守備範囲, チーム運営方式の実施状況および,24 時間ケアへの対 応などを究明したものである。 当時,社会福祉政策は大きな転換期にあった。介護労 働においても自治体はますます民間事業に委託化されて いった。ホームヘルパーの登録制度・パート化が進んだ。 住民主体の福祉行政に代わって,いわば,市場原理が主 体になる。こうした,政策転換に際して,なによりも要 介護者,社会的弱者の立場に立って,公務労働としての ホームヘルプ労働の重要性を実践的にも,理論的にも明 らかにされていったのが原田先生であった。 原田先生はさらに研究を次の点において進めておられ る。それは,都市部の単身の要介護高齢者が,地域で生 活を継続するための生活を営む力,生活力の形成である。 そこに,ホームヘルパーとしての生活援助がどのように 有効であるかを見ていくことである。いわば,ソーシャ ルワークの原点である。今,私は,わくわくしながら先 生から学ぼうとしている。
原田先生の退官に寄せて
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