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医療情報の管理と活用

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 749 ~ 750 頁(2015 年) 医療情報の管理と活用. 749. 教育講演. 医療情報の管理と活用* 黒 田 知 宏**. らでは,2 ヵ月程度かけて起きるゆっくりとした変化しか捉え. はじめに. ることができない。より細かい情報を得るためには日常生活に. 1999(平成 11)年の電子カルテ解禁以降,病院情報システ. センサを導入するほかない。近年では様々な家庭用センサが開. ムの導入が急速に進み,病院で交換されるすべての情報がシス. 発されており,臨床ガイドラインの中に判断基準として取り入. テムに蓄積されるようになった。一見,得られた情報から臨床. れられつつある 3)。. 医療のあらゆる事象が分析できるように思いがちであるが,情 報を得るプロセスそのものを十分理解しておかなければ,正し. 情報の保護管理. い分析を行うことは不可能である。一方,病院情報システムで. 医療情報は患者の究極の個人情報である。近年様々な情報漏. 扱う情報は個人情報そのものであり,その取り扱いに注意を要. 洩事例が報告されており,医療機関においては情報管理に多大. することは論を俟たない。本稿では,医療情報の管理と活用に. な労力がかけられている。しかし,労力のかけ方を間違えると. ついての基本的な考え方を示す。. 却ってリスクを増加させてしまう。 情報セキュリティでは,情報セキュリティの CIA と呼ばれ. 情報の分析. る, 秘 匿 性(Confidentiality), 完 全 性(Integrity), 可 用 性. 病院情報システムは,1)療担規則に定める療養の給付に必. (Availability)の 3 つ要素を,物理対策,技術対策,運用管理. 要な事項をもれなく記録する,2)診療業務を効率化する,3). 対策の 3 つの手段を駆使して,バランスよく守ることが重要で. スタッフのコミュニケーションをスムーズにする,目的で導入. あるとされている. されている。したがって,1)必ずしも医療者の思考過程を示. を意識する余り,秘匿性(C)のみを重視して可用性(A)を. さない記録,2)コピー・自動転記の記録,3)人にとって読み. 犠牲にするような対策がとられている例が散見される。ユーザ. やすい(=機械処理しやすくない)記録,が多くなるという問. は業務上の必要性があってデータを利用するのであるから,な. 題がある。. んらかの想定外の工夫が行われ,結果として秘匿性が敗れて. 機械的な情報分析を可能にするためには,客観的・量的な記. しまう結果に陥る。情報セキュリティの最大の弱点(Weakest. 4). 。しかし,情報管理者や組織が責任分界点. 録が,主観的・質的な記録から適切に分離され,「ラベル」+. Link)は常に人であることから,どのようにユーザの可用性を. 「値」+「単位」の形式で,かつ,計測の状況(いつ・どこで・. 確保しつつ秘匿性を担保するのか,総合的な対策を施すことが. 誰が・誰の)と尺度基準が明示された状況で,記録されること. 求められる。情報管理者は,無闇な守りは解決を遠ざけること. が必要である。計測機器のネットワーク化に伴って,自動的に. を肝に銘ずることが求められる。. 計測情報が記録される環境が整いつつあり,情報システムを適. 患者情報利用の際に別に問題となるのが,匿名化の範囲であ. 切に設計すれば,問題は解決される. 1). 。一方,全計測記録の内,. る。多くは米国 HIPAA 法に定められた 18 項目の識別子を除. 臨床判断を決定づける情報は限られる。「認識」された情報を. くことで対応することが適切とされているが,国内には明確な. 適切に記録するには,テンプレートなどの定型化された型紙を. 法規がない状況が続いている。蓄積された情報を活用した医学. 用いることが好ましい。入力情報が表構造をもったデータベー. 研究などの活性化のためには,早急な法整備が求められる。法. スに展開して保存されれば,様々な研究に供することが可能に. が定まるまでの期間は,諸外国の状況に鑑みて判断するほか. 2). なる 。 一方,標本化定理では,計測周波数の半分(ナイキスト周波 数)以下で発生する現象しか計測できないことが証明されてい る。したがって,月に一回だけの外来診療で得られるデータか. ない。. ま と め 本稿では,医療情報の管理と活用に際しての基本的な考え方 を示した。適切な運用のためには,データ(コンピュータ)と. *. Management and Utilization of Medical Information 京都大学医学部附属病院 教授 (〒 606–8507 京都市左京区聖護院川原町 54) Tomohiro Kuroda, PhD, Professor: Kyoto University Hospital キーワード:医療情報,管理,活用. **. これを扱う人の性向を十分に理解することが,まずなによりも 重要である。.

(2) 750. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 文 献 1) Kuroda T, Noma H, et al.: Prototyping Sensor Network System for Automatic Vital Signs Collection. Method Inform Med. 2013; 52(3): 239–249. 2) 黒田知宏,佐藤純三,他:情報後利用を可能にするテンプレート. ベースデータベースの日常診療支援環境への導入.医療情報学. 2011; 30(3): 157–164. 3) 日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン 2014.ライフサイエン ス出版,東京,2014. 4) 情報セキュリティ標準テキスト編集委員会(編):情報セキュリ ティ標準テキスト 2006.オーム社,東京,2006..

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参照

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