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児童生徒の攻撃行動に対する随伴性モニタリングに焦点を当てた心理教育の効果

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-75 268

-児童生徒の攻撃行動に対する随伴性モニタリングに焦点を当てた心理教育の効果

○小宮山 尚1)、川越 杏梨1)、吉田 遥菜1)、野中 俊介2)、嶋田 洋徳3) 1 )早稲田大学大学院人間科学研究科、 2 )東京未来大学こども心理学部、 3 )早稲田大学人間科学学術院 【問題と目的】 児童生徒における暴力行為やいじめ等の攻撃行動 は,被害者や周囲に対し多大な影響を与えるばかりで なく,加害者自身も報復などの不利益を被る可能性の ある行動であり,早期に対応が求められる問題行動で ある(岡安・高山,2000)。攻撃行動の変容に関して は,怒り情動をコントロールし,適応的な行動の遂行 を 促 す ア ン ガ ー マ ネ ジ メ ン ト 介 入 の 実 施( 本 田, 2002)や,他者への感情理解を促すことを目的とした 「共感性」に焦点を当てた心理教育が行われている(渡 辺,2005)。しかしながら,たとえ共感性が高くても 攻撃行動が生じやすい者も存在することが指摘されて いること(下田,2014)や,共感性に焦点を当てた心 理 教 育 が 十 分 に 体 系 化 さ れ て い な い こ と( 後 藤, 2012)から,必ずしも共感性を獲得させる介入が攻撃 行動に対して効果的であるかに関しては十分に明らか にされているとは言いがたい現状にある。 共感性に焦点を当てた心理教育は,行動論的観点か らとらえなおすと,他者への感情理解を促すと同時 に,自身の攻撃行動が,攻撃行動を行った相手(被害 者)からどのような反応を引き起こしうるかという 「随伴性モニタリング」を高める要素が含まれると考 えられる。随伴性モニタリングの向上,すなわち自身 がどのような状況においてどのような行動をするべき かを判断できるようになれば,他者の感情を理解する ことよりも直接的に攻撃行動の低減に効果があると考 えられるが,共感性に焦点を当てた心理教育と,随伴 性モニタリングに焦点を当てた行動論的介入のどちら が攻撃行動の低減により有効であるかは必ずしも明ら かにされているとは言いがたい。 そこで本研究においては,共感性の獲得を目指す介 入(以下,共感性介入)と,随伴性モニタリングを高 める行動論的介入(以下,行動論的介入),さらに統 制群としてアンガーマネジメント介入を実施し,攻撃 行動低減効果を明らかにすることを目的とした。 【方 法】 研究参加者 関東の公立小中学校に在籍する小学生 395名(女子211名,男子184名,平均年齢10.8±0.9 歳),中学生598名(女子312名,男子286名,平均年齢 13.5±0.7歳)を分析対象とした。 測度 ( a )フェイス項目:性別,学年,( b )他者へ の共感性の程度:児童用多次元共感性尺度(長谷川他, 2009),多次元共感測定尺度(桜井,1988),( c )随 伴性モニタリング:野中他(2012)を基にして本研究 で作成,( d )攻撃行動:小学生用攻撃行動尺度(高 橋他,2009),中学生用攻撃行動尺度(高橋他,2009) を使用した。 手続き 児童生徒に対し,学級活動や授業時間を使用 して,( a ) から ( d ) の質問紙への回答を求めた。 その後,学級単位で児童生徒に対して介入を実施し, 実 施 直 後 お よ び 少 な く と も 1 週 間 の 期 間 内 に 再 び ( a ) から ( d ) の質問紙への回答を求めた。介入実 施時間は小学生,中学生ともに,およそ 1 校時分で あった。 倫理的配慮 本研究は早稲田大学「人を対象とする研 究に関する倫理審査委員会」による承認を得て実施さ れた(承認番号2015-007)。また,本研究のデータセッ トの一部は,吉田ら(2018)の報告との重複があるが, 本報告は異なる研究目的において未発表のデータを中 心に報告する。 【結 果】 介入による攻撃行動の低減効果の差異を検討するた め,攻撃行動の合計得点および下位尺度得点をpostの 値からpreの値を引いた値を変化量とし,介入(アン ガーマネジメント介入,共感性介入,行動論的介入) と群(攻撃行動高群,低群)を独立変数として分散分 析を行った(Figure 1)。その結果,小学生において 介入と群の交互作用が有意ではなかった(F (2,389) = 1.97,p = .14,η2 = .01)。その一方で,群の主 効果が有意であり(F (1,389) = 17.43,p < .01, η2 = .04),多重比較を行った結果,攻撃行動低群に 比べて高群の方が有意に変化量が減少した(p < .01)。また,中学生において介入と群の交互作用が有 意ではなかった(F (2,592) = 0.82,p = .44,η2 = .00)。 そ の 一 方 で, 群 の 主 効 果 が 有 意 で あ り(F (1,592) = 19.51,p < .01,η2 = .03),多重比較 を行った結果,攻撃行動低群に比べて高群の方が有意 に変化量が減少した(p < .01)。このことから,小 中学生の攻撃行動高群において,介入によって攻撃行 動が低減したことが示された。 共感性や随伴性モニタリングの程度が攻撃行動の低 減に影響するかを検討するため,攻撃行動の合計得点 および下位尺度の合計得点,共感性の合計得点,随伴 性の合計得点をpostの値からpreの値を引いた変化量 を用いて,相関分析を行った。その結果,小学生の攻 撃行動低群において,攻撃行動の合計得点の変化量と

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-75 269 -共感性の合計得点の変化量との間に弱い正の相関が示 された(r = .13,p < .01)。また,中学生において 関係性攻撃の合計得点の変化量と共感性の合計得点の 変化量との間に弱い正の相関が示された(r = .12,p < .01)。このことから,共感性の程度を高めること で,攻撃行動が増加してしまう可能性が示された。 【考 察】 本研究の目的は,共感性の獲得を目指す介入と,随 伴性モニタリングを高める行動論的介入,および統制 群であるアンガーマネジメント介入を実施することに よって,行動論的介入の効果を明らかにすることで あった。 攻撃行動の低減効果について,小中学生ともに,介 入内容にかかわらず攻撃行動高群において心理教育の 効果があったことが示された。このことから,小中学 生ともに心理教育そのものが有効であり,いずれの介 入においても共通した内容が攻撃行動の低減に有効で あったと考えられる。また,本研究の結果,攻撃行動 の傾向が低い小学生,および中学生の場合において は,共感性を高めることによって,かえって攻撃行動 を増加させてしまう可能性があることが示された。こ のことから,共感性の獲得を目指した介入の際には, 共感性の向上によって攻撃行動の低減が可能であるか どうかをアセスメントしたうえで実施する必要がある と考えられる。その一方で,本研究の結果からは,随 伴性モニタリングが攻撃行動に及ぼす影響性は示すこ とができなかった。この原因として,攻撃行動得点の 一部においてはフロア効果がみられたことなどが考え られる。 以上のことを踏まえると,児童生徒の学級集団を対 象として心理教育を行う際には,対象とする学級にお いて,どのような状態像の児童生徒がいるのか,攻撃 行動の程度も含めてアセスメントしたうえで,その状 態像に応じて実施する必要があると考えられる。

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