日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-42
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-Self-Focused Attention Scale(SFA)日本語版の開発
○野田 昇太1)、大川 翔2,3)、城月 健太郎4)、笹川 智子5)
1 )武蔵野大学大学院人間社会研究科、 2 )大阪大学大学院連合小児発達学研究科千葉校、 3 )千葉大学子どものこころの 発達教育研究センター、 4 )武蔵野大学人間科学部人間科学科、 5 )目白大学人間学部心理カウンセリング学科
【目的】
社交不安症(Social Anxiety Disorder:以下SAD) は,他者の注視を浴び得る社交場面に対する著しい恐 怖 ま た は 不 安 が 本 質 的 な 特 徴 で あ る(American Psychiatric Association,2013)。近年,SADにおけ る症状の維持・増悪メカニズムの解明研究が多く行わ れている。SADの認知モデルおよび認知行動モデルに よれば,自己注目が,SADの維持・増悪要因の中核で ある。Clark & Wells(1995)とRapee & Heimberg (1997)のモデルによれば,自己注目で得た情報を基 に,否定的自己像や認知を形成するため,社交不安が 増加する。Vriends et al.(2017)は,低い自己注目 が,社交不安の低減および予防になると示唆してい る。これまで,自己注目の改善を目的とした介入研究 も行われてきた。多くの先行研究で,自己注目の改善 により,社交不安や恥への恐怖の減少に効果的である ことが報告されている(e.g. Bogels et al., 1997; Well & Papageorgiou, 1998)。例えば,Bogels(2006) のSAD患者65名に行った介入研究では,自己注目の改 善により,社交不安に中程度の低減の効果量と,身体 症状への恐れに対して強い低減の効果量を示してい る。上記のことから,自己注目は,SAD症状の増悪に 影響する危険因子であり,自己注目の改善が社交不安 の低減の予測因子であると考えられる。そのため,社 会的状況における自己注目に焦点をあてた介入は, SAD症状の改善を促す可能性が考えられる。海外で使 用されている自己注目を測定する尺度として,Bogels et al.(1996)のSelf-Focused Attention Scale(以 下SFA)が挙げられる。SFAは,信頼性と妥当性および 尺度の反応性も確認されている(Bogels et al., 1996 ; Bogels, 2006)。社交不安が高い傾向にある者 は,低い者と比べて,SFAで測定される自己注目の程 度 が 高 い こ と が 示 さ れ て い る(Vonchen et al., 2010;Bogels et al., 1996)。また,実験研究により, 社会的状況におけるSFAで測定される自己注目の程度 がSAD症状を予測することが示されている(Vriends et al., 2017)。以上のことから,SFAは,自己注目を 測定する精度は高く,有用性の高い尺度であると考え られる。海外では,SFAを用いてSADに関する研究が多 く行われているが,本邦においてはまだ行われていな い。上記を踏まえて,Bogels et al.(1996)のSFAの 日本語版を作成することは,本邦においてSADの維持 要因である自己注目に関する研究の発展に寄与する可 能性が考えられる。また,自己注目に焦点を当てた介 入法の発展および効果研究にも寄与する可能性が考え られる。そこで本研究では,SFAの日本語版を作成し, その信頼性と妥当性を検討する。 【方法】 ( 1 )調査対象者 関東地方の私立大学に通う大学 生213名を調査対象とした。各尺度において欠損値が 10%以下のものを分析対象とし,欠損値が10%を超え るものを除いた分析対象は192名(男性42名, 女性150 名;平均年齢19.78歳, SD= .90)であった(有効回 答率90.14%)。調査の欠損値について, 各尺度におい て欠損値が10%以下の場合,各項目における欠損値を 含まない回答の全データから平均値を算出し,欠損値 をその値で置換した。( 2 )調査材料 以下の質問紙 を使用し,調査を実施した。1.SFA日本語版Bogels et al.(1996)の研究で開発されたSFAの日本語版である SFAは,覚醒(arousal)因子 6 項目と行動(behavior) 因子 5 項目の合計11項目から構成されており, 各項目 について 5 件法(0.全くあてはまらない〜4.とてもよ くあてはまる)で評定を行うものである。合計得点が 高いほど自己注目の程度が高いことを示す。SFAの翻 訳に際しては,原著者(Bogels 博士)から承諾を得 た。第 1 研究者と第 2 研究者,第 4 研究者の計 3 名が 翻訳し,その適切さを討議し,日本語版SFAの項目を 作成した。その後,その和訳の妥当性検討のため,翻 訳業者に翻訳を依頼した。さらに,英語圏で長期の生 活経験があり,英語に精通する研究者にバックトラン スレーションを依頼し,その英訳と日本語版SFAの内 容の適切性を第 3 研究者が再検討した上で,SFAの質 問項目を確定した。2.Liebowitz Social Anxiety Scale(以下LSAS;朝倉ら,2002),3.Short Fear of Negative Evaluation Scale( 以 下SFNE; 笹 川 ら, 2004),4.Voluntary Attention Control Scale(以下 V A C S ; 今 井 ら,2 0 1 5),5 . M i n d f u l a t t e n t i o n Awareness Scale(以下MAAS;藤野ら, 2015)。( 3 )分 析方法 第一に因子妥当性を検討するために,確認的 因子分析を行った。第二にSFAの内的整合性を検討す るために,Cronbachのα係数を算出した。第三に基準 関連妥当性を検討するために,各尺度間の相関係数を 算出した。統計ソフトは,SPSS version 23とAMOS Version 22を使用した。( 4 )倫理的配慮 本研究は,
日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-42 381 -武蔵野大学人間科学部研究倫理委員会の承認を得て実 施した(承認番号:29029)。調査用紙を配布した後に, 文章および口頭にて, 個人の情報が漏れないこと,無 記名で調査を行うこと, 調査の回答は任意であり,無 条件に回答を中断できることを説明した上で,調査協 力の同意を得た者に回答を求めた。 【結果】 ( 1 )因子妥当性の検討 Bogels et al.(1996)と 同様の因子構造を設定し,確認的因子分析を行った。 その結果,モデルは,受容可能な適合度を示した(GFI = .895,AGFI= .838,CFI= .937,RMSEA= .099)。 確認的因子分析の結果をTable 1に示す。( 2 )内的整 合性の検討 SFAの内的整合性を明らかにするため に,SFAの覚醒,行動因子のそれぞれCronbachのα係 数を算出した。その結果,高い α 係数が得られた(覚 醒因子α= .89,行動因子α= .88)。( 3 )基準関連妥 当性の検討 SFAの基準関連妥当性について検討する ために,各尺度間の相関係数を算出した。分析結果を Table 2に示す。SFAの各因子の得点は,LSASの恐怖 感・不安感および回避尺度,SFNEの得点との間に弱〜 中程度の正の相関関係にあることが認められた(p< .01)。 【考察】 本研究の目的は,SFA日本語版の開発および信頼 性・妥当性の検討であった。因子構造については, Bogels et al.(1996)と同様の 2 因子構造が認めら れた。そのため,因子妥当性を備えていると考えられ る。また,Cronbachのα係数が高い数値を算出したた め,SFAは高い内的整合性を有することが確認された。 基準関連妥当性については,社交不安と関連のある尺 度とSFAが弱〜中程度の相関が見られたため,基準関 連妥当性を有することが認められた。したがって, SFA日本語版は信頼性と妥当性を備えた尺度であるこ とが示された。本研究は,大学生のみを対象としてい るため,今後は臨床群も含めたさらなる検討が求めら れる。加えて,本邦においても尺度の反応性も検討す る必要がある。