中国経済週報(2016.11.8~11.14)
在中国日本大使館経済部
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.「独身の日」のアリババグループのネット取引総額~前年比 32.3%増
●12 日、アリババグループは、同グループが運営する「天猫(Tmall)」が 11 月 11 日
の「独身の日」に実施した割引セールにおける取引総額が、1,207 億 4,800 万元(2015
年は 912 億 1,700 万元、前年比 32.3%増)に達したと公表。取引額は、11 日午前 0 時
の取引開始後 52 秒で 10 億元(2015 年は 1 分 12 秒)、6 分 58 秒で 100 億元(2015 年は
12 分 28 秒)を突破。
●アリババグループ及び順豊集団等の物流系企業が共同で設立した総合物流プラットフ
ォーム「菜鳥網絡科技」によると、11 日の菜鳥科技の物流取引件数は 6 億 5,700 万件
(2015 年は 4 億 6,700 万件、同 40.7%増)に達した。
2.全人代常務委員会でサイバーセキュリティ法が採択
●7 日、第 12 期全人代常務委員会第 24 回会議において、サイバーセキュリティ法が審
議・採択された。同法は、全7章約10,000字より構成され、サイバー空間の主権、
安全性に対する義務、個人情報の保護、重要な情報インフラの扱い、サイバーテロに対
する罰則などに関して規定。中国国内で集められた個人情報等の重要情報の扱いについ
ては、第3章第 37 条に、「重要な情報インフラの運営者が中国国内での運営活動によっ
て収集した個人情報及び重要データは、中国国内で保存を行う必要があり、国外への持
ち出しを行う場合には、国務院等の関連部門の規定に基づき安全評価を受ける必要があ
る」と規定。同法の施行日は 2017 年 6 月 1 日。
3.対外経済関係
米国大統領選のマーケットへの影響
●米国大統領選の結果を受け、9 日の上海総合株価指数は前日比▲0.62%となったが、
その後トランプ氏の勝利演説が好感され、10 日と 11 日はそれぞれ、
同+1.37%、
同+0.78%
となった(11 日は 3,197 ポイントで終了)。
●為替市場について、人民元は対ドルで下落し、14 日 12 時現在で 1 ドル=6.83 元と 7 年
ぶりの水準で推移している。
トランプ氏の大統領選当選に対する中国側見解
●10 日、商務部報道官は定例記者会見において、トランプ氏の大統領選当選が米国経済
に与える影響に関する質問に対して、「誰が米国大統領に就任しようとも、米中両国間
の利益が意見の不一致よりも大きいという情勢は変わることがなく、米中双方が引き続
き互恵的協力を深めていくというビジネス界の願いも変わらないと信じている」とコメ
●10 日、外交部報道官は定例記者会見において、トランプ氏の大統領当選前の中国に対
する態度等に関する質問に対して、「米中経済の経済貿易協力体制の本質はウィンウィ
ンであり、如何なる米国の政治家も、自国民の利益から考えて、米中経済貿易協力に資
する政策を講じていくと信じている」とコメント。
第8回英中経済財政対話の開催
●10 日、馬凱・副総理とハモンド・英財務大臣は第 8 回経済財政対話を開催し、貿易、
投資、市場開放、金融サービス、マクロ経済、インフラ投資について議論した。合計 63
の合意文書に署名され、この中で両国はロンドンと上海の証券取引所を接続するために
フィージビリティスタディを開始することに合意した。また、報道によるとハモンド財
務相は、AIIB のインフラプロジェクトに最大 5,000 万ドル投資することに合意した。
中国・中東欧首脳会議の開催
●5日、李克強・国務院総理は、ラドビアの首都リガにおいて、第5回中国・中東欧諸
国首脳会議に出席した。李総理は、中東欧 16 カ国と中国との今後の協力の方向性につい
て、以下の4点を提案した。①インフラと相互接続での協力の深化、②金融協力支援に
おける十分な役割の発揮、③グリーン経済協力における新たな分野の開拓、④人的・文
化的分野における協力の一層の緊密化。会議後、各国首脳は、「中国・中東欧国家協力・
リガ綱要」のほか、中国と中東欧 16 カ国の協力協定への署名に立ち会った。
李克強・国務院総理の訪露
●8日、李克強・国務院総理は、モスクワでプーチン・ロシア大統領と会談を行った。
李総理は、両国の経済関係について、「中露双方は、二国間貿易の回復に努め、石油や
天然ガス、原子力、航空、宇宙分野における大型事業での協力を推進するとともに、金
融、インフラ協力を強化し、両国の中小企業の協力を推進していきたい」と述べた。こ
れに対し、プーチン大統領は、「ロシア側は中国側と相互投資を拡大し、高速鉄道、金
融分野における協力を引き続き強化していくことを望む」と述べた。
●7日、李克強・国務院総理は、メドベージェフ・ロシア首相と第 21 回中露首相定期会
談を行った。李総理は、「中国はロシア側と原発、航空および鉄道などのインフラ分野
での協力を深めていきたい。二国間貿易の拡大に努め、双方の経済、貿易及び投資の健
全な発展を促進していく。」と述べた。これに対し、メドベージェフ首相は、「ロシア
側は中国側との実務的協力の推進を望んでおり、石油・天然ガスなどでの協力を推進し、
機械製品、農業、航空、高速鉄道などの分野での協力を強化していきたい」と述べた。
4.各種統計指標の公表
貿易~輸出入とも前年同月比マイナスが続く
●8 日、海関総署が 10 月の貿易統計を発表。10 月の貿易総額は前年同月比 4.9%減の
3,072 億 9,900 万ドルで、
うち輸出は同 7.3%減の 1,781 億 7,800 万ドル、
輸入は同 1.4%
減の 1,291 億 2,100 万ドル、貿易収支は 490 億 5,600 万ドルの黒字となった。また、1-10
月累計の貿易総額は前年同期比 7.6%減の 2 兆 9,814 億 8,100 万ドルで、うち輸出は同
7.7%減の 1 兆 7,115 億 4,800 万ドル、輸入は同 7.5%減の 1 兆 2,699 億 3,400 万ドル、
貿易収支は 4,416 億 1,400 万ドルの黒字となった。
●日中間の貿易総額は、1-10 月累計で前年同期比 2.8%減の 2,231 億 12 万ドル、うち輸
出は同 5.3%減の 1,060 億 154 万ドル、輸入は同 0.5%減の 1,170 億 9,859 万ドルとなっ
た。
物価~CPI、PPI とも上昇幅が前月より拡大
●9 日、国家統計局は 10 月の物価統計を発表。CPI(消費者物価指数)は前年同月比 2.1%
上昇、上昇幅は前月より 0.2 ポイント拡大した。
●PPI(工業生産者物価指数)は前年同月比 1.2%上昇となり、上昇幅は前月より 1.1 ポ
イント拡大した。
自動車~乗用車販売台数は前年同月比 20.3%増
●10 日、自動車工業協会は 10 月の自動車販売台数を発表。
●10 月の自動車販売台数は、前年同月比 18.7%増の 264 万 9,900 台、うち乗用車販売台
数は同 20.3%増の 234 万 4,100 台、商用車販売台数は同 7.4%増の 30 万 5,800 台。
●10 月の外資系ブランドの乗用車販売台数及びシェアは、
日本 34 万 4,400 台
(14.69%)
、
ドイツ 42 万 4,500 台(18.11%)、米国 28 万 5,100 台(12.16%)、韓国 16 万台(6.83%)、
フランス 5 万 9,700 台(2.55%)。
外貨準備高~4ヶ月連続の減少
●7 日、中国人民銀行は、10 月の外貨準備高を発表し、前月比 457 億 2,700 万ドル減の
3 兆 1,207 億ドルとなり、4ヶ月連続の減少となった。
銀行不良債権比率~9月末 1.76%
●10 日、中国銀行業監督管理委員会は、9 月末時点での商業銀行における不良債権残高
を公表し、6月末時点よりも 566 億元増加し、1 兆 4,939 億元となった。不良債権の比
率は6月末時点よりも 0.01 ポイント上昇し、1.76%となった。
保険業企業利益~1-9 月前年同期比-35.68%
●1日、中国保険業監督管理委員会は、1-9 月の保険業の企業利益は前年同期比 35.68%
減の 1,569 億 6,000 万元となったと発表。主要な原因は運用資金の収益率の低下として
いる。また、9 月末時点の資産総額は 14 兆 6,300 億元で、年初から 18.38%の増加。
生産・消費・投資
●14 日、国家統計局が 10 月の生産、消費、投資に関する経済指標を発表。
●10 月の一定規模以上企業の工業付加価値額は前年同期比 6.1%増で、前月横ばい。
●10 月の社会消費品小売総額は 3 兆 1,119 億元(名目成長率は前年同期比 10.0%増、実
質成長率は同 8.8%増)となった。
●1-10 月の固定資産投資額(農家を除く)は 48 兆 4,429 億元(名目成長率は前年同月
比 8.3%増)。
●1-10 月の民間固定資産投資額は 29 兆 7,725 億元(名目成長率は前年同月比 2.9%増)
で、全国の国定資産投資(農家を除く)に占める割合は 61.5%で昨年同期比 3.2 ポイン
ト縮小。
●1-10 月の不動産開発投資額 8 兆 3,975 億元で前年同期比 6.6%増となり、伸び率は前
月比 0.8 ポイント拡大した。1-10 月の住宅販売面積と販売額はそれぞれ前年比 26.8%増
と同 41.2%増となった。
■ :日本関連記事 1.概況・マクロ経済政策 □第 12 期全人代常務委員会は 7 日、サイバーセキュリティ法、映画産業促進法を採択し、民間教育促進法 の修正を決定したとともに、財政部部長、国家安全部部長、民政部部長の交代を発表。(11/8 人民日報p1) □国務院はこのほど、東北地域の振興に関する第 13 次五か年計画を承認したと発表。(11/8 経済日報p1) □国家統計局の最新発表によると、10 月の消費者物価指数(CPI)は前月比で 0.1 ポイント低下したものの、 前年同期比で 2.1%上昇した。生産者物価指数(PPI)は前年同期比で 1.2%上昇した。(11/10 経済日報p 10) □ネット通販イベント「双十一」を控え、北京市第 2 中級法院はこのほど、同法院が審理したネット通販紛争事 件に関する統計分析を発表し、商品価格に関わる詐欺行為がネット通販市場にとって深刻な問題になってい るとの見方を示した。データによると、2016 年 1-10 月に北京市第 2 中級法院に審理されたネット通販紛争案 件は 212 件で、2015 年通年の 29 件を大幅に上回った。(11/11 人民日報p10) 2.財政 □財政部、国家税務局はこのほど、11 月 1 日から電化製品や石油製品などの輸出に関わる増値税の還付率 を 17%に引き上げると発表した。(11/7 国際商報p3) □財政部の最新データによると、2015 年の全国保険基金総収入は 4 兆 6,354 億元で、前年比 14.6%増加し た。(11/10 経済日報p6) 3.金融・為替 □中国保険業監督管理委員会によると、1-9 月の保険業の利潤は 1,569 億 6,000 万元で、前年同期比 35.68%(870 億 5,900 万元)減少した。9 月末時点の保険業の資産総額は 14 兆 6,300 億元で、前年同期比 18.38%増加した。(11/7 国際商報p7) □中国人民銀行によると、10 月の外貨準備高は前月比 457 億 2,700 万ドル減の 3 兆 1,207 億ドルで、4 か 月連続の減少となった。(11/8 経済日報p5) □10 日、中国銀行業監督管理委員会は、9 月末時点での商業銀行における不良債権残高を公表し、6月末 時点よりも 566 億元増加し、1 兆 4,939 億元となった。不良債権の比率は6月末時点よりも 0.01 ポイント上昇し、 1.76%となった。(中国銀行業監督管理委員会 HP) □中国人民銀行は 8 日、「2016 年第 3 四半期金融政策執行報告」を発表し、今後の金融政策の重点として、 構造調整のモデル転換・アップグレードのため、適度かつ中性的な金融環境を構築していく方針を示したほ か、人民元相場と不動産価格の安定を共に維持することが必要と指摘。(11/9 経済日報p7) 4.貿易・海外直接投資 □国家外貨管理局によると、第 3 四半期の経常支出は 712 億ドルの黒字となり、前月比で 11%増加した。う ち、物品貿易は 1,371 億ドルの黒字で、前月比で 9%増加した。(11/7 国際商報p3) □税関総署の発表によると、1-10 月の中国の貿易額は 19 兆 5,600 億元で、前年同期比 1.9%減少した。う ち、輸出は 11 兆 2,200 億元で、前年同期比 2%減少した。輸入は 8 兆 3,400 億元で、前年同期比 1.8%減
5.産業・企業(国有企業を含む) □工業情報化部は 7 日、「医薬工業発展計画指針」を発表し、2020 年に同産業の営業収入成長率が 10%以 上となるとの見通しを示した。(11/8 経済日報p7) □国土資源部は 8 日、「産業用地政策の実施に関する指針」を発表し、産業用地の賃貸期限を最長 20 年と することを明確化した。(11/9 経済日報p10) □第 3 回音楽産業ハイレベルフォーラムが 8 日に発表した「2016 中国音楽産業発展報告」によると、2015 年 の中国の音楽産業生産高は 3,018 億 1,900 万元で、前年同期比 5.85%増加し、初めて 3,000 億元を突破。 (11/9 経済日報p10) □国家体育総局など複数の部門はこのほど、共同で「山地アウトドアスポーツ産業発展改革」、「水上スポー ツ産業発展計画」、「航空スポーツ産業発展計画」を発表し、2020 年に上記 3 つ産業の生産高が 9,000 億元 に達するとの見通しを掲げた。(11/9 経済日報p4) 6.農業・農村 □国家糧食局によると、11 月 5 日までに、東北 3 省およびうちモンゴル自治区におけるトウモロコシの買上げ は計 730 万トンに達し、前年同期比 409 万トン増加した。(11/10 経済日報p10) □民政部によると、2016 年 3 月の時点で、中国の農村地域において、両親が出稼ぎに出て家に残された 16 歳未満の「留守児童」の総数は 902 万に達した。(11/10 人民日報p11) □関連データによると、2015 年末時点で、中国の農村部の道路総延長は 398 万キロに達し、2011 年比 13.5%増加した。これにより、全国の 99.99%の郷・鎮、99.87%の村に道路が通じるようになった。(11/10 経 済日報p1) 7.労働・社会保障 □楊煥寧・国家安全生産監督管理総局長はこのほど、1-10 月の全国の生産事故件数と死亡者人数は 4 万 5,000 件と 2 万 7,000 人で、前年同期比それぞれ 6.2%と 3.3%減少したことを明らかにした。(11/10 経済日 報p5) 8.環境・エネルギー □国際エネルギー署によると、2015 年、中国の再生可能エネルギーの増加量は世界全体の 40%を占めた。 (11/7 経済日報p1) □このほど発表された「電力発展第 13 次五か年計画」は、2020 年までに中国の電力消費量が 6 兆 8,000 億 キロワット時から 7 兆 2,000 億キロワット時に達し、年平均 3.6%-4.8%増加するとの見通しを掲げた。(11/9 人民日報p3) □沈躍躍・全人代常務委員会副委員長はこのほど、2016 年上半期の中国の微小粒子状物質「PM2.5」の平 均濃度が前年同期比で 9.3%低下したことを明らかにした。(11/8 経済日報p14) 9.科学技術・イノベーション □イノベーション駆動発展戦略の実施を深化し、革新・創業に対する科学研究者の積極性を引き出すため、
中国共産党中央弁公庁、国務院弁公庁はこのほど、「知識価値の増加を指導とする分配政策の実施に関す る若干の意見」を発表した。(11/8 人民日報p1) 10.主要国との経済関係 □外交部は 9 日、習近平・国家主席が「17-23 日にエクアドル、ベル―、チリ 3 カ国を歴訪するとともに、リマで 開催されるアジア太平洋経済協力会議第 24 回首脳会合に出席すると発表した。(11/10 人民日報p1) □李克強・国務院総理は 5 日、第 5 回中国・中東欧諸国首脳会議に出席した。李総理は、「16+1」協力の今 後の発展について次の 4 点を提案した。①インフラ・コネクティビティ協力を深める、②金融協力の支えとして の役割を充分に発揮する、③エコ経済協力の新たな空間を開拓する、④人的・文化的分野の協力を一層緊 密化する。また、会議期間中、資本金 100 億ユーロ規模の「中国・中東欧基金」が新設された。(11/7 人民日 報p1、11/7 経済日報p6) □李克強・国務院総理は 8 日、モスクワでプーチン大統領と会談した。李総理は、両国の経済関係について、 「中国側はロシア側と共に、協力の潜在性を深く掘り起し、協力分野を拡大したい。双方は、二国間貿易の回 復を強化し、石油や天然ガス、民生用原子力、航空、宇宙分野の大型事業協力を推し進め、金融、インフラ 整備協力を強化し、両国の中小企業の協力を深めるとともに、双方の大企業協力にも必要な支援を行うべき だ」と指摘した。これに対し、プーチン大統領は、「ロシア側は中国側と相互投資を拡大し、高速鉄道、金融分 野の協力を引き続き強化したい」と述べた。(11/9 経済日報p2) □訪露中の李克強・国務院総理は 7 日、メドベージェフ・ロシア首相と第 21 回中露首相定期会談を行った。 李総理は、「中国はロシア側と共に原発、航空製造および鉄道などインフラ整備分野の協力を深めたい。次 の段階では中小企業の協力拡大を重点的に推進する必要があり、特にイノベーション分野で協力を拡大し、 中露の実務協力に新たな原動力を提供する。金融協力を強化するとともに、貿易の拡大に努め、双方向の 経済・貿易と投資の健全な発展を促進する。農業、特に農産物加工分野での協力を推進すべきだ」と指摘し た。これに対し、メドベージェフ首相は、「ロシア側は中国側と各分野の実務協力を全面的に推進することを 望んでおり、石油・天然ガスや民用原発などの大型協力事業を積極的に推進するとともに、中小企業のイノ ベーション協力を重点的に推し進める。金融分野での協力を深め、双方の協力に融資支援を提供する。機 械製品、農業、科学技術、航空、高速鉄道などの分野での協力を強化し、二国間の貿易額を全力で向上さ せていきたい」と述べた。(11/9 経済日報p2) 10.その他 □10 日国際博物館ハイレベルフォーラムが深セン市で開催された。習近平・国家主席は書簡で祝辞を寄せ、 フォーラムの開催に祝賀の意を表した。習主席は、世界各国の博物館の収蔵品を活用することで文化の多 様性を守り、各国国民の相互理解を深め、人類文明の進歩を促進するために貢献することを望んでいると強 調した。(11/11 人民日報p1)