国産GTL技術開発の現状と
今後について
― JAPAN-GTL で資源獲得を目指す ―
は
じめに
燃料調達の多様化につながる油田以外からの液体炭化水素の確保、および東南アジアに存在する既発 見・未開発ガス田を開発すべく、国産のGTL(JAPAN-GTL)技術開発が1998年より開始された。途中 出向等を挟むが、末廣は1998年から、片倉は2001年より連続してGTL技術開発と資源国企業等のプ ロモーションに携わってきた。現在は、500BPDの実証研究が終了し、商業化すべく資源国企業等と交 渉を進めている段階である。 本稿では、国産GTL技術開発の現状と今後について紹介する。なお、1章、2章を末廣が、3章、4章 を片倉が執筆した。 (1)天然ガスから液体炭化水素を製造するのがGTL ①GTLの定義 GTLとは Gas To Liquidsの略である。天然ガスの液 体燃料化技術をGTL技術と呼び、「天然ガスからナフサ、 灯油、軽油といった液体炭化水素を製造する技術」のこ とである。 ②LNGとGTLの違いLNG(Liquefied Natural Gas、液 化天然ガス)は、天然ガスを日本の ような消費国へ輸出するために産ガ ス国で氷点下164℃まで冷却するこ とにより液化し、輸送された後、再 ガス化し、家庭、工場に供給される 気化ガスのことである(図1)。LNG の製造工程は物理変化であり、原料 がガス、再ガス化された製品もガス であり、どちらもガス市場に属する ものである。一方、GTLは、天然 ガスを原料とし製品の液体炭化水素 に変換するため、製造工程は化学変 化であり、ガス市場とオイル市場の両方に属することに なる。 ③GTLの意義・メリット 資源国企業等から見れば、「天然ガス市場が多様化」し ている状況において、安い原料ガスから高い液体石油製 品(GTL)を製造することは、原料ガスの高付加価値化
1.
GTLとは
LNG と GTL の違い 図1 出所:筆者作成 物理変化 LNG 化学変化 輸送 発電など GTL 冷却 液体炭化水素 (ナフサ、灯油、軽油) FT 合成/ アップグレーディング 合成ガス (H2 + CO) 天然ガス (CH4など) 天然ガス (CH4など) CBM /CSG 随伴ガスにつながる。また、一般にガス体より液体は扱いやすい ため、GTLは常温常圧で「ハンドリングの容易な液体」 となる。また、ガス体に比較すれば、GTLの単位エネ ルギーあたりの容積は圧倒的に小さくなるので、「輸送 コスト」の削減にも寄与する。さらに、GTLを原油生産 に伴うフレアガス(随伴ガス)削減に利用すれば、これに よる「環境負荷低減」と同時にGTL製造による付加価値 の向上が期待できる。 また、消費者から見れば、硫黄分や芳香族を含まない 「クリーンな液体燃料」が供給されるメリットがある。特 に GTLディーゼルは、セタン価が高く燃焼特性がよい 等の特徴がある。さらには、既存原油インフラの活用(貯 蔵タンク、出荷システム、輸送手段等)といったメリッ トもある。 原油を輸入している日本全体から見れば、既存原油か らでなく、天然ガスから液体炭化水素を手に入れること ができ、「液体燃料供給源の多様化」につながる。 (2)GTLが適用される背景 ①GTLの本質は安価なガスから高価な石油製品を製造 するビジネス GTLは原料がガスで製品が油であることから、本質 的にはガス価格と石油製品価格の価格差が重要である。 図2は、米国本土におけるガス販売価格と原油価格の実 績と見込みである。この図によると 2035 年に、最大 13US$/MMBTU(百万英国熱量単位)程度の価格差を予 想している(なお、このデータは 2011 年時の見込みで あり、現在の北米ガス価格が $US2 ~ 3/MMBTUであ ることを考えると既に見込みが違っている)。ガス販売 価格と製品価格(=原油価格+精製価格+税金等)の価格 差が大きいほどGTLビジネスにとっては好環境となる。 GTLビジネスでは、原料となるガス価格が安く、石油 製品価格が高いビジネス環境を指向する「ギャップビジ ネス」と言える。 ②GTL適用が検討されるケース 以下に、GTL適用が検討されるケースを示す。 a ガス埋蔵量が豊富(例えば、カタール、北米等): パイプラインや LNGに加えて GTLをガス資源開発の オプションの一つとして検討。 b ガス埋蔵量が豊富、ただし、自国において原油生産が 少なく石油製品を輸入(例えば、オーストラリア、ウ ズベキスタン等): 自国のガスの GTL化で、国内に石油製品の供給を検 討。 cガス田はあるが、近くにパイプライン等のインフラが ない場合(例えば、内陸部、海洋、東シベリア等): 液体炭化水素は、ガスよりも取り扱いが容易であるこ とからGTLを検討。 d ガスソースが CO2を含む場合(例えば、東南アジア、 特にインドネシア、タイ、ベトナム等): JOGMECと民間6社が共同研究開発したJAPAN-GTL プロセスの適用を検討。 e 油田随伴ガス(フレア)を削減(例えば、ブラジル、西 アフリカ、西シベリア、カザフスタン等): フレアから液体炭化水素を製造し、同時に、フレアを 削減。 (3)世界のGTLプロジェクト ①GTLリーダーはSasolとShell 世界で運転、建設、検討中の GTLプロジェクトは次 のようになる(図3)。 GTLのリーディングカンパニーは、南アフリカの SasolとスーパーメジャーのShellである。南アフリカの 企業である Sasolであるが、人種隔離政策を採っていた 南アフリカは欧米各国からエネルギー封鎖を受けていた ため、自国で石油製品を生産せざるを得ない事情があっ た。そこで、1950年代からドイツ人研究者の力も借りて、 自国の石炭や天然ガスの液体化技術の研究を行ってき た。1994 年にマンデラ大統領が誕生し、南アフリカが 国際社会に復帰し、それを機に 50 年近くの GTL研究の 蓄積がある Sasolが世界の表舞台に登場した。Sasolは、 2007年にはカタールで3万4,000BPD*1のGTL生産を開 始している(OryxGTL:オリックスGTL)。北米やウズ ベキスタンでもGTL商業プロジェクトを検討しており、 米国における天然ガスと原油の価格差 図2
出所:EIA/Annual Energy Outlook 2011
0 5 10 15 20 25 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 年 13US$/MMbtu US$/MMBTU (119.45ドル/バレル) Crude Oil NG
ウズベキスタンでは、GTLプラントに供給するガスの パイプライン建設が 2012 年から始まったとの最新の ニュースがある(OLTIN YO’L GTL:黄金の道GTL)。*2 また、OryxGTLのコピー版であるEGTL(EscravosGTL、 エスクラボス GTL)がナイジェリアで建設中であり、 2013年に稼働の予定である。 もう一方の Shellは、原油価格が 9US$/bblの時代も GTLの研究を続けていた。原油価格が 9US$/bbl*3の時 代では、GTLの製造コストを考えると GTLは赤字だっ たはずである。それでも研究を続けたのは、やはり多様 な資源からの液体燃料製造技術の確立という視点と、先 を見据えた確固たる見識があったからであり、先行投資 としての意味合いが強かったと思われる。さらには、 Shellは世界初の商業 LNGプロジェクトであるアルジェ リアのアルズープロジェクトに、1964 年、LNG技術を 供与していたことから、将来ガスマネタイゼーション技 術の対抗馬となる可能性のある GTL技術を押さえるこ とによって、LNG、GTL双方の技術を所有し、ガス田 開発ビジネスに柔軟かつ圧倒的に対応できる体制確立を 目指していたと思われる。 Shellは 1993 年にマレーシアで 1 万 4,700BPDの GTL プラントを稼働させている。カタールで 2011 年に 7 万 BPDのプラントが稼働し、2012 年にはさらに 7 万 BPD の計14万BPDを稼働させる計画である(PearlGTL:真 珠の GTL。建設は既に完工し、稼働しているとのこと であるが、11月末時点で、フル稼働の報道がない)。マレー シアの Shellの GTLプラントで操業経験を積んだマレー シア人がカタールで操業に当たるようである。カタール でもまた 10 年たてばカタール人の操業者が育つので、 また新たなプロジェクトにそのカタール人を投入でき る。SasolもShellもこのように戦略的にプロジェクトを 進めており、GTLでは他社を圧倒している。 最近、北米のシェールガスが注目され、北米において LNGプラント以外にも GTLプラントを建設する計画が ある。Sasolはメキシコ湾岸で4万4,000BPD、8万8,000BPD を計画している。Shellも北米で GTLを計画している。 上述のように、原料であるシェールガス由来のガス価格 が安く、相対的に原油価格が高く、さらに GTL製品価 格は高くなるので、アメリカには GTLのビジネスチャ ンスが広がっている。Sasol、Shell以外にもいくつかの ベンチャー企業がGTLを計画している。 ②Sasol、Shellに続くのは誰か? 現在、商業化しているのはSasol、Shellの2社であるが、 これに続く3番手の企業は、実験プラントのレベルとな る。日本のGTLプラント(JAPAN-GTL)は500BPDの 世界の GTL プロジェクト 図3 66,000BPD UNG/Sasol/Petronas: ウズベキスタン 34,000BPD(FID2012) Syntroleum: オクラホマ州 70BPD Syntroleum: オクラホマ州 70BPD Shell: 米国(Shale Gas) 数万BPD? Sasol: 米国(Shale Gas) 44,000BPD,88,000BPD OxfordCatalyst/Velocys (TEC/MODEC):ブラジル 6BPD CompactGTL:ブラジル 20BPD CompactGTL:ブラジル 20BPD 日本GTL:新潟 500BPD GTL.F1(Statoil / PetroSA/Lurgi): 南ア 1,000BPD SasolChevron: ナイジェリア 34,000BPD(2013) Shell:カタール 70,000 + 70,000BPD 34,000BPDSasol:カタール Shell: マレーシア 14,700BPD Sasol:南ア 105,000BPD (原料:石炭) PetroSA:南ア 22,500BPD 検討/計画中 稼 働 中 建 設 中 実験プラント 出所:筆者作成
2.
JAPAN-GTL
(1)開発の背景・歴史 ①1998 ~ 2000年度:ラボ・ベンチ研究(0.01 ~ 0.1BPD) 油田以外から、液体燃料を獲得すべく、また、東南ア ジアに存在する既発見・未開発ガス田(ストランデッド ガス田)をGTLで開発すべくGTL技術開発が開始された。 JOGMEC(当時、石油公団)と国内民間企業は1998年よ りラボ・ベンチレベルから開発を開始した(図5)。 1998 ~ 2000年度においては、石油資源開発㈱(以下、 石油資源)、千代田化工建設㈱(以下、千代田化工)、コ スモ石油㈱(以下、コスモ石油)の民間3社とJOGMECは、 2種類の合成ガス製造触媒と1種類のFT合成触媒(Ru〈ル テニウム〉系)を開発してきた。合成ガス製造触媒、FT 合成触媒ともに安定的な生産挙動を示した。また、合成 ガス製造工程、FT合成工程の反応器検討も行った。合 成ガス製造工程は管式反応器、FT合成工程はスラリー 床を前提に検討が進められた。さらには、次期パイロッ ト研究に向けた計画も立案した。ラボ・ベンチレベル (0.01 ~ 0.1BPD)の触媒パフォーマンスから推定した商 業規模レベル(1万5,000BPD)の生産性・経済性を推定し、 有識者から成る第三者評価において「一定の競争力があ る」との評価を得て、次の勇払GTLパイロットプラント (北海道苫小牧市:7BPD)の実施を目指すことになった。 段階だが、ほぼ同じレベルにあるのがノルウェーのStatoil、南アフリカの PetroSA、ドイツの Lurgiが構成 する「GTL.F1」の 1,000BPDのプラントである。また、 海洋油田の随伴ガスからの GTL製造をターゲットとし た 洋 上 適 用 型 GTL(FGTL:Floatng GTL) 開 発 を、 CompactGTL社とVelocys(ベロシス)社がブラジルで 行っており、商業化は間もなくとの情報もある。日本が Sasol、Shellに次いでGTL商業化グループに入れるか否 かはここ1年が勝負だろう。 (4)GTL製造方法 3工程で製造されるGTL 図4にその概要を示す。天然ガスを原料として、合成 ガス製造工程、FT合成工 程、アップグレーディング 工程を経て、ナフサ、灯油、 軽油が製造される。3 工程 とも触媒を用いた化学反応 である。 a 合成ガス製造工程 :原料 に天然ガス、スチーム、 酸素を用いて一酸化炭素 と水素から成る合成ガス を製造する工程。先行す る Shellや Sasolは原料に 酸素を用いる方式であ る。一方、JAPAN-GTL プロセスは酸素を用いず に、原料として二酸化炭素(CO2)を有効利用する方式 である。なお、合成ガス製造工程では後述する FT合 成工程を考え、水素と一酸化炭素のモル比をほぼ2に しておく必要がある。 b FT合成工程:FT合成では、2 モルの水素と 1 モルの 一酸化炭素の合成ガスからFischer-Tropsch(FT)合 成反応により直鎖状の炭化水素主体の合成油(FT油) と水を製造する工程。 c アップグレーディング工程:FT合成工程において製 造された FT油を水素化精製、水素化分解処理(所定 の炭素鎖で切断、枝分かれ(異性化))を施すことによ り、ナフサ、灯油、軽油といった GTL製品油を製造 する工程である。 GTL の製造工程 図4 出所:筆者作成 メ メタタンン H H O ス スチチーームム O O C H HC H H 二 二酸酸化化炭炭素素 H H 水 水素素 H C H H H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H HC H H H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H H C H FT Oil((C5~~100)) ナ ナフフササ((C5~~10)) 灯 灯油油((C10~~14)) 軽 軽油油((C14~~20)) O O 酸 酸素素 C O 一 一酸酸化化炭炭素素 改 改質質剤剤 合 合成成ガガスス 製 製造造工工程程 FT合 合成成 工 工程程 アアッデディップィンングプググ工グレ工程レーー程 HOH 副 副生生水水
②2001 ~ 2004年度:パイロットプラント研究(7BPD) 勇払GTLパイロットプラントプロジェクト(図6)は、 有識者から成る第三者評価の提言を受け、石油資源、千 代田化工、コスモ石油に加えて、Co(コバルト)系FT合 成触媒を有する新日鉄住金エンジニアリング(株)〈旧・ 新日本製鐵(株)〉(以下、新日鉄住金エンジ)、国内外に ガス田権益を有する国際石油開発帝石(株)〈旧・国際石 油開発(株)〉(以下、国際石油)を加え、パイロットプラ ント研究を実施した。原料ガスは石油資源の勇払ガス田 から供給される天然ガスであり、ガス組成は、CH4/ C2H6/C3H8/C4+/N2=85.0/8.5/3.0/1.6/1.3 であった。つま り、CO2を含まない良質の天然ガスであり、パイロット プラント研究では液化炭酸ガスから JAPAN-GTLの原 料としてCO2を供給した。 勇払 GTLパイロットプラントの簡易プロセスフロー を図7に示す。合成ガス製造工程には管式反応器を1本 有する。管は外径 14cm、高さ 14mである。FT合成工 程は、外形25cm、高さ15mである。また、アップグレー ディング工程は有していない。7BPD規模のパイロット プラントでは、GTL合成ガス製造工程、FT合成工程、 それぞれにおける触媒と反応器一体となった生産性・経 済性を評価することが主たる目的であった。 また、触媒・プロセスの生産性およびスケールアップ 性を確認するとともに、各種シミュレーションをベース とする設計ツールの構築を行った。 勇払 GTLパイロットプラントの実証結果から推定し た商業規模レベル(1万5,000BPD)の生産性・経済性を 推定し、有識者から成る第三者評価において「一定の競 争力がある」との評価を得た。その際、JAPAN-GTL(当 時、JOGMEC-GTL)の合成ガス製造触媒としては千代田 化工、FT合成触媒としては新日鉄住金エンジ、それぞ れが開発した触媒が選定された。また、次のフェーズに おいては、数百 BPDの実証を行うのか、もしくは数千 BPD規模のセミ・コマーシャル事業を行うのか、の議 論があった。コンサルタント、産ガス国関係者、業界関 係者のヒアリングをベースに有識者から成る第三者評価 を経て、さらなる競争力維持のため、また、先行他社も 技術の成熟度を示すために行っている数百 BPDを実施 する必要があるとの結論に至り、次のデモンストレー JAPAN-GTL 開発の歴史 図5 出所:筆者作成 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2015 2020 Lab/Bench 20,000
~
15,000 500 7 0.01 7BPD 年 装置規模(BPD)15,000∼20,000BPD
Commercial Plant
500BPD
Demonstration Plant
(新潟)
GTL実証研究
FT合成油 7BPD Pilot Plant (勇払) 勇払 GTL パイロットプラント(7BPD) 図6 出所:JOGMECション研究(500BPD)の実施を目指す こととなった。 ③2006 ~ 2011年度:デモンストレー ション(実証)研究(500BPD) JX日鉱日石エネルギー(株)〈旧・ 新日本石油(株)〉(以下、JXエネル ギー)を新たに加え、JOGMECと民間 6社で構成する日本GTL技術研究組合 を設立し、JAPAN-GTL実証研究を実 施した。500BPD(図8)を用いた実証 研究の概要については次章以降をご参 照願いたい。 (2)JAPAN-GTLプロセスの特徴 ①CO2を利用でき、世界各地向けに高 収率のクリーン軽油を製造できる JAPAN-GTL プロセス JAPAN-GTLプロセスとは、千代田 化工の技術をベースに用いたスチー ム /CO2リフォーミング法の合成ガス 製造工程、新日鉄住金エンジの技術 をベースに用いた FT合成工程、JX エネルギーの技術をベースに用いた アップグレーディング工程で構成さ れる(図9)。 出所:JOGMEC 作成 Natural Gas CO2 v v v v v ____ ____ __ ---- --- --- --- - --BFW __________ - - --FT Reactor Catalyst Filter Light/Heavy Oil Separator Catalyst Separator CO2 Absorber Water Separator Hydro-desulfurizer Reformer Heavy Oil Waste Water Oil/Water Separator To Flare Waste Water IDF Steam Drum Light Oil Gas/Oil Separator To Vent Stuck Steam Drum RH2 Natural Gas CO2 v v v v v ____ ____ __ ---- --- --- --- - --BFW __________ - - --FT Reactor Catalyst Filter Light/Heavy Oil Separator Catalyst Separator CO2 Absorber Water Separator Hydro-desulfurizer Reformer Heavy Oil Waste Water Oil/Water Separator To Flare Waste Water IDF Steam Drum Light Oil Gas/Oil Separator To Vent Stuck Steam Drum RH2 Flare 新潟 GTL 実証プラント(500BPD) 図8 出所:JOGMEC JAPAN-GTL プロセスオリジナル技術 図9 出所:JOGMEC 作成 天然ガス CH4 CO2 スチーム ナフサ 灯油 軽油 勇払GTL パイロットプラント GTL 実証プラント 固定床 白金系触媒 (オリジナル技術: JX日鉱日石エネルギー) 反応器 触媒 管式反応器 (Steam/CO2 リフォーミング) 貴金属系触媒 (オリジナル技術:千代田化工) スラリー床 コバルト系触媒 (オリジナル技術: 新日鉄住金エンジニアリング) 合成ガス 製造工程 FT 合成 工程 アップグレー ディング工程 勇払 GTL パイロットプラント簡易プロセスフロー(7BPD) 図7
その特徴は、合成ガス製造工程においてはCO2の一部 を原料として用いることができ、東南アジアをはじめと する CO2を含有する天然ガス田へ適用できる技術であ る。FT合成工程においては、安定的に FT油を生産で きる技術である。アップグレーディング工程においては、 一部の極地用の軽油を除いた、世界中の軽油を高収率で 生産できる技術である。勇払 GTLパイロットプラント ではアップグレーディング工程を有していなかったが、 実証プラントでは、先行他社動向およびGTL製品のマー ケティングの観点から、アップグレーディング工程も含 んだ、GTLプロセスの一貫システムを実証することに なった。 先行他社は原料ガスにCO2を含む場合、CO2を除去す るための除去装置が必要となり、また、原料となる酸素 を供給するために、酸素製造装置が必要となる。一方、 JAPAN-GTLは天然ガスに含むCO2を有効利用でき、ま た、酸素製造装置が必要としないことからシンプルな装 置構成となる(図10)。 ②JAPAN-GTLの合成ガス製造工程 JAPAN-GTLの合成ガス製造プロセスの反応器は、管 の内部に触媒を充じゅう填てんした管式反応器を用いており、管の 外側からバーナーで熱を与えて合成ガスを製造する(吸 熱 反 応 )。 特 に、 天 然 ガ ス 中 の CO2を 有 効 利 用 し、 Steam/CO2 Reformingで、FT合成に有用なH2/COモル 比=2/1の合成ガス製造を可能とするものである。 以下に、Steam/CO2 Reformingに関する反応を示す 〈(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)〉。
CH4+H2O⇔CO+3H2,ΔH298=+206kJ/mol(ⅰ) CO+H2O⇔CO2+H2,ΔH298=-42kJ/mol(ⅱ) CH4+CO2⇔2CO+2H2,ΔH298=+248kJ/mol(ⅲ) これらは平衡反応であり、温度、圧力、原料ガス組成 比により生成物は一義的決定される。 次に、炭素析出に関する反応を示す〈(ⅳ)(ⅴ)〉。 CH4⇒C+2H2,ΔH298=+75kJ/mol(ⅳ) 2CO⇒C+CO2,ΔH298=-172kJ/mol(ⅴ) (ⅳ)式はメタン起因の炭素析出反応、(ⅴ)式はCO起 因の炭素析出反応である。反応管上流では(ⅳ)式を、下 流では(ⅴ)式に留意することになる。 例えば(ⅴ)式(Boudouard反応)に関しては炭素析出を 把握する指標として、カーボン活性(Ac)が次のように 定義される。 JAPAN-GTL プロセスの特徴 図10 出所:JOGMEC 作成 合成ガス製造 アップグレーディング アップグレー ディング アップグレー ディング FT 合成FT 合成 アップグレー ディング アップグレー ディング FT 合成FT 合成 合成ガス 製造 合成ガス 製造 合成ガス 製造 合成ガス 製造 硫黄 除去 硫黄 除去 硫黄 除去 硫黄 除去 酸素製造 CO2除去 天然ガス(CO2 20%含有)
従来プロセス
(自己熱改質プロセスの例)従来プロセス
(自己熱改質プロセスの例) 天然ガス(CO2 20%含有)JAPAN-GTLプロセス
JAPAN-GTLプロセス
・炭酸ガス/水蒸気改質 ・管式改質器+貴金属系触媒 FT合成 ・スラリー床+Co 系触媒 ・固定床+Pt系触媒Ac=K・(Pco)2/Pco2 (ⅵ) K:Boudouard反応の平衡定数 Pco:CO分圧 Pco2:CO2分圧 Acが 1 以上であるときは、平衡的に炭素が生成する 条件下にあることを意味する。 横軸に合成ガス H2/COモル比 =2/1 を製造するために 必要な原料ガス組成比を、縦軸に単位容量の合成ガスを 製造するのに必要な原料ガス容量との比(Total Feed Gas Volume / Product Syngas Volume)をとった関係を 示す(図11)。図11より縦軸(Total Feed Gas Volume / Product Syngas Volume)=1 となる原料組成モル比 CH4/CO2/H2O=1/0.4/1 が、最小の投入原料ガス量で最 大量の合成ガスを得ることができる最適条件であること が分かる。しかし、この条件は平衡論的に炭素析出領域 (Ac>1)である。 従来の Steam/CO2 Reformingプロセスにおいては、 反応条件が炭素析出領域に入る場合には炭素析出を防ぐ ために、必要量以上に水蒸気を導入していた。その結果、 過剰のスチームを加熱するために反応装置の規模が大き くなり、エネルギー効率が悪くなっていた。ところが、 JAPAN-GTL合成ガス製造プロセスでは、必要最低量の Steam/CO2の導入のみで、炭素析出を防ぎつつ、H2/ COモル比=2/1の合成ガスを、管式反応器出口温度850 ~ 900 ℃、反応圧力 2.0 ~ 2.5MPaで、製造することが できる。 ③JAPAN-GTLのFT合成工程 FT合成反応は Feや Coを触媒として、直鎖状の炭化 水素を製造する反応である(図12)。 2H2+CO⇒-(1/n)(CH2)n-+H2O, ΔH298=-167kJ/mol-CO (ⅶ) 反応温度220 ~ 270℃、反応圧力0.5 ~ 3MPaである。 また、FT合成により合成された炭化水素の炭素数の 分布は、Anderson-Schlutz-Flory(ASF)則に従うことが 知られている(図13)。1個の炭素鎖が成長する確率を αとすると、次式のように定義される。 α=kp/(kp+kd) (ⅷ) α:連鎖成長確率 kp:連鎖成長速度 kd:水素化脱離速度 上記(ⅶ)式より、FT合成に有用なH2/COモル比が 2/1であることが分かる。商業GTLではα>0.9の灯油・ 軽油留分が大きくなる領域で重質分を多く含むFT油を 製造し、後段のアップグレーディング工程でアップグ レーディングすることにより、GTL灯油留分、GTL軽 油留分の最大化を図っている。JAPAN-GTLの FT触媒 もα>0.9である。 原料ガス製造効率と原料組成の関係 図11 FT 合成反応模式図 図12 ASF 則 図13 出所:末廣能史、石油技術協会、vol.68、No.6(2003) 出所:JOGMEC 作成 出所:JOGMEC 作成 1 2 3 4 5 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 Ac>1.0 Carbon Deposition Conditions Temp:850℃ Press:2.1MPa 2.0 1.6 1.2 0.8 0.4
To
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2O/CH
4in Feed(mol/mol)
CO
2/CH
4in Feed(mol/mol)
CO H2 CO H2 CH2CH2 CH3 CH2 CH3 CH2 CH22 CH2 CH3 CH2 CH CH3 4 H2 CH H2 CH4 H2H2 C2C2H6H6 H2H2 C3C3HH88 kp kd kp kp kp kd kd C1,C2 Naphtha Kerosene Gas Oil WAX Pr od uct s / w t.% 0 20 40 60 80 100 0.75 0.8 0.85 0.9 0.95Chain Growth Probability(α) LPG
α
灯油・軽油
灯油・軽油
また、(ⅶ)式は発熱反応であることから、プロセス上 は除熱を考慮することが重要である。そこで、除熱と温 度制御が容易で、スケールアップも容易と言われている 「スラリー(Slurry)床反応器(図14)」をパイロットプ ラント、実証プラントに採用している。また、触媒と生 成物の分離にはJOGMECと日本GTL研究組合が開発し た機構を用いている。 ④JAPAN-GTLのアップグレーディング工程 FT合成工程で生成した液状炭化水素は直鎖状パラ フィンが主体であるが、オレフィン類、アルコール類が 含まれている。アップグレーディング工程では、これら 成分の水素化精製(Hydrotreating)に加え、直鎖状パラ フィンのイソパラフィンへの異性化(Isomerization)お よび重質成分の水素化分解(Hydrocracking)を行い、最 終製品を得る。これらを模式的に図15 に示す。反応器 は石油精製業界の水素化精製・水素化分解装置で用いら れているものと同様の固定床である。JAPAN-GTLの水 素化分解を例に採ると、Pt系触媒を用いて、反応温度 300 ~ 350℃、反応圧力3 ~ 5MPaで反応が制御されて いる。 ⑤JAPAN-GTLの製品性状 JAPAN-GTLの 製 品 は、GTLナ フ サ、GTL灯 油、 GTL軽油である。詳細を次章で説明する。 ⑥JAPAN-GTLと先行他社GTLとの比較 CAPEXとOPEX 図16に先行他社とのCAPEX(Capital Expenditure、 設備費)、OPEX(Operating Expenditure、操業費)の比 較を示す。なお、CAPEX、OPEXともに先行他社の公 表データがあるわけではないので、各種資料からの推定 スラリー床反応器 ( イメージ図 ) 図14 アップグレーディング工程模式図 図15 CAPEX 比較 図16 図17 CO2排出量比較 出所:JOGMEC 作成 出所:筆者作成 出所:JOGMEC 作成 出所:JOGMEC 作成 OH n-Paraffin Olefin Alcohol FT Oil n-Paraffin Iso-paraffin Isomerization Hydrocracking Upgrading Hydrotreating Product 140 120 100 80 60 40 20 0 相対比
A Company B Company C Company GTL Plant Unit Cost
JAPAN-GTL 100 169 215 180 146 100 69 104 70 0 50 100 150 200 250 CO2= 3% CO2=18% CO2=33% CO2=40% CO 2 Emission JAPAN-GTL ATR-GTL 相対比
3.
実証研究
(1)背景 GTL技術は、わが国のエネルギーセキュリティ上、 優先度の高い技術開発課題であり、同技術の適用による 新規ガス田権益取得等の新たなビジネスチャンスに貢献 できると考えられる。一方、GTLの商業化を進める海 外先行企業、例えばSasolやShell等はライセンシングに よる事業を行ってこなかったため、GTL技術をわが国 で独自に技術開発する必要に迫られた。 ( 独 ) 石 油 天 然 ガ ス・ 金 属 鉱 物 資 源 機 構( 以 下、 JOGMEC)および民間5社*4は、北海道苫小牧市勇払に おいて小規模な GTLパイロット試験(プラント規模 7BPD)を実施(2001 ~ 2004年度)し、7BPDのGTL油 の製造ばかりでなく、GTLの要素技術の獲得にも成功 し、有識者から成る第三者評価では、前述の提言に加え、 「GTLプロジェクトの推進意義は大きい」と、高い評価 も得ていた。 その頃、既に中東・カタールでは、カタール国営石油 公社(以下、「QP」)およびSasolが推進するORYX GTL Projectのプラント建設が始まっており、2006(平成18) 年6月に商業運転を開始し、さらに他のプロジェクトも 2010年頃には商業運転を開始する計画となっていた。こ うしたGTLの商業化を進める海外先行企業においては、 商業化前にいずれも数百バレル以上の規模での実証プラ ント運転を行い技術開発・確立した経緯があった。 そうしたなかで、私たちは QPを訪問し、小規模なパ イロット試験の結果を基に、将来カタールでの GTL事 業の可能性に関するヒアリングを行った。しかし、GTL の商業化を進める海外先行企業はどこも商業化前まで に、一定規模以上にスケールアップした実証運転を行い、 その運転結果に基づき商業化の判断を下すとのアドバイ スを受けた。 一方、私たちは後述するインドネシア国営石油会社 (「現PT. Pertamina Persero」)とのGTL技術の適用性に 関する簡易スタディを並行して実施していたため、GTL 商 業 化 の 経 済 性 に 関 し て は、GTLプ ラ ン ト 規 模 が 5,000BPD以上ならこの技術の商業化が可能であること が分かっていた。その規模でも投資額は大きい。 QPのアドバイスや簡易スタディによるプラントの規 模感を考えれば、数百バレルの GTL実証運転は不可欠 で あ る と の 結 論 に 至 り、JOGMECと 民 間 6 社* 5は、 2010(平成22)年度を目途に、商業化に向けたGTL技 術の開発・確立を目指すものとし、投資家や産ガス国へ アピールし得る規模として 500BPDの GTL実証運転を 国内最大規模のガス生産地である新潟市で行うことを決 定した。その後、GTL実証研究に関する基本方針、知 財協定と事業計画に合意し、2006(平成18)年3月開催 の有識者による第三者評価で、GTL実証研究の事業計 画が了承され、特別研究「天然ガスの液体燃料化(GTL) 技術実証研究」(以下、「GTL実証研究」)が開始される ことになった。 目 的 達 成 に 向 け た GTL共 同 研 究 開 発 に つ い て、 JOGMECは、以下の三つの目標を示した。 a 世界に伍ごする日本独自の GTL商業化技術を早期に確 立し、商業化プロジェクト実施の目途を立てる。 に基づく議論となる。 原料ガスに CO2を含む場合、先行他社 A社、B社、C 社と比較して JAPAN-GTLの CAPEXは 10 ~ 20%程度 安価であることが分かる。これは上述のように、CO2除 去装置や酸素製造装置が不要であることに起因する。 OPEXに関しても、比較する詳細データはないが、4 ~ 5%×CAPEX/年と、先行他社と同水準であると推測 している。 CO2排出量 GTLの CO2排出量に関する比較を図 17 に示す。原 料ガスに CO2を 18%含む場合の JAPAN-GTLプラント から排出される CO2を 100 として ATR(Auto-thermal Reforming、自己熱改質)システム(先行他社の例で言え ばSasolが採用しているシステム)との比較を示した。原 料ガスのCO2が18%より少ない場合は、先行他社とCO2 排出量は同等となる。逆に原料ガスの CO2が 18%より 多い場合は、先行他社よりも CO2排出量が少なくなる。 CO2=40%程度まで JAPAN-GTLは CO2を有効利用でき る。これがメリットと言える。化学プラントの一種であ る GTLプラントで使用する燃焼機器から排出される排 ガスに含まれる CO2 の量が支配的であるため、JAPAN-GTLと言えども CO2排出量をゼロに抑えることはでき ない。b民間6社は技術研究組合を設立し、技術集約と統合に よる効率的研究を遅滞なく推進する。 c 研究実施の基礎となるGTL実証プラント、その設計・ 建設は、研究開発を絡めた膨大な設計・建設技術を要 することから、これらの業務を適切に統合し、①早期 プラント設計・建設 および②競争力あるGTL技術開 発を実現する。 この目標を実現するために、JOGMECと民間6社が名 実ともに共同で研究する体制が望まれ、2006年4月以降、 経済産業省との協議を経て、鉱工業技術研究組合法(昭 和36年5月6日法律第81号)*6を根拠とする技術研究組 合を研究組織とし、2006 年 10 月 25 日、後述の「日本 GTL技術研究組合」(以下、GTL組合)を設立した。 GTL実証研究は、GTL組合設立までの期間を有効活 用するための先導研究、GTL組合設立後は、JOGMEC の中期事業年度の前後でそれぞれ Phase1 研究および Phase2研究に分かれる。 GTL実証研究と勇払パイロットテストの実施場所を 図18に示す。 (2)研究目標・課題 500BPDのGTL実証運転では、天然ガスを原料に、高 品質の液体燃料を製造する国産 GTL技術を実証規模で 確立することを目的とし、以下の技術確立と検討事項を 課題に挙げ、実証運転で達成すべき数値目標を設定した。 a実証規模でのGTL技術の確立 b商業規模で適用可能な運転操作技術の確立(オペレー ションノウハウ蓄積) c 技術的・経済的に利用可能な商業規模(1万5,000BPD/ 系列以上)へのスケールアップ手法の確立 d商業プロジェクトの検討 e特許調査・出願検討 (3)研究体制 日本独自の GTL技術である JAPAN-GTLプロセスを 開発するために、JOGMECと民間 6 社が共同で複数年 におよぶ研究開発の実施において、統括機関としての JOGMECの機能が発揮できる体制を構築することが必 要であった。約半年の間、粘り強く関係者による検討、 議論を重ねた結果、鉱工業技術研究組合法〈1961(昭和 36)年〉に基づく技術研究組合体制に行き着いた。そし て2006(平成18)年10月25日、民間6社がGTL組合を 設立し、JOGMECとの共同研究を行うことになった。 この体制構築に向け、検討、議論を重ねたプロセスが、 関係7者の気持ちを一つにし、同じ方向にベクトルを合 わせ、研究開発を開始することができたと考えている。 *2:日本GTL技術研究組合の概要 ・設 立 2006年10月25日 ・組 合 員 民間6社 ・設 置 法 鉱工業技術研究組合法(昭和36年)に GTL 実証研究と勇払パイロットテストの実施場所 図18 出所:JOGMEC 作成
基づいて設立 ・法 人 格 有する ・組 織 理事会の下に業務部・技術部・企画部・ 技術戦略室・実証センターを設置 ・スタッフ 約100名(センター約40名)、ピーク 時で約134名 ・研究予算 総額約366億円 ・研究期間 平成18年度~ 23年度(当初5カ年→1 年延長し6カ年) ・研究内容 実証プラントで GTL技術の実証、な らびに商業化へ向けたスケールアッ プの検討 (4)研究スケジュール 研究スケジュールは当初5カ年の計画であったが、実 証運転を 1 年延長し、図 19 のように 6 カ年の研究スケ ジュールとなった。 (5)GTL実証プラント建設 生産能力500BPD(約80kℓ/D)を有するGTL実証プ ラントを新潟市北区太郎代に建設することになった。プ ラ ン ト 構 成 は、 合 成 ガ ス 製 造 設 備、FT(Fischer Tropsch:フィッシャー・トロプシュ)合成設備、アッ プグレーディング設備(水素化分解設備)の三つの主要プ ロセスに加え、中央管理棟、用役設備、貯蔵設備等から 成る。 GTL実証プラントは、通常の化学プラントと変わら ない規模があり、その建設は複雑で作業量が大きく、複 数年にまたがるため、効率的なプロジェクトマネジメン トが求められた。 GTL実証プラントの設計・建設・運転において、国 の法律・規則、例えば石油コンビナート等災害防止法、 高圧ガス保安法、消防法、第一種圧力容器・ボイラー労 働安全衛生法、電気事業法、公害防止法等、さらに多く の新潟市条例等を遵じゅん守しゅしなければならない。そして、プ ラントの安全性および運転性を評価するため、設計初期 段階で、潜在する危険や運転上の問題を発見することを 目的に、1970 年代から用いられているプロセス危険解 析手法の一つであるHAZOP(Hazard and Operability) を実施した。この作業を通じてプロセスフローを逐次見 直し、改良を加え、設計品質の向上に取り組んだ。さら にEPCプロセス業務を予算内に収めるために、VE(Value Engineering)により、機能は低下させずにコストダウン を図ることにも取り組んだ。 品質を確保し工期を厳守しなければならない GTL実 証プラント建設は、一連の設計・調達・施工(EPC)*7 業務から成り、設計から施工に至る業務プロセスを同時 並行的に実施するコンカレント・エンジニアリング (Concurrent Engineering)手法を広範囲に適用すること がGTL実証研究の使命に合致した。 GTL組合における EPC業務プロセスが 1 年以上続く 場合、例えば、大型圧力容器や大型コンプレッサー等の 回転機等のロングリードの調達品の納期は発注後2年程 度(2007年当時)を要したため、会計年度を跨またぐ必要が あった。通常の単年度契約では完成品でない仕掛かり品 の費用化はできなかった。つまり、売買契約では見積も り→発注→納品→検収→請求→支払いの一連の流れを経 るため、仕掛かり品の検収が課題であった。こうしたこ とは調達に限ったことではなく、広く設計・施工にも当 てはまるため、本プロジェクトでは、プログレス(進しん捗ちょく) 管理を導入し、EPC業務プロセスごとに予定進捗度を あらかじめ定め、年度末には実績進捗度に応じた費用化 GTL 実証研究内容とスケジュール 図19 出所:JOGMEC 作成
を可能にした。一方、会計年度末に未達だった分、つま り実績進捗度が予定進捗度に達しなかったものへの減額 処理も併せてルール化した。これにより、設計から施工 までの業務プロセスの全体最適化を図るため、WBS (Work Breakdown Structure)によるプロジェクト管理
が可能になったことで、生産管理の QCD、すなわち品 質(Quality)、建設費(Cost)および工期(Delivery)を予 定通りに納めることができた。 設計が佳境にあった 2007 年 9 月 5 日、起工式に続き GTL実証プラントの建設工事に着工したが、建設予定 地の整地・土木作業では地面の下にさまざまなものが埋 まっており、最初から工期に影響が出る大変な作業に 起工式(2007 年 9 月) 写1 土木・基礎工事 開始(2007 年 10 月) 写2 鉄骨組み立て工事(2008 年 3 月) 写3 出所:JOGMEC 出所:JOGMEC 出所:JOGMEC FT リアクター荷揚げ(2008 年 3 月) 写4 FT リアクター建方工事(2008 年 4 月) 写5 GTL プラント建設工事(2008 年 9 月) 写6 出所:JOGMEC 出所:JOGMEC 出所:JOGMEC
なった。その後、鉄骨組み立て、機器据え付け、配管・ 電気計装工事、官庁検査、試運転調整と続く、複雑で作 業量の大きいプロジェクトに対し、GTL組合と請負業 者の懸命な取り組みの結果、予定どおり 2009 年 3 月ま での 19 カ月間で、しかも予算内で GTL実証プラントを 完成させた。全建設期間を通じ無事故無災害で安全作業 に取り組み、無事故無災害記録は103万人/時間に達した。 建設の記録写真を写1 ~写8に掲載する。 (6)プラント運転と研究成果 ①実証運転概要 GTL実証プラントの竣工式(写9)を2009年4月16日 に行った後、プラントに原料ガスを導入し、各装置を順 次稼働し順調な滑り出しとなり、調整運転を続けながら も生産量を順調に伸ばし、2009年6月10日には 装置能 力 100%の 500BPDを達成した。その後約 3 年間の実証 運転は以下のとおりとなった。 2009年:4 ~ 10月 2010年:4 ~ 6月、8 ~ 10月 2011年:5 ~ 6月、7 ~ 12月 2011年12月 実証試験終了 2012年1月 全装置シャットダウン 2012年2 ~ 7月 プラント解体工事 ②実証運転実績(研究成果)の概要 運転開始(2009年4月16日)以降、運転停止(2011年 11月)までの間に得られた実証研究の主要な結果を以下 に示す。 a累積運転時間(目標:6,000時間) 合成ガス製造:1 万 1,853 時間 /FT合成:1 万 337 時 間/アップグレーディング:1万865時間 b連続運転時間(目標:3,000時間) 合成ガス製造:3,291時間/FT合成:3,139時間/アッ プグレーディング:3,393時間 c性能目標: 合成ガス製造:炭化水素転換率(平衡到達率) FT合成:CO転化率(総合) 連鎖成長確率(α) アップグレーディング:灯軽油収率 d 商 業 プ ラ ン ト の 技 術 パ ッ ケ ー ジ(Process Design Package)作成 e商業プラントに適用可能な運転マニュアルの作成 f無事故無災害記録:建設期間 103万人/時間 運転・操業期間 21万人/時間 ③実証運転からノウハウへ 国産 GTL開発に向けた実証運転は、実証センターの 適切な、また熱心な対応により実現された。そして中核 技術の FTリアクターについては、温度、圧力、流量等 の計測情報に加え、度重なるサンプリング作業により GTL プラント工事完了(2009 年 3 月) 写7 出所:JOGMEC GTL プラント運転開始(2009 年 4 月) 写8 竣工式(2009 年 4 月) 写9 出所:JOGMEC 出所:JOGMEC
(1)概要 2004年以降、北京オリンピック(2008年)頃まで、原 油、ガス、鋼材等の価格が急騰したことは記憶に新しい。 図20はBP統計(2012)を基に年度ごとの代表国のガス 価格と原油価格(参考、MMbtuあたりに換算)をプロッ トしたものであるが、2004 年以降急激に原油価格の上 昇が起こり、ガス価格も連動し、2008 年のピーク後、 2009年には一度下がったが、2010年以降再び上昇に転 じている様子が分かる。 ここで興味深いのは、北米(アメリカとカナダ)のガス 価格は、2009 年以降もほぼ安定し低価格で推移してい ることである。これは、シェールガスの急増により、北 米のガス生産量が増加したためであると考えられる。原 油価格とガス価格の価格差が広がった北米では、ガスか ら石油製品を製造する GTL技術にとって良好なプロ ジェクト環境が整ってきたと言える。 図 21 は、日本機械輸出組合が毎年発行している日本 のプラント建設のコスト指数であるPCI(プラントコス
4.
商業化検討
FTリアクター内で起こっている反応、現象を推し測る 作業が連日続いたが、実証センター、組合技術担当が一 丸となって問題に取り組んだ結果、その解決に至り、順 調な運転を行うことができた。 こうした事象への取り組みはパンチリストとして蓄積 され、それら一つ一つがノウハウとなった。 (7)走行試験 JOGMECは GTL組合と共同で、東京都環境局および 交通局の協力の下、2010 年 9 月 13 日より、約 3 カ月に わたり、東京都内の路線バス2両を使用して、GTL軽油 (JAPAN-GTL軽油100%)を用いた実証走行を行い、通 常の軽油と同様に使用できることを確認した。 実証走行に使用された GTL軽油は、新潟市に建設、 運転中の実証プラントにおいて国産天然ガスを原料に製 造された「JAPAN-GTL軽油」である。 ①実証走行の目的 次世代のクリーンで環境にやさしい燃料として期待さ れている GTL 燃料について、東京都内の路線バスに よる GTL 軽油を使用したデモンストレーション走行 を行うこと。 ②実証走行概要 ・実施期間:2010年9月13日から約3カ月 ・ 実施場所:東京都交通局 南千住自動車営業所(荒川 区南千住2-33-1) ・使用バス:ハイブリッド車2両 ・燃 料:JAPAN-GTL軽油100%(GTL組合より供給) ③実証走行実施メンバー ・JOGMEC、民間6社、東京都環境局および交通局ガス・原油の年度価格、Note: cif = cost+insurance+freight (average prices)
図20 出所:BP 統計(2012) 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 US$/MMbtu 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015年 Japan LNG(cif)
Average German Import Price(cif) UK NBP
US Henry Hub Canada OECD(cif)(原油)
プラント建設コスト指数の変化 (Cost Index=100@2000年) 図21 国別ガス埋蔵量比較(2005 年、2011 年)(縦軸:TCF =兆立方フィート) 図22 出所:PCI/LF 報告書、日本機械輸出組合(2011 年版)、JOGMEC 出所:BP 統計(2012) 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 EM Palm Canceled 07/02 Sonatrach Canceled 07/04
Shell Pearl FID 06/07 Sasol Nigeria EPC 05/04 Sasol Oryx EPC 03/01
Co st In de x Year 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 2005年 2011年 国別ガス埋蔵量比較 (20TCF 近傍拡大)(2005 年、 2011 年)(縦軸:TCF) 図23 出所:BP 統計(2012) 40 35 30 25 20 15 10 5 0 2005年 2011年
トインデックス)を1999 ~ 2011年まで年度ごとにプロッ トしたものである。縦軸は相対値であり、2000 年を 100としている。この図も図20と同じ傾向である。そ こ に、GTLプ ロ ジ ェ ク ト 事 業 化 の 意 思 決 定〈Final Investment Decision (FID)〉とキャンセルされた時期を 重ね合わせてみると、PCIがピークだった 2007 年より 前に FIDされたプロジェクトは成案化し、FIDが 2007 年のものはキャンセルされている。GTL事業では、一 般的にプラント建設に対する初期投資額が大きいため、 PCIはGTL事業のFIDを行う上で重要な指標と言える。 (2)商業化対象国 勇払パイロットテスト終了後の 2005 年当初、商業化 を検討するため、GTL適用先の有望な地域として、ガ ス埋蔵量が20TCF以上あり、かつR/P(可採年数)が30 年以上ある国を抽出した。BP統計(2012)を基に2005 年当初と 2011 年のガス埋蔵量及び R/Pデータを重ね合 わせたものを図 22 に示す。この図から、2005 年のガ ス埋蔵量は、ロシア、イラン、カタールの3カ国のガス 埋蔵量が突出していたことが分かる。2011 年では、 2009 年以降大規模ガス田が発見されトルクメニスタン (世界4位)とシェールガス革命が起こった米国(世界5位) は、ガス埋蔵量を急増させた。また最近ではアフリカ・ モザンビークで大規模ガス田が相次いで発見されてお り、BP統計にはまだ反映されていないが、今後注目し たい国である。 図 22 の 20TCF近 傍 を 拡 大 し た 図 23 に よ れ ば、 20TCFを超える国はある程度絞られてくることが読み 取れる。 また、R/Pを図示したものが図24である。R/Pが30 年を超える国数は、2005 年より減っていることが見て 取れるが、なかには増加している国(豪州、ベトナム、 インドネシア、トルクメニスタン)がある。 ガス埋蔵量が20TCF以上あり、かつR/Pが30年以上 ある国を 2011 年データから抽出すると、ロシア、中東 諸国(カタール、イラン、イラク、クウェート、オマーン、 サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イエメン)、アフ リカ諸国(アルジェリア、エジプト、リビア、ナイジェ リア)、東南アジア(インドネシア、ベトナム、マレーシ ア)、オセアニア(豪州、パプアニューギニア)、中央ア ジア(トルクメニスタン、ウクライナ、アゼルバイジャ ン)、南米(ベネズエラ)の22カ国となる。これらの国々 に加え、シェールガス開発が進む北米や最近ガス埋蔵量 を増やしたモザンビークは、GTLポテンシャルが高い と思われる。 2001年より、JOGMECがJAPAN-GTL適用先候補と して良好な関係を構築してきた国々の多くは、このなか に含まれている。 (3)スタディの実施 ①インドネシア国営石油・Pertamina社(以下Pertamina)*8 との共同スタディ aスタディ概要 2001年9月、JAPAN-GTLに関心を持ったPertamina との間でMemorandum of Understanding(MOU)を締 結し、勇払パイロットプラントテストを推進する傍ら、 国別可採年数(R/P)比較(2005 年、2011 年)(縦軸:年) 図24 出所:BP 統計(2012) 90 60 30 0 2005年 2011年
同年 12 月より Pertamina所有の炭酸ガス含有ガス田で の GTL適用に関する共同スタディ(以下、Pertamina FS:プロジェクト予備調査)を開始し、GTLを適用した 場合の経済性評価を実施した。 経済性評価では、ガス田データの評価・スクリーニン グ・開発計画・プラント概念設計・プラント建設費積算・ マーケティング調査・税務法律調査を行い、経済性評価 としてIRR(Internal Rate of Return:内部利益率)予測 を行った。Pertamina FSの評価フローを図25に示す。 bガス田情報 Pertaminaから北スマトラ、中央スマトラおよび東 ジャワの3カ所のガス田候補の提案があった。北スマト ラはガス埋蔵量が少なかったため早々に脱落し、東ジャ ワのガス田はインドネシア第2の都市ス ラバヤへのガス供給候補に浮上したため、 GTLによるガス田の開発オプションは低 下した。中央スマトラのガス田は30%程 度の炭酸ガスを含むため、JAPAN-GTL には打って付けだが、ガス田規模が小さ く、GTL換算で5,000BPD程度にとどまっ た。一方、炭酸ガス含有ガス田は、良質 なガス田とは事情が異なり、可採埋蔵量 のアップサイドポテンシャルを未確認の まま評価を終えているものが結構多いと の話を聞かされた。2004年後半、ガス価 が徐々に上昇し、GTLの経済性に影響が 出始めた頃、中央スマトラのガス田は、 インドネシアでも辺境な地であったが、 スマトラ島縦断ガスパイプライン計画では、このガス田 近辺がその通過ルートにあたったため、パイプラインガ スとしてのガス販売オプションが新たなシナリオとして 付け加わった。 c経済性評価 Pertamina FSでは、炭酸ガス含有の実ガス田(GTL換 算:5,000BPD) お よ び 仮 想 ガ ス 田(GTL換 算:1 万 5,000BPD)の異なる規模のガス田における経済性評価を 行った結果、双方とも資本コストを上回って商業レベル の経済性を示した。規模の大きい 1 万 5,000BPDの経済 性はより大きかったため、プラント規模のスケールアッ プは経済性向上には欠かせないことが分かった。また、 センシティビティ(感度)分析から、本スタディではガ ス価格に対する感度が高いことが分かったためIRRを改 善する一番の方法は、ガス価格を下げることであった。 また、FS当時は GTL製品が目新しかったことから、 ある国のマーケット調査では GTLナフサだけが選択さ れたことがあった。GTL製品は連産比率が一定* 9であ るため、GTLナフサ以外の GTL製品についても、連産 比率に見合った需要先の創出が必要であった。 dビジネスモデル 三つのビジネスモデル(上流、下流、上下流統合)の一 例を図26に示した。上流事業(Upstream)は高いガス 価が利益を生む(図26青線)が、下流事業(Downstream) に位置づけられる GTLでは、高いガス価が利益を阻む (図26赤線)。一方、上・下流統合ビジネスモデルの場 合、IRRのガス価弾力性を小さくできる(図26黄線)上、 上・下流の事業統合により事業規模を大きくしたため、 Pertamina FS の評価フロー 図25 ビジネスモデル(上流・下流・上下流統合評価) ごとの天然ガス価に対する IRR の変化 図26 出所:JOGMEC 出所:JOGMEC 0 0 Upstream Downstream Combined 内部利益率 ︵ I RR ︶↑ →天然ガス価 天然ガス価と内部利益率との相対関係
単独の場合に比べ同じIRRでも生み出されるキャッシュ フローは大きくなる特徴がある。しかし、共同スタディ 中に、インドネシアの新石油ガス法が成立し、それによ り同一企業による上流・下流両分野への参入が許されな くなったため、上・下流統合モデルは実質困難なものと なってしまった。そのため、ガス購入オプション等の新 たなシナリオ、ビジネスモデルの創出が必要であった。 商業化検討で述べたように、Pertamina FSを終えた 頃、世界の経済状況が大きく変化した。前述のように 2007 年をピークに原油価格が高騰し、ガス価格、プラ ント建設費が上昇したため、本スタディで実施した GTLプラント建設費(2003年)のメンテナンス作業が必 要になったため、2008 年時点における建設費を積算す ることになった。その際、Pertamina FSで経済性評価 の一環として実施したガス田開発費や GTLプラント建 設費の積算には多くのリソースを要したが、その結果は、 その後のスタディのベースとなり現在でも活用されてい る。 eその後のインドネシア Pertamina FSを終えてから数年たった2006年末頃は、 原油価格が一段と高く、原油価格とガス価格が開いたた め、インドネシアで再び GTLの関心が高まった。しか しその翌年から同国内のガス需要が急増し、特に首都 ジャカルタやスラバヤを抱えるジャワ島でガスリソース が不足し始めたため LNGの輸出量を削減し、その分を 国内市場に優先的に配分するガス政策が始まった。これ は日本向け LNGも削減される事態に発展した。そのガ ス政策で、輸出されなかった LNGを国内使用に回すた め、ジャカルタ沖合に LNGの FSRU(Floating Storage
and Regasification Unit)*10(年間300万トン)を配置し、 気化ガスをパイプラインで陸上施設(主に発電所)へ供給 するもので、2012 年 4 月より運用が始まった。こうし た施設をほかにも数カ所造る予定であると聞いている。 GTLについては静観しているが、今後のガス田開発オ プションとして期待されている。 ②ベトナム国営石油公社との共同スタディ aスタディ概要 2007 年 11 月、JOGMECと ベ ト ナ ム 国 営 石 油 公 社 Petrovietnamは包括的な技術協力に関するMOUを締結 後、GTLに関する簡易 FSについての契約を交わした。 ベトナムのガス田はほぼ海洋ガス田であるが、当初は具 体的なガス田の提示がないまま、契約先がベトナム国営 石 油 公 社 の 研 究 部 門 で あ る ベ ト ナ ム 石 油 研 究 所 (Vietnam Petroleum Institute) に移り、2011年になっ てようやく複数の具体的なガス田が示された。(写10) bガス田情報 近年ベトナムのエネルギー需要は急増し、2010 年か ら2020年までの10年間に電力需要は約4倍(今後下方 修正との報道もある)になると予想されている。ベトナ ム南部には多くのガス田があり、パイプラインで陸上と つながっているが、離岸距離が大きく、水深も深いため、 ガス価格は決して安くはない。一方、ベトナム北部では 既発見未開発ガス田が幾つかあるが、電力マスタープラ ンでは既にインフラ整備が整う前から電力向けとしてそ の期待が大きい。国内の多くのガス田は電力のみならず、 肥料、一般産業に優先的に向けられるため、ホーチミン、 ハノイのような大都市を抱える南部や北部のガス田の GTLによる開発については、ガスポテンシャルが小さ いと考えられる。 一方、2011 年末、ベトナム中部地方の沖合で大型ガ ス田の発見があった。まだ評価を行っている最中である が、ガス田が 30 %程度の CO2を含むこと、また陸上に は大きな産業がないことから、JAPAN-GTLの商業化の 期待は膨らむ。しかし、電力優先の方針は変わっていな いため、南部、北部のようにならぬよう、発電事業とは 競合せず、双方で経済性を高めるための検討をベトナム 関係者と始めている。 c経済性評価 陸上の GTLプラント向けの原料ガスを、海洋ガス田 から陸上までガスパイプライン輸送して GTL製品の製 造を考える。海洋ガス田の陸上からの離岸距離と水深の VPI(ベトナム石油研究所)とのスタディ調印式 写10 出所:JOGMEC
違いにより、海洋ガス田開発費、海洋施設費と海底パイ プライン設備費も異なる。離岸距離(50、100、200km の3種類)と水深(50、100、150mの3種類)のマトリッ クスごとにそれらを試算し、陸上でのガス価を設定する。 それぞれのガス価で GTLプラントの経済性、IRR=10% 以上を確保することが可能かどうかの試算を行ったもの JAPAN-GTL プロセスのベトナム沖ガス田への適用性(GTL プラント IRR=10%) 図27 出所:JOGMEC JAPAN-GTL コンソーシアムのロゴと構成会社 図28 出所:JOGMEC と民間 6 社 150 150 150 100 100 100 50 50 50 0 50 100 200 0 50 100 200 0 50 100 200 150 150 150 100 100 100 50 50 50 0 50 100 200 0 50 100 200 0 50 100 200 150 150 150 100 100 100 50 50 50 0 50 100 200 0 50 100 200 0 50 100 200 Distance from shore (km)
Distance from shore (km) Distance from shore (km)
Distance from shore (km)
Distance from shore (km)
7,500BPD
15,000BPD
30,000BPD
Wa te r D ep th (m ) Wa te r D ep th (m ) Wa te r D ep th (m )Distance from shore (km)
Wa te r D ep th (m ) Wa te r D ep th (m ) Wa te r D ep th (m )
Distance from shore (km) Distance from shore (km)
Distance from shore (km)
C O 2=0 % C O 2=2 0% C O 2=4 0% Wa te r D ep th (m ) Wa te r D ep th (m ) Wa te r D ep th (m )
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JOGMECと、国際石油開発帝石㈱、JX日鉱日石エネ ルギー㈱、石油資源開発㈱、コスモ石油㈱、新日鉄住金 エンジニアリング㈱、千代田化工建設㈱の民間6社は共 同で、日本独自の GTL技術である JAPAN-GTLプロセ スの開発を行ってきた。1998年からのラボ研究に始まり、 2001 年 か ら の 勇 払 GTLパ イ ロ ッ ト プ ラ ン ト テ ス ト (7BPD)、そして、2006 年 10 月から 2012 年 8 月までの 約6カ年にわたる、JOGMECと民間6社が設立した日本 GTLは、JAPAN-GTL実証研究として、新潟市北区太郎 代に 500BPDの GTL実証プラントを建設し、実証試験 を行うとともに、実証プラントの研究を補うバックアッ プ研究、商業化検討等を行い、商業規模での GTLプラ ントに適用可能なJAPAN-GTLプロセスを確立した。 この成果を踏まえ、JOGMEC並びに民間 6 社の関係 7 者は、JAPAN-GTLの事業化に向けた活動を行っている。 そして、2012 年 6 月、石油技術協会第 77 回業績賞受賞 に次ぎ、同年11月には、平成24年度日本エネルギー学 会学会賞(技術部門)を受賞した。 が、図27である。青色部は経済性が成立し、赤色部は 成立しなかったことを表している。これによると、1 万 5,000BPD相 当 規 模 の GTL事 業 な ら、 離 岸 距 離 が 100km以内の海洋ガス田なら、IRR=10%以上の経済性 が得られる見通しだ。こうした経済原理から導かれたガ ス価格が政策的にもベトナムにおいて追認されることを 期待したい。なお、ガスがCO2含みの場合、鋼材グレー ドを上げたため、海洋ガス田開発費、海洋施設費および 海底パイプライン設備費が増加した。 ③その他のスタディ ガス埋蔵量の観点ではロシアが筆頭で、JOGMECと 共 同 探 鉱 調 査 事 業 を 実 施 中 の Irkutsk Oil Company (INK)のほか数社のロシア企業とスタディを実施した。 ロシア固有の許認可制度、寒冷地対策からくる設備費増 加、内陸部への輸送方法、さらに厳冬期の厳しい気象環 境による屋外作業の制約により、東南アジアでの建設に 比べると、EPC業務プロセスが複雑化し、全体工程の 長期化が避けられないことが分かった。こうしたことか ら、GTLの事業化には、相手国の状況をよく理解した 上で、適切な対応が必要になってくる。 このほかにも数カ国とのスタディ実績があり、現在も 進行中のスタディがあるが、本稿では割愛する。 (4)プロモーション活動 GTL組合は、2012年8月31日をもって解散した。こ れを受けて、民間6社と関連する約定、知財戦略、技術 継承、今後事業化のためのプロモーション活動に向けた 体制として、2012 年 10 月 1 日に JOGMEC総務部戦略 企画室内に「GTL事業化推進チーム」を設置した。 また、同日付で、JAPAN-GTLプロセスに係る情報の 提供、共同プロモーションの推進等を目的として、 「JAPAN-GTL コンソーシアム」のウェブサイト(http:// japan-gtl.com)を開設した。図 28 はそのロゴマークと 参加企業である。 私たちは、エネルギーの安定供給、そして地球環境に 貢献できる独自の GTL技術の事業化に向け、引き続き 全力で取り組む所存ですので、関係各位の一層のご指導、 ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。 また、JAPAN-GTLプロセス開発を、ラボの時代から 支援してくださった経済産業省資源エネルギー庁資源・ 燃料部石油天然ガス課殿に感謝の意を表すとともに、事 業化に向けて、引き続き、ご指導、ご支援のほどよろし くお願いいたします。<注・解説>
* 1:BPD= barrel per dayバレル/日、1bbl(barrel)=159liter * 2:Universal Newswires,7/23,2012 * 3:US$/bbl=USドル/バレル * 4:現在の社名で、石油資源開発㈱、千代田化工建設㈱、コスモ石油㈱、新日鉄住金エンジニアリング㈱と国際石油 開発帝石㈱の5社 * 5:現在の社名で、国際石油開発帝石㈱、石油資源開発㈱、JX日鉱日石エネルギー㈱、コスモ石油㈱、新日鉄住金 エンジニアリング㈱および千代田化工建設㈱の6社 * 6:鉱工業技術研究組合法は、「我が国における産業活動の革新等を図るための産業活力再生特別措置法等の一部を 改正する法律」により改正(第171回通常国会)され「技術研究組合法」となった。 * 7:Engineering・Procurement・Construction設計、調達、建設 * 8:2003(平成15)年9月17日、インドネシア国営石油・Pertamina社は PT PERTAMINA(PERSERO)へ移行(民 営化)した。 * 9:GTL製品の連産比率:例えば Pertamina FSでは 5,000BPSDの GTL主要 3 製品の連産比率は 3:4:3。内訳は① Naphtha(1,500BPSD)②Kerosene(2,000BPSD)③Gas Oil(1,500BPSD)であった。現在では、灯軽油分の比率を 高めることが可能。 *10:浮体式LNG受入基地 〈プロファイル〉 末廣 能史(すえひろ よしふみ) 1995年、慶應義塾大学理工学部機械工学科卒業。1997年、同大学大学院理工学研究科機械工学専攻修了。2009年、北九州市立大 学大学院国際環境工学研究科環境工学専攻 (環境化学プロセスコース)後期博士課程修了。博士(工学) 1997年、石油公団〈現・独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)〉入団。石油開発技術センター、国内石油 開発現場出向、天然ガス有効利用研究サブリーダー兼石油工学研究課長代理。2006年11月 、JOGMECと兼務し、日本GTL技術研 究組合派遣。日本GTL技術研究組合技術戦略室技術戦略グループマネジャー。2012年4月、日本GTL技術研究組合兼務離任。総務 部戦略企画室長就任。 GTL技術開発ではラボ(0.01BPD)からデモンストレーションプラント(500BPD)に従事。現在、資源国企業等ニーズを日本の 技術で解決策を提示する業務等に従事しながら、国産GTL商業化事業を引き続き推進中。 趣味はスキューバダイビング、読書。 R&D実証系、出向、派遣の人生だったので、本部勤務は初めてで戸惑っています。 片倉 和人(かたくらかずひと) 1985年、上智大学大学院理工学研究科機械工学専攻修了。 新日本製鐵㈱入社。地熱、ごみ焼却、DHCエネルギー施設EPC後、1994年からインドネシア(ジャカルタ)、1999年からシンガポー ルに駐在し、石油・ガス海洋構造物EPCおよび海洋工事に従事。2001年から石油公団(当時)に派遣。その後JOGMECに出向し、 一貫して国産GTL技術開発と国営石油会社等との共同スタディを手掛け、2012年10月からGTL事業化推進チームリーダー。国産 GTL 1号機を目指す。 趣味は読書、果樹菜園、海釣りと魚調理。時々山歩きや芝刈りにも出かける。また、毎週日曜朝は、地元のソフトボール仲間と 童心に返り朝練で汗を流し、心身ともにリフレッシュ(年間20試合程度)。 最近の悩みは、筋肉痛による神経痛の状態にあること。