2013年度第4回みずほ総研コンファレンス
FTAネットワークの拡大と企業の対応
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明日のメガFTAのために今日の2国間EPAに取組む‐
2013年12月10日
麻 野 良 二
(大阪商工会議所)(1)日本のEPAの現状
11.EPAの輸出創出効果と課題
分 類 EPA締約国・地域 (発効月) 発効済み (13協定) 2002年 シンガポール(11月) 2005年 メキシコ(4月) 2006年 マレーシア(7月) 2007年 チリ(9月) タイ(11月) 2008年 インドネシア(7月) ブルネイ(7月) ASEAN(12月) フィリピン(12月) 2009年 スイス(9月) ベトナム(11月) 2011年 インド(8月) 2012年 ペルー(3月) 交渉中 (10協定) 韓国(中断)、豪州、湾岸協力理事会(GCC)、モンゴル、カナダ コロンビア、欧州連合(EU)、日中韓、RCEP、TPP 共同研究 トルコ(完了)2
輸出相手国上位10カ国の推移
(出所)税関ホームページ EPA締約国への輸出シェアは対世界比で拡大の方向 (注)輸入においては、EPAの明確な効果は上位10カ国の動向においては確認し難い(2)EPAの効果:輸出創出効果
日本企業による特定原産地証明書の利用状況
3 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 特定原産地証明書発給状況 メキシコ マレーシア チリ タイ インドネシア ブルネイ フィリピン スイス ベトナム インド ペルー ASEAN 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 合計 メキシコ 4,859 5,917 5,762 5,735 5,365 6,035 5,241 5,058 43,972 マレーシア 1,018 5,335 6,194 6,934 8,349 9,228 11,289 48,347 チリ 1,503 4,460 3,613 4,788 4,356 4,695 23,415 タイ 6,678 21,129 28,255 44,132 47,175 58,957 206,326 インドネシア 6,579 16,013 23,672 30,096 33,911 110,271 ブルネイ 0 3 13 30 25 71 フィリピン 225 2,477 4,255 4,457 5,575 16,989 スイス 1,277 3,065 3,507 3,557 11,406 ベトナム 500 2,294 2,749 4,572 10,115 インド 7,696 19,822 27,518 ペルー 5 468 473 ASEAN 239 2,832 4,490 4,653 5,288 17,502 合計 4,859 6,935 19,278 44,561 67,269 101,093 119,193 153,217 516,4054
特定原産地証明書発給件数に占める各EPAのシェア
いすれのEPAも、発効後の時間経過とともに発給件数は増加するが、新たな協定の発効等 もあって、そのシェアは低下する傾向にある。
品目 件数 比率 食料、食品、アルコール 8,177 0.9% 化学品 68,756 7.6% プラスチック 46,672 5.2% ゴム(タイヤ等) 70,681 7.8% 紙・パルプ 20,094 2.2% 繊維(生地) 27,664 3.1% 石、セメント、陶磁、ガラス等 19,616 2.2% 鉄鋼 147,122 16.3% 鉄鋼製品 33,240 3.7% 銅製品 6,898 0.8% アルミニウム製品 12,418 1.4% 卑金属製品 41,775 4.6% 機械 118,888 13.1% 電気機器 73,292 8.1% 自動車・同部品 102,939 11.4% 精密機器 41,058 4.5% 家具類 9,789 1.1% 雑品(文房具等) 10,960 1.2% その他 52,261 5.8% 合計 904,123 100.0% 5
品目別の原産地証明書発給状況
0.0% 2.0% 4.0% 6.0% 8.0% 10.0% 12.0% 14.0% 16.0% 18.0% 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 食料、食品、 ア … 化学品 プ ラ ス チ ック ゴム( タ イヤ 等) 紙・ パル プ 繊維(生地) 石、セ メン ト 、陶 … 鉄鋼 鉄鋼製品 銅製品 ア ルミニ ウ ム 製品 卑金属製品 機械 電気機器 自動車・ 同部品 精密機器 家具類 雑品( 文房具等) その他 品目別の原産地証明書発給件数 件数 比率 食料、食品、アル コール 化学品 プラスチック ゴム(タイヤ等) 紙・パルプ 繊維(生地) 石、セメント、陶 磁、ガラス等 鉄鋼 鉄鋼製品 銅製品 アルミニウム製品 卑金属製品 機械 電気機器 自動車・同部品 品目別の原産地証明書発給件数 食料、食品、アルコール 化学品 プラスチック ゴム(タイヤ等) 紙・パルプ 繊維(生地) 石、セメント、陶磁、ガラス等 鉄鋼 鉄鋼製品 (注1)シンガポールEPAを除く全協定について集計 集計期間:2005年4月1日~2013年11月8日 集計ベース:関税分類の97類型に基づく (注2)原産地証明書により、発給単位で複数の異なる 関税番号の産品が記載されることがあるため、産 品単位での集計では実際の発給件数よりも数値 は大きくなる。(3)FTA・EPAにおける日本の問題点
①
国際取引規模の大きな国・地域とのFTAが締結されていない
▽既存の13EPAによる貿易のFTA比率は18.9%に留まる (注)貿易のFTA比率 =FTA・EPA締約国との貿易額合計÷A国の貿易額総額×100%
②
自由化率(市場開放度)が低い
▽日本のEPAは、貿易額では90%程度の市場開放を実現しているが、 品目数では、農水産品を中心に対象外が多く、品目数ベースでの自由度は 85%程度に留まり、米、EU、韓国等の95%超に比べ市場閉鎖的③
中小企業によるEPA利用率が伸び悩んでいる
▽EPA締約国で関税の減免を受けるためのEPA特定原産地証明書の発給 件数は、EPA数の増加とともに拡大し、2012年度で約15万件に達した ▽一方、原産地証明書を利用するため日本商工会議所に登録の事業所数は 全国で約8,200社(2013年9月末現在)。うち中小企業(資本金1億円以下)は 約5,600社で全体の登録事業所全体の68%を占めるものの、全国の中小 企業数から見れば依然低水準に留まっている 6(4)EPA利用や原産地証明書の取得を阻害する主たる要因
①EPA/FTAの認知度の問題 ・中小企業を中心に、EPA/FTAを知らない事業者は依然として数多い ②締約国の制限 ・中国、韓国、台湾、米国等とのFTA未締結 ③非関税障壁問題 ・許認可制度と関税減免効果の不整合:医薬品、化粧品、食料品等 ④輸出にかかる積極活用の躊躇 ・関税減免のメリットは輸入者が享受し、輸出者は原産地証明書取得の 手間ばかり、との意識先行 ⑤受身の姿勢 ・輸入者から協力に求められて、しぶしぶEPAに取り組むケースが多い ⑥行政サービス向上の要請 ・指定発給機関による原産地証明書発給サービスの質的向上 (例)原産地証明書受取方式の改善など(経済産業省調査(2013年1月)より) 72.日本企業から見たFTA/EPA
①サプライチェーンの高度化(BtoB)
アジアを中心に生産ランを移転、 FTAネットワークを利用して、原材料等を 日本を含めた各地から特恵関税で生産国に集約 <事例> ・5年で海外への原材料供給力を倍増(年率15%以上の拡大) ・海外市場に近い国・地域での生産拡大により、完成品の物流コスト 削減 ⇒原材料の全部/一部は日本から供給 人口の高齢化により国内での労働力確保が困難 ⇒生産工程の一部を海外に依存しても、物流費は国内人件費に十分に見合う②成長する消費市場の取込み(BtoC)
国内市場の縮減を懸念して、アジアを中心に新興国での市場シェア確保を 目指す企業は、大手に留まらない(中小企業でも危機感が強い) <事例>・タイ向けの日本製果実、食料、飲料等の供給 ・インドネシアでの化粧品の小分け販売 8(1)日本企業によるEPA利用の類型と効果
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③顧客満足の推進
EPA/FTAが世界の潮流となる中で(世界で400近いFTA)、FTAを利用しな ければ取引が成立しなくなる危惧が強まっている <事例> ・日本からの輸出でEPAを利用しなければ、輸入関税を輸出者が負担する ように求める取引契約が急増④EPAを利用した効果
輸入関税分(CIFベース)の経費が削減でき、日本からの輸出品の価格 競争力が強化された 取組みが難しいと聞いていた原産地規則に、対応のノウハウを蓄積 全ての取扱品目をEPA特恵関税で輸出 複数国への輸出に、各国ごとのEPAを活用 日本以外のアジアの主要FTAも利用可能に 成長著しいアジア市場で、サプライチェーンの構築の可能性が高まった TPPなどメガFTAも使いこなせる自信がFTAの進展による日本企業の
関心の拡大
■日本企業が関心を抱く第三国FTA
① ASEAN+1のFTA
【事例】中国の関連会社で製造した産品の余剰分を、ASEAN諸国に特恵関税 で輸出し、当該産品の価格競争力を高める(この取引を日本が仲介) 【事例】インドを含めたサプライチェーン構築のビジネスモデル展開② ASEANの日系企業は、域内でのサプライチェーン高度化の
ためATIGA(ASEAN物品貿易協定)を活用
(注)ASEAN日本人商工会議所連合会は、ATIGAの運用弾力化を含めた 通商政策に係る意見交換会をASEAN事務局と毎年実施している③ 米韓FTA、EU韓FTAを対米、対EU輸出に活用
・米国、EU市場向けに、輸出拠点を韓国にシフトした事例④ 中国‐台湾FTA(ECFA)への関心
・台湾を中国への足掛かりとする事例も 10■関西企業はこう見る
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関西EPA月間
(2013年6月)参加者の見方-
(A)EPA/FTA利用の関心分野(複数回答) (B)その理由(複数回答) (C)既存EPAの関心(上位3国:複数回答) ①タイ(59.6%)、②インドネシア(48.8%)、③ベトナム(32.3%) (D)交渉中FTA/EPAの関心(複数回答) ①日中韓(35.9%)、②TPP(34.1%)、③日‐EU(15.9%)、④RCEP(14.4%) (E)FTA/EPA の課題(上位3位:複数回答) ①原産地規則への対応が難しい(26.9%) ②TPPなど話題のFTAについて正確で分かりやすい情報入手が困難(23.1%) ③日本以外のFTAの情報をどこで入手し誰に相談すべきか分からない(19.2%) 11 日本からの輸出 78.4% 日本への輸入 26.0% 日本仲介の3国間貿易 21.9% 価格競争力の強化 46.1% 輸入者からの要請 29.9% アジア需要の取込み 26.9% サプライチェーン高度化 17.1%12 原産地証明書申請のた めの準備期間 (原産性立証資料整備等) 原産地証明書の 申請と受給 EPA締約国税関への 提出と関税の減免 【円滑な作業のための要件】 ・原産地規則の親和性 ・HSコードの基準年が実務と 合致 ・原産性立証に係るコンプラ イアンス遵守、客観性確保 の体制整備 ・社内外ネットワークの構築 ■社外専門家のサポート ■政府、自治体、金融機関 等の支援体制 【円滑な申請、受給の要件】 ・利便性の高い申請システ ム ・指定発給機関審査の専門 性、効率性 ・原産地証明書発給の行政 サービスの向上 ■社外専門家のサポート ■政府、自治体、金融機関 等の支援体制 【締約国での円滑な通関 のための要件】 ・予見性:原産地証明書 の提出により、関税減免 の恩恵享受の期待実現 ・絶対性:原産地証明書 記載のHSコードに疑問を 呈されることはあり得ない 上記の一連の流れが円滑、効率的に進行したときに、企業はEPAの使い勝手に満足 企業にとってのEPAの利便性
13 原 産 地 規 則 の 一 般 的 構 成 A.完全生産品<WO> B.原産材料のみから生産される産品 C.実質的変更基準を満たす産品 (原材料に第三国産の産品を含む場合) -関税番号変更基準 <CTC> -付加価値基準 <VA> -加工工程基準 D.積送基準 E.例外規定 (「累積」など:モノの累積、生産行為の累積) 1)原産地規則への対応の不慣れ ①「原産地規則」:初めて耳にする専門用語 ・従来は「輸出品を日本で調達したので日本産品」との曖昧な意識が一般 ②法律文言と日常語の定義が異なる ・「完全生産品」は、原則として工業製品には適用できない ・品目別規則の理解が困難 ・関税分類変更基準(CTC)、付加価値基準(QVC、VA)、 加工工程基準(SR)などの概念に対する理解不足 ③支援体制の欠如(中小企業を主たる対象として) ・中小企業に身近な各種専門家にも不慣れな概念 緑枠:関税分類 変更基準(CTC) 赤枠:付加価値 基準(VA)
(2)原産地規則への対応と原産地証明書取得の問題点
2)HSコードにかかる問題点
(A)EPAにおけるHSコード基準年と通関実務との世代間ギャップ
①EPAが規定するHSコード基準年と通関実務 ②HSコード世代間ギャップが生じることによる問題点 ・複数世代のHSコードを管理し、都度、突合を要する非効率 ・品目別規則確認のために古い世代のHSコードの確認を要する ・HSコードは原則5年ごとに見直され、時間の経過とともに世代間ギャップが 拡大し、問題が深刻化する 14 基準年 対象EPA HS2002 メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、フィリピン、ASEAN HS2007 スイス、ベトナム、インド、ペルー HS2012 該当なし(現行、通関実務で利用)(B)輸入国税関による関税分類等の判断への不信感
①輸出産品の関税番号は輸入国税関の判断が優先する(原則) 【事例】・化学品に係る関税分類(原料構成に基づく⇔用途に応じて判断) ・EPA発効以前からの通関実務の経緯が影響(同一産品を複数締約国 に輸出する場合、締約国ごとにHSコードが異なるケースが見受けられる) 【影響】・原産地証明書に記載のHSコードが輸入国税関で否認されると、 当該証明書は失効し、関税減免の恩恵を享受できない ・かかる問題を回避するための「事前教示制度」は、多くのEPA締約国で 実施されていない(運用なし) ②輸入国税関における我が国EPAに係る不慣れや些細な疑義の鬱積など ・ビジネス環境小委員会で取り上げるほどではない些細な、しかし重要な疑問 を確認する手段がなく、疑義が鬱積することにより、通関実務に不透明な 支障が生じる危惧 (インドネシア、フィリピン等) ・政府会計年度更新時における税関官吏の人事異動に伴う通関実務の 不慣れ(タイ等) (注)ビジネス環境小委員会:経済連携協定で規定の諸問題解決のための協議の場 15(1)企業にとってのメガFTA時代 メガFTAが成立することにより、既存の2国間EPAが吸収されるわけではなく 両者は重層的に併存する⇒利用できるFTAの選択肢が拡大する 殆ど全ての日本企業が直接、間接にメガFTAの影響を受ける時代