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子どもの貧困と保育所

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Academic year: 2021

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日本福祉大学社会福祉論集 追悼号 2012 年 6 月

はじめに

日本全体で, 年少人口すなわち, 0∼14 歳層が後述のように減少し始めている. 愛知県におい ても例外ではない. 年少人口は将来の労働力人口であるから, 資源の乏しい日本の富を生産する 最も貴重な主体が減少するということである. 子どものひとり一人を大切に育てないと, 日本の 将来が危ういといえよう. 日本全体の状況においては拙著 「子どもの貧困と日本没落−国・自治 体・企業」1 も参照されたい. この状況を打開するためのひとつの手段が保育所の充実であると思われる. なぜなら, 日本の 社会経済環境と家庭との接点に保育所があるからである. 保育所建設は, 地方自治体に任されて いるために, 都道府県間, 市区町村に大きな格差が生じている2. 国, 都道府県, 企業・事業所 及び家庭, 地域が共同して総合的に取り組む必要がある.

[1] 年少人口の減少

年少人口が減少し始めている. 日本全国の 0∼14 歳の年少人口は, 2005 年の 国勢調査報告 では, 1758 万 5 千人だったが, 国立社会保障・人口問題研究所が 2007 年に行った将来推計 (2010 年から 5 年ごとに 2035 年まで推計) では, 2035 年には 1051 万 2 千人へと 707 万 3 千人減 少すると推計している. 都道府県別で年少人口数を 2005 年と 2035 年と比較すると, 全ての都道府県において減少して いるが, 最も多く減少するのは大阪府で 121 万 9 千人から 70 万 2 千人へと 51 万 8 千人も減少す ると予測されている. 第 2 位は東京都で, 144 万 3 千人から 101 万 1 千人へと 43 万 3 千人の減 少である. 第 3 位は埼玉県の 98 万 9 千人から 56 万 4 千人へと 42 万 5 千人の減少である. 同じ期間に年少人口数の減少数が最も少ないのは鳥取県の 8 万 5 千人から 5 万 1 千人へと 3 万 4 千人の減少である. 次が島根県の 10 万 1 千人から 5 万 6 千人へと 4 万 5 千人の減少, 第 3 位 は福井県で 12 万 1 千人から 7 万 5 千人へ 4 万 6 千人の減少である. 同じ期間の 2005 年と 2035 年間における年少人口の減少率は, 全国平均で 40.2%であるが,

子どもの貧困と保育所

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最も高いのは秋田県で 52.3%とほぼ半減すると予測されている. 以下, 和歌山県と青森県の 51.2 %, 北海道の 49.4%で, この 4 道県は年少人口が半減するということである. それに対して, この間の年少人口の減少率が低いのは, 沖縄県の 25.6%, 東京都の 30.0%, 滋賀県の 31.2%である. 愛知県における年少人口も例外ではない. 2005 年の 国勢調査報告 によれば, 愛知県の年 少人口は 107 万 5 千人であるが, 前述の国立社会保障・人口問題研究所の 2007 年推計によれば, 2015 年に 94 万 5 千人, 2025 年 78 万 1 千人, 2035 年 72 万 4 千人へと減少すると予測されてい る. 72 万 4 千人は, 2005 年の 107 万 5 千人と比べると, 35 万人の減少で, 都道府県別では第 6 位の減少数の多さである. 次に, 愛知県下の市町村のうち, 知多・三河地域の自治体別年少人口の将来推計を同上の資料 から分析してみよう. 知多・三河地域の自治体別を選んだ理由は, 日本福祉大学に近いというだ けである. この同じ地域の高齢者人口及び要介護高齢者の将来推計については, 拙稿 「要介護高 齢者の将来推計−名古屋市, 知多・三河地域の自治体の 2035 年までの推計」3 と併せて読んでい ただければ, この地域の全体像が見えてくるであろう. 2010 年から 2035 年の間に, 年少人口が最も減少するのは,【付属資料】1 表のように, 地域別 でみると, いうまでもなく名古屋市で 9 万 1787 人, 東三河地域が 5 万 3951 人, 西三河地域では 3 万 9132 人, 知多地域で 2 万 5633 人と予測されている. 市町村別でみると, 名古屋市の次は, 豊橋市 1 万 8069 人で, 以下豊田市 1 万 7800 人, 岡崎市 1 万 4948 人, 豊川市の 7061 人と推計さ れている. この間に年少人口の減少数が少ないのは, 幡豆町の 635 人, 高浜市の 898 人, 吉良町 の 921 人である. 日本福祉大学がある美浜町は 1349 人減少し, 22 位である. 2010 年を 100 として, 2035 年の指数で年少人口を比較すると, 最も低くなるのは南知多町で 47.2%, つまり 2035 年には半減以下になるということである. 以下, 新城市の 54.7%, 一色町 の 58.2%, 美浜町の 58.2 という順番である.

[2] 子どもの生活

まず, 子どもの生活を総合的に分析してみよう. その分析モデルの基本となる図 1 の 「消費過 程モデル」 から説明しよう. 「消費過程」 は, [投入] → [変換] → [産出] と進行する. [投入] されるものは, 自然環境・消費物資・消費時間・情報および子どもの消費行為の 5 つである. 重要なことは, どれかひとつ欠けても 「消費過程」 は進行しないことであるが, 最も重要な要 素は消費行為である. [投入] された他の 4 つの要素を [変換] し [産出] するのは子ども本人 にしか為しえないからである. これらの諸要素が [変換過程] に投入されて, 子どもは生活能力等が [産出] されるというモ デルである. 「消費行為」 は最も重要な要素ではあるが, 自然環境・消費物資・情報・消費時間は, 他者と

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図 1 消費過程モデル ㆊ (出所) 高橋紘一 「現代福祉論序説−基礎構造改革の 基盤構造 」, 週刊社会保障 No. 2063, 1999.11/22 号, 法研 図 2 総合的生活モデル (注) 高橋紘一 「東京の家族と福祉」, 米田佐代子編 巨大都市東京と家族 所収, 1988 年, 有信堂, p. 102 を一部改定・追加. (出所) 高橋紘一 「現代の貧困と自立幻想― 福祉 から ふくし へ」, 週刊社会保障 2008 年 8 月 25 日 号, 第 62 巻 2494 号

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の関係のなかで, すなわち社会に依存していることに注意しなければならない. 社会における共 通の投入要素ということである. 図 1 は, 消費過程だけであるが, この図に 「生産過程」 を加えたのが図 2 である. 下半分が消 費過程, 上半分が生産過程である. まず, 消費過程を説明しよう. 例えば乳児の場合, 消費主体はあくまで乳児本人である. しか し, 乳児本人だけでは消費過程は進行しないから, 両親や家族などの 「生活支援行為者」 が不可 欠である. 保育所に乳児が入所した場合には, 保育士等が直接の生活支援行為者であるが, 地方 自治体も間接の生活支援行為者として関わっている. 保育所には, 県と国からもお金がでている から, 県・国も生活支援行為者である. 乳児が親のもとで共同生活するためには, 住居が必要である. 住居は, 図 2 の家族共同消費物 資である. 乳児の衣類や食物は個人用消費物資である. 乳児が家族と住居で生活するためには, 電気・上下水道・ガス・通信設備などの, 図 2 に示し た都市系の 「社会的共同消費手段」 が不可欠である. 乳児が病気や怪我をした場合には, 診療所や病院を利用する. それは図 2 の医療系の 「社会的 共同消費手段」 である. 乳児が親と医療機関に行くときは, 道路や公共交通機関という 「社会的 共同消費手段」 を使う. 個人用消費物資と 「社会的共同消費手段」 は, 図 1 では, 「消費物資」 の中に含めている. 2005 五年の 国勢調査報告 によると, 電気・ガス・熱供給・水道業に 27 万 9799 人, 情報 通信業に 162 万 4480 人, 運輸業に 313 万 2712 人, 医療, 福祉に 535 万 3261 人が従事している. 合計 1039 万 252 人が社会共通の土台を担っている. さらに, 乳児が生活能力の再生産を行うさいには, 「時間」 を消費し, 大地・光・自然など地 球環境を消費している. 家庭や保育所等において, 育児・保育している場合, 日頃意識していないが, これら 「社会的 共同消費手段」 を担う多数の人々に支えられていることを意識化し自覚する必要がある.

[3] 子どもの貧困

「子どもの貧困」 をキーワードにして, デ−タベ−ス 「聞蔵Ⅱビジュアル」 の中の 朝日新聞 を検索してみた. その結果, 1984 年から 2010 年 10 月 24 日までで, 144 件がヒットした. 2008 年の 1 年間に限定すると 18 件, 2009 年の 1 年間では 53 件であったが, 2010 年 1 月 1 日から 10 月 24 日までで 71 件がヒットした. このように最近になって急速に増加している. なかでも子どもの貧困のひとつである児童虐待が深刻である. 全国の児童相談所 197 カ所のう ち 195 カ所が回答した全国的規模では初めての調査果をみると, 「虐待があった 6764 世帯のうち, 実母のいる家庭は 78%で, 実父は 46%. 主な虐待者は実母が 52%で最も多く, 実父は 24%. 虐 待者が実母の場合は, 不明や無回答を除くと半数が生活保護世帯か, 住民税の非課税世帯だった.

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……こうした深刻な虐待をした保護者のうち, 虐待を認めて援助を求めている とされた保護 者は 3 割に上った. ……複数回答で, 経済的な困難 33.6%, 虐待者の心身の状況 31.1%, ひと り親家庭 26.5%, 夫婦間の不和 18.3%」4 という. この子どもをめぐる状況をみると, 保育所の新たな役割として, 従来の保育に欠ける子どもだ けでなく, 現代的貧困状況のなかで生まれ育ってきた父母の教育のためにも機能させる必要がで てきたのではないだろうか. 定期刊行物においても特集が組まれている. 「ニッポンの子どもの貧困率は先進国でワースト 10 位」 (特大号 「子どもの格差」 ( 週刊東洋経済 2008 年 5 月 17 日号), 「〈特集〉子どもの貧困 と格差」 ( 経済 2009 年 12 月号), 「〈特集 2〉 お受験 と 貧困 」 ( 都市問題 2010 年 2 月 号), 「〈特集〉子どもの貧困と社会保障」 ( 月刊保団連 2010 年 2 月号), 「〈特集〉子どもの虐 待と社会的支援」 ( 住民と自治 2010 年 7 月号) などである. これは, 前述の経済的貧困と現代的生活貧困が複雑にからまって生じてきていると思われる. 家族にだけ子どもの貧困対策を期待するのではなく, いまや, 社会的に対策を早急にたてるべ きである. その社会的対策の一つとして保育所がある. 保育所は, 保育に欠ける児童だけでなく, 父母を対象とした育児・子育ての教育機関としても機能することができるからである.

[4] 保育所定員率

どこで子育てをするかは, 父母にとって今後の人生を左右する大問題になる. 都道府県間, 市 区町村間において大きな格差が存在するからである. ここでは, 紙幅の関係で都道府県間格差に ついて分析する. ここで定義する 「保育所定員率」 とは, 0 歳から 6 歳児人口に対する認可保育所の定員数の割 合である. その都道府県別割合を見てみよう. 最近では, 認証保育所, 認定こども園, 家庭福祉 員などが出てきているが, ここでとりあげた保育所は, 認可保育所 (以下保育所) である. 上述 のような子どもをめぐる状況を考えると, 保育者の人員配置, 保育所の面積等において, 認可保 育所のよりいっそうの充実が求められるからである. 保育所へ入所できる 0∼6 歳児に対する, 保育所の定員数の割合を 「保育所定員率」 とする. 保育所の都道府県別定員数は, 毎年 社会福祉行政業務報告 に掲載されているので, 容易に入 手できる. しかし, 0 歳から 6 歳児人口の都道府県別人数は, 国勢調査報告 以外に見あたら なかった. そのため, 0∼6 歳児人口は, 2005 年の 国勢調査報告 のデータを, 都道府県別保育所定員 数は 社会福祉行政業務報告 (2010 年 3 月発行) に掲載 2009 年 3 月のデータを用いた. 図 3 のように, 都道府県別保育所定員率が最も高かったのは, 石川県の 60.2%, 第 2 位が高 知県の 59.2%, 第 3 位が福井県の 54.9%, 第四位鳥取県の 53.4%のように, いわゆる過疎県が 多い.

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保育所定員率が低いのは, 神奈川県の 11.8%, 宮城県の 14.9%, 北海道の 16.2%, 埼玉県の 17.0%, 東京都の 17.7%, 千葉県の 19.4%で, これらすべて 20%以下の都道県である. 北海道 と宮城県も低いが, 首都圏の保育所定員率が大変低い. 都道府県間の保育所定員率には大変大きな格差が存在しているといえよう. 首都圏など大都市 部では, 女子が子育て期にも仕事を継続することは, 大変大きな困難を伴っていると思われる. この子育て期に一旦退職して子育てに集中し, 一段落して就職する場合には, 看護師など資格 をもち需要が高い職種以外では, 臨時雇用, 短期雇用, アルバイトなどになってしまう. そして, その影響は生涯に及ぶ. まず, 育児のために退職すると, 厚生年金ではなく国民年金 に加入することになる. 育児が一段落して再就職したとしても, 国民年金保険料を払い続けるケー スが多いだろう. 厚生年金に加入できたとしても, 退職前に比べれば, 賃金水準の低い事業所に 就職することが多いから, 将来の通算年金額は低くなるだろう. ましてや, 再就職先が臨時雇用等になれば, 国民年金保険料を払い続けることになるが, 未納 者になる可能性もある. この影響は, 本人や家族にだけでなく, 社会全体にも及ぶことになる. まず, 退職前に習得し た能力・技術等が, 変化が激しい時代にあっては, 再就職する際には陳腐化してしまうから, 再 訓練費が必要になってくる. 次に, 退職する前には, 国税や地方税, 社会保険料を納税する能力をもっていたが, 臨時雇用 など再就職後は担税能力は大幅に落ちてしまう. 退職していなければ担税力は増加していたはず である. このように見てくると, 育児のために退職することの社会的経済的影響は大変大きいといわざ るをえないであろう. 図 3 都道府県別女子 30∼34 歳就業率 (2005 年) と保育所定員率 (2009 年 3 月) 㪇㩼 㪈㪇㩼 㪉㪇㩼 㪊㪇㩼 㪋㪇㩼 㪌㪇㩼 㪍㪇㩼 㪎㪇㩼 㪌㪇㩼 㪌㪌㩼 㪍㪇㩼 㪍㪌㩼 㪎㪇㩼 㪎㪌㩼 ᅚሶ㪊㪇䌾㪊㪋ᱦዞᬺ₸ ଻ ⢒ ᚲ ቯ ຬ ₸ ጊᒻ ፉᩮ ንጊ ᣂẟ 㠽ข ⑔੗ ⍹Ꮉ ⑺↰ 㜞⍮ ጤᚻ ᾢᧄ ૒⾐ ችፒ 㕍᫪ 㐳ፒ ⑔ፉ 㐳㊁ ᓼፉ 㚅Ꮉ ጊ᪸ ⟲㚍 㣮ఽፉ ጟ ጊญ ጘ㒂 ਃ㊀ ᄢಽ 㕒ጟ ᩔᧁ ᐢፉ ችၔ ᴒ✽ ๺᱌ጊ ᗲᇫ ᄢ㒋 ᄹ⦟ ␹ᄹᎹ ౓ᐶ ṑ⾐ ᗲ⍮ ජ⪲ ᧲੩ ർᶏ㆏ ၯ₹ ੩ㇺ ⨙ၔ ⑔ጟ ᐔဋ ⋧㑐ଥᢙ䇭㪇㪅㪎㪋㪌㪋㪌 䋪ጟ䋽ጟጊ (出所) 厚労省 社会福祉行政業務報告 2010 年と 国勢調査報告 2005 より高橋紘一計算・作図

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退職して育児に専念した場合, 核家族化, 家族機能の商品化などにより, 地域で孤立化する危 険も大きい.

[5] 女子就業率と企業支援

全国平均の 2005 年時点での女子の 5 歳階級別の 「就業率」5 を見ると, 25∼29 歳が 66.1%に 対して, 30∼34 歳が 57.5%, 35∼39 歳が 58.9%と下がり, 40∼44 歳が 70.4%と高くなりはじめ るという, 全体として M 字型になっているという特徴がある. この年齢において子育てのため に退職する女子が多いことが要因として考えられている. なお, 名古屋市及び三河地域の各自治体の女子 30∼34 歳の 2005 年時点での就業率は, 【付属 資料】第 2 表を見ていただきたい. この女子就業率が最も低くなる 30∼34 歳の都道県別比較をしてみると, 最も高いのは, 山形 県の 72.3%, 以下, 島根県の 71.0%, 富山県の 70.3%, 新潟県 69.8%, 鳥取県 69.4%, 福井県 68.9%, 石川県, 秋田県 68.6%などである. それに対して, 女子 30∼34 歳の就業率が最も低いのは, 大阪府の 51.6%, 以下, 奈良県 51.9 %, 兵庫県 53.4%, 神奈川県 54.2%, 千葉県 54.6%, 東京都 54.7%, 埼玉県 55.3%のように, 大都市圏が多く, 山形県と比較すると, 大きな格差がある. 愛知県は 55.9%第 38 位で, 低いグ ル−プに属している. 次に, 同じ図 3 であるが 「都道府県別女子 30∼34 歳の就業率」 と 「認可保育所定員率」 の相 関図を見ていただきたい. 「女子 30∼34 歳就業率」 と 「保育所定員率」 の両者とも高いのは, 高知県・石川県・福井県・ 富山県・鳥取県・島根県・新潟県であるのに対して, 両者ともに低いのは, 大阪府・兵庫県・東 京都・千葉県・埼玉県・神奈川県のように大都市部である. 東京都などで就業率が低い大きな要因は, 保育所の定員が不足していることであると考えられ る. 東京都のホームページによると, 保育所等の待機児童数は 2010 年 4 月 1 日現在, 東京都全 体で 8435 名にものぼっている. 仕事を継続するためには, 保育所整備だけでなく, 企業・事業所における育児支援も必要不可 欠である. 国も, 以下のように 「育児・介護休業法」 の整備を進めてきた. 2009 年 9 月に第一次施行と して, 事業主による苦情の自主的解決及び都道府県労働局長による紛争解決の援助制度の創設を し, 法違反に対する勧告に従わない場合の企業名の公表制度, 報告を求めた場合に報告をせず 又は虚偽の報告を行った場合の過料を新設した. 2010 年 4 月には, 「育児・介護休業法」 の第二次施行として, 労働者と事業主の間の紛争に関 する調停制度を創設, さらに同年 6 月には, 第三次施行として, 3 歳までの子を養育する労働 者に対する短時間勤務制度の措置の義務化, 所定外労働の免除の制度化, 子の看護休暇の拡充,

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男性の育児休業取得促進策 (パパ・ママ育休プラス等), 但し, 子育て期の短時間勤務制度, 所 定外労働の免除の義務化, 介護休暇制度の創設については, 従業員 100 人以下の企業は, 2012 年 7 月から施行であるが. 具体例をあげると, 雇用の継続や再雇用に熱心な企業が出てきた. 「シャープは正社員への再雇用を保証している. ……復職後のきめ細かい配慮を重視する企業 もある. 松下電器産業は働き方を選べるのが特徴. 子どもの突然の病気などに対応するため, 東 芝は有給休暇の一部を 1 時間単位で利用できるようにした. ジョンソン・エンド・ジョンソンは, 朝職場に電話をすれば在宅勤務に切り替えられる日を年 20 日間用意した. とはいえ, 育休や短 時間勤務を利用すると査定や昇進に響かないか との不安もある. それが男性社員の育休取得率 が低い要因とも言われる. リコーは評価の基準を明示し, 育休取得がマイナスにならないよう配 慮している」6 等である. 企業での仕事と家庭の両立を支援する企業は, 2010 年 10 月 29 日現在で 8031 社であるが7, 課題は利用率の増加である. 会社の幹部, 上司, 同僚の理解と協力がなければ, 利用率は伸びな いであろう. 自社の利益だけでなく, どの企業も企業内の同僚も, 社会的分業と相互協力のもと で, 商品生産をしているという広い視点をもつ必要があるだろう.

[6] 最後に

家族機能の商品化の結果, モノの豊かさが家族内の人間関係量を減少させ, 質的にも劣化させ てきたと思われる. それに拍車をかけたのが“自立・自助論”である. 図 2 のように広く深い 「社会的共同」 に支えられて生活しているにもかかわらず, 無視されてきてしまった. この状態が継続するならば, 日本の労働力が量的にも質的にも悪化し, ますます今後の日本の 社会経済に大きな影響を与えることになると思われる. それを防ぐためには, 国・都道府県・市区町村・企業・事業所・地域・家庭がこの状況を理解 し緊密に協力しあう必要がある.“自立・自助論”から 「自律・共同」 への転換である. 直ちに できる有効な対策としては, 次のことが考えられる. 政府として, 認可保育所定員を増加させるために, そして, 都道府県間・市区町村間における 保育所定員率格差を解消するための手厚い財政補助をする必要がある. それと同時に, 企業・事業所に対して, 母親だけでなく父親も育児休業・育児時間がよりいっ そう容易に取得できる法体系の整備とともに, 課税面でも実効性のある優遇措置を本格的にとる べきである. 中・長期的にみれば, 単なる家族の支援ではなく, 日本の存亡がかかっているから である. 宮田先生と私との最初の“つながり”は, 週刊社会保障 だと推測しています. お声をかけ ていただく前に, どこかでお知り合いになった記憶はありません. 週刊社会保障 の 「論評」

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への原稿執筆依頼が毎年あり, それをご覧になったのではないかと推測しています. 宮田先生に お声をかけていただき, 日本福祉大学に勤務することができました. 宮田先生, ありがとうござ いました. 追悼論文として, 急速な人口減少が進行する状況の中で, 先生が, 成長・発展のためにご努力 された日本福祉大学の存続に大きく影響するであろう 「知多・三河地域の市町の保育所」 を念頭 におき執筆しました. いくらかのお役にたてれば幸いです. 宮田先生, やすらかに, お眠り下さ い. あの世でもお会いできれば嬉しいです. 注 1 ) 高橋紘一 「子どもの貧困と日本没落−国・自治体・企業の役割」, 週刊社会保障 2010 年 11 月 22 日 号, no. 2605 所収. 2 ) 同上を参照されたい. 3 ) 日本福祉大学研究紀要 現代と文化 , 第 120 号, 2009.12, 日本福祉大学福祉社会開発研究所, (pp. 49-72) 4 ) 朝日新聞 2009 年 9 月 30 日号 5 ) 国勢調査報告 における就業者の分類は, 主に仕事, 家事のほか仕事, 通学のかたわら仕事, 休業 者に分類されている. 筆者がここで用いた 「就業者」 は, これらの合計である. 6 ) 朝日新聞 2006 年 6 月 25 日号 「選択のとき−人口減で明日は−少子化編−育児と仕事の両立」 7 ) 支援策を公表している企業の数は, 2010 年 10 月 29 日現在で 8031 社企業の育児支援策の閲覧サイト 「両立支援のひろば」 に登録された従業員 301 人以上の数.

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〈付属資料 1 〉名古屋市および知多・三河地域自治体の年少人口 (0∼14 歳) の将来推計 2010 年 2015 年 2020 年 2025 年 2030 年 2035 年 35 年-'10 年 順位 2010 年=100 順位 名古屋市 281,218 254,848 227,707 207,683 197,311 189,431 -91,787 1 67.4% 10 半田市 18,129 16,394 14,888 13,863 13,471 13,276 -4,853 7 73.2% 20 常滑市 7,050 6,359 5,642 5,229 5,028 4,817 -2,233 18 68.3% 12 東海市 16,194 15,206 13,704 12,669 12,211 11,932 -4,262 8 73.7% 21 大府市 12,706 11,992 11,065 10,358 10,039 9,840 -2,866 14 77.4% 24 知多市 12,440 11,425 10,269 9,495 9,092 8,786 -3,654 12 70.6% 14 阿久比町 3,256 2,936 2,607 2,418 2,324 2,232 -1,024 26 68.6% 13 東浦町 7,790 7,047 6,351 5,903 5,713 5,608 -2,182 19 72.0% 18 南知多町 2,233 1,816 1,492 1,274 1,152 1,055 -1,178 24 47.2% 1 美浜町 3,231 2,739 2,347 2,093 1,980 1,882 -1,349 22 58.2% 4 武豊町 6,380 5,796 5,174 4,710 4,482 4,348 -2,032 20 68.2% 11 知多地域合計 89,409 81,710 73,539 68,012 65,492 63,776 -25,633 71.3% 岡崎市 55,547 51,203 46,313 43,050 41,639 40,599 -14,948 4 73.1% 19 碧南市 10,956 10,198 9,233 8,612 8,407 8,292 -2,664 16 75.7% 23 刈谷市 23,092 21,963 20,440 19,359 19,065 18,985 -4,107 9 82.2% 28 安城市 29,090 27,308 25,245 23,712 23,179 23,030 -6,060 6 79.2% 27 西尾市 15,457 14,042 12,836 12,055 11,775 11,598 -3,859 11 75.0% 22 知立市 10,754 10,139 9,321 8,654 8,421 8,331 -2,423 17 77.5% 25 高浜市 7,174 6,844 6,405 6,147 6,175 6,276 -898 28 87.5% 29 一色町 3,226 2,776 2,379 2,127 1,993 1,876 -1,350 21 58.2% 3 吉良町 3,154 2,907 2,591 2,394 2,302 2,233 -921 27 70.8% 17 幡豆町 1,636 1,420 1,226 1,113 1,053 1,001 -635 29 61.2% 5 幸田町 5,742 5,432 4,979 4,655 4,540 4,475 -1,267 23 77.9% 26 西三河合計 165,828 154,232 140,968 131,878 128,549 126,696 -39,132 76.4% 豊橋市 54,717 48,967 43,544 39,854 37,991 36,648 -18,069 2 67.0% 9 豊田市 60,918 55,510 50,059 46,295 44,462 43,118 -17,800 3 70.8% 16 豊川市 24,081 22,078 19,818 18,273 17,540 17,020 -7,061 5 70.7% 15 蒲郡市 10,338 9,058 7,924 7,121 6,706 6,392 -3,946 10 61.8% 6 田原市 8,577 7,493 6,550 5,946 5,648 5,381 -3,196 13 62.7% 8 新城市 6,266 5,230 4,420 3,940 3,663 3,427 -2,839 15 54.7% 2 小坂井町 2,777 2,463 2,167 1,957 1,837 1,737 -1,040 25 62.5% 7 東三河合計 167,674 150,799 134,482 123,386 117,847 113,723 -53,951 67.8% (人) (出所) 国立社会保障・人口問題研究所 2008 年 12 月推計 (ホームページ) より高橋紘一計算・作表

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〈付属資料 2 〉名古屋市, 知多・三河地域の女子 30∼34 歳の就業率 ( 国勢調査報告 2005 年) 女子 30-34 歳人口 女子 30∼34 歳 就業者数 女子 30∼34 歳 主に仕事 (人) 順位 (人) 順位 就業率 順位 (人) 順位 就業率 順位 名古屋市 90,809 1 49,305 1 54.30% 26 34,721 1 38.24% 12 半田市 4,677 8 2,741 8 58.61% 14 1,765 7 37.74% 14 常滑市 1,666 20 1,102 17 66.15% 3 747 17 44.84% 1 東海市 4,337 9 2,393 10 55.18% 23 1,495 10 34.47% 26 大府市 3,794 11 2,178 11 57.41% 18 1,420 11 37.43% 19 知多市 3,437 12 1,990 12 57.90% 17 1,291 12 37.56% 17 阿久比町 848 23 486 26 57.31% 19 329 24 38.80% 11 東浦町 1,984 17 1,082 18 54.54% 24 679 18 34.22% 29 南知多町 574 28 375 28 65.33% 5 224 28 39.02% 9 美浜町 808 24 523 24 64.73% 6 325 25 40.22% 5 武豊町 1,732 18 1,055 19 60.91% 10 662 19 38.22% 13 知多地域合計 23,857 13,925 58.37% 9,913 37.46% 岡崎市 14,577 3 8,104 4 55.59% 22 5,350 4 36.70% 20 碧南市 2,607 15 1,494 15 57.31% 20 979 15 37.55% 18 刈谷市 6,558 6 3,288 6 50.14% 29 2,256 6 34.40% 28 安城市 7,673 5 4,180 5 54.48% 25 2,754 5 35.89% 22 西尾市 3,984 10 2,400 9 60.24% 12 1,549 9 38.88% 10 知立市 3,088 13 1,626 14 52.66% 27 1,065 14 34.49% 25 高浜市 1,695 19 949 20 55.99% 21 622 20 36.70% 21 一色町 803 25 505 25 62.89% 8 302 26 37.61% 16 吉良町 724 27 422 27 58.29% 15 250 27 34.53% 24 幡豆町 375 29 251 29 66.93% 2 156 29 41.60% 3 幸田町 1,580 21 917 21 58.04% 16 596 21 37.72% 15 西三河合計 43,664 24,136 55.28% 15,879 36.37% 豊橋市 14,488 4 8,704 2 60.08% 13 5,686 2 39.25% 8 豊田市 16,256 2 8,416 3 51.77% 28 5,598 3 34.44% 27 豊川市 5,063 7 3,064 7 60.52% 11 1,765 8 34.86% 23 蒲郡市 2,792 14 1,732 13 62.03% 9 1,112 13 39.83% 6 田原市 2,030 16 1,329 16 65.47% 4 822 16 40.49% 4 新城市 1,381 22 877 22 63.50% 7 547 22 39.61% 7 小坂井町 800 26 548 23 68.50% 1 343 23 42.88% 2 東三河合計 42,810 24,670 57.63% 15,873 37.08% (注) 「就業者」 は, 主に仕事, 家事のほか仕事, 通学のかたわら仕事, 休業者の合計 (出所) 国勢調査報告 2005 年より高橋紘一作表・計算

図 1 消費過程モデル ㆊ (出所) 高橋紘一 「現代福祉論序説−基礎構造改革の 基盤構造 」, 週刊社会保障 No. 2063, 1999.11/22 号, 法研 図 2 総合的生活モデル (注) 高橋紘一 「東京の家族と福祉」, 米田佐代子編 巨大都市東京と家族 所収, 1988 年, 有信堂, p

参照

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