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籾殻燻炭により増殖が促進される微生物の研究

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Academic year: 2021

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氏 生年月日

学位論文審査結果の報告書

本籍(国籍)

学位の種類

学位記番号

学位授与の条件

(博士の学位)

江邉正平

昭和・平成 2年 H月21日

大阪府

士(工学

生第 52

学位規程第5条該当

博 促 枳

学位論文受理日

学位論文審査終了日

審査委員

進 殻 さ ,.、、 れ 号 る よ 生 平成31年

平成31年

り 1' 増 の (主査) (副主査) (副主査) (副査)

指導教員

殖 @ 研 が ク、3 24日 8日 秋田求 梶山慎一郎 阿野貴司 阿野貴司 戸及瓢 、',.工Y゛ / サ1-羅\ 兪文題 こ 炭 目 二一n

月月

(2)

人口増加により食糧生産の重要性が増しており、農作物の生産性増大が世界共通の課題となっ てぃる。農作物の生産量を向上させ安定供給を図るために、自然生態系本来の力を利用する環境 保全型農業が世界的に注目されている。このような背景から士壌微生物と植物の関係に着目し、 士壌微生物の働きによって士壌中に存在する植物病原性微生物の感染を防除することで、持続可 能な農業技術の開発に貢献することが可能なのではと考え、日本で古くから土壌改良材として利 用されてきた燥炭に着目した。煉炭とはイネの籾殻を比較的低温、低酸素条件下で焼成すること で作られる土壌改良材であり持続可能な資源であることから、煉炭の利用は循環型社会に貢献す る農業技術となり得る。 第2章では、煉炭と微生物の関係に着目し煉炭存在下において増殖が促進される微生物の単離 に成功した。煉炭存在下において増殖が促進される微生物を探索するため、品質が安定している 炭材料として活性炭素を用いて、環境中から単離した微生物を活性炭素を含む寒天培地上で培養 し、活性炭素非添加の寒天培地との増殖面積を比較することにより、活性炭素の存在下で増殖が 促進される微生物βaω'UUS属細菌IA株の単離に成功した。次に、煉炭を用いた同様の寒天培地上 においても経時的に増殖面積を測定することにより、1A株は煉炭存在下で増殖促進される微生物 であることを示した。 煉炭を添加した液体培地でIA株の培養を行うことで煉炭非添加の培地と比較して10倍程度に細 胞数が増加することを確認している。このことから、固体寒天培地上で認められた増殖面積の増 加が、液体培地においても細胞数の増加として認められることを見出した。さらに、耐熱性胞子 の計測を行ったところ、煉炭を添加することで1万倍以上の胞子形成の促進が認められた。また、 煉炭を添加して培養を行った培地の浦過滅菌上清が、植物病原菌肋ル0dom'as01飢iK1に対し て強い抗菌活性を示すことから、煉炭が抗菌活性物質の生産性も増大させることを見出した。1A 株が生産する抗真菌活性物質の単離と同定を行ったところりポペプチド系抗生物質it吐inAであ ることが示された。またIA株の北UrinA生産が、培地に添加する煉炭の添加量に伴い増加するこ とを見出した。 第3章ではIA株の代謝促進における煉炭の役割の解明を試みた。第2章で見出した、増殖、胞 子化、抗生物質生産ヘの影響を指標として、煉炭がIA株に作用するメカニズムの解明を試みた。 先ず、煉炭懸濁水の熱処理により得られる煉炭抽出液を用いて培地を作成し、1A株の培養を行っ た結果、胞子化と北UrinA生産の促進が認められたことから、煉炭抽出液に代謝促進物質が含ま 文 F^1 の ^ 一=

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れることを示した。次に、煉炭の灰分成分に含まれている微量金属元素を培地に添加してIA株の 培養を行い、硫酸マンガン(Mns04)を添加した培地のみで胞子化とit吐inA生産の促進効果が認 められることを見出した。煉炭抽出液を用いて作成された培地中でのIA株の代謝促進効果がマン ガンイオンに起因することを明らかにしたが、煉炭抽出液でのIA株の代謝促進効果は煉炭そのも のを添加した培地よりも低いことも示され、1A株の代謝促進におけるマンガンイオン以外の要因 の存在が示唆され探索を行った。イネは土壌中のケイ酸を取り込み蓄積するため、煉炭にも二酸 化ケイ素が含まれている。そこで工業的に生産される高純度の二酸化ケイ素から構成される鱗片 状シリカに着目した。鱗片状シリカを培地に添加してIA株の培養を行った結果、北吐inA生産の 促進が認められたことから、シリカによる代謝阻害物質の吸着を示唆するデータが得られた。次 に、マンガンイオンと二酸化ケイ素を組み合わせた培地を作製したところ、煙炭と同様にIA株の 増殖と胞子化、it岻inA生産の全てにおいて促進効果が認められた。つまり煉炭によるIA株の増 殖と胞子化、it岻inA生産の促進効果には、煉炭から溶出するマンガンイオンと煉炭に含まれる 二酸化ケイ素が重要であることを明らかにした。 第4章では煉炭とIA株を用いた微生物資材の開発を試みた。士壌中の病原菌が原因とされる世 界の主要8作物の損失量は10%以上と見積もられており、環境保全型農業を実現するためには有用 微生物を用いた病原性微生物の植物ヘの感染をいかに防除するかが課題である。このことから農 業廃棄物である煉炭とIA株を組み合わせた微生物資材を開発することが出来るのではないかと考 え、大量生産のための培養プロセスの構築を目的とした。また、培養コストを低くするため、籾 殻と同じく稲作廃棄物である米糠をIA株の培養基質として利用することが出来ないかと考えた。 キュウリ幼苗を用いた感染防除試験では、1A株が植物病原菌尤 S01飢i碓による病害を軽減する ことを示した。またIA株はフィターゼとシデロフォアの生産能を有していることから植物生長促 進にも貢献することが示唆された。そこで米糠と煉炭を用いてβaω'U山属細菌IA株の培養を行う ことで培養プロセスのコストを抑えた微生物資材の開発を試みた。実験の結果、1A株が稲作廃棄 物である米糠を基質として増殖できることが示された。米糠懸濁液と煉炭を組み合わせた煉炭米 糠培地を用いてIA株の培養を行ったところ、1A株の胞子数が煉炭lg当たり108CfUを越える培養 物の作製に成功した。また、煉炭米糠培地でのIA株の培養がスケールアップ可能であり、大量生 産できる可能性が示された。本研究によりIA株と燥炭を組み合わせた微生物資材は植物病原菌に よる病害防除だけでなく、植物生長促進効果も期待できる資材になり得ることが示された。

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人口増加により食糧生産の重要性が増しており、農作物の生産性増大が世界共通の課題となっ てぃる。農作物の生産量を向上させ安定供給を図るために、自然生態系本来の力を利用する環境 保全型農業が世界的に注目されている。このような背景のもとで行われた本研究は、土壌微生物 によって植物の生産性を高め、かつ、士壌中に存在する植物病原性微生物の感染を土壊微生物の 働きによって防除する方法を提示するものであり、持続可能な農業技術の開発に貢献すると期待 される。 本研究では、日本で古くから士壊改良材として利用されてきた煉炭に着目している。煉炭は、 持続可能な資源であるイネの籾殻から作られ、その利用技術は、循環型社会に貢献し得る。第2 章では、煉炭と微生物の関係に着目し、煉炭存在下において増殖が促進される微生物の単雛に初 めて成功してぃる。これは単純な方法であるが相当に独倉舶勺なアプローチであり、他の様々な環 境中からの微生物の探索に応用されうるであろう。本研究では、品質が安定している炭材料とし て最初に活性炭素を用いて微生物を探索している。環境中から単離した微生物を活性炭素を含む 寒天培地上で培養し、活性炭素非添加の寒天培地上の増殖面積と比較する方法を考案し、結果、 活性炭素の存在下で増殖が促進されるβa改'U山属細菌IA株の単籬に成功している。次に、煉炭を 用いた同様の寒天培地を用いて、1A株の増殖が、煉炭存在下で促進されることを確かめている。 燥炭を添加した液体培地でIA株の培養を行うと、煉炭非添加の培地と比較して10倍程度に細胞数 が増加した。耐熱性胞子の数は、煉炭を添加することで1万倍以上に増加した。これらは非常に 興味深い発見であると同時に、固体寒天培地上で認められた増殖の促進が、液体培地においても 認められることを示している。また、煉炭を添加して培養を行った培地上清を用いた実験から、 IA株が、植物病原菌π加'zoctom'asolaniK1に対して強い抗菌活性を示す物質を生産することを 明らかにした。煉炭の添加は、抗菌活性物質の生産性も増大させることを初めて見出している。 IA株が生産する抗真菌活性物質の単離と伺定を行い、それがりポペプチド系抗生物質北WinAで あることを明らかにしてぃる。さらにIA株の北山inA生産量には、培地に対する最適な燥炭添加 量が存在することを見出している。これらはすべて新規の発見である。 第3章では、第2章で見出した、増殖促進・胞子化促進・抗生物質生産量増大に対する煉炭の 役割の解明を試みている。先ず、煉炭懸濁水の熱処理により得られる煉炭抽出液を用いて培地を 作成し、1A株の培養を行った結果、胞子化とit山inA生産の促進が認められ、このことから、煉 炭そのものでなく、煉炭抽出液中の無機物質に代謝促進物質が含まれることを明らかにしている。 次に、煉炭の灰分成分に含まれている微量金属元素を培地に添加してIA株の培養を行い、硫酸マ

ンガン(Mns04)を添加した培地のみで胞子化とit岻inA生産の促進効果が認められることを初め

て報告してぃる。この結果もまた新規性が高い。しかし、煉炭抽出液を用いて作製された培地の 代謝促進効果は、マンガンイオンのみ添加した場合よりも高いと考えられたため、さらに他の要 因にっいての探索を行っている。イネはケイ素を比較的高く要求する植物であり、士壊中から取 暑ム、 査, の ^ 士,

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り込まれ蓄積されたケイ酸は二酸化ケイ素として籾殻煉炭にも含まれると考えられる。そ こで、工業的に生産される鱗片状シリカを添加した培地を作製してIA株の培養を行った結 果、北吐inA生産が促進されるという結果を報告している。シリカによる代謝阻害物質の 吸着を示唆するデータにもとづき、マンガンイオンと二酸化ケイ素を組み合わせた培地を 作製したところ、煉炭と同様にIA株の増殖と胞子化、 it皎in A生産の全ての促進効果が認 められることを示した。つまり煉炭によるIA株の増殖と胞子化、北Urin A生産の促進効果 には、煉炭から溶出するマンガンイオンと煉炭に含まれる二酸化ケイ素が重要であるとい う新しい知見を得ている。 第4章では煉炭とIA株を用いた微生物資材の開発を試みている。環境保全型農業を実現 するためには病原性微生物の植物ヘの感染をいかに防除するかが大きな課題であり、有用 微生物を用いる方法が大いに期待される。第2章の結果を発展させ、農業廃棄物である煉 炭とIA株を組み合わせて微生物資材を開発することが出来るのではないかとの発想に加え、 培養コストを低くするために籾殻と同じく稲作廃棄物である米糠をIA株の培養基質として 利用することを試み、その有効性が確かめられている。キュウリ幼苗を用いた簡易的な感 染防除試験ではIA株が植物病原菌π. solaniK1による病害を軽減することが予想された。 また、1A株がフィターゼとシデロフォアの生産能を有していることを確かめ、植物生長促 進にも貢献すると予想している。1A株自体が多種類の植物の生育や収量を増大させ、かつ 圃場において糸状菌による病害を防止することが確かめられれぱ非常に有益である。今後 の大規模な試験が期待される。本章において次に評価されることは、1A株の利用により米 糠と煉炭のみによる低コストの微生物資材の生産の可能性を示したことである。すなわち、 米糠懸濁液と煉炭を組み合わせた煉炭米糠培地を用いると、1A株の胞子数が煉炭lg当た り1080fUを越える資材を作製できることを示した。また煉炭米糠培地でのIA株の培養が スケールアップ可能であることを示している。結果、1A株と煉炭を組み合わせた安価な微 生物資材は、病害防除と植物生長促進効果を期待できる資材になり得ることが示唆されて いる。 本研究では煉炭により増殖が促進される微生物を初めて単離し、その微生物資材開発に 向けた基礎的研究を行っている。燥炭によるIA株の代謝促進効果が、燥炭から溶出するマ ンガンイオンと煉炭に含まれる二酸化ケイ素の相加的な効果によるものであることを明ら かにするとともに、1A株と稲作廃棄物である煉炭と米糠を用いることで病害防除と植物生 長促進が期待できる資材の開発に成功している。以上のように本論文は、微生物農薬の基 礎的および応用開発に向けた研究を行い、伝統的に使用されてきた煉炭により促進される 微生物を初めて単雛し、稲作由来の籾殻と米糠を用い、環境保全型農業に貢献する技術と なり得る微生物資材を提示していることから、博士(工学)論文として価値あるものと認 める。

参照

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