論 文
企 業 ・学 校 に求 め られ る
"教 育"か
ら"学
育"へ
の 移 行
"学 び育 つ"た
め の6素
材 と場"の
提 供
Shift from
"Teaching"
to "Active
Learning"
Necessar Y
for Both Company
and School Educators
from Now on
Supplying
"Subject Matter and Stimulating
Field
for
Active Learning"
島
田
彌
Wataru SHIMADA 多 様 化 す る 社 会 の 要 求 に 対 応 す る た め に は,「 個−On」 一 目標 の 自 己 設 定 カ ー と 「調 和 一Hol」 一 組 織 変 化 へ の 適 応 カ ー とを 併 せ 持 った「Holon」 型 技 術 者 の 育 成 が 極 め て 重 要 で あ る。 そ の た め に は,「 学 習 者 の 状 態 に 合 わ せ て 彼 らが"学 び 育 つ"た め の"素 材 と刺 激 の 場"と を 提 供 す る 」"学 育"が 必 要 で あ る 。 キ ー ワ ー ド:価 値 観 の 多 様 化,自 律 的 な 分 散/統 合,'Halan'型 技 術 者,"学 育", 自律 的 意 欲 喚 起 。In order to actively coordinate with diversing social needs, it is very
important
to bring up 'Holon-type'
engineers, having both abilities
such as individuality,
i.e. 'On'
(self setting for target aimed) and
harmony, i. e. 'Hol'
(adaptability
to organizational
change) . For this
purpose, supplying
" subject matter
and stimulating
field " is very
required for the "active learning"
best fit for each student of his or her
ability and will.
Keywords : Diversing Value, Autonomous De--centralization/Integration, ' Holon-type' Engineer, "Active Learning" , Autonomous
Stimulation of Human will.
1.緒 言
課題設定の背景
日本 は これ ま で成 長 経 済 下 の市 場 の量 的 拡 大 を 背 景 に して ・主 ζ して ハ ー ドウ ェ ア(H/W)の 量 産 技 術 に よ っ て 高度 成 長 を 遂 げて き た が,こ れ に必 要 な"教 育"は 主 と して 目標 の 確 実 か っ 効 率 的 達成 の た め の知 識 ・ス キ ル の 修 得,す なわ ち"How to do"の た め の 教 育 で あ っ た。 しか し近 年 の 価値 観 社 会 構 造 の 急 激 な変 化 は,産 業 構 造,企 業 の あ り方 や教 育 の 役 割 に抜 本 的 な 変 革 を迫 っ て い る よ う に思 われ る。 す な わ ち経 済 の 伸 展 と と もに, (1)人 間 の価 値 観 は 自 己 実 現 を 目指 して 物(H/W)一 手 段 価 値(有 用 性)か ら,心 ・情 報(S/W)一 目 的 価 値(真,善, 美 等)へ と多 様 化 の 方 向 に,こ れ に 対 応 して,(2)市 場 は 細 分 化 ・専 門化 ・個 性 化 の方 向 に,そ して(3)企業 は優 位 分 野 に特 化 した ス ペ シ ャ リス ト型 に,お の お の 向 か う こ とが 予 測 され る 。 ま た これ に加 え て,近 年 で は資 源 ・環 境 問 題 等,有 限 の地 球 を 前 提 に した グ ロ ー バ ル な 制約 競 争 下 で の 価 値 創 造 が 強 く求 め られ て い る 。 この よ うに 多 様 化 す る知 的 生 産 活 動 に は,技 術 者 自 ら が 目標 さ らに は 目的 その もの を 創 出 す る こと,す なわ ち "What to do"さ らに は"Why to do"へ の 能 力 が 必 須 と な り,そ の 生 産 性 は,技 術 者 自身 の 価 値 観 や 仕 事 へ の 意 欲 に 大 き く依 存 す る こ とが 知 られ て い るが,こ れ に対 応 す る た め に は,自 律 した 確 た る価 値 観 を 持 ち,か っ多
日本 工 業 教 育 協 会 誌 第42巻 第6号1994.11
様 ・異質 な価値観 ・哲学へ の対応能力 を持 った技術者 が, 従来以上 に求め られて いる。 筆者 は,こ の よ うな人材 の育成 に は従来 の"教 育"か ら,自 主意 欲喚起 を前 提 に自 ら学 び育つ ための素材 と刺 激 の場 を適切 に提 供す る"学 育"へ の重点移 行が最重要 課題 であ ると考 え,企 業 内教 育や大学非常 勤講師等 の体 験 を もとに,欧 米 の教育 との比 較を も加 味 しつつ,今 後 の 企業 内教 育 と学校 教育の在 り方 に関す る見解を述べ る こととした い 。
2.企
業の課題 と求 め る人材像
2.1欧 米 と の対 比 に見 る企 業 の 問 題 点 (1)欧 米 と日本 の職務 分掌の比較 昨今,ISO-9000へ の対応 が 国内各 企業 の重大 な課 題 とな って いるが,最 大 の問題 は,TQC(総 合 的品質 管 理)に代 表 され る 日本の組織 集団 主義 と,第 三者 認 定至上 に見 られ る欧米の個別客 観化主義 との体質 的差 異の融和 ・相互理 解が図れ るか否か にあ る。図1は 欧 米 と日本 の職務分掌 の特徴 の比 較説明図 である。欧米 では職務 分掌が厳 し く規定 されていて,当 該担 当者の 権 限 と責 任が 明確 であ り,分 掌範 囲を逸脱 する ことが 罪 悪 とす ら見 な され るの に対 して,日 本 では職 務分掌 がか な りあ いま いで,む しろ重複/欠 落領域 を関係 者 の創意 に よ り調整 ・補 てん して総 合力を発揮 させ ると ころに特 徴が ある といえ る。 図1.欧 米 と 日本 の 職 務 分 掌 の 特 徴 の比 較 (2)企業 にお け る組織 一個人活動 の問題点 日本企業 におけ る上 記の あいまいかつ重複の ある職 務 分掌 の在 り方 は,今 後の組織 一個 人の活動形態 の在 り方を考え る上で,運 営次第で は新 しい可能性を示唆 す るもの と して注 目され るが,同 時 に,以 下に述べ る よ うな根本的 な問題点 を も含んで いる。 (1)設 定 目標 の 実 行 段 階(生 産/品 管,How to do)で は 総 合 力 を 発 揮 で き る が,目 標 設 定 の 段 階(新 概 念 創 出/新 製 品 開 発,What to do)で は,同 質 集 団 へ の 帰 属 的 意 識 の ゆ え に 異 質 を 包 含 した 斬 新 な発 想 が 出 に くい 。 (2)独特 の夢,価 値 観 を持 った 高 い専 門性 を有 す る 異種 ・異能 な 自律的人材が育 ちに くい。 (3)業 務の責任 と権限 の所在が 本質的 にあ い まいであ り,状 況変化 への抜本的対応 の機 動力 に欠 け る。 2.2今 後 の 日本 企 業 の 組 織 ・運 営 像 一 橋 大 学 の 野 中教 授 は前 節 に述 べ た 問 題 点 へ の対 応 も 含 め て,今 後 の 日本 企 業 の 組 織 形 態 は 階 層 型 管 理 組 織 一 辺 倒 か ら,職 能 横 断 型 プ ロ ジ ェ ク ト組 織 との 併 存 へ の移 行 が 望 ま しい と主 張 して い る(2)。 前 者 は 本 格 的 事 業 化 以 降 の 固 定 的 組 織 で,ラ イ ンマ ネ ー ジ ャ と して 組 織 資源 の 効 率 的 活 用 の 管 理 ・統 制 能 力 に た け た 人 材 が,ま た後 者 は新 製 品(H/W,S/W)の 概 念 構 築 ま で の 流 動 的 組 織 で,リ ー ダ と して メ ンバ(知 的 専 門 職)の 自律 的 活 動,能 力 発 揮 の サ ー ビス,調 整 役 が お の お の必 要 で あ り,両 者 間 の 自在 転 換 の 仕 組 みが 重要 で あ る と して い る。 筆 者 は基 本 的 に は上 記 主 張 に 同 調 す る立 場 を 取 って お り,日 本 に お け る ラ イ ン主 導 の 行 き過 ぎ た 同 質 的 効 率 主 義 が,知 的 専 門 職 の 自律 性 と創 造 性 の 育 成/発 揮 を 停 滞 さ せ て い る と考 え て い る 。 また 第1章 に述 べ た"What to do",す な わ ちH/Wの 新 製 品 概 念 構 築 段 階 お よ びS/ W,シ ス テ ム分 野 に適 した職 能横 断 型 プ ロ ジ ェク ト組 織 の 創 造 性 ・効 率 性 の 追 求 に 向 け て,集 団 主 義 と個 人 主 義 お の お の の 長 所 を取 り入 れ た下 記 の よ うな 日本 的運 営 一 自 律 的(Autonomous)な 分 散(De-centrlzation)/統 合(lntegration)形 態 一が あ り得 る と考 え て い る。 具 体 的 に は, (1)例 え ば 図1の 職 掌IIに お い て,担 当Bの 主 導 ・決 定 の 下,重 複 部 分 の 責任 ・権 限 の 事 前 配分 を 前 提 に A,Cが 参 画 し,高 い 専 門 性 の 発 揮 と関 連 部 門 との 調 和 とを 実 現 す る こ と。 (2)集 団 の 刺 激 を 利 用 して,全 体 と調 和 した 質 の 高 い 知 識 創 造 を 実 現 す る こと 。具 体 的 に は異 分 野 間 の 討 論 等 に よ り,個 人 の 語 れ な い領 域 の 知 識 一 暗 黙 知 (Tacit knowledge)を 言 語 的 形 式 知(Articulable Knowledge)化 して,調 和 あ る個 人 知 識 と組 織 知 識 の 創 出 を 図 る こ と。 で あ り,欧 米 流 の組 織 ・運 営 を 理 性 的 な"科 学 的"創 造 と い うな らば,こ れ は 感 性 的 側 面 を加 味 した"総 学 的" 創 造 と もい え る もの で あ る。 こ こで 創 造 性 とは,技 術 を 日 本工 業 教 育 協 会誌 第42巻 第6号1994.11 22駆 使 して新 規 性 を 創 出 す る"知 恵"だ け で な く,社 会/ 組織 運 営 の 合 理 性 等 を 深 化 す る"智 慧"を も含 む こ とを 断 って お き た い 。 2.3企 業 が 求 め る 人 材 像 以 上 に 述 べ た組 織 ・運 営 を 実 現 す る上 で,今 後 企 業 が 強 く求 め るで あ ろ う 「個 」 と 「調 和 」 あ る「Holon」 型 人 材(丁 型,π 型 人 材)の モ デ ル を 図2に 示 す 。 こ こ で 「Holon」型 と は,Hol(全 体,ゼ ネ ラ リス ト)とOn(部 分 ス ペ シ ャ リス ト)を併 せ 持 っ た 人 材 と の 意 味 で,逆 T型 の 縦 線 はOn-専 門 能 力 の 高 さを,横 線 はHol-能 力 分 野 の広 さを お の お の 示 す が,こ の モ デ ル は 今 後 企 業 人 と して(1)専 門 職,(2)プ ロ ジ ェ ク トリー ダ,(3)ラ イ ン マ ネ ー ジ ャ,い ず れ の エ キ ス パ ー トに な るた め に も必 須 の 条 件 を示 す もの で あ る と考 え る。・ 図2.「 個 」 と 「調 和 」 あ る 「Holon」 型 技術者 の モ デ ル 図 中 の 太 線 枠 の 小 さ な逆T型 は 主 に 学 業/仕 事 を 通 じ て 得 られ た保 有 能 力 で,こ れ が"How to do"を ベ ー ス に これ まで 日本 の高 度 成 長 を支 え て き たが,と くに 知 識 量 よ り も思 考 力 に重 点 を 置 い た専 門 基 礎 技 術 力 が 重 要 で あ る と考 え る 。 これ に 対 し,今 後 重 要 にな る"What to do"の た め の 人 材 を 育 成 す る上 で 筆 者 が と くに 強 調 し た い こ とは,遊 びや 仕 事 等 に お け る 自然,人 間 との 異 質 ・高 質 の 接触 体 験 を 通 じて 幅 広 い暗 黙 知 を 吸 収 し,感 性 を メ モ化 ・体 系 化 す る こ との 重 要 性 で あ り,こ れ に よ り 獲 得 した 自己把 握 ・自 己知 識 は,問 題 意 識 ・意 欲 ・創 造 力 の 源 泉 一発 揮 能 カ ー と して,新 ニ ー ズ の追 究,新 発 想 創 出 の トリガ ー とな る もの と考 え る 。 これ に は,論 理 的 な思 考,記 述,発 表,討 論 能 力 が 極 め て重 要 で あ る こ と を 付 記 して お きた い 。 以 上 に述 べ た能 力 向 上 は 単 に 業 務 能 力 の 向上 の み な ら ず,仕 事 を通 じた 自 己実 現 の 形 で,企 業 一 辺 倒 生 活 か ら 脱 皮 した 個 人 と企 業 の 新 しい関 係 作 りの 原 動 力 に もな る もの と考 え られ る 。 3."教 育"か ら"学 育"へ の 重 点 移 行 本 章 で は,以 上 に述 べ た 多 様 な 知 的 生 産 活 動 に対 応 し 得 る,「 個 」 と 「調和 」 あ る 「Holon」 型 技 術 者 の育 成 に必 須 で あ る"学 育"に 関 す る考 え 方 を述 べ る。 3.1"学 育" 学 び育 つ素材 と場 の提 供 今 後 あ る べ き"what to do"実 現 の た め の 人 材 育 成 法 を"学 育"と して,次 の よ うに 整 理 して み た 。 従 来 の"教 育"を 「指 導 者(主 語)が 必 要 な 知 識 ・ス キ ル ・信 条 お よ び 態 度 を"教 え""育 て る"こ と 一教 示, 指 示,Teaching-」 と規 定 す る な ら,"学 育"と は 「学 習者(主 語)が"学 び""育 つ"Learningの た め の "素 材"と"場"を 提 供 す る こと 一支援,コ ー チ −」 と 規 定 で き る。 こ こで"学 ぶ"と は,.自 律 的 意 欲 に よ り知 識 ・ス キ ル ・現 物 ・概 念等 の"素 材"を 自 己 に合 った 形 で そ しゃ く,吸 収 す る こ と,ま た"育 つ"と は,知 識 ・ 現 物 等 の 素 材 との 接 触 指 導 者 一受 講 生,受 講 生 相 互 の 交 流 とい った"刺 激 の 場"の 提 供 を べ ー ス に,彼 ら 自身 の 自律 的 意 欲 に よ り,態 度 ・行 動 が 変 容 す る こ と と規 定 で き る 。 具体 的 に は"素 材"と して は,例 え ば 専 門 技 術 の 意 義 と歴 史,実 社 会 で の応 用 展 開 の 夢,今 後 の 公 的 資 格 取 得 の 重 要 性 等 の 提 示 と,論 理 的 思 考 ・記 述 ・表 示 ・ 討 論 の 手 法 知 識 付 与 ・体 得 等 が,また"場"と して は, 例 え ば 現 場 ・異 種 環境 との 接 触 の機 会,異 分 野 人 材 との 討 論 の 機 会 等 が あ る。 な お,実 施 す る上 で 最 も重 要 な こ とは,"設 問 や正 解 が 既 存 す る の で は な い"と の 立場 に 立 って 彼 ら自身 に考 え させ,自 主 的 に実 行 さ せ る とい う 姿 勢 を 貫 くこ とで あ る 。 この よ うに"学 育"で は,い か に して学 生 ・技 術 者 の 自律 的 意 欲 を 喚 起 す る か が 重 要 な ポ イ ン トで あ り,こ れ が 創 造 性 の 原 点 で もあ るが,こ こで 筆 者 が 意 図 す る意 欲 喚 起 とは,彼 らが 生 ま れ な が らに 持 って い る 潜 在 的 自主 性 を 尊 重 し,彼 らが 自 ら考 え,気 付 く た め の"素 材 と 場"を 提 供 す る こ と に よ り,教 育 の 究 極 の 目 的 た る"態 度 ・行 動 の 変 容"を 促 す もの で あ り,特 定 の 主 張 ・価 値 観 を強 制 す る他 律 的 意 欲 喚 起 を 意 味 す る もの で は な い 。 以 上 に述 べ た 筆 者 の 経 験 に も とづ く主 張 と類 似 の 内 容 は,20年 以 上 も前 か ら繰 り返 し主 張 さ れ続 け て い るが(4), 自律 ・創 造 的 人 材 の 育 成 が 喫 緊 の課 題 と な りつ つ あ る今, な に ゆえ これが 実 現 され な いの か を 明確 に し早 急 に具 体 策 を 講 じる必 要 が あ る と考 え て い る 。 日本 工 業 教育 協 会 誌 第42巻 第6号1994.11 23
図3."学 育"の 考 え 方 と指 導 者 の 役 割 の基 本 的 モ デ ル 3.2"学 育"に お け る指 導 者(講 師 ・上 長)の 役 割 以 上 に 述 べ た"学 育"を 実 行 す る上 で の 指 導 者(講 師 ・上 長)の 役 割 を 図3に 示 す が ,基 本 的 に は個 々 の 学 習 者 の 状 態(資 質 一 と くに 長 所 一,能 力,意 欲)を 的 確 に把 握 し,能 力,意 欲 が 長 所 の方 向 に 向 か うよ う,そ れ に応 じた"素 材"と"刺 激 の 場"を 相 手 の 状 態 変 化 に 合 わ せ て適 応 制 御 しつ つ 提 供 す る こ とで あ る。 こ こで,資 質 と は,先 天 ・早 期 後 天 因 子 に も と づ く基 本 特 性,能 力 と は 現 在 の知 識 ・思 考 力 ・体 現 力 ・感 応 力,意 欲 と は生 活 姿 勢 ・価 値 観 ・問 題 意 識 等 で あ るが,と くに 資 質 の 長 所 を ほ め}体 験 を 通 じて 自覚 させ る こ とが 極 め て 重要 で あ る。 これ に 関 して 筆 者 は,ハ ン グ リーで な い今 の若 者 に対 し て は 「自分 の 長 所 は 何 か 」 「何 を 本 気 で や りた い か 」 「自分 に と って 学 業 ・仕 事 とは 何 か 」 を 考 え る"素 材 と 場"を 提 供 す る こ とが 最 も効 果 的 で あ る と考 え て い る 。 これ は,彼 らが 自 己把 握 の 重 要 性 に 気 付 く と,自 らの 意 識 ・意 欲 で 自 らを長 所 の 方 向 に方 向 付 け す る よ うに な る か らで あ る。 と くに企 業 の 指 導 者 の 場 合 は,業 績 面 だ け で な く部 下 の 中 長 期 的 育 成 の 視 点 か ら も,部 下 の 長 所 の 方 向 に業 務 指 定(Job Assignment)す る こ とが ま す ます 重 要 にな って く る。 つ ぎ に指 導 者 に必 要 な 能 力(広 義)に つ い て 考 え る と, 基 本 的 に は,先 に述 べ た学 習 者 の 状 態 の把 握 力 と"素 材 お よ び刺 激 の場"提 供 の 適 応 制 御 力,そ して 何 よ り重 要 な の は"学 育"に か け る意 識 と意 欲 お よ び そ れ に も とづ く創 造 性 で あ る と考 え る 。 と くに企 業 の指 導 者 に は ,社 会 構 造 の 変 化 に 対 応 で き る 自 己の 役 割 対 応 の 変革 パ ラ ダ イ ム の構 築 と提 示,お よ び関 係 者 の 状 態 に応 じた素 材 , 場 の提供(権限移譲)へ の創造性が ます ます要求 され るで あろ う。 ただ し,指 導者 に も特性上 の得手不 得手があ るゆえ, 以上 に述 べた"学 育"の 全役割 を必ず しも全指導者が や れ る必要 はない と考え るが,学 習者 の各成長 段階 に対応 した意欲喚起 に対 す る自己の役割 の認識 と具体 的方策の 実施 は,全 指導者 に不可欠の条件で あ ると考 えてい る。 3.3"学 育"を 実施 す る うえ での 課 題 "学 育"を 実 施 す る うえ で の 問 題 点 お よ び 課 題 に つ い て はす で に一 部 報 告 して お り,そ の 詳 細 につ い て は対 応 の あ り方 と併 せ て 後 日投 稿 の 予 定 で あ るの で, こ こで は 要 点 の み を 記述 す る こ と と した い 。 (1)学 習者 にお ける現状 の課 題 幼 少 時 か ら高 校 まで の知 識 偏 重 の 受 験 勉 強 が 思 考 と 体 験 の 芽 を摘 む こ と,お よ び 自主 的 高 等 教 育 た るべ き 大 学 教 育 も知 識 の 一 方 向伝 達 ・付 与 の 旧 態 依 然 で あ る こと等 の 結 果 と して,無 目的 ・受 身 ・低 思 考 ・自主 意 欲 欠 如 ・体 験 不 足 と い っ た,今 後 目 指 す べ き 「Holon」 型 技 術 者 像 とは 正 反 対 の 重 大 な 問 題 点 を 呈 示 して い る と考 え られ る。 これ に 対 して 筆 者 は 下記2点 が 課 題 で あ る と考 え る。 (1)自 己 の 長 所,や りた い こ とを 自覚 し,今 の 学 業, 仕 事 を そ れ との 関 連 で 納 得 の うえ,自 ら説 明 で き る こ と。 (2)自己主張 の要約 記述 ・発表,お よび本音か つ論理 的 な討論 がで きるこ と。 (2)指導者 におけ る現状の課題 指導 者の今後 へ向 けての問題点 と課 題 は,下 記2点 日本 工 業 教 育 協 会 誌 第42巻 第6号1994.71 24
に要約 で きると考え る。 (1)自 らの役割 を研 究者(学者)・技術者 としてのみ位 置付 け,人 材育成指 導者 とは位 置付 けない傾向が強 いこ と。 これ には研究 ・技術開 発のみ な らず人材育 成への貢献 が,正 当に評価 され るシステムが必 要。 (2)わ れ わ れ 大 半 の 指 導 者 が いお ゆ る"教 育"で 育 っ て き た た め,"学 育"に 対 す る能 力 ・体 質 が 身 に付 い て い な い こ と 一 と くに 自 己の 実 績 へ の 自負 ・執 着 が 強 い指 導 者 ほ ど"学 育"の 実 践 に 不 適 当 とい う現 実 一。 これ に は"学 育"技 術 の 開 発,指 導 者 の” 学 育"能 力 ・意 欲 向 上 の た め の 習 得 施 策 が 課 題 で あ る。 これ は組 織 能 力 開 発(Organization Development) の 観 点 か ら も極 め て 重 要 な 課 題 で あ り,関 連 して講 師 と上 長 が 協 同 で 行 うOff-JT/OJT連 携 方 式 が, 企 業 な らで は の 人 材 育 成 と して 意 欲 の 継 続 性 の 観 点 か ら今 後 重 祝 され るべ きで あ る。 4.結 言