伝統は革新の上に建つ ! –JSPENの過去と現在から未来を想う–
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(2) およそ8,000施設まで減少している。さらに、これまでのわが国 の医療の発展とともに人々が最後の時を過ごす場所が自宅か. JSPEN・歴史探訪:過去から現在へ. ら医療施設へと大きく変遷しており、いったい誰が高齢家族. それではまず、2001年のNSTプロジェクトの発足を経て、法人. の介護や看取りをするのか、またそれにかかる経費をどのよう. 化直前の2012年までの本学会の歴史を振り返ってみたい。単に. に捻出するのかなど人生100年時代を迎えるに際して多大な. 歴史を探訪するというものではなく、その時々になぜ、どのように. 問題点が指摘されている2)。そこでその対策として、私たちは. 本学会が動いてきたかを見つめながら真の姿を紹介したい。. 以前より、栄養状態の改善による診療成績の向上と、在宅移. すべては1968年のStanley J. Dudrick教授らによる中心. 行を含む地域医療連携の充実や地域完結型医療の推進な. 静脈栄養(TPN) の開発に始まる7)。このTPNの開発はこれ. どを提案し、栄養管理をわが国の社会福祉・医療体制の基. までの栄養管理の在り方を一変した8)。米国はもちろんのこと. 盤とすべく努力してきた3)。具体的には、 ①栄養サポートチーム (nutrition support team;NST) による急性期医療の治療 成績向上と効率化、②地域一体型NSTによる慢性期医療か. 欧州、アジア、南米など世界中の国々で医療改革が起こった。 わが国日本は、これら世界各国に先立つ1970年には東北大 学葛西森夫教授らによって完全静脈栄養研究会を発足させ、. ら地域医療への流通性の向上、③栄養管理を基盤とした地. これが日本静脈経腸栄養学会(JSPEN) の基を築いた。ちょ. 域連携での在宅医療の体系づけ、④食と命に関する倫理的. うどその頃、1969年7月24日にアポロ11号による人類初の月面. および医学的展開、⑤高齢者を中心とした地域全体の食力. 着陸が行われ、宇宙旅行や宇宙での生活に人々の関心が. 増進とサルコペニア (骨格筋量の減少)予防など多くの試みを. 向けられた。その中で無残渣の成分栄養剤開発が報じられ、. 開始している。すなわち、先に述べたわが国の将来の危惧を. 経腸栄養の分野が一気に注目を集めることになった。そして. 払拭するためには、やはり人(ヒト) は食べて生きる生物なので、. 1977年、千葉大学の佐藤 博教授らが成分栄養研究会を設. 基本として「食」あるいは「栄養管理」がキーワードとなる。本. 立。それぞれ第1回の集会が開催された。これらが私達の学. 学会の目的であり、果たさなければならない事案として “栄養. 会JSPENの最初の湧き水である。この湧き水から溢れ出る2. 管理をとおして人々を幸せにする”がある。この先のわが国の. 筋の流れが1本となり、1985年に大阪大学 岡田 正教授が会. 在り方をみるに、栄養摂取や栄養補給の基盤が確立していな. 長を務められ第29回完全静脈栄養研究会と第4回経腸栄養. いと、いかなる医療・福祉も足元をすくわれることになることは. 研究会が合同開催された。そして同年、東京慈恵会医科大. 明らかであり、まずは基本を成立させようとする医学的あるい. 学長尾房大教授が初代代表世話人となり完全静脈栄養研. は社会的なアプローチが必要である。その意味で、1998年に. 究会と経腸栄養研究会を一本化、日本静脈・経腸栄養研究. 全科型NSTが厚生連鈴鹿中央総合病院(病床数:500床) に. 会が発足した (図1)。当然、ここに至るまでにも多くの苦難とそ. 誕生した意義は大きく、それを本学会の主軸に据えた小越章. れに打ちかつ努力がなされてきたことは言うまでも無い。筆者. 平初代理事長の先見の明は、素晴らしいものであった3)~5)。. は、 1981年に医学部を卒業し、 同時に肝胆膵外科領域を中心 とする代謝栄養学の研究を開始した。その頃は周りに代謝栄 養学を研究されている先輩は臨床の場にはほとんどおられず、 基礎研究の講座で教えを請うしかなかった。しかし、このこと. 図1 Legends of JSPEN(1). 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.34 No.5 2019 (321).
(3) 図2 Legends of JSPEN(2). が後日基礎研究に興味を抱くようになった原因でもあった。今、. 全科型NSTを立ち上げ、1年かけてNST発足の有用性を実. 懐かしく想うのは、1980年代後半に新潟であった学会の際に、. 証した歳であった9)10)。. 武藤輝一先生と小山 眞先生をトイレで待ち受けて、持参した. 1999年、学会となり初の学術集会である第14回日本静. CTとUSを診ていただき、自分の栄養療法に対する考えが正. 脈経腸栄養学会が、三重県四日市市で桑名市民病院院. しいか否かをご教示いただいたことがあった。この際はきっと. 長 入山圭二先生を大会長として開催された。この時のシ. 必死だったのだと思うが、第一線で活躍されている著明な先. ンポジウムにてPPMを用いた全 科 型NSTの 効 果を大々. 生にご意見を賜るなど大それた事をよくやれたなぁと自分の無. 的に発表させていただいた。この発表の内容を簡単に概. 茶苦茶ぶりが思い返される。日本静脈・経腸栄養研究会は発. 説 すると、全 科 型NSTを立ち上 げ、入 院 患 者 す べての. 足とともに筆者はすぐに会員となった。この学会には栄養管理. 栄養アセスメント行い、抽出された症例の栄養サポートを. に携わるすべての先生方やメディカルスタッフがおられ、早くか. 入院から退院まで、そして退院時には、退院後の患者の. ら医師だけでなく一緒に栄養管理を実践する仲間を求め、そ. 生活あるいは療養状況に合わせた栄養指導まで行う10)。. して育成していた。1986年には第1回コメディカルのための教. このNST稼働開始後1年の間は、医療改善に関わる他の新. 育セミナーが開催され、翌年、私もこのセミナーを受講したこと. たな試みを極力しない。その結果、在院日数が5日ほど削減さ. を覚えている。そこには職種は違えども同じものを求めている. れ、院内感染、術後合併症、褥瘡発生などが有意に減少し. 仲間がいた。こんなに嬉しいことはなかった。そうして学会で. た。最終的には、年間1億4000万円の収益増をもたらした9)10)。. の発表を楽しむことができた。特に当時の学術集会の抄録集. この成績には筆者自身が驚いた。実際に、このNSTのトライ. は、各抄録が2~4ページで、対象と方法、結果、考察、参考. アルの成績は医療事務の担当者に任せてあり、実際の効果. 文献と、いわゆる論文と同じ書式であった。このことは後日、研. は開始して6ヶ月経つまでだれも知らなかった。また、最終的. 究の計画や論文の作成における考えをまとめる際に、大きく役. な成績のまとめもNST実施者や当事者は一切関知せず、ほ. 立ったように思う。そして、1994年には、第二代目代表世話人. ぼ完全なブラインドでの臨床実証となった。当時は、まだチー. に東北大学の森 昌造教授がなられた。森先生、岡田先生と. ム医療と言う言葉も多くの医療人は認知しておらず、医療の. 小越先生にはこの頃、栄養関連学会だけでなく、日本外科学. 評価に経済を持ち込んだのも初めてであった。そのため、当. 会や日本消化器外科学会などでも本当に沢山のことを教えて. 初はかなり避難を受けた。同年の日本外科学会や日本消化. いただいた。当時から皆さんすべて、優しくて、私に聞く勇気. 器外科学会で発表した際には、医学に金を持ち込むなどもっ. さえあれば、どなたもまるで家庭教師のように気楽にかつ熱心. てのほか !と、有名な司会者から罵倒されたこともあった。し. に教えてくださった。今思うと、それが如何に自身の基礎を造. かし、小越章平理事長はこの全科型NST初のトライアルと. るのに役立ったか計り知れない。そして、1998年に日本静脈・. その成績を高く評価し、後日のNSTプロジェクトの立ち上げ. 経腸栄養研究会第三代目の代表世話人に小越章平教授が. に結びついていくことになる。一方、1999年はもう一つ本学. 就任し、その年7月に日本静脈・経腸栄養研究会は突如、日本. 会としては重要な企画が小越理事長より提案された。「龍馬. 静脈経腸栄養学会(JSPEN) となり、初代理事長には小越章. プロジェクト (TNTプロジェクト)」である。米国静脈経腸栄. 平教授が就任した (図2)。先にも述べたが1998年は筆者自身. 養学会(American Society for parenteral and Enteral. にとっても大きな転機となる歳であった。鈴鹿中央総合病院に. Nutrition;以下、A.S.P.E.N.と略) は、南米を中心とした栄. (322). 伝統は革新の上に建つ ! –JSPENの過去と現在から未来を想う –.
(4) 養管理の導入が遅れているあるいは思うようにいっていない. 修修了者となっているが、この数はわが国を除く世界各国で. 国々に対して、医師教育ツールの普及を開始した。同年、本. の修了者の数よりも多いのである。さて、2001年には先に述. 学会から10名の医師がシカゴに渡り、TNTの教育の実践を. べたように「NSTプロジェクト」がスタートした。鈴鹿中央総合. 学びに行くこととなった。チームリーダーは小越理事長であっ. 病院および尾鷲総合病院でのNST活動をベースとしたNST. たが、最年少参加者は筆者であった。そこで学んだ医師教. ガイドラインを作成し、講師派遣なども行って、どこででも誰に. 育の在り方を、わが国にマッチするように変更して全国普及. でもNSTを立ち上げることができるようにした (表1、図3)4)~6)。. のためのTNT教育担当者100名を選抜し、高知にて教育者. しかも評価方法の指導や活動内容のチェックなどを含めたN. 教育を実施した。これがTNTプロジェクトとして全国に広がっ. ST稼働施設認定制度も同時に設立した。その制度の設立と. ていった。現在、24,000名を越える医師が受講し、TNTの研. 教育体制の確立に尽力されたのが、2003年に本学会第二代 理事長に就任された近畿大学の大柳治正教. 表1 わが国独自の NST の設立 -1998 年 -. 授である。まさにこれら多くの試みと努力によっ て、NST稼働認定施設数は急激に増加し、. 1.一貫した栄養管理の提供 経静脈・経腸・経口栄養を一貫して管理. 2008年には1,201施設と、米国の1,200施設に 追いつき追い越す形となった。2018年末には. 2. 高齢化対策 栄養障害だけでなく LOM(likelihood of malnutrition)症例に. 本学会の認定施設だけでも1,327施設を数え、 これらの施設の中には大学病院や地域中核. 対しても栄養療法を実施して、高齢者の合併疾患の発生を予防. 3. 地域一体型 NST の構築 急 性期から慢性期、在宅そして地域福祉施設まで適切な栄養療法を 提供できる体制作り. 拠点病院がすべて含まれている (図4)。NST に関する診療報酬については、いずれもわが 国だけでなく世界でも初となる行政改革であっ た11)。2006年の栄養管理実施加算は、すべて の入院患者の栄養評価とそれに基づく基本的 な栄養管理を設定するもので、後にルーチン化 され入院基本料の一端を占めることになった。 それに続き2010年にはNST回診に基づく診療 報酬がNST加算として算定できるようになった。 しかし、そのためには栄養管理に関する教育 を受けたスタッフの充実・配置や病院としての 栄養管理体制の確立が問われていることも重 要なポイントである。NST稼働による効果につ いては表2にまとめた。NST加算を取得する 前年の2009年、第三代理事長に札幌医科大. 図 3 NSTプロジェクトの発足:2001 年 2 月. 学の平田公一教授が就任した (図5)。2010年 のNST加算は対象が急性期施設だけであり、 2006年の栄養管理実施加算の取得に際し、 本学会と日本外科代謝栄養学会、 日本病態栄 養学会(現在は日本臨床栄養学会も参加)が 中心となり設立した第三者機関日本栄養療法 推進協議会(JCNT) での協議にて、慢性期施 設での算定も可能にして欲しいという要望を受 け、本学会から申請し2012年にはこの算定も 承認された。この時期から本学会の法人化を 推進しようという機運が生まれ、平田理事長が 理事会等をまとめられ、法人化推進のテープを 切られた。そして2012年、その後を受け、第四 代理事長に筆者が就任した。. 図 4 JSPEN・NST 稼働施設認定数の推移. 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.34 No.5 2019 (323).
(5) 表 2 わが国における NST 普及の効果. 1. 中心静脈栄養(TPN) の適応の遵守: ① TPN 実施数の減少、②末梢静脈栄養(PPN) の増加 2.栄養投与ルートの選択基準の設定: ① 経腸、経口栄養増加、②経腸・経口栄養へ早期移行 3.経腸栄養の有用性の浸透と長期絶食の回避: 早期/超早期経口・経腸栄養の実施 4.輸液・経腸栄養ルートの安全性の向上: ①クローズドシステム、②誤接続防止システム普及. ③ PICC (末梢挿入型中心静脈カテーテル) の導入 5.必要エネルギーの算出と実施: ①エネルギー欠乏減少、②エネルギー過剰投与への警鐘、③ダイエット治療基盤確立 6.各種栄養素の適正投与法の確立:プランニングの実施→各種欠乏症の減少 7.集中治療室から始まる栄養管理の実践 8.高齢者および likelihood of malnutrition (LOM) 症例に対する詳細な栄養管理の実施 9.口腔ケアの実施と摂食・嚥下機能の回復促進 10.食べるために PEG (経皮内視鏡下胃瘻造設術) の実施 11.褥瘡および院内感染症の発生予防と治療法の確立 (immunonutrition の導入を含む) 12.がん治療における栄養管理の重視: ①組織修復の促進、身体機能の回復を目指した栄養サポートの実施 ②終末期患者に対する適正栄養管理の提供 13.治療効果の向上による在院日数の短縮: ①急性期における栄養管理法の確立 ②在宅栄養サポート体制 (地域一体型 NST など) の構築 14.医療経済効果を加味した栄養管理の実施 15.医療における栄養管理の評価を確立 (栄養管理実施加算、NST チーム活動加算の新設). 静脈経腸栄養学会が誕生した (図6)。この法人 化によって本学会が実施してきた各種教育・研 修会、認定医・指導医・認定歯科医、NST専 門療法士、NST教育認定施設、NST稼働施設 認定施設などの医療の質を担保する評価機構 や資格承認制度は、すべて社会から求められる 根拠となった。さて、法人化ができると次にやるべ き事として本学会の活動の可視化であった。はっ きり言ってこの時期の本学会は、NST実施施設 数の膨大と会員数の爆発的増加によって基礎工 事のされていない高層ビルのようでとても危うく見 えたのは筆者だけではなかったと思う。ここで国 内外での本学会の立ち位置を明確とし、国内で は官公庁をはじめとする政府機関から、本学会 は栄養療法や栄養管理の殿堂であることを認識. 図 5 Former and Present Chairman of JSPEN. していただき、海外では本学会の活動を目の当 たりにさせて、その医学的レベルの高さとしっかり. 現況:内固外進とみんなのJSPENの意義. とした土台を持った機関であるとともに、適切な栄養管理法. これまでの活動でわが国の診療報酬はかなり栄養療法や. や栄養療法の圧倒的な普及力を有することを見せつけ、認. 栄養管理の重要性を前面に掲げたものに変わった。次を目指. 識させることが大切であった。筆者は、2009~2010年頃改め. すには足下を固める必要があった。それが法人化である。社. てA.S.P.E.N.や欧州静脈経腸栄養学会(現 欧州臨床栄養. 会に認められる人格を獲得するには法人化するしかない (銀. 代謝学会:The European Society for Clinical Nutrition. 行などの金融関連省庁や官公庁では法人化していない学. and Metabolism;ESPEN) そしてアジア静脈経腸栄養学. 会の場合には、ただの仲の良い集団という扱いとなる)。お. 会(Parenteral and Enteral Nutrition Society of Asia;. よそ1年6ヶ月間の法務、財務的書類や規約の整理とその実. PENSA) に参加し、彼らの学会活動を解析してみた。彼ら. 践、さらには顧問弁護士や公認会計士と何度も何度も討議し. も未だ国内、学会内部にいた。アジアはかつてA.S.P.E.N.中. て、2013年に1万9,000名(当時) を擁する一般社団法人日本. 心の方向性を示していたが、2008~2009年に急激に台頭し. (324). 伝統は革新の上に建つ ! –JSPENの過去と現在から未来を想う –.
(6) 年に理事長を拝命した際に、すぐさま「外進クラ ブ」という海外発表をする際の相互支援となる プラットホームを造った。JSPEN会員が海外で 対等に、あるいは対等以上に発表でき、討論 できる環境を造りたかったのである。同時にこ れまでのESPENの学術集会時に開かれてい たものを「ESPEN-JSPEN Council Meeting」 として、両学会のofficial meetingとし、これま でclosedで行われていたものを、国際委員お よび理事の皆さん全員にご参加いただけるよう にした。さらにA.S.P.E.N.とも「ASPEN-JSPEN Council Meeting」として、同様の関係を持つ こととなった。2013〜2015年にはPENSAの理. 図 6 一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会会員数の推移. 事長の席を獲得して、PENSA 2015を名古屋. てきたESPENの勢いに飲み込まれようとしていた。少なくとも. で開催することができた。これによってJSPENの世界におけ. 筆者の眼にはそのように映っていた。しかし、その時、すでに. る立ち位置は確立され、その流れは国内へと逆流した。厚. 13,000名の会員を有し、NST稼働認定施設が1,200を超えて. 労省をはじめとする官公庁から、日本の栄養療法に関する各. いたJSPENのことを知っていた人はほとんどいなかった。日本. 種事項に対してJSPENへ答申をかけていただけるようになっ. やJSPENなどを誰も意識していなかったように思われた。こ. た (しかし、学会名称による障壁は未だ存在した)。医師国家. のような状況では国内でいくら頑張って世界最大の学会だと. 試験の出題基準も大きく変わり、食事指導程度であった出題. 言い張っても何の意味も無い。ましてや診療報酬への影響は. 項目が、NSTを含む静脈、経腸、経口栄養療法など栄養管. 皆無であった。そこで、2011年には企業の方々の多大なご. 理に関する出題が大幅に増加している。このことは本学会の. 協力によって、第26回日本静脈経腸栄養学会(於:名古屋. 国内での立ち位置を診療だけでなく医学全般へと大きく押し. 国際会議場) を担当させていただき、当時では過去最大の. 出すことになるとともに、卒前教育の在り方を変化させることに. 16名の講師を海外から招聘させていただいた。その際には. なる。このように「内固外進」、すなわち内を固めるには外に進. ESPEN、A.S.P.E.N.、PENSAの重鎮達を選択的に招聘し、. む事が大切で、内を固めれば次に外へ進むための基盤が固. 12). 参加者1万人を超えるJSPENの凄さを見せつけたかった 。 多少のご批判もいただいたが、革新無きところに伝統は育た ない!という、言葉が耳から離れず考えに考えたあげくの策で あった。案の定、海外からもの凄い反応が返ってきた。2012 表3 JSPEN 教育ガイダンス・2018. A. 医師・歯科医師. 1. ベーシック ① TNT 研修会 ② NST 医師・歯科医師のための教育セミナー 2. アドバンス ③ LLLライブセミナー ④栄養マスターコース. 表 4 臨床栄養専門療法士制度・全9領域開設 -NST 専門療法士資格の上部資格制度:2018 年 -. ①がん専門療法士. ⑥在宅専門療法士. ②肺疾患専門療法士. ⑦小児領域専門療法士. ③肝疾患専門療法士. ⑧摂食・嚥下専門療法士. ④腎疾患専門療法士. ⑨周術期・救急集中治療 専門療法士. ⑤リハビリテーション 専門療法士. B. 臨床栄養スタッフ. 1. ベーシック ① N STベーシックコース セミナー:三部会合同セミナー ② NST 専門療法士受験必須セミナー ③ NST 専門療法士更新必須セミナー 2. アドバンス ④ NST 実力向上セミナー:三部会個別セミナー ⑤ LLLライブセミナー ⑥栄養マスターコース. 図7 新時代の栄養療法を築くために. 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.34 No.5 2019 (325).
(7) 図8 GLIM Criteria 2018- 低栄養の新しい診断基準 -. まるのである。もちろん、国内的には数多くの内固 を行わねばならない。革新に次ぐ革新である。① 法規の確立(法人としての定款と細則ならびに各 種規約の整備) 、②法人化の可視化(定款・規約 に関する対応法の整備・周知) 、③法人としての 倫理の確定、④財務体制の強化と修正、⑤会員 管理法の整備・確立、⑥事務局体制との運営法 の確立、⑦学術集会開催の方向性や運営方法の 改新と一元化(paperless化) 、⑧代議員会・学術 評議員の立場・役割の確立、⑨理事会・社員総 会・各種委員会における会議の見直しと改革、⑩ 各種事業のoutcomeと財務状況の見直し、⑪事 業項目と実施体制改革(委員会・ワーキンググルー. 図 9 新時代の栄養療法を築くために. プとワーキングチーム:WT001-009とプロジェクト: P001-003の新体制) 、⑫NST活性化による地域一体型栄養. ⑳ガイドライン国際化へのコラボレーション、㉑日本医学会へ. 療法の確立、⑬栄養療法教育ガイダンスの設定(医師・歯. の加入(2017年承認取得) 、㉒10支部会から8支部会への改. 科医;BASIC/ADVANCE、メディカルスタッフ;BASIC/. 新、㉓すべての業務改革による年会費の変更(一律−1,000. ADVANCE:表3) 、⑭医師・歯科医教育セミナー(TNTを含. 円の実施:図7) 、㉔学会名の改名(図9) :一般社団法人 日. む) の改新、⑮臨床栄養代謝専門療法士制度の設立(表4) 、. 本静脈経腸栄養学会から一般社団法人 日本臨床栄養代謝. ⑯栄養療法を専門とするスーパースタッフの育成(マスター. 学会へ(JSPENの呼称は理念として継続) など、枚挙に暇が. ズコース設置) 、⑰e-journal 「JSPEN」創刊と学会誌のオン. 無いほどの革新と変革の連続である (表5)。しかし、これらの. ラインジャーナル化(図7) 、⑱本学会のオフィシャル英文誌. 改革や革新はわずかな人数でできるものではなく、むしろでき. Annals of Nutrition and Metabolismの取得、⑲栄養評価. るだけ多くの人達でやるべき事である。私達の先祖であるホ. の世界統一企画GLIM(Global Leadership Initiative on. モサピエンスは、肉体的には劣りながらも、ともに知識や技術を. Malnutrition)への参入とGLIM Criteriaの確立(図8)13)14)、. シェアしつつ共同・協働生活を行うことで生き延びてきたそうで. (326). 伝統は革新の上に建つ ! –JSPENの過去と現在から未来を想う –.
(8) 表5 新時代の栄養療法を築くために:2012-2019. ①法規の確立 (法人としての定款と細則ならびに各種規約の整備) ②法人化の可視化 (定款・規約に関する対応法の整備・周知) ③法人としての倫理の確定 ④財務体制の強化と修正 ⑤会員管理法の整備・確立 ⑥事務局体制との運営法の確立 ⑦学術集会開催の方向性や運営方法の改新と一元化 (paperless 化) ⑧代議員会・学術評議員の立場・役割の確立 ⑨理事会・社員総会・各種委員会における会議の見直しと改革 ⑩各種事業の outcome と財務状況の見直し (委員会・ワーキンググループとワーキングチーム:WT001-009 とプロジェクト:P001-003 の新体制) ⑪事業項目と実施体制改革 ⑫ NST 活性化による地域一体型栄養療法の確立 ⑬栄養療法教育ガイダンスの設定 (Basic & Advance Courses/Master Course 設置) ⑭医師・歯科医教育セミナー (TNT を含む) の改新 ⑮臨床栄養代謝専門療法士制度の設立 ⑯栄養療法を専門とするスーパースタッフの育成 (マスターズコース設置) ⑰ e-journal 「JSPEN」 創刊と学会誌のオンラインジャーナル化 ⑱英文誌 Annals of Nutrition and Metabolism のオフィシャルジャーナル化 ⑲栄養評価の世界統一企画 GLIM (Global Leadership Initiative on Malnutrition)への参入と GLIM Criteria の確立 ⑳ガイドライン国際化へのコラボレーション ㉑日本医学会への加入 ㉒10 支部会から 8 支部会への改新 ㉓すべての業務改革による年会費の変更 (一律−1,000 円の実施) ㉔学会名の改名:一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会から一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会へ (JSPEN の呼称は理念として継続) など. ある。このことは人類の歴史上最も大切な生き方を示している。. わが国にはいる。しっかりと存在するのである。ここに至るまで. 「みんなのJSPEN」には、人は一人では生きていけず、様々な. には多くの改革と革新があった。その先、未来には何がある. 意見や思い、そして知識・技術を共に共有できるチームをみん. のだろう。筆者がひしひしと日々感じるものは、「世界に誇れる. なで造っていこうという思いが込められている。まさに、ちょうど. JSPENの伝統」を守るのではなく、造るのである。そのために. 2019年のラグビーワールドカップで燃え上がり、今年の言葉と. は、まだまだ立ち止まっては要られない。100年未来のわが国. なった「One Team」のような、一丸となって未来に向う姿勢こ. の栄養療法を、栄養管理をしっかりと築くためには、その基盤. そが、きっと未来を支える原動力となるものと思う。. となる体制や、発展の方向性・目標の設定、そしてそれらを達. 未来へ. かねばならない。未来の栄養療法。筆者の思う未来像を記し. 成するためのマイルストーンなどを、今この時に造り上げてお てみたいが、すでに10年以上も前から思いを馳せていること. このように過去から現在へと本学会の変遷をみてくると、や. である。①高齢者医療の栄養学的基盤の確立(学問的見地. はり1970年代初頭に本学会の前身である完全静脈栄養研. に立った高齢者医療の体系) 、②高齢者医療制度や医療・介. 究会と成分栄養研究会がそれぞれ設立され、これらが私達. 護・福祉・生活を支える地域一体型NST構築、③小児・高. の学会『一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会:JSPEN』. 齢者に対する代謝学的侵襲軽減法や修復機転の促進法の. の最初の湧き水となった。この湧き水から溢れ出る2筋の流れ. 開発・普及、④栄養療法の革新(新しい静脈、経腸、経口栄. が1本となり、1985年には日本静脈・経腸栄養研究会、1998. 養法の開発・普及) 、⑤がんをはじめとする各種病態下での治. 年には日本静脈経腸栄養学会(JSPEN) となった。この間、. 療的栄養管理法の開発・普及、⑥新生児から超高齢者まで. 1999年にはTNTプロジェクトが、2001年にはNSTプロジェク. の一貫的栄養支援の確立、⑦社会栄養学の実践・普及(予. トが発足し、JSPENは生き生きと活動する暴れる渓流となっ. 防栄養学を含む) など、 きりが無い。要するにまだまだやらなけ. た。そして現在、本学会は22,395名、 しかも2年間の年会費の. ればならないことが豊富にあると言うことである。しかも、当然. 滞納で会員資格を失うという規約を乗り越えて常にご参加い. のことながら先にも述べたが、将来の医療はすべて一人で行. ただくアクティブメンバーが22,395名存在する世界最大の栄. うものは消失し、しかも専門職と話し合って決めていく、わが. 養関連学会となった。ESPENが3,300名、A.S.P.E.N.が6,000. 国得意の「和」の特技で、⑧チーム医療、 もちろんNSTの充実. 名、PENSAがJSPENを除くとおよそ5,500名、これらの総計よ. (多角的医療の構築と医師ならびに医療人すべての負担軽. りもはるかに多くの栄養療法を実践し、学ぼうとするスタッフが. 減対策と職種間の壁の除去) 、⑨患者中心の医療、すなわち. 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.34 No.5 2019 (327).
(9) 表6 わが国の未来を支える栄養療法. ①高齢者医療の栄養学的基盤の確立 (学問的見地に立った高齢者医療の体系) ②高齢者医療制度や医療・介護・福祉・生活を支える地域一体型 NST 構築 ③小児・高齢者に対する代謝学的侵襲軽減法や修復機転の促進法の開発・普及 ④栄養療法の革新(新しい静脈、経腸、経口栄養法の開発・普及) ⑤がんをはじめとする各種病態下での治療的栄養管理法の開発・普及 ⑥新生児から超高齢者までの一貫的栄養支援の確立 ⑦社会栄養学の実践・普及 ( 予防栄養学を含む ) ⑧チーム医療、NSTの充実(多角的医療の構築と医師・医療人の負担軽減対策と職種間の壁の除去) ⑨患者中心の医療、すなわち全人的医療の実践(社会のニーズへの対応と医療の質の保証) ⑩高次的地域医療連携の構築 (在宅医療、 診療所、 中核病院を包含した地域医療・生活支援ネットワークの確立). 全人的医療の実践(社会のニーズへの対応と医療の質の保 証) 、そして⑩高次的地域医療連携の構築(在宅医療、診療 所、中核病院を包含した地域医療・生活支援ネットワークの確 立) などである (表6)。意外にシンプルで、今となっては当たり 前のことのように思う諸兄も多々おられると思う。そう思われる 方はすでに未来に向って走り出している列車に乗っておられ る方々であろう。. 伝統は革新の上に建つ このように100年未来に向ってわが国の栄養療法を想うと、 この先最も必要となるのは、「世界に誇れるJSPENの伝統を 受け継いでいこう!」という気概と、伝統を受け継いでいくため のシステムの確立である。JSPENは多くの先輩諸氏と現在頑 張ってくれている皆さん、そして未来のJSPENを担う若き力が 繋がって、この領域のすべての方々にあらゆる栄養を届ける べく、永遠に滔々と流れていけるような巨大な大河となってい かねばならない。そのためには、 外から見ればただ流れに身を 任せているように見えても、常に新しいものを求めて、時には荒 れ狂い、時には優しくゆったりと、そしていくつもの支流をまとめ ながら太く大きく育っていかねばならない。これは簡単な事で はなく、常に革新を繰り返していくことが必要である。 『変わら ぬものは生き残れない』 これは人類が歩んできた歴史の教訓 である。だからこそ、現在(いま) 、未来に向って打ち進むべく、 革新を繰り返していくことが私達のすべき姿であると思う。伝 統は革新の上にこそ建てることができるのである。 最後に、初代理事長 故小越章平教授、第二代理事長 大柳治正教授、第三代理事長 平田公一教授、 そして第四代 理事長 東口髙志の懐かしい写真を供覧させていただき、 これ までの伝統を築いてきてくださった先輩諸氏に心より感謝申し 上げたいと思う (図10)。また、今回が「日本静脈経腸栄養学 会雑誌」の最終刊となる。長きにわたり本誌の発行にご尽力を いただいた株式会社ジェフコーポレーションの石渡一夫社長 ならびにスタッフの皆さまに心より御礼を申し上げたい。 本論文に関する著者の利益相反なし (328). 図 10 JSPEN歴代の理事長. 引用文献 1) 辻 哲夫 , 東口髙志 , 岡田晋吾 , ほか .「食べて治す。食べて癒 す。 」- 医療における栄養療法の位置づけ 現状と問題点 -.臨床 医薬 27 (1):1-34,2011. 2) 東口髙志 . 超高齢者の栄養管理 . 内科115 (1):7-13, 2014. 3) 東口髙志 . 世界の中の日本-わが国の栄養療法確立に向けて-. 静脈経腸栄養 26 (1):5-10, 2011. 4) 日本静脈経腸栄養学会・NSTプロジェクト実行委員会・東口髙 志 (編). NSTプロジェクト・ガイドライン. 医歯薬出版,2001, 東京 . 5) 東口髙志 . 阿久津哲雄 . わが国における NSTの変遷.小児外科 39 (79):745-751, 2007. 6) 東口髙志 . 栄養サポートチーム 2013.日医師会誌 142 (2):299301, 2013. 7) Dudrick SJ, Willmore DW, Vars HM, et al. Long-term total parenteral nutrition with growth, development and positive nitrogen balance. Surgery 64:134-142, 1968. 8) Colley R. Education of the Hospital Staff. in Fischer JE (ed);Total Pareteral Nutrition. Boston, Little, Brown and Company, 1976, pp111-125. 9) Higashiguchi T, Yasui M, Bessho S, et al. Effect of Nutrition Support Team based on the New System”Potluck Party Method(PPM)”.Jp J Surg Metabol Nutri 34 (1):1-8, 2000. 10) 東口髙志,安井美和,二村昭彦,ほか . Nutrition Support Team の新しいかたち "Potluck Party Method (PPM)"の評価と展望. 静脈・経腸栄養 14(2):13-17, 1999. 11) 東口髙志 . わが国における NST 加算の現状と将来展望.臨床栄 養 127 (5):626-633, 2015. 12) 東口髙志 . 世界の中の日本-わが国の栄養療法確立に向けて-. 静脈経腸栄養 26 (1):5-10, 2011. 13) Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition - A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr 38: 1-9, 2019. 14) Jensen GL, Cederholm T, Correia MITD, et al. GLIM Criteria for the Diagnosis of Malnutrition: A Consensus Report From the Global Clinical Nutrition Community. JPEN43: 32-40, 2019.. 伝統は革新の上に建つ ! –JSPENの過去と現在から未来を想う –.
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