コンポスト型トイレにおける病原ウイルス指標
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(2) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,179-186,2010.10. 2. 実験方法. (3). (1). 父郡の2人世帯の一般家庭,及び縄県北部のダム建設現. 秩父及び沖縄にて稼働中の実装置について. 稼働中のコンポスト型トイレ実装置として,埼玉県秩 微生物(細菌及びウイルス). 本研究で使用した微生物は ATCC (American Type Culture. 場内連絡事務所で実際に稼動しているものを使用した.. Collection) もしくは NBRC ( (独) 製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー分野 生物遺伝資源部門) から購入. これらの概要を表-1および図-2に示す. おが屑は約2 h毎にスクリューにて攪拌される.それ. した.糞便性連鎖球菌のモデル種として E.feacium. に加えて,トイレ使用毎に1工程の攪拌が行われる.1工. (ATCC19434) ,モデルウイルスとして大腸菌ファージ T4. 程の攪拌では,スクリューが左右に2回ずつ回転し,所. (NBRC20004) , λ (NBRC20016) , Qβ (NBRC20012) 及び大腸. 要時間は約3分であった.. 菌ファージの宿主菌として E.coli (NBRC13168, 3301 及び. 冬季など外気温が低下する場合を考慮し,おが屑反応. 13965) を使用した.各微生物の培養に用いた培養液は,. 槽内はヒーターの自動温度制御によって設定温度に保っ. E.feacium は Brain Heart Infusion (Difco Laboratories製) ,E.coli. た.ただし,2006年9月から10月末まで実験的にヒータ. は Tryptic Soy Broth (Difco Laboratories製) を用い,37 °C の. ーはOFFにした.任意のサンプリング時におが屑温度を ウォーターバスで 3-4 時間振とう培養し,実験に用いた. 測定したところ,ヒーターOFF時も含めて32 - 34 ℃に保 たれていた. (2). 微生物の測定方法 (4). 本実験では上述の培養微生物に加えて,実際に稼動し. 実装置中の糞便性連鎖球菌濃度の確認. ているコンポスト型トイレ(実装置)中の大腸菌,大腸. 糞便性連鎖球菌が常時検出できるか,また指標として. 菌群,糞便性大腸菌群及び糞便性連鎖球菌を指標細菌と. 濃度変化を測定しうるに十分な濃度で存在するかを検討. して測定した.いずれの場合も,まずコンポスト担体と. した.. して用いられているおが屑から抽出液を用いて液相へ微. 秩父実装置及び沖縄実装置のおが屑試料は稼動開始 (おが屑交換)後から約一年間 (2006年6月から2007年5. 6). 生物を抽出してから,その液相中濃度を測定した .以 下に抽出方法及び各種微生物濃度の測定方法を示す.. 月末) にわたり,2週に1度の割合で採取した.投入重量 抽出液は 3 (w/v) %ビーフエキス溶液 (pH9.5) を用いた. を測ったおが屑試料 (約0.5 g) を抽出液に投入し,前述の. ビーフエキス (MP Biomedicals 製) を 3 (w/v) %になるよ うイオン交換水に溶解し,2 N 水酸化ナトリウム水溶液. 方法にて糞便性連鎖球菌,大腸菌,大腸菌群,糞便性大 腸菌群濃度を測定した.. を用いて pH9.5 になるよう調整後,10 mL ずつバイアル 瓶に分注し,高温蒸気滅菌 (121°C 20 分間) 後,常温にて. 表-1 実装置概要. 保存した.抽出液に対象試料となるおが屑サンプルを投. 秩父実装置 S50*. 型. 入重量を測定しつつ投入した.3 分間試験管ミキサーに コンポスト槽. て十分攪拌し,微生物を液中に抽出した. 液相中の微生物濃度測定においては,希釈液として 3 %ポリペプトン溶液(ポリペプトン (和光純薬工業(株). 沖縄実装置 S25*. 幅(mm). 830. 730. 奥行(mm). 1510. 1220. 高(mm). 953. 833. 3. 容量(m ). 0.51. 0.25. 製) をイオン交換水に溶解し,高圧蒸気滅菌したもの). ヒーター消費電力. 30W×12本. 25W×12本. を用いて,適宜希釈し,以下の各培地を用いて測定した.. モーター消費電力. 200W. 100W. 稼働中のコンポスト型トイレ実装置中の糞便性連鎖球. 1日の使用目安(回). 80~100. 40~50. 対象世帯人数. 5-10人. 5人以下. 菌及び E.feacium 濃度は M-エンテロコッカス培地 (Difco Laboratories製) を用い,メンブレンフィルター法 8)にて測. *いずれも (株) 正和電工製. 定した.大腸菌及び大腸菌群濃度は乾式簡易培地のコン パクトドライ EC (日水製薬(株)製) を用いた.糞便性大腸. 換気. 菌群濃度は m-FC 培地 (Difco Laboratories製) を用い,メン ブレンフィルター法. 9). おが屑 取出口. にて測定した.大腸菌ファージ. T4,λ,Qβ は E.coli (それぞれ NBRC13168,3301,13965) を宿主とし,孔径 0.45 μ.の滅菌済メンブレンフィルタ ー (DISMIC-25CS, 東洋濾紙(株)製) を用いて濾過除菌した. スクリュー. 後,Tryptic Soy Agar (Difco Laboratories製) を用いた重層寒. モーター. 天法 10)にて測定した.. ヒーター 取出口. 中央. 投入口. 図-2 稼働中のコンポスト型トイレ実装置概要図. 180.
(3) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,179-186,2010.10. (5). ウイルス指標としての糞便性連鎖球菌の検討. 表-2 実装置内糞便性連鎖球菌と E.feacium の挙動比較に. 糞便性連鎖球菌がウイルス指標として適当であるか確. おける実験条件. 認するため,以下について検討した. a). おが屑. 実装置内糞便性連鎖球菌とE.feaciumの挙動比較 実験室で培養し,投入する糞便性連鎖球菌として. E.feacium がそのモデル細菌として適切であるかを確認す るため,秩父の実装置内の糞便性連鎖球菌と E.feacium. 対象微生物. 温度 /℃. 実装置中 糞便性連鎖球菌. 37. のおが屑中での挙動(濃度変化)を比較した.実験条件. 熱処理 使用期間 有無 無. 50. 50. 37. E.feacium. 含水率 /%. 40日 有. 50. を表-2 に,各濃度変化の測定方法を以下に示す. 10 g のおが屑 (秩父実装置で約 40 日間使用,含水率. 表-3. 48.7 % ) を滅菌済みのバイアル瓶に入れ,綿栓でふたを. E.feaciumと大腸菌ファージの挙動比較における 実験条件. し,温度 37 ℃及び 50 ℃のインキュベーターにて保温し. おが屑. た. 所定の経過時間毎に約 0.2 g のおが屑を抽出液に投. 対象微生物. 入し(投入量はその都度測定),実装置内の糞便性連鎖. 温度 /℃. 含水率 /%. 37. 球菌の濃度を前述の方法で測定した.. 未使用. 37. 培養した E.feacium を投入し,その濃度変化を測定した. E.feacium,T4,λ. その際,おが屑試料中に存在している糞便性連鎖球菌濃. 50. 50. 有. 37. 度を下げておかないと E.feacium 測定に影響がでるため,. 50. 前処理として,おが屑(秩父実装置に投入後約 40 日. 37. 目)を温度 70 ℃で 3 時間処理した.これにより含水率. 50. 使用期間. 30. 50. E.feacium の挙動を調べるために,上述のおが屑試料に,. 熱処理 有無. 30 40日 50. は 11.7 %程度に下がった.その後,イオン交換水にてお が屑の含水率を約 50 %に調節した 10 g のおが屑を,滅. おが屑前処理. 菌済みバイアル瓶に入れ,温度 37 ℃及び 50 ℃となるま. おが屑を温度70℃で3h加熱処理. で加温した後, 0.1 mL の E.feacium 培養液を加えて 1 分. 未処理おが屑. 含水率30%又は50%に調節. 間攪拌した.その後,温度 37 ℃又は 50 ℃のインキュベ ーターにて保温し,所定の経過時間毎に約 0.2 g のおが. 10gおが屑を37℃または50℃になるまで保温. 屑を抽出液に投入して E.feacium の濃度を 2.(2) に示す方. 微生物0.1ml投入,1分間攪拌. 法で測定した. b). 所定の時間毎に おが屑重量測定 (蒸発水分量の確認). E.feacium と大腸菌ファージの挙動比較 糞便性連鎖球菌がウイルス指標として適当であるか確. おが屑採取. 水分蒸発分のオン交換水を添加 (0hでは実施しない). 認するため,おが屑中での挙動をウイルスの挙動と比較 おが屑を37℃ または50℃で保温. した.糞便性連鎖球菌のモデルとして E.feacium を用い た.水環境中ではウイルスモデルとして,FRNA ファー. おが屑重量測定. 微生物抽出. ジ(F-specific RNA coliphage)が提案されている 4)が,安 希釈液にて適宜希釈. 全側の指標として比較するために,図-1 で不活化速度 の遅い T4,及び T4 同様 DNA ファージである λ と比較. 各測定法にて微生物濃度測定. 図-3 微生物濃度変化測定方法. することとした.おが屑のコンポスト担体使用の有無が, 微生物の挙動に与える影響を確認するため,未使用おが 屑及び使用済みおが屑(秩父の実装置で 40 日間使用). る実験手順を図-3 にフロー図としてまとめた.. を用い,a) 同様,熱処理して含水率を約 30 %及び 50 %. c). に調整したおが屑を用いた.a) の E.feacium と同様に微生. 実装置における E.feacium と T4 の挙動比較 稼働中の実装置内のおが屑コンポスト中での E.feacium. と T4 の挙動を測定し,実験室での結果と比較するため. 物濃度変化を測定した.実験条件を表-3 に示す. なお,a),b) では 37 ℃又は 50 ℃に設定したおが屑中. に,秩父の実装置に E.feacium と T4 を投入し,その濃度. の含水率を一定に保つため,各測定時間毎におが屑,バ. 変化を測定した.この場合,投入直後の反応槽内 3 ヶ所. イアル瓶及び綿栓全体の重量を測定し,蒸発した水分と. の濃度変化を見ることで,病原微生物がおが屑全体に均. 同量のイオン交換水を加えた.測定間隔が 24h 以上とな. 一に攪拌されるまでに要する時間も確認することができ. る場合は 24h 毎にイオン交換水を加えた.a),b) におけ. る.. 181.
(4) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,179-186,2010.10. 3.結果と考察. 実装置内に存在する糞便性連鎖球菌の濃度を投入する E.feacium 濃度に比べて無視できる程度まで減少させるた. (1). め,実験開始 2 週間前からヒーター設定温度を高温. 実装置中の糞便性連鎖球菌濃度の確認. (60℃) にし,おが屑の攪拌回数を増やす (25 分に 1 回). 図-4 に秩父及び沖縄の実装置における 2006 年から. ことで高温低含水率状態にし,その後,実験前日にヒー. 2007 年の微生物の濃度変化を示す.一般家庭に設置さ. ター設定温度及び攪拌回数を通常時に戻した.その後,. れた秩父実装置と異なり,工事現場の事務所に設置され. 屎尿の投入が無いよう,実験終了までトイレとしての使. ている沖縄実装置は複数の人に不定期に使用され,かつ,. 9. 用を停止した.次に,濃度 1.37×10 CFU/mL の E.feacium. 尿の割合が大きいと考えられる.このような異なる使用. 9. 液体培地 1 L と濃度 1.09×10 PFU/mL の T4 液体培地. 条件においても糞便性連鎖球菌は高濃度で,かつ,他の. 100mL を実装置の反応槽に投入し,1 回攪拌した.微生. 微生物指標よりも常に安定した濃度で測定された.. 物が図-2 に示した反応槽の投入口から取出口までの移. コンポストは,一定期間野積みにして保管されること. 動に要する時間と濃度変化を確認するために投入口,中. や,取り扱い時に病原リスクを低減させるためにトイレ. 央,取出口において所定の経過時間毎に約 0.4 g のおが. の使用を停止した状態で病原微生物の不活化に効果的な 運転や処理をすることが考えられる. その際,糞便性. 屑を抽出液に投入し,微生物濃度を測定した.. 連鎖球菌濃度の増減が病原リスクに対する指標として使 (6). 用するのに十分な存在量であるということがわかった.. コンポスト中の病原リスク管理 11). これまでの研究 で細菌の不活化促進には,おが屑へ の石灰投入が有効であることがわかっている.そこで,. 表-4 石灰投入実験条件. この処理時においても糞便性連鎖球菌がウイルス指標と. 温度/℃. 対象微生物. して有効性かどうかを確認するために大腸菌ファージ (T4,,λ 及び Qβ)と糞便性連鎖球菌の不活化速度につ. おが屑 含水率/%. T4. いて調査した. 実験方法は微生物投入前におが屑へ 56 - 84 mg の石灰. λ. 37. を投入し,pH10 程度に調節した以外は,(5) a), b) と同様. log (微生物濃度)/CFU・g-1. に行った.表-4 に実験条件を示す.. Qβ. pH. 30. 9.9. 50. 10.0. 30. 10.1. 50. 10.2. 30. 10.1. 50. 10.2. 秩父 (2006-2007). 6. 糞便性連鎖球菌 5 4 3 2 1 0. 6月. 7月. 0. 大腸菌群. 大腸菌. 糞便性 大腸菌群 9月. 8月 50. 10月. 100. 11月 12月 150. 2月. 1月. 200. 4月. 3月. 250. 300. 5月 350. 400. 時間/日. log (微生物濃度)/CFU・g-1. 沖縄 (2006-2007). 大腸菌群. 6. 糞便性 大腸菌群. 5. 糞便性 連鎖球菌. 4 3. 大腸菌. 2 1 7月. 0 0. 50. 8月. 9月 10月 11月 100. 150. 12月 1月 200. 2月 250. 3月. 4月. 300. 時間/日. 図-4 コンポスト型トイレにおける指標菌濃度変化. 182. 5月 350. 6月 400. おが屑10g中の 石灰投入量/mg 56. 84. 56.
(5) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,179-186,2010.10. (2) a). ウイルス指標としての糞便性連鎖球菌の検討. 菌を指標として用いる場合,E.feaciumでの実験結果より. 実装置内に存在していた糞便性鎖球菌と E.feacium. も安全側の指標になると考えられる.. の挙動比較 図-5 に含水率を約 50%にした場合の,37℃および 50℃における秩父実装置内に存在していた糞便性連鎖球. 0. 菌と E.feacium の挙動を示す.いずれの場条件において. -1. も,糞便性連鎖球菌は E.feacium よりも生残性が強いこ. -2. log(N/N0). 実装置中糞便性連鎖球菌 E.feacium. 37˚C. -3. とがわかった.. -4. なお,E.feacium の投入前にはおが屑を熱処理している. 50˚C. -5. が,この処理による微生物の不活化速度は未処理のおが. -6. 屑中でのそれと同様,或いはやや遅くなる傾向があるこ. -7. 0. とを確認している.従って,秩父実装置内糞便性連鎖球. 20. 40. 60. 80. 100 120 時間/h. 140. 160. 180. 200. 0 -1 -2 -3 -4 -5 -6 -7. 0 -1 -2 -3 -4 -5 -6 -7. 37°C, 30% 未使用おが屑 a). 0. 40. 80. 120. 160. log(N/N0). log(N/N0). 図-5 秩父実装置内糞便性連鎖球菌と E.feaciumの挙動比較. 200. 240. 50°C, 30% 未使用おが屑 b). 0. 40. 80. 0 -1 -2 -3 -4 -5 -6 -7. 0 -1 -2 -3 -4 -5 -6 -7. c) 37°C, 50% 未使用おが屑 0. 40. 80. 120 160 時間/h. 200. 240. 37°C, 30% 使用済おが屑 e). 0. 40. 80. 120 160 時間/h. 200. log(N/N0). log(N/N0). g)37°C, 50% 使用済おが屑 40. 80. 240. 120 160 時間/h. d). 0. 40. 80. 120 160 時間/h. 200. 240. 50°C, 30% 使用済おが屑 f). 0. 40. 80. 120. 160. 200. 240. 時間/h. 0. 0. 200. 50°C, 50% 未使用おが屑. 0 -1 -2 -3 -4 -5 -6 -7. 240. -1 -2 -3 -4 -5 -6 -7. 160. log(N/N0). 0 -1 -2 -3 -4 -5 -6 -7. 120 時間/h. log(N/N0). log(N/N0). log(N/N0). 時間/h. 200. 240. 0 -1 -2 -3 -4 -5 -6 -7. h) 50°C, 50% 使用済おが屑 0. 40. 80. 120 時間/h. 160. 200. 図-6 E.feacium,T4および λ のおが屑中での挙動. E.feacium, T4, λ a) – d):未使用おが屑,e) – h):使用済おが屑,a) , c) , e) , g):温度 37℃,b) , d) , f) , h):温度 50℃. 183. 240.
(6) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,179-186,2010.10. b). E.feacium と大腸菌ファージの挙動比較. c). 図-6 に含水率約 30 %又は 50 %,温度 37 ℃又は 50 ℃. 実装置における E.feacium と T4 の挙動比較 秩父実装置内に E.feacium と T4 を投入し,屎尿投入口,. における E.feacium と大腸菌ファージのおが屑中での挙. 中央,おが屑取り出し口の 3 箇所における濃度経時変化. 動を示す.含水率 50 %,温度 37 ℃の場合を除いて,. の測定結果を図-8 に示した.48 時間まではサンプル場. E.feacium と T4 は似た挙動を示すことがわかった.高含. 所によって異なる挙動を示していた.この間の濃度変化. 水率時に T4 は E.feacium よりやや減少速度が遅くなって. は攪拌による微生物の希釈と不活化作用によるものと考. いるが,その他の条件下では,E.feacium は強い耐性を持. えられる.48 時間後にはサンプル場所による違いがな. つ T4 の挙動と似ていることがわかった.. くなっているため,微生物が均一に攪拌され,その後の. 3). これまでの研究 で,コンポスト型トイレ内での微生. 濃度変化は不活化作用のみによるものと考えられる.従. 物(細菌及び大腸菌ファージ)の挙動は次の式 (1) に示. って,48 時間以降の微生物の濃度減少速度を実装置で. す一次反応で近似できることが分かっている.. の不活化速度とした. 実装置における微生物の不活化速度定数と実験室にお. log (N/N0) = - kt. (1). ける各微生物不活化速度定数と比較した結果を図-9 に 示す.装置内の不活化速度定数は T4 においては,実験. N : 微生物濃度 (個/g) ,N0 : 微生物初期濃度 (個/g) ,. 室での値とほぼ同じ値だった.E.feacium においては,実. k : 不活化速度定数 (1/h) ,t : 時間 (h). 験室での値よりも低く,不活化しにくい結果が示されて. ここで,図-5,6 の結果を不活化速度定数 k を用いて. いるが,これは実験開始時の実装置内の糞便性連鎖球菌. まとめた結果を図-7 に示した.未使用おが屑よりも使. 濃度が高く(6×106 PFU/g),投入した E.feacium とほぼ. 用済おが屑のほうが不活化速度が遅いことがわかった.. 同じ濃度で存在しており,E.feacium の挙動というよりは,. 従って,コンポスト型トイレの使用開始時よりもしばら. 元々存在していた糞便性連鎖球菌の不活化速度を示して. く使用してからのおが屑中での病原微生物の濃度減少が. いたと考えられる.そこで,図-9 に示した実験室の実. 遅くなるため,その担体取り扱いにおける安全性に留意. 装置中糞便性連鎖球菌と実装置の E.feacium(実際は実装. することが必要である.おが屑の使用有無によって不活. 置中の糞便性連鎖球菌と考えられる)の不活化速度を比. 化速度が変化した要因の 1 つとして,微生物の繁殖に必. 較すると,ほぼ同じ値を示している.従って,E.feacium. 要な自由水量変化(水分活性の変化)が考えられる.そ. についても実験室と実装置における不活化速度はほぼ同. の他にも,使用されたおが屑の環境や物性の変化が微生. 様であると考えられ,T4 および糞便性連鎖球菌につい. 物の挙動に影響していると考えられるが,この点につい. ては,実験室での結果を実装置での結果として用いるこ. ては今後の課題としたい.. とができると考えられた.. また,高温にすることが微生物の不活化を促進した. E.feacium と T4 はいずれの条件下においてもよく似た挙 0.7. 動を示していたが,温度 37 ℃,含水率 50 % のような低 不活化速度定数/h-1. 温高含水率時においては T4 の方が遅くなる場合も見ら れた.糞便性連鎖球菌は水環境における生残性が強くウ イルスを含めた微生物汚染の指標としての可能性が高い と考えられている 4).従って,水系とは異なり,含水率 が 30 - 50 %程度のおが屑中では,その不活化速度に顕著 な変化が表れない可能性がある.一方,DNA ファージ. 0.6. 0.3. 不活化速度定数/ h-1. 挙動が変化しやすい特徴をもっているのではないかと考 えられる.しかし,実装置中糞便性連鎖球菌と T4 の挙 動を比較すると,低温高含水率の条件下においてもほぼ 同様の挙動を示した.従って,実装置において糞便性連. 0.1. も T4 の様な高耐性病原ウイルスの挙動についても監視. E** T4 λ. E** T4 λ. E**T4 λ. E**T4 λ. 使用済おが屑 含水率30%. 0.4. 含水率50%. 0.3. 0.1. 50℃ 50. 50℃ 50. 0.2. 0. 鎖球菌を指標として用いる場合,いずれの条件において. 37 ℃. 37 37℃. 0.2. 0.5. もつ といわれているように,環境の変化によってその. 50℃ 50. 0.4. 0. 4). 含水率50%. 50℃ 50. 0.5. は,環境水中で,ウイルスの挙動を評価する代替指標と して推奨されている FRNA ファージとは異なる特徴を. 未使用おが屑 含水率30%. 37 ℃. 37 ℃ E T4 λ. E T4 λ. Ec E T4 λ. Ec E T4 λ. 図-7 おが屑中での微生物の不活化速度定数の比較. 可能であり,安全側の指標として用いることが可能であ. E:E.feacium, Ec:実装置中糞便性連鎖球菌,T4:. ると考えられた.. 大腸菌ファージ T4,λ:大腸菌ファージλ. 184.
(7) 温度32℃ 含水率50%. 10. E.feacium 投入口 E.feacium 中央 E.feacium 取出口. T4 投入口 T4 中央 T4 取出口. 8 6 4 2 0. 50. 100. 150. 200. λ. 0.2. E.feacium. Qß. 不活化速度定数の比較. 4. 結論. 0.06. 不活化速度定数/h-1. T4. 0.4. 図-10 石灰投入有り及び無しおが屑中での微生物. 図-8 各サンプリング箇所における微生物の濃度変化. 0.04 実装置 0.02. 石灰有. 0.6. 250. 時間/h. 含水率30%. 石灰無. 0.8. 0 0. 温度37℃. 1.0. 不活化速度定数/h-1. log (微生物濃度)/CFUorPFU・g-1. 土木学会論文集G Vol.66 No.4,179-186,2010.10. 投入口. 実験室. 実験室.. 中央 取出口. 実装置 投入口. コンポスト型トイレの通常運転においては,糞便性連. 実験室. 鎖球菌は常に存在しており,微生物の不活化が遅い低温. 中央 取出口. 高温時や不活化の速い高温低含水率となる運転条件にお E.feacium. 実装置中糞便 性連鎖球菌. 0. いても,耐性の強い T4 と挙動がよく似ており,コンポ. T4. スト型トイレにおけるウイルス指標として有効であると 考えられた. 病原リスクを低減するためのおが屑への石灰投入処理. 図-9 実装置と実験室での微生物不活化速度定数の比較. (高pHでの処理)はDNAウイルスであるT4やλはほとん ど低減効果が見られず,糞便性連鎖球菌では監視できな. (5). いが,RNAウイルスである大腸菌ファージQβの不活化. コンポスト中の病原リスク管理. 促進には効果が見られ,糞便性連鎖球菌によって監視で. 温度 37℃,含水率 30%,石灰有無のおが屑中におけ. きると考えられた.. る微生物の不活化速度定数を図-10 に示す. 石灰投入は E.feacium の不活化促進に効果があったが, T4 と λ の不活化促進には顕著な効果は見られなかった. 本研究では,図-1 を参考にし,安全側の指標となるよ. 参考文献 1). う,T4 及びλをモデルウイルスとして用いた.しかし, 多くの腸管系病原ウイルスの特徴が球状の RNA ウイル. 2). スであることから,水環境中や処理工程における挙動を 示すモデルとして同様の特徴をもつ Qβ 等の大腸菌ファ ージが使われている.そこで,同実験に Qβ を用いたと. 3). ころ, E.feacium 同様,石灰投入おが屑中の Qβ の不活化 速度定数は石灰未投入時よりも大きく,石灰を投入し, 高 pH にすることはこれらの微生物の不活化促進に有効 であることがわかった.従って,石灰を投入した場合,. 4) 5). E.feacium のような糞便性連鎖球菌では T4 や λ のような 挙動を示すウイルスを監視することができないと考えら れるが,石灰投入によるウイルスの不活化促進効果の有 無が前述の特徴によるものとすれば,多くの腸管系ウイ. 6). ルスは Qβ と同様の挙動を示す可能性が高く,おが屑の 温度,含水率だけでなく,石灰投入時等の高 pH 時にお いても,糞便性連鎖球菌を指標として用いることが可能. 7). であると考えられる.. 185. Lopez Zavala, M. A., Funamizu, N. and Takakuwa, N. : Modeling of aerobic biodegradation of feces using sawdust as a matrix, Water Reserch, Vol.38, No.5, pp.1327-1339, 2004. Otaki, M., Nakagawa, N., Akaishi, F. and Kubo, K. : The fate of microorganisms in the composting toilet from the view point of hygienic risk, Proc. the 2nd International Dry Toilet Conference, Tampere, Finland August 16-19, 2006. Otaki, M., Nakagawa, N., Kazama, S., Akaishi, F. and Tameike, S. : Hygienic risk assessment and control in using composting toilet, The 5th International Symposium on Sustainable Sanitation, pp.163-170, 2007. 金子光美:水質衛生学,pp.477,技報堂出版,1996. Craig, D. L., Fallowfield, H. J. and Cromar, N. J. : Comparison of decay rates of fecal indicator organisms in recreational coastal water and sediment, Water Supply, Vol.2, No.3, IWA publishing, 2002. 大瀧雅寛,中川直子,伊藤由美子:バイオトイレに おける病原微生物の挙動及び二次感染リスク評価, 第 57 回土木学会年次学術公県会講演概要集,VII-281, 2002. 神子直之,大垣眞一郎:環境微生物工学研究法,技 報堂出版, 1993..
(8) 土木学会論文集G Vol.66 No.4,179-186,2010.10 Method for the examination of water and wastewater 20th edition, APHA, AWWA and WEF, pp. 9-24-9-25, 1998. 11) 赤石布美子,大瀧雅寛:おが屑を用いたコンポスト 型トイレにおける石灰投入時の大腸菌消長への影響, 第 40 回日本水環境学会年会講演,p.228,2006.. 8). Lenore, S. C., Arnold, E. G. and Andrew, D. E. : Standard Method for the examination of water and wastewater 20th edition, APHA, AWWA and WEF, pp. 9-74-9-78, 1998. 9) Lenore, S. C., Arnold, E. G. and Andrew, D. E. : Standard Method for the examination of water and wastewater 20th edition, APHA, AWWA and WEF, pp. 9-62-9-65, 1998. 10) Lenore, S. C., Arnold, E. G. and Andrew, D. E. : Standard. (2009. 11. 2 受付). FATE OF INDICATOR BACTERIA FOR PATHOGENIC VIRUSES IN COMPOSTING TOILET Shinobu KAZAMA and Masahiro OTAKI Composting toilet using sawdust matrix has a potential to keep pathogens that might be occasionally contained in human feces. Especially pathogenic viruses should be taken care of, because they have higher tolerance than pathogenic bacteria. Therefore it’s important to monitor pathogenic viruses. In this study, we focused on fecal enterococcus and investigated whether it could be available for viral indicator in composting toilet . Firstly, it was confirmed that fecal enterococcus was consistently detected in actu-ally composting toilet, and the concentration was so high that the fluctuation of the indicator could be detected. Secondly, the fate of fecal enterococcus was compared with that of coliphages in various conditions. Finally, it was investigated how to control pathogenic risk of compost, and check the availability of enterococcus as viral indicator in some operating conditions. The fate of enterococcus and coliphages were confirmed in high pH sawdust which was added calcium oxide (CaO). As the results, except for the case of higher water content and lower temperature, or high pH, fecal enterococcus could be an appropriate indicator for pathogenic viruses.. 186.
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