非活動に伴う逸脱姿勢による弊害に対する理学療法
介入の効果:システマティックレビューとメタアナリシス
Effectiveness of Physical Therapy to Address Complications of Poor Posture
due to Physical Inactivity: A Systematic Review and Meta-analysis
及川 巧翔
1)大川 光
1)京野 優美
1)牧 彩夏
1)眞坂 陸斗
1)佐々木 誠
2)Takuto OIKAWA, PTS1), Hiro OKAWA, PTS1), Yumi KYONO, PTS1),
Ayaka MAKI, PTS1), Rikuto MASAKA, PTS1), Makoto SASAKI, RPT, PhD2)
1) Course of Physical Therapy, School of Health Sciences, Akita University
2) Department of Physical Therapy, Graduate School of Health Sciences, Akita University: 1-1-1 Hondo, Akita-shi,
Akita 010-8543, Japan TEL +81 18-884-6528 E-mail: [email protected]
Rigakuryoho Kagaku 36(2): 285–292, 2021. Submitted Nov. 6, 2020. Accepted Dec. 16, 2020.
ABSTRACT: [Purpose] To examine evidence supporting the effectiveness of physical therapy for complications of
poor posture due to physical inactivity. [Methods] Relevant research papers available in a literature database were systematically searched for, and qualitatively and quantitatively analyzed. [Results] Among 415 papers identified by entering searching phrases and adding options, 30 and 11 were adopted for qualitative and quantitative analyses, respectively. A systematic review of these papers clarified that physical therapy had been reported to be effective in terms of body functions/structure, symptoms, and abilities in a relatively large number of studies. On the other hand, meta-analysis revealed that motor training to improve spinal stability/postural control and interventions to manage pain in each body part by promoting activity had been ineffective. [Conclusion] Only a limited number of papers were quantitatively analyzable, but the results of qualitative analysis suggest the possibility of physical therapy improving complications of physical inactivity-associated poor posture. To establish evidence for this, further high-quality studies are required.
Key words: physical inactivity, poor posture, physical therapy
要旨:〔目的〕非活動に伴う逸脱姿勢がもたらす弊害に対する理学療法介入の効果のエビデンスを検討すること.〔方法〕 文献データベースを系統的に検索し,関連する論文を質的ならびに量的に分析した.〔結果〕検索構文と追加で抽出 した論文415編のうち,30編が質的分析に,11編が量的分析に活用された.システマティックレビューでは,介入 が身体の機能や構造,症状,能力に対して有効とする研究が比較的多く見出された.メタアナリシスでは,運動トレー ニングが脊柱安定性・姿勢制御に対して,活動性を高める介入が身体各部の疼痛に対して,有効とは言えなかった.〔結 論〕量的分析が可能な論文が少なかったが,質的分析で,理学療法介入が非活動に伴う逸脱姿勢の悪影響を改善する 可能性が示唆された.エビデンスを確固たるものにするために,質の高いさらなる検討が必要である. キーワード:非活動,逸脱姿勢,理学療法介入 1) 秋田大学 医学部 保健学科 理学療法学専攻 2) 秋田大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 理学療法学講座:秋田県秋田市本道1-1-1 (〒010-8543)TEL 018-884-6528 受付日 2020 年 11 月 6 日 受理日 2020 年 12 月 16 日
I.緒 言
現代では,職場や家庭においてコンピュータ化が進行 しており,それにより長時間休みなく座位姿勢を保って いることが多い.また,通勤時の長距離自動車運転,余 暇における長時間のテレビ視聴,ゲームなどの娯楽の増 加によって非活動となりがちである.人は,正常な姿勢 をとることで,筋骨格系のバランスを保ち,人体への負 担を最小限に抑えている.特に座位姿勢は立位姿勢や臥 位姿勢よりも負担が大きく,より正常な姿勢を求められ る.しかし,長時間同じ姿勢をとると,正常な姿勢を保 ち続けることが困難となり,不良な姿勢へと変化する. また,コンピュータやスマートフォンを使用する際には, 頭部前方偏位姿勢をとることが多い.このような逸脱姿 勢を長期間続けると,筋骨格系に影響を及ぼし,頸肩痛, 背部痛,腰痛,全身の疼痛や不快感などの自覚症状が生 じ,逸脱姿勢が固定化する可能性がある.自覚症状や逸 脱姿勢の固定化は少なからず日常生活活動(activities of daily living:以下,ADL),生活の質(quality of life:以下,QOL)に悪影響を生じさせると考えられる. 近年,このような筋骨格系の症状や姿勢変化について の研究が増えてきており,非活動に伴う逸脱姿勢による 弊害に対して,理学療法介入の効果が期待される.理学 療法介入には適度の休憩をとったりマッサージをしたり すること,運動トレーニングを推奨すること,デスク ワーク中に立位になったり歩行したりすること,オフィ スワークの環境を整備することなどがある.著者らが知 る限り,職場環境改善の筋骨格系の不調に対する効果に ついて系統的に言及した論文は2019年のコクランレ ビュー1)のみである.このレビューでは,座りがちな 勤労者において,立ったり歩いたりする機会を増やすこ との効果は示されず,座り立ちデスクの使用のような環 境整備が筋骨格系の症状を改善することが示唆されたと している.しかし,多岐にわたる理学療法介入の様々な 効果のエビデンスは十分に検討されていない. そこで,本文献研究ではこれまでに公表された論文を システマティックレビューし,メタアナリシスの結果と ともに考察する.
II.方 法
本レビューでは,系統的に文献を検索し,抽出された 論文を質的ならびに量的に分析した. 文献検索は,日本語の論文については医学中央雑誌, CiNii,メディカルオンライン,英語の論文についてはPubMed,Scopus,Cochrane Libraryで行った.日本語 雑誌では検索構文を「(非活動 or 不活動 or 座りがち)
and姿勢」とし,英語雑誌では“(inactivity or sedentary) and (posture or position) and (injury or pain) and
(intervention or exercise or physiotherapy)”とした. 抽出された文献は,5名の調査者(TO,HO,YK,
AM,RM)が論文タイトルと要旨を吟味し,以下の
PICO(Participant,Intervention,Comparison,
Outcome)に合致するものを適用基準を満たす論文とし た.また,この過程で絞り込まれた弊害名(ストレート ネック:straight neck,頸肩腕症候群:cervicobrachial syndrome,腰痛:low back painなど)を文献検索デー
タベースに入力し,PICOに合致する文献を追加論文と して加えた.分類に迷った場合は6番目の調査者(MS) が確認作業を行った.なお,文献の使用言語は日本語か 英語とした.PICOは, P:青年期以降65歳未満の者 I:理学療法介入 C:理学療法介入を行わない者 O:疼痛・不快感,可動性,筋活動,頭痛・頭重感, 動作能力,バランス能力,ADL,QOLである. 適用基準を満たした論文は質的に分析し,結果を叙述 的に記述した.質的分析に含めた論文の中のランダム化 比較試験(randomized controlled trial:以下,RCT)は
量的に分析した.量的分析では,まずPEDro scaleで論 文の質を評価した.PEDro scaleは,11項目のうち10 項目をYes:1点,No:0点で表して10点満点で評価 するものであり,点数が高いほど論文の質が高いことを 意味する.この評価は2名の調査者(HO,RM)が行っ た.次いで,介入方法と帰結評価が類似する論文におい て,メタアナリシスを行い,結果をフォレストプロット で示した.分析には,Review Manager 5.3(RevMan, 北欧コクランセンター,コクランコラボレーション, 2014)を使用した.介入効果の有意性を確認し,研究 結果間の臨床的異質性の程度をI2統計で判断した.
III.結 果
文献検索は2020年6月中に終えた.図1は,文献検 索の手順を示すフローダイアグラムである.所定の検索 用語を使用して,415編の文献が特定された.重複によ り削除された後の文献は327編であった.そのうち297 編の文献が適用基準を満たさなかった.適用基準を満た した30編のうち,19編が研究の種類により量的分析か ら除外された.19編の内訳は,総説5編,調査研究1編, 横断研究4編,縦断研究5編,RCT以外の介入研究4 編であった.残りの11編がRCTとして分類された. 質的分析に含めた論文30編には,非活動に伴う逸脱 姿勢による弊害と関連して,頸肩痛,頭部前方偏位,脊 柱の可動性・姿勢制御の不足,背部痛,慢性腰痛,また 四肢を含む筋骨格系の疼痛や不快感などが含まれ,スタ ンド型ワークステーションの使用の利点に言及した論文 があった.頸肩痛に関する論文は3編あった.毎年11.0~14.1% の勤労者が頸肩痛のために活動が制限されているとされ る2).危険因子として,非活動やそれに伴う逸脱姿勢が 挙げられた.加えて,年齢,筋骨格系の症状や頭痛の既 往歴,職場での社会的支援が少ないこと,身体能力が低 いこと,喫煙,仕事の満足度の低さ,勤労者の民族性な ど様々な因子が頸肩痛と関連している可能性がある2). 勤労者における頸肩痛の発症は多因子が関与し,ワーク ステーションや勤労者の姿勢を改善するという特定の因 子に対する介入は,頸部痛発症率の軽減に対して有効で はないということを示している2).また,勤労者におけ る仕事中の座位時間と高強度の頸肩痛との関連に関して, ブルーカラー労働者の場合,座位時間の増加が頸肩痛の 軽減と関連することが示されている3).さらに,中程度 時間の座位は頸肩痛に悪影響を与えるが,短時間の座位 は好影響を与えることが示唆されている4). 頭部前方偏位に関する論文は2編あった.頭部前方偏 位以外の要因が頸部の筋緊張に影響を与える可能性が高 いこと,頭部前方偏位は痛みや頸部の機能障害のリスク を高める要因とならないことが示唆されている5).頭部 前方偏位に対する介入研究では,一般的なストレッチや 筋力増強運動よりもピラティストレーニングの方が,全 身の筋肉の再トレーニングをもたらし,頸部深部筋を強 化して頭蓋脊椎角を改善し,頸の痛みを軽減することか ら,頭部前方偏位の治療と予防に有効であることが示唆 されている6). 脊柱の可動性・姿勢制御の不足に関する論文は3編 あった.コンピュータタスクにおいて,タイピングと比 較して,マウスの使用の方が頸胸部の脊椎領域の姿勢の 変化が小さいことが示されている7).また,座位行動が 胸椎可動性に与える影響と胸椎可動性に対する身体活動 の影響を調査した結果,1日7時間以上座り,1週間に 150分未満の身体活動しか行わない者の胸椎可動性の低 下が証明されている8).座りがちな人の転倒リスクに起 因する静的と動的な姿勢制御,足関節底屈筋筋力,跳躍 の高さの変動が,バランス練習と筋力増強運動を行うこ とによって影響を受けるかを検証した研究では,静的姿 勢制御に対して介入群で有意な改善が,動的姿勢制御に 対してわずかな改善がみられた.跳躍の高さと足関節底 屈筋筋力は介入後一過性に増加したとされている9). 背部痛に対する介入研究として,2編の論文があった. スタビリティーボールトレーニングは,変形,圧縮, オーバーストレッチが原因となる背部痛の減少のために 必要な脊柱安定性を獲得することができる可能性が示さ れた10).一方で,静的背部耐久力は対照群と差がなかっ たとされている10).別の研究では,職場での長時間の 座位保持は筋の剛性値を増加させ,それに対して定期的 に休憩をとることが重要であり,ローラーマッサージが 効果的な予防戦略の一つになることが示されている11). 慢性腰痛に関する論文としては12編あった.Pyntら の総説12)によると,持続した場合の脊柱後弯座位姿勢 は,脊柱前弯座位姿勢よりも腰椎の健康に有害であると されている.横断研究13)では,座りがちな行動は,姿 勢制御と股関節筋力の障害の重要な危険因子である可能 図1 フローダイアグラム
性があり,非活動の人に活動的になるように促すことに より,評価結果が良くなることが示唆されている.別の 横断研究14)によると,長時間の着座作業後は体幹の受 動的な剛性の低下,すなわち感覚運動体幹機能の低下が 示されている.このように,非活動と腰痛の関連性を示 した論文がある一方で,関連性を否定する論文もある. Hartvigsenらの総説15)によると,1985~1997年の文献 から抽出された35編では,どの研究も十分な質を満た さず,仕事中に座っていることが腰痛のリスク要因であ る と い う 広 範 な 意 見 は 支 持 さ れ な か っ た. 同 様 に, Chenらの総説16)によると,腰痛と座りがちな行動の関 連性を調べた結果,1998~2006年の文献1778編から 抽出された20編で座りがちな行動が腰痛を発症する危 険因子であることを示す証拠は限られていた. 職業性の腰痛の管理には,動的筋安定化手技による治 療が,2つの物理的刺激(超音波・短波ジアテルミー) と一つの運動療法(腰部強化運動)を組み合わせた「従 来型」の治療よりも効果的であることが明らかにされて いた17).また,バイオフィードバックによる姿勢トレー ニングは,腰痛を軽減し,立位での過度の胸部曲線を減 少させ,身体活動を増加させる可能性があることが示さ れていた18).別の研究では,直立した両脚でのバラン スを維持する筋に焦点を当てた軽度の自宅運動の毎日の 実施が,腰痛予防に好影響を与える可能性があることが 示されていた19).また,インターフェース圧力マッピ ングシステムでの接触面圧力の測定は,職場において, 慢性腰痛の原因を特定し,治療プログラムを確立し,人 間工学的に適合させるためのエビデンスに基づく臨床 ツールの一つであるとの報告があった20).RCTでは, 前方傾斜椅子の使用と,人間工学に基づく姿勢保持およ び理学療法アドバイスを対照群と比較した結果,2つの 介入のいずれも腰痛が軽減した者が多かったとされてい た21).一方,職場でマイクロ回転シートを備えた椅子 を使用した場合の腰痛緩和への好影響を証明するために 研究を行ったが,効果は示されず,椅子の座り方の概念 と椅子の人間工学的機能との組み合わせが他のタイプの オフィス用椅子よりも良い影響をもたらすかどうかは明 らかにならなかった22). 筋骨格系全体の疼痛や不快感に対する介入研究が6編 あった.オフィスワーカーにおいて,4時間の座位状態 を中断せずに続けたグループと,1時間ごとに10分間 立位またはペダリングを行うグループの効果をアンケー トをもとに比較したところ,ペダリングを行うグループ の方が不快感は低く,実施後には注意力の短期的な改善 が観察された23).他の研究によると,姿勢矯正運動プ ログラム(ストレッチ,姿勢矯正,体型矯正)を行うこ とで,筋骨格痛が緩和され,座位姿勢で効率的に作業を 行うことができることが明らかにされている24,25).コー ルセンターのオペレータを対象に,4つの異なるワーク ステーション(従来型,座り立ち型,適宜休憩をとるこ とを知らせる備忘ソフトウェアを伴う従来型,休憩をと るように勤労者に思い出させるための休憩備忘ソフト ウェアプロンプトを備えた座り立ち型)で仕事をした場 合に,座り立ちを促したりソフトウェアで姿勢変化や休 憩をディスプレイで示したりする介入は,仕事の生産性 に影響することなく,一日の中で勤労者に大きな姿勢の 変化を容易に導くことができ,身体各部の不快感を減少 させるのに有益であることが示された26).また,デス クワーカーを対象に,職場組織によるサポートのみの群 と,組織サポートおよび動作に関するリアルタイムの フィードバックを提供するモバイルアプリケーションの 2つの座位減少介入による筋骨格痛への効果を比較した 結果,筋骨格痛強度の経時変化は介入群間で有意差はな かったとしている27).別の研究では,仕事での座位時 間の短縮を目的とした3ヵ月の介入(スタンドデスクの 使用,立ったままやウォーキングしてのミーティング) の筋骨格痛に対する効果を検証した結果,頸肩部痛は, 介入の1ヵ月後には軽減されなかったが,3ヵ月後には 軽減がみられ,痛みの総スコアにわずかな減少がみられ たと報告されている28).コクランレビューは,前述し たとおり,職場環境として,立ったり歩いたりする機会 の増加の筋骨格系の不調に対する効果について否定的で あり,座り立ちデスクの使用の効果に肯定的である1). オフィスワーカー140名を対象とした調査研究によ ると,座っている時間が増えることで,健康転帰が悪化 するという認識であることが示された.弊害として最も 多かったのが筋骨格系の愁訴であり,次に一般的な健康 状態および体重増加または肥満が続いた29).職場での スタンド型ワークステーションの使用についての認識を 調査した結果では,半数の者が筋骨格痛の軽減と姿勢の 改善を利点として挙げており,全般的に肯定的で満足度 が高かったとされる30). 質的分析に含めた30編の論文の帰結測定の項目は, 身体の機能や構造,症状,能力であり,ADLやQOL を検討したものはなかった. 量的分析に含めた論文の一覧を表1に示す.種々の介 入の効果が検討され,多岐にわたる帰結評価がなされて いた.PEDroによる論文の質に関する点数は10点満点 中3~5点であり,11編のRCTの質は高いものではな かった(表2). 運動トレーニングが脊柱安定性・姿勢制御に及ぼす影 響について検討したRCTは2編あり,メタアナリシス に投入された.そのフォレスタープロットを図2に示 す.効果指標として標準化平均値差(standardized mean difference:SMD)が用いられ,Z値は0.38(p=0.70) であり,運動トレーニングの効果は認められなかった. 異質性を示すI2の値は74%であった. 座位時間の短縮・身体活動の増加が身体各部の疼痛に
及ぼす影響を検討したRCTは2編あった.メタアナリ シスの結果を図3に示す.Z値は0.30(p=0.76)であり, 介入の効果は認められなかった.I2の値は75%であっ た. 他に介入と帰結評価の組み合わせが類似した研究同士 はなく,この2つのメタアナリシス以外,統計的検討は できなかった.また,それぞれのメタアナリシスには2 つずつのRCTしか投入できなかったため,公表バイア スの検討のためのファンネルプロットを示すことができ なかった. 表1 抽出されたランダム化比較試験(RCT) 番 号 筆頭著者 発行年 対象者 介入方法 期間 比較対照 帰結評価項目 1 Van Heerden21) 1988 腰痛を有するオフ ィスワーカー (64 名) 前方傾斜椅子 人間工学的適応と理学 療法アドバイス 4 週間 介入なし 腰痛の程度 新たな疼痛の発生 2 Carter10) 2006 座りがちな者 (20 名) スタビリティボールトレーニング 10 週間 介入なし 静的背部耐久試験脊椎安定性 3 Lengsfeld22) 2007 慢性腰痛を有する オフィスワーカー (248 名) 受動的回転動的椅子 2 年間 介入なし 疼痛(ODI) 4 Kumar17) 2009 腰痛のある男性 (102 名) 動的筋安定化手技 20 日間 (物理的刺激従来型治療 と運動) 疼痛(VAS) 肉体的頑強さ (背・腹の圧変化) 5 Granacher9) 2011 座りがちな事務を している中年 (34 名) バランス練習と 筋力増強運動 (16 週間)8 週間 介入なし 静的・動的姿勢制御跳躍の高さ 足関節底屈筋筋力 6 Moore19) 2012 座りがちな健常中 年勤労者 (30 名) 日常の運動(体操) 1 年間 介入なし 腰痛の発生 傍脊柱と腹部の筋力 ピーク呼気流量 7 Lee6) 2016 頭部前方偏位 (28 名) ピラティス 10 週間 複合運動 頭蓋脊椎角疼痛(VAS) 8 Danquah28) 2017 筋骨格痛を有する オフィスワーカー (317 名) 着席時間の短縮 (1 ヵ月間) 3 ヵ月間 介入なし ・首肩疼痛(3 段階評価) ・背中 ・四肢 9 Brakenridge27) 2018 デスクワーカー (153 名) 職場組織のサポート+活動量計 3 ヵ月間 職場組織のサ ポートのみ ・身体筋骨格痛(NMQ)9 つの部位 10 Park18) 2018 静的姿勢の勤労者 (31 名) バイオフィードバック姿勢トレーニング (Lumo Lift) 3 週間 介入なし 良い姿勢を維持した時間 歩数 Cornell 筋骨格系不快感 (頻度,不快感,干渉) 11 Kett11) 2020 オフィスワーカー (59 名) ローラーマッサージ 即時(4.5 時間の座位後) 介入なし 筋硬度 ・僧帽筋 ・傍胸椎筋 ・傍腰椎筋 ODI:Oswestry Disability Index,VAS:Visual Analogue Scale,NMQ:Nordic Musculoskeletal Questionnaire.
表2 RCTの内的妥当性と統計学的情報の記載・方法の点数
Van Heerden21) Carter10) Lengsfeld22) Kumar17) Granacher9) Moore19) Lee6) Danquah28) Brakenridge27) Park18) Kett11)
PEDro scale
(点) 3 3 4 5 5 5 5 4 5 4 5
IV.考 察
座りがちなライフスタイルは,職場や家庭でのコン ピュータ化,長時間のテレビ視聴,画面上で行うゲーム の普及などにより定着しつつある.さらに,パソコンや スマートフォンなどの使用姿勢から生じる頭部前方偏位 が問題となっている.よって,非活動に伴う逸脱姿勢に よる弊害は以前と比較して多く生じている.本文献研究 のPICOに合致する文献は1編21)を除いて全て2000年 以降に公表されたものであった.それゆえに,質的分析 および量的分析に含まれた論文数には限りがあった. 質的分析の結果では,非活動に伴う逸脱姿勢が影響す る身体の機能や構造,症状,身体能力,およびオフィス ワーカーが長時間座位で過ごすことで生じる弊害やスタ ンド型ワークステーションの使用についての認識につい て言及した. 頸肩痛に対して,非活動やそれに伴う逸脱姿勢は多く の発生要因の一つと考えられ,また,座位で過ごすこと が必ずしも悪影響を及ぼすのではなく,短時間の座位は むしろ好ましい影響を与えることが考えられた. 頭部前方偏位は,頸部の筋緊張の高まりにあまり関与 せず,理学療法介入以外の介入が考慮されることが望ま れる可能性が示された. 脊柱の可動性についてはパソコン操作のうちマウスの 使用時に頸胸部の可動性が少なく,座りがちで活動性が 低いことが胸椎の可動性を低下させること,理学療法介 入が特に動的姿勢制御を改善することが示唆された. 背部痛に対しては,スタビリティーボールトレーニン グやローラーマッサージが有効である可能性が明らかと なった. 慢性腰痛は,最も多く検討されており,非活動に伴う 逸脱姿勢の影響の帰結として注目されていることがうか がわれた.特に脊柱後弯座位姿勢が悪影響を及ぼすこと が考えられた.座りがちで非活動であるライフスタイル は,腰痛を引き起こす原因と考えられがちであるが2編 の総説はこれを否定しており,このライフスタイルが腰 痛の発生原因であるかどうかは不明である. 職業性の腰痛の管理には,動的筋安定化手技による治 療やバイオフィードバックによる姿勢トレーニングが有 効であることが示されたが,椅子の座り方の概念と人間 工学的機能との組み合わせによるマイクロ回転シートを 備えた椅子の有効性は明らかにならなかった.また,腰 痛予防として,直立位でのバランスを維持する筋の強化 運動が有効であることが示された. 全身の筋骨格系の疼痛や不快感は,長時間座位で仕事 をする職業人において,定時のペダリング運動,姿勢強 制運動プログラム,立ち座りと休憩を促すワークステー ション,スタンドデスクの利用とミーティング時の立位 やウォーキングによって軽減されるとされていた.対し て,リアルタイムに動作をフィードバックするアプリ ケーションは有効でないと報告されている. また,調査研究によって,座り続けることは健康上の 特に筋骨格系への悪影響があると考えられており,スタ ンド型ワークステーションについて約半数の者が有効性 を支持していた. 概観すると,理学療法には治療的介入と環境調整的介 入があり,その内容が多彩であること,帰結評価として 身体の機能や構造,症状,身体能力が用いられており, 結果が異なっていること,最も多く検討されている慢性 腰痛に関しても質が高くない12編の論文しかなく十分 図2 介入なしと比較した運動トレーニングの脊柱安定性・姿勢制御に対する効果 図3 介入なしと比較した座位時間短縮・身体活動増加の身体各部の疼痛に対する効果までは満足できる研究デザインでの取り組みがなされて いなかった.非活動による逸脱姿勢がもたらす筋骨格系 の弊害は近年になって問題視され,これに対する介入効 果についてはさらに近年になって行われてきたことがう かがえる.職場と家庭でのコンピュータ化はますます進 み,身体活動を伴わない余暇や娯楽の時間が増えること が予想される.これに伴って,非活動に伴う逸脱姿勢が 筋骨格系の弊害もさらにもたらす可能性がある.このこ とに対する対策として産業医による指導,行政による労 働条件・社会環境の改善,振興団体によるスポーツ活動 の推奨などが考えられる.理学療法介入も一つの手段で あるが,この効果についての検討は緒についたばかりで あり,さらなる検討の需要が高まるものと考える. 本文献研究の限界として,PEDroによる研究の質が 必ずしも高くないこと,分析に耐え得るだけの十分な数 の検討がなされていないことが挙げられる. 結論として,本レビューにおいてメタアナリシスに投 入可能な論文が少なく現段階では明言できないものの, 質的分析では理学療法介入が非活動に伴う逸脱姿勢の悪 影響を改善するとする論文が比較的多く見出された.取 り上げられていた帰結は,機能や構造,症状,身体能力 までであり,ADLやQOLにまで言及した報告はなかっ た.本レビューで取り扱った内容は現代的問題であり, 今後,非活動やこれによってもたらされる固定化された 逸脱姿勢がますます大きな問題となってくることが予想 される.よって,この問題に対する理学療法介入の有効 性が示されることが望まれるため,ADLの能力やQOL にまで帰結評価を広げた,質の高いさらなる検討が必要 と考える. 利益相反 本レビューの執筆にあたって全著者に利益相 反はない. 引用文献
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