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流体抵抗と慣性を同時に満たす集中定数系モデルの導出と基本的流路形状における検証

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(1)

1.緒   言  油圧システムを設計する上で油圧回路の動特性の予測は 重要であり,システムの動特性を予測するためには,計算 負荷が小さく,迅速に解析結果が得られるシステムシミュ レーション1)-2)が多く用いられている.システムシミュレー ションを行うためには,油圧回路を構成する要素の全ての 要素に関連する数学モデルが必要となる.特に,油圧構成 要素を接続し流体動力を伝達する流路は,システムの動力 学に大きな影響を及ぼすため,過去に多くの研究が行われ てきた3)-7).本研究の最終目的は,図1に示すような複雑 形状を有する流路が配置された油圧回路の動特性を合理的 に予測することにある.この流路には,急拡大部,急縮小 部,曲がり部,断面積の違いなど,様々な要素が含まれて いる.  これまでに直円管や矩形流路などの一様断面を持つ流路 の動特性に関して,多くの研究がなされてきた8)-10).しか し,複雑な形状を持つ流路については参考にできる研究例 は少ない.Johnstonらの論文11)では,様々な形状を持つ流 路要素に関して流体の慣性効果を予測するという興味深い 結論が示されている.しかしながら,図1のような任意の 複雑形状を持つ流路に関して適用できるまでには至ってい ない.システムシミュレーションにおけるモデルは0D (集 中定数系)と1D (分布定数系),およびその組み合わせに 分類できる12).最も一般的なアプローチは集中定数系モデ ルの利用である.  一方,近年,コンピュータ技術が開発され,計算流体力 学(CFD)の数値精度が向上しており,年を追うごとに CFDソフトウェアを利用しやすい環境が整ってきた.  そこで本研究では,複雑な形状の流路に対するCFDを用 いたより現実的な集中定数系モデル作成法の提案を行う. 更に直管及びオリフィス付き配管系のステップ応答に適用 し,従来から用いられてきた流路モデルとの解析精度の比

流体抵抗と慣性を同時に満たす集中定数系モデルの導出と

基本的流路形状における検証

肥 後   寛

**

,清 水 文 雄

***

,田 中 和 博

****

Derivation of a lumped parameter system model of a flow passage simultaneously modeling

resistance and inertia and verification in basic flow passages

Hiroshi HIGO, Fumio SHIMIZU, Kazuhiro TANAKA

 A laminar flow resistance in a pipe is usually used as a representative model of flow resistance because it is convenient to use and often gives reasonable resistance value in a small size pipe under steady state condition. However, the laminar flow resistance model in a pipe is not applicable in an oil flow passage of a real circuit because a flow passage has complex shape in a real circuit. Furthermore, the mathematical model of fluid column in a pipe made in inviscid flow condition is often used as an inertial model in considering dynamic condition. In the real condition of operating oil-hydraulic circuit, the above mentioned two effects, a complex shape of flow passage and flow dynamic characteristics, appears in viscous flow condition. A new model or modeling method to include and solve these effects reasonably becomes necessary. A new modeling method using CFD is introduced in this paper.

Key Words:Oil hydraulic, Flow passage, System dynamics, CFD, Modeling, 1DCAE, Bondgraph

研究論文    *令和2年11月12日 原稿受付   **九州工業大学飯塚キャンパス技術部 (所在地:福岡県飯塚市川津680-4) (E-mail:[email protected])  ***九州工業大学物理情報工学科

****九州工業大学 Fig. 1 Example of oil passage with complex shape

(2)

較を行い,本研究で提案されたモデルの妥当性について検 討を行う. 2.主 な 記 号 A :直管の断面積 [㎡] Aori :オリフィスの断面積 [㎡] Ca :流量係数 [-] D :直管の直径 [m] d :オリフィスの直径 [m] I :流体慣性係数 [㎏/m4 Isp :流体慣性係数(直管) [㎏/m4] K :体積弾性係数 [Pa] L :直管の長さ [m] Lori :オリフィスの長さ [m] P :圧力 [Pa] Ploss1 :管摩擦損失(直管) [Pa] Ploss2 :管摩擦損失 [Pa] Q :流量 [㎥/s] R :流体抵抗係数(一次) [Pa・s/㎥] R’ :流体抵抗係数(二次) [Pa・(s/㎥)2 Rsp :直管層流損失 [Pa・s/㎥] T :時間 [s] V :体積 [㎥] ρ :流体密度 [㎏/㎥] ν :流体動粘度 [㎡/(Pa・s)] μ :粘度 [Pa・s] ω :流量変動角周波数 [rad/s] ω’ :システム角周波数 [rad/s] 3.流路の集中定数系モデル 3.1 従来の流路における数学モデル ⑴ 流体抵抗  流路の集中定数系モデルは,流体を非圧縮性と仮定する と,抵抗,慣性の観点から独立して表現することができる. まずは最も単純な直管流れ(層流)を想定し,圧力P1,P2 が上流と下流側から与えられ,その結果として流量Qが算 出されるモデルを考える.この場合,抵抗(管摩擦損失 Ploss1)を表す要素Rspの特性式は,以下のハーゲンポアズイ ユの式で表現できる. Ploss1=Rsp・Q ⑴ ⑵ ⑵ 流体慣性  流路の上流と下流の圧力差P1-P2には,流体による圧力損 失および慣性効果が含まれる.したがって,慣性に関連す る圧力差は,圧力差P1-P2から流路の圧力損失Ploss1を差し引 くことによって表現できる.したがって,慣性を表す要素 Ispは,式⑶と式⑷で表現できる.以上をまとめると図2の ようになる. ⑶ ⑷ 3.2 新しいモデル化手法(SIRモデル)  式⑴~式⑷は,直管の数学モデルとして従来から用いら れてきた13)-15).これらの式は,流路における流体柱の抵抗 効果と慣性効果をそれぞれ示している.しかし,実際に用 いられる油圧マニフォールドは非常に複雑な形状流路を有 しており,作動油は強い非線形性をもつ三次元流れとなる. 従来の考え方によると慣性要素と抵抗要素は,しばしば独 立して定義されるが,実際は,これらの2つの特性は相互 に関連しており,これらの要素を同時に満たすモデルを確 立することが望まれる.そこで相互に影響を及ぼしあうと いう考え方に基づき,以下に示すSIR (Simultaneous Inertia and Resistance)モデルを提案する.  式⑴と式⑶に示したように,抵抗と慣性は流路形状の影 響を受ける.そこで複雑な流路形状に適用するために抵抗 Ploss2を式⑸で定義する.この式で与えられる抵抗は,線形 項と非線形項で表現されるため,複雑な任意の形状の流路 にも適用することが可能となる. Ploss2= RQ+R’Q2 ⑸ ⑹ 式⑸右辺の第1項は層流抵抗を示し,第2項はオリフィス 等による抵抗を示している.摩擦のないニュートン第2法 則によれば,流路の流体柱の慣性は,式⑹で表現される. 慣性を導出する際,従来の手法では任意の管路を直管に置 き換え,その長さLと直径Dを式⑷に代入する必要があった. SIR法では,CFD解析等から圧力損失を取得さえすれば, 合理的に管路の流体慣性を導出することができる. 3.3 SIRモデルの抵抗特性,式⑸  本研究では,抵抗の特性は,定常流れにおける圧力損失 と体積流量との関係で表す.この関係を表したグラフを 128µL RspπD4 ∫(P1-P2-Ploss1)dt 1 Q=I sp Isp= AρL

Fig. 2  Schematic figure of the flow passage for incompressibility

L , A, D , ρ , μ

Rsp Isp System-Modeling Pipe Configuration 1 loss sp P =R Q⋅ 1

(

1 2 loss1

)

sp Q P P P dt I =

− − ∫(P1-P2-Ploss2)dt 1 Q=I

(3)

Ploss2-Q線図と呼ぶことにする.本研究では,準定常状態で 抵抗モデルを仮定するため,非定常管摩擦損失は無視され ている.非定常管摩擦損失はUchida16)やOhmi17)らによって 単純な形状を対象に研究されており,この影響については 後述(4.1節)する.  オリフィスの動特性についてはLau.18)の文献で詳しく報 告されている.この論文では周波数が1000[㎐]以下であ れば,流動特性に影響しないと報告されている.いずれに せよ,図1のような実際に油圧回路として用いられる流路 はとても複雑な形状をしているため,非定常抵抗を考慮に 入れたモデル化は困難である.  そこで本研究では,より実用的に抵抗を表現するために 定常時の流動抵抗を用いることにした.また本論文では実 際の油圧システムで多く用いられているステップ応答を解 析対象としている.ステップ関数には無限大の周波数が含 まれるが,高周波数の成分の振幅は小さくなる.従って高 周波数帯で影響を持つ粘性が解析結果に与える非定常の影 響は,相対的に小さくなると考えられる.  入口境界を流速とし,出口境界を圧力とする条件で定常 CFD解析を行った.流路の圧力損失Ploss2は,解析結果の入 口面と出口面の圧力差から求めた.条件を変えて,この計 算プロセスを数回繰り返すことによって,流量および圧力 損失の関係を示すPloss2-Q線図を得ることができる.抵抗係 数RとR’は,Ploss2-Q線図を最小二乗近似することにより, 導出することができる.図3にPloss2-Q線図の例を示す. 3.4 SIRモデルの慣性特性,式⑹  式⑸を式⑹に代入すると式⑺が導かれる. ⑺ 流体慣性係数Iの特性を導出するために,ステップ状の圧力 入力を与えた際の非定常CFD解析を実行し,流量の時間変 化(流量の動的変化)を算出する.入口および出口境界条 件は,管路内の最大流量を想定した際の圧力値をPloss2-Q線 図から読み取り,この値を入口面の圧力値とし,出口面は 大気圧0[Pa]と設定する.図4に計算結果の例を示す. この例では10-5[㎥/s]を最大流量とした.式⑺の流体慣 性Iは係数RとR’に影響される.慣性特性Iは,図4で計算さ れた流量Qの時間変化に式⑻の最小二乗法を適用すること により計算される.  以上,SIRモデルの係数R,R’,Iを算出する手順をまと めると次のようになる.(図5)  ①  Ploss2-Q線図作成のため,定常CFD解析性能曲線を近 似できる点数分だけ(数回)行う.  ②  動的な流動特性を把握するため,非定常CFD解析を 1回だけ行う.  ③  Ploss2-Q線図から式⑸を用いて最小二乗法を適用する ことによりRとR’を算出する.  ④  ②で得られた流動特性から式⑺を用いて最小二乗法 を適用することによりIを算出する.  ⑤  それぞれ得られた特性を管路のシステム動特性解析 に適用する. 4.SIRモデルの検証 4.1 直管による検証  本節では,前章までに提案されたSIRモデルを直管に適 用し,直径と長さの影響について検証する.すなわち,単 純形状である直管のSIRモデルの結果をハーゲンポアズイ Fig. 3 Ploss2-Q diagram by steady CFD

P lo ss 2 [k Pa ] Q [m3/s] dQ I +RQ+R’Q2=∆P dt

Fig. 4 Flow dynamic characteristic by unsteady CFD T [s]

Q

[m

3/s]

Fig. 5  Derivation of the characteristic parameters such as

R, R’, and I Ploss2-Q diagram based on steady CFD 2 2

'

loss

P

=

RQ R Q

+

IdQ RQ R Q' 2 P dt + + = ∆ R, RI Least-square method 2 2 ' loss P =RQ R Q+ Q=1I

(

P P P1− −2 loss2

)

dt SYSTEM-Modeling Dynamic characteristics of flow rate based on unsteady CFD

(4)

ユ式や慣性の式での計算結果と比較することにより,本モ デルの妥当性について議論する.直管の直径は4[㎜],長 さは50~800[㎜]とした.数値計算条件を表1に示し,形 状を図6に示す.  はじめに流体抵抗について検証する.従来から用いられ ている層流の直管抵抗の数学モデルは式⑴となり,抵抗係 数は式⑵のように表すことができる.  定常流の条件下で,従来のモデル(式⑴)とSIRモデル (式⑸)を用いて得られた抵抗に関する結果の比較を図7 に示す.図7⒜はSIRモデルと式⑴のPloss1-Q線図の比較を 示している.両者はほぼ一致していることより,SIRモデ ルの解析結果はハーゲンポアズイユ式である式⑴の結果と ほぼ等しいことがわかる.図7⒝は管路長さに対するSIR モデルの抵抗係数Rとハーゲンポアズイユの式⑵の比較で ある.SIRモデルのRと式⑵のRspはほぼ等しく,直管では理 論通りの管摩擦損失が計算されていることがわかる.  図7⒞は抵抗の非線形項R’と長さLの関係を示している. R’は0にならないが,これは最小二乗近似による誤差の影 響であると考えられる.図7⒟に式⑸内のRとR’の各項の 圧力損失と管路長さとの関係を示す.この結果よりR’によ る圧力損失はRと比較して十分小さく図7⒜で示すように 圧力損失は適切に計算されている.したがって,このよう な直管形状の抵抗特性に非線形抵抗の要素R’はほとんど影 響を及ぼさないことが確認できる.  次に,直管の流体慣性について検討する.これまでの手 法では直管を流れる流体の慣性は,非粘性流体を仮定し, 検査体積の圧力差に作用する検査体積内の流体柱の形状か ら計算される(式⑷).  非定常の条件下で従来モデルとSIRモデルの慣性係数Iを Table 1 Calculation conditions of straight pipes

Calculation Parameters D[㎜] 4 L[㎜] 50, 100, 200, 300, 400, 800 Boundary condition Inlet[㎥/s] 1×10-6-1×10-5 Outlet[Pa] 0 Re 9.0-90.0 Calculation condition ρ[㎏/㎥] 853 μ[Pa・s] 0.0302

Number of mesh 300,000 Tetra

Fig. 6 Calculation target (straight pipe)

⒜ Ploss-Q diagram (L=200[㎜]) Eq. (5) Eq. (1) Q [m3/s] Pr ess ur e [P a]

⒝ Relationship between R and L

⒞ Relationship between R’ and L

⒟ Comparison with R and R’

(5)

比較したグラフを図8⒜に示す.流体が流路を流れると, 粘性作用と慣性作用が同時に発生する.しかし,式⑷はこ の状況を考慮しておらず,この式は,改善する必要がある. 図8⒜より,慣性を示すI値の結果は一致せず,SIRモデル のI値は従来のモデルよりも約1.3倍も大きいことがわかる.  この理由は,式⑷は非粘性流の仮定から導出されており, 一方でSIRモデルのI値は抵抗と慣性を同時に満足するよう に導かれるという違いがあるためである.SIRモデルは, 粘性流れを考慮したNS方程式を数値解法で解析するCFD 結果に基づいており,その管路モデルは従来のモデルより も合理的であるといえる.また,異なる流量に対する慣性 のI値を図8⒝に示す.流量に関係なく慣性は一定となって いることから,定性的には式⑷と同じであることが示され ている.  従来モデルの動特性を表す式⑻は,式⑴から式⑷を組み 合わせることにより導出される. ⑻ 各々のモデルを用いた直管の動特性解析と非定常CFD解析 結果の比較を図9に示す.SIRモデルは従来の数学モデルで ある式⑻より,CFD結果と良く一致していることがわかる.  次に,Ohmiらの研究17)を利用して,定常抵抗と非定常抵 抗の数値差を定量的に考察する.直円管で計算した場合, 図9より流量変動に関わる時間は約0.04秒であった.Ohmi ら17)によれば,直管の場合,管内流動の無次元角周波数 (D/2)(ω/ν)1/2が小さい領域(<1.32)では,管内の流体の剪 断力の準定常解と厳密解の差は小さく,準定常的な取り扱 いが可能であるし,(D/2)(ω/ν)1/2が大きな領域(>28.0)で は,その影響は無視できるとされている.この場合,(D/2) (ω/ν)1/2≒4となり,参考文献より厳密解と同程度になる ため,せん断力の影響が厳密解と同程度に見積もられてい ることになる.実際の油圧回路では流量変動に関わる時間 がさらに大きくなると考えられる.この場合,(D/2) (ω/ν)1/2の値は更に小さくなり,準定常流の仮定を適用して も妥当である領域に接近すると考えられる.  さらにシステム応答の観点から流動変動に与える時間を 考察する.このシステムの帯域幅をω’[rad/s],時定数をτ [s]とし,ω’=2π/τと考えると,時定数τは約0.02[s]であ るので,ω’は約100π[rad/s]となる.この帯域幅ω’を変動 周波数と考えると,(D/2)(ω’/ν)1/2の値は6.0程度となる. 従って,この値は先ほどの値とほぼ同じ値になる.いずれ にせよ,準定常の仮定をおおよそ適用することが出来ると 考えられる. 4.2 オリフィス管による検証  次に,SIRモデルをオリフィス板が中央に設置された2 本の円管に適用する.表2と図10に解析対象と計算条件を それぞれ示す.  この場合,オリフィスの圧力損失Ploss_oriは,式⑼で表現さ れる.オリフィス板の形状は円筒状となっている. ⑼ この式中の流量係数Caは低レイノルズ領域ではレイノルズ 数により変動する.Johansen19)によるとその流量係数C aは 今回のレイノルズ数40-400の範囲でほぼ一定で0.7程度であ る.また日本工業規格JIS Z 8762-220)によるオリフィス流量 計測法を参考に適用すると約0.64となる.ここで,Aoriはオ リフィス板の断面積である.この流量係数の差を考慮する とPloss2をQの二次関数として表現しても支障はないし,取

⒜  Comparison of inertia characteristic between the conventional model and the SIR model

I[

kg

/m

4]

(Eq. 4)

⒝ Relationship between Inertance and flowrate Fig. 8  Calculation result of inertia value by SIR model

(straight pipe) I[ kg /m 4] Q [m3/s] 128µL dQ Q+R’Q2=∆P A dtρL πD4 2c2Aori2 Ploss_oriρ Q2

(6)

り扱いが便利である.そこで供試管全体の抵抗の数学的モ デルは,式⑵と式⑼の和となると考えると,式⑽で表すこ とができる. ⑽  図11⒜-⒞は,式⑽およびSIRモデルから得られたP-Q線 図を示している.青い点はCFD解析による結果であり,赤 い点はJISの規格より計算された流量係数Ca=0.64,緑の点 はJohansen19)で提唱されているC a=0.7をそれぞれ用いた結 果を示している.これらの図で示されているように,CFD 解析により得られた圧力損失は,従来の手法による流量係 数では一致していないことがわかる.これは,利用したオ リフィス形状がJISの規格と一致していないことが原因であ り,CFDを使用しない場合,事前に実験的な手法により流 量係数を予測することが必要であることを示している.  図12および図13は,表2の条件で解析された抵抗係数R, R’と供試管の長さとの間の関係を示す.これらの図より, オリフィスの直径が減少するにつれて,係数RおよびR’が より大きくなることが分かる.またR’は管路の長さに依存 せず,逆にRは管路の長さに比例して直線的に増加するこ とがわかる.この理由として,係数Rは,層流の場合の直 管の管摩擦抵抗を表すことから管路の長さが直接的に影響 するためと考えられる.一方,R’はオリフィス板の剥離に よる損失を主とする圧力損失を表しているので,管路長さ には影響されないと考えられる.  これらの計算結果から損失の影響を調べる.例えば,管 路長さ400[㎜],管路直径4[㎜],オリフィス直径1.0[㎜] 128µL 2Ca2Aori2 Ploss2Q+ Q2 πD4 ρ ⒜ d=1.0[㎜] ⒝ d=0.8[㎜]

Fig. 11  Comparison of Ploss2-Q diagram between conventional model and SIR model

⒞ d=0.6[㎜]

Fig. 12 Relationship between R and L Table 2 Calculation conditions of orifice pipe

Calculation Parameters D[㎜] 4 L[㎜] 100, 200, 300, 400 d[㎜] 0.6, 0.8, 1.0 Lori[㎜] 1.0 Boundary condition Inlet Q[㎥/s] 1×10-6-1×10-5 Outlet P[Pa] 0 Re 40.0-400.0 Calculation condition ρ[㎏/㎥] μ[Pa・s] 853 0.0302 Number of mesh 450,000 Tetra

(7)

のオリフィスが配置された流路に10-5[㎥/s]の油が流れる 場合の圧力損失の内訳を調べる.この場合,図12と図13より Rは3.55×109[Pa・(s/㎥)2],R’は1.33×1015[Pa・(s/㎥)2]であ ることがわかる.このことから式⑸の第1項は,35.5[kPa] であり,第2項は133.0[kPa]である.従って,オリフィス の効果はパイプの長さよりも3.8倍大きいことが分かる.  一方,供試管の慣性の数学的モデルは,直管部とオリ フィス部の慣性係数の和とすることができる11).すなわち,となる.オリフィス部の長さLoriは実形状(1[㎜])とした.  Johnstonら11)の文献では,L oriを精度よく予測する手法が 研究されている.しかしながら,図1のような複雑形状を 持つ流路においては,オリフィスの出口では縮流され,実 際の慣性要素としての長さは更に長いと考えられるが,そ の大きさを各所で事前に計算することは難しい.そこで本 論文では形状からLoriを1.0[㎜]として計算している.  図14は,非定常CFD解析によって得られたd=1.0[㎜]の オリフィス板を中央に含むパイプ内の流量の変化を,また 図15は,その時の流線の変化の様子を示している.オリ フィス出口付近で発生する渦は,時間と共に成長し,約0.4 [msec]で安定した流れになることがわかる.したがって, 慣性効果は非常に短時間で有効かつ重要になる.  次にSIRモデルによって得られたオリフィス直径d=1.0 [㎜]の場合の慣性係数Iとオリフィス板を含む管の長さの 関係Lを図16に示す.従来のモデル及びSIRモデルでは,両 者とも慣性係数Iは管路長さLの一次関数であることが示さ れている.しかし,従来モデルとSIRモデルの慣性係数Iは 異なった値となっている.これは直管の時と同様の理由に より,慣性係数Iに違いが発生したと考えられる.  図17にオリフィス直径と慣性係数Iとの間の関係を示す. 慣性係数Iは,オリフィス直径の増加とともに減少する. SIRモデルの慣性の値は,式⑾で求めた慣性の値と定性的 な傾向は同じである.この結果は,直円管とオリフィス板 の慣性は重ね合わせができることを示唆しており, Iop= A A oriρL ρLori

Fig. 13 Relationship between R’ and L

Fig. 14  Time fluctuation of flowrate of the orifice pipe by CFD ⒜ t=0.2[msec] Flow direction ⒝ t=0.4[msec] Flow direction ⒞ t=1.0[msec]

Fig. 15  Streamlines of the orifice pipe (d=1.0[㎜],L=200[㎜])

(8)

Johnstonら11)が示している結論と同様となることが確認さ れた.  オリフィス直径d=0.6[㎜]の場合の,オリフィス管のス テップ圧力による流量の動特性のシステムシミュレーショ ン予測結果と非定常CFD解析結果の比較を図18に示す.シ ステムシミュレーションは本研究で提案したSIRモデル及 び従来手法で用いられてきたオリフィス管路の2つのモデ ル(流量係数Ca=0.64,0.7)を実施した.  流量係数0.64のケースでは非定常CFD解析結果と異なる 結果になっていることがわかる.一方,流量係数が0.7の場 合では,CFD解析結果に良く接近する結果となったが, SIRモデルによる解析の方が,さらにCFD解析結果に近い 結果となった.この結果より,従来手法では流量係数の設 定による影響が大きいことがわかる.しかし事前に流量係 数Caを決定することは困難である.表3,4に,それぞれ オリフィス直径を1.0,0.8,0.6[㎜]とした場合の非定常 CFDの解析結果に対する,各システムシミュレーションの 解析結果の定常流速と時定数の誤差を示す.  定常流量と時定数の各システムシミュレーション結果と 非定常CFD解析結果に対する誤差は,SIRモデルによる手 法の方が小さくなることが示されている.この結果は,オ リフィスの流量係数Caを事前に正確に決定することが難し いことを示していると同時に,より正確に数学モデルを作 成するためには,粘性流を考慮に入れて導出された慣性係 数を使用することが重要と考えられる.本研究で提案され たSIRモデルはCFDの結果に基づいているため,誤差は従 来のモデルよりも小さくなることが示された. 5.結   言  本研究では,CFD解析を利用した油路のシステム係数の 導出方法(SIRモデル)を提案した.本手法では,油路の 抵抗と慣性を同時に満たすように抵抗と慣性の係数を導出 する.流体の抵抗は準定常でモデル化している.流体抵抗 の非定常性については,単純な形状に関して良く知られて いるが,マニフォールドのような複雑形状を持つ流路に対 して,非定常の粘性をモデル化することは渦や剥離の影響 があるため,これまで現実的ではなかった.慣性係数に対 しても過去の文献では,理想的で単純な形状を対象として おり,実際に用いられる複雑な形状に適用した慣性係数の 導出は困難であった.  本研究では直管とオリフィス管にSIRモデルを導入し, システム動特性解析を行い,CFD及び従来から用いられて Fig. 16 Relationship between I and L

Fig. 17 Relationship between I and d

Fig. 18 Dynamic changes of Q (L=200[㎜])

Table 3  Difference of SIR and conventional models from CFD result (Steady flowrate)

Orifice Diameter 0.6[㎜] 0.8[㎜] 1.0[㎜] SIR Model 1.5% 1.5% 1.0% Conventional Model Ca=0.7 3.6% 1.5% 2.0% Conventional Model Ca=0.64 6.6% 6.6% 6.5%

Table 4  Difference of SIR and conventional models from CFD result (Time constant)

Orifice Diameter 0.6[㎜] 0.8[㎜] 1.0[㎜] SIR Model 1.3% 1.5% 1.4% Conventional Model Ca=0.7 16.7% 5.9% 10.3% Conventional Model Ca=0.64 33.3% 16.6% 31.0%

(9)

いるモデルとの解析結果の比較を行った.その結果,SIR モデルは,最もCFD解析結果に近い値を導出することが可 能であり,また流量係数Caを必要とせずに流路のモデル化 を合理的に作成できることがわかった.さらに過去の論文 を用いて,そのSIRモデル適用の妥当性について検討を行っ た.その結果,非定常抵抗の影響は小さく,定常抵抗で表 現することが可能であることがわかった.このことから SIRモデルは,従来の手法と比べてより現実的であり,実 用性の高い手法であると考えられる.今後,実際に用いら れている複雑な油圧システムへ適用し,そのモデル化手法 の妥当性を検証する必要がある. 参考文献

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17) Ohmi M., Iguchi M., Usui T.: Flow Pattern and Frictional Losses in Pulsating Pipe Flow Part5 Wall Shear Stress and Flow Pattern in a Laminar Flow, Bulletin of the JSME, Vol. 24, No.187, p. 75-81 (1981)

18) Lau. K. K., Edge. K. A., and Johnston. D. N.: Impedance Characteristics of Hydraulic Orifices, Proc. Instn. Mech. Engrs Part I J. Sys. Control Eng., Vol. 209, p. 241-253 (1995)

19) F. C. Johansen: Flow through Pipe Orifices at Low Reynolds Numbers, Proceedings of the Royal Society of London. Series A Containing Papers of a Mathematical and Physical Character, Vol. 126, No. 801, p. 231-245 (1930)

20) 日本工業規格(JIS):円形管路の絞り機構による流量測 定方法-第2部オリフィス板,日本工業規格(2007)

Fig. 2  Schematic figure of the flow passage for   incompressibilityL , A, D , ρ , μRsp I spSystem-ModelingPipe Configuration1lossspP=R Q⋅1(12 1 )splossQP P P dt=I∫− − (P∫ 1 - P 2 - P loss2 ) dtQ=1 I
Fig. 5  Derivation of the characteristic parameters such as   R, R’, and IPloss2-Q diagram based on steady CFD2' 2Ploss=RQ R Q+ I dQ RQ R Q' 2 Pdt++= ∆R, R’ILeast-square method2'2Ploss=RQ R Q+1(122)QP P Ploss dt=I∫− −SYSTEM-ModelingDynamic characteristics
Fig. 6 Calculation target (straight pipe)
Fig. 9 Comparison of flow dynamic characteristics
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参照

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