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地域商業の機能強化と小売商業政策の課題-空き店舗対策事業と中心市街地活性化法を中心に-: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

地域商業の機能強化と小売商業政策の課題−空き店舗対

策事業と中心市街地活性化法を中心に−

Author(s)

南川, 忠嗣

Citation

沖大経済論叢 = OKIDAI KEIZAI RONSO, 22(1): 81-90

Issue Date

2000-03-17

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/6804

(2)

地域商業の機能強化と

小売商業政策の課題

-空き店舗対策事業と中心市街地活性化法を中心に-

南川忠嗣

(沖縄大学法経学部教授)

政府や自治体の政策的支援が行われていることが そのことを示している。ここでは、平成6年度か ら平成9年度にかけて中小企業庁の補助事業とし て行われた中小小売商業施策の1つである「空き 店舗対策事業(1)」と平成10年7月24曰に施 行された「中心市街地における市街地の整備改善 及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律

(略称;中心市街地活性化法)」にもとづく事業に

参画した事例(大阪府堺市、沖縄県沖縄市・那覇 市)を中心にその課題を検討したい。 はじめに 通産省が発表した平成9年商業統計調査速報に よると、小売業の商店数は1,419.7千店と1,500 千店を大きく割り込んだ。これは、前回の平成6 年調査に比べて約80.3千店、5.4%減少しており、 しかもその内容を見ると、従業者1~4人の小規 模小売業が7.3%減と減少率が高く、逆に従業者 100人以上が13.5%増と高く、大規模小売店舗法 の規制緩和下で、その違いが際立っている。この 現象を経過的に観察すると小売業の店舗数は、昭 和57年をピークに一貫して減少傾向をたどって おり、とどまるところを知らない勢いで進んでい る。しかもその減少は、小規模小売業に集中して いる。また、業種別では、各種商品小売業の増加 を除き全業種が減少しており、特に飲食料品小売 業、織物・衣服・身の回り品小売業などの減少率 が際立っている。業態別では、その他のスーパー、 コンビニエンスストア、専門スーパー、総合スー パー、百貨店などは増加しているが、専門店や中 心店、その他の小売店は減少している。その原因 は、小規模小売業が消費者のニーズの変化や多様 性に十分対応できていないことや、経営者の高齢 化が進み後継者がいないこと、大規模小売業の影 響による廃業などが考えられる。こうした小規模 小売業は、地域社会と密接に関連しており、その 衰退は地域社会の活力に大きな影響を与えること になる。それは、自由競争の下で我々がこれまで ある意味で当然のように受け入れてきた経済効率 `性からみた暗黙の了解事項に対する再検討を要求 することになる。地域社会の問題として各地で地 域商業の機能回復に向けての取り組みがなされ、

1.厳しい状況の小売商業

(1)小売店舗数の減少 ①商業統計調査 先に見たように、昭和57年をピークに減りは じめた小売業の商店数は、いぜん減少を続け、平 成9年の商業統計表では、前回調査に比べて5.4 %の減少となった。その減少は、図表1で明らか なように従業者規模1~4人の小規模小売業によっ て占められている。10人以上の規模の商店数は いずれも増加しており、50人以上の大規模小売 業では11.1%の増加となっている。業種業態的に は、食肉、鮮魚、酒などの飲食料品小売業や衣服・ 身の回り品小売業といった地域の人々の曰常生活 に密着した業種の一般小売店の減少が目立ってお り、消費者の多様なニーズに応えてきた商店街の 魅力を一層低下させている。平成12年には商業 統計調査が行われるが、最近の小売商業の盛衰の 動きから推測すると、この傾向は依然続くものと 思われる。商店街の状況はざらに深刻化すること になろう。 81

(3)

図表-1従業者規模別商店数の推移 (資料)通商産業省「平成9年商業統計表」 ②90年代の流通ビジョン 1989年(平成元年)6月に産業構造審議会 流通部会・中小企業政策審議会流通小委員会合同 会議において「90年代の流通ビジョン」がまと められた。資料的には少し古いがその中の参考資 料に興味あるデータが示されている。『小売業態 の変化と今後の成長方向に関する調査研究」がそ れである。同調査研究の「小売各業態の将来展望」 の将来予測(2)において、1985年までの商業 統計表の実績データをベースに1990年、 1995年、2000年の小売業態別の予測値が 示されている。小売業全体の動向では、’82年 をピークに減少時代に入るとし、’90年には 150万店を割り込み、2000年には120万 店程度になると予測している。一方、年間販売額 については、確実に上昇し、2000年には 1985年の53.8%増加すると予測している。 業態別では、百貨店、大型スーパー、食料品スー パー、住関連スーパー、その他の総合スーパー、 その他のスーパー、コンビニエンスストア、その 他の小売業、農業協同組合、生協、ガソリン・ス テーション等について予測している。この中で 「その他の小売業」のみが、商店数、年間販売額 ともその実数、シェアを減少するという結果となっ 図表-2小売業の予測結果 (単位;店、百万円、%) 82 従業者規模 昭和57年 平成3年 平成6年 平成9年 増減率(9/6) 1 -,- 2人 1,036,046 853,245 764,772 708,999 7.3 3 =~ 4人 412,701 421,255 370,944 350,306 56 5 -,- 9人 187,898 216,855 222,552 212,446 45 10  ̄~ 19人 54,156 72,755 89,628 93,463 4.3 20 ̄~ 29人 14,776 20,361 26,345 27,514 4.4 30 ヘー 49人 9,494 12,938 15,655 15,802 0.9 50 戸、- 99人 4,519 5,888 7,191 7,919 10.1 100人以上 1,875 2,286 2,861 3,247 13.5 合計 1,721,465 1,591,186 1,499,948 1,419,696 5.4 1982年 1985年 1990年 1995年 2000年 小売業 全体 商店数 販売額 1,598,767 69,484,000 1,506,488 72,150,000 1,435,888 86,376,000 1,299,968 96,283,000 1,206,940 110,949,000 その他 小売業 商店数 シェア 販売額 シェア 1,509,293 94.4 45,546,000 65.55 1,409,664 93.58 45,334,000 62.84 1,316,593 91.69 47,661,000 55.18 1,159,310 89.17 43,337,000 4501 1,047,281 86.76 39,952,000 36.01

(4)

ている。それ以外の各業態の小売業がおおむね成 長すると考えられているのに対して、従来型の業 種的小売業の環境が、極めて厳しい状況にあるこ とを示しているのである。 このことは、一般の小売店の衰退を意味してお り、それらが存立する自然発生的な商業集積であ る商店街の衰退をも意味することになる。その後 の実績数値の推移は、予測どおりではないが、実 際には予測に沿った傾向を辿っていることから、 「その他の小売業」全体として、経営体質の脆弱 な小売店を中心に商店数の減少や販売額のシェア 低下は避けられないものと思われる。そういう意 味で平成12年の商業統計調査の結果が注目され る。 (3)経営者の高齢化と後継者難 我が国は、他に例を見ない速さで高齢化が進展 しているといわれている。小売業においても、戦 後に事業を開始したオーナー経営者の高齢化が進 み、すでにリタイアの時期に入っている。後継者 難と相まって事業の存続が危ぶまれることになり、 深刻な事態が予想される。 後継者難は、中小小売業衰退の主要な要因の一 つとしてこの数年特に問題視されている。しかし、 小売商業者に子弟がいないということではない。 後継者の問題は、さまざまな事情があると思われ るが、事業が生業的な形態ということに加えて、 自らの子供に事業を継がせて苦労をさせたくない という経営者の消極的な姿勢も一つの要因である。 つまり、後継者の将来の夢を描く場を小売商業の 経営のなかに指し示すことができなかったことも 関係している(3)。 (2)停滞感・衰退感が高まる商店街 中小企業庁は、昭和45年から概ね5年に1回 「商店街実態調査」を実施している。最も新しい 「平成7年度商店街実態調査報告書」によると、 「繁栄している」とする商店街はわずかに2.7% に過ぎず、94.7%の商店街が「停滞もしくは衰退 している」としている。この調査は、全国約 18000商店街の中から5000商店街を対象 に実施きれ、有効回答1949商店街の結果であ り、回答を寄せた商店街はそれなりの事務的所理 能力のある商店街だと理解すると、この値はもっ と厳しい状況にあるものと推察される。このよう な商店街の停滞感、衰退感は調査開始以来年々高 まっており、商店街が極めて厳しい状況におかれ ていることを示している。 また、商店街のタイプ別では、近隣型、地域型 等商圏が狭く地域に密着した商店街での「停滞ま たは衰退」が顕著であるという傾向が見られる。 (4)小売商業の環境の変化 ①交通体系・都市構造の変化 地域商業は、人々が集まるところ(交通の要所 や旧街道沿いなど)に自然発生的に集積してきた。 しかし、自家用車の急速な普及に加え、高速道路 や幹線道路の整備及び高速鉄道網の整備により、 消費者の行動範囲は大幅に拡大し、地域間・都市 間競争が激しくなっている。また、旧市街地の人 口減少と郊外住宅地の開発による人口移動等都市 構造の変化が生じている。こうしたことを背景に、 郊外やロードサイドヘの出店が進み、新たな商業 集積が形成され、従来の商業集積から都市周辺部 へ中心が移動することになる。商店街での「空洞 化」を促進きせかねないほどの影響を与えること になる。 ②消費者ニーズの変化 消費者の生活様式の変化や購買行動の変化など いわゆる消費構造の変化は、消費者にもっとも近 い位置にある小売商業の経営において、消費者ニー ズを迅速かつ適格に把握し、消費者ニーズに応じ た商品の供給やサービス・情報の提供などの重要 性を一層高めている。消費者の価値観・ライフサ イクルは多様化、個性化の程度が強まり、低価格 志向の一方で値頃感、趣味・嗜好を満足きせる商 品を求める動きが顕著である。したがって、小売 商業者が自らの努力でそうしたニーズに的確に応 えていくことが必要であり、問屋まかせの品揃え 繁栄停滞又は衰退 昭和45年度39.5%60.5% 昭和50年度322%67.8% 昭和56年度12.9%87.1% 昭和60年度11.1%88.9% 平成2年度8.5%91.5% 平成7年度2.7%94.7%(無回答26%) 83

(5)

や対応では存続が危ぶまれることになる。 ③低価格競争の激化 バブル経済崩壊後の消費停滞のなかで一定の品 質を伴った低価格志向に加え内外価格差の認識及 び規制緩和等を背景に、ローコストオペレーショ ンの徹底等による低価格化の動きが進行している。 低価格競争の激化は、否応なしに中小小売業の経 営にも大きな影響を与えることになる。 ④新業態店舗の出現 消費者の価値観の変化や多様化するニーズに対 応して、消費者の視点に立って、商品の企画開発 や店舗、品揃え、販売方式、価格、サービス等の 組み合わせによる新たな業態の小売業が出現し発 展してきている。コンビニエンスストア、ホーム センター、ディスカウントストア、パワーセンター 等が代表的であり、しかも郊外やロードサイドが 主な出店地で従来の商業集積の強力な競争相手と して出現している。 ⑤情報化の進展 コンピュータやエレクトロニクスの進歩による 情報処理、情報伝達技術の飛躍的な向上は、経済 社会のあらゆる面で情報化を急速に進展させ、流 通構造の改革を促進させている。物流や取引シス テムの効率化、商品管理・顧客管理等経営管理の 高度化等情報活用の経営が企業の優位性を左右す ることになる。さらに、インターネットの普及は、 バーチャルストア(仮想店舗)やバーチャルモー

ル(仮想商店街)を現実のものとし、企業と消費

者をダイレクトに結ぶため、流通コストや店舗コ

ストが不要となり、既存の流チャネルを大きく変 えることになる。その動きは、既存商業集積での 空洞化を一層促進きせる恐れがあると考えられる。 ⑥取引関係・慣行の変化

情報化の進展は、取引関係や取引慣行をも変化

きせる。従来からの取引関係だけではなく、メー

カーと流通業者とが手を組んでの「製販同盟」と

称される商品開発、価格設定、効率化な取引シス テムの模索などの動きに代表される新たな取引関 係が生まれつつある。また、独占禁止法の適用強

化の動きを背景に、メーカー主導の「建値制」

「リベート制」の崩壊や見直し等取引慣行に変化

が見られる。系列販売方式もシステムの維持コス

トとの兼ね合いから、見直す動きが出てきている。

こうしたことは、取引ロットの小さい中小小売業

者の品揃えや取引条件に大きな影響を与えること が予想される。商業集積としての商店街の魅力の 低下を促進することにつながる。 (5)大規模小売店舗法の緩和と廃止 日米構造協議(1990年)に端を発して、大 規模小売店舗法(4)の規制緩和・改正が、 1990年、92年、94年と3回にわたって行 われた。その緩和・改正にあわせて大規模小売店 舗法に基づく三条申請が相次ぎ、規制緩和前の 89年度の794件が、90年度は1667件、 95年度には過去最高の2206件にも達し た(5)。こうした大規模小売店の出店攻勢は従来 の商店街の衰退を加速させた。さらに、2000 年5月末には、大規模小売店舗法が廃止になり、 まちづくりの観点から商業をとらえ直す新たな政 策へと転換することになる。これに、地価の低下 や製造業の空洞化による跡地活用の動きと相まっ て、大型店の出店戦略の動きに大きな変化が予想 され、スクラップ.アンド・ビルド、新業態の開 発、出店による新立地の創造などの戦略が活発に 展開されることになり、小売商業の競争が一層厳 しくなると思われる。 また、営業時間延長の動きも見られ、コスト面 からと夜間の労働力確保が難しい中小小売業は、 家族労働力依存の限界もありシフト体制を敷くと いった対応を図ることができずにより厳しい状況 に立たきれることになる。

2.商店街の空洞化(空き店舗の存在)

商店街では、空き店舗の増加による空洞化が問 題となっている。中小企業庁が発表した「空き店 舗実態調査」によると、空き店舗のない商店街は 16.3%で、空き店舗の割合が10%を越える 商店街が34.5%である。調査対象の商店街全 体の空き店舗比率の平均は、8.8%となってお り、厳しい現実におかれている。 5年前との比較については、空き店舗が増えて いるとする商店街が46.0%、変化なしが 38.6%である。空き店舗が減っているとする

商店街はわずかに8.4%に過ぎなかった(6)。

(無回答7.0%)特に、近隣型や地域型など地域

に密着している商店街において空き店舗が「増え ている」とする割合が高くなっており、深刻な状 況にあることが伺われる。さらに、商業統計調査 84

(6)

(単位;%) 図表-3空き店舗比率

資料;中小企業庁「空き店舗実態調査」(平成7年3月)

ざし、まちにおいて顕著に表れている。そして、そ の理由は、「商店街が活気がないから」(17.3%) が最も高く、以下「人口が減少しているから」 (17.3%)「行きたいと思う魅力ある施設がないか ら」(16.5%)「車で行くのが不便だから」 (145%)などになっている。 空き店舗の発生は、その商店街全体の品揃えや 店揃えのバランスを崩し、魅力を一層低下きせ、 客数の減少を招き、さらに空き店舗の発生を促し、 地域商業の崩壊という事態に陥ることも考えられ る。したがって、地域社会と商店街との相互依存 関係を念頭に置くと、空き店舗を発生きせない仕 組みや空き店舗の発生が商店街の魅力低下につな がらないように、地域問題の重要課題として行政 施策のなかに位置づけていくことが求められる。 結果に表れている商店数の減少を考慮に入れると、 その後空き店舗は一層増加しているものと考えら れる。

3.商店街の空き店舗問題

(1)空き店舗問題の背景 地域商業としての商店街は、小売商業者の事業 と就業機会というだけでなく、地域社会に深く根 ざした存在であった。一部の中心商店街を除くと、 小売商業者の多くはその地域に居住を構え、地域 の人々とともに暮らしてきた。そこに地域のコミュ ニティが生まれ、地域の歴史と伝統が形成きれ、 維持・継承されてきた。また、商店街はその地域 社会によって支えられ成り立ってきている。つま り地域社会と商店街は共に支えあう関係を築いて きたといえるのである。 しかし、商店街に空き店舗が生じ、活力を失う ことになると、共に支えあってきただけに、地域 社会そのものも活力を失い衰退の道をたどる恐れ がある。そうなると単に商店街だけの問題ではな くて、その地域で生活を営む人々すべての問題と なる。そのことは、総理府の「小売店舗等に関す る世論調査」(平成9年6月)においても見るこ とができる(7)。自分の住んでいるまちの中心部

は、昔に比べて活気があるかとの問に、「活気が

ない」とする生活者の割合(35.7%)が高く、そ の傾向は「小都市」や「町村」といった規模の小 (2)空き店舗の問題 時代の変遷に伴って商店街からの退店者がでる のは当然のことである。問題なのは、その後に新 たに進出する店舗がなかったり、進出する店舗が 商店街の魅力を維持・高揚するのにそぐわない形 でなされることである。環境の変化に商店街が最 適に適応していくという観点からは、店舗の交替 は必要なことである。しかし、そこには商店街の 意思が反映されることが少ない。退店者が生じた 場合、その後の活用や入店者について商店街とし てコントロールできないのが実情である。時には 店舗の交替が商店街の魅力づけに望ましい状態で 85 空き店舗比率 0% 戸~% 3.5 以下 -,-% 5.0 以下 ヘー% 10.0 以下 戸、=% 15.0 以下 ~% 20.0 以下 ヘー% 30.0 以下 ヘー% 50.0 以下 % 50.0 超 平均 合計 近隣型商店街 地域型商店街 広域型商店街 超広域型商店街 16.3 15.2 14.4 23.1 37.5 11.2 9.7 11.1 16.3 43.8 12.8 12.5 12.4 16.3 18.8 25.1 24.4 262 244 16.5 17.8 17.2 11.3 8.9 10.3 8.9 5.0 6.4 7.1 6.7 2.7 2.3 2.7 2.4 0.9 04 0.4 0.6 8.8 9.4 92 5.9 1.4

(7)

なきれることもあるが、大抵はうまくかみ合わな いことが多い。この店舗の交替をうまくコントロー ルできるかどうかが課題となる。空き店舗対策事 業でこの問題を解決しうる仕組みづくりが必要な のである。支援施策もそうした視点からのあり方 を模索していく必要がある。 じた顧客の固定化を促すことでもある。また、商 店街内に新たな動きをつくり出すことでもある。 事業の展開にあたっては、その目的や狙い・内容 を明確にし、個々の店舗に十分に周知徹底し協力 を得る態勢を整えておくことが望まれる。各店舗 の経営が事業と連動しないとその効果は半減して しまう。 ⑤事業展開に対する理解と協力体制 空き店舗対策の事業を通り一遍のものとしない ためには、商店街全体として取り組める体制づく りが課題である。内部の意見調整、地主・家主と の交渉、新しい入店者の探索、条件整備、イベン トの企画と実行等大変な努力が必要である。それ らを商店街とし支えるような協力体制を整えるこ とが望まれる。 ⑥退店情報と入店希望情報との入手 店舗の交替をスムーズに行なっていくには、退 店者と入店希望者に関する情報をあらかじめ入手 しておかないと、商店街にとって望ましい空き店 舗対策をゆとりを持って行なうことができない。 そうした情報をできるだけ早く把握できる仕組み と信頼関係を築くことが必要である。 (3)空き店舗問題の課題 空き店舗問題は、現実に大きな問題となってお り、すでに各地でさまざまな取り組みが試みられ ている。しかし、空き店舗問題は極めて多様で複 雑な問題であり、すべての商店街に有効`性を持つ 空き店舗対策を見いだすことはできない。重要な のは店舗の交替をうまくコントロールすることに よって、空き店舗そのものをあまり発生きせずに、 また発生したとしても商店街全体としての魅力を 損なうことなく維持・高揚しうる仕組みをどうつ くっていくかである。各地での取り組みからは、 次のような課題を整理することができる。 ①曰常的な商店街活動の展開 空き店舗対策事業といっても、日常的な商店街 活動が展開されていないと空き店舗が生じたとし ても確実な成果は期待できない。短期的ににわか に取り組んでも一時的な効果を上げうるかもしれ ない。しかし長期的に確実に成果をあげるには普 段から危機感を持って「商店街の活力の維持」と いった観点から、空き店舗の予防と治療とのの二 面的な取り組みが求められる。 ②地権者(地主や家主)との調整 空き店舗の解消や有効活用を図ろうとしても、 現実には地主や家主の同意が必要である。実際に 活用したい店舗があっても、持ち主に貸す意思が なかったり、借地・借家権の不安があったり、条 件面で折り合わない場合などがある。 ③商店街内での業種調整 入店者が退店者と類似業種であれば問題は少な いが、すでに存在する業種・業態に関連する場合 は調整が難しい。商店街の魅力にとって必要と思 われるものでも、既存店舗との利害関係を調整す ることが難しいという問題が生じることが多い。 ④事業の多様な展開と個別店舗の経営との連 動性 空き店舗対策には決め手がないだけに多様な事 業が展開きれる。それは、新たな顧客を呼び込む ことであり、消費者とのコミュニケーションを通 (4)空き店舗対策 空き店舗問題は、店舗交替問題である。それを スムーズに進めていくための決め手はなく、それ ぞれの商店街ごとにふさわしいやり方を模索して いかなければならない。 それには、曰常の活動と活力を維持していくこ とが前提となる。空き店舗対策を講じるだけの魅 力がないところでは成果が期待できないからであ る。課題の解決に向けて、長年の仲間意識、役員 のネットワーク、「街づくり」のための憲章や商 店街の将来を見据えた「街づくり協定」等の合意 形成、商業者だけでなく地権者・公共的機関を含 めた「街づくり会社」、店舗での問題解決が難し ければ公共的施設での地域社会の活力維持など、 多様な取り組みの工夫が求められる。商業空間と して取り組む魅力がなければ、生活空間としての 魅力づくりに重点を置き、総合的な地域政策のな かで魅力的な個別店舗が配置きれているという形 で再整備を考えていくということも必要になろう。 86

(8)

4.小売商業政策の転換

るため、「地域の創意工夫を活かしつつ、市街地 の整備改善及び商業等の活性化を一体的に推進す るための措置を講ずることにより地域の振興と秩 序ある整備を図ることによって、国民生活の向上 及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的 としている。」 ②基本的な考え方 ア.市町村のイニシアティブ 地域の特性を反映するために、市町村がど のようなコンセプトでどのような事業で中心 市街地の活性化を図っていくのかについての 基本計画を作成。 イ.「市街地の整備改善」と「商業等の活性化」 が車の両輪 商店街・商業集積の形成による活性化と道 路などの基盤施設や住宅の整備等を基本とし て、施策の総合的な推進を図る゜ ウ.人口の集中が進み、市街化が拡大した「都 市化社会」から都市が成熟した「都市型社会」 への歴史的転換にあたっての「都市の再構築」 都市が成熟段階に達したとの認識から、豊 かで生活しやすい都市ストックを次世代に残 すため、再構築を図る゜ エ.個店や商店街に着目した「点」・「線」から 「面」的な商業活性化へ 広く中心市街地全体を1つのショッピング モールとして捉え、多様な店舗やコミュニティ 施設などの計画的配置・整備を促進する。 オ.関係省庁の連携 施策の総合的・一体的促進のため、通産省、 建設省、自治省を中心に関係13省が連携し て重点的な支援を行なう。 ③基本的枠組み(スキーム) 中心市街地活性化法の基本的な枠組みは次のよ うにまとめられる。 ア.中心市街地の活性化を図る際の指針となる 「基本方針」を国が作成・提示する イ.基本方針に基づき市町村が総合的なまちづ くりの視点にたって中心市街地活性化へのマ スタープランである「基本計画」を作成する 国及び都道府県の承認は必要とせず、通知 を受けた国や都道府県は必要な助言を行なう。 ウ.事業者による「特定事業計画」の作成・認 定 基本計画に盛り込まれた特定事業を実施す 小売商業政策は、経済政策の一環として進めら れ、振興施策と調整施策施策から成り立っている。 中小小売商業振興法と大規模小売店舗法がその代

表である。1997年(平成9年)12月の産業

構造審議会流通部会の中小企業政策審議会流通小 委員会合同会議中間答申は、新たな小売商業政策 の展開一大型店に関する政策の基本的な考え方の 転換(大規模小売店舗法の廃止)が必要であると し、小売商業政策の流れを大きく転換きせた。そ して、1998年「大規模小売店舗法」の廃止が 決まり、改正都市計画法、大規模小売店舗立地法、 中心市街地活'性化法のいわゆるまちづくり3法が 成立している。これらの3つの法律は、いずれも 国から地方へ権限が委譲され、地域の実情に応じ

て多様性と主体性を生かしたまちづくりを進めて

いけるところに特徴がある。その枠組みは、大規 模小売店舗の新規出店の可否を「改正都市計画法」 の用途地域のゾーニング的手法によって判断し、 出店可能となれば「大規模小売店舗立地法」によ り、交通渋滞や騒音等周辺へ生活環境への影響を 緩和する調整を行なうことになる。空洞化が進み 衰退する中心市街地は、「中心市街地活性化法」 の活用により市街地の整備改善と商業等の活性化 を総合的・一体的に推進きれる。これからのまち づくりは、まちづくり関連3法の内容を十分理解 して、地域の特性を生かす方向で活用していくこ とが必要である。 このなかで、小売商業者の自主的な努力を支援

し、関係各省庁が連携して重点的に施策を講じる

「中心市街地活性化法」をとりあげ、その課題を

検討してみたい。 (1)中心市街地活性化法の概要

近年、多くの都市で中心市街地の衰退が進行し、

地域コミュニティが危機的状況になっているとい

われる。都市の中心市街地は商業等業務の活動の

場としてだけではなく、人・もの・情報が交流・

集積する場所として、地域の歴史や文化を育む場

所として重要な役割を担っているはずである。そ

うした中心市街地の活性化を図ることを目的とし

ている。 ①法律制定の目的

空洞化の進行している中心市街地の活性化を図

87

(9)

る事業者は「特定事業計画」を作成し市町村 経由で申請し、所管の大臣の認定を受ける。

エ.「TMO構想・計画」の作成・認定

タウンマネジメント機関(TMO)を中心 に、中小小売商業高度化事業構想(TMO構 想)を作成し、市町村の認定を受ける。この 構想に盛り込まれた事業を、認定を受けた者 と共同で実施しようとする者は、「中小小売 商業高度化事業計画(TMO計画)」を作成 し、市町村経由で申請し、通産大臣の認定を 受ける。

④支援措置

市街地の整備改善事業の推進は建設省が、商業

等の活性化事業は通産省が中心となって進め、そ の他関係省庁の関連事業と密接な連携を図り、施 策の総合的な推進を図る

図表-4従来の商業活性化対策と中心市街地活性化対策との対比(イメージ図)

(従来型)

園と圖の整備

(中心市街地活性化対策)

届~了Tin整備

 ̄C--------I■■~  ̄ ~  ̄~-- 市町村の基本構想

]{字

小小売店舗

=〉

曰/鬮壁耀願、

商店街電子商取引事業の導入 中核商業施設 、、

PIi

アーケード整 備、舗装整備 等による商店 街活性化支援 1 nJ ノ 11コ小小売店の 経営力・競争 力強化 r1 / L」 共同MH究施設 / 、新規開業者の入居 / 、 、、有する公営住宅 へ 、、空き店舗を活用したインキュベーター パーク&ライド L共同荷捌き場 ---------- 共同物流施設 ~  ̄

資料;通産省環境立地局「よみがえれ街の顔一中心市街地の活性化」通商産業調査会1998年

⑤中心市街地活性化施策の意義

中心市街地活性化施策の画期的なところは、従 来のいわゆる商店街対策という枠を越え、まちづ くりの必要性を前面に据えて、13省庁が横断的 かつ総合的に取り組まれるところにあるが、次の ように整理することができよう。 ア.各省庁の縦割りの個別対症療法的なもので

はなく、横断的、総合的な発想で根本的治療

を図ろうとする施策が考えられている。 イ.小売商業等の振興だけではなく、新たな都 市型事業の創業と育成と合わせて検討する必 要を示した。

ウ.経営感覚を持ち、総合的にまちづくりを推

進する機関として「タウンマネジメント機関

(TMO)」制度を設けて、さまざまな主体

とかかわり合い総合的に調整を行なう仕組み が考えられている。 エ.都市の量的拡大から、既成市街地への社会

資本の投資の有効活用という質的充実に整備

の重点を移行ざたこと。 (2)中心市街地活性化法の課題

空洞化が進行している中心市街地の問題を解決

し、活性化を図るために期待きれている中心市街

地活性化法だが、いわゆるまちづくり関連3法は

現在の仕組みでは相互に関連は取られていない。

望ましいまちづくりの観点からは、実際の運用に

際して整合性の確保が図られないとその効果が期

待できない。また、この法律に基づいて、平成

12年2月末現在で全国203地区の基本計画が

国に提出され、TMOの認定も35カ所で行なわ

れるなど取組がなされている。課題や問題点は、

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' 特定商業 集積SC 特定商業 集積法に 基づく支 援 大型店と 中'1,小売 店の共存 共栄 中小小 売店舗 対策 // 中核商業施設 、 、 共同研究施設 インキュペーター臆設 (談{乍・開発型製造蕊 の入居)’

(10)

現実に適応してから明らかになってくると思われ るが、実際に携わった範囲でいくつかの課題を上 げれば次のようにまとめることができる。 ①市町村がイニシアティブを取ることが求め られるわけだが、長年の国依存の姿勢が抜け きらずに、地域の特性が十分反映されていな いo ②中心市街地の活性化には、まちづくりの視 点の必要性がいわれているにもかかわらず、 商業の活性化が中心で、そこで「住まう」と いう視点や中心市街地へのアクセツのあり方、 福祉などの検討が希薄なのが現状であり、横 断的・総合的なまちづくりには至っていない。 ③地域住民の理解と協力がないと本当の意味 での活性化にはつながらないが、商業者・専 門家・行政が主導して計画づくりが行なわれ ており、住民の意見が反映されているとはい いがたい。また、情報の公開も少ない。 ④タウンマネージメント構想は、基本計画に 取り上げられたものでなければならず変化の 激しい商業環境下にあっては、基本計画の変 更は避けて通れず、それに市町村が柔軟に対 処しうるかどうか。 ⑤タウンマネージメント機関への期待が大き く、商業者の行政依存の体質からの脱却が十 分ではない。 ⑥タウンマネージメント機関が、第3セクター 方式をとる場合の事業計画、採算計画の見極 めが重要 ⑦総合プロデュースが期待されるタウンマネー ジメント機関に有能な人材を確保できるかが 成否を分ける。 ⑧商業等の活性化と車の両輪である市街地の 整備改善の担い手として期待されている中心 市街地整備推進機構の位置づけが明らかになっ ていない。 あり方は多様であるべきだが、高齢化の進展や成 熟社会にふさわしい生活空間を視野に入れたこれ、 からの新しいまちづくりの一環として位置づける ことも重要だと思われる。各地の取り組みが、今 後どのようになるのか、まちづくり3法がそれに どう関わってくるのか、施策的支援の課題とあり 方などはこれからの問題である。 商業者が中心市街地の活性化を図るには、役所 依存、支援策依存の受け身的体質を脱却し、商業 者自らのまちづくりへの重要な役割を認識し主体 的に活性化に取り組む姿勢が求められる。それに 対して施策支援が準備されることが望まれるとこ ろである。 注. (1)空き店舗対策事業は、平成6年度~平成7 年度10地域が対象となり、平成8年度からは 空き店舗モデル事業として同年15地域、平成 9年度21地域がモデル事業を実施した。平成 10年度から商店街等活性化先進事業として駐 車対策、活性化対策と共に展開されている。 (2)「90年代の流通ビジョン」、通商産業省商 政課編、通商産業調査会、平成元年、P、 316~330 (3)「マーケティング力」、田村正紀、千倉書房、 平成8年、P、94~100において「後継者 難が中小小売商の構造問題になるのは、大規模 小売店舗法の施行が中小小売商の企業家精神の 衰退をもたらし、『それぞれの分野や地域の輝 く星として、存立できる(レインポー)産業』 である流通産業の基本的性格を喪失しはじめた からである」とし、「レインポーをずたずたに 切断し、七色の輝きを消してしまったのでは、 潜在的な企業能力を持つ若者を吸引することは できない。そういうセクターに未来はない」と も指摘している。 (4)「曰経流通新聞」平成8年6月8日付け記 事 (5)「大規模小売店舗における小売業の事業活 動の調整に関する法律」は昭和48年に制定さ れ、大規模小売店舗における小売業の事業活動 を調整することにより、その周辺の中小小売商 業者の事業活動の機会を適正に確保し、小売業 の正常な発達を図り、国民経済の健全な発展に 資することを目的としているが、実際の運営は

むすび.

現在の地域商業の動向は、郊外化の一層の進展 として進んでいる。そのことが従来の地域商業の 機能の低下を促し、中心市街地の衰退に拍車をか けている。これに対して各地域において中心市街 地の機能強化と活性化をめざしてまちづくりの視 点からの取り組みが始まったばかりである。その 89

(11)

大規模小売店舗の出店規制の性格が強かった。 (6)「平成7年度商店街実態調査報告書」、中小 企業庁小売商業課、平成8年

(7)「平成10年版中小企業白書」、中小企業庁

編、大蔵省印刷局,平成10年、P、182~ 183 90

参照

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