Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
平成24年度大学院Elective Study 報告(1)
Author(s)
井上, 健児
Journal
歯科学報, 113(5): 500-502
URL
http://hdl.handle.net/10130/3204
Right
はじめに 2012年9月1日から9月30日までの30日間,大学 院 Elective Study の一環として国立大学法人鹿児 島大学・北米教育研究センター(井手祐二センター 長,カルフォルニア州サンタクララ)主催の国際プ ロフェッショナル養成プログラムに参加し,アメリ カ・カルフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリ アで海外研修の機会を得た。研修では私はスタン フォード大学医学部遺伝学講座 Snyder 研究室での 研究を主として,その他にカルフォルニア大学バー クレー校訪問やシリコンバレーにある企業訪問,日 米未来フォーラムで現地大学生との討論,セッショ ンなども経験したので報告する。
San Francisco Bay Area
カルフォルニア州はアメリカ大陸の西部,シエラ ネバダ山脈の西側の太平洋に面した地域である。合 衆国のうちでは最大の人口を誇り,州南部にはロサ ンゼルスやサンディエゴなどの大都市があり,ロサ ンゼルスはハリウッドを抱えるなどエンターテイメ ント産業の世界的中心である。州中部では農業が盛 んである。州北部にはサンフランシスコやサンノゼ といった大都市がある。州北部のサンフランシスコ 近郊の都市を含めたサンフランシスコ湾の湾岸地域 をベイエリアという。ベイエリアには,全米のベン チャー企業投資額の約40%が集中し,全米で最も経 済的に進んだ地域の一である。特にサンノゼ市を中 心とするシリコンバレーには多数のベンチャー企業 が存在し有数のハイテク産業の集積地である。ま た,学術では世界屈指のスタンフォード大学やカル フォルニア大学バークレー校,iPS 研究で著名なカ ルフォルニア大学サンフランシスコ校グラッドス トーン 研 究 所 な ど が あ る。幸 運 に も 私 は ス タ ン フォード大学遺伝学の研究室の一つに短期間では あったが受入れて貰えたので次に報告する。 Stanford University スタンフォード大学は1891年に当時の州知事で あったリーランド・スタンフォードにより設置され た私立大学である。サンフランシスコから南東に60 km の所にあり,8180ha という広大なキャンパスを 有している。8180ha とは東京ドームに換算すると 約1750個分に相当する。広大な敷地の中心部に緑に 囲まれたヨーロッパ調の建物が並ぶキャンパスがあ る。医学や法学,工学など様々な分野の大学院を中 心とした7つの school があり,そのうち4つの学 部に学士課程がある。今日に至るまでに,政治家や 教育家,企業創始者,科学者に医師,宇宙飛行士な ど多く の 優 秀 な 人 材 を 輩 出 し,ア イ ビ ー リ ー グ (ハーバード,イェール,プリンストン etc)と呼ば れる東海岸の私立名門校と並んでアメリカの高等教 育を代表しており,世界的にも教育・研究で高く評 価されている。
キーワード:Stanford University,San Francisco,US-Japan Future Forum
東京歯科大学臨床検査病理学講座 (2013年7月31日受付)
(2013年9月4日受理)
別刷請求先:〒261‐8502 千葉市美浜区真砂1−2−2 東京歯科大学臨床検査病理学講座 井上健児
Kenji INOUE : Graduate Program 2012:Elective Study
report ⑴(Department of Clinical Pathophysiology, To-kyo Dental College)
海外研究レポート
平成24年度 大学院 Elective Study 報告 ⑴
井上健児
500Snyder Laboratory, Department of Genetics, Stanford University
今回の研 修 で は Stanford 大 学 遺 伝 学 の Snyder 研究室 Dr. Xin の基で protein kinase の研究を行っ た。Snyder 研究室は遺伝学の中でもスタッフの多 い研究室で,約50名近い研究者が在籍しており,そ れぞれの専門のテーマについて研究している。月に 1回,研究報告会や金曜日の夕方に中庭で開催され る happy hour を利用して仲間同士で研究の情報交 換をしていた。 protein kinase は,細胞内のタンパク質のリン酸 化反応を触媒する一群の酵素で,生体の代謝活性, シグナル伝達の調節因子として重要な役割を果たし ている。ヒトゲ ノ ム 中 に は 約500種 類 あ り,こ の protein kinase 一つ一つの機能異常が様々な疾病を もたらすことが報告されている。特に悪性腫瘍にお いて数多く報告されており,詳細な研究が行われて いるが,未だ全容は解明されていない。Dr.Xin はこれらの解明のため基礎研究を行っており,特に ヒトの細胞内での protein kinase の相互作用につい て焦点を絞り実験していた。私は,E.Coli を使用 して sitespecific recombination を行い目的とする protein kinase のゲノムを組込み,発現・増殖させ る部分の実験を行い,研究に参加した。 研究室の 雰囲気は日本と同じで,日常的によく見慣れたもの ばかりであった,しかし,一人ひとりの研究意欲や 結果が出るまで諦めない情熱には圧倒された。ま た,一人ひとりが同じ研究者として対等な立場で意 見交換している様子がとても新鮮であった。 桜記念植樹式・日米未来フォーラム 今年(2012年)は,日本から友好のシンボルとして 図1 スタンフォード大学 図2 スタンフォード大学構内 図3 Snyder 研究室メンバー 図4 研究室内 歯科学報 Vol.113,No.5(2013) 501 ― 17 ―
アメリカ合衆国の首都ワシントンに3000本の桜が寄 贈されてから100周年を迎える記念の年であった。 我々も永久的な友好の証としてサンノゼ州立大学に 現地学生と共に記念植樹を行った。 日米未来フォーラムでは次世代を担う日本と米国 の若者のために,そして,日本と米国の新しい関係 を考え行動することを目指してサンノゼ州立大学の 学生とグローバルな問題を討論した。大きなテーマ と し て「医 療」「教 育」「環 境」「経 済 と 産 業 の 創 出」「食料不足と食の安全」「紛争と平和」の6つに ついて興味,関心のある話題を各20人ずつのグルー プに分かれて,さらに米国と日本の学生が現状の問 題として挙がっている身近な話題にさらにフォーカ スを絞り討論した。私は医療の分野について,現状 の医療システムが生み出している両国の問題,矛盾 について英語で討論した。今まで自分の中に無かっ た考えや意見を聞けて大変有意義であった。 今回の経験を通じて この研修は鹿児島大学が主催し,日本の7大学 (本学を含む)から学部の違う多くの学生が参加し た。学部や大学,そして,国を超えて多くの仲間と 出会えたこの研修は本当に多くの収穫があった。 今回の Elective study を通じて,私は,自分の手の 届く範囲や日常から一歩外に出て研究者や企業家な ど素晴らしい仲間に出会うことで自分が成長出来る チャンスが大いにあると確信した。そして,外に踏 み出すことはイノベーションを起こすこと,すなわ ち,新しいアイディアから社会的意義のある新たな 価値を創造し,社会的に大きな変化をもたらす自発 的な人材,組織などを生み出すことに繋がると思っ た。 このような機会を与えて下さった金子 譲理事 長,井手吉信学長,井上 孝千葉病院長(前大学院 研究科長),またご指導いただいた Dr. Wang Xin, 井手祐二鹿児島大学特任教授・北米教育研修セン ター長などご支援頂いた皆様には感謝の念が絶えま せん。本当にありがとうございました。 図6 サンノゼ州立大学学生と共に 図5 桜植樹式 井上:平成24年度 大学院 Elective Study 報告 ⑴ 502 ― 18 ―