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<研究論文・研究報告>高知大学農学部における日本語教育 : AAPコースの日本語学習者のためのコース・デザインを中心に

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〈研究論文・研究報告〉

高知大学農学部における日本語教育

一・AAPコースの日本語学習者のための

コース・デザインを中心に一

町 井 多衣子 要 旨 高知大学農学部では、平成12年!0月に新しく設けられたAAP特別コース の学生を迎えた際、それまでの日本語カリキュラムの変更を行った。それま では初級の日本語を終えるのには2年から2年半かかっていた設定を半年か ら1年半の期間を選択できるようにしたものである。最初に、平成8年度か ら平成11年度までの日本語授業について報告し、その問題点を述べ、変更し た平成12年度の実施状況及び学習者の反応を報告した。そして、その後に行っ た平成13年度のカリキュラムに対するアンケートの結果をふまえ、平成15年 度までの実施状況を述べた。この変更の経過とその後平成15年度までの実践 についての報告である。 【キーワード】 AAP特別コース、 講 コースデザイン、初級日本語、実践報告、日本語補 0.はじめに 高知大学農学部においては、平成12年10月に新しく設けられたAAP特別 コース(Special program for Foreign Postgraduate Students in Agriculture in

Asia, Africa and Pan−Pachic Region:Master Course、以後AAPコース)の学

生7名を平成!2年度に新たに迎えた。これは英語で授業、研究を行う2年間 の修士課程のコースであった(1)。従来、農学部の留学生は翌年4月に高知 大学大学院の修士課程入学予定の研究生が中心であった。彼らの多くはその まま博士課程に進学するため、農学部の日本語カリキュラムは5年間滞在す る学生のための授業設定をしてきた。しかし、修士課程の2年間の短期学習 の目的で来日するAAPコースの学生に対しては、従来の日本語授業の見直

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しの必要性を感じコースデザインを変更した。その経過及び現在までの実践 について報告したい。 1.平成8年度より平成11年度までの日本語授業 1.1農学部の日本語授業 高知大学は、本部である朝倉キャンパスに人文・教育・理学部の3学部が 置かれており、農学部は15㎞程東の物部キャンパスにある(2)。このため、 日本語教育も、朝倉キャンパスとは離れて独立したカリキュラムで行われて きた。授業としては、60時間の集中講義「日本語1」と「日本語H」、30時 間の「日本事情」が日本語未習者のために開設されてきた。そして、これら のコースを終了した学生は、60時間の「日本語皿」を継続してうけてきた。 しかし、これらの正規の授業だけでは初級の課程が終わらないため、補講と しての時間数をこの継続クラスに位置づけをしたコースデザインを行ってき た。これは、5年間日本に滞在する農学部の留学生たちの日本語としては、 体系的な文法積み上げ式の日本語学習が望ましいと考えた結果によるもので ある。 以下の(3)に示したコースデザインのクラスBまで学習すると、初級 の過程が終わるコースデザインであった。そのため、補講の時間の半分は日 本語初級の学習にあてる必要があった。このコースデザインでは、初級の過 程を終えるのには、ほぼ2年から2年半かかった。 (1)〈農学部日本語日本事情に関する授業科目〉 授業科目 単位 開講期間 対 象 者 時間数 日本語1 4 10月∼3月 初心者:10月渡日者 60時間 日本語H 4 1月∼3月 初心者:1月渡日者 60時間 日本語皿 4 前期:週2回 初級者:日本語1又はH修了者 60時間 日本事情 2 2月∼3月 10月、1月渡日者 30時間

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(2)〈農学部特設日本語補講〉 クラス 開設回数 対 象 者 時間数 クラスA 後期:週2回 初級者:日本語田修了者 45時間 クラスB 週2回 初級後半から中級:クラスA終了者 90時間 クラスC 週1回 中級1(非漢字圏) 45時間 クラスD 週1回 中級2(非漢字圏) 45時間 クラスE 週1回 中級 (漢字圏) 45時間 *日本語1・日本語H・日本事情の集中講義が設けられたのは、平成元 年度からで2単位であった。日本語皿が設けられたのは、平成6年度 からであり、その時から、4単位となっている。それまでは、補講の みで日本語授業が行われていた。 *補講のクラスは年度により、4∼5のクラス数を設けてきた。 (3)平成8年度から平成11年度のコースデザイン 日本語1 → 日 本 . 事

日本一→[置1

日 本 語 冊

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(4)平成11年度日本語授業及び平成12年度日本語補講の具体例 日本語未習で渡日する留学生は2年間が一連の日本語カリキュラムの ため、本来ならば日本語皿は次年度の開講であるが便宜上一括してあげ る。また補講もこの関連で次年度分を一緒に示す。(以下同じ)

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〈平成11年度日本語授業科目内容〉 この時間数は実質時間数 科目名 内 容 教 材 時間数 日本語工 45時間 日本語H ひらがな、カタカナの習得。 焔苑O半の基本的な文型・ カ法の学習により、日常生 ?ノ必要最低限の会話力を {成する。 『かな入門』 wにほんご1・2・3 i上)』1課∼30課 45時間 日本語皿 初級後半の文型・文法の学 Kと会話力の養成 『にほんご1・2・3 i上)』31課∼60課 45時間 日本事情 日本の興味ある話題のビデ I鑑賞及び意見交換(英語 ノよる講義) ビデオ教材「日本の姿 ニ心」・プリント 22.5時間 〈平成12年度補講科目内容〉 科目名 内 容 教 材 時間数 クラスA 初級後半の文型・文法の学 Kと会話力の養成 『にほんご1・2・3 i下)』61課∼90課 45時間 クラスB 初級後半の文型・文法の学 Kと会話力の養成 『にほんご1・2・3 i下)』91課∼123課 90時間 クラスC 初級後半から中級のコミュ jケーションを主体とした

w習

「ヤンさんとにほんの l々」・『毎日の聞き取 閨x初級下・文法教材

K宜

45時間 クラスD 初級の漢字の学習 『漢字は難しくない』 45時間 クラスE 中級の表現文型の学習 『日本語のぶんぽう』 w毎日の聞き取り』初 演コ・読解教材適宜 45時間

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1.2問題点 平成8年から平成11年度まで、このコースを実施した上での問題点をあげ る。 (1)初級学習の期間の問題 5年間在籍する学生のためのこのコースでは、ほぼ、2年から2年半 で初級項目の学習を終える。今までのクラスでは、このコースでも、学 習可能であると思われた。しかし、農学部の10月渡日生には修士課程に 進学する学生だけでなく、3年間の連合大学院研究科博士課程に入学す る熱帯亜熱帯コースの学生も含まれている。これらの学生はかなり忙し いスケジュールをこなさなければいけない。そのため、日本語を継続し て学習するのが難しい学生が近年、多くなってきた。初級の時間の短縮 を考えなくてはいけなくなったのである。 (2)個々の技能への欲求 これまで、テキストはふりがな付きの漢字仮名交じり文のものを使用 してきたが、漢字は特に教えていない。しかし、学生には漢字を学習し たいという希望があった。 (3)「日本事情」における学習者の多様性と時期 「日本事情」に関しては、平成6年度から、英語での授業が行われて きたが、年度によっては、英語の不得意な中国人が参加することもあり、 学習者に応じての内容の見直しが求められていた。又通常翌年の1月か ら3月分かけての開講のため10月渡日の学生にとっては、期間の再考が 必要と思われた。 (4)補講クラスの問題 補講クラスは他大学でも指摘されているように(3)、授業に対する出 席の意識が希薄であること、やむを得ない事情にせよ、開講当初は参加 できていた学生が研究に忙殺されだんだん参加できなくなり、クラスを 維持できなくなること等の問題点があげられる。

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2.平成12年度日本語1及び日本事情 2.1実施状況 2.1.1受講者 受講者は以下の10名である。数字は年齢を、fは女性、 mは男性を表す。

A:30m・AAPコース:中国

B:34m・AAPコース:ガーナ

C:22f・AAPコース:中国 D:26f・AAPコース:インドネシア E:32m・AAPコース:バングラデシュ F:24m・AAPコース:フィジー (JICA給費生) G:34f・AAPコース:パプア・ニューギニア(JICA給費生) H:32m・連合大学院研究科熱帯・亜熱帯コース:バングラデシュ 1:28f・連合大学院研究科熱帯・亜熱帯コー一一ス:ヴェトナム (仏語、ブルガリア語学習無規) J:26f・中国:特別聴講学生(6か月) 2.1.2変更点 1)教科書の変更 『にほんご45じかん』『にほんご45じかん練習帳』『おもしろいひらが な』「おもしろいカタカナ』を使用。短期学習者用のこれらを使うこと により、集中期間内に文字習得と、日常生活に困らない程度に話せるよ うになることを目的とした。 2)期間への留意 受講者の学生は年齢に幅があり、22歳から、34歳までの年齢層であっ た。このため、!日に何時間も学習しても、今までの経験から効果があ がらないと思い、今井担当の前半は1日1こまの時間割で3週間にかけ て行い、後半の東條は週に2回の授業を行った。期間は2000.10.16∼ 2001.2.23. 3)日本事情の半分を体験型学習の授業とする。 来日直後の学習者が地域に親しみ、日本文化に触れる機会として、日 本事情は前半を次のようなプログラムを企画し、日本語教師が担当した。

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後半は、従来通りのビデオを見ての英語による意見交換であった。 〈前半〉①南国市の市民文化祭見学:お茶を体験(10/25) ②日章小学校を見学し、学校での行事に参加(11/30) ③高知市探検(1/13) ④書道体験(3/17) 〈後半〉①2/9:日本の風俗・習慣・文化、伝統芸能等 ②2/IO:日本の昭和史・太平洋戦争 ③2/15:子供の教育等 ④2/16:正月、節分、雛祭り、お盆 2.2受講者の反応 日本語工の受講者にこのコース内容についてアンケートをとった。結果は 以下の通りである。受講者10昼中、9名回収。 1文字学習の必要性 はい:9名全員 2文字学習の順番 ①カタカナが先:6名 ②ひらがなが先:1名 ③どちらでもいい:2名 →今回はカタカナから学習した。 3媒介言語

①英語:6名 ②日本語:1名 ③両方:2名

4『にほんご45じかん』について ①よい:7名 ②わからない:2名 5『にほんご45じかん』を自習したか

1)はい ①毎日:1名 ②時々:7名

6 『にほんご45じかん練習帳』について

①よい:8名 ②わからない:1名

7『にほんご45じかん練習帳』を自習したか

1)はい ①全部:1名 ②ほとんど全部:2名

③少し:5名 8『にほんご45じかん練習帳』の宿題をしたか

①はい:6名 ②いいえ:1名

9『おもしろいひらがな&カタカナ』について

①よい:3名 ②わからない:5名

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10『おもしろいひらがな&カタカナ』を自習したか

1)はい ①全部:0名

③少し:3名 2)いいえ:1名 ②ほとんど全部:3名 2.3日本事情について 日本事情についてのアンケートで前半と後半を比較して聞いたが結果は8 名が両方ともいいという肯定的な意見だった。しかし、Dは後半のビデオ をみてのクラスは退屈だった、とのコメントがあった。 3.平成13年度の授業計画 日本語1の受講者と日本語豆の受講者(2名:エチオピアの29mとネパー ルの40mで、平成13年4月から高知大学農学部大学院修士課程に入学予定 だった研究生)に次年度の授業のためのアンケートに答えてもらった。 3.1アンケート結果 1日本語の学習を続けたいか はい:11名全員

2いつまで ①6月まで:2名 ②7月まで:3名

③その他:5名(上手になるまで、出られる間)

3回数 ①週1回:4名 ②週2回:4名

③週3回:1名

4日本人と話すか ①よく:3名 ②時々:7名

5どこで話すか 研究室:7名 学務係・教室・店:各1名 6誰と話すか 学生:9名 教授・学務係・店員:各1名 7誰ともっと、話したいか 学生:5名 教授:3名 学務係:1名 8四技能のうち何が一番大事か 会話:8名 読解:2名 聴解:!名 9どこで、日本語の必要性を感じるか 研究室:3名 学務係:1名 全て:2三

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3.2考察

全員が日本語の学習を続けたいという意志があるのには、驚いた。AAP コースの性格を考えると、集中のみで、やめる学習者がいるのではないかと 危惧していたので、この結果には驚き、改めて学習者の日本語への意欲の高 さを感じた。 しかし、期間についてはやはり、3,4ヶ月間というのが半数、あとは、 長く続けたい希望があった。この数字から、次年度の日本語皿へはほとんど が日程があえば、出席することがわかった。 5の項目は、予想としては学務係がもっとも多いのではないかと考えてい たが、研究室が多いのは意外だった。また、6、7より、学生とよく話して おり、もっと話す機会を求めていることはこれも意外だった。この結果から も、8では会話を重視する学習者が多いのも頷ける。また、日本語の必要性 はいたるところ、特に研究室で感じている学習者の姿が窺えた(4)。 また、意見としては、学習者の状況に応じた練習をしてほしい、話すこと、 きくことを中心にしてほしい、もっと、学習者に文章を作らせて欲しい等の 声があった。 3.313年度のコース・デザイン 以上をふまえ、13年度の授業については、次の点に考慮したコースデザイ ンを設定した。 (ユ)日本語1・Hの集中講義では、短期学習者用ではあっても、文法積 み上げ式の教科書を使用した。既習の文法項目を使った運用に関して は充分ではなかったので、日本語皿では、場面に即した会話の学習を 重点において、実際に学習者が学生達と会話をする際、すぐに役立つ ような場面重視の学習を行う。 (2)Lしの設備がない農学部では、場面の学習の一つとして聞き取りも 授業の中でおこなっていく必要がある。 (3)補講クラスに関しては、従来1年間の授業設定をしてきたのだが、 学習者にとっては、この期間は長すぎるようなので、半年のクラス設 定にして、学習者のニーズに応じて選択できるよう設定を半期ごとに 見直していく。

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4.平成12年度からのコースデザイン

日本語・一日一躰言吾皿一[函]一[璽

輩 一[画

躰語・一情一[互司 一[璽

(1)〈農学部日本語日本事情に関する授業科目〉 *変更点 授業科目 単位 開講期間 対 象 者 時間数 日本語1 4 10月∼3月 初心者:10月渡日者 60時間 日本語H 4 1月∼3月 初心者:1月渡日者 60時間 日本語皿 4 前期:週2回 初級者:日本語1又はH修了者 60時間 日本事情 2 *10月∼3月 10月、1月渡日者 30時間 (2)〈農学部特設日本語補講〉:*変更点 クラス 開設回数 対 象 者 時間数 クラスA 後期:週2回 *初級者:日本語皿修了者〈速習コース〉 45時間 クラスB 週2回 *初級者:日本語1又はH修了者 @ 〈ゆっくりコース〉 90時間 クラスC 週1回 中級1(非漢字圏) 45時間 クラスD 週1回 中級2(非漢字圏) 45時間 クラスE 週1回 中級 (漢字圏) 45時間

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(3)平成12年度日本語授業及び平成13年度日本語補講の具体例 〈平成12年度科目内容〉 科目名 内 容 教 材 日本語1 日本語且 ひらがな、カタカナの習得。 焔苑O半の基本的な文型・文法の学 Kにより、日常生活に必要最低限の ?b力を養成する。 『おもしろいひらがな』 wおもしろいカタカナ』 wにほんご45じかん』 wにほんご45じかん @れんしゅうちょう』 日本語II 初級前半の学習を振り返ることによ 闢叝岦カ活に必要最低限の会話力を {成する。特に聴解力と会話力の育 ャに重点を置く。 『毎日の聞き取り』 @ 初級の下 wCrash Course Japanese

@ For Bus加ess』 〈体験型日本事情プログラム〉 フ験を通して地域と日本を知る。 プリント等適宜 日本事情 日本の興味ある話題のビデオ鑑賞及 ム意見交換(英語による講義) ビデオ教材・プリント 〈平成13年度補講科目内容〉 科目名 内 容 教 材 時間数 クラスA 初級後半の基本的な文型・文法の w習により、日常生活に必要最低 タの会話力を養成する。文法の知 ッを充実させる。 〈速習コース〉 『にほんごつぎの45じ ゥん』 wにほんごつぎの45じ ゥんれんしゅうちょう』 45時間 クラスB 初級後半の基本的な文型・文法の w習により、日常生活に必要最低 タの会話力を養成する。 @ 〈ゆっくりコース〉 90時間 クラスC 初級後半の文型・文法の学習と会 b力の養成(これまでの補遺) 『にほんご1・2・3』 w毎日の聞き取り』初 演コ・文法教材適宜 45時間 クラスD 初級後半から中級のコミュニケーVョンを主体とした学習 ョ解問題適宜『にほんご1・2・3』 45時間 クラスE 表現文型の学習 『日本語のぶんぽう』『毎日の聞き取り』 45時間 *13年度の補講には以前のカリキュラムの最後の学生がクラスCを受 講していたため、内容的には重複した面もあった。

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5.平成13年度及び平成14年度実施状況 5.1平成13年度 平成13年度は12年度の内容を実施した。日本語1の受講者はAAPコース の学生8名、連合大学院研究科熱帯亜熱帯コースの学生2名の10名だった。 この年から1月渡日の学生がいなくなり(5)、日本語1[を日本語1に継続し て行うようになった。このため、日本語Hの段階から、2コースにわかれる ようになった。また、日本事情はすべて日本語教師が関わる日本語学習と関 連させた体験型の日本事情となった(6)。 5.2平成14年度 平成14年度は仮名のテキストを、より学習者に効果をあげると考えた

『Painless Hiragana』『Painless Katakana』に変更した。日本語1の受講者は

AAPコースの学生5名、連合大学院研究科熱帯亜熱帯コースの学生1名、 短期研究者2名の8名であった。 平成12年度から始まったAAPコースの学生は続けてドクターコースへと 進学するようになったため(1)、当初考えていた短期滞在者のためのコース 設定は再考せざるを得ない状況になってきた。しかし、AAPコースの学生 すべてがドクターコースに進学するわけではないので、初級の学習を終えた 後、日本語学習を選択して継続できるこのコースデザインを続けることにし た。 6.平成15年度の実施状況 今年度の日本語1の受講生はAAPコースの学生6名、連合大学院研究科 熱帯亜熱帯コースの学生2名、研究生1名、短期留学生1名の10名である。 平成12年から使用してきた初級日本語教科書『にほんご45じかん』にかわり、 東京工業大学留学生センターで開発された理工系の留学生のための初級日本 語教科書『はかせ』を使用している。場面設定や言葉が、より現在の農学部 の日本語学習者に身近であると考えたためである。今年はテキストを変更し たため、日本語1に続き、日本語Hを学習して初級の日本語を修了する予定 である。

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6.1受講者の反応 今回テキストをかえたことと、平成12年度の学生との比較のためほぼ同内 容のアンケートを日本語1の修了者8名に実施した。その結果は平成12年度 の学習者とほぼ同じような結果が得られ、テキストには満足しているよう だった。しかし、次年度の日本語学習の継続に対する意欲は顕著で継続期間 も長期間を望む学習者がほとんどであった(8名中6名)。また、回数に関 しても週2回が3名、週3回の現在と同じ状況を望む学生が5名もいた。そ して、日本語の必要性を感じる場所も研究室、学務係が6名という平成12年 度と同じ結果であり、環境も変化していないことがわかった。 6.2平成16年度の日本語 以上をふまえ、初級の日本語を学習し終えた彼らが更に運用力を高めるた めにより充実した日本語の学習環境が提示される必要性があるといえる。 7,おわりに 平成8年度から行ってきた農学部の日本語授業を平成12年度にAAPコー スの創設により、見直しを行った経過である。結果的には、大きな変化では なかったが、農学部のような、限られた経費とスタッフのコースの中で、い かにこのような学生の学習効果をあげることができるかという問題にささや かながら、取り組んだ報告である。これまで農学部では主に10月渡日生を日 本語教育の出発点として考えてきたが、今までの事例にはないようなケース もでてくるかもしれない。留学生センターの設置により、全学的な視野の元 に新しい歩みを始めていこうとしている高知大学の日本語教育において、そ れぞれの学部の特性を活かしながらの日本語教育がなされていかなければな らない。その参考になれば幸いである。

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士課程まで進学することが前提となっている。ただし、私費留学生 の場合はこの限りではない。 (2)平成15年10月に高知医科大学と統合したので、現在は5学部。 (3)田村宏(1993)「九州大学留学生センター日本語補講i一そのあゆみ、 いま、そしてこれから一」『九州大学留学生センター紀要第5号』 マーチン・ホウダ(1995)「日本語補講の問題点」『千葉大留学生セ ンター紀要第6号』 (4)AAPコースの学生の指導教官に留学生に対してどのような日本語を 望むか聞いたところ、よい人間関係を築くような日常会話ができれ ばよい、と言う意見だった。研究は間違うといけないので、英語で 指示をするので必要ないが日本語を勉強することは本人が望むなら 奨励しているという意見もあった。 (5)参考資料 高知大学農学部日本語集中講義出席者数(1991∼2003) 1991 1992 1993 1994 1995 ユ996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 日本語工 6 3 2 2 1 3 4 5 2 10 10 8 10 日本語且 2 8 1 2 4 0 1 2 2 3 0 0 0

総計

8 11 3 4 5 3 5 7 4 13 10 8 10 (6)具体的な内容としては①オープンキャンパスでの日本語のタスク、 ②高知市へ行こう、③お正月体験、④南国市探検、⑤小学校訪問な どである。 付記 この報告は2004年3月に提出したものであり、その時点での報告となって いることをお断りしておきたい。 いまい たえこ (高知大学留学生センター非常勤講師)

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