招待論文
セキュリティタグのための物理的複製困難な有機薄膜回路
栗原
一徳
†a)植村
聖
†吉田
学
†Organic Physically Unclonable Function for Security Tag
Kazunori KURIBARA
†a), Sei UEMURA
†, and Manabu YOSHIDA
†あらまし 本研究では,リングオシレータ回路を利用した物理的複製困難なデバイスの,DC バイアス効果の 評価と安定性の改善を行った.安定した回路作製に必要なブラインドビア構造では,アルミ電極とAu 電極の剥 離を抑えるためにCr 密着層を導入することで,ビアの導電性が 3 桁向上し,歩留まりが改善されることがわ かった.このブラインドビア構造を利用したリングオシレータ型の有機物理的複製困難関数回路では,ID 生成の 前に高電圧を印化することでDC バイアスストレスに対する耐性が上がり,ビットエラー率が 2%から 0.1%に 改善できることがわかったためこれを報告する. キーワード 有機エレクトロニクス,セキュリティタグ,物理的複製困難関数,DC バイアスストレス,バラ つき
1.
ま え が き
近年,家電製品や高級ブランド品,またはソフト ウェア等高価に取引される品物の模倣品が問題になっ ている.特許庁の2015年度模倣被害調査報告書によ れば,模倣品による国内企業の総被害額は2014年度で 1,028億円であり,短期的にはやや減少がみられるも のの,依然として対策が必須であることがわかる[1]. 模倣品は,このような直接的な経済損失だけにとどま らず,粗悪な品質によるブランド力の低下や事故や事 件の原因になるなど,安全な社会や安心できる生活を 脅かす危険性も秘めている. 既に企業は,独自のシールやホログラムを製品に付 与することで模倣対策を行っている[2].しかしなが ら,従来の目に見える情報は可読性が高い反面,権利 者と攻撃者の間の製作精度に本質的に依存しており, 偽造対策としては不十分なところがあった.また,集 積回路に電気的に記録された静的な情報なども,外部 からの攻撃により比較的容易に複製することが可能で ある[3].そのため,これらを付加された製品は,偽 †産業技術総合研究所フレキシブルエレクトロニクス研究センター, つくば市Flexible Electronice Research Center, 1–1–1 Higashi, Tsukuba-shi, 305–8656 Japan a) E-mail: [email protected] 造品や海賊版の危険性を常にもつことになる(図1). そこで近年,人間の指紋のようなバイオメトリックス と同様に,人工物メトリクスと呼ばれるモノそのもの に含まれる複製困難なバラつきを,個体認証に利用す る方法が注目されている[4].特に電子回路の世界で は,回路自体のバラつきを利用して機能を発現させる 回路の研究がされており,そのような機能をもつシス テムは,物理的複製困難関数(Physically unclonable function: PUF)と呼ばれている[5] (図2).この技術 は類似性から回路の指紋技術などとも呼ばれることも あるが,指紋との大きな違いとして,個体識別に利用 されるバラつき情報が回路の動作中にしか現れない動 的な情報であることが挙げられる.しかもバラつきで あるため,例えばチップを薄く削りながら動作を確認 するようなプロービング型のセキュリティ攻撃では, バラつき分布の脆質により回路の指紋が破壊されてし まうというセキュリティ上の利点がある.また,外部 から回路構成を盗み見られて同じ構造のものを複製さ れてもバラつきまではコピーできないため,偽造に対 する高い耐性があると考えられている.2015年には 凸版印刷との共同研究により,タニタから海外向けの ポケッタブルスケールにPUFを実装した商品も展開 されており,偽造品対策用セキュリティの研究が進め られている. シリコン分野で研究されてきたPUF技術は,模造
品対策に高い適性があると考えられる.しかし,様々 な新しい製品に対応していくためには,高いセキュリ ティ性だけがあればよいわけではなく,それを載せる ハード側に高い形状任意性も必要になってくると予想 される.フレキシブルエレクトロニクスは,その高い 形状任意性から近年盛んに研究されている分野であ り,黎明期から研究されていた圧力センサ[6]やフレ キシブルディスプレイ[7]だけにとどまらず,最近で は,紙おむつ[8]などの生活雑貨にも幅広く適用でき る可能性を示した報告がある.このフレキシブルエレ クトロニクスでPUF技術を実現することができれば, より広い製品やデバイスに高品質なセキュリティを載 せられるだけでなく,現在提唱されているInternet of Things (IoT)社会のようなシステムで課題となる多 数の機器間の認証にも利用していくことができると考 えられる.しかし,一般にフレキシブルエレクトロニ クスによく利用される有機回路は,有機材料の安定性 に課題が残っている.そのため,バラつきの再現性が 求められるPUFで有機材料を利用した研究は,筆者 の知るところではまだ少ない.先行研究では,有機材 料と印刷技術を用いてPUFを作製した例があるが, この場合も配線材料までであり半導体を用いてはいな 図 1 可視的な対策による模造被害のイメージ 図 2 PUFの個体識別イメージ かった[9].そこで筆者らは,従来シリコン基板上に形 成されていたPUFを,有機半導体材料を利用してフ レキシブル基板上へ作製し,その安定性の評価をはじ めている[10].当該研究では,PUFの中でも信号の遅 延を利用したID生成技術を用いたが,信号遅延型の PUFを有機エレクトロニクスで実現した場合,長時間 の駆動ではDCバイアスストレスによる効果がID生 成の安定性に大きく影響することが示唆された.DC バイアスストレスはキャリアトラップによる現象であ り,そのため特性の改善にはトラップの低減が有効で あることを示した.本論文では反対に,電圧印加によ りトラップを事前に埋めることで安定化効果があるの ではないかと考え,以前の研究で加味されなかった電 圧印加履歴の影響をみるために,キャリアトラップが 戻った状態でのPUF特性の評価を行った.また,合 わせてそのような大規模回路を作製するにあたって必 要となる絶縁膜を貫通させたブラインドビアの作製に 関する報告を行い,歩留まりの改善方法も解説する.
2.
実 験 手 法
2. 1 デバイス作製 まず,極薄絶縁膜を利用したフレキシブル基板上の 有機トランジスタの作製方法について述べる.図3に 本研究の有機トランジスタの断面概略図を示す.有機 トランジスタを用いた回路は,蒸着法と溶液プロセス により製作した.初めに,ポリイミドを主体としたフ レキシブル基板上に,アルミニウムをメタルマスクを 通して真空蒸着し,ゲート電極を形成した.次に絶縁 膜を挟んだ層間ビアが必要な個所にAuを蒸着により 成膜した.このビアに関しては,次の章で詳しく述べ ることとする.この基板を300 Wで30 min酸素プラ ズマ処理することにより,表面に薄い酸化アルミニウ ムの層を形成した.この酸化アルミニウムの層は,そ れ自体が比較的高い誘電率(εr = 9)の絶縁膜として 機能するが,続く自己組織化単分子の成膜で化学結合 をする基材となり,自己組織化分子と酸化金属による ハイブリッド絶縁膜を形成する.本研究では,n-オク 図 3 有機デバイスとビアの断面概略図タデシルホスホン酸(C18-PA)を自己組織化単分子 膜(SAM)の成膜に利用した[11].C18-PAは2-プロ パノールに溶解し,5 mMの濃度になるように調製を 行った.このC18-PA溶液に前述の酸素プラズマ処理 を行った基板を2時間浸漬することで,酸化膜表面と ホスホン酸基を化学結合させ,およそ2 nmの自己組 織化単分子膜を酸化アルミニウムの表面のみに選択的 に製膜した.続く蒸着では,有機半導体層としてはp 型にジナフトチエノチオフェン(DNTT)を,n型に は塗布型でも利用できるベンゾビスチアジアゾール 誘導体(TU-1)を利用した.それぞれの半導体を,メ タルマスクを用いた真空蒸着により絶縁膜上に30 nm 製膜し,最後に回路配線とソースドレイン電極をAu の蒸着により形成した.このときソースドレイン電極 のチャネル幅Wとチャネル長Lは,p型ではそれぞ れ250 μmと10 μm,n型では1000 μmと10 μmと した. 2. 2 試料と測定手法 ポリイミドフィルムには,宇部興産製の UPILEX-75sを利用した.有機半導体のDNTTは,シグマアル ドリッチ社製,TU-1はフューチャーインク社の製品 である.自己組織化単分子nオクタデシルホスホン酸 はPCI synthesis社のものを利用した.酸素プラズマ 装置はヤマト科学のプラズマクリーナーPDC210を ダイレクトプラズマモードで使用した. 有機回路の特性評価ではKeysight社のプレシジョ ンソース/メジャーユニットB2902Aを使用し,イン バータやリングオシレータ駆動では定電圧電源として Kethley社の2400ソースメータを利用した.周波数の 測定では,電圧測定にはKeysigh社のDSO9104Aと その制御及び値の記録に同社のインターフェースソフ トBenchveuを利用した.各リングオシレータを0.5 秒ごとに一度計測し,一つの駆動電圧について500秒 間で1001点の測定を行った.各駆動電圧で全てのリ ングオシレータを測定後に,回路に残ったトラップ電 荷を放電するため1日デシケータ内で静置したのちに 次の駆動電圧での測定を行った.電圧は2.2 Vの高電 圧側から順次進め1.8 Vまで行った.全ての測定は大 気下で行っている.
3.
実 験 結 果
3. 1 有機回路特性 図4に同様の手順で作製したp型TFTの特性とn 型TFTの特性を示す.On/Off比は,どちらも103 図 4 有機 TFT の伝達曲線 図 5 有機インバータの反転特性 以上の十分な値が得られた.この二つを組み合わせた CMOS型の有機インバータ特性が図5である.これ は,リングオシレータ回路の読み出し段にあたるイン バータの特性であり,2 V駆動で最大反転利得43が得 られている.また,この有機インバータ回路は0.5 V の低電圧でも反転動作を行うことを確認した. 3. 2 フレキシブル基板上のブラインドビア形成 次に,回路形成に重要なブラインドビアの形成に関 して述べる.SAMを利用した絶縁膜にブラインドビ アを作製するには二つの方法が考えられる.一つは, SAM成膜後に不要な部分の膜を除去する方法であり, もう一つは本研究で利用したような,先にSAMに対 して不活性な層をパターニングすることでSAM自体 の形成を部分的に阻害する方法である.前者に関して は,Halikらのグループが本研究と同様のホスホン酸 系のSAMを酸素プラズマ処理によって除去する方法 を考案し,単層半導体によるTFT動作の作製に成功 している[12].リンと酸素との結合解離エネルギーは およそ3.9 eVであり,炭素–炭素間の結合3.6 eVより図 6 プラズマ処理による SAM 膜の除去 もやや強い程度である.酸素プラズマのエネルギーは, 酸素の第一イオン化エネルギーからおよそ13.6 eV程 度と見積もられる.そのため酸素プラズマで炭素の除 去が可能であれば,リン原子の層の除去も可能である と考えられる.そこで筆者らも同様の方法で,Al電極 上に製膜したSAM層上部にAu電極を載せたMIM 構造を作製し,プラズマ処理によるSAM層の部分的 な除去効果を電極間の伝導性に関して比較した.こ のとき面積は100 × 700 μm2とした.結果としてプ ラズマ処理を行わず完全にSAMがある場合と,プラ ズマ処理によりアルキルを除去した場合で比較して も,ほとんど電極間の伝導性は向上せず,電流を流す ビアとしては機能しないことがわかった(図6).抵 抗値をおよそ10 GΩとすると面積当たりの抵抗値は 70 kΩ · cm2 程度であることがわかった.導電性が向 上しない原因としては,ホスホン酸基のリン原子が残 留している可能性があることが考えられた.Halikら の研究ではSAMの置換が目的であり,ホスホン酸部 分が原子1層程度残留しても大きな問題はなくプラズ マ処理が有効であったが,導電性が必要となるブライ ンドビア構造の作製には,プラズマ処理は適していな いことがわかった.一方,ブラインドビアを作製する もう一つの方法に関しては,シリコン基板上では既に Hagenらのグループによって報告されているAu薄 膜による電極表面の不活化法が確立された技術として あったが[11],フレキシブル基板上では図7 (a)のよ うにAu膜がプラズマ処理の後に部分剥離を起こした. 図7 (b)ではビア評価用にビア構造を11連で直列に 接続した素子のビア一つあたりの電圧と電流量を示し ている.抵抗値はおよそ150 kΩ程度であり,単位面 図 7 ブラインドビアの Au 薄膜剥離と導電性 図 8 Au膜厚とブラインドビア抵抗 積あたりの抵抗は34 Ω · cm2程度となってしまった. そのため,インバータ特性の低下や歩留まりが低下す るという現象がみられた.Au薄膜にシワが発生して いることから,なんらかの原因でAu薄膜が延展され たことが考えられた.その原因として二つのパターン が考えられた.一つは,Al/Au界面に何らかの分子 が混入し,プラズマ処理工程でガス化するというもの であり,もう一つは,Au薄膜の膨張による基板との 不整合による剥離である.ガス化による剥離であれ ば,Au薄膜を薄くし,クラックやピンホールを意図 的に導入することで低減ができると考えられる.以前, DarbyらはAu薄膜の蒸着レートや膜厚によってその 薄膜成長が変わることを報告している[13].蒸着レー トを大きくし膜厚を薄くすれば,多くのグレイン境界 が形成できるため薄膜のデガスが容易になると考えら れる.そこで我々も膜厚を1 nm∼100 nmまで変化さ せてビアの電気伝導度を評価した.その結果が図8で あるが,薄膜側での導電性の改善はできなかった.そ
図 9 Cr密着層の効果とビアの IV 特性 のためビアの剥離は,ガス膨張が原因でないことが示 唆された.また,予想とは反対に膜厚の増加によって ブラインドビア抵抗が改善しおよそ3桁減少すること がわかった.ただし,膜厚増加による抵抗値改善の方 法では,膜厚が200 nm程度ないと本研究の回路駆動 として最低限必要な150 × 150 μm2のビア一つあた り10 kΩ (= 2.3 Ω · cm2)程度の抵抗に達しないこと が単純な外挿から予想された.ビアのような少ない面 積を蒸着でつくる場合,無駄が多くなってしまう.そ こで,もう一つの薄膜膨張による不整合の解決を検討 した.薄膜が膨張する原因の一つにプラズマ処理器内 での熱膨張の可能性が考えられた.試しに120◦Cの オーブンで加熱したところ,同様にAu薄膜が剥離す る現象がみられた.素子全体としての伸縮は,厚み比 率で大きな基板が担っていると考えられる.シリコン 基板では主要な層が応力を感じることになるが,一方 で,ポリイミド基板の場合は,酸化アルミニウム層と の齟齬が大きいためにクラックが生じる恐れがある. このときのクラックに上部のAu電極がうまく濡れる ことができない場合,冷却時にシワが発生すると考え られる.また,溶液への浸漬で溶媒の一部が浸透する ことで,後のプロセスで一気に気化し剥離を進行させ ることも考えられる.そこで,同様に線熱膨張係数が 小さく,金属と有機材料の密着層として利用されるCr をアルミニウムとAuの間に20 nm程度導入したとこ ろ,30分間の酸素プラズマ処理後でもこの剥離現象が 劇的に抑えられることがわかった.そのときの条件出 し用の試料片の状態と,図7 (b)と同様の素子のIV特 性を図9に示す.Cr密着層により綺麗なオーミック 接触が取れ,このときの抵抗はおよそ200 Ωとなり, 150 kΩからおよそ3桁改善することができた.これ は,Crの働きにより密着性が改善できたためだと考 えられる.このブラインドビア構造を用いてリングオ シレータの回路形成を行った. 図 10 デバイス写真及びリングオシレータの発振波形と 周波数バラつき 図 11 ID生成システムの概略図 [14] フレキシブル基板上のリングオシレータの写真と特 性を図10に示す.平均周波数500 Hzの発振が2 V駆 動で得られており,その標準偏差は35%程度であった. 歩留まりは75%であった. 3. 3 有機PUF特性とDCバイアス効果 まず,リングオシレータ型PUFのID生成システ ム概念図を図11に示す.マトリックス状に作製され たリングオシレータ回路は各チップから二つが選択さ れ,カウンター部分で周波数を計測し比較器部分で値 の大小を決定し“0”または“1”のIDビットを生成す る[14].本研究では,カウンター部分をオシロスコー プ,比較器部分はPCでの解析で対応し,1チップ上 のリングオシレータ数は7とした. 次に,14個のリングオシレータ回路を500秒間駆動 したときの,それぞれのDCバイアスストレス効果に よる周波数の変化を図12に示す.同電圧で比較する と,時間方向にトレースしたときに各リングオシレー
図 12 発振周波数の時間発展 図 13 発振周波数の電圧依存性 タ周波数の上下が変わる点が交点として現れる.これ は,ID生成の際にビット反転として影響し,ビットエ ラーの原因となる.リングオシレータを七つで一組と して全ての組み合わせで互いの発振周波数の大小関係 を比較することで,21ビット(= 7C2ビット)のID が生成できる.このIDの測定回に対するエラーの割 合をビットエラー率(BER)と定義する.この計算は 1001個分の生成IDの平均の二値化,つまり,多数決 によって理想的なIDを計算し,その理想的なIDと 各時刻のIDの差を各ビットで排他的論理和(XOR) を計算することで得られる[10].各測定間を連続して 行った場合と,十分な放電時間を設けて測定した場合 の平均周波数の駆動電圧依存性を図13に示す.図13 では,駆動電圧Vと発振周波数fの関係を示す式(1) から得られた理論値も共に図示した. f = 1 2n· μ 2πL(L + Wc) |V − Vth| (1) ここで,チャネル長L = 10 μm,電極オーバーラップ Wc= 20 μm,段数n = 3とし,移動度μは放電なし が0.06 cm2/Vs,放電有りが0.042 cm2/Vs,しきい 値Vthはともに0.9 Vとした.放電を行わなかったも のはDCバイアスストレス効果により理論直線の傾き 図 14 放電の有無によるエラー率の変化 から大きく外れていくのに対し,十分に放電を行った ものは2.2 Vではズレがあるものの傾きがほぼ理論曲 線に一致することがわかった. 連続的に測定した場合と放電を行った場合の,ビッ トエラー率を図14に示す.2 V以下では放電したRO のビットエラー率はほぼ0.02程度で一定値に落ち着 くことがわかった.佐藤らの研究グループの報告では, 有機デバイスは駆動の際にトラップしたチャージが無 機よりも抜けづらく,単純な電源操作による短時間で のリセット動作が難しいことがわかっている[15].本 研究での放電の有無による影響も,放電を行わなかっ た連続測定の際は,直前の測定による電圧印加により デバイス内のトラップ準位が埋まっているために,よ り安定して動作し,エラー率が本質的なエラーと考え られる2%から1/20の0.1%になったのだと考えられ る.2.2 Vでは,放電を行った測定も放電なしの測定 のどちらも直前の電圧印加がなかったため電圧履歴条 件が一致し,結果としてほぼ同じエラー率になってい ると考えられ整合性がある.このことから,本研究の ような有機PUF回路でDCバイアス効果を抑えるた めには,一度高電圧で駆動させることでトラップを埋 め動作を安定化させることが効果的であるということ がわかった.
4.
む す び
本研究では,フレキシブル基板上の有機リングオシ レータを用いたPUFの安定性を評価・改善に取り組 んだ.フレキシブル基板では低温プロセスが重要であ り,ブラインドビア形成での電極剥離を抑制し,歩留 まりを向上させるためにはCr密着層を導入すること で導電率がおよそ3桁向上することがわかった.DC バイアスストレス効果の評価では,電圧印加履歴の有 無の比較から,測定前に高電圧を印加しておくことで デバイス内のトラップ準位を埋めてID生成の安定性 を20倍向上することが可能であることが示唆された. 以上のことから,フレキシブルエレクトロニクスのセキュリティ回路への応用は十分可能性があると考えら れる. 謝辞 この成果の一部は,国立研究開発法人新エネ ルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務 の結果得られたものです. 文 献 [1] “2015年度模倣被害調査報告書,”特許庁,2016. [2] 山内 豪,植田健治,“ホログラムによる偽造防止技術 の高度化 (セキュリティーホログラム),” レーザー研究 35.Supplement, pp.214–215, 2007.
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