円形サブ波長・フォトニック構造の高効率解析のための電磁界シミュレーション手法とその応用
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(2) 電子情報通信学会論文誌 2017/2 Vol. J100–C No. 2. 中心付近では一様な屈折率分布をもち,中心から数波 長以上離れたところから周期構造が始まるような屈折 率分布をもっている.このような共振器の電磁界は, 中心に近い部分では周方向の空間高調波(= エバネッ セント界)は中心に向かい急速に減衰する Im (r) (ハ ンケル関数) 状の r 依存性を示す.このため中心付近 の電磁界は θ 方向の基本波成分のみでよく近似するこ とができる.したがって中心付近では BOR 法の定式 化を用いて計算量を削減するとともに,周期構造に近 い部分より外側では 2 次元 (または 3 次元) の定式化を. 図 1 解析対象の概念図.(a) 微細構造ファイバ,(b) 周 期構造付きディスク共振器 Fig. 1 Example structures of the analysis. (a) Microstructured fiber, (b) Disk resonator having azimuthal periodic structure.. 用いることで,計算精度を維持することができる.こ のとき最小の格子刻みは BOR/2 次元領域境界での格 子寸法となり,これは中心まで 2 次元の格子を刻む場 合よりも(構造にもよるが典型的には数十倍以上)大 きくすることができる.この手法の鍵は両領域の境界 部分の取り扱いで,異なるスキームから得られた電磁 界を相互に変換して利用するような工夫が必要である. 以下ではこの BOR/2 次元のいわばハイブリッドな. FDTD アルゴリズムを説明する.また,求められた近 視野の電磁界から遠方の回折場を計算する際にも,同 様に電磁界の特徴を利用して計算量を削減することが できるので,その方法についても紹介する.. 2. 解析の対象とする構造 本論文の手法で直接求められるのは図 1 (a) に示す ファイバ状構造 [7], [8] の固有モード(本論文ではファ イバモードと呼ぶ)である.同図 (b) のようなディス ク状デバイスの共振モードの電磁界の近似値もそれを 使って求められる.図 1 (b) のデバイス [5], [14] は石英 基板上に形成された Si3 N4 等の高屈折率膜を導波層と する導波路型光共振器であり,隣接配置したバス導波 路からの方向性結合で光を入出力する.ディスク中央 部に励振された電磁界は周期構造により回折されて周 方向に伝搬する Whispering Gallery Mode (WGM) に結合する.WGM の一部は一定距離ディスクの外周 を伝搬したのち,一部は再びディスク中心方向へ回折 され,一部は面外方向に回折される.WGM の周回伝 搬の位相により,面外への回折光は OAM ビームとな る.周期構造はディスク中心から見て回折格子である とともに,波長選択性ミラーとしても機能している. ミラー機構の詳細は文献 [15], [16] を参照されたい.. モードの重ね合わせで近似できる [17].. 3. 解析の手順 3. 1 近視野の電磁界の計算手順 図 1 (a) のモードのように,屈折率が z 方向に一様 な構造中で f (r, θ) exp(−jβz) の形で存在する波の電 磁界は Compact 2D FDTD 法と呼ばれるアルゴリズ ム [18] を使って,r-θ の 2 次元解析空間で求めること ができる.この方法は Maxwell の方程式中の z に関す る偏微分項を ∂/∂z → −jβ で置き換え,z 方向の空間 グリッドを不要にするものである (BOR 法が界の θ 依 存性を exp(jmθ) として,θ の偏微分を ∂/∂θ → jm としているのと同じ). さて,円柱座標系 O-rθ の 2 次元 Yee 格子上に配置 した電磁界の各成分に対し,r < rc では BOR に基づ く差分方程式を,r ≥ rc では 2 次元格子上の差分方程 式を適用する(ファイバモードではなく,z 方向の閉 じ込めモードを直接解析したい場合には rθz 空間の 3 次元解析が必要だが,アルゴリズムの要領は同じ).こ こで rc は BOR/2 次元の境界の動径方向座標を表す. 電磁界の配置を図 2 に示した.空間は r 方向には有 限で,外縁に吸収境界壁を設置する (例えば文献 [19]).. θ 方向には AOB で示した扇形の,周方向繰り返し単 位を解析範囲とし,OA, OB 近傍の格子上の電磁界を 下記 Bloch 境界条件で接続する.. F (r, θ, z) = f (r, θ) · exp (jmθ) exp (jβz). (1). f (r, θ + pθ0 ) = f (r, θ). (2). F は任意の電磁界成分を,θ0 は単位構造の開き角を. 仮に屈折率分布が z 方向に無限に続いているとす. 表す.f は θ に関する周期関数,p は任意の整数であ. るとこの構造は図 1 (a) の微細構造ファイバの一種で. る.各界成分の配置位置を以下に示す.i, k はそれぞ. あり,その固有モードは ±z 方向に伝搬するファイバ. れ θ 軸及び r 軸方向の格子点の番号である.. 46.
(3) 招待論文/円形サブ波長・フォトニック構造の高効率解析のための電磁界シミュレーション手法とその応用. 時間ステップで確定している (後述の手順 7). ( 3 ) 2D 領域の r 方向の最外縁で Ez に吸収境界 条件を適用する. ( 4 ) Bloch 境界条件で 2D 領域の,θ 方向の端同 士を接続する.式 (3),式 (4) を Ez に適用する. ( 5 ) ★ k = Nc (2D 領域最内縁) で,Ez の周期 関数部である uz (式 (1) の f に相当) を下式で計算し, それを用いて i = 1 での Ez の推定値を求める.. uz [Nc ] =. Nθ 1 exp {−jm(i − 1)Δθ} Ez [i, Nc ] Nθ i=1. (5) Ez,avg [1, Nc ] = exp (jmΔθ) uz [Nc ] 図 2 rθ 平面上の Yee 格子と電磁界の各成分の配置 Fig. 2 Yee’s lattice on r − θ plane and field assignment on it.. (6). ( 6 ) 内側領域で Hr , Hθ を BOR アルゴリズムで 計算する.範囲は i = 1, 1 ≤ k ≤ Nc − 1. なお,k = Nc − 1 (BOR 領域最外縁) での Hθ の計. Ez (iΔθ, kΔr). Hz ((i + 1/2)Δθ, (k + 1/2)Δr). Er (iΔθ, (k + 1/2)Δr). Hr ((i + 1/2)Δθ, kΔr). Eθ ((i + 1/2)Δθ, kΔr). Hθ (iΔθ, (k + 1/2)Δr). Δθ, Δr は θ 方向の角度刻み及び r 方向の格子間 隔,Nθ , Nr はそれぞれの方向の総グリッド数,Nc は. BOR/2D 境界のグリッド番号で,Nc = rc /Δr であ る.FDTD 法の差分方程式の計算には θ 方向における 解析空間の一つ外側,すなわち i = 0 及び i = Nθ + 1 での界の値が必要だが,下記の Bloch 境界条件を適用 することで,扇形の内部にある i = 1 及び i = Nθ で の界からそれぞれ求めることができる [20].. 算に必要な,k = Nc (2D 領域最内縁) での Ez の平均 振幅は,(5) の平均化処理で既に求められている. ( 7 ) ● BOR 領域の最外縁 k = Nc − 1 で,代表 点である i = 1 以外の周方向の点での Hθ を計算.. Hθ [iΔθ, Nc − 1] = exp {jm(i − 1)Δθ} Hθ [Δθ, Nc − 1] (i = 1). (7). ( 8 ) 2D 領域で,Hr と Hθ を 2 次元差分方程式を 用いて計算する.範囲は 1 ≤ i ≤ Nθ , Nc ≤ k ≤ Nr . ( 9 ) r 方向の最外縁で Hθ に吸収境界条件を適用 ( 10 ) Hr と Hθ に対し,式 (3) 及び式 (4) の Bloch. F [0, k] = e−jmθ0 F [Nθ , k]. (3). F [Nθ +1, k] = ejmθ0 F [1, k]. (4). 境界条件で 2D 領域の端同士を接続. ( 11 ) (界を更新して (1) に戻る) 上記の中で●印の (7) は,BOR/2D 境界に隣接し. FDTD の時間ループ内における電磁界の計算手順. た 2D 領域での界計算に使うためのものである.また. は次のとおりである.ここでは簡単のため TM モード. ★で示した (5) は逆に,BOR 領域の最外縁での Hθ の. 由来の界成分 (Ez , Hθ , Hr ) についてのみ示す.. 計算に際し,2D 領域内の電界 Ez の値が必要なため,. ( 1 ) 内側領域で Ez を BOR 法で計算する.r 方. それらを 2D 領域内で (Bloch 関数的な意味での) θ 方. 向の範囲は 0 ≤ k ≤ Nc − 1.周方向は一つの代表点. 向の平均値として求めている.この界の相互利用が本. (i = 1) のみでよい.中心(扇の要の位置)では通常の. 手法の鍵である.異なるスキームを併用しつつも精度. BOR 法に準じる例外処理,すなわち Ez は Ampere. よく解を求めるには,BOR/2D 境界近傍で電磁界の. の周回積分の式から求めるなど [11] を施す.. θ 方向の分布が十分に exp(jmθ) に近い形状になって. ( 2 ) 外側の 2D 領域で,Ez を 2 次元の差分方程. いることが必要である.したがってこの境界は,物理. 式を用いて計算する.範囲は 1 ≤ i ≤ Nθ とする.な. 的な周期構造(空孔列)の位置より少なくとも 1∼2 媒. お,k = Nc (BOR と 2D の境界) での計算に必要とな. 質内波長程度は内側に設定しなければならない.. る Hθ の振幅 (これは BOR 領域内の点) は,既に前の. ところで,FDTD の時間刻み幅 Δt は Courant の 47.
(4) 電子情報通信学会論文誌 2017/2 Vol. J100–C No. 2. 安定条件 [21] より,最小の空間刻みにほぼ比例する. 仮に空孔列近傍で格子がほぼ正方形 (Δr rΔθ) と なるよう刻みを設定すると,曲率の中心まで 2 次元 格子を配置した場合の最小格子間隔は ΔrΔθ (中心に 隣接する格子) となる.一方,本手法で 2 次元格子が. r = rc の位置から始まるようにすると,最小の格子間 隔は r = rc の点における Nc ΔrΔθ である.両者の比 は Nc ,従って Δt もおおむね Nc 倍まで伸張すること が可能となる.FDTD 法で所望の時間だけ界の時間 発展を計算するのに必要な時間ステップ数も 1/Nc 程. 図 3 遠視野計算のための座標系の定義 Definition of the coordinate system for the far-field calculation.. Fig. 3. 度で済むことになり,計算量の削減が実現される.. 3. 2 遠方場の計算手順 3. 2. 1 基本方程式. fn (r) は動径位置 r における周方向 n 次の複素フーリ. 前節の要領で得た ±z 方向に伝搬するファイバー. エ係数であり,近視野の電磁界 F と下式で結び付けら. モードの電磁界を,振幅比 1 : 1 かつ適当な位相差. れている.. をもって足し合わせることで,ディスク表面での電磁 界の近似解を得る [17].こうして得た電磁界の横成分. Nθ 1 F (r, iΔθ)e−j(m+nM )θ Nθ i=1. fn (r) =. Er , Eθ , Hr , Hθ を使って,遠方の回折場は以下のベ. 電磁界を式 (12) のように表せたとき,式 (10), (11). クトル回折の公式で求めることができる [22].. EΘ =. jk0 e−jk0 R (−W0 NΘ − LΦ ) 4π R. (8). jk0 e−jk0 R (9) (−W0 NΦ + LΘ ) 4π R ∞ 2π ˆ ˆ ejk0 R·R −Hθ rˆ + Hr θ N = rdrdθ (10) EΦ =. 0. L=. 0. ∞ 2π 0. . ˆ e Eθ rˆ − Er θ. rdrdθ. (11). EΘ , EΦ が求めるべき遠方界の天頂角成分及び方位 角成分,N , L はディスク表面での等価電流源と等価. ˆ R, R はディスク中心から遠方界の 磁流源を表す.R, 計算点に向かう単位ベクトル,ディスク表面の位置ベ クトル,近視野の座標系の原点から遠視野の注目点ま での距離をそれぞれ表す.求められた EΘ , EΦ の r 成 分及び θ 成分を,それぞれ遠方界の Θ 成分,Φ 成分 と読み替える.各記号の意味を図 3 に示した. 式 (10), (11) に現れる r と θ に関する二重積分の計 算量は,円形デバイスの近視野電磁界の特徴を利用す ることで削減することができる.いま,円周に沿って. M 周期分の円孔列が設けられており,モードの OAM が m であるとき,任意の近視野成分 F (r, θ) は θ 方向 の複素フーリエ級数で表現できる. +∞ n=−∞. 48. に現れる積分の r 成分及び θ 成分はそれぞれ以下のよ うに半解析的な式に変形することができる [23].. ∞ 0. 2π. ˆ. . F (r, θ)ˆ r ejk0 R·R rdrdθ. 0 +∞ . = π. π. ej(m+nM )( 2 +Φ). n=−∞. ˆ jk0 R·R. 0. F (r, θ) =. (13). fn (r)ej(m+nM )θ. − − ˆ ˆ + G+ × j G+ n − Gn r n + Gn θ ∞ 0. 2π. (14). ˆ ˆ jk0 R·R F (r, θ)θe rdrdθ. 0 +∞ . = π. π. ej(m+nM )( 2 +Φ). n=−∞. − − ˆ ˆ + j G+ × − G+ n + Gn r n − Gn θ. (15). − ここに G+ n , Gn は下式で与えられる fn (r) の Hankel. 変換である.. G± n =. . ∞. fn (r)Jm±nM (k0 sin Θr) rdr. (16). 0. Jm±nM は (m ± nM ) 次の Bessel 関数を表す. 現実の近視野像は以降で示すように,ディスクの中 心から円孔列までの BOR 領域では,exp(jmθ) の項. (12). を除けば,0 次のフーリエ成分が支配的である.高次 のフーリエ成分は円孔列からディスクの外側に向かっ.
(5) 招待論文/円形サブ波長・フォトニック構造の高効率解析のための電磁界シミュレーション手法とその応用. て高々数波長程度の範囲に局在しているにすぎない. 更に 2 次以上のフーリエ成分はエバネッセントであり, 遠方場の形成にも寄与しない.よって式 (15) の無限 級数は実際には,−2 ≤ n ≤ +2 程度の和のみでよく, また式 (16) の r に関する無限積分も限られた範囲(空 孔列近傍のみ)で十分収束する. 以上を踏まえて遠視野像計算の手順をまとめる. ( 1 ) 3. 1 の方法でディスク表面換算の電磁界の横 成分 Eθ , Er , Hθ , Hr を計算 ( 2 ) 式 (13) から電磁界の各成分のフーリエ係数 の r 方向分布を計算 ( 3 )【遠視野の天頂角 Θ ごとに】中心∼円孔列の. 図 4. 近視野の電磁界計算の解析空間.AB, BB は Absorbing Boundary, Bloch Boundary を表す. Fig. 4 Computational domain for the near-field calculation. AB and BB stand for Absorbing and Bloch boundaries, respectively.. 間で 0 次フーリエ成分 f0 と式 (16) から G± を計算 ( 4 ) (同) 円孔列から外側の r で,n = ±2 次程度 までのフーリエ成分 fn について式 (16) から G± を 計算 ( 5 )【遠視野の方位角 Φ ごとに】式 (14), (15) か. ˆな ˆ , Er θ ら等価電流源,等価磁流源の r, θ 成分 (Hθ r ど) を計算 ( 6 ) 式 (10), (11) から等価電流源,磁流源を計算 ( 7 ) (8), (9) から遠視野の電界 (天頂角成分と方 位角成分) を計算. 4. 計 算 例 4. 1 近視野の界分布と収束特性 具体的な解析空間を図 4 に示す.単位構造の開き角. θ0 は 10 度 (周期構造の数 M は 36) とし,周方向格. 図 5 ディスク共振器中のファイバモードの近視野像の計 算例.3 時の方向にあるバーは後述する図 7 の横軸 の範囲を示す. Fig. 5 Result of simulation of a fiber mode in the disk resonator. A bar on the right side corresponds to the horisontal range of Fig. 7.. 子の分割数 Nθ は 72 とした.ディスク外周の円弧の 長さを Λ としたとき,4.53Λ ≤ r ≤ 5.12Λ の範囲に 内部空孔を配置した.この領域から少なくとも 1 波長 程度内側までは,θ 方向に高い高調波成分をもつエバ ネッセント界が存在すると予想される.内部空孔の, ディスク中心に近い側の端を r = 4.53Λ = rh と表し,. BOR/2D 領域の境界 rc と rh の距離 d を様々に変えて OAM = 3 の共振モードの波長を調べた.なお図中の AB, BB はそれぞれ吸収境界 (Absorbing Boundary), Bloch 境界 (Bloch Boundary) を表す. 共振モードの電磁界の例を図 5 に示す.3 時の方向 のバーは次頁の図 7 の横軸の範囲を表す.このモード は内部空孔の内側に沿って伝搬する WGM であり,共. 図6 Fig. 6. ディスク共振器における共振波長及び Q 値と BOR/2D 領域境界の位置の関係 Relation between calculated resonance wavelength and the position of BOR/2D boundary.. 振特性の BOR/2D 境界∼内部空孔間距離 d に対する 収束の様子を図 6 に示した.この結果から,d > 2Λ. λ と Q 値を,境界を空孔から十分離した場合の結果を. 程度とすればほぼ BOR 領域の導入の影響は現れない. 参照値とする相対誤差 ε で表した.例えば共振波長に. ことがわかる.縦軸はそれぞれの d における共振波長. ついては下式の λref が参照値である. 49.
(6) 電子情報通信学会論文誌 2017/2 Vol. J100–C No. 2. する BOR/2D 境界距離 d も長く設定しなければなら ない.図 6 と図 7 の結果に差異 (共振波長を重視する か界分布を重視するかで d の下限が異なる) が生じる 背景には,このような事情があると考えられる. 最後に計算量について言及する.十分に収束した共 振波長(図 6)を得るには d = 1.5Λ とすればよく,こ のとき BOR/2D 境界位置 rc と内部空孔の内縁 rh の 関係は rc = 0.67rh であった.また境界の格子番号は. Nc = 218 であった.ハイブリッド化により k < Nc の 領域では θ 方向の差分演算が不要になり,計算量が削 減されている.しかし本手法の利点は最小空間刻み幅 が ΔrΔθ → Nc ΔrΔθ と Nc 倍にできることによる, 時間刻み幅の増大である.これにより同じ物理時間を ディスク共振器の共振モードにおける Hr と, BOR/2D 領域境界の位置の関係 Fig. 7 Relation between calculated Hr and the position of BOR/2D boundary. 図7. 計算するのに必要な時間ステップ数が約 1/Nc で済ん でいる.具体的には上述の Nc = 218 の場合,時間ス テップ数は全 2D 解析の場合の約 0.46%である.同様 に界分布に不連続が現れないようにするには d = 2.5Λ とすればよく (図 7),このとき必要な時間ステップ数. λ − λref ε= × 100[%] λref. (17). は全 2D 解析の約 0.68% (Nc = 146) であった.以上 の削減効果は単位長さ (本試算の場合は周期弧長 Λ) あ. なお rc → Δr すなわち d 4.516Λ とすれば全体を. たりの格子の分割数に反比例する.ここでは Λ を 72. 二次元解析したことと同じになるが,必要な計算ス. 分割したが,用途次第では 30 分割程度でも十分な場. テップ数が d = 4Λ の 38 倍にも増大する.本論文で. 合もあろう.これらの場合でも,時間ステップ数は約. は計算の困難さを考慮し,d = 4Λ の結果を参照値と. 3%以下には削減できることになる.. して用いることとした. 次に,d = Λ (境界位置が空孔列に近すぎる場合). 4. 2 遠方回折場の計算例 4. 2. 1 各共振モードの近視野像と遠視野像. から d = 2.5Λ (ほぼ収束している場合) までのそれぞ. 幾つかの OAM 次数に対する遠視野像を求めるため. れの境界位置における,Hr の r 方向の分布を図 7 に. に,前節とはやや異なる構造定数を想定した.周方向周. 示した.d = Λ, 1.5Λ, 2Λ では,BOR/2D 境界である. 期数は M = 26,周方向の孔の duty 比は約 0.6,ディ. r = rc (図の矢印) において非物理的な不連続が見ら. スクの直径は 9∼10μm である.TM-like, OAM = 0. れる.d = 2.5Λ では,この段差はほぼ消滅している.. のモード,及び TE-like の OAM = 1 モードの近視野. 本テスト構造を含めて,文献 [1]∼[3], [6] の円形共振. 像と遠視野像の計算例を図 8, 図 9 にそれぞれ示す.. 器では周期構造付近を伝搬する WGM が用いられて. 周方向フーリエ級数の次数は ±2 次までを考慮した.. いる.共振波長の計算精度は強度の大きな部分での電. それぞれのモードの近視野の,面内 Q 値は約 84,000. 磁界の精度に依存すると考えるのが自然であろう.し. 及び 2,800 と見積もられた.前者では近視野の電界横. たがって,媒質内波長よりやや長い距離 (d ∼ 1.5Λ). 成分は Er であるので,遠方界の主成分は EΘ (天頂. に BOR/2D 境界を設置することが,十分な精度で共. 角方向成分,径偏光) となるはずである.図 8 ではこ. 振波長を求めるためには必要である.. の予想と整合した結果が得られている.また円孔列部. 他方,電磁界分布については強度の大小と別に,対. 分の動径位置は約 5μm としたが,これを反映して拡. 象が正確にモデリングされているかどうかに結果が左. がり角 ±9◦ の比較的広角の放射が見られる結果となっ. 右される.具体的には,図 7 で不連続が識別不可能な. た.一方,後者は OAM = 1 なので近視野の中心でも. 程度になるには,エバネッセント成分の振幅がその場. 電界が有限値をもつはずで,計算結果もそれと符合し. 所での定在波成分の振幅に比べて十分に小さくなけれ. ている.それに同様に,遠方界でも中心 (鉛直方向) が. ばならない.定在波の振幅が弱ければこの条件を満足. 強度のピークである結果が得られている.. 50.
(7) 招待論文/円形サブ波長・フォトニック構造の高効率解析のための電磁界シミュレーション手法とその応用. 図 8 ディスク共振器の TM-like, OAM = 0 のモードの 近視野像と遠方界 Fig. 8 Near- and far-field pattern of a TM-like, OAM = 0 mode of the disk resonator.. 図 10 Fig. 10. ディスク共振器の TE-like, OAM = 1 モードの局 所ポインティングベクトル (Sz ) Local Poynting vector distribution of a TE-like, OAM = 1 mode of the disk resonator.. Sz の実部は放射する成分を,虚部は共振器の表面付 近に蓄積されるリアクティブな成分を表す.図 10 に は図 9 の近視野に対する Sz の分布を示した.図中に は全ポインティングパワーに占める放射成分の割合 η も併せて記した.η の定義は以下のとおりである.. ∞. Re(Sz )rdr. 0. ∞. η =. ∞ Re(Sz )rdr + 0 Im(Sz )rdr. 0. 図 9 ディスク共振器の TE-like, OAM = 1 のモードの 近視野像と遠方界 Fig. 9 Near- and far-field pattern of a TE-like, OAM = 1 mode of the disk resonator.. × 100[%]. (19). 図に実線で示す放射成分は円孔列の部分でのみ非ゼロ 値をもつことが明らかである.つまり遠方界は円孔列 近傍の WGM によって形成されるといえる.他方,リ. 4. 2. 2 近視野像各部の電磁界と遠方界の関係. アクティブな成分は全般に高強度で,素子全体に分布. 続いて所望の放射角及び OAM をもつ遠視野像を形. していることから,定在波的な共振モードの電磁界の. 成するのに,キャビティのどの部分の電磁界形状を詳. 一部が放射光となって共振器外に漏れ出ている機構が. 細に制御する必要があるのかを検討した.例えば図 9. 見て取れる.円孔列部で後者の成分が強いのは,GMR. (TE-like, OAM = 1 のモード) の近視野像を見ると,. に伴いこの部分でも一種の共鳴が生じ,電磁界のパ. モードの大部分は同心円状の界分布で占められ,周期. ワーが蓄積されているからとも解釈できる.. 円孔部の複雑な構造は無視できる程度にも見える.し かし実際には前者は導波層の厚み方向に全反射で閉じ. 5. む す び. 込められており,面外には放射しない.主たる放射源. 光通信・光計測の分野向けの新しいデバイス・部品. は後者の,リング状の領域である.このように近視野. においてよく用いられる,サブ波長の周期構造をもつ. 像の見た目から放射特性を想像するのが必ずしも容易. 円形素子の解析に役立つ数値シミュレーション手法を. ではない.そこで,ここでは,個々の動径位置 (r) の. 紹介した.一つめは近視野像や素子内部の電磁界解析. リング状の領域の放射特性を,その位置での局所的な. のための,円柱座標系 FDTD 法である.特に円形素. ポインティングベクトルの面外方向成分から把握する. 子内の電磁界の特徴を利用して,計算時間の増大につ. ことを試みた.具体的に計算したのは以下の量 Sz (r). ながる微細メッシュの出現を回避するようなアルゴリ. である (∗ は複素共役を表す).. ズム(中心近傍:BOR 法,外側領域:円柱座標系 2. Sz (r) =. 1 2. 0. 2π. {E(r, θ) × H ∗ (r, θ)} · zˆdθ (18). 次元 FDTD 法)を紹介した.後半ではこれらの素子 からの遠視野像をベクトル回折理論に基づき求める際 51.
(8) 電子情報通信学会論文誌 2017/2 Vol. J100–C No. 2. の,積分計算の高効率化のための工夫について説明し. [13]. た.素子・デバイス構造の複雑化は今後もますます進 むと思われるが,ここで紹介したような電磁界形状の. [14]. 特徴に着目した計算量抑制策は,たとえ並列計算など のシミュレーション環境が進展したとしても依然重要. vol.36, no.9, pp.1689–1691, 2011. [16]. vol.32, no.14, pp.2606–2613, 1993.. 受けた. 文. 献. [17]. D.M. Pozar, Microwave Engineering 3rd ed., p.287,. [18]. S. Xiao and R. Vahldieck, “An efficient 2-D FDTD. Wiley, 2005.. [1]. M. Fujita and T. Baba, “Microgear laser,” Appl.. [2]. X. Cai, J. Wang, M.J. Strain, et al., “Integrated com-. Phys. Lett., vol.80, no.12, pp.2051–2053, 2002.. algorithm using real variables,” IEEE Microwave. pact optical vortex beam emitters,” Science, vol.338,. Guided Wave Lett., vol.3, no.5, pp.127–129, 1993. [19]. pp.363–366, 2012.. A. Scherer, and A. Yariv, “Finite-difference timedomain calculation of spontaneous emission lifetime. periodically patterned silicon microring resonators,”. in a microcavity,” J. Opt. Soc. Am. B, vol.16, no.3, pp.465–474, 1999.. C.R. Doerr and L.L. Buhl, “Circular grating coupler. [20]. ized beams,” Opt. Lett., vol.36, no.7, pp.1209–1211,. odic structures,” IEEE Trans. Microw. Theory Tech., vol.43, no.4, pp.860–865, 1995.. S. Iijima, Y. Ohtera, and H. Yamada, “High-Q mi-. [21]. A. Taflove and S.C. Hagness, Computational Elec-. crodisk resonator having sub-wavelength grating on. trodynamics:. its sidewall,” 2013 CLEO/PR, paper WI1-5, Kyoto,. Method Third ed., chap. 4, Artech House, Boston,. C.. Sieutatn,. The Finite-Difference Time-Domain. 2005. R.. Peretti,. J.-L.. Leclercq,. P.. [22]. Viktorovitch, and X. Letartre, “Strong confinement of light in low index materials: The Photon Cage,” [7]. “Spatially. looped algorithms for time-domain analysis of peri-. July 2013. [6]. M.C-. Marcysiak and W.K. Gwarek,. for creating focused azimuthally and radially polar2011. [5]. Y. Xu, J.S. Vˇ uckovi´ c, R.K. Lee, O.J. Painter,. J.Y. Lee and P.M. Fauchet, “Slow-light dispersion in Opt. Lett., vol.37, no.1, pp.58–60, 2012.. [4]. S.S. Wang and R. Magnusson, “Theory and applications of guided-mode resonance filters,” Appl. Opt.,. 本研究は科研費挑戦的萌芽研究 (15K13370) の助成を. [3]. Y. Ohtera, S. Iijima, and H. Yamada, “Guided-mode resonance in curved grating structures,” Opt. Lett.,. 謝辞 遠方界の計算法について貴重なご助言を賜り ました,東北大学澤谷邦男名誉教授に深く感謝します.. 遥,山田博仁,“円形共振器解析のため. の BOR・2 次元ハイブリッド型 FDTD 法, ” 信学技報, EST2013-64, Oct. 2013. 高橋健人,大寺康夫,山田博仁,“GMR アシスト型 OAM ビームカプラの結合号率制御に関する検討, ” 信学技報, EST2015-69, Oct. 2015.. [15]. であり続けると我々は考えている.. 大寺康夫,広瀬. 宇野. 亨,FDTD 法による電磁界およびアンテナ解析,. pp.116–127, コロナ社,1998.. Opt. Express, vol.21, no.17, pp.20015–20022, 2013.. 大寺康夫,高橋健人,広瀬 遥,山田博仁,“周期構造付 ” 信学技報,MW2014-108, きディスク共振器の放射特性,. Y. Ohtera, H. Hirose, and H. Yamada, “Resonantly. Oct. 2014.. [23]. guided modes in microstructured optical fibers with a. (平成 28 年 6 月 30 日受付,9 月 29 日再受付, 29 年 1 月 13 日公開). circular array of high-index rods,” Opt. Lett., vol.38, no.15, pp.2695–2697, 2013. [8]. Y. Ohtera, H. Hirose, and H. Yamada, “Characteristics of resonantly-guided modes in microstructured optical fibers,” Photonics, vol.1, pp.432–441, 2014.. [9]. K.S. Yee, “Numerical solution of initial boundary. 大寺 康夫. value problems involving Maxwell’s equations in. 1997 東北大学工学研究科博士課程了.. isotropic media,” IEEE Trans. Antennas Propag., [10]. vol.AP-14, no.3, pp.302–307, 1966.. 1997 東北大学電気通信研究所助手.2004. A. Taflove and S.C. Hagness, Computational Elec-. 東北大学先進医工学研究機構助教授・タス クチームリーダー.2008 東北大学工学研. trodynamics:. The Finite-Difference Time-Domain. 究科准教授.微小光学素子,電磁界シミュ レーション,近赤外分光イメージングの研. Method Third ed., Artech House, Boston, 2005. [11]. A. Taflove and S.C. Hagness, Computational Electrodynamics:. The Finite-Difference Time-Domain. Method Third ed., chap. 12, Artech House, Boston, 2005. [12]. A.M. Yao and M.J. Padgett, “Orbital angular momentum: origins, behavior and applications,” Adv. Opt. Photon., 3, 161-204, 2011.. 52. (正員). 究に従事..
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