解説論文
次世代電子機器を支える三次元積層技術と先端実装の設計・評価技術論文特集スマートフォンの薄型トレンドに対応する超低背カメラモジュールの
実装技術
中條
博則
†a)Jisso Technology of the Ultra-Low Height Camera Module Corresponding to the
Thin Trend of Smartphone
Hironori NAKAJO
†a)あらまし 「携帯電話の再発明」のコンセプトで登場したスマートフォンは,従来の携帯電話を駆逐し急激に市 場を拡大している.その本格化にともない,薄型化,ディスプレイの多画素化が重要な差異化トレンドとして進 展している.一方,カメラはスマートフォンの差異化に欠かせない機能となっている.カメラ機能を重視するメ インカメラでは多画素化が進むとともに,スマートフォンの薄型化トレンドの影響から,従来の技術の延長では 実現できないレベルの低背化が要求されており,その実現が事業の成否を分かつ状況になっている.また,TV 電話機能の普遍化にともない自分撮り用のサブカメラの搭載比率が急激に高まる中,小型化,低背化で有利な上, 部品コストだけでなくトータルコスト低減も可能な WLO (Wafer Level Optics: Wafer 形状の集合レンズ) や TSV (Through Silicon Via: Si貫通電極) プロセスを採用したリフローカメラモジュールの量産が本格化しつつ ある.
キーワード Flip chip,CSP (Chip Scale Package),TSV,WLO,S-WLCM (Semi-Wafer Level Camera Module)
1.
ま え が き
2007年,Appleはハードキーがほとんどない静電容 量式マルチタッチ入力方式を採用した大型フルサイズ ディスプレイのiPhoneで携帯電話市場に新規参入し た.iPhoneは,インターネット経由でアプリケーショ ンが追加できる「進化する携帯電話」であり,Apple が「携帯電話の再発明」と称したように,従来の携帯 電話とは一線を画したスマートフォンという新たな ジャンルを確立した.その後,Googleのオープンソー スOSであるAndroidなどを採用したスマートフォン が続々と市場投入され,2013年にはスマートフォンは 携帯電話市場の50%を超えるまでに至っており,今後 更なるシェア拡大が見込まれている.ハードキーがほ とんどないシンプルな外観をもつスマートフォンは, †(株)東芝セミコンダクター&ストレージ社メモリ事業部イメージ センサ事業統括部イメージセンサ技術部,川崎市Toshiba Corporation Semiconductor & Storage Products Company, 580–1, Horikawa-cho, Saiwai-ku, Kawasaki-shi, 212–8520 Japan a) E-mail: [email protected] 導入期には従来にない斬新なデザインで熱狂的な支持 を受けた.しかし,ある程度普及すると,どんなもの でも新鮮さは失われるものである.そこで,デザイン のマンネリ化を打開するため,最近のスマートフォン は薄型・フルフラットデザインがトレンドとなってい る.その結果,画像撮影を主な目的とする画素数の多 いメインカメラモジュール(スマートフォン背面に配 置される画素数の多いカメラ,リアカメラともいう) の低背化が非常に重要な要素になってきた.インター ネット接続が前提となるスマートフォンでは,カメラ 性能・機能が従来の携帯電話以上に重要な差異化要素 である.そして,更になる差異化を進めるため,ディ スプレイの大型化・多画素化も進んでいる.それによ り,メインカメラの画素数は拡大基調にある.画素数 の増加はイメージセンサの光学サイズの拡大につなが り,光路長の伸張すなわちカメラモジュール高さを増 加させる要因となる.このような画素数増加基調の中 で,カメラモジュールの低背化を実現しなければなら ないという矛盾を,イメージセンサ設計技術,光学設 計技術,実装技術を駆使して克服し,低背でありなが
図 1 携帯電話/スマートフォン/カメラモジュール市場規模推移
Fig. 1 The transition of market size of all mobile phone, smartphone and camera module. ら光学特性の優れたメインカメラモジュールを実現さ せることが,非常に重要な課題となっている.一方, スマートフォンにはTV電話機能が標準搭載されてい る.そのため,ディスプレイ側に搭載される画素数が それほど多くない自分撮り用のサブカメラ(フロント カメラともいう)の搭載率が急激に高まっている.サ ブカメラの画素数がディスプレイ画素数より少ない場 合,拡大表示する必要があり解像度が落ちるため,最 近はサブカメラの画素数も増加の一途をたどっている.
2.
スマートフォン・カメラモジュールの市
場動向
カメラ付き携帯電話は,2000年11月に日本市場 に登場した.その後,廉価なCMOSイメージセンサ の高画質化が実現した2004年ころから世界市場で本 格普及が始まり,2010年には携帯電話の80%にメイ ンカメラが搭載されるに至った.そして,同じころか らスマートフォンが急成長し始めたことにともない, 最終的には図1のように搭載率は90%を超えると予 測されている.更に,インターネット接続が前提とな るスマートフォンでは,カメラ性能・機能が従来の携 帯電話以上に重要となっている.そのため,メインカ メラの画素数のメインストリームが従来の5M Pixel から8M Pixelに移行し,更に最近ではスマートフォ ンのディスプレイ画素数が増加基調にあることから, 最上位モデルでは13M Pixelが搭載されるものが増 えている(図2参照).また,TV電話機能が標準搭 載されているスマートフォンでは,サブカメラの搭 載率も急増している.サブカメラは以前の携帯電話 ではVGA (Video Graphics Array: 640×480 pixel)が一般的であったが,最近ではフラグシップスマート フォンのディスプレイ画素数がqHD (quarter High Definition: 960×540pixel) → HD(1280×720 pixel)
→ FHD (Full HD: 1920×1080 pixel)と増加傾向に あるため,これと同期して図2のようにサブカメラの 画素数も1.3M Pixel,2M Pixel,FHDと増加し,更 に2013年には3M Pixel,5M Pixelという以前のメ インカメラの画素数に匹敵するような多画素品まで登 場するにおよんでいる. スマートフォンは2014年には市場規模が10億台を 超え,最終的には市場の70%以上がスマートフォンに なると予測されている.また,スマートフォンの市場 拡大に牽引され,サブカメラは2012年から急激に搭 載数が増加している.その伸張率はメインカメラのそ れを凌駕しており,図2のようにカメラモジュール全 体に占めるサブカメラの比率は年々高まっている.
3.
カメラモジュールの低背化技術
カメラモジュールでは,イメージセンサをPCB解説論文/スマートフォンの薄型トレンドに対応する超低背カメラモジュールの実装技術
図 2 携帯電話用カメラモジュール画素数別比率推移
Fig. 2 The transition of share of each image format of mobile phone camera module.
ンディング接続するCOB (Chip On Board)製法が 一般的である.また,AF (Auto Focus)機能付きのメ インカメラモジュールでは,アクチュエータドライバ ICや抵抗・コンデンサなどのSMD (Surface Mount Device)が何点か必要なため,イメージセンサとこれ ら周辺部品が目標サイズのカメラモジュールのPCB 上に実装しきれない場合がある(図3 [a],実装できる 場合は図3[c]と同仕様になる).この場合でも,カメ ラモジュールの目標サイズを実現しなければならない ので,PCB表面に実装できないSMDをPCB内部 に収納する部品内蔵PCBが使われていた.スマート フォンが主流になる前のカメラモジュールでは,まず PCBを設計してその厚さを決定した後,光学系を設 計してカメラモジュールの目標高さ(図3 H)を実現 する手法が一般的であった.スマートフォンの薄型化 が進み始めた2011年ころまでは,この手法でも良好 な光学性能が実現できた.しかし,スマートフォンの 薄型化が進むにともない,カメラで最も重要な良好な 光学性能確保が,この設計手法では難しくなってきた. そこで,カメラモジュールの底面からトップまでの 物理的寸法(H)を低減する従来の設計手法ではなく, 光学性能を重視する低背設計手法の確立が必要になっ てきた.カメラモジュールで光学性能に関係する部分 はイメージセンサ表面からレンズトップまでの寸法
(TTL: Total Track Length)であり,イメージセンサ 表面より下(H-TTL)は光学性能に影響を与えない実 装技術に関係する寸法である(図3 [A]の部分).よっ て,低背カメラモジュールでは,まずこの部分の寸法 を徹底的に削減(理想的にはイメージセンサのみの厚 さまで)した後,カメラモジュールの目標高さ(H)か ら[A]の部分の寸法を差し引き,残った寸法(TTL) 内で良好な光学設計をしなければならなくなったので ある. 3. 1 実装寸法の削減手法 イメージセンサより下側の構造体の寸法(図3 [A]) は光学性能に関与しない部分,すなわちカメラモジュー ルでは付加価値を生まない部分とも言える.よって, 理想的にはこの部分はイメージセンサの厚さのみであ ることが望ましい.図3 [d]のCSP (Chip Scale
Pack-age)仕様がこれに該当する.しかし,この仕様を成立 させるためには,SMDなどの周辺部品がないことが 前提であるため,固定焦点のカメラモジュール(サブ カメラでは一般的)に限定される.一方,メインカメラ モジュールで主流のAF仕様では,周辺部品が必要と なるため,図3 [a]の部品内蔵PCBを使用したCOB 製法のものが多かった.しかし,この製法ではPCB が厚くなってしまうため,低背化には不利な構造だっ た.この点を打開するため,図3 [b]のイメージセンサ をキャビティ付きセラミックPCBにFlip chip実装 することにより,周辺部品がカメラモジュールの高さ に影響を与えない方式が2010年に登場し,AF仕様 の低背カメラモジュールの主流になっていた.この方 式では,PCBのイメージセンサ対面にダスト防止の CG (Cover Glass)を搭載するのが一般的な仕様であ る.しかし,光路内に光学部品が追加されるとTTL が伸張してしまう.そこで,赤外線(IR: Infrared)や 紫外線(UV: Ultra Violet)をカットして色再現性を
高めるために光路内に挿入されている光学部品IRCF
(IR Cut Filter)を廃止し,その機能をCGに付加し た仕様が一般的である.ところが,更なる低背化が要
図 3 超低背カメラモジュールを実現するための設計手法
Fig. 3 The design method for realizing an ultra low height camera module.
求される最近のカメラモジュールでは,Flip Chip実 装方式のPCB上のSMDがアクチュエータと物理的 に干渉するレベルにまでなってきた.この問題を解消 するためには,1) TTLを伸ばしてアクチュエータと SMDの隙間を確保する,2)セラミックPCBの厚さ を薄くしてアクチュエータとSMDの隙間を確保する, これら2通りの手法が考えられる.しかし,1)ではカ メラモジュールの高さが高くなってしまい高額な製法 であるFlip Chip実装方式を採用する意味合いが薄れ てしまうため,一般には後者の手法が採用される.と ころが,セラミックPCBは脆性が高いため,薄くし すぎると落下などの衝撃で破損するリスクが高まる. 現在の低背化の要求は,Flip chip実装方式でも限界に 近づいているのである.このジレンマを打開する策と しては,図3 [c]のスタックドセンサを薄型有機PCB にワイヤボンディングする方式が有望である(SOC (System On Chip: イメージセンサとロジック回路が 1chipに集積されているもの)仕様のイメージセンサ でも,チップサイズが小さく周辺部品がPCB表面に 実装できれば同様).スタックドセンサはイメージセ ンサを画素部とロジック部それぞれ別チップにして積 層したものであり,2013年に量産が始まっている.ス タックドセンサのチップサイズはイメージセンサのセ ンサ部とロジック部を別チップにして積層するため, SOCタイプに比較して大幅に小型化できる.よって, ワイヤボンディング接続でもPCB表面にSMDを実 装するスペースが容易に確保できる.また図3 [b]の Flip chip方式に比べてSMDとアクチュエータの隙 間は十分確保できるため,超低背化に有利である.加 えて,有機基板は脆性が低いため破損リスクも大幅に 低減できる.よって,今後の低背AFカメラモジュー ルでは,図3 [c]の構造が実現できる周辺部品も含めた 全ての部品がPCB表面に実装できるSOC仕様のイ メージセンサ,並びにスタックドセンサを採用するの が最も有望と考えられている. 3. 2 短光路長で良好な光学特性を実現する設計 手法 実装部の寸法を最小にする工夫を行った後,この寸 法を目標カメラモジュール高さから差し引いたTTL 内に収まるようにレンズ設計を行う.レンズのTTL はイメージセンサの光学サイズ(Optical Size: イメー ジセンサの対角長が9mm以上では16mm,それ以下 では18mmで割って分数で表したもの.単位はinch) に比例する.よって,光学サイズの小さいセンサの方 がカメラモジュールの低背化には有利である.光学サ イズを小さくするためには,i)画素数を少なくする, ii)セルサイズを小さくする,の2通りの手法がある. しかし,最近はメインカメラ,サブカメラとも画素数 は増加傾向にあるため,ii)のセルサイズの縮小が有効 な手法である.また,同じ光学サイズのイメージセン サでは,セルサイズが小さい方が画素数を多くするこ とができる.図2のように,メインカメラ,サブカメ ラとも画素数の増加が継続しているため,セルサイズ の縮小化もこのトレンドとリンクして進展してきた. メインカメラモジュールは世界的に本格普及し始めた 2004年ころから主流になっているサイズは8mm程
解説論文/スマートフォンの薄型トレンドに対応する超低背カメラモジュールの実装技術
表 1 画素数・セルサイズ・光学サイズの関係
Table 1 Interaction of image format, cell size and optical size.
度である.このサイズのカメラモジュールが実現でき るSOC仕様のイメージセンサは1/4inch程度である. 1.12µmセルサイズの8M Pixelのカメラモジュール までは,画素数の増加にリンクして1/4inchの光学サ イズになるように,セルサイズの縮小が進められてき た(表1参照).一方,セルサイズが小さくなると取 り込む光量が減少する.そこで,セル上面に集光目的 で配置するµLensの形状の最適化や表面反射を軽減 する方向にµLensをシフトするScaling技術の採用, イメージセンサ内部構造の工夫による透過率の向上, フォトダイオードの感度向上,回路部のノイズ低減な どを行いS/Nの悪化を防止する工夫を併せて行って きた.しかし,1.4µm (5M Pixelで1/4inch)世代に 入ると,従来と同レベルのS/Nの確保が難しくなった ため,センサ部の表裏を反転させ,フォトダイオード が表面に出るように配置した裏面照射型センサ(BSI:
Back Side Illumination)が開発され,1.4µm以下の セルサイズでは,この仕様が主流になっている.一方, TTLは光学サイズの90%程度確保しないと良好な光 学性能の確保は難しいと言われている.1/4inchのイ メージセンサでは,この条件を満たすTTLは4.05mm になる.この寸法に入射光の散乱防止機構の寸法並び に図3 [b]あるいは[c]の製法をとった場合の寸法を加 えた4.5mm程度が良好な光学特性を確保できるカメ ラモジュールの最小高さである.しかし,最近は更な る低背化が求められるようになってきた.ここで,セ ルサイズが0.9µmまで縮小できれば,表1のように 光学サイズは8M Pixelで1/5inchになり1.12µmの イメージセンサよりTTLが20%短縮でき低背化に大 きく貢献する.また,13M Pixelでは,1/3.9inchと 1.12µm世代の8M Pixelとほぼ同じ光学サイズにな るため,高さ4.5mmの低背カメラモジュールが実現 できる.しかし,0.9µmセルは1.12µmセルに比較 して1/3以上開口面積が少ない上,1.75µmセルから 1.4µmセルへの縮小の際に採用された感度が約2倍 になるBSIのような技術的ブレークスルーは今のと ころ見当たらない.そのため,0.9µmセルの量産時期 は2014年以降とみられている.よって当面は1.12µm のセルサイズのイメージセンサで更に低背なカメラ モジュールを開発しなければならないのである.とは いえ,単純にカメラモジュールの物理的な寸法を縮小 するだけでは,目標とする光学性能を確保すること はできない.そこで,更なる低背化を進めつつ光学性 能の劣化を極力防止する上で重要な指標となるCRA
(Chief Ray Angle: 主光線入射角:図4参照)に着目 してみたい.TTLを光学サイズの90%で設計した場 合のCRAは30度程度である.よって,TTLをより 縮小した設計をしなければならない場合は1)光学設計 の工夫によりCRAを30度以内に収める工夫を行う, 2) CRAが大きくなることにより生じる不具合を抑制 する工夫を行った上で光学性能の劣化を後段で画像補 正処理を行う,の二つが考えられる.1)には,i)光学 的ハイパワーの特殊形状Lensを採用する,ii) Lens
枚数を増やす(8M Pixel: 4p→ 5p),の2通りの方
法がある.しかし,両者とも図4に挙げる課題の解消
が必要である.2)のケースでは,後段での画像補正処
理が難しい課題に関しては光学設計で解消しなければ
図 4 低背カメラモジュールの CRA 増加に対する対策と課題
Fig. 4 The ideas for ensuring good optical characteristics in the ultra low height camera modules with large CRA.
したIRCFのカットオフ波長が入射角依存変移するこ とから生じる画像の色にじみ対策である.手法として は,カットオフ波長の入射角依存変移が少ないBlue GlassやハイブリッドタイプのIRCFを使う方法があ るが,これらの部品はコストが高いため,新たに登場 した比較的廉価な白板ガラスベースのIR吸収タイプ を使いこなすことが重要である.また,イメージセン サ上の集光用µLensのScalingの最適化が非常に重要 になるが,CRAが極端に大きい場合はScalingが非 常に難しくなるため最大35度程度に収まるように特 殊形状の撮像Lensを併用するなどの工夫が必要であ ると考える.
4.
低背リフローカメラモジュール
多画素かつAF機能が必要なメインカメラの低背化 を実現するためには,前項のようにさまざまな工夫が 必要となるが,固定焦点でしかも周辺回路が不要なサ ブカメラの低背化では,図3 [d]のCSP仕様のイメー ジセンサを採用するのが最適な選択である.この場合, CSP仕様のイメージセンサはリフロー実装可能なの であるから,これに耐熱Lensを搭載すればカメラモ ジュールそのものがリフロー仕様になる.リフローカ メラモジュールは低背化で有利なことはもちろんであ るが,図5のようにCSPの大きさがカメラモジュール サイズになるため,COB製法の既存カメラモジュール 図 5 既存製法とリフローカメラモジュールサイズの差異 Fig. 5 The difference in the size of reflowable cameramodule and conventional camera module.
に対して大幅な小型化が実現できる.一方,現時点で はキュリー点が低いNd (ネオジム)マグネットを使用 しているVCM (Voice Coil Motor)アクチュエータが
主流のAFカメラモジュールはリフロー仕様にできな
いため,FPC,ソケットなどユーザーごとにカスタム
仕様の実装方式を採らなければならず効率的なビジネ スになっていない.しかし,カメラモジュールがリフ ロー実装できれば,このようなカスタム的な実装方式
解説論文/スマートフォンの薄型トレンドに対応する超低背カメラモジュールの実装技術
図 6 CSPベースリフローカメラモジュールの製法
Fig. 6 The main manufacturing method of CSP-based reflowable camera module.
を考慮する必要はない.また,CSP仕様のイメージセ ンサはCG (Cover Glass)があるため,ダストの影響 が少なく製造品質が良好になる.しかし,イメージセ ンサはセンサ部分とボンディングパッドが同一面にあ るため,そのままではCSP仕様にはできない.何らか の方法で接続パッドをセンサとは逆の面に引き出す必 要がある.このように技術的に解消すべき難易度の高 い課題が多かった上,投資に見合う具体的な市場がな くイメージセンサのCSP化はなかなか進まなかった. そんな中,2006年ころからリフロー仕様のカメラモ ジュールの要求が出始め,その実現に向けCSP仕様 の本格検討が始まり2008年東芝が世界に先駆けTSV (Through Silicon Via: シリコン貫通電極)技術を確 立しCSP仕様のイメージセンサを実現した.CSP仕 様のイメージセンサをベースにしたリフローカメラモ ジュールには1)イメージセンサWaferと同サイズの
Wafer形状の集合Lens (WLO: Wafer Level Optics)
を一括積層接着した後,個片化する方式(F-WLCM:
Full Wafer Level Camera Module),2) Wafer状態 のイメージセンサ上にWLOを個片化して,Lensを一
つずつX-Y調整して接着した後,イメージセンサを個
片化する方式(S-WLCM: Semi Wafer Level Camera Module),3)個片化したCSP仕様のイメージセンサ と個片Lensを組み込んだLens Holder Assyを組み 立てる方式(CSCM: Chip Scale Camera Module)の
図 7 AF camera moduleのリフロー化案 Fig. 7 The idea of reflowable AF camera module.
3種類がある(図6参照).2013年半ば現在WLOを 廉価に高品質に実現する製法が本格化していないため,
CSCMが主流であるが,2013年初めに廉価で高品質 なWLOが実現可能なCasting Lensの量産が始まっ
たことからS-WLCMがこれにとって替わると考えら れる.S-WLCMはCSCMに比べて廉価にできるだけ でなく,従来のCOB製法の非リフローカメラモジュー ルよりも廉価になる可能性が高く,固定焦点カメラモ ジュールではS-WLCMが今後主流になると予測され ている.また,WLOが本格化すればF-WLCMも実 現できるのだが,F-WLCMはS-WLCMに比較して はるかに高い組立精度が必要となるため,歩留まりを
考慮すると量産技術が確立するまでにはもう少し時間 が必要となると考えられている. 4. 1 AFカメラモジュールのリフロー化 Casting製法のWLOの量産技術が確立したことに より固定焦点仕様がほとんどを占めるサブカメラのリ フロー化が本格化する兆しがみえてきた.一方,VCM アクチュエータのAF仕様が一般的な現時点のメイン カメラのリフロー化は,実現性が低い点は既述のとお りである.しかし,サブカメラでも今後5M Pixelが 登場する中,リフロー可能なAFカメラモジュールを 開発する意義は高い.現状のAFカメラモジュールが リフロー化できない理由は,1)アクチュエータの主流 であるVCMで使用されるNdマグネットのキュリー 点が低い,2)アクチュエータを制御するためのドライ バICやSMDが必要である,3) AFカメラモジュー ルに必要な4∼5枚構成のLensが耐熱性のある素材・ 製法で実現できなかった,この3点が主な理由である と考える.よって,この3点の課題をクリアできれば リフローAFカメラモジュールの可能性が高まる.3)
のLensについてはCasting Lensの量産により可能性 が出てきた.1)のNdマグネットの低キュリー点の課 題はDy (ジスプロシウム)を添加することでキュリー 点をリフロー温度以上にできることは既知であるが, コストと調達両面で現実的でない.そこで,マグネッ トをなくしてしまえばキュリー点を気にする必要はな い.とはいえ,アクチュエータは動かす必要がある. そこで考えられるのは「電磁石」である.これならマ グネットを使用しない. これでリフローできない物理的な障害は取り除けた わけだが,周辺部品が残っているとリフロー化は難し い.しかし,周辺部品はアクチュエータの位置制御を 精密に行うために必要なのであり,基準位置とフルス トロークの2ポジション間の移動であれば制御は不 要である.その場合には,コイルに電流を流すか,流 さないか,の制御になるため電流ドライブ回路は,イ メージセンサ内に取り込むことが可能となる.以前の 携帯電話についていたマクロ機能の自動化版と思えば よい.このような「簡易版AF」であってもバーコー ドリードが可能になるなど,スマートフォン用として の価値は固定焦点仕様のものよりはるかに高い.しか もリフロー化の実現により,従来にない小型・低背化 が図れる上,実装方法を別途検討する必要がなくなり, 開発期間の短縮,実装コストの削減,トータルコスト の削減など便益は非常に多く,近い将来具体的な形で 登場する可能性が高いと予測する.