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心理臨床訓練としての事例研修論文の作成に関する一試論

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Academic year: 2021

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(1)兵庫教育大学研究紀要第22巻2002年3月pp.41-46. 心理臨床訓練としての事例研修論文の作成に関する-試論 One method for writing case reports as an area of training in clinical psychology. 辻河昌登*辻河優**夏野良司書中西美奈… 古好佳代…*月岡万里子**橋本知子**松井由嘉里** Masato TSUJIKAWA, Yu TSUJIKAWA, Yoshiji NATSUNO, Mina NAKANISHI, Kayo KOYOSHI, Mariko TSUKIOKA Satoko HASHIMOTO, Yukari MATSUI. ulis paper presents one method for case reports as an area of training in clinical psychology. It is necessary to train graduate students to write case reports in order to improve their clinical technique. Writing case reports enables students to object!秒 and examine their own practices. However, as current training and methodology seem to be insui五cient, the authors have developed the method presented in this paper.. キーワード:心理臨床訓練事例報告 Key words : clinical psychology , training , case report. I問題. 一人である辻河昌萱(2001)が、山本力・鶴田和美編 著『心理臨床家のための「事例研究」の進め方』 (北大 路書房)の第5章の中で、 「事例報告と資料作成の要領」 として論じたものについて、再検討したものである。. 筆者らは大学院に在籍するゼミ生への心理臨床教育の 一環として、修士2年間に担当した事例のうちから-事 例を取り上げ、修了時に事例研修論文としてまとめると いう訓練を課している。ここで言う「事例研修論文」と. Ⅱ事例研修論文で記載されるべきもの 事例研修論文において記載されるべきものは、 (1)タ イトル、 (2)報告者の名前と所属、 (3)要約、 (4)はじ めに、 (5)事例の概要、 (6)面接経過と考察である。 書式は図1に示しているような、諸学会の発表論文集 でよく用いられているものを用いる。 A4判で、縦45行、 横24字(1,080字)の二段組とし、 1枚目のみ最初の10 行目までは二段組にしないで、タイトル、報告者の名前、 所属、要約を記す。全枚数は6枚ぐらいが適当であろう。. は、事例に取り組んだ経験に基づいて新しい理論や技法 を提唱する「事例研究論文」ではなく、 -事例について の面接経過で生起していることをクライエントとカウン セラーの面接関係などから考察する、研修意図の濃い論 文のことを言う。多くの大学の心理教育相談室から発刊 されている相談室紀要がそれにあたり、筆者らの研究会 が刊行している「心理臨床事例研究」もその一つである。 執筆者である院生は、執筆した事例研修論文を筆者ら によって校閲され、紙上においてコメントをするコメン テイター(熟練した臨床家)が事例の内容をイメージす ることが可能になるレベルになるまで繰り返し書き直 す。この訓練は筆者らも大学院時代に受けた訓練の一つ であり、自己の臨床経験を客観化し、吟味できるという 点で、心理臨床における自己研修のために欠かせないこ とであると考えている。何人もの学生の論文を校閲して いて感じることは、筆者らが書き方を指導する点は、学 生間でほぼ共通しているということである。つまり、ど の学生にも似たような点を修正するように求めているの である。そのため、事例の内容を読み手に分かりやすく 書くための手引きがあり、彼らがその手引きに則って書 くならば、各自が自力でより分かりやすく書くことがで きると考えるようになった。そこでこのたびは、筆者ら がその手引きとなる事例研修論文作成の要領について検. 図1事例研修論文の書式. 討したものを提示することとする。なお本稿は、筆者の. *兵埠教育大学第1部(教育臨床講座) **兵庫教育大学連合大学院研究生(学校教育実践専攻) ***魚楕病院****揖保川病院. 41. 平成13年10月22日受理.

(2) 古好佳代月岡万里子橋本知子松井由嘉里. 辻河昌萱辻河擾夏野良司中西美奈. りである。. 以下に、事例研修論文に記載すべき(1)から(6) のそれぞれの書き方を述べる。. ①事例研修論文としてまとめることについて、クライエ ントに説明して同意を得ることが望ましい。 ②クライエントを同定する情報、人名、地名、職業、職. (1)タイトル タイトルは事例報告の内容を凝縮したものである。ど. 場名、学校名、親の職業、居住地などは一切用いない。. のような事態や問題を取り上げるのか、どのようなクラ. それらは、資料に記述する順に「A子、 B県、 C高校、. イエントとのかかわりなのかなど、報告する論文のテー. D社」のようにアルファベット順にし、イニシャルも 実際のものを用いないようにする。職業名は呈示する 事例の理解に不可欠な場合でも、 「会社員、公務員、 事務職、運送業、農業」などの一般的な名称を用いる。 クライエントやその家族の職業が、事例研修論文を読. マがタイトルを見ただけでイメージできるように、内容 に関連するキーワードが2-3語含まれているものにす るとよいだろう。 例:同性の友だちができないことを主訴として来談した 女子高校生との心理面接一逆転移の取り扱いをめぐっ. む人たちと近い職業(心理職、教育職、医療職など) である場合は特に注意し、たとえば教師や医師である 場合は「公務員、医療従事者」などとする。年齢も特 別な場合を除いて、できるだけ実際の年齢を用いず、 「20代後半」などとする。 ③カウンセラ-がそのクライエントを担当した機関名を 特定しない。 ④来談期間は、 「Ⅹ年4月-X+1年3月」などとする。 ⑤面接の日付や曜日が同定できないよう、 「Ⅹ年4月第2週 目」などとする。 ⑥クライエント理解に重要と思われる情報で、かつ、そ れを記述するとプライバシー保護が危うくなる危険性 を伴う場合は、一部の情報を削除する。しかしその場 合、情報の歪曲をしてはならない。例えば、父親が生 きているのに既に死亡している、離婚しているのにま だ結婚が持続している、などとしてはならないO 以下に、 ①クライエント、 ②主訴、 ③家族、 ④生育歴 および問題歴、の具体的な記述の仕方について記す。な お、心理検査を施行している場合は、その結果を⑤心理 検査ならびに諸検査の結果、として記述する。 (Dクライエント ここでは、クライエントの仮名、初回来談時の年齢 (学年)、来談時の服装や態度などのカウンセラーが抱い た印象を記述する。親子並行面接における親との面接を 報告する場合、ここでのクライエントは子どもではなく、 子どもの親である。. て-. (2)報告者の名前と所属 報告者の名前と所属は、例えば以下のように記す。 例:鈴木花子(○○大学大学院臨床心理学専攻M2) (3)要約 ここでは事例の要約を150字以内で記す。そして最後 に、キーワードを4-6語程度(日本語2-3語と英語 2-3語)記す。 例:同性の友だちができないことを主訴として来談し た女子高生との面接過程を報告する。本論文では、主に カウンセラーの逆転移感情の取り扱いを検討し、青年期 後期にあるカウンセラーがクライ工ントの依存と自立の 葛藤にかかわる際に配慮すべき点について考察した。 Keywords:逆転移、依存と自立、 chumship、 ado一escence. (4)はじめに ここでは報告の目的や意図を明確にする。まず事例の 特徴について、 2-3個のキーワードを含めながら記すO その後、面接期間、面接回数などを呈示し、報告者が主 として検討したい点について述べる。 例:ここに報告するのは、同性の友だちができないこ とを主訴として来談した女子高校生との心理面接過程で ある。筆者のイニシャル・ケースであったこともあり、. 例1 :A子。初回来談暗16歳(高校1年生)。毎回学 校帰りに制服姿のまま来談し、うつむき加減で自信がな さそうに話をする。 例2 : A子の母親。年齢は40代前半。毎回会社帰りに A子を学校に迎えに行き、共に来談。面接場面では理路 整然と話をし、知的に高いという印象。 ②主訴 ここでは、初回面接でクライエントが訴えた内容につ いて、クライエント自身の言葉を用いながら簡潔に記述 する。複数の訴えがある場合は、裡教記せばよい。主訴 として「不登校」 「摂食障害」などと記した報告を目に. 逆転移感情をうまく処理できないことで大変苦労した。 終結までの1年間36回の面接過程をふりかえり、終結 (中断)に至った要因について、主にカウンセラーの逆 転移感情の取り扱いという点から検討する。 (5)事例の概要 ここでの記述は、プライバシー保護(守秘義務)を念 頭におきながら、表現を工夫する必要がある。日本精神 分析学会(2000)の演題申込要領を参考にしながら、プ ライバシー保護についての留意点を述べると、以下の通 42.

(3) 心理臨床訓練としての事例研修論文の作成に関する-試論. することがあるが、ここで記述するのは問題や診断名な どではない。なぜなら、山本1998)が述べているよう に、主訴とは初期面接におけるクライエントの求め. との面接過程の要約を記述する。 親との面接を報告する場合のうち、主として親自身の 問題について援助することを目的とする個人面接となっ ている場合は、親自身の「生育歴および問題歴」を記述 する。一方、主として子どもの問題について援助するこ とを目的とする親面接の場合は、その子どもの養育と関 連した親の「生育歴および問題歴」を記述する。 この「生育歴および問題歴」の部分については、報告 時点までの経過で得られた情報から、できるだけ詳しく 記述するというものではない。ここでの記述は、心理ア セスメントの時期の情報に基づいて記述し、その情報の 中で、クライエントをイメージする上で必要と考えた情 報のみを選択して記述すればよい。そして、心理アセス メント後に得られた情報は、面接経過を記述する部分で その都度記述する。なぜなら、成田(2001)が述べてい るように、 「どういうときに、どういう順序で、どうい う文脈でその情報が語られたかということに意味があ. (demands)や訴え(complaints)を意味するからである。 例:同性の友だちができない、相手に自分の本当の気 持ちを言えない。 (彰家族 ここでは、まず家族構成について記述する。次にその 家族の年齢、何人同胞の何番目か、生い立ち、最終学歴、 職業、性格、クライエントとの関係、その他の特記事項 などを必要に応じて記述する。親との面接を報告する場 合のうち、主として親自身の問題について援助すること を目的とする個人面接となっている場合は、親自身の育 った家族のことを記述する。一方、主として子どもの問 題について援助することを目的とする親面接の場合は、 親子を含めた家族のことを記述する。 例:父親、母親、 A子、妹の4人家族。父親(40代後 半;以下の家族の年齢はすべて、初回来談時のものであ る) : 3人同胞(男、女、男)の長男。近畿地方の山間 部で育ち、首都圏の有名国立大学卒業後、一流企業へ就 職。その5年後の結婚を機に、家業を継ぐために現在の 自営業へ転職。自己主張をしない大人しい性格で、昔か らA子を叱ったりすることは少なかった。 A子が中学3 年の頃に、営業不振を気にするあまり抑うつ状態となり、 病院で『抑うつ神経症』と診断されて、約1年間抗うつ 剤を服用していた。母親(40代前半) :. る」からである。 例: A子は、父親が20代後半、母親が20代前半の時 に第一子として出生した。保育園に行くまでのA子は、 両親ともに仕事が忙しかったため、近所に住んでいた父 方祖父母とほとんどの時間を過ごしていた。父親とのか かわりはほとんどなく、平日にA子と母親とが時間を共 にするのは母親が帰宅してから数時間のみで、夕食後か ら翌日の夕方に母親が迎えに来るまでは、父方祖父母に 預けられていた。 3歳の時に保育園に通園するようにな り、その頃に妹が出生した。母親は出産を機に退職し、 父方祖父母に預けることの多かったA子のことも、自宅 で面倒をみるようになった。しかし、妹の世話に手を取 られることの多かった母親は、 「A子にできるだけわが. (彰生育歴および問題歴 ここでは、読者がクライエントをイメージするために 必要と思われる情報を、 1回あるいは1回から数回の心 理アセスメントの情報に基づいて、時間軸に沿って過去 形で記述する。時間軸に沿って記述する場合、クライエ ントの年齢と出来事を併記していく。特に問題歴を記述 する場合、初回来談時の年をⅩ牛として、それ以前の年 の記述をⅩ-2年などとする。そして、年月とクライエン トの年齢を併記した方が分かりやすいと思われる出来事 については、必要に応じてⅩ-1年4月(15歳)のよう に併記するとよい。 ここでの記述の順番は、まずはクライエントが何人同. ままを言わせないようにしていた」という。この頃から 小学校入学時まで、 A子の夜尿が続いた。 --・ (中略) --X-1年4月(15歳)の始業式後、クラスの女子か. 胞の何番目として出生したか、出生時の両親の年齢、両 親の妊娠への態度、望まれた子であるか、出生時の状態 などを必要に応じて記述する。次に、乳幼児期から来談 時までの期間における、既往歴、習癖、登校状況、成績、 クラブ活動の状況、一番古い記憶、趣味、遊び方、よく 空想したこと、初潮の時期、幼少期から現在までの両親 や周囲の人たちとの特記すべき対人関係上のエピソー ド、住居環境・地域環境、経済状況など、必要に応じて 記述する。そして最後に、今回の来談に至った経緯につ いて記述し、前面接者からの引継の場合には、前面接者. 旬に、教育相談担当教諭の紹介で来談した。 (彰心理検査ならびに話検査の結果 ここでは、心理検査や身体的検査などの諸検査を行っ た場合、その結果を要約して記述する。その際、どうい う目的で、いつ、誰が検査を行ったのかなどの情報も、 必要に応じて記述する。. ら教科書を隠されるなどのいじめにあうようになった。 そして、 5月の連休明けから週に1度ぐらい学校を休む ようになり、夏休み明けの9月から完全不登校となった。 その後、担任が家庭訪問を週に数回続けたが、 A子は登 校しなかった。そのため、休み始めて1ケ月後の10月初. 例:パーソナリティー特徴や病理水準の見立てを行う ことを日的とし、インテーク面接の翌週に、カウンセラ ーとは別の者が口-ルシャッハテストと文章完成法 (SCT)を実施した。前者からは、些細な情緒刺激を受 43.

(4) 古好佳代月岡万里子橋本知子松井由嘉里. 辻河昌萱辻河障夏野良司中西美奈. けるだけで容易に激しい内的混乱を引き起こし、それを. ような感情がわき起こるものである。また、先輩のカウ. 速やかに鎮めることが難しいこと、後者からは、両親へ. ンセラーからの引き継ぎの際に、 「カウンセラーに敵対. の強い嫌悪感や自己評価の低さがうかがわれた。病理水. 心を抱きやすい人で大変かもしれないけど、よろしく」. 準は神経症レベルと考えられた。. などと言われて、 「どんなことを言われるのだろうか」 と不安になることもある。このような場合は、クライエ ントに出会う前からあらかじめカウンセラーの方にクラ. (6)面接経過と考察 ここではまず、面接経過の記述に入る前に、クライエ. イエントイメージが形成されており、両者の関係はすで. ントを担当するカウンセラーの立場や役割(臨床心理士. に始まっていると考えられる。そこで、そうした感情は. か医師か教師か、常勤か非常勤かなど)を記述する。次. 初回面接を記述する前に記述しておくとよい。. に面接の場所、頻度、時間、料金、形態(子ども単独、. ①記述の形式. 親単独、親子並行、親子継時、親子同席、 ATsplitなど)、. 面接経過の記述の形式は、面接全体の流れを問題にす. 他機関との連携の状況などの面接構造を記述する。そし. る場合と、カウンセラーとクライエントの具体的なやり. て、クライエント発言は「 」、カウンセラー発言はく)、. とりを問題にする場合、そしてこの両者を問題とする場. クライエントのしぐさや表情などの非言語的な情報、カ. 合でそれぞれ異なる。これらは報告者の報告の意図に応. ウンセラーに生起した感情、カウンセラーの推論は( ). じて工夫するとよいだろう。 例: (面接全体の流れを問題にする場合:知的障害の. とするなど、報告者の記述のルールについて記述する。. 子どもを持つ両親との面接から). 面接経過では、初回から報告時点(あるいは終結)ま での経過をカウンセラーならびにクライントの発言や行. 第1期: A男の知的障害を受容するまでの時期≪# 1 #9 :x年4月∼X年7月≫. 為によるお互いの具体的なやりとりを中心に記述する。 事例報告の中には、クライントの発言や行為のみを記述. 面接初期の#1から#5では、 A男の状態を理解して今. している報告が散見される。しかし、面接の中で生起し ていることは、カウンセラーの反応がクライエントの反. 後の方針を立てるために、両親に生育歴と問題歴につい. 応を引き起こし、そのクライエントの反応はカウンセラ. には①言葉の遅れ、 ②排池の自律ができないこと、 (彰自 己の気持ちを表現できないこと、という3つの問題があ. て詳しく話してもらった。そしてカウンセラーは、 A男. ーの次の反応を引き起こすという相互影響的な関係の中 でのものである。それゆえ、カウンセラーはどのような. ると理解し、 #6で今後の対応について両親とともに検. 気持ちになったのか、具体的にどういう言葉で応答した. 討した。その中でカウンセラーは、特に(力の問題につい. のかということについても記述することが重要である。 なお、経過の記述の要領として、下山2000)は次のよ. ては、まず医療機関で器質的な問題の有無を診断しても. うに的確に述べているので参考にするとよいだろう。. はできないこと、 ②と(吾の問題を援助しているうちに改. 「事例担当者は、その記録全体を何回も何回も読み通し、 その中から出来事として重要と思われるものを取捨選択. 善していくかもしれないが、器質的な問題があれば他の. らう必要があること、相談室では言語訓練のような援助. 子と同じレベルまで改善することは難しいかもしれない. し、時間配列にしたがってまとめ直して、そこに流れる. ことを伝えた。 - (中略) -・#8ではカウンセラーが紹. ストーリーの可能性を接し出し、そのスト-!j-を少し. 介した医療機関へ行って検査の予約をしてきたことと、. でも明確にできるように関連記録をレポートとして提示. 別の医療機関とも連絡を取り、診察の予約をしたことが. することが必要となります。」 (P.182. 報告された。 2つの医療機関での検査結果を聞いた後の. また、面接経過では、下山2000)のいう「循環的な. #9では、来談した父親がA男には脳波異常があり、知. 仮説生成-検証過程」が分かるように記述する必要があ. 的能力の遅れは今後も尾を引くと診断されたことを落胆. る.カウンセラーが各面接で行っている「仮説の生成一. した表情で報告した。一. 検証一修正」のプロセス、つまり、どのような仮説を持 ち、どのようにかかわったか、そしてその結果からどの. りを問題にする場合:抑うつ神経症と診断されたクライ. ように仮説を修正したかを分かるように記述するわけで. エントとの面接から). 例: (カウンセラーとクライ工ントの具体的なやりと. あるOその際、実際に起こった事実とカウンセラーの推. #9: 「最近、気持ちがすごく乱れているし、勉強も. 論とを意識的に区別して記述し、読者に両者の区別が付. やる気がでないんですよね∼。何かいい方法がないです. くようにしておくこと。例えば、上で述べたように、カ. かね∼。いろいろ試しているんですけど、どうも一緒な. ウンセラーの推論は( )として記述するとよいO. んですよね∼」 <いろいろ試してもうまくいかないんで. 他機関の有名なカウンセラーや地元の有力者から、ク. すね> 「気の持ち方として、こうしたらいいんじゃない. ライエントの紹介を受けることがある。そういう場合は、. かというようなアドバイスはあります?」 (カウンセラ. 「○○先生の紹介だから、しっかりやらないと」という. ーは少しイライラする) <うまくいくようなアドバイス 44.

(5) 心理臨床訓練としての事例研修論文の作成に関する-試論. がほしいんですね。時間はかかるかもしれないが、自分. が中断した意味、クライエントがアドバイスを執鰍こ求 めてきた意味などがある。これらを面接関係から検討す. なりの方法を見つけるのが一番いいと思う> 「自分が経. るのである。また、前の期の理解や面接方針がどのよう. 験して考えていかないといけないですよね∼」 <ただ経 験するだけではなく、その時自分はどうできたらよかっ. に変化したのかについても記述するとよいだろう。. たのかを考えてから、次につなげるようにしていくのが. 考察を記述する際に注意することは、その考察の基と. いいと思う>-. なる情報がそれまでの面接経過の中で記述されているか. ②時期の分け方. どうかをチェックすることである。つまり、どのような. 面接経過の時期の分け方については、質的な転換点で. 情報からそのように考察したのかが読者に分かるように. 区切るが、一般的には、カウンセラーとクライエントと. 記述できているかどうかをチェックするのである。同様. の関係性の変化、子どもの遊び方の変化などを基準にす. に、面接方針を記述する場合においても、それが考察を. るとよいだろう。面接初期に、クライエントとの関係づ. ふまえた方針となっているかどうかをチェックしながら. くりをしながら心理アセスメントを行い、それに基づい. 記述すること。 例: (同性の友達ができないA子との面接から). て問題の理解とその後の面接方針を立てる場合は、第1 期を「心理アセスメントの時期」などとするとよい。そ. 第1期の考察(心理アセスメント後の臨床心理学的理. の場合、その期の考察では、 1-数回の心理アセスメン. 解および面接方針) : A子は出生から保育園入園時まで. トの情報に基づいた、クライエントの問題に関する「心. 両親が仕事で忙しく、一日のほとんどの時間を父方祖父. 理アセスメント後の臨床心理学的理解および面接方針」. 母と過ごしていた。妹が出生し、母親は退職したが、母. を記述する。その心理アセスメントの情報は、下山. 親の育児は妹に手を取られることが多かった。そのため、. (2000)が述べているように、面接、観察、検査によっ. A子は依存欲求を表出すれば満たしてくれる一貫した存. て収集された情報と他者の記録(医療機関での精神医学 的診断や看護日誌など)を組み合わせて記述することが. 在があるという基本的な信頼感を母親との間で形成でき. 望ましいoまた、心理アセスメントの時期でもクライエ. とはできなかった。 - (中略) -・このように幼児期から 現在に至るまで、相手に対して自己表現をするよりも、. なかった。また、祖父母も依存欲求を代理的に満たすこ. ントとカウンセラーとの面接関係の記述は忘れないよう にしたい。なぜなら、 Luborsky (1984)が述べている ように、 ①過去の重要人物(両親など)との関係、 ②現. 嫌われないように相手の気持ちに沿った行動をとるとい. 在の面接場面外での重要人物との関係、 ③面接場面での. A子の今回の不登校は、まずは母親との基本的信頼感を 確かなものとし、こうしたパターンの解決に取り組むた. うパターンが依然として続いているものと考えられる。. カウンセラーとの関係という3つの対人関係の中で垂接 するテーマこそ、クライエントが対人関係で葛藤を引き 起こす中心的なテーマであるからである。それゆえ、. めの行動であると考えることができる。また最近では、 母親から干渉的にかかわられると反抗的態度を取るなど. 「事例の概要」の「生育歴および問題歴」では①の特記. の行動もみられ、このことは依存欲求と同時に自立欲求. すべきエピソードを記述し、心理アセスメントの時期を. も存在し、精神内界で両者が葛藤した状況にあるものと. 含めた′「面接経過と考察」では②と③の特記すべきエピ. 思われる。. ソードを記述すると、その中の重複するテーマが明確に. こうした理解に基づいて、主に(力依存や自立などのあ. なり、読者がクライエントの対人関係上の中核的な問題. りのままの気持ちが表現できるよう受容的共感的にかか わる、 ②必要に応じて家族面接を行い、家族が彼女の依. を理解しやすくなる(詳しくはLuborsky,1984を参照さ れたい)0. 存と自立という両方の欲求を理解し、支持的に接するこ. ③考察の内容 面接経過は何期かの時期に分けて記述するわけである. とができるよう支援する、という2つの面接方針を立て m. が、各時期の考察は、その時期の経過の記述のすぐ後に. 例: (抑うつ神経症と診断されたクライエントとの面. 記述する。例えば、第1期の「心理アセスメントの時期」 の考察である「心理アセスメント後の臨床心理学的理解. 接から). および面接方針」については、第1期の経過の記述のす ぐ後に記述する。第2期以降も同様である。第2期以降. さんはカウンセラーにアドバイスを求めてきてきた。こ のことからAさんには、自分ではどうにもしょうがない. の考察の内容は、第1期の考察をふまえて、報告者が検. 強い無力感を感じた時には他者に強い依存を示し、アド. 討したいことを取り上げればよいだろう。主な検討点の 一つとして、クライエントとカウンセラーとの関係性が. バイスをもらって何とか解決をしてもらおうとするパタ ーンがあることをカウンセラーは理解した。しかし、表. 挙げられる。例えば、クライエントならびにカウンセラ. 面的には理解していても、一方でこうしたAさんの強い. ーが遅刻したりキャンセルしたりしたことの意味、面接. 依存的な態度に対してカウンセラーはイライラするよう. 第2期の考察:第1期に続いて第2期の#11でも、 A. 45.

(6) 辻河昌萱辻河擾夏野良司中西美奈古好佳代月岡万里子橋本知子松井曲者里. 究」の進め方第5章北大路書房54-65. 山本力1998今、 「事例」の報告と研究を再考する 心理教育相談研究広島大学教育学部心理教育相談室 紀要15,1-8.. になり、 #13ではそのイライラがピークに達した。 # 13の翌週の面接がキャンセルになった後、カウンセラー はそれまでの面接関係を振り返っているうちに、 Aさん の強い依存心へのイライラは、カウンセラ-自身の依存 性の問題と重なっているために起こっているものである ことを自覚した。つまり、カウンセラー自身が困難に直 面した時には、べったりと依存して他者に困難を解決し てもらおうとするのではなく、依存する前に自力でやれ るだけのことはやるべきだと自己を戒めていること、そ のことを無意識のうちにAさんにも要求していたため に、共感不全が起こってしまっていたのである。 ・--」 Ⅲその他の注意すべき事項 上記の他に注意すべき事項は、以下の通りである。 ・心理臨床家が事例報告をする際には、医療行為でない ことを明確にするため、 「治療」、 「診断」、 「症例」、 「患者」などの医学用語は用いないこと。ただし、 「主 治医の診断は、 〇〇〇〇〇である」などのように、医 療機関で付けられた診断などについて記述する場合は 例外である。 ・専門用語を羅列するのは避け、自分が実感できる言葉 で書くこと。 ・事例に関連した文献を必ず読んでから(あるいは読み ながら)執筆すること。例えば、不登校の高校生を持 つ母親との面接を報告する場合であれば、 「不登校」、 「思春期青年期」、 「母親面接」に関連した文献を読ん でおくこと。そして、引用した文献は、最後に「引用 文献」として記すこと。 おわりに 以上、心理臨床訓練としての事例研修論文の作成につ いて、我々の試論を提示した。今後、臨床活動に従事す る方々の様々な意見を参考にし、この作成要領をより洗 顔されたものにしていきたいと考えている。 引用文献 ルポルスキーL.竹友安彦(監訳) 1990精神分析的 精神療法の原則-支持-表出法マニュアルー岩崎学 術出版社(Luborsky.L 1984乃・inciples of Psychoanalytic Psychotherapy : A Manual for Supportive-Expressive Treatment. New York : Basic Books. ). 成田善弘2001精神療法家の仕事2- 「書く」ことに ついて.臨床心理学, 1 (2), 240-246. 日本精神分析学会2000演題申込要領. 下山晴彦2000心理臨床の発想と実践心理臨床の基 礎1岩波書店 辻河昌萱2001事例報告と資料作成の要領山本 力・鶴田和美(編著)心理臨床家のための「事例研. 蝣Hi.

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