盲学校に在籍する弱視を伴う自閉症幼児における集団活動の検討
9
0
0
全文
(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第66巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 66, No.1. 平 成 27 年 8 月 August, 2015. 盲学校に在籍する弱視を伴う自閉症幼児における集団活動の検討 細谷 一博・鈴木 洸平*・関﨑友里絵*・村田 花子*・佐藤 未緒*・藤嶋さと子* 北海道教育大学函館校障害児臨床教室 *. 北海道教育大学函館校障害児臨床研究室. A Consideration of Group Activity by Children with Partial Sight and Autism Spectrum Disorder in a School for the Blind HOSOYA Kazuhiro, SUZUKI Kohei*, SEKIZAKI Yurie*, MURATA Hanako*, SATOU Mio* and FUJISHIMA Satoko* Department of Special Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education *. Department of Special Education, Hakodate Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 盲学校幼稚部に在籍している幼児は在籍人数の減少から同年代の他者と共に活動する経験が 不足することが想定される。そのような幼児に対しては,他者と共に活動する経験をするため の環境を整備し,その機会を確保する必要がある。本研究は,早期幼児支援教室に参加してい る盲学校に在籍する弱視を伴う自閉症幼児の集団活動への参加の様子について整理し,特別な 教育的ニーズのある幼児が集まって実施する集団活動のあり方について検討した。その結果, 対象幼児は活動を継続する中で,母親ではない他者が存在しはじめた様子を確認することがで きた。集団活動への参加が初期段階の場合,意図的・計画的に組織された小集団での活動経験 が大切であり,同一人物による支援や安心して活動できる環境の構築が必要であることが示唆 された。さらに本研究のように集団の場を地域の中で確保する事は,同年代の小集団を組むこ とが難しい幼児にとって貴重な場になることが明らかになった。. Ⅰ 問題と目的. 学校の幼児児童生徒の少人数化や障害の重度・重 複化,多様化に対応した教育の必要性が指摘され. 全国的に盲学校の在籍幼児児童生徒数の減少傾. ている(特別支援教育あり方検討委員会,2007) 。. 向がみられる。特別支援教育資料(文部科学省,. このような状況の中で,盲学校の幼稚部に焦点を. 2014)においても,平成19年度以降は増加傾向が. 当てると,在籍幼児児童生徒の全体的な数の減少. みられるものの,それまでの在籍幼児児童生徒数. に伴い,幼稚部の在籍数は減少傾向にあることが. は減少傾向が続いてきた。北海道においても,盲. 推測できる。実際に本研究における対象児の在籍. 79.
(3) 細谷 一博・鈴木 洸平・関﨑友里絵・村田 花子・佐藤 未緒・藤嶋さと子. する盲学校でも,平成25年度の幼稚部には2名の. を伴う自閉症男子A児である。A児は2013年4月. 園児が在園しており,平成20年度の4名を最大と. に市内に転入してきた。早期支援教室には2013年. し,以降その数は減少傾向がみられている。. 5月から参加しており,指導開始時の年齢は,4. 特別支援学校学習指導要領解説総則等編(文部. 歳5ヶ月である。母親からの聞き取りによると,. 科学省,2009)の幼稚部における教育の意義の中. 生後間もなく水晶体の手術を行っており,現在は. で, 「友達と十分にかかわって展開する生活」が. ハードコンタクトレンズを毎朝装着している。ま. あり, 「友達とのかかわりの中で,幼児は相互に. た,両眼での視力は0.4程度であるが,ある程度. 刺激し合い,様々な物や事柄に対する興味や関心. 細かいものは見えているとのことであった。在籍. を深め,それらに関わる意欲を高めていく。それ. している盲学校幼稚部では,A児の他に全盲の幼. ゆえ,幼稚部における生活では,幼児が友達と充. 児1名が在籍しているが,一緒に遊ぶ機会は少な. 分にかかわって展開する生活を大切にすることが. く学校生活の大半が大人を中心とした生活である。. 重要である」と記述されている。また,幼稚園教 育要領(文部科学省,2008)では, 「ねらい及び. 2.活動期間及び活動の流れ. 内容」に人間関係を設け,「他の人々と親しみ,. 本研究で対象とした期間は,A児が初めて活動. 支え合って生活するために,自立心を育て,人と. に参加した2013年5月下旬から2014年1月下旬ま. かかわる力を養う」とし,友達とのかかわりの重. での8か月間(全14回)である。Table 1に全指. 要性を示している。さらに,一般的な留意事項に. 導日の参加人数を示す。1回の集団活動は約20分. は, 「障害のある幼児の指導に当たっては,集団. とし「はじめの会,集団活動,おわりの会」で構. の中で生活することを通して全体的な発達を促し. 成している。具体的な集団活動の流れをTable 2. ていくことに配慮」と記されている。. に示す。. 以上ように,障害の有無に関わらず幼児期段階 の教育においては,集団活動における他者とのか. Table 1 指導期間と参加人数. かわりを通して,友達の良さに気付いたり,より. 実施日. 参加人数. 良い人間関係を形成したりしていくことの大切さ. 第1回. 5月20日. 4. が分かる。しかしながら,盲学校の幼稚部に在籍. 第2回. 5月27日. 4. している幼児の場合,在籍数が少ないことや障害. 第3回. 6月10日. 4. の重度・重複化等により,同年代の他者とのかか. 第4回. 6月24日. 4. わる経験が不足することが予想される。. 第5回. 7月8日. 4. 第6回. 7月22日. 3(1). 」. 第7回. 8月5日. 3(1). における集団活動場面を取り上げ,他者とのかか. 第8回. 10月7日. 4. わりの観点から集団活動への参加の様子を分析す. 第9回. 10月21日. 4. る。さらに,気になる幼児を対象とした集団活動. 第10回. 11月11日. 3(1). の在り方についても検討を加えることを目的とす. 第11回. 11月25日. 3(1). る。. 第12回. 12月9日. 5*. 第13回. 1月20日. 3(2). 第14回. 1月27日. 5. そこで,本研究では,盲学校に在籍する弱視を 注1). 伴う自閉症幼児を対象に「早期幼児支援教室. Ⅱ 方 法 1.対象児 対象児は,盲学校の幼稚部年中に在籍する弱視. 80. *第12回より1名参加し,全体の参加者が5名.
(4) 盲学校に在籍する弱視を伴う自閉症幼児における集団活動の検討. Table 2 集団活動の具体的な内容と子どもの動き 活動内容. 子どもの動き. ・はじめの挨拶. MTの指示で全員で挨拶をする. ・呼名. 個々の呼名に対して返事をして,自分の顔写真をボードに貼る. ・日付(月)の確認. 1人が前に出て「月」カードをボードに貼る. ・日付(日)の確認. 1人が前に出て「日」カードをボードに貼る. ・曜日の確認. 幼児全員に曜日を確認する. ・天気の確認. 1人が前に出て天気カードをボードに貼る. ・遊び. 1人ずつST1と一緒にST2から紙コップを受け取り遊ぶ場所に移動. ・片付け. MTの指示で遊びをやめてST1と一緒に片付けをする. ・集合. はじめの会の席に椅子を持って移動し,着席する。. ・おわりの挨拶. MTの指示で全員で挨拶をし,ST1と一緒に個別指導へ移動する ※MT: Main Teacher, ST1: Sub Teacher1, ST2: Sub Teacher2. 3.集団活動における指導場面 本実践は対象児を含めた4名~5名の幼児の集 団活動である。実際の集団活動における集合場面 の配置図をFig.1,集団遊び場面をFig.2に示す。 また,本集団を構成する幼児は,年中3名(対象 児を含む) ,年少児1名の異年齢集団である。本 研究の対象とした幼児はA児であり,挨拶場面及 び集団遊び場面においては他の子どもの活動の様 子を見ることができる位置に配置した。主支援者 (Main Teacher,以下MTと示す)は,集団場 面の進行役であり,全体に指示を出したり,会の. Fig.1 集合場面. 進行役を担った。また,副支援者(Sub Teacher: 以下STと示す)は,子どもたちがMTの指示に. ST. 従って動くことができるように,個別に支援を行. C ST. う役割を果たした。また,集団遊び場面では,共. ST. C. に遊ぶ友達としての役割も同時に担った。. 紙コップ エリア. 4.観察と記録. C. MT. 活動は全てVTR記録し,A児の対人関係の変. A. 化を保護者,支援者(MT及びST) ,友達とのか. ST. かわりの視点で分析した。VTR記録は,A児の 特徴的な行動やことばを筆記記録化した。なお,. Fig.2 集団遊び場面. A児は活動場面が変化することを苦手としている ことから,場面毎における変化を分析することが. 拶から遊び」 「場面3:遊びから片付け」 「場面4:. 必要と考え,情報筆記記録は,上述の3者とのか. 着席から移動」までの4つの場面に分けて記述を. かわりを「場面1:入室から着席」「場面2:挨. 行った。. 81.
(5) 細谷 一博・鈴木 洸平・関﨑友里絵・村田 花子・佐藤 未緒・藤嶋さと子. Ⅲ 結 果. 座って活動を行っていたが,日付カードや紙コッ プ遊びにおいて,母親から離れてSTと一緒に遊. A児の集団活動における変化が見られたと考え. ぶ様子が見られた。また,友達の様子を気にして. られる時期を第Ⅰ期~第Ⅱ期に分け,A児の集団. いる姿が見られ,母親が近くにいないと呼び寄せ. 活動への変容を考える上で注目すべき行動を示す。. るが,最後は自分の椅子に座って活動を終えるこ とができた。. 1.第Ⅰ期におけるA児の記録. 【第Ⅰ期の考察】. 第Ⅰ期は本活動に初めて参加した不安からか保. この時期の本児の様子を概観すると,指導者と. 護者から離れることの出来なかった時期である。. の信頼関係の形成段階及び母親から離れることが. 具体的なA児の行動の様子をTable 3に示す。. できない時期であったということができる。参加. 【記録Ⅰ-1】. 当初は,市内への転入や活動への初参加という背. 本活動の初回は母親に抱きかかえられて来校. 景から,初めての場所,初めての他者といった新. し, 最後まで母親から離れることができなかった。. しい環境に強い不安を抱いている時期であったと. また,遊びの場面においても母親から離れること. 考えられる。しかしながら,活動に参加・継続す. ができず,終始「お母さん」と呼んでいたことか. る中で一緒に活動する指導者や友達の存在に気付. ら,初めての場所や初めての人といった新しい環. き,次第に指導者の指示に耳を傾け,友達の様子. 境に強い不安を示していたと考えることができる。. を見ることができるようになってきた。その結. 【記録Ⅰ-2】. 果,MTやSTの指示を聞いて活動を行うことが. 2回目の活動では,1回目と同様に母親に抱き. できたり,第6回の活動で見られたような母親か. ついたり,遊びの最中も母親が傍にいることが大. ら離れて自分で椅子に座って活動に参加したりす. 前提で活動を行っていた。しかしながら,STと. ることができた。. 一緒に遊ぶ様子が見られたり,他児が遊んでいる. 以上のように,6回の集団活動を経験する中で,. 様子を見に行ったりと,初回に比べて周囲の様子. A児は徐々にではあるが,母親との1対1の関係. を気にすることができるようになってきた。. から,他者と一緒に活動をする集団の世界が広. 【記録Ⅰ-3】. がっていったように思われる。. 3回目の活動では,全体的に母親から離れるこ とができないが,その中でもMTの指示に応じて. 2.第Ⅱ期におけるA児の記録. 集団活動に参加する様子が見られた。また,友達. 第Ⅱ期は母親から離れ友達の存在を意識しはじ. の活動にも興味を示し始め,拍手をする姿が見ら. めた時期である。具体的なA児の行動の様子を. れるようになってきた。. Table 4に示す。. 【記録Ⅰ-4】. 【記録Ⅱ-1】. 4回目の活動では,母親との関係はこれまでと. 入室後は母親から離れてSTと一緒に遊ぶ様子. 大きな変化は見られなかったが,友達の名前を呼. が見られ,MTの指示で椅子を自分の場所に運ぶ. ぶ姿が見られるようになった。さらに,集団活動. 様子が見られた。また,写真カードや日付カード. においてもMTの指示に対して自分1人で写真. も1人で実施することができた。活動中は友達の. カードを貼ったり,日付カードを貼りに行ったり. 名前を頻繁に呼ぶ様子が見られるが,友達とかか. と,集団活動における流れを理解し始めてきたと. わりをもつために呼んでいる様子ではなかった。. 思われた。. さらに,母親が近くにいないことに気がつくと,. 【記録Ⅰ-5】. 母親を呼ぶ様子が見られるが,第Ⅰ期とは異なり,. 6回目の活動では,これまで母親の膝の上に. 近くにいない状態でも活動を行うことができている。. 82.
(6) 盲学校に在籍する弱視を伴う自閉症幼児における集団活動の検討. Table 3 第Ⅰ期におけるA児の様子 日付. 支援者(MT/ST). 5/20 (第1回). ・MTの言語指示には反応をせず,全体の指示も 聞いていない。. 友達. ・母親に抱っこされて来校し,そのまま母の膝の 上に座る。 (椅子に座ることはない) ・遊び場面でも母に抱っこされながら「おかー さーん」と呼んでいる。. 母親. 5/27 (第2回). ・MTが提示したボードに興味を示し,前に行っ て触ろうとする様子が見られた。 ・STと一緒に紙コップで遊ぶ様子が見られた。 (母親が近くにいることが大前提) ・MTが片づけを全体に話すと,奇声をあげて教 室から逸脱する様子が見られた。. ・MTが友達の名前を呼ぶと,復唱する様子が見 ・MTに呼名されると,母親に抱きつく。 られた。 ・遊びの最中も母が手の届く範囲にいることが大 ・友達が遊んでいる場所に行く様子が見られた。 前提。 (一瞬で自分の場所に戻る). 6/10 ・MTを注視する様子が見られ,呼名に対して自 (第3回) 分から写真カードを貼りに行く。 ・MTの呼びかけに対して,椅子を片付けること ができた(母から離れる)。 ・MTの指示で遊具を取りに行くことができた (母から離れる)。. ・友達のカードを貼る様子をよく見ていて,貼り ・来校時に部屋に入りたがらず,母と手を繋いで 終わると拍手をする様子が見られる。 入室し,母の膝の上に座る。 ・母に抱っこされて遊びを行う。 母が離れると「お 母さん」と呼んで探す。 ・母と一緒に椅子を運ぶ様子が見られる。 ・おわりの挨拶は母の膝の上で行い,母に負ぶわ れて個別の場所に移動する。. 6/24 (第4回). ・MTの呼名に対して友達の名前を復唱し,自分 ・友達の名前を呼ぶ様子が頻繁にみられるが,関 ・入室してから,椅子には座らず母親の膝の上に の番になると返事をして写真カードを貼る。 わる様子は見られない。 座る。 ・呼名に対して日付カードは自分で貼りに行く様 ・自由遊びはあまり遊ばず,母に抱っこされてい 子が見られた。 ることが多い。 ・片付け活動も一緒にやる様子は見られず,最後 は母におんぶしている。 ・椅子を自分で運ぶことができた(母は一緒にい る)が,母の膝の上に座る。. 7/8 (第5回). ・来校した段階でお昼寝をしており,声をかけて も起きない為,そのまま母親に抱かれて眠って 終わる。. 7/22 (第6回). ・自分1人で椅子に座り,STと一緒にスケジュー ・遊びの時に友達の名前を呼んでいる様子が見ら ・入室後,母は離れて座るが,そばにいないこと ルを見ている。 れる(関わろうとはしない) 。 に気が付くと,大声で呼んで連れてくる。 ・呼名に対する返事や写真カード,日付カードは ・遊びの時に友達の活動の様子をよく見ていて, ・おわりの挨拶の時は,母を呼んでひざの上に座 1人で貼ることができている。終わっても椅子 気にしている。 るが,途中から自分で椅子に座る。 に戻って1人で座る。 ・遊びに移る時は椅子を自分で運び,母から離れ ることができた。 ・STと一緒に活動を楽しんでいる(母は離れた 所にいるが,時々,母を呼んだり,近くに行く 様子が見られる)。 注)A児の特徴的な行動に下線を示す。. 【記録Ⅱ-2】. 【記録Ⅱ-4】. 入室後は母から離れてSTと一緒に遊ぶ様子が. 入室後は母親から離れてSTと一緒に友達の輪. 見られ,MTの指示で集まることができた。また,. に入って自由に遊ぶ様子が見られ,みんなの会も. 出席カードや日付カードもMTの指示を聞いて1. MTの指示で活動を行うことができた。また,ST. 人でやることができた。若干の離席はみられたが,. の声がけで友達に紙コップを貸す様子が見られ. スケジュールの確認をするためであり,終始,母. た。 し か し な が ら, 友 達 か ら「 紙 コ ッ プ 貸 し. 親から離れて活動を行う様子が見られた。さらに,. て・・・」と話しかけられた際には,反応するこ. 周りの友達からA児へ椅子を手渡す様子が見られ. とができなかった。. た。. 【記録Ⅱ-5】. 【記録Ⅱ-3】. 入室後は母親から離れてSTと一緒に遊び,片. 入室後は母親から離れ,MTやSTと一緒に遊. 付けが終わった後も自分の椅子を運んで,座って. ぶ様子が見られた。その中でも,友達が紙コップ. 友達が来るのを待っている様子が見られた。また,. を大きく積み上げると,その遊んでいる様子を自. 友達から「紙コップを貸して」と言われると最初. ら見に行くなど,周囲の友達の様子を気にする様. は 無 反 応 で あ っ た が,STの 声 が け で 友 達 に 紙. 子が見られた。. コップを貸す様子が見られ,その後は,自分から. 83.
(7) 細谷 一博・鈴木 洸平・関﨑友里絵・村田 花子・佐藤 未緒・藤嶋さと子. Table 4 第Ⅱ期におけるA児の様子 日付. 支援者(MT/ST). 友達. 母親. 8/5 (第7回). ・母から離れてSTと一緒に遊び,MTの指示で ・遊び場面で友達の名前を呼ぶ様子が見られる ・入室後に母は離れた位置に座る。 (関わろうとはしない) 。 ・遊びの場面では,母を呼ぶ姿が良くみられ「お STと一緒に椅子を運び,椅子に座る。 母さん,隣に座るの」と言っている。 ・MTの呼名に対して「ハイ」と返事をする。 ・遊びが終わると,母を呼ぶ様子が見られるが, ・写真カード,日付カードを1人で実施し,終わっ 母が離れていても活動をしている。 た後も,椅子に座って話を聞く。 ・遊び場面でもSTと一緒に遊具のやり取りを通 して関わる様子が見られた。 ・遊びの片付けが終わり,友達が来るまで椅子に 座ってSTと話をしながら待っている。 ・MTの片付け指示,椅子の片付けを1人で行う ことができる。. 10/7 (第8回). ・出席カードや日付カードを1人で行うことがで き,終わった後も,STと一緒に座っている。 ・遊びはSTとやり取りをしながら行い,片付け でもSTの話を聞いて行っている。 ・おわりの会も,自分の順番を待って片付けるこ とができた。 ・離席は見られるが,スケジュールボードの確認 をするための離席であり,活動からの逸脱は見 られない。. ・来校後に友達の横に座って積み木を行う。 ・カード張り等の友達の様子をよく見ている。 ・友達から対象児の椅子を手渡されて,受け取る 様子が見られた。 ・友達の作品や友達の動きをよく見ている様子が 見られた。 ・片付け後の着席時も,友達が本人の椅子を用意 してくれ,本人に椅子を受け取る様子が見られ た。. ・入室後,すぐに母親から離れ,遊ぶ様子が見ら れた。途中で「おかあさ~ん」と呼ぶが,返事 をすると,そのまま遊びに取り組む。. 10/21 ・ 入 室 後 に す ぐ に 母 か ら 離 れ,STと 一 緒 に ブ ・はじめの会では,友達の様子をよく見ている様 (第9回) ロックを片付ける様子が見られた。 子が見られた。 ・MTの指示で,出席カードや日付カードを行い, ・友達が紙コップを大きく積み上げると,興味を 終わったら自分の席に戻る。 持って近づいてみている。 ・MTの指示で,遊びを終わらせ,遊具を片付け ・友達同士の活動に自分も入ろうとする様子が見 ることができた。 られた。 ・友達が本人の椅子を用意してくれた。 ・自分が椅子を片付ける際に,周囲の友達の様子 をよく見ている。. ・入室後,離れた位置に最後まで座っている。. 11/11 ・入室後,STと一緒に友達の輪に入って遊ぶ様 (第10回) 子が見られた。しかし,友達とのかかわりは見 られない。 ・はじめの会はMTの指示で動くことができ,椅 子の片付けも自分で行うことができた。 ・MTの号令で初めて,手を膝に置いて,号令で 礼をすることができた。. ・友達と一緒に片付けをし,紙コップ遊びでは, 輪になって遊ぶが,1人で遊んでいる。 ・STの指示で,友達に紙コップを貸す様子が見 られた。その後も自分から友達に紙コップを渡 す様子が見られた。 ・友達が本人の椅子を用意してくれた。 ・友達から「貸して」と言われて,紙コップを貸 すことができたが,話しかけられても,反応は しなかった。. ・入室後,離れた位置に最後まで座っている。. 11/25 ・STと一緒に遊具を片付け,自分の椅子を運ん (第11回) で友達が来るのを待っている。 ・MTの指示で写真カードや日付カードを貼っ て,自分の椅子に戻ってくることができた。 ・全体での遊びに移動する際も,呼名されるまで 座って待っていることができた。 ・STと一緒に遊び,片付けも行うことができた。. ・友達から遊具を「貸して…」と言われると,最 初は無反応であったが,STが「貸してあげよ う」と言うと「どうぞ」と言って貸すことがで きた。その後は,自分から友達に紙コップを渡 す様子が見られた。 ・友達の紙コップを投げる様子を見ていて,自分 も同じ動作をして,投げる様子が見られた。. ・入室後,離れた位置に最後まで座っている。. 12/9 (第12回) X’mas会. 通常の活動とは異なるため,本研究の分析対象から除外した。 ・入室後,ストーブが気になり,集団に入らない ・友達と異なる遊びをしていて,作った作品を見 に行くが,友達に興味を示さない。 が,MTが会を始めると自分の席に座ることが できた。 ・会の最中にストーブが気になり離席をするが, STの声掛けで自分の席に戻ってきた。 ・STと一緒にコップを積んで遊び, 「どうぞ」と 言って渡すと, 「ありがとう」と返事をする様 子が見られた。. ・入室後,離れた位置に最後まで座っている。. 1/27 ・入室後,友達が集まるまで座って待っている。 ・友達が椅子を持ってくてくれるが受け取らず, (第14回) ・はじめの挨拶はMTの指示を聞いて1人で活動 STの声掛けで椅子を受け取ることができた。 する様子が見られた。 ・友達が本児の活動に入ってくるとコップを友達 ・紙コップ遊びになると,ストーブに興味を示す に渡す様子が見られた。 が,自分1人で積み重ねている。 ・片付けの指示を聞いてSTと一緒に片付ける様 子が見られた。椅子は自分で準備し,友達が集 まるのを待っている。. ・入室後,離れた位置に最後まで座っている。. 1/20 (第13回). 注)A児と他児との関係が形成されている様子に下線を示す。. 84.
(8) 盲学校に在籍する弱視を伴う自閉症幼児における集団活動の検討. 友達に紙コップを渡す様子が見られた。さらに,. 団活動の在り方について検討することを目的とし. 友達が紙コップを投げていると,その様子を見て. た。. A児も投げて遊び始めた。. A児は活動開始当初,「初めての場」「初めての. 【記録Ⅱ-6】. 人」といったこれまで経験をすることがなかった. 入室後, 母親から離れるがストーブが気になり,. 同年代の集団活動に大きな戸惑いを見せていた。. なかなか集団に入ることができなかった。しかし. その結果,母親から離れることができず,全ての. ながら,MTが会を始めると自分の椅子に戻って. 活動を母親と一緒に行っていた。しかしながら,. 活動に参加する様子が見られた。途中でストーブ. Ⅰ期においては,徐々にMTやSTの指示に耳を傾. が気になり,離席する場面が見られるが,STの. ける様子が見られ,1人での活動も母親から離れ. 声がけで戻ってくることができた。また,紙コッ. て行うことが出来るようになってきた。実際に母. プ遊びでは,STと会話をしながら遊ぶ様子が見. 親から離れることができない時期においても,友. られた。. 達の様子を気にする様子が記録されている。この. 【記録Ⅱ-7】. ことは,これまでA児にとっては,「自分-もの. 入室をした時点で,母親から離れて活動をはじ. -母親」との間における三項関係の段階から,母. め,はじめの会などはMTの指示で活動する様子. 親ではない他者が存在してきている表れと考える. が見られた。はじめの自由遊びでも,時間になる. ことができる。. とSTと一緒に片づけをはじめ,自分でいすを用. この背景には,一緒に活動をしている友達の存. 意して,友達が集まるのを待っていることができ. 在や同じSTが支援を継続したことが大きな影響. た。また,紙コップ遊びでは,友達が本児の遊び. を与えていると考えることができる。別府(1994). に入ってくると,紙コップを友達に渡す様子が見. は愛着対象との関係性が変化する際には,単一の. られたり,活動が終わると,友達が本児の椅子を. 対象だけでなく複数の対象と愛着関係を深めるこ. 持って来てくれると,STの声がけで友達から受. とが重要であると指摘している。本実践では,A. け取ることができた。. 児にとってSTが愛着対象となったかどうかは確. 【第Ⅱ期の考察】. 認できないが,A児の支援者がこれまでの母親と. この時期の本児は,大人を介して他児と椅子や. いった特定の人物に加えて,同一のSTが担当し. 紙コップ等のものを使ってやり取りが成立してい. たことや毎回の活動内容を一定にしたことで,A. る時期であるということができる。実際に友達か. 児が安心して活動ができる環境を整えることがで. ら椅子を手渡されたり,STの声がけによって自. きた。また,明瞭な課題を一緒にやるという状況. 分から紙コップを手渡したりと,A児の活動に他. が生まれることで,相互作用の発展が可能となり. 児が存在してきている様子がみられる。また,活. やすい(小出,2003)ことからも,MTの指示や. 動を繰り返す中でA児と他児の直接的なやり取り. STの支援によって友達が活動し,周りの人から. が成立する場面は少ないが,STが間に入って両. 拍手されるなどの姿を見ることで,友達の行動が. 者の関係をつなぐことで,活動の共有場面が見ら. A児の見本となり,「今,何をするのか」「どうす. れるようになってきた。. ればよいのか」といった行動を獲得したことが示 唆される。池田(2014)は,仲間関係が築かれ始. 考 察. める初期の頃,特別支援の子どもと他児は,同じ 動きをする場面で同じ身体の状態を保ち,これを. 本研究は盲学校に在籍する自閉症幼児を対象. きっかけとして,互いの存在を意識し,情動を共. に,他者とのかかわりの観点から集団活動への参. 有し始めることを指摘している。このことからも,. 加の様子を分析し,気になる幼児を対象とした集. 小集団での他児と活動することがA児のような集. 85.
(9) 細谷 一博・鈴木 洸平・関﨑友里絵・村田 花子・佐藤 未緒・藤嶋さと子. 団活動初期段階の幼児には有効であったことが示 唆される。さらに,大庭・葉石・八島・山本・菅 野・長谷川(2012)は,小集団学習場面の意義に ついて,特別なニーズのある子どもの学習を支援 していくための「他者」と「事物」を意図的,計 画的に組織できる点にあると指摘している。さら に自閉症幼児の発達を保障する観点から,実践レ ベルにおいて,集団活動への参加を保証する取組 みが重要である(狗巻,2010)と指摘されている ことからも,集団への参加が初期段階の場合,意 図的・計画的に組織された小集団活動で学習経験. 化に着目して―.障害者問題研究,38⑴,68-77. 5.小出望(2003)自閉的な幼児と健常幼児との社会的 相互作用の形成.人間関係学研究,10⑴,11-23. 6.文部科学省(2014)特別支援教育資料. 7.文部科学省(2009)特別支援学校学習指導要領解説(総 則等編) . 8.文部科学省(2008)幼稚園教育要領. 9.大庭重治・葉石光一・八島猛・山本詩織・菅野泉・ 長谷川桂(2012)小集団を活用した特別な教育的ニー ズのある子どもの学習支援.上越教育大学特別支援教 育実践研究センター紀要,18,29-34. 10.特別支援教育あり方検討委員会(2007)北海道の特 別支援教育の在り方について(第2次報告) .. をつませることや同一人物による支援を行うこと. 謝 辞. で,対人関係の拡大への初期段階を形成できるこ とが示唆された。本研究で取り上げた早期幼児支 援教室は,幼稚園に在園し,言葉の発達が気にな る,集団活動への参加が気になる等,診断の有無 に関わらず保育者や保護者から見て気になる幼児 が参加し,集団活動や個別活動を展開している。 このような集団の場を地域の中で確保する事は,. 本研究の実施に際し,対象のA児と保護者より 多大なるご協力をいただきました。厚く御礼を申 し上げます。また,本実践にご協力頂きました北 海道教育大学附属特別支援学校の先生方にも厚く 御礼申し上げます。. 特に本研究で対象としたA児は盲学校に在籍し,. 付 記. 学校生活において同年代の小集団を組むことが難 しい幼児に対しては,貴重な経験の場になると考 えることができる。 今後はこのような幼児に対して,他者を意識で きるような活動内容を展開できるようにしていく 必要がある。. 注1)早期幼児支援教室 2010年1月より北海道教育大学函館校(細谷研 究室)と北海道教育大学附属特別支援学校におけ る共同事業の一環として, 「早期幼児支援教室(き りのめキッズくらぶ)」を開始した。本教室の概 要については,細谷・永長・鳴海・木原・村田・. 文 献 1.別府哲(1994)話し言葉をもたない自閉性障害幼児 における特定の相手の形成の発達.教育心理学研究, 42⑵,156-166.. 成田・菊池・根市・大橋・高橋(2013)に掲載し ている。 (細谷 一博 函館校准教授) . 2.細谷一博・永長明之・鳴海さちみ・木原美桜・村田. (鈴木 洸平 障害児臨床教室). 穂佳・成田実香子・菊池美絵・根市ひかる・大橋桃. (関﨑友里絵 障害児臨床教室). 子・高橋彩子(2013)大学と附属特別支援学校におけ る「早期支援教室」の取組.上越教育大学特別支援教 育実践研究センター紀要,18,45-46. 3.池田久美子(2014)特別な支援を必要とする子ども の仲間関係の発達に関する事例的検討―「身体」を視 点として―.保育学研究,52⑴,56-67. 4.狗巻修司(2010)自閉症幼児の保育者への愛着の形 成過程―障害特性と集団活動への参加形態の発達的変. 86. (村田 花子 障害児臨床教室) (佐藤 未緒 障害児臨床教室) (藤嶋さと子 障害児臨床教室).
(10)
図
関連したドキュメント
成績 在宅高齢者の生活満足度の特徴を検討した結果,身体的健康に関する満足度において顕著
【オランダ税関】 EU による ACXIS プロジェクト( AI を活用して、 X 線検査において自動で貨物内を検知するためのプロジェク
Wieland, Recht der Firmentarifverträge, 1998; Bardenhewer, Der Firmentarifvertrag in Europa, Ein Vergleich der Rechtslage in Deutschland, Großbritannien und
オーディエンスの生徒も勝敗を考えながらディベートを観戦し、ディベートが終わると 挙手で Government が勝ったか
「職業指導(キャリアガイダンス)」を適切に大学の教育活動に位置づける
②防災協定の締結促進 ■課題
児童生徒の長期的な体力低下が指摘されてから 久しい。 文部科学省の調査結果からも 1985 年前 後の体力ピーク時から
適応指導教室を併設し、様々な要因で学校に登校でき