タマミジンコ(Moina macrocopa)のフィードバック
飼育に関する2・3の試行
著者
山崎 繁久, 井田 芳人, 小川 満也, 和田 昭一
雑誌名
鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of
Fisheries Kagoshima University
巻
31
ページ
145-152
別言語のタイトル
Observation of Inherent Mechanisms for Water
Quality Maintenance in a Feedback Culture
System of Zooplankton
タマミジンコ(M0加川州叩‘zノの
フィードバック飼育に関する2.3の試行
山崎繁久*'・井田芳人噸2・小川満也謝I
和田昭一掌3
ObservationoflnherentMechanismsfbrWaterQualityMaintenanceina
FeedbackCultureSystemofZooplankton
ShigehisaYAMAsAKI*1,YoshitolDA*2,MitsuyaOGAwA*l andShoichiWADA*3 Abstract Inordertodeterminethemechanicsinvolvedinthemaintenanceofwaterqualityinafbedback culturesystem,severalrelevantphysicalandbiologicalparametersweremonitoredbothinthe rearingwaterfbrzooplanktonandinaphytoplanktonculturetank・ Mbj"αmacmc叩awasculturedfbr53daysadapting企edbackculturemethod・Theywere企d withCルノ0花"αゆ.previouslyacclimatizedtofioeshwater・Duringthefirst33days,企edbackculture systemwhichinvolvesrecyclingofrearingwaterafierculturingCソMo"肋妙.wasadapted・The routinemethodwhichdoesnotinvolverecyclingofwaterwasappliedduringthelast20days・ NH4−N,NO2−N,NO3-NandPO4-Pconcentrationsweredeterminedintheculturewater・ PO4-P,dissolvedorganicPandparticlePcontentwerelikewisemeasuredinCルノ0""α”.culture waterfbrfivedaysafterinoculation・ IntheM・macmcqlaculturetank,NH4-NandPO4-Pconcentrationsweremaintainedatthe levelsofabout1,600and54〃g−at・I一I,respectively・However,intheroutinetreatment,NH4− Ntendedtoincreaseupto3,000浬9−at・ノーlandPO4−Pupto90解g−at・’一1. 1、Cソセん"肋妙.culturetank,concentrationof、dissolvedPdecreasedaboutll〆g−at./-’from 65to54鴻一at・ノー',fbllowinganincreaseof助ノ0""αゆ.density・However,particlePcontent increasedabout9ノag-at・ノー'from4.5tol3鴻一at./'・Thusanegativerelationship(r= -0.90)wasobservedbetweenCル伽肋ゆ.densityanddissolvedinorganicandorganicPwhilea positiverelationship(r=+0.90)wasshownbetweenCル伽"αや.densityandparticleP・Basing ontheresultsobtained,itcanbeconcludedthatwaterwaspurifiedbybio-filtrationwithCソh勿形ノノヒz 妙.adaptingthe化edbackculturemethod. 車’鹿児島大学水産学部増殖生理学研究室(
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Kagoshima,890Japan) 零2日本ビジネスオートメーション (JapanBusinessAutomationCo、Ltd,Sendagaya,Shibuya,Tokyo,l51Japan) ・3和田水産 (WadaFishcultureFarm,Kadogawa,Miyazaki,889-06Japan)146 鹿児島大学水産学部紀要第31巻(1982) 近年水産増殖の面でも省資源や環境汚染の問題に関心が寄せられるようになってきた.そ
こで平田(1978)はシオミズツボワムシを用い,その飼育における省資源および環境汚染の
問題解決をはかるフィードバック飼育システムを創案した.この飼育は長期間にわたって継続され,その飼育システムの効果が示された(HIRATAeZaZ,1980).
今回の実験では,環境の変化に対して,より敏感とされるタマミジンコのフィードバック
飼育を試みた.その結果,フィードバック飼育による水質の浄化機構について2.3の知見
を得たのでここに報告する.
本文に入るに先立ち,終始御指導をいただいた平田八郎博士に深謝の意を表する.
材料および方法飼育実験は2回繰り返しておこない,それぞれ53日間継続した.第2回目の実験では,開
始後33日間フィードバック操作をおこない,34日目以降は飼育水を交換しない従来の飼育方
法に切り換えて,その前後におけるタマミジンコ(以下ミジンコと略称)の成育および水質
の変化に注目した.飼育は,まず,前報(山崎・平田,1979)の池底移動通気装置を設置した2.7t水槽中で
クロレラを培養した.クロレラは淡水に順致した海産クロレラを用い,培養液は屋島メデイ
ウムとした(平田,1964).クロレラ密度がおよそ1.0×106cells・mr1に増加したところで
ミジンコを約0.lind・mrlの密度で接種した.収獲は,ミジンコの密度が2ind.m1-1以上になった時点で開始し,終始その密度を維持
するように収獲率を調整して毎日おこなった.その際生ずる飼育排水は,別に用意したポリ
カーボネイト製の500ノタンクに移し入れ,飼育排水のみでクロレラの培養をおこなった.
その培養クロレラおよび培養水は,ミジンコを収獲した後の餌料(フィードバック・クロレ
ラ)および補給水として飼育槽に返却した. Table1.AverageandS.D・ofwatertemperature,pH,andDOinaculture system. Experiment Experiment-I FeedbacktreatmentinExp.−II RoutinetreatmentinExp-II W、T・ (℃) 23.0+2.1 21.7+2.5 19.2+1.7 pH 6.4+0.4 6.4+0.6 6.5+0.2 D O (ppm) 7.9+0.6 8.5+1.0 10.0+0.8給餌は,上記フィードバック.クロレラの他,飼育水中の餌料密度が0.1×106CellS・mrl
以上を維持するように,食用生酵母を併用した(岡,1981)(Figl).
水質は,ミジンコ飼育槽とフィードバック・クロレラ培養槽について調べた.ミジンコ飼
育槽では,NH4-N,NO2-NおよびNO3-Nの無機態NおよびPO4 Pの4項目について,
STRIcKLANDandPARsoNs(1972)の方法に基づいて測定した.水質用のサンプリングは原
則として,ミジンコ収獲前の午前10時頃おこなった.;
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Exp._11.Arrowsshowthetimemeedbacktreatmentwaschangedtoroutinetreatment・鯉:
伽0"肋culturedininorganicmedium,図:Cソhん花ノノaculturedinwastewater,皿:Baker,s yeast. 6 EXP‘−142
︵−0︷E・ロ仁一︶ 二﹂一の室山ロ三三︷つ室 0.狐
0 0 oOO 0 10 40000321
︵一︲¥匡図・︷︲意ロ.。︲莞も︶ 岸三二つ三三④三﹃ロ山山﹂ 40 50 50 0 642
︵−0戸E・ロ匡一︶ 二﹄︷の三山国三三︷。二 20 30 0 10 20 30 CULTUREAGE (days) 40偽
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事象雷!
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2 1 ︵︷’一・砦阿0団弐︶ 三つ︷﹄迂匡﹄室山]三つ︺三山哩○産﹄一三なお,これらミジンコの飼育槽およびクロレラ培養槽は屋外に設置し,常温下で実験をお
こなった(Tablel).また本来は,ミジンコの排池物である糞の利用はおこなわず,飼育
水の排水のみを用いてフィードバック飼育をおこなった.
結果および考察水質の観察は,実験Ⅱについておこなった.その変化は,ミジンコの密度と呼応するように,
従来飼育法に切り換えた時点の前後において大きな相異を示した(Fig.2).即ち,PO4-P
および全無機態N濃度(TIN)は,切り換え時まで,それぞれ50∼55および2,100ノag-at.f’
10 色百回 0 9房も、勺凶目864
︵[0戸・響回0ロヨ︶ 三つ︷﹄迂軍﹂室山]毒つ︺山﹄くエユ②ロエユ 0 0 0 3000 昂 夢 み q d l α ◎ 望 捗 畠 ◎ 目 @ 鹿児島大学水産学部紀要第31巻(1982) Fig.2.FeatureofPO4-P,NH4−N,NO2-N,NO3-Nandtotalinorganicnitrogen(TIN)in therearingtankof、zooplanktonduringExp、-11.Arrowsshowthetimefbedbacktreatment waschangedtoroutinetreatment. 10 イヘハ'4 ユロ'ペノE当-,.匹 ■ ■ ■ ■ (NO−N) ■ ■ (NO−N) △司凸みぱ基き酒 2 0 3 0 CULTUREA6E (days) ゴローロj−LqE 50 0 40● 0 4 2 .︾回0○弐 三□﹄の﹄
またTINは3,000ノag-at・j−lへといずれも約1.5倍の増加となった.それに歩調を合わせ
て,ミジンコの密度も,3ind・mI−lから0.1ind・mj−lへと下降した(Figl).この変化
の期間中におけるPO4−PとTIN濃度の関係は,Fig3の如く約16の傾斜を持つ直線回帰
を示した.動・植物プランクトン内に存在するNおよびPの原子比は,およそ16:1とな
ることが報告されている(小山,1973).従って,このミジンコ飼育水におけるPO4−Pお
よびTINの上昇は,飼育水中での動・植物プランクトンを含む有機物の分解によるものと
推察できる. ● ●q'′ 3000 ● ● ● 2800 ● ● 2600 ● ● 夕 〆 0 ● ● ク● 2200 200 〆艇
一方,フィードバック・クロレラ培養水中のPの動態はFig.4に示した通りである.
PO4-Pと溶存態有機Pを合わせた濃度は,約3日間に65ノag-at・j−lから54ノag-at.r'へ
と約11ノag-at、1-1減少した.他方粒子状Pの濃度は4.5鴻一at・I−lから13鴻一at.r'へ
と約9鴻一at・'−1の増となり,前者の溶存態Pの減少量とほぼ同程度であった.クロレラ
密度とこれら両者の相関を検討したところ,クロレラ密度と溶存態Pとの間には負の相関
(r=-0.90),および粒子状Pとの間には正の相関(r=+0.90)がみられた(Fig5).従っ
て,クロレラ培養水中では,クロレラによる水の浄化,言いかえれば生物浄化がおこなわれ
て い る こ と が わ か る .こうして生産された,フィードバック・クロレラの量は,総投餌量に対するその割合
(フィードバック率)で,28.1%および20.6%を占めた(Table2).つまり,今回の飼育
y=16x+1300 (r=+0.82) 5 0 6 0 7 0 8 0 9 0 l 0 0 PO4-P い9-at、1-1) Fig.3.RelationshipbetweenconcentrationofPO4-Pandtotal inorganicnitrogenduringtheroutinetreatmentinExp.-Ⅱ14 150 1
8642
nU︵−0−・碧心0ワユ︶ユー︺一三三哩匡つ白山二一つめの︷国 鹿児島大学水産学部紀要第31巻(1982 8 ︵[0戸。m[↑④Upo−x︶ ﹄﹄﹃の室山色三一]山匡ロョエ︺では総投餌量の28.1%および20.6%が節約できたことになる.入力としての投餌をもとにし
た飼料転換効率は,実験IおよびⅡでそれぞれ32.2%および35.9%と高い値となった.一方,
実験Ⅱの従来法による実験期間のそれは6.9%と低い値を示した.
一般に動物の飼育では,NH4−N濃度が最も重視され,その濃度の変化に注意が払われて
いる.今回のフィードバック飼育水中のNH4-Nは平均1,600浬9-at・ノー'とかなり高い値で
あったが,pHが6.4±0.6と期間を通じて安定していたこともあり,ミジンコの増殖に及
ぼす影響は認められなかった.また,ミジンコの密度が急激に減少した実験Ⅱの従来法飼育
期間でも,ミジンコの減少を引き起こす程の水質の変化は観察されなかったj平田(1967)
の報告によれば,食用生酵母の単一餌料投与は栄養のアンバランスをもたらすので,この減
少はフィードバック・クロレラの供給を中止したために生じたとも考えられる.
ところで,HIRATAaaZ(1980)のシオミズツボワムシを用いたフィードバック飼育実験
では,その飼育水中のPO4-P濃度がほぼ110ノag-at・rlで安定した.また今回の実験では,
それが50ノag-at・r1を示した.従って排池・分解による栄養塩の増加と,クロレラによる
nⅢU RxJ 2 0 4 0 6 0 8 0 l 0 0 CULTUREA6E (hours) Fig.4.ConcentrationofseveraltypesphosphorusandCルノ0〃"αdensityinCルノ0〃"αculturetank. 騰 蕊 潮 一 ; 『 蕊 蕊 翻 一 ; − 厩 塞 蕊 I : … − ; − 厩 12 ︵[0︻・︾心0ロユ︶ql山当︺︷﹄重くユ nU1上00区U伽叶
ユー︺﹃三三口産ロ三目色]二二つめぬ﹃国Feedingamount Cソhん〃"α SubtotalHawesting S.S・in Feaces fMback wastewater Baker,syeast and助ん〃ノノZz asmput (A) (c) ● 、 、 ● 、 、 、 、 ● 、 ● ● ● / ● ク グ グ グ ノ ク ノ 〃 〃 ' ● 2 2 6 ●、、●● 、 、 ● 、 ● 5 ︵[’︷・磐口,ロユ︶ ユーロのン︷○mm↑ロ 二0−.響面Im式︶ ユー①戸U↑砦﹄ロユ 〃ノ● 〃 〃 ●〃″●● 8 ●、、
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征
54︲0 r=−0.90 (r=+0.90) 2 4 6 8 2 4 6 8 Chlorelladenslty ChloY、elladens1ty (xlO6cells・ml−1) (xlO6cells・ml−1) Fig.5.RelationshipamoungChlorelladensity,dissolvedP,andparticlePinChlorellaculturewa -tercontinuedfbrfivedays. Table2.Energybudget(kcal)inculturesystem. 0 1 , 6 3 2 113 38 28.1 20.6 0 23.1 28.5 6.9 32.2 35.9 6.9 (D) (E) (B) (F) 95 Exp-I Feedbacktreatment inExp.−II Routinetreatment inExp-II 3,926 2,261 1,534 612 5,460 2,873 1,261 819 4 9 1 3 8 2 2 3 0 9 5 1,632 Foodconversion rate B/C(%) D/C(%) Foodconversion rateomitted Cソセノ0形"MMback D/A(%) Feedbackrate Exp.−I Feedbacktreatment inExp.−II Routinetreatment inExp-II152 鹿児島大学水産学部紀要第31巻(1982)