消費者の回収行動を考慮した回収拠点の
最適配置に関する基礎研究
中山 和也
*・皆川 健多郎・能勢 豊一
工学研究科 経営工学専攻
(2007 年 9 月 29 日受理)
The Study on the Optimal Placement of Collection Center of Considered Action of
Collection on the Customer
by
Kazuya NAKAYAMA
*, Kentaro MINAGAWA, Toyokazu NOSE
Major in Industrial Management, Graduate School of Engineering (Manuscript received September 29, 2007)
Abstract
In this study, we clarify the optimal placement of the collection centers considering the consumer behavior. First, we construct a model of the collection activity using the probability of a consumer going to a particular shopping center and a collection by distance. Second we formulate the total volume of collection. Finally, we clarify the optimal placement to maximize the total volume of collection.
キーワード; 最適配置,Huff モデル,回収行動,総回収量最大化
K e y w o r d ; Optimal placement, Huff model, Collection action, Maximize the total volume of collection
* 大阪工業大学大学院工学研究科経営工学専攻
Memoirs of the Osaka Institute of Technology, Series A Vol.52,No.2(2007) pp.11~16
1.はじめに 環境問題への関心の高まりは,各方面で見受けら れる.経済産業省1)は,大量生産・大量消費・大量 廃棄型の経済活動を続けてきたわが国は,廃棄物の 最終処分場のひっ迫などの環境制約,将来的な鉱物 資源の枯渇に対する懸念などの資源制約といった問 題に直面していると指摘し,3R(Reuse,Reduce, Recycle)の政策を推進している.リサイクル活動の 一環として,民間企業では再製品化の取り組みが実 施されている.Aras et al.2),有光ら3),宮本ら4)は, 数理モデルを適用し,これらの問題について検討を 加えている.一方,自治体では,容器包装に係る分 別収集ならびに再商品化の促進に関する法律として 容器包装リサイクル法が制定され,資源のリサイク ル活動が行われるようになってきた.PETボトル も,容器包装リサイクル法の対象に選ばれたことか ら,自治体はリサイクル活動を積極的に行わねばな らなくなった.その際,自治体では効率的な事業実 施により,コスト削減をすることが課題となって いる. PETボトルの回収方法は,大きく拠点回収と巡回 回収の2つに分かれる.拠点回収とは,最寄のスー パーマーケットなどの小売店に回収拠点を配置し, 住民が随時持ち寄る方式である.一方,巡回回収と は,一般的な家庭ごみと同様に,最寄の回収拠点に 住民が定期的に持ち寄る方式である.大阪府豊中市 や高槻市では,PETボトルを対象にした拠点回収を 実施している. 吉永ら5)は,回収拠点の配置地点ならびに各拠点 での回収量を既知とし,コスト最小となる回収経路 を明らかにしている.皆川6)は,商業立地の概念を 応用し,各拠点の回収量をモデル化し,回収拠点に おける配置地点の決定ならびに回収事業として考慮 した際の回収拠点の最適配置数を明らかにしてい る.しかし,これまでの研究では,消費者の回収拠 点に回収品を持ち込む行動(回収行動)は,回収拠点 までの移動距離のみしか考慮されておらず,十分で はなかった.そこで,本研究では,回収行動のモデ ル化において,顧客の購買行動を考慮することによ り,より現実的なモデルとし,回収量の予測精度の 向上を図ることを目的としている. 2.問題設定 本研究では,拠点回収による回収品をPETボトル とした回収事業を対象とし,回収拠点の最適配置に ついて明らかにするものである.このとき,回収行 動のモデル化は,購買行動の付帯行動として考慮し ている.これは,現実の回収行動を想定した際,小 売店に回収品を持ち込む回収行動は独立して行われ るのではなく,買い物をする際に回収品を持ち込む といった購買行動の付帯行動として捉えることがで きるからである. 2.1 前提条件 本研究を進めるにあたり,以下の前提条件を設ける. 各地点の人口ならびに1人当たりの回収品排出量 は,所与とする. 各地点から回収拠点への回収品の持ち込む量は, 移動距離の増加に関して単調減少とする. 回収拠点は,小売店の立地地点にのみ,配置可能 とする. 2.2 記号の設定 本研究で用いる主な記号を,以下のとおり設定 する. ) , (i j :2次元モデルでの計画地域の地点を( ji, ) として,i=1,…,M j=1,…,Nとする. a:小売店の識別番号をaとして,a=1,2,…,Aと する ) , (ka la :小売店aの立地地点 a s :小売店aの店舗規模( 2) m
なお,計画地域の概念図を,図1に示す. ) , ( ji P :地点( ji, )の人口(人) u :1人当たりの回収品の平均排出量(個/人) a b :小売店aへの回収拠点の配置の有無を表わす パラメータ ⎩ ⎨ ⎧ = (配置なし) (配置あり) 0 1 a b ) , , (i j a g :地点( ji, )から小売店aの立地地点まで の移動距離(空間距離) 2 2 ) ( ) ( ) , , (i j a k i l j g = a− + a− ) , , (i j a D :地点( ji, )から小売店aの回収拠点に回 収品を持ち込む量(個) ) (a D :小売店aの回収拠点の回収量(個) ) , , , (b1 b2 bA TD L :総回収量(個) 3.本論 本章では,まず,回収行動のモデルを示し,次に 総回収量TD(b1,b2,L,bA)の定式化を行う.次に,この 結果を用いて,最適配置を求める手順を明らかにする. 3.1 回収行動のモデル 本研究における回収行動は,住民が購買店舗を店 舗選択したのち,回収拠点が存在する場合において 実施される. まず,店舗選択のモデル化については,店舗規模 と移動距離により求められる,Huffモデル7)を応用 した通産省版修正Huffモデルを用いている.よっ て,本研究では店舗選択確率は,店舗規模,移動距 離を用いた修正Huffモデルによって求められるもの とする. 次に,距離による回収率については,住民が回収 品を回収拠点に持ち込む最大移動距離を用いて,距 離による単調減少によって求められるものとする. そして,回収率については,店舗選択確率と距離 による回収率の積により,求められるものとする. 以下に,定式化を示す. 3.1.1 店舗選択確率 本研究では,各地点の住民が各店舗を選択する購 買行動に,通産省版修正Huffモデルを用いている. 通産省版修正Huffモデルでは,消費者がある商業集 積で買い物をする確率を,商業集積の売り場面積の 大きさに比例し,そこに到達する距離の2乗に反比 例するとしている.よって,地点( ji, )から小売店a の店舗選択確率Pr(i,j,a)は,次式のように表わされる.
∑
= = r a a a a j i g s a j i g s a j i 1 2 2 ) , , ( ) , , ( ) , , Pr( なお,通産省版修正Huffモデルの概念図を,図2 に示す. 図2 通産省版修正Huffモデルの概念図 図1 計画地域の概念図3.1.2 距離による回収率 回収拠点への回収品の持ち込む確率は,移動距離 の増加に伴い単調減少としている.地点( ji, )から 小売店 a への移動距離による回収率 f1(i,j,a,h)は, 最大移動距離8)の概念を活用し,次式のとおり与え られている. ⎩ ⎨ ⎧ − ≤ < = otherwise h a j i g if h a j i g h a j i f 0 ) , , ( 0 / ) , , ( 1 ) , , , ( 1 ここで, h :最大移動距離 最大移動距離とは,住民が回収品を持ち込む ために移動する距離の最大値である. 移動距離による回収率の概念図を,図3に示す. 3.1.3 回収率 地点 から小売店( ji, )へ持ち込まれる回収品の割 合(回収率) f(i,j,a,h)は,店舗選択確率Pr(i,j,a)と 移動距離による回収率 f(i,j,a,h)の積により求ま り,次式のとおりとする. ) , , , ( ) , , Pr( ) , , , (i j ah i j a f1i j ah f = 3.2 小売店 a の回収量 地点( ji, )の回収品の排出量は,人口P( ji, )と1人 あたりの排出量 u との積により求まり, u j i P(, ) となる.よって,地点( ji, )から小売店aの回収拠 点に回収品を持ち込む量D(i,j,a)は,式,式 の回収率と排出量との積により求まり, u j i P h a j i f a j i D(, , )= (, , , ) (, ) となる.なお,小売店 の総回収量 は,各地点 からの回収品の総数として求められ,
∫ ∫
∫ ∫
= = n m n m udidj j i P h a j i f didj a j i D a D 0 0 0 0 ) , ( ) , , , ( ) , , ( ) ( となる. 3.3 各配置数における総回収量 以 上 よ り , 本 研 究 に お け る 総 回 収 量 ) , , , (b1 b2 bA TD L は,各小売店への回収拠点配置の有 無を表わすパラメータbaを用いて,∑ ∫ ∫
∑ ∫ ∫
∑
= = = = = = A 1 0 0 A 1 0 0 1 2 1 ) , ( ) , , , ( ) , , ( ) ( ) , , , ( a a n m a a n m a A a A b udidj j i P h a j i f b didj a j i D b a D b b b TD L となる. 3.4 最適配置の決定 各配置数の最適配置は,総回収量TD(b1,b2,L,bA) を最大化する配置地点の組み合わせとして求められ る.また,そのときの総回収量をTD*(b1,b2,L,bA) とする. なお,本研究では各回収拠点の回収量が独立とな っているため,最適配置の組み合わせは,以下の手 順により得ることが可能である. 手順1:各回収拠点の回収量D(a)を求める. 手順2:求められた各回収拠点の回収量D(a)を降順 に並べる. 手順3:配置数分の回収拠点を上位より選択する. 図3 移動距離による回収率の概念図以上の手順により求められた回収拠点は,最適配 置である. 4.数値例による検討 4.1 数値の設定 上記の手順に基づき,本モデルの検証をおこなう ためにシミュレーションを行う.シミュレーション を行うにあたり,以下の数値を与える. 計画地域の大きさを150×100とする.なお,1ブ ロックの大きさを10m×10mとする. 各小売店の設置地点ならびに店舗規模を,表1に まとめる. 最大移動距離 h を500mとする. 各地点における1人当たりの回収品の平均排出量 u を3個,人口P( ji, )を50人とし,それぞれを定 数とする. 4.2 最適配置の決定手順 以下に,最適配置の決定について,手順を用いて 示す. 手順1 各拠点の回収量を求める.その計算結果を,表2 にまとめる. 手順2 各拠点の回収量D(a)を降順に並べる.その結果 を,表3にまとめる. 手順3 配置数分の回収拠点を上位より選択する.配置数 ごとの最適配置の組み合わせ,ならびにそのときの 総回収量を,表4にまとめる. 以上より,本数値例では,すべての回収拠点を配 置することにより,総回収量を最大化することが可 能である. 4.3 考察 ここでは事業化を考慮した際の最適配置数につい て考察を加える. 以上の検討では,総回収量最大となる回収拠点の 最適配置を明らかにした.しかし,これらの回収活 動を事業として捉えたとき,回収品の売却による収 入,回収活動の運用コストを考慮した,利益による 検討が必要である.以下では,すでに求まった最適 配置に基づき,利益最大となる最適配置数の考察を おこなう. 検討を行うにあたり,新たに以下の記号を与 える. 表4:総回収量TD *(b1,b2,L,bA)のまとめ 配置数 配置拠点 総回収量 ) , , , ( * b1 b2 bA TD L 1 3 2,438 2 2,3 4,515 3 2,3,4 6,206 4 1,2,3,4 7,837 表3:降順による回収量D(a)のまとめ 順位 a 回収量D(a) 1 3 2,438 2 2 2,077 3 4 1,691 4 1 1,631 表2:各拠点の回収量D(a)のまとめ a 回収量D(a) 1 1,631 2 2,077 3 2,438 4 1,691 表1:各小売店の設置地点と店舗規模 a (ka,la) sa 1 ( 30,30) 1,500 2 (110,40) 3,000 3 ( 70,80) 6,000 4 (120,90) 4,000
q:単位当たり回収品の売価(円/個) c :回収拠点を1つ配置することにより生じる 運用コスト(円) このとき,配置数をtとしたときの利益R(t)は, ) , , , ( * ) (t ct qTD b1b2 bA R =− + L となる.よって,利益R(t)を最大とする配置 数を,最適配置数 *t とする.なお,式の検 討を行うために,単位当たりの売価qを7円, 回収拠点1つあたりの運用費用 c を10,000円と し,各配置数における利益を計算した.その 結果を,図4に示す. 以上より,利益最大となる配置数 *t は2となり, 小売店2と3に回収拠点を配置することにより,利益 最大となる. 5.むすびにかえて 本研究での検討結果,以下の諸点を明らかに した. 消費者の購買行動を考慮した回収行動をモデル化 し,総回収量の定式化をおこない,最適配置の決 定手順を明らかにした. 数値例の検討を通じて,従来研究との比較ならび に事業化を考慮した.利益最大となる最適配置に ついて,考察を加えた. 参考文献 1)経済産業省ホームページ, http://www.meti.go.jp/
2)N.Aras, T. Boyacl and V.Verter ; The effect of categorizing returned products in remanufactur- ing, IIE Transactions, Vol.36,pp.319-331, (2004) 3)有光大幸,中島健一,能勢豊一,栗山仙之助; 循環型生産システムの最適生産政策に関する研 究,日本経営工学会論文誌,pp.139-144, Vol.55,No.3, (2004) 4)宮本雅也,中島健一,能勢豊一;再生産システ ムにおける回収製品の品質を考慮した最適発注 政策に関する研究,日本経営工学会平成18年度 春季大会予稿集,pp.32-33, (2006) 5)吉永陽一,西名慶晃,猪子正邦,斎藤聰,露口 哲男;静脈物流網最適化システム,NKK技 報,no.177,pp.1-5, (2002) 6)皆川健多郎;回収拠点の最適配置に関する基礎 研究,第35回日本経営システム学会全国研究発 表大会講演論文集,pp.158-161, (2005)
7)Huff.D.L;Defining and estimating a trading area, Journal of Marketing, vol.28,pp.34-38, (1964) 8)中西正雄;小売吸引力の理論と測定,pp.320- 322,千倉書房, (1983) 9)皆川健多郎,住吉和司;競合店がある場合とな い場合の基本的性質と解法手順-商業店舗の最 適立地の基礎研究-,日本経営工学会論文誌, vol.50,no.1,pp.1-10, (1999) 図4 配置数ごとの利益R(t)のまとめ