• 検索結果がありません。

公的扶助行政の法的統制の理論(四)・完

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "公的扶助行政の法的統制の理論(四)・完"

Copied!
45
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

93→←『奈良法学会雑誌』第8巻2号(1995年9月〕 八 論 説

V

¥ ノ

公的扶助行政の法的統制の理論四・完

/ t ¥

l

l

次 同 日 はじめに 第一章扶助基準設定過程の法的統制 第一節司法審査の範囲 第二節扶助基準の設定と、基準額算定方式 第三節扶助基準の設定に関する法的問題(以上第六巻二号) 第二章最低生活需要の認定 第一節﹁必要な生計﹂需要の拡張 第二一節需要の程度の認定 第三節必要即応原則の解釈への示唆(以上第七巻一号) 第三章基準額算定方法の改革 第一節改革の背景 第二節改革の過程と論議(以上第七巻三・四号) 第四章学説および裁判例の新たな動向 日日

(2)

第8巻2号一一94 第一節扶助基準の法的性格の変化と、司法審査の範囲 第二節扶助基準の適用範囲と、一時給付 第三節一九九三年の連邦社会扶助法の改正 む す び に か え て ( 以 上 本 号 ﹀

第四章

学説および裁判例の新たな動向

第一節 扶助基準の法的性格の変化と、司法審査の範囲 上述のように、政策的意図の混入を避け、栄養生理学・統計学等の学問的成果、及びドイツ公私扶助連盟の学識経 験に依拠した専門技術的見地に基づき扶助基準を決定することが、当時、マーケットバスケット導入の主眼とされて いた。連邦行政裁判所が一九六六年一一月三

O

日判決で示した、右の算定方式に依拠した行政庁の専門的判断を尊重 して司法審査の範囲を限定するという見解は、十分な法解釈論上の根拠づけがなされることなく、先例としての意義 を保持してきた。マ l ケ?トバスケ γ ト方式と、これに依拠した需要算定への批判が強まった一九八

O

年に、需要算 定方式の改革作業が開始された。ここでは、経費抑制を中心とした政策上の要請に対し従来にない配慮が示され、改 革の方向づけに影響を及ぼすこととなった。この節では、改革の帰趨がようやく明らかとなった八

0

年代末より、扶 助基準の司法審査にかかわる裁判例にあらわれた変化について、検討する。

(3)

この時期に、扶助基準の法的拘束力を正面から認める学説および裁判例があらわれるようになる。その一例として、 一 九 九

O

年五月四日パ l デン・ヴュルテンベルク上級行政裁判所決定が挙げられる。ここで同裁判所は、 八

0

年代の 需要算定方式の改革経過を跡付けるなかで、扶助基準の設定は、複雑な手続を経て達成された行政上の決定であると いう認識を一示し、そのうえで、所管大臣による指針的決定が専門的知見に依拠する領域では、裁判所による統制は限 定されると結論づける。なぜなら、裁判所は、右の専門的知見に基づく根拠を詳細にわたって審査することはできず、 行政規則より看取される所管大臣の評価を考慮の外におくことはできないからである。つまり、同裁判所の考え方に よれば、そもそも

BSHG

二二条三項は、執行府に一般的な規範の定立を授権しており、これには形成自由[の

g

g

﹁ したがって、扶助基準に対する司法審査の範囲は限定されるのである。

Z

口 問 問 同 円 。 庄 町 山 片 ] が 認 め ら れ る の で あ っ て 、 95一一公的扶助行政の法的統制jの理論帥・完 右の判決に示される専門的知見に依拠した行政庁の判断の尊重という論拠は、連邦行政裁判所の一九六六年一一月 三

O

日判決の射程内にあると位置づけることも可能であるが、他方で、扶助基準の設定行為の法的性格自体にまで踏 み込んだ判断を行う判決がみられるようになる。 リ ュ l ネブルク上級行政裁判所はその一九八九年一一月二九日判決で、扶助基準の設定はまさに、法政策的価値判 断や、広範囲にわたる学術研究・調査が先行する法規範の定立

[

Z

R

B

B

R

g

m

]

であるという認識を示している。この ような認識に立ったうえで、扶助基準およびその設定行為がいかなる範囲で行政裁判所の統制に服するかという問題 は、連邦行政裁判所が一九六六年一一月三

O

日判決で述べるような資料の評価の問題ではなく、いわゆる統制密度に ついての問題であるとする。そのうえで、

BSHG

一 一 条 、 一二条および二二条三項を一体として考えることによっ て、二二条三項が、扶助基準を最終的かつ拘束的に設定する権限を行政に付与していることが明らかとなるとする。 したがって、同裁判所によれば、扶助基準は、裁判所の統制に限定的な範囲で服するにすぎないのであ抗日

(4)

第8巻2号一一96 右の判決にみられるような、扶助基準の設定に関する行政庁の最終的な決定権の承認は、行政法解釈論においてど のように基礎づけられるのであろうか。あるいは社会扶助法分野に特有の考え方なのであろうか。右の判決では、前 者において議論されてきた判断余地説などの裁判所の統制の限界をめぐるいくつかの見解が参照されているが、論拠 としていずれを採用するかについては明確な言及を避けている。 この点に関して、扶助基準と、環境法分野における施設の設置・操業許可にかかる技術上の基準ないし指針との聞 に、共通性のあることに着目する見解があお山つまり、扶助基準が、法律上の要件規定に含まれる不確定法概念を具 体化するものであり、その設定にあたっては専門的知見に依拠するとともに行政庁の政策的評価を介在させている点 で、右の技術上の基準に類似するというのである。この見解は、技術上の基準に一不された行政庁の判断に優先性を認 める環境法分野で展開された解釈論を援用することによって、扶助基準に対する司法審査の範囲の限定につき、 説得力のある根拠づけを試みるものである。 よ り その例として、ブレ l メン上級行政裁判所一九九一年四月九日判決が挙げられる。同裁判所は、法律が目的規定を 設けているにすぎず、あるいは基本的な問題を規律しているにすぎない場合に、これを補充する行政規則は法規たる 性格を有すると述べて、周辺住民によるヴィ l ル原子力発電所第一次部分許可の取消請求が争点となった、連邦行政 裁判所一九八五年二一月一九日判決で示された﹁規範具体化規則﹂

[

Z

D

5

8

8

江 田 町

2

2

︿

m

Z

即 日

Z

D

4

0

3

n

E

2

の理現に依拠して、扶助基準を、一定の範囲で裁判所を拘束する規範具体化行政規則であると性格づける o その理由 として、法律自体が扶助基準の設定による補充を前提としており、しかもこれを行政庁の規律に委ねていることが述 べられていれ w し た が っ て 、

BSHG

一一一一条一項および三項の内容に鑑み、扶助基準が原則として個々の扶助要求者 ないし要扶助者に対する拘束力をもつことを導き出すのである。

(5)

もっとも、規範具体化規則の理論の射程がいまだ明確でなく、また、規則作成手続のありょうも含め、原子力発電 所の安全性判断のための指針と、扶助基準との類似性に対する疑問も当然に予想され抗日 近年では、解釈論上の根拠はさておき、扶助基準に対する裁判所の統制を限界づける見解が、学説および裁判例で つぎのように表わされる。すなわち、学識経験に基づく専門的知見のみで﹁必要 支配的となっている。その主旨は、 な生計﹂の範囲を確定することが不可能であることは、 八

0

年代の需要算定方法の改革経過をみても、もはや疑う余 地はない。事実、扶助基準の設定においては、将来についての予測とともに、諸価値の評価や衡量に基づく政策的な 決定が行われている。したがって、裁判所は扶助基準設定者の判断に自己の判断を代置することはできやす、扶助基準 の適法性について、不確定法概念の具体化のために発布された法規命令の統制の場合と同じく、

BSHG

および扶助 97一一公的扶助行政の法的統制の理論帥・完 基準命令の諸規定に照らして審査することができるにすぎない。これは、州行政庁への扶助基準設定の授権

(

B

S

H

G 二二条三項一文)により根拠づけられる。つまり、ニ二条三項一文は、基準額の算定や設定を行う権限を州行政庁 に付与していると同時に、裁判所が尊重すべき行政庁の判断余地を与えているのである。また、扶助基準の設定にあ たって事前に社会保障について経験をもっ者の意見を聴く機会を設けなければならない、と定める同法一一四条一項 もまた、この判断を裏づけるものである、と。 以上のような考え方が、 八

0

年代末から九

0

年代にかけて下級審裁判例で有力となったことから、連邦行政裁判所 がどのような判断を改めて下すのかが注目されていた。扶助基準の法的性格についての認識の変化を示すものとし て、右の裁判例と同時期にあらわれた現象が、扶助基準の適法性について行政裁判所法四七条に基づく規範審査訴訟 の形式で争われる事例の増加である。通説的見解によれば、同法四七条一項二号にいう に該当するのは、通例は実質的意味での法規命令および条例であって、対外的効力のな

{

Z

R

E

S

-S 三

円 。

-4

R

F

F

B

ロ ] ﹁ 法 規 ﹂ [ 同

R

F

2

4

0

2

n

F

円 以 お ロ ]

(6)

第8巻2号- 9 8 い行政規則は該当しないと解されている。それゆえ、従来行政規別であると理解されてきた扶助基準が右の﹁法規﹂ にあたるかが当然に問題となる。このような事例に関して、連邦行政裁判所は、 扶助基準の法的性格に関する新たな見解を表明するにいたった。 一九九三年一一月二五日の決定で、 ﹁法規﹂概念について、行政裁判所法四七条の制定経過、当時の学説の状況、 同 裁 判 所 は ま ず 、 および法の明確性 や訴訟経済という同条の趣旨・目的に照らして、これを広義に解すべきであるとして、法規命令の形式をもたない場 合でも、社会扶助法における扶助基準のように、国民に直接及ぼされる対外的効果を法が付与している(抽象的かっ 一般的な)行政府の規律もまたこれに含まれる、と判示する。 そのうえで同裁判所は、右の判断の論拠を示すために、

BSHG

二二条および同条二項に基づく扶助基準命令にお ける扶助基準にかかわる諸規定を概観する。すなわち、まず、扶助基準に関する

BSHG

二二条一項の規定は、経常 給付の対象となる通常需要が要扶助者一般に同じように生ずることに鑑み、扶助を個別的に算定するという個別性原 則を一定範囲で逸脱し、給付の程度に関する裁量を排除して、金額上一括して確定することが合理的であるという立 法者の考えに基づくものである。 つぎに、扶助基準の対象となる個別具体の需要の確定、 および扶助基準の構成・基 本事項については、扶助基準命令が規定をおいている。さらに、 設定に際しての考慮事項が規定されるほか、一一四条一項では、社会保障について経験を有する者の意見聴取手続に 関する規定がおかれている。

BSHG

二二条三項で、扶助基準の設定権限および 同裁判所は、これらの規定を総合的に考慮することによって、扶助基準が法規命令として制定されるのでなくたん に告示として設定されている場合でも、社会扶助主体の決定を媒介することなく直接国民の権利に対する法効果が、 法律により扶助基準に付与されているという結論を導き出しているのである。同裁判所の説明によれば、扶助基準が、

(7)

個別性原則の妥当範囲を縮小して、通常需要について一律の回定額を確定するという機能をもつことが法律上意図さ 扶助要求者に対する拘束的効果[盟主

E

官 ・

1

g m ]

を付与され、通常需要にかかる給付請求権に対し直接完結的な内容を与えるのである。 れていることが明らかであって、 ま さ に こ の 機 能 に よ り 、 扶 助 基 準 は 、 さらに連邦行政裁判所は、右の決定と同日に出された判決のなかで、扶助基準の法的性格について同様の考え方を 一 京 す 。 そ の う え で 、

BSHG

および関係法令の諸規定により、行政にはその価値評価に依拠して扶助請求権の一般化 -類型化・一律化を行う権限が与えられていることを認め、このような判断から、裁判所の統制が制限されるという (円 M ﹀ 結論を導き出している。 以上みたように、連邦行政裁判所もまた、扶助基準を設定する州行政庁に最終的な判断権が存することを明確に認 つまり、扶助基準が、原則として裁判所の全面的な審査の及ぶ、個別性原則に依拠した社会扶助主 め る に い た っ た 。 99一一公的扶助行政の法的統制lの理論帥・完 体の判断を排除して、通常需要にかかる生活扶助請求権の内容を一般化ないし一律化ずる効果を有すること、またそ の設定においては、科学的判断のみならず政策的価値判断が必然的に介在することに鑑み、法規命令の形式上の要件 を充たさないにもかかわらず、扶助基準は法規命令に類似した効力をもち、一定の限界内で裁判所を拘束することを、

BSHG

自身、が認めていると解するのである。このような

BSHG

の意図が看取される規定として挙げられているの が、州行政庁に対する扶助基準の授権規定や、その設定に関するその他の実体的および手続的な規定である。連邦行 政裁判所は、右判決で、﹁規範具体化規則﹂の理論を打ち出した一九八五年二一月一九日判決に全く言及していない が、従来行政規則と解されてきた基準ないし指針に関して、政策的価値判断に基づく行政庁の判断の優先性を正面か ら認めたという点では、両判決はその位置づけにおいて共通する。

(8)

第8巻2号一一100 いまや右の見解が裁判例で支配的となったことから、扶助基準に対する司法上の統制が、今後より一層緩和される ことが容易に予測されよ一羽もっとも、裁判所の審査が制限されるという立場を前提としながらも、扶助基準設定に かかる行政庁の判断過程および設定手続に着目した統制方法を提唱する学説がみられる。この見解は、第一章で述べ た連邦行政裁判所一九六六年一一月三

O

日判決で示された審査基準、同判決の言葉を用いるならば﹁ふさわしい注意 を払って手続が行われたか否か﹂という基準を、環境法分野における行政決定の統制基準を手がかりとしてより具体 化することを試みる。 ﹂ れ に よ れ ば 、 つぎのような司法審査の基準が示される。すなわち、①行政は、その決定を、適切にして注意深く 調査された事実に基礎守つけているか、②法律上のすべての目的に適合し、基準および制限を遵守しているか、③決定 に際して適切な考慮が行われているか、④決定は相当な需要算定方法に依拠しているか、⑤相応の手続が践まれ、手 続の暇庇が回避されているか、⑥採用された需要算定方法は守備一貫して用いられているか、⑦需要の見積りないし 評価を支える観点が公表され明瞭となっているか、⑧専門的知見に基づく認識の不確実性が考慮されているか、であ る 。 右の学説の影響を受けて、扶助基準の設定に先行する需要算定過程を視野に入れ、そこでの行政庁の認識や評価の 誤りを原因に、扶助基準設定行為を違法とした判決があらわれた。 ま ず 、 ヘッセン上級行政裁判所一九九一年二月二

O

日の決定が挙げられる。ここでは、 一八歳から二五歳の単身者 の基準額を、この年齢層以外の世帯主および単身者の基準額の一

O%

を削減した金額とした、 ( 却 ) 告示の形式をとる扶助基準の適法性が争点となった。同裁判所は、扶助基準の設定については告示の形式をとるもの その設定者には最終的な決定権限が与えられているので、裁判所による統制は限定的にしか及ばないと述べて、 ヘッセン州社会保障省 で も 、

(9)

上述の裁判例と同じ立場に立つことを表明した。そのうえで、同裁判所は、州社会保障省による右の年齢層の基準額 の算定過程を審理の対象としたほか、その基準額の算定の仕方が、本稿第三章で述べた基準額算定方法の改革をめぐ る審議結果に依拠したものであったことから、その審議過程をも視野に入れている。 つ ま り 、 同 裁 判 所 は 、

O%

の 減額算定の正当化理由として、この年齢層の需要が他のそれと比べて小さいという認識を前提としていなければなら ないにもかかわらず、州社会保障省はこれを明らかにしていないし、 また、先行する州最上級社会保障行政庁会議や 州首相会議における審議経過にも、この認識の拠り所を見出すことはできないことを認定する。さらに、 額算定が実際には財政緊縮という政策的考慮に基づくものであることが、右の審議過程から看取されるが、世帯主や

O%

の 減 101 公的扶助行政の法的統制の理論帥・完 単身者の基準額は、世帯運営費一般を酪酌して算定しなければならないのであって、このような政策的要請をその理 由とすることはできない、と述べる。同裁判所は、結論としては、基本法第三条一項に基づく平等取扱いの要請と、 ( 忽 ) 社会扶助法上の必要充足原則の違反ととらえて、本件扶助基準による減額算定を違法であるとしている。とはいえこ こでは、その算定過程のみならず、事実上その根拠とされた各州協議機関の審議における認識や考慮事項をも、審理 の対象とするという方法がとられていることが、注目に値する。 つぎに、前掲リュIネブルグ上級行政裁判所一九八九年一一月二九日判決が挙げられる。ここでは、代替的マ l ケ ヅトバスケットに依拠した扶助基準につき、その基準額の程度が争われた。同裁判所は、上述のように最終的かっ拘 ハ お ︾ 束的に扶助基準を設定する権限が行政に与えられているとして、これに対する司法審査の範囲を限定する。そのうえ つ ま り 、 ( 一 九 八

0

年代の改革論議のなかでその見積りが で、司法審査の基準として上述の①

1

③および⑤を用いる。 少なすぎるとしてすでに問題視されていた)電力消費量が代替的マーケットバスケットに依拠して算定された過程に ついて、右の審査基準を手がかりに審理を行うのである。当時、 ドイツ電力事業者連合の調査結果から判明した単身

(10)

第8巻 2号一一一102 者の一ヶ月の電力消費量の平均値を一

O%

低減した量(二ニ五キロワット)を、基準額を構成する電力需要とすると いう算定が行われていた。このような算定の仕方は、需要算定方法の改革作業にあたったワーキンググループの審議 結果に依拠するものであったため、その審議過程も審理の対象とされた。まず、同裁判所は、別の顧客調査結果によ れば低所得単身者世帯の平均電力消費量が約一五四キロワット時であったという事掲

γ

重 視 し て 、 一三五キロワット 時を低所得単身者世帯の消費実態とする見積りは、そもそも不適切であるがゆえに、その見積りに依拠した扶助基準 ( お ) の決定は

BSHG

一 条 一 一 項 一 文 お よ び 一 二 条 に 反 す る と 判 示 し た 。 右判決は、結論的には実体審理により事実誤認が認められたものとみることもできよう。しかし、同裁判所が、ワ ーキンググループの審議において、他の口回目とは異なり電気代は受給者がいかに節約しても安く抑えることができな いという認識の一致が存在していた事実を重視している点、また、右の審議において一

O%

低減算定の理由として示 されていた、受給者には﹁必要不可欠の﹂需要のみ認められるという見解は十分な根拠とならない、と述べている点 をみるならば、需要算定過程に即して右の審査基準に従い審理を行うことによって、行政庁の認識・判断の過誤を認 めたものと解することができよう。 そのほか、本判決では、扶助基準設定手続に本質的な暇庇があったこともまた肯定されている。 つ ま り 、

BSHG

一一四条に基づき、事前に社会保障について経験のある者(とくに要扶助者の世話を行う団体または社会保障受給者 団体の代表者)の意見を聴かなければならないが、本件で争われている扶助基準の設定にあたってこの意見聴取が実 ( 訂 ) ( 咽 品 ﹀ 際には行われていなかった事実が認められている。 右の二つの判決では、扶助基準が一定範囲で裁判所を拘束することが認められ、扶助基準の司法審査の範囲を限定 する立場がとられる一方で、上述の学説の影響を受けて、具体的な需要算定過程に着目した基準を用いた審理を行う

(11)

ことによって、結果的にはむしろ実体審理に近い統制が行われている点が注目される。 右の裁判例にみられるような扶助基準の審査方法をとることを否定したのが、前掲リュ l ネブルグ上級行政裁判所 一九八九年一一月二九日判決の上告審判決である連邦行政裁判所一九九三年一一月二五日判決である。ここでは、 ぎのような審査方法がとられている。すなわち、

BSHG

および扶助基準命令の関連規定は、扶助基準の設定につき、 一般化、類型化および一律化を行う権限を、行政庁に与えている。このような一般化等には当 ペ コ 事実認定のみならず、 然に価値判断が伴うのであって、その限りで行政庁の判断は代替可能

[ Z

H

E

E

己である。それゆえ、行政庁の判断 が、裁判所の判断に優先するのである、と。 右の判示部分からは、連邦行政裁判所が、自己の立場に行政法解釈論上の位置づけを与えるために、いわゆる代替 ( 羽 ) 可能性説に依拠したものであるか否かは、必ずしも明白ではない。いずれにせよ、その立場からの審査の結果、需要 103一一公的扶助行政の法的統制の理論帥・完 算定過程を視野に入れた原審の詳細な審査に対して、どのような評価を下したのであろうか。 原審は、上述のように、算定基礎とされたものとは別の調査資料に依拠して、単身者世帯の電力消費量平均値の一

O%

低減した量を、扶助基準の対象となる電力需要とした算定は、不適切な事実に基づくものであり、 かっこれにつ き十分な根拠がないと判断した。連邦行政裁判所は、原審の判断を、一

O%

低減算定の基礎となった法的評価そのも のを審理の対象とし、その結論としてこの算定を否定したものであると解したうえで、このような審理は、扶助基準 に対する裁判所の統制の限界を超えているとする。なぜなら、同裁判所によれば、平均電力消費量の一

O%

低減算定 は、代替可能であるからである。 こ の 点 に つ い て 、 さらにつぎのような説明が行われている。すなわち、消費量の平均を下回る値を標準とするのは、 基準額と低賃金層の純労働報酬の平均と差をつけるという

BSHG

二二条三項二文の要請に基づくものである。この

(12)

第8巻2号一一104 -要請により、扶助を求める者は、非受給者と比較した場合の自己の経済上の不利益を、経済的かつ節約的な行動をと ることにより調整するよう要請される。したがって、平均的な水準の生活を送るための資金を与えることは社会扶助 の目的ではなく、むしろ経済的な弱者にあたる階層の消費水準を標準としたつつましい生活を送るために必要な金銭 が支給されるにすぎない、と。 つまり、同裁判所は、二二条三項ニ文の要請を考慮して、 一 o v m 低減算定にかかる行政庁の政策的判断を尊重しな ければならないと判示したのである。その判断においては、

BSHG

二一条一項の﹁必要な生計﹂の解釈において、 需要算定に際して低所得層の消費水準を考慮しなければならない(すなわち低所得単身者世帯の電力消費量を標準と する)という原審の解釈をどのように考えるのかは明確に示されていない。しかし、二二条三項二文に言及した右の 判示部分からは、電力需要にかかる行政庁の判断余地が広く認められることによって、原審の標準とする低所得世帯 における消費量よりも少ない見積りを行政庁が行っても、同裁判所によれば、その判断は代替可能とされる。 さらに本件では、扶助基準設定手続における暇疲の有無もまた争点となった。原審は、州社会保障大臣が

BSHG

一一四条一項に基づき扶助基準の決定に際し事前に社会保障につき経験を有する者(本件では州民間福祉事業者団 体﹀の意見を聴取しなかった点について、本質的な手続上の暇庇を認めていた。これに対して、連邦行政裁判所もま た同条同項の違反により扶助基準設定行為が違法となる余地を肯定するが、本件においてはこれを否定する。つま り、同裁判所によれば、本件扶助基準の依拠した代替的マーケットパスケ y ト作成を担当した上述のワーキンググル i プの審議に、各州の福祉事業者団体の利益を代表する連邦民間福祉事業者団体からその代表者が参加していた。こ の団体は、各州の扶助基準設定状況に関する情報を入手しており、 一 九 八 四 年 一

O

月 に は ニ I ダ l ザクセン州首相宛 てに文書を送り、そのなかで本件扶助基準について意見を表明していた。この事実のもと、聴取対象者の人数・資格

(13)

-手続上の地位や意見聴取の方法などの手続の細目が、同法一一四条一項およびニl ダ Iザクセン州

BSHG

施行法 上の関連規定から明らかでないことをもあわせて考慮すれば、扶助基準の設定手続にソ l シャルワークの経験を取り 入れるという同規定の目的を実現するには、州社会保障大臣は必ずしも州民間福祉事業者団体の意見を事前に聴取す る必要はなく、連邦民間福祉事業者団体の意見を右のようなかたちで認識することのみで可能である、というのであ る 。 連邦行政裁判所の述べるように、たしかに一一四条一項は、手続の細目については規定していないが、扶助基準の 105一一公酌扶助行政の法的統制の理論帥・完 設定に先立ち社会保障について経験を有する者の意見を聴かなければならないと規定しており、しかも、要扶助者の 世話を実施している団体を聴取の対象者として例示している。まさにこれに該当する州民間福祉事業者団体の意見が、 すでにワーキンググループの審議等で表明されている連邦レベルの団体の批判的意見と同じであることが予想される という理由で、最終的に聴取されなかったということは、やはり一一四条一項の意見聴取手続を全く欠いていたもの といわざるをえない。連邦レベルの団体の意見聴取をもって州レベルの団体のそれに代えることが許されるか否かに ついては、各州に委ねられた扶助基準の設定においてはその州で活動している福祉団体の意見を聴くのが肝要である。 現にバイエルン州やプレ l メン州などいくつかの州の施行法では、これが要求されてい硲ごとからも問題が残る。ま た、八五年七月一日付の扶助基準告示の前年一

O

月の州首相宛て文書での連邦団体の意見表明を、本件扶助基準にか かる一一四条一項の州行政庁による意見聴取とみなすことも、やはり無理があろう。それにもかかわらず連邦行政裁 一一四条一項違反が扶助基準設定行為の違法をもたらす場合をきわめて例外的なものと考 判所がこれを認めるのは、 ぇ、その手続上の意義をほとんど重視していないためであると考えられる。

(14)

第8巻 2~5--一一106 以上みたように、 いまや連邦行政裁判所は、扶助基準の設定において、法規範の制定にみられる一般的・包括的規 範の定立に伴う政策的価値判断が介在することを認め、これを尊重するという立場を示すにいたった。 つまり、扶助 基準の法的性格についての認識を変更し、これが(法令上の例外を除き)通常需要の充足のための経常給付に対する 請求権の内容を直接定めるという意味で、扶助要求者に対して法的拘束力をもつことを明示したのである。 他方、右のような扶助基準の法的性格を認めつつ、現行需要算定方式による算定過程に着目して審査基準を具体化 する学説および下級審裁判例は、現行方式に依拠した扶助基準の設定について有効な司法的統制の方法を提示するも のとして、注目すべき見解である。もっともこれに対して連邦行政裁判所は、右の審査基準を用いた審査、とくに需 要算定を支える観点如何にかかる審査が、実体審理にかなり近いものとなり、行政に委ねるべき政策的価値判断に抵 触する場合の生ずることを示した。もっとも、同裁判所は、扶助基準に対する審査方法についての詳細な説明のない まま、行政庁の判断の余地をより広く解している。 次節では、連邦行政裁判所が扶助基準の法的性格の変化を承認したことに関連する、その適用範囲についての認識 一時給付をめぐる裁判例への影響を、検討の対象とする。 の 変 化 と 、 ( 1 ) U O , ︿ 忌 由 。 ・ 町 田 少 白 血 叶 内 ・ そ の ほ か 、 扶 助 基 準 の 設 定 行 為 に つ き 広 範 な 社 会 政 策 上 の 判 断 余 地 を 認 め て 、 こ れ に 対 す る 司 法 審 査 の 限 定 を 正 面 か ら 肯 定 す る 下 級 審 判 決 も 存 在 す る 。 扶 助 基 準 の 改 訂 が 遅 延 し た 期 間 分 の 支 給 額 の 増 額 請 求 を め ぐ っ て 争 わ れ た ブ レ l メ ン 上 級 行 政 裁 判 所 一 九 八 九 年 二 月 一 一 一 日 判 決 で は 、 需 要 算 定 の 方 法 お よ び 基 準 額 に 関 す る 決 定 は 、 行 政 庁 の 社 会 政 策 的 判 断 に 基 づ き 行 わ れ る が ゆ え に 、 扶 助 基 準 の 設 定 が 、 ﹁ 必 要 な 生 計 ﹂ を 確 保 す る と い う 法 律 の 目 的 に 反 す る こ と が 一 義 的 に 明 ら か で な い 限 り 、 司 法 審 査 の 対 象 と は な ら な い と さ れ る ( 明 開 ︿

ω

ω

p

g

8

時 々 。 な お 、 本 件 で は 、 B S H G 二 二 条 三 項 三 文 に い う 扶

(15)

107一一公的扶助行政の法的統制の理論帥・完 助基準改訂の﹁必要性﹂の有無が主たる争点となっており、これについて、同裁判所は興味深い判断を行っている。すなわ ち、同裁判所はたしかに右の判示に基づき、これに係る行政判断を尊重して司法審査を限定しているが、代替的マーケット バスケットを導入するにあたり、州最上級社会保障行政庁会議において各州が一九八六年七月一日に扶助基準を改訂するこ とで一致していた事情を重視し、右時点での扶助基準改訂の﹁必要性﹂を肯定している。したがって結論的には、右の時点 以降、原告は扶助基準の改訂に基づき、増額された給付決定を求める請求権を有すると判示している宙開︿

ω

B

-E

ご 。 ( 2 ) 連 邦 行 政 裁 判 所 が 一 九 六 六 年 一 一 月 一 一 一

O

日判決で示した扶助基準に対する司法審査の基準は、一九八五年に暫定的に採用 された代替的マーケットバスケットに基づく扶助基準の適法性に関する司法審査においても用いられている。たとえば、ハ ンブルク上級行政裁判所一九八五年一一月一五日判決では、右基準にほぼ即して、扶助去準についてのつぎのような判断を 行い、結論的にはその違法性を否定した。すなわち、本件で問題となった扶助基準の設定は、代替的マーケットバスケット および実態生計費に関する州統計局の調査に依拠している。前者は、扶助基準命令に従うとともに、学問的知見を基に、扶 助事項につき学識経験を有するドイツ公私扶助連盟の協力のもとに作成され、州労働・社会保障大臣会議による決定を経た のち、各州の扶助基準の設定の基礎として用いられている。また、生計費の調査についても環庇は認められない

( E

W

︿ ω 臼 印 ・ N 由 印 w M 叶 C ﹀ 。 ( 3 ) 同 裁 判 所 は 、 連 邦 行 政 裁 判 所 一 九 六 六 年 一 一 月 一 一 一

O

日判決の見解を、﹁予め行われた専門家鑑定﹂説と位置づけている。 国 ・ 山 口 同 O 回 目 印 。 H 由 由 0 ・ 凶 ∞ ・ ︿ 4 ) 宮崎。回目印 O H 3 0 ・ N 由 ・ ( 5 ) ﹀ 片 岡 - m p の m H -n v z w r m 開 。 口 同 円 。 -z a m 円 河 町 間 色 由 曲 、 同 N P N 片 岡 叩 回 申 ∞ P N C O 同 ・ ( 6 ) 原子力法上の許可の要件には﹁災害に対する事前の配慮﹂という不確定法概念が用いられており、その解釈に関連して、 許容被爆線量の値が遵守されるかどうかの判断に関連して、連邦内務大臣が指針を定めていた。連邦行政裁判所は、同判決 で、この指針が規範を具体化する機能を有し、規範によって与えられた限界内で裁判所を拘束するとして、原子力発電所の 安 全 性 に つ い て の 行 政 判 断 に 優 先 性 を 承 認 し た 。 ∞ ︿ 巾 門 司 の 開 叶 N U ω 0 0 ・ ω H 由民・同判決および規範具体化規則については、高 橋﹃現代型訴訟と行政裁量﹄七五頁以下および高木光円技術基準と行政手続﹄(一九九五年)七三頁以下を参照。 ( 7 ) 同 ) D ︿ 同 市 山 由 ゲ ∞ 由 一 山 ・

(16)

第8巻2号 108 ( 8 ) 原子力法分野に固有の理論と評価する見解について、国 -E -・ 2 2 5 3 r g r B Z 刊 号 豆 町 ︿ 開 門 司 包 苫 ロ 官 42 宮 町 民 gp Z ︿ 司 N S S ・ K H C T 品 C N を 参 照 。 ( 9 ﹀これに対して、扶助基準が最低生活需要の経常的部分を確定する基準であって、これを下回る基準額の決定が要扶助者に 対してもつ侵害的な意味に着目する考え方があることについて、 ω S E E S F N a 出 訟 の 切 E g w 念 品 同 ・ を 参 照 。 ( 印 ) ︿ 問 ︼ ・ ﹀ 同 N Z アの 2 ・ K F Z -n F 叩 開 。 口 同 H O -叩 門 同 2 ・ 河 町 岡 市 Z S N P N同 司 H 叩 m w A Y N C C 同 ・ 一 ω 同 国 一 巴 自 白 ロ H M W N 岡 山 凶 出 ¥ ω の 切 回 申 ∞ ∞ w A H { ) ω 戸 (日﹀この訴訟は、建築法典盲目 E m g E N E n F ] の諸規定に基づき発せられる条例および同法二四六条二項を根拠とする法規命 令のほか、州法が定める限りで、州の法律の下位にあるその他の法規について、これらの法規もしくはその適用により不利 益を受け、または近い将来それを受けるおそれのある者などの申立てに基づき、右法規の有効性を上級行政裁判所が審査す る も の で あ る 。 ( m U ) ω 円F B X ? の ︼ 回 再 認 可 切 ︿ 2 ・ 唱 色 丹 ロ ロ 岡 田 司 円 。 N 冊 目 円 巾 円 F F H H ﹀ 口 出 ・ ( 同 由 也 N ) ・ 列 島 一 Z H J 品 H N ・ (日)同決定より前に、以下の下級審判決ではつぎのような理由により、扶助基準が規範審査訴訟の対象になることが肯定され ていた。すなわち、行政裁判所法四七条一項二号にいう法規は、法規たる性格をもっ一般的な規律であると理解され、行政 規則であっても、その内容および機能に従い、法を補完し、対外的に抽象的・一般的規範として表わされ、それゆえ権利に か か わ る も の も ま た こ れ に 含 ま れ る ( ︿ の 周 回 ・ 当 ・ 回 ・ ︿ - A F ・ 間 - E m W 0 ・ ロ ロ ︿ s u o -g H 吉 岡 O 白

-8

5

8

・ 叶 U H Z H ) ︿ s u o -N 日 ω ) 。 行政規則が、一般的な内容で個人の権利および義務を具体化し、対外的に発せられる、いわゆる行政の補充法[怠口己 D E B -吾 、 開 印 刷 同 ・ m g N E M 岡 田 町 RF 乙である場合、行政裁判所法四七条一項二号にいう法規とみなさなければならない ( C︿ の ∞ B E g

-c

・ ︿ -∞ -P H u u r ロ ロ ︿ 忌 ∞ ゲ ∞ ∞ ω 同 ・ ) 。 ( H ) ロ む ︿ H U m v p h 匹 、 吋 日 同 -H ロ ︿ ∞ - H m x v p h H ω C 同 ・ ( 日 ) ロ ロ ︿ H m x w h H W K 匹 、 吋 印 民 ・ ( 日 山 ) 己 申 J N H 也 市 Y F 品 、 吋 由 ・ ( げ ) Z U ぐ E E ・

5

日 ・

5

a

・これは、規範審査訴訟ではなく、支給決定の取消・義務づけ請求のなかで扶助基準の違法性が主張 さ れ た も の で あ る 。 (鴎)その一例として、前掲パ l デン・ヴュルテンベルク上級行政裁判所一九九

O

年五月四日決定が挙げられる。同裁判所は、

(17)

109一一公的扶助行政の法的統制の理論帥・完 本文で要約した判示部分を受けて、扶助基準についてはつぎの点に関する審査をなしうるにすぎないとする。すなわち、扶 助基準の算定手続が法治国原理に反するか否か、明らかに不適切な事実上の基礎に依拠しているか否か、怒意的かつ不合理 な区別が含まれるか否か、および結論が法の目的を損なうことが明白であるか否か、である(ロロ︿

E m W

0

S

A

y

s

g

。 ( 悶 ) ∞ Z E H H M 印 ロ P N 同 m 山 田 ¥ ω の 切 忌 ∞ ∞ ・ 品 印 叶 ・ ︿ m -- H M -H ・ 吋 刊 丹 江 口 問 冊 子 C σ R -m m ロ ロ 間 2 M N Z 巾 山 口 巾 ロ 岡 田 門 回 目 宮 山 田 可 恒 三 ︿ 閉 口 ︾ H M g 間 口 C 白 ? 名 目 。 -S E B ︽ w U J 可 思 ・

s

g

u

N H W

N

叶・なお、③の基準については、原子力施設の安全性の判断において不確実性が考慮され ているかという審査基準のアナロジーがみられるが、これは、すでに連邦行政裁判所が一九六六年一一月三一

O

日判決で示し た、﹁必要な生計﹂需要の算定においては完全な統計資料が存在しないことに鑑み、行政庁の認定につき許容範囲が一定限 度で認められるという判断を取り入れたものでもある。 (柏山 ) Z U ︿

52

M g

・二三歳の単身受給者が、扶助基準の当該規定に基づく給付決定の違法性を主張して、行政裁判所法二一 三条に基づく仮命令を申し立てた事案である。 ( 幻 ﹀ H A ロ ︿ 同 市 v m v y N 日 1 0 ・ (詑)そのほか、この減額算定について同様の判示を行ったものに、フランクフルト行政裁判所一九九

O

年一一月二日決定 ( 宮 崎 O 包 田

D

E

g

-N

H

3

、ハンブルク行政裁判所一九八七年三月六日決定

( N

弓忌∞

F53

が あ る 。 ( お ﹀ 山 口 向 。 包 曲 。 H 由 U0 ・

N

P

N

∞ 同 ・ ( M ) これをめぐる当時の議論については、本稿第三章第二節を参照。 ( お ) 叶 由 円 F O 叩 ℃ PZU ︿ 冨 ∞ F s y m n z -F O E -Z U︿

53

5

叶・これらによれば、電力消費量は所得に比例せずむしろ低所得 階層の方が平均より消費量が多いという調査結果が、当時公表されていた。 ( m m ) 宮 崎 O 即 日 出 。 HU 由 0 ・ MmvR ( 幻 ﹀ 山 口 同 D 田 -g H S c ・

g

-ニ l ダ 1ザクセン州社会保障大臣は一九八五年六月四日付けで-一l ダ lザクセン州民間福祉事業団体 に対して本件扶助基準についての意見を求めていたが、七月一日にはこれを施行しなければならないという時間的理由と、 同団体が否定的な見解を一示すことが予想されたという事情から、結局その意見を聴かないままこれを決定し、施行していた。 (お)結論として同裁判所は、原告につき給付決定を再度行うことを行政庁に義務づける判決を行った。古

F

S

H

S

0

8

F

( 却 ) Z U ︿ 包 ∞

P

Z

印 ・ 呂 町 ・

(18)

第8巻 2号一一-110 ( 鈎 ﹀ ( 引 品 ) ( 担 ) ( お ) こ の 学 説 の 詳 細 に つ い て は 、 田 村 ﹃ 自 由 裁 量 と そ の 限 界 ﹄ 一 四

O

頁 以 下 お よ び 高 橋 ・ 前 掲 書 一 一 二 一 良 以 下 参 照 o

z

u

︿ 忌 ? ? 広 町 ・ ZU ︿ HUmvpH 日 一 Y H 日 吋 ・ F H U 一 関 ¥ 切

ω

F A F ・ ﹀ 口 出

-G

3

3

・ 四 HH 品 河 N -N A 肝 を 参 照 。 第二節 扶助基準の適用範囲と、 一 時 給 付 ﹁必要な生計﹂需要のうち、大部分の要扶助者に一定期間繰り返し生ずることが予想される すでに述べたように、 一律に一括して算定することが合理的であるとして、扶助基準に基づき需要認定および給付が 通常需要については、 行われる。他方、これ以外の需要、とりわけ個別事情に応じて生ずる需要については、社会扶助主体の算定する一時 給付が

BSHG

一一一条に基づき行われる。一九八

0

年代の裁判例において一時給付にかかる﹁必要な生計﹂概念に関 する解釈論が蓄積されるにつれて、扶助基準に依拠しない当該給付の範囲を拡大する裁判例は、扶助基準の適用範囲、 一時給付との区別をめぐる学説上の論議を招来することとなった。 換言すれば、扶助基準に基づく経常給付と、 この論議の典型的なものが、比較的規模が大きく高価な子ども向け玩具の調達にかかる需要について、これを、扶 助基準の対象として包括的に算定された経常給付の金額にすでに算入されているとみなすのか、あるいは個別事例に 一時給付をつうじて充足しなければならないか、という問題をめぐる見解の対立である。 即 し て 需 要 を 認 定 し 、 ら な い 、 比較的安価な玩具の調達にかかる需要については、従来より扶助基準の対象とされてきた。他方、これにあてはま より高価な玩具が問題となるわけである。

(19)

そもそも一般的に玩具が、子どもの﹁必要な生計﹂に該当するか否かについて、これを認めたリュ 1 ネブルク上級 行政裁判所一九八六年九月一

O

日判決およびハンブルク上級行政裁判所一九八七年二一月一七日決定をみておこう。 ま 、 ず 、 前 者 に よ れ ば 、

BSHG

一二条にいう﹁必要な生計﹂概念の解釈においては、

BSHG

一条二項一文で規定 されている社会扶助の目的を考慮に入れなければならず、 また、支配的な生活習慣、とくに低所得層のそれを酪酌し なければならないという一般論を前提に、玩具についてつぎのような判断が示されている。すなわち、子どもの年齢 に応じてささやかな範囲で備える玩具は、もはや特別の楽しみのためのぜいたく品ではなく、 日用品であると理解さ れる。子どものための玩具の購入は幅広い層でみられるだけでなく、低所得層の生活水準にも合致する。玩具という 個人的需要の充足は、他の物で代替することはできない、というのである。 また、後者によれば、子どもの﹁必要な生計﹂需要にはその成長に伴い生ずる需要などの特別な需要が含まれる、 111-一公的扶助行政の法的統制の理論伺・完 と規定する

BSHG

一二条二項から、成長に伴う身体上の需要のみならず子どもに特有の需要全般が充足されなけれ ばならないことが明らかである。子どもは玩具での遊びを日常的に行うこと、及びこれをつうじて周囲の世界を理解 し、またその人格を発展させるという玩具の役割に鑑み、その調達にかかる需要は子どもの需要の中心に位置づけら ﹁必要な生計﹂のなかに、年齢に応じて基本的に備えられる玩具が含まれるのである、と。 れ 、 そ れ ゆ え 、 右の二つの判決の考え方を前提としても、扶助基準に算入されていない玩具について、これにかかる需要が、 時 給付をつうじて充足されるか否かがなお問題となる。これを正面から認めたのが、前者のリュ l ネブルク一九八六年 九 月 一

O

日判決である。同判決によれば、扶助基準命令一条一項において扶助基準の対象として挙げられた﹁日常生 活における個人の需要﹂のなかに、玩具が含まれると解されているが、これに該当するのは、比較的安価で使用期間 が短く継続して補充しなければならないような玩具(たとえば画用紙やクレヨン﹀であ

M

V

本件で問題となった、積

(20)

第 8巻 2号一一112 み木ないしは組立てやフロックというような比較的高価な玩具の調達にかかる需要が、扶助基準の対象でないことは明 白である。しかし、この種の玩具もまた、右に要約して引用した判示部分に照らすならば、 ﹁必要な生計﹂に含まれ ることは疑いない、と。したがって同裁判所は、当該需要を一時給付をつうじて充足しなければならないと結論づけ w G

右の判決では、本稿の第二章で検討したクリスマス手当に関する連邦行政裁判所一九八四年四月一一一日判決で示さ れた、経常給付と一時給付の定義(すなわち、扶助基準に基づく経常給付は、毎月ほぼ同じように生ずる生活需要に ついて定められたものである一方、 一時給付は、個別の事例で臨時に生ずる需要のみを充足するものであるというよ うに狭く解してはならない。 つまり、継続的に生ずるわけではないが、 より長い間隔では年月とともに多かれ少なか れ規則的に生ずる需要もまた、 一時給付の対象となる)が前提とされており、これに従って、当該玩具の調達にかか る需要が一時給付の対象となることが肯定されている。 一時給付の対象をより広く捉える見解がある。つまり、第二章一節でみたように、法令上両給 付の区別に関する統一的な基準は必ずしも明確でなく、また、需要の類型やその発生の頻度、支給の回数に着目した こ の 定 義 に 対 し て 、 区別の基準は無意味であるとして、従来の実務で経常給付の対象とされてきた需要であっても、扶助基準に算入され 一時給付をつうじてこれを充足しなければならな ﹁必要な生計﹂需要である限りで、 い て とし、 す な る い の と で 解 あ さ る官れ 。)る つ 場 ま 合 り に こはー で t主 一時給付について、扶助基準に基づく給付を補完するものであるという概念定 義を与えるのである。この見解によれば、両給付それぞれの対象となる需要の区別についての判断は、ある需要が扶 助基準の対象外であるか否かに関する判断と一致することになる。 他方で、扶助基準の法的拘束力を正面から認めってその及ぶ範囲を法令に依拠して明確に画すべきであるという

(21)

考 え 方 が あ る 。 その主張するところを敷街すれば、扶助基準制度は、最低生活の基本部分の保障と、これにかかわる法的明確性と 平等取扱いという法的要請を確保するものぜある。これにより、要扶助者は自己に帰属する給付を予測することが可 能となる。また、租税法など社会保障以外の分野においても、指針ないし標準として扶助基準の果たす役割は大きい。 こ の 見 解 に 照 ら せ ば 、 一時給付の対象となる﹁必要な生計﹂需要の拡張は、右のような扶助基準のもつ意義を低下さ 一時給付にかかる個別の受給申請の増加に伴って社会扶助主体がその処理に忙殺される事態を招来 しかねない。このような事態は、扶助基準制度の空洞化につながるばかりでなく、これが確立していなかったため現 物給付の形態がとられることの多かった旧扶助法下の実務運用への逆戻りを意味する。なぜなら、

BSHG

の立法者 は、第一に、扶助基準による一律化と規範化をつうじて最低生活水準の保障をより確かなものとすること、第二に、 せ る の み な ら ず 、 11シ一公的扶助行政の法的統制の理論伺・完 個別具体の需要を立証し、または認定しなければならないという扶助要求者、行政機関および裁判所それぞれの負担 を軽減することを、意図していたからであ

M

W

以上のような扶助基準制度の意義についての認識に立脚して、この論 者は、扶助基準を実質的意味での法規命令として性格づけたうえで、その法的拘束力により、社会扶助主体は、扶助 基準命令一条一項で規定されている需要類型にかかる社会扶助については、扶助基準に基づき支給することを義務づ けられるというのである。したがって、ある需要が扶助基準の対象であるか否かを判断するにあたっては、その制定 において、法令上制定者が当該需要を考慮するものとされているか否かが決定的となお山 この見解に従うならば、前掲リュ l ネブルク上級行政裁判所判決は、つぎのような批判を受けることになる。すな わち、子どもの玩具の需要は、

BSHG

一二条一一項にいう﹁日常生活における個人的需要﹂に含まれると従前より解 されてきている。しかも、扶助基準命令一条一項では当該需要類型については他の類型とは異なり対象の規模や価格

(22)

第8巻2号一一114 が限定されていないので、この類型に該当する需要すべてが扶助基準の対象となる。このことから、 一時給付の余地 のないことは明らかである。それゆえ、当該事例で問題となった玩具の調達にかかる需要は、基準額より賄うべきで あって、これを一時給付により充足すべきであるとした同裁判所の判断は不適切である。 右の考え方に対して、前掲リュ l ネブルク上級行政裁判所判決を支持する立場からの反論が存在する。その内容は つぎのようなものである。すなわち、第一に、二一条一項に規定されている栄養・住居・被服等の七つの需要類型は 例示にすぎず、これらに該当しない需要であっても﹁必要な生計﹂需要に当たると考えられるものは、不文の第八の 類型に含まれると解することができる。なぜなら、同条同項では﹁とくに﹂という文言に続いて七つの需要類型が挙 げられており、それゆえこれらは例示と解されるからである。第二に、 一一一条一項の需要類型のうち扶助基準の対象 として扶助基準命令一条一項で列挙された需要類型は、あくまで経常的に生ずる需要であるがゆえに一律に一括して 算定するのが適切かつ合理的であるものに限り、扶助基準の対象となることが明示されたにすぎない。それゆえ、こ れらの類型に該当する需要について、全面的に一時給付が排除されるわけではない。 たしかに、前者の考え方で示されるように、個別性原理に基づく一時給付の﹁受け皿﹂機能が、立法者の意図をや や逸脱して﹁必要な生計﹂需要の充足のために発揮され、その範囲が当初よりも著しく拡張された結果、最低生活水 準の一定部分の明確化・平準化という扶助基準本来の機能を低下させている側面は否定できない。しかしながら、 ﹁必要な生計﹂需要が個別事例で生じているにもかかわらず基準額には算入されていないと考えられる以上、それは 一時給付をつうじて充足されるとする後者の解釈は、必要充足原理および個別性原理により合致したものといえる。 もっとも、後者の考え方につき留意すべきであるのは、ある特定の需要につき、扶助基準によって実際上充足され て い る か 否 か を 、 マーケットバスケ?トを手がかりに判断するという考察方法がとられていることである。このよう

(23)

な 方 法 が 、 八

0

年代前半の経費削減立法とマーケットバスケットの改訂の遅延により基準額の引き上げが抑えられた 状況下で、裁判例における一時給付の範囲の拡張を促したことは疑いない。しかし、ある需要が基準額に算入されて いるかについての審査(該当する品目がない場合は、 マーケットバスケット上の品目で代替可能であるか、当該需要 を充足するためにここで見積もられた量や費用で十分であるかについての審査)は、 マ 1 ケ?トパスケ v トの品目お よびその量、これから導かれる価格の見積りを手がかりとするからこそ容易であった。対照所得層の家計上の包括的 な費目を挙げるにす、ぎない現行の統計モデルに、明確な手がかりを求めるのはもはや困難である。 以上のような玩具論争について連邦行政裁判所がはじめて判断を示したのが、 一 九 九

O

年 一 一 一 月 二 一 一 日 判 決 で あ る 。 115一一公的扶助行政の法的統制の理論倒・完 ここでは、近年の裁判例における扶助基準の法的性格についての認識の変化が、扶助基準の対象となる需要の範囲に 関する判断に影響を及ぼしていることが看取される。同裁判所はまず、玩具にかかる子どもの需要が一一一条にいう かっ﹁日常生活における個人の需要﹂に含まれることを認め硲 w そのうえで、通常需要に ﹁ 必 要 な 生 計 ﹂ に 該 当 し 、 かかる経常給付は扶助基準により支給されると規定するこ二条一項と、これに該当する需要類型を列挙する扶助基準 命令一条一項との関係を重視するならば、扶助基準による通常需要の算定によって社会扶助の給付の明確性および平 等の確保が意図されていることから、扶助基準命令に挙げられた類型に該当する需要はへ法令の明示する例外を除 き)もっぱら扶助基準により算定しなければならず、これにつき一時給付の余地はないと述べる。しかも、当該需要 を充足するのに基準額が不十分であるとしても、一時給付で補完することは許されないとす被つまり、扶助基準命 令一条一項に挙げられた需要類型に該当する需要へ本件では玩具の調達にかかる需要﹀はすべて、その種類、 ( 明 示 の限定のあるものを除いて)価格、発生の頻度にかかわらず、受給者は基準額によりこれを賄わなければならないと い う の で あ る 。

(24)

第8巻2号 116 連邦行政裁判所の判示から明らかであるのは、扶助基準の適用範囲の固定に関して、経常給付の対応する需要は要 扶助者一般に同じように生ずるため給付額を一律に一括して定めるとした、

BSHG

立法当初の算定上の合理性とい う見地か⋮明給付の明確性・平等という規範上の要請に、判断のウェイトが移ったことである。同裁判所は、この要 請を重視して、扶助基準の適用範囲を上述の意味に理解し、これを﹁扶助基準制度は閉じられた制度である﹂と表現 す る 。 このような連邦行政裁判所の考え方に対しては、 つぎのような批判が考えられる。 ま ず 、 従 来 、 一二条一項や扶助基準命令一条一項に挙げられた需要類型は、 一 時 給 たんなる例示と解されており、 付を広く認める下級審裁判例においても、請求にかかる需要が法令上の需要類型のいずれにあたるかは、解釈論上重 要な意味をもつものとは考えられていなかった。従来の解釈を左右する立法改正がなかったにもかかわらず、法令上 の需要類型に該当するか否かが、扶助基準の適用範囲の画定にとって決定的な意味を与えられている点で、右解釈と の整合性が問題となる。 第二に、法令上の需要類型への該当性に関する連邦行政裁判所の判示は、玩具以外の需要についても、従来の裁判 例および実務運用に照らして、必ずしも説得的であるとはいい難い。まず、従来﹁日常生活における個人の需要﹂に 分類されてきた需要、たとえば子どもについては、入学祝日同等の入学時に生ずる費用、生別した親との面会のための 交通費、修学旅行費用に対する一時給付が、連邦行政裁判所の裁判例でも認められているにもかかわらず、右判決を 字義どおりに解すれば、これらの需要についても扶助基準の対象とされ、 一時給付が否定されることになる。 つ ぎ に 、 前掲一九八四年四月二一日判決で同裁判所は、 一時給付の対象となる需要を従来よりも広く解して、 クリスマス期の 需要を一時給付により充足すべきであると判示したが、これには扶助基準の対象であるはずの栄養需要が含められて

(25)

いる。さらに、従来の通説および実務解釈では、 一 時 給 付 が 認 め ら れ て い た 。 ﹁日常生活における個人の需要﹂に分類されていたラジオの購入費 用 に つ い て 、 第三に、必要充足原理および個別性原理に依拠した一時給付の補完機能は、右の判決により明示的に否定されたが、 その結果生ずるであろうより重大な問題は、上述の規範上の要請が重視される反面、﹁必要な生計﹂需要であっても、 ︿ 却 ﹀ 実際上は充足されないまま残されるものが生ずることである。それゆえ、受給者は、基準額を節約して、費用を捻出 することを余儀なくされる。 連邦行政裁判所は、一九九二年一一月五日判決で、﹁日常生活における個人の需要﹂にかかる扶助基準の適用範囲 に関連して、社会扶助の明確性と平等の要請により導かれる扶助基準制度の﹁閉鎖性ないし完結性﹂を改めて肯定す 117一一公的扶助行政の法的統制の理論帥・完 る。もっともここでは、前掲一九九

O

年一二月一三日判決にはなかった修正が施されている。 まず、閉じられた扶助基準の射程内にあると解するには現実に弊害が大きい需要、すなわち上述の入学時の需要お よび修学旅行費用については、﹁日常生活の個人的需要﹂に含まれると解される場合でも、多くの受給者に同じよう に生ずるのでない一時的な需要であるという理由で、一時給付の余地を認める。つぎに、扶助基準命令一条一項に挙 げられる需要類型に該当する物品がほとんど手元にないようなケIスについては、その調達にかかる需要もまた、基 準額で賄うべき需要に当たらないと述べる。つまり、扶助基準命令一条一項に挙げられる需要類型に該当する需要で あっても、そのすべてが通常需要に当たるのではないことが確認されたのである。それと同時に、同裁判所は、通常 需要とは、多数の受給者に同じように生ずる需要であって一時的に生ずるものではないと定義し直し、それ以外の需 ハ 沼 ﹀ 要については一時給付により充足されることを示陵した。ここでは、同裁判所のいう扶助基準制度の閉鎖性が緩和さ

(26)

第8巻2号一一118 れていることが明らかである。 しかし、その反面で、玩目六(本件では赤ちゃん人形)の調達にかかる需要は、基準額により充足しなければならな いとして、一時給付の余地を否定する点で、前掲一九九

O

年二一月一一一一日判決を踏襲する。その理由として、七歳ま ︿ お ﹀ での子どもの受給者の多数に同じように生ずる通常需要であると述べるが、本件玩具の購入の頻度と費用に着目すれ ば、一時的に生ずる需要は通常需要から除外されるという右の判示に照らして、説得力があるとはいい難い。 右判決に一不されるような、通常需要の定義と、具体的需要についての判断との矛盾は、連邦行政裁判所一九九四年 二月二四日判決においても見出される。これは白黒テレピ購入費用につき一時給付が請求された事案であるが、本稿 第二章でみたように、当該需要は﹁必要な生計﹂に該当しないというのが同裁判所の従来の見解であった。同裁判所 は、この間題についての判断を回避したうえで、テレビは、周囲の世界を知り、文化的生活に参加することを可能に す る 、 コミュニケーション、教養、娯楽のための手段であり、これにかかる需要は、 ﹁必要な生計﹂のひとつである ﹁日常生活における個人の需要﹂に含まれるとする。しかしながら、 一二条一項二文にいう﹁周囲との関係の維持お よび文化的生活への参加﹂のための相当な費用は扶助基準により充足されているから、扶助基準制度の閉鎖性ないし 完結性の原則により、一時給付は認められないとし同町 ここで注目されるのは、前掲一九九二年一一月五日判決の通常需要の定義をそのまま用いる反面、テレピがあくま で通常需要の充足のために用いられる物品であるという判断を行っていることである。それゆえ、中古の白黒テレビ の購入費用は他のコミュニケーション手段に比べ高額であるが、これにかかる需要は、扶助基準命令一条一項によれ ば ﹁日常生活の個人的需要﹂に該当する。これは規模や費用にかかわりなく扶助基準の対象となり、扶助基準の閉 ハ お ﹀ 鎖性・完結性により一時給付は認められない。ここには、玩具にかかる判断と同様の論理がみられる。

(27)

なお本件で原告は、テレピが扶助基準命令により扶助基準の対象から除外されている﹁低額でない家財道具﹂とい う類型に該当すると主張も行っていた。現にカ V セル上級行政裁判所一九九二年九月九日決定では、白黒テレビの購 入にかかる需要が統計に示された生活習慣の変化を掛酌すれば﹁必要な生計﹂に該当するという前掲のもと、連邦行 政裁判所判決との抵触を避けるために、これが低額でない家財道具にあてはまるから扶助基準の対象とはならず、従 ハ 世 a u って一時給付が認められるとした。しかしながら、連邦行政裁判所は、右の見解は法規広の体系性に合致しないこと を理由にこれを斥けている。なぜなら、 一二条一項一文で列挙されている需要類型はそれぞれ﹁必要な生計﹂の基本 11与一公的扶助行政の法的統制の理論同・完 的な構成要素であり、ある類型を他の類型の下位または上位に位置づけることはできない、つまり相互に排他的なも のであるからである。したがって、ある消費財がいずれの類型に分類されるかについて判断しなければならないとす る。同判決によれば、この判断は、消費財の機能および典型的な使用目的に基づき行わなければならず、上述のテレ ピの機能・使用目的、およびこれが世帯そのものの運営のために用いられるものでないことを考慮すれば、﹁日常生 円 相 u v 活における個人の需要﹂に分類するのが法令の体系に合致することになる。 右の判決につき留意される点は、まず、消費財の調達にかかる需要については、調達自体の頻度(これはまさに一 時的、臨時に生ずるにすぎない)および調達のための費用の程度ではなく、その機能・使用目的、換言すれば、これ により充足される需要、すなわちテレピであれば情報収集・娯楽、玩具であれば子どもの成長・発達という、まさに 日常的に継続して充足される個人の需要のみに着目して、通常需要に該当すると判断されている点である。このよう な考察方法をそのまま用いるならば、たとえば被服の調達にかかる需要について、身体の衛生・保護・保温のために 日常的に生ずる需要であると解して、一時給付の対象とはならないという結論を導くことも可能となる。 一時給付が否定される理由が、﹁必要な生計﹂に該当しないという判断から、使途の特定されない基準額 つ ぎ に 、

(28)

第8巻2号一一120 を自由にやりくりして購入費用を捻出すべきであるという判断に、事実上変化している点である。テレビ購入にかか ︹ 咽 忽 る需要が、統計モデルによる基準額の算定においても、その費用が算入されていないことは明白である。それにもか かわらず、同裁判所の考えによればこの事実は意味をもたないのである。同裁判所のいう扶助基準の閉鎖性・完結性 の原則とは、個別具体的な需要それぞれを充足する扶助の支給という観念を扶助基準に関して放棄したことの帰結に ほかならない。法令の規定に即して扶助基準の対象となると解される需要については、それが﹁必要な生計﹂に該当 するか否かという問題さえ、もはや審理の対象とはならないわけである。 以上みたように、連邦行政裁判所は、需要算定方式の改革を経た扶助基準の法規範性の承認に合わせて、その適用 範閤を法令上体系的かつ整合的に画定することを試みる。しかしながら、扶助基準の対象となる需要を従来よりも広 げ、かっ一時給付との関係で排他的に捉えることにより、需要充足原理および個別性原理に基盤をもっ一時給付の受 け皿機能を、一定範囲で減殺する効果を生ぜしめている。同裁判所が扶助基準の適用範囲を画する明確な基準を示す ことにいまだ成功していない現在、谷聞に残される﹁必要な生計﹂需要は、今後より一層拡大するおそれがないでは h k

0 4 ト hhv 第一節および本節で明らかとなった裁判例の傾向は、ドイツ統一に伴う経済および財政事情に起因する立法の内容 に影響を及ぼすこととなった。次節では、この点に関連する一九九一一一年の

BSHG

改正内容をみることにしたい。 ( 1 ) ( 2 ) N 同 一 司 H 由 ∞ AYN 印 N-M 印 ω -H 4 明 ︿ ∞ . ω 戸 N ∞ N U N ∞ 由 同 ・

参照

関連したドキュメント

松岡義正氏︑強制執行法要論上︑ 中︑下巻︵大正 ご一丁⊥四年︶

2)行政サービスの多様化と効率的な行政運営 中核市(2014 年(平成

2)行政サービスの多様化と効率的な行政運営 中核市(2014 年(平成 26

2)行政サービスの多様化と効率的な行政運営 中核市(2014 年(平成 26

メインターゲット 住民の福祉の増進と公正かつ効率的、効果的な行財政の運営の実現を行えていない職員・職場

 処分の違法を主張したとしても、処分の効力あるいは法効果を争うことに

This paper aims to elucidate complex ways of inclusion/exclusion regarding the urban poor and citizenship by focusing on a social assistance program as an apparatus for governing the

3 ⻑は、内部統 制の目的を達成 するにあたり、適 切な人事管理及 び教育研修を行 っているか。. 3−1