Kobe Shoin Women’s University Repository
Title
計算論的関連性理論に基づく反事実条件文の解釈
Computational Relevance-theoretic Approach to an
Interpretation of Counterfactuals
Author(s)
松井 理直 Michinao F. MATSUI
Citation
Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin,
No.7:83-101
Issue Date
2004
Resource Type
Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
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Right
計算論的関連性理論 に基 づ く反 事実条件文 の解釈*
松井 理直
ComputationalRelevance-theoreticApproachtoan InterpretationofCounterfa血als MichinaoF.MATSUI AbstractFor solving complex problems in our real world, it is important not only to get ex-plicit information, but also to identify appropriate information by selecting it from a huge amount of knowledge stored in memory. The most important process is to select appropriate knowledge which is essential to interpretation of current infor-mation, and to ignore inappropriate knowledge which is irrelevant. In Relevance Theory, it is claimed that an optimal relevance gives the most appropriate inter-pretation by means of deductive inference. This paper provides a computational method and a quantification of the cognitive relevance based on Relevance Theory and proposes a system of an interpretation of both counterfactual conditionals and `because' -type sentences .
1.序 論 我 々認 知 主 体 の 周 囲 に存 在 す る 情 報 は極 め て 多 様 で あ り、 か つ 流 動 的 に変 化 す る 無 限 の 可 能 性 を秘 め た もの で あ る 。 一 方 、認 知 主 体 の 持 つ 知 覚 ・思 考 ・伝 達 と い っ た 情 報 処 理 能 力 に は 限 界 が あ る 。 した が っ て 、 認 知 主 体 は 周 囲 に存 在 す る 多 彩 な 情 報 の 一 部 分 しか 処 理 す る こ とが で き な い 。 こ う した 限 界 に よ っ て 引 き起 こ され る 問題 を フ レ ー ム 問 題 と い う。 認 知 主 体 は 、 フ レ ・一ム 問 題 を少 しで も回 避 す る た め 、 部 分 情 報 を 手 が か り に 、 可 能 な 限 り安 定 し た 体 制 化 と推 論 を 行 お う とす る 。 ス ペ ル ベ ル と ウ ィル ソ ン に よ っ て 提 案 さ れ た 関 連 性 理 論(Sperber&Wilson,1986)は 、 こ う した 体 制 化 や 推 論 が ど の よ う に行 わ 宰本 研 究 は、 日本学 術振 興 会科 学研 究費 補 助金 ・基 盤研 究(A)「 日常 的 推論 の論 理 と言 語形 式:量 化表 現 、条 件 文、 モ ー ダル表現 を中心 と して」(平 成15年 度 ∼平 成18年 度 、研 究代 表 者:郡 司 隆 男 、課 題 番号15202009) の援助 を受 け てい る。 TheoreticalandAppliedLinguisticsatKobeShoin7,83-101,2004. OKobeShoinInstitutefarLinguisticSciences.
れ る か とい う 問 題 に 対 し、 フ レー ム 問 題 を 可 能 な 限 り回 避 す る た め に 、 認 知 主 体 は 関 連 が 持 つ と思 わ れ る 情 報 の み を処 理 す る こ と に よ り、 実 時 間 に お け る 効 率 的 な 情 報 処 理 を 実 現 して い る と主 張 す る 。 こ こ で 、 関 連 性 を 持 つ 情 報 は 次 の よ う に 定 義 され る 。 (1)a.あ る 事 実 や 刺 激 を持 つ 状 況 が 認 知 主 体 に 表 象 さ れ 、 そ の 表 象 を 「真 実 あ る い は真 実 で あ ろ う」 と して 受 理 可 能 で あ る 時 、 そ の 状 況 を 顕 在 的(manifest) で あ る と い う。 b.あ る認 知 主 体 に お け る 顕 在 的 事 実 の 総 体 を 認 知 環 境(cognitiveenvironments) と呼 ぶ 。 c.認 知 環 境 の 改 善 を もた らす 作 用 を 認 知 効 果(cognitiveeffects)と い う。 認 知 効 果 は(a)新 しい 顕 在 的 事 実(想 定:assumption)の 獲 得 、(b)不 確 実 な 顕 在 的 事 実 の 確 定 、(c)誤 っ た顕 在 的 事 実 の 棄 却 、 に よ っ て もた ら さ れ る 。 d.不 必 要 な コ ス トを 払 う こ と な し に 認 知 効 果 を もた ら す 情 報 の こ と を 、 関 連 性(relevance)を 持 つ 情 報 と い う。 こ の 考 え方 は 、 人 工 知 能 の 設 計 に も重 要 な示 唆 を与 え る もの で あ る 。 しか し、 そ のた め に は 関 連 性 理 論 の 形 式 化 が 必 要 不 可 欠 で あ る 。 関 連 性 理 論 自身 は 、 言 語 学 ・人 類 学 ・心 理 学 ほ か 様 々 な 分 野 に 応 用 さ れ つ つ あ る が 、 そ の 形 式 化 、 特 に連 続 的 な 程 度 を 持 つ 「想 定 」 や 「信 念 」 を扱 うた め の 定 量 的 な 形 式 化 の 研 究 は 始 ま っ た ば か りで あ り、 そ の 詳 細 は ま だ確 定 して い な い 。 本 稿 は 、 計 算 論 的 関連 性 理 論 に お け る 推 論 計 算 の 方 法 を 提 案 す る と共 に 、 そ の 計 算 法 の 日常 的 推 論 へ の応 用 例 と して 、 反 事 実 条 件 文 に お け る 数 学 的 性 質 に つ い て 議 論 を行 っ た もの で あ る 。 2.推 論 に 関 す る 確 率 論 的 計 算 の 背 景 2.1計 算 論 的 含 意 関 係 の 表 現 Marin(1999),Marin(2003)は 、 関 連 性 理 論 の 定 量 的 形 式 化 に 、 確 率 論 に 基 づ く意 思 決 定 理 論 を 導 入 して い る。 意 思 決 定 理 論 は 、 条 件 付 き確 率 を 用 い た 情 報 量 計 算 の 一 手 法 で あ り、 こ の 条 件 付 き確 率 の 技 法 はLo,Sides,andOsherson(2002)に よ る 帰 納 推 論 の モ デ ル 化 に も用 い られ て い る。 以 下 で は 、松 井(2003)で 議 論 さ れ た 一 般 推 論 に 関 す る 条 件 付 き確 率 の概 要 を見 る 。 X→yと い う条 件 表 現 の 最 も基 本 的 な 意 味 は 、 要 因Xが 要 因yの 生 起 に ど の よ う に 影 響 す る か とい う も の で あ る 。 こ う した2要 因 の 関 係 を 定 量 的 に表 す 方 法 と し て 、 数 理 統 計 学 で 用 い ら れ る 回 帰 直 線 の 概 念 が あ る 。 回 帰 直 線 と は 、xとyの デ ー タ の ペ ア が い くつ か 与 え られ た 時 、 な るべ く誤 差 の 少 な い 形 でy=α+βxと い う関 係 式 に 当 て は め た 時 の 直 線 の こ と を い い 、 こ の 式 の β を 回 帰 係 数 と呼 ぶ 。 回帰 係 数 は 回 帰 直 線 の 傾 き を 表 す 係 数 で あ り、xがyに ど の程 度 影 響 を 及 ぼ して い る か を示 す 係 数 で も あ る。 図1に 回帰 直 線y=β κの 回帰 係 数 β を 変 化 させ た 時 の 直 線 を示 す 。 回 帰 係 数 が 小 さ け れ ばx軸 に 近 づ き、 回帰 係 数 が 大 き く な る に従 っ てy軸 に近 づ くこ とが わ か る 。
計 算 論 的関連 性理 論 に基づ く反 事実 条件文 の解 釈 85 (a) (b) (c) 図1:回 帰 係 数 と要 因 の 関 係 こ の 回 帰 直 線 の 性 質 を条 件 文x→yに 合 わ せ て 考 え て み る と、 回 帰 係 数 がoよ り大 き い 場 合 は 、程 度 の差 こ そ あ れ 、 含 意 関 係x→yが 成 立 し て い る と考 え る こ とが で き る 。 ま た 、β=1の 状 態 で は 、 図1-bか ら分 か る 通 り、 要 因xと 要 因yの バ ラ ン ス の 完 全 に 取 れ て お り、Xか ら予 測 さ れ るyの 値 と、yか ら予 測 さ れ るXの 値 が 一 致 す る一 す な わ ち X→yとy→Xを 同 時 に 満 た し、 同値 関 係X→yが 成 立 す る 。 一 方 、 回 帰 係 数 が マ イ ナ ス に な れ ば 、 要 因xが 強 くな る に つ れ て 、 要 因 一yが 起 こ りや す く な る た め 、 こ れ はx→,y の 関 係 と解 釈 で き る。 な お 、 回 帰 係 数 が0な ら ば 、 要 因yは 生 起 しな い こ と に な り、 単 にxの 真 理 値 がo,す な わ ち 前 件 が 偽 で あ る こ と と等 価 で あ る 。 回帰 係 数 が1以 上 に な っ た場 合 あ る い はT1以 下 に な っ た場 合 は 、 各 々y→x,,y→xと い う条 件 文 にお け る真 理 値 計 算 とな る。 こ れ は 図1-cを 裏 返 して90度 回 転 させ 、 横 軸 に y軸 を 、 縦 軸 にx軸 を持 って くれ ば 直 感 的 に分 か るで あ ろ う。 数 学 的 に は 、 これ は 図1-a と 図1-cの グ ラ フ は 逆 関 数 の 関係 に あ る 。 こ の 数 学 的 性 質 は 、 条 件 文 の量 的計 算 に お い て も保 存 さ れ て い る 。 す な わ ち 、 図1-aはx→yの 計 算 で あ り、 図1-cは こ れ の 「逆 」 の 関 係 で あ るy→xの 計 算 を表 して い る 。 2.2含 意 の 想 定 に お け る 確 信 度 の 計 算 推 論 の 一 般 形 は 、 前 件 と後 件 の真 理 値 に 応 じ て 、 推 論 全 体 が 正 しい か 偽 で あ る か を判 断 す る こ とで あ る 。 こ う し た前 件 ・後 件 に 関 す る確 信 度 を確 率 と見 な した 場 合 、 推 論 の 基 本 型 が ど の よ う な 回 帰 直 線 で 表 現 で き る か を計 算 して み よ う。 今 、2つ の 外 的 要 因1x,Yが 存 在 す る 時 、 各 外 的 要 因 が 成 立 す る場 合(x,y)、 お よ び 不 成 立 の 場 合(max,,y)に 対 応 して 、 表1の よ う な認 知 環 境 が 構 成 可 能 で あ る 。 な お 、 否 定 に 関 し,ヨ は 外 的 要 因 の 不 成 立 を示 し、 そ れ に 対 応 す る 想 定 は上 線 を用 い る こ と とす る 。 こ こ で 、 例。は 外 的 要 因Xが 成 立 す る で あ ろ う とい う想 定 、 囲元はXが 不 成 立 で あ ろ う とい う想 定 、5馬 は外 的 要 因Yが 成 立 す る で あ ろ う とい う想 定 、3{yはYが 不 成 立 で あ る とい う想 定 を表 す 。{図。,図L図y,馬}は 、各 々0か ら1ま で の 数 値 を取 り、 そ の 数 値 は各 想 定 の 「相 対 的 」 な確 信 度 を示 す 。 同 様 に 、{郵η,例 珂,図め,図冴ア}は全 て2つ の 事 象 が 共 1関連性 理論 で は、認 知主 体 が受 け取 る こ う した外界 情報 を顕 示 的情報(ostensiveinfo皿axon)と 呼 ぶ。顕 示 的情 報 とは、 実在 す る事 象 や事 物 あ るい は言 語形 式 に よる 明示 的 な表現 な どに よ り、何 らか の形 で外 界 に実在 と して現 れ る情 報 な どであ る。
表1:構 成 可 能 な全 認 知環 境 後 件(Y) y-1y
合計
前件 σo X ヨX 図測 図 琢 5%図fア タ 【x 5肥元合計
」ηy殉 1 起 した 場 合 の 想 定 に 関 す る も の で 、 各 々 、 前 件 ・後 件 が 共 に成 立 す る 想 定 、 前 件 の み が 成 立 す る想 定 、 後 件 の み が 成 立 す る想 定 、 前 件 ・後 件 と も に 成 立 しな い 想 定 を意 味 す る。 {図η,詔琢,みy,夙 アァ}の値 も、0∼1ま で の 数 値 を 取 り、 各 想 定 の 「相 対 的 」 な確 信 度 を 表 し て い る 。 い ず れ の 値 も、 相 対 的 な 確 信 度 で あ る た め 、 各 想 定 の 値 が0よ り大 き い 場 合 に は 、 強 さ の程 度 の 違 い は あ れ 、 そ の 想 定 に対 応 す る 外 的 要 因 が 何 ら か の 形 で 「正 しそ う」 で あ る こ と を意 味 し、0の 場 合 は そ の 想 定 に 対 応 す る外 的 要 因 が 「絶 対 に 偽 で あ る こ と を確 信 」 し て い る こ と を示 す 。2 2つ の外 的 要 因 が 存 在 す る場 合 、各 事 象 に対 して 認 知 主 体 が 持 つ 想 定 は 、{飢η,み ア,詔む, 図副 の 集 合 で 全 て の 可 能 性 を満 た す た め 、図η+図 が+詔 ヵ+図 冴戸1が 成 り立 つ 。 ま た 、 タ イ プ レベ ル の 事 象xに 対 応 す る想 定 兄.と 、 個 別 の トー ク ン レ ベ ル の 想 定 例 η,例舜 との 間 に5監=興xy+図 琢 が 成 り立 つ 。 同様 に 詔 死=鞠+図 酉,5㍉=5㍉+図 靭,5馬=詔 琢+み フ も成 立 す る 。3 次 に 回 帰 係 数 、 す な わ ち 条 件 の 想 定 に お け る確 信 度 を 実 際 に 計 算 して み よ う。 こ の 表 の 元 で 、 「xな ら ばyで あ る 」 と い う言 語 表 現 に よ り もた ら さ れ る 想 定 図 κ→Yの 強 さ(Y のXへ の 回 帰 係 数)は 、 変 数X,Yの 共 分 散Cov(X,Y)をXの 分 散V(X)で 割 る こ と に よ っ て 求 め ら れ る。 今 、 事 象Xとyが 顕 示 的 で あ るの で 、Xに 確 率 変 数X=1,ヨXに 確 率 変 数 X=0,yに 確 率 変 数Y=1,,yに 確 率 変 数Y=oを 当 て は め る と、 各 変 数 の 確 率 はP(X=1)=囲 糞y+図 舜,P(X=0)=5覗 力+タ{ア ヲ, P(Y=1)=5㌔+図 め,P(Y=0)=図 ゆ+図 酉 と な り,こ こ か ら変 数X,Yの 期 待 値 E(X)=鞠+砺,E(XZ)=砺+砺, E(}り=5㍉+鞠,E(y2)=乳 り+砺, E(XY)=図 剛 が 得 ら れ る 。 し た が っ て,変 数Xの 分 散v(X)お よ びX,Yの 共 分 散Cov(X,Y)は, 2一般 的 に、 あ る仮説 や想定 が 絶対 的 に正 し くなる(想 定 の 確信 度 が1で ある)場 合 は希 であ る。 我hは 、世 界 に存 在す る全 ての 事象 を知 るこ とはで きな いた め、い くら肯 定証 拠 を集 め た ところで 、考慮 されな か ったデ ー タの 中 に否 定証 拠 が存 在 す るか もしれ ない か らで あ る。一 方 、誤 りを確信 す る(想 定 の確 信 度 が0)こ とは、否 定 証拠 が1つ で もあ れ ば よい ため 、容 易 で あ る。 3こ れ らの性 質 か ら、{囲η,5㌦,斑 勾,詔琢}は 、2つ の事 象が 同時 に生 起 す る こ とに関す る 「主 観 的確 率 」 を 表 す と考 えて もよい。
計 算 論 的 関連 性 理論 に基 づ く反事実 条件 文 の解 釈 87 V(X)=E(X2)一(E(X))2 =(図 η+5㌔)一(図 。,+砺)2 =(詔 η+図 癖)((1-(図 η+5鮎)) =(詔 η+詔 が)(興 動+詔 瑚) Cov(X,Y)=E{XY)-E(X)・E(Y) =例 η一(例η+砺)(詔 靭+ゐ ア) =図 η(1-(図 η+研 呼+詔 ヵ))-5㌔ 図 勾 =詔 剛珊 死,一 図 琢例 ヵ とな る。 これ らの 値 を 用 い て,Xのyへ の 回帰 係 数 β,す な わ ち 「Xな ら ばy」 とい う条 件 文 に対 応 す る想 定 詔。→yの 確 信 度 は次 の よ う に求 め られ る 。 (2) 図 π→y= Cov(X,Y) V{X) 図 ηみ ヲー図 琢砺
ガ
耐 図 ヵ カ 侮 切 梱 矧 η 詔 姻酉
枡
琢
陶
π
枡
鞠
馬
π
2.3条 件 付 き確 率 に基 づ く解 釈 (2)に お い て・ 論 砺 の部 分(す な わ 牒 の部 分)は ・分 母 が前 件 が真 で あ る想 定 で あ り、 分 子 が 前 件 が 真 で あ りか つ 後 件 が 真 と な る 想 定 と な っ て い る 。 こ れ は 条 件 付 き確 率 の 計 算 一 す な わ ち 、 前 件 が 真 に な る とい う 条 件 を 「前 提 」 に した 場 合 に 、 後 件 が 真 に な る 確 率 が ど の く らい あ る か を 求 め る確 率 計 算 そ の もの で あ る 。 こ の 性 質 は 、 全 認 知 環 境 を対 象 に 含 意 計 算 を行 うの で は な く、 関係 の あ る 認 知 環 境 に 状 況 を狭 め て 計 算 を 殉 行 っ て い る と言 い 換 え る こ と もで き る 。 同 様 に、(2)式 の残 りの 部 分 も同様 で 、 渕 ヵ+3{アヲ (すな わ ち 墾)の 計算 は、前提 が偽 に なる条件 を前提 に した場 ,後 件 が真 にな る時 の ∬【死 条 件 つ き確 率 を求 め て い る こ と に な る 。 こ こ で 、aと い う 条 件 の 元 でbが 起 こ る 条 件 付 き確 率 をPψ1の と表 す な ら、 図。→Yは 砺 図 力(3)3{ 涯→Y= 図 η+詔 炉 頂 ヵ+鴎 ア =P(」7【 ッIJ7{x)-P(」7iッ15態) と も表 現 で きる 。 換 言 す る な ら、想 定 み →Yの 値 は 、後 件 の 生 起 に 関 し、 前 件 が どの 程 度 の 制 限 を掛 け て い る の か を 定 量 的 に計 算 し た も の だ と考 え て よ い 。 も ち ろ ん 、 他 の 含 意関 係 も 同様 の 計 算 式 で 計 算 可 能 で あ り,例 え ば,茜 畷 は,例,→x=P(副 剣詔ヲ)-P(詔 王1詔y) と表 現 で き る 。
3.計
算論 的関連 性理 論 にお ける推論 演算
3.1認 知 計 算 に お け る バ イ ア ス 人 間 の行 う推 論 が 論 理 学 の 含 意 計 算 と は異 な る性 質 を 持 つ こ と は よ く知 られ た 事 実 で あ る 。 中 で も、PC.Wasonに よ っ て 見 い だ さ れ たWason選 択 課 題 は 、 人 間 の 推 論 過 程 を考 え る上 で 最 も重 要 な心 理 実 験 の 一 つ で あ り、 「も しxな ら ばy」 と い う条 件 命 題 の 真 偽 を判 断 す る 際 、 人 間 が 条 件 文 のx(前 件)やy(後 件)の 情 報 を ど の よ う に 処 理 して い る の か を調 べ る実 験 で あ る 。 典 型 的 なWason選 択 課 題 の 例 を以 下 に示 す 。 あ る 工 場 で は 、 次 の 規 則 に 従 っ て 、 表 に文 字 、 裏 に 数 字 を 印 刷 した ラ ベ ル を製 造 し て い ま す 。 ・ ラベ ル 製 造 規 則11表 に`∼バ を 印 刷 す る な ら、 裏 は`7'を 印 刷 し な さ い 。1 今 、 こ の 工 場 で 作 ら れ た 次 の よ う な4枚 の ラベ ル が あ りま す 。 ラ ベ ル1,2は 表 が 見 え て お り、 ラ ベ ル3,4は 裏 が 見 え て い ます 。 こ の4枚 の ラ ベ ル に つ い て 、 上 の 規 則 が 守 ら れ て い る か ど う か確 か め る 時 、最 低 限 どの カ ー ド を ひ っ く り返 して 調 べ る必 要 が あ りま す か 。團 團 團 團
条 件 文 を 論 理 学 の 「含 意(implication)」 と して 捉 え た 場 合 、 囚 と 回 の カ ー ドを 選 択 す る と正 解 に な る 。 しか し、 実 際 に は か な りの 被 験 者 が 囚 と 回 の カ ー ドを選 択 し て し ま う。4こ の タ イ プ のWason選 択 課 題 に お け る正 答 率 は 大 学 生 で も極 め て 低 く、 ほ ぼ 20%前 後 の 正 答 率 しか 得 ら れ な い こ とが 多 い 。 しか し、 興 味 深 い こ とに 、 ほ ぼ 同 じ よ う なWason選 択 課 題 で あ っ て も、 実 験 事 態 に よ り正 答 率 が 劇 的 に 上 が る こ と も よ く知 られ て お り、 例 え ば 松 井(2003)は 、 与 え られ る カ ー ドの 種 類 や 提 示 さ れ た 文 章 の 中 に 、 前 件 肯 定 ・後 件 否 定 の 情 報 が 顕 示 的 情 報 と して 現 れ て い る 場 合 、 カ ー ド選 択 の 正 解 率 が 大 き く上 昇 す る こ と を 実 験 的 に 示 し て い る 。 こ う した 心 理 実 験 は 、 認 知 主 体 に与 え ら れ た 情 報 に よ り推 論 過 程 に偏 りが 生 じる こ と を 意 味 して い る 。 こ れ ま で に こ の よ う な偏 り を 生 じ させ る認 知 的 バ イ ア ス と し て 、 確 証 バ イ ア ス(Wason,1966)や マ ッチ ン グ バ イ ア ス(Evans&Lynch,1973)、 関 連 性 の バ イ ア ス(Sperber,Cara,&Girotto,1995)な どが 提 案 され て い る 。 4後 述 す る よ う に、 条 件 文 を 「同 意(equivalent)」 と し て 解 釈 した 場 合 は 、 全 て の カ ー ド を選 択 す る の が 正 解 に な る 。計 算 論 的関連性 理 論 に基 づ く反事実 条件 文 の解釈 89 3.2認 知 的 バ イ ア ス を持 つ 推 論 計 算 の 一 般 形 こ れ らの バ イ ア ス の 意 味 す る と こ ろ は互 い に異 な っ て は い るが 、 い ず れ の バ イ ア ス も、 世 界 に 明 確 に現 れ た顕 示 的 情 報5が 人 間 の 推 論 行 為 に影 響 を 与 え る とい う点 で 共 通 して い る 。 そ こ で 、 こ う し た 人 間 の持 つ 認 知 的 バ イ ア ス の 影 響 を 、(3)式 に係 数 と して 付 加 した 推 論 計 算 の 一 般 形 を以 下 の よ う に定 義 す る 。 (4)詔 。→,=kx・P(図,1図 。)一侮 ・P(詔,陶 渕η 詔 轍 kx.-kx一例 xン+3[xy 珊靭+5配酉 (4)式 に お い て 、k.はxが 成 立 す る 場 合 の顕 示 的 情 報 を どの 程 度 考 慮 に す る か 、k;;はxが 成 立 しな い 場 合 の 顕 示 的 情 報 を どの 程 度 考 慮 す る か とい うバ イ ア ス を 意 味 す る係 数 で あ る 。 フ レ・一ム 問 題 に お け る フ レ ー ム の 大 き さ を 決 定 す る もの とい っ て も よい 。 い ず れ の 係 数 も 、0≦ 暇 ≦1,0≦kx≦1を 満 た し、 値 が1の 時 は 関 連 情 報 を 完 全 に考 慮 す る こ と を 、 値 が0の 時 は 情 報 を 参 照 し な い こ と を 意 味 す る 。 3.3論 理 空 間 の 充 足 と 分 割 xの 係 数 と 同 様 に 、yに 関 す る 情 報 の 参 照 度 数 を 表 す 係 数kykyを 導 入 す る と 、2つ の 外 的 要 因 に 関 す る8種 類 全 て の 推 論 計 算 を 表 現 で き る 。(5)に 全 て の 演 算 を 示 す 。 (5)1・ み →Y=丸 π・P(珊 ン1図。)一"':5'・P(乳牌 量〕 鞠 一 '*.4,鞠 =kパ 』h+ン{π, ン{測+図 ル 2.,}{y→x=kyP(み1、 タ{y)-ky・P(、 タ{xl、頭 ヲ) 3騒 例 η =ky 一 侮 ・ 調 サ+5η 茸ア 図 測+詔 靭 3.図 ッ麻=kジP(み1図y)一 齢 ・P{測 ヨ1勾) =ky・ 轟 鞠 一無 ・轟,F 4・ 」7【王→y=kx・P(5{ジ1ご7i王)-kx・P(詔 ッ15πκ) ∬ カ タ{測 =kx-]Zx. 研 靭+・Xy ∫ 【η+・頭 呼 5・ み →Y=kx・P(飢 ヲ13{王)-kx・P(図 ヲ1み) 例 元, ∬ 【炉 =磯 ・_kx. 5㌔+ゐ ヲ9【xy+埆 【sy 6・ ご7{Y→x=ky・P(5覗 元1ご7{ア)-ky・P(ご7{元1甜y) 図 元ア 図 力 =ky-kプ ∫【呼+タ{王 ヲ 詔 η+タ{カ 5実 際 の 刺 激 や 事 物、 言 語 表 現 な ど、 認 知 主 体 に 受 け 取 ら れ た 実 在 物 と考 え て よ い 。
7・A→Xニky・P(ご 荊【π1図,)一 ち ・P(興 己5ヌ{,) 訊" 図 が 一ky. ニk-y 皿 Ψ+珊 勘 甜 炉+甜 炉 8・5職 →ヲ=kx・P(、 タ{ア14iκ)-kX・P(図 ラIJ7{元) 図 晒 詔 が =kX-kx 詔 η+図 ゆ3秘+み ヲ (5.1)∼(5.8)式 の 形 か ら、 これ らの 式 は2要 因x,yか ら構 成 さ れ る 心 的 論 理 空 間 を 反 時 計 回 りで 分 割 して お り、 こ の8種 類 で 全 論 理 空 間 を完 全 に充 足 し て い る こ とが 分 か る 。 そ の様 子 を図2に 示 す 。45度 の 斜 め 線 上 に ポ イ ン トさ れ る想 定 副 は 、 そ れ が 完 全 に 「真 」 で あ る と確 信 で き る もの で あ る こ と を意 味 し、X軸 ・Y軸 上 に 乗 る想 定 は推 論 に お け る 前 件 そ の もの が 成 立 し得 て い な い 境 界 事 例 で あ り、 推 論 と して 「偽 」 で あ る こ と を示 す 。 そ れ 以 外 の 空 間 に ポ イ ン トさ れ る想 定 は 、何 らか の形 で 「真 で あ る可 能 性 を持 つ6」 と考 え ら れ る も の で あ り、45度 線 に 近 い もの ほ ど、 「真 に ち が い な い 」 とい う確 信 度 の 高 い 想 定 で あ り、 軸 に 近 い もの ほ ど 「真 か も し れ な い」 とい う確 信 度 の低 い 想 定 と な る 。 Y 薫 5可ン→x 副 ッ→x 詔 売→y 側x→y r 詔 死→y 例 π→Y 詔 ヲ→x 図 ヲ→x X 図2:論 理空 間 の完全 充足 と分 割 3.4論 理 へ の 適 用(1):完 全 性 解 釈 と可 能 性 解 釈 形 式 論 理 学 にお け る 推 論 形 式 に は 、含 意(implication)お よ び 同 値(equivalence)の2種 類 が あ る 。(5)式 に示 した 人 間 の 推 論 計 算 の 一 般 式 は 、 あ る特 殊 な 条 件 下 に お い て 、 こ の 含 意 あ る い は 同 値 を表 現 す る こ とが で き、 そ れ に 対 して 妥 当 な 意 味 解 釈 を与 え る こ とが 可 能 で あ る 。(5.1)式 を例 と して 取 り上 げ、 推 論 計 算 式 か ら論 理 を導 出 す る過 程 を見 て み よ う。 6X軸 ・Y軸 を越 えた事 象 か ら見 る と、 「程度 の差 こそ あれ後 件 が偽 で あ る と見 な され る」 と解釈 す る こ と も で きる。
計 算 論 的関連性 理 論 に基 づ く反 事 実条件 文 の解釈 91 まず 、 含 意 と同 値 の 違 い は 、 真 理 表2か ら も分 か る 通 り、 前 件 が 偽 で 後 件 が 真 の 場 合 に現 れ る 。 この こ と は 、 論 理 空 間 を全 て 見 渡 した場 合 に 、 含 意 と 同 値 にお け る 「真 」 の 意 味 に違 い が あ る こ と を示 して い る。 す な わ ち 、 前 件 の 真 偽 値 に応 じて 後 件 の 真 偽 値 が 一 意 に 決 定 で きる 同値 計 算 は 、 「正 し い か誤 っ て い る か 」 とい う絶 対 的 な 意 味 を持 つ 完 全 解 釈 で あ る の に対 し、 前 件 が 偽 の 場 合 に は 後 件 の 真 理 値 が 「真 の 可 能 性 が あ る(あ る い は 偽 で あ る と はい え な い)」 とい う意 味 を持 つ 含 意 計 算 は 、 可 能 性 解 釈 を行 う演 算 とい う こ とが で き る。 表2:含 意 お よび 同値 の真理 値 Xy X→y X← 》y
真
真
真
真
真
偽
偽
偽
偽
真
真
偽
偽
偽
真
真
こ の 可 能 性 解 釈/完 全 解 釈 の 違 い を 、(5.1)式 に よ っ て 表 現 す る と以 下 の よ う に な る 。 ま ず 、 含 意 計 算 で あ れ 、 同値 計 算 で あ れ 、 真 理 表 の 「真/偽 」 の 意 味 が 可 能 性 を含 む も の か 、 あ る い は 絶 対 的 な もの か を知 る に は 、 真 理 表 全 体 の 構 成 を完 全 に見 渡 す 必 要 が あ る 。 これ は 、 バ イ ア ス 係 数kx,kxがkx=1,kx=1で な け れ ば な ら な い こ と を 意 味 す る 。 し たが っ て・(5.1)式 は・編=P(殉1み)-P(隅)=講 砺 兀 無 とな る・ こ こで 、 可 能 性 解 釈 で あ る 含 意 計 算 が 成 立 す る た め に は 、 図。→y>0で あ れ ば よ い 。 各 締 は ・-1ま で の値 を取 り・・≦ 論 詔 呼 ≦1・ ・≦ 砺 無 ア≦1が 成立 す るた め ・み 一Y>・を 常 に 満 足 す るた め には ・ 論 鞠=1・ す な わ鵬=・ で あ れ ば よい・ 言 い 換 え る な らば 、xか つ,yに 対 応 す る想 定 が 偽 で あ る 時 に含 意 解 釈 が 成 立 し、 こ れ は 真 理 表 の 意 味 す る と こ ろ と合 致 す る 。 一 方、 完 全 解 釈 で あ る含 意 計 算 は(5.1)式 が 図。→ン=1で な け れ ば な ら な い 。 し た が っ て 図 無=1か つ 砺 無 ,=・ で ある こ とカ・求 め 肱 これ 鴫 一・かつ 鞠=・ の 時 に の み 成 立 す る。 言 い 換 え る な ら、xか つ ヨy,お よ び コxか つyに 対 応 す る 想 定 が 偽 で あ る こ と に な り、 これ も真 理 表 の 解 釈 と一 致 す る 。 3.5論 理 へ の 適 用(2):前 件 の 関 与 と バ イ ア ス 係 数 と こ ろ で 、 形 式 論 理 に お け る 含 意 計 算 と同 値 計 算 の 違 い は 、 可 能 性 解 釈/完 全 性 解 釈 と は 別 の 見 方 をす る こ と もで き る 。 す な わ ち 、 真 理 値 を決 め る 際 に 、 どの よ う な情 報 を 考 慮 す るか と い う フ レ ー ム の 範 囲 の 違 い が 、 両 者 の 違 い を生 み 出 して い る と い う見 方 で あ る 。 こ の 立 場 か ら見 る と、 含 意 は前 件 が 真 の 場 合 の み を考 慮 す る 形 式 で あ り、 同 値 は 前 件 ・後 件 の い ず れ の 真 理 値 を も考 慮 す る 形 式 で あ る とい う こ とが で き る 。 な お 、 こ の 立 場 で は 、 含 意 計 算 は前 件 が 真 で あ る 場 合 を 見 る こ と に な り、 こ の 時 に 限 っ て 後 件 の 真理 値 が 一 意 に決 定 で き て い る た め 、 後 件 の 真/偽 の 違 い は 絶 対 的 な も の で あ り、 含 意 計 算 で あ っ て も完 全 解 釈 が 行 わ れ て い る こ と に注 意 され た い 。 こ の参 照 フ レ ー ム の 違 い は 、(5,1)式 に お け るバ イ ア ス 係 数 の 操 作 に よ っ て 形 式 的 に 捉 え る こ とが で きる 。 まず 、 含 意 表 現 は 、 前 件 が 偽 と な る 場 合 を 考 慮 し な い 形 式 で あ る た め 、 バ イ ア ス 係 数kxはkx=0で な け れ ば な ら な い 。 一 方 、 前 件 が 真 で あ る顕 示 的 情 報 は 全 て 考 慮 され る た め 、 バ イ ア ス 係 数kxはkx=1に 設 定 さ れ る 。 した が っ て 、(5.1)式 は 、 図η と な る 。 こ こで 、副洞 ンが 成 立 す る(す な わ ち み →yニ1)7た ⑳ →Y=P(5死 ッ1氏)= 図 η+5【琢 め に は 、 詔、ラ=0で あ れ ば よ く、 結 果 的 に3.4節 の 演 算 結 果 と一 致 す る 。 一 方、 同値 の 計 算 に お い て は 、 前 件 が 真 で あ る場 合 も偽 で あ る も考 慮 され る た め 、 バ イ ア ス 係 数kx,kxはkx=1,kx=1と な る。 こ の 結 果 、 同値 計 算 に お け る(5.1)式 は 、3.4節 の 演
算と全 く同一の式編=P(綱
一P(鴎1嚇
論
砺
凋
舞
となり・編=1
が 成 立 す る に は 例 琢=0か つ 詔 均=0と な る こ とが 必 要 で あ る 。 3.6バ イ ア ス 係 数 の 制 限 3.5節 の 議 論 で 、 バ イ ア ス 係 数 が{kx=1,kx=0},{kX=1,kz=1}の 時 に、 含 意/同 値 の 違 い が 生 じる こ と を 見 た 。 論 理 の 場 合 は 、 基 本 的 に 二 値 の 値 しか 取 ら な い が 、 自 然 言 語 の よ う な 文 脈 に依 存 して解 釈 が 行 わ れ る 場 合 に は 、0≦kX≦1,0≦kx≦1の 範 囲 で バ イ ア ス 係 数 が 設 定 され 、 そ の 結 果(5)式 の 演 算 が 中 間 値 を持 つ こ と に な り、 そ れ が 「か も しれ な い」 「ち が い な い 」 とい っ た 言 語 表 現 の モ ダ リ テ ィ に 反 映 さ れ て い く と考 え ら れ る 。 し か し、 言 語 表 現 に お い て も、 設 定 され 得 な い バ イ ア ス 係 数 の 組 が あ る と思 わ れ る 。 例 え ば、{kX=0,kx=0}と い うバ イ ア ス係 数 は 、推 論 にお い て 、 前 件 に 関 す る 一・切 の 情 報 を 考 慮 しな い と い う こ と を意 味 して お り、 ナ ン セ ン ス な ペ ア で あ る。 もち ろ ん 、 こ う した 係 数 の 設 定 も可 能 で は あ るが 、(5)式 の 演 算 結 果 は常 に0と な り、 推 論 演 算 と し て の 価 値 が な い 。 で は 、 バ イ アス 係 数 が{叔=0,磯=1}と い っ たkxが0に な る よ うな 設 定 は ど う か 。 こ れ は 、 推 論 過 程 に お い て前 件 肯 定 の事 態 を フ レー ム か ら除 外 し、 前 件 否 定 の 情 報 の み か ら何 ら か の 結 論 を 引 き 出 す こ と を 意 味 す る た め 、 形 式 論 理 上 は あ り得 な い パ ラ メ ー タ 設 定 で あ る 。 で は 、 自然 言 語 の 表 現 で は ど う か 。 確 か に多 くの 場 合 に は あ り得 な い 表 現 で あ る が 、 極 め て 特 異 的 な状 況 に お い て の み 、 設 定 され る こ とが あ り得 る よ う に思 わ れ る 。 こ の 点 につ い て は 、4.5節 で 議 論 を行 う。 以 上 、 計 算 論 的 関 連 性 理 論 にお け る 推 論 の演 算 方 法 と 、 そ の 形 式 論 理 へ の 適 用 過 程 を 見 た 。 次 に 、 この 演 算 の 自然 言 語 へ の 適 用 に つ い て考 察 して み よ う 。 具 体 例 と して 、 い くつ か の 形 式 論 理 上 の 問 題 点 を持 つ 「反 事 実 条 件 文 」 を 取 り上 げ 、 関 連 性 理 論 の 立 場 に 立 つ と、 そ う い っ た 問 題 点 が 解 消 可 能 で あ る こ と を論 じる 。 7前 述 し た よ う に 、 フ レ ー ム の 違 い と い う見 方 を 取 る と、 含 意 計 算 に お け る 「真/偽 」 の 違 い は 絶 対 的 で 、 完 全 解 釈 が 行 わ れ て い る た め 、3.4節 の よ う な 詔。→)'≧0で は な く、 詔。→y=1の 計 算 と な る 。計 算論 的 関連性 理論 に基づ く反事 実 条件文 の解 釈 93
4.反
事 実条件文 の解 釈
4.1ゼ ロ を巡 る 演 算 反 事 実 条 件 文 の解 釈 を考 察 す る前 に、 そ の議 論 を行 う 際 に必 要 と な る ゼ ロ の 割 り算 に 関 る性 質 を整 理 して お く。一 般 にi'と こ い う演 算 に お い て 、cが ゼ ロ で あ る こ とは 避 け られ る 。 こ れ は ゼ ロ の 除 算 が い くつ か の不 安 定 な 性 質 を持 つ た め で あ る 。 まず 、Q=bOに お い て 、b≠0の 場 合 を 考 え て み よ う。a=bcはa・c=bと 等 価 で な け れ ば な らな い が 、b≠0,c=0の 時 、b≠Oとr1=0が 同 時 に成 立 す る こ と に な っ て し まい 、 矛 盾 す る 。 した が っ て 、 割 られ る数 が ゼ ロで な い場 合 、 ゼ ロ に よ る 除 算 は不 能(演 算 が で き な い)と な る 。 一 方 、b=0の 時 は 、c=0で あ っ て も 、b=0とa・0=0は 同 値 と な り、 成 立 し得 る 。 し た が っ て 、0÷0の 演 算 は 、 ど の よ う な 場 合 で も常 に成 立 し、 そ の 答 え は 無 数 に あ る 、 す な わ ち 演 算 は不 定 で あ る とい う こ と に な る 。 ま た 、 解 が 不 定 で あ っ て も・ そ れ に 再 び ゼ ロ を 掛 け る と・ ゼ ロ の 積 算 結 果 は 常 にゼ ロ で あ る た め ・0・00=0が 成 立 す る 。ここで(5)式 について見てみると・個"え臨
ヂ
誰
鶏
凋
無
において・
殉 な ど の 想 定 の 確 信 度 が0以 上 の 実 数 で あ る こ と か ら、 分 母 が ゼ ロ に な る 時 に は 、 常 に 分 子 も ゼ ロ に な る こ とが 分 か る 。 す な わ ち 、(5)式 の 演 算 は 、 最 悪 の 場 合 に 解 が 不 定 に な る こ と は あ っ て も、 演 算 が 不 能 に な る こ と は 決 して な い 。 常 に 演 算 が 実 行 可 能 で あ る と い う点 は、 言 語 の 意 味 解 釈 を行 う上 で 、 一 つ の 重 要 な 性 質 で あ る 。8 4.2反 事 実 条 件 文 の 性 質 反 事 実 条 件 文 の 興 味 深 い性 質 は 、 前 件 か 後 件 か の い ず れ か が 成 立 して い な い こ と が 明 確 な 文 で あ る と い う点 に あ る。 例 え ば 、 日本 語 の 反 事 実 条 件 文 で も、(6a)の よ う な文 脈 か ら前 件 が 成 立 しな い こ とが 分 か る も の 、(6b)の よ う に 常 識 な どの 知 識 レベ ル か ら前 件 が 成 立 しな い こ と が 明 確 な もの 、(6c)の よ う に後 件 が 成 立 し な い こ とが 明 確 な もの が 存 在 し 、 い ず れ も(7)の よ う に パ ラ フ レー ズ 可 能 で あ る 。 (6)a.結 局 、 奈 緒 美 は来 な か っ た 。 彼 女 が 来 て い れ ば 、 チ ョ コ を も ら え た の に。 b.私 が 鳥 だ っ た ら 、 今 す ぐ奈 緒 美 に 会 い に い け る の に 。 C.あ の薬 を 飲 ん で い た ら、 今 ご ろ死 ん で い た と こ ろ だ 。 (7)a.奈 緒 美 は 来 な か っ た し、 チ ョ コ も も ら え な か っ た 。 b,(鳥 で は な い し)今 は 奈 緒 美 に 会 い に行 け な い 。 c.薬 は飲 ま な か っ た し、 現 在 も生 き て い る 。 8意味 解 釈 とい う場 面 を考 える な ら、演算結果が不定であるとい う状態 も困難を伴 う。いってみれば、これ は エ ン トロ ピー最 大 の状 態 で あ り、 「非 文 では な いが、 その 意味 は全 く分 か らな い」 とい う、認 知環 境 の改 善 を もた らさ ない事 態 であ る。 も し、 認知 主体 が こ うい う演 算結 果 に遭 遇 した時 、 な ん らか のcoercionを 働 か せ て で も、最 適 な意 味 が導 出 で きる よ うな処 理 を行 わ な けれ ば な らない 。 この 不定 問 題 につ い ては 、 また別 稿 で改 め て議 論 を行 う。ま た 、文 の 自然 性 に多 少 の 違 い は あ る も の の 、前 件 を 「の で 」 節 に 置 き換 え た 理 由 文(8) にパ ラ フ レ ー ズ す る こ と も可 能 で あ る。 (8)a.奈 緒 美 が 来 なか っ た の で 、 チ ョ コ も も ら え な か っ た 。 b.(鳥 で は な い の で)今 は 奈 緒 美 に 会 い に行 け な い 。 c.薬 を飲 ま な か った の で 、 現 在 も生 きて い る。 田 窪(1993)は 、 状 態 形 の 条 件 文 が 反 事 実 解 釈 に 結 び つ き や す い こ と を 指 摘 し、 こ れ は 状 態 形 が 既 に 決 定 して い る現 実 を指 し、 そ れ に も関 らず 、 強 制 的 に 仮 定 が 行 わ れ る こ と で 、 反 事 実 性 が 生 じる と述 べ て い る 。 こ の 「既 に決 定 して い る」 とい う点 は 、想 定 の 確 信 度 が0か1に 限 りな く近 く な っ て い る と捉 え な お す こ とが で き る 。 同様 に 、 郡 司(2004) は、(9)の 違 い を 説 明 す る メ カ ニ ズ ム と し て 、 アス ペ ク トの 縮 退 とい う性 質 を提 案 し、 事 態 が す で に完 了 し た も の と い う前 提 の 元 で 出 来 事 を全 体 と して 捉 え る 見 方 が 可 能 で あ れ ば 、 反 実 仮 想 解 釈 が 成 立 す る と述 べ て い る 。 (9)a,あ の 時 、 あ と30分 待 っ て い 〔た ら/れ ば}、 彼 に 会 え た だ ろ う。(反 実 仮 想) b.30分 待 っ て い{た ら/れ ば}、 彼 に 会 え た 。(進 行 形) こ の 「完 了 し た も の と し て全 体 と して 捉 え る 見 方 」 は 、 想 定 の 確 信 と い う点 か ら捉 え な お す と、 そ の 想 定 に 対 応 す る事 態 が 既 に 決 定 済 み で あ り、 想 定 の確 信 度 が 安 定 して い る (確信 度 が1か0に 近 い)状 態 と い え る で あ ろ う。 一 方 、 反 実 仮 想 解 釈 が 進 行 形 解 釈 の 時 に生 じな い 理 由 は 、 事 態 が 安 定 して い な い た め 、 そ れ に対 応 す る想 定 の確 信 度 が 不 安 定 で あ る(真 理 値 の 決 定 が で きな い)た め とい っ て よ い 。 4.3反 事 実 条 件 文 に お け る論 理 上 の 問 題 点 反 事 実 条 件 文 の 解 釈 が 成 立 す る の に 、 表 出 され た 前 件 あ る い は後 件 の いず れ か を偽 で あ る と確 信 で き る こ とが 必 要 で あ る とい う性 質 は 、 形 式 論 理 上 の 問 題 点 を引 き起 こす 。 まず 、 後 件 が 偽 で あ る(6c)の 場 合 を 考 え て み よ う。 真 理 表(表2)か ら も分 か る 通 り、 後 件 が 偽 で あ る場 合 に は 、 前 件 が 真 で あ る 限 り、 含 意 演 算 に せ よ 同 値 演 算 にせ よ 、 文 全 体 が 偽 に な り、 そ の ま ま の 形 で 受 理 す る こ と は で き な い 。 そ こで 再 解 釈 と して 、 前 件 も 偽 で あ る とす る と、 文 全 体 が 真 と な り、 認 知 主 体 は こ の 条 件 文 を 反 事 実 的 解 釈 と して 受 理 可 能 で あ る 。 しか し、 ど の み ち 再 解 釈 を行 う の で あ れ ば 、 なぜ 後 件 を偽 の ま ま で 置 い て お く必 要 が あ る の だ ろ う。 後 件 に 関 す る 信 念 を変 更 し、 後 件 を 真 で あ る と見 な せ ば 、 前 件 も真 ・後 件 も真 、 文 全 体 も真 と い う極 め て安 定 した 解 釈 を得 る こ とが で き る は ず で あ る。 もち ろ ん 、 こ れ に 関 す る 回 答 と して 、 再 解 釈 の コ ス トを 挙 げ る こ とが で き る 。 後 件 が 偽 と確 信 して い る 認 知 主 体 に と っ て 、 そ の 確 信 を変 更 す る よ り も、 真 か 偽 か 明 確 で は な い 前 件 に 関 す る信 念 を変 更 す る ほ う が 、 よ り再 解 釈 の コ ス トが 低 くて 済 む とい う説 明 で あ る 。 確 か に こ れ は 妥 当 な考 え 方 で あ る が 、 そ れ で もい くつ か の 間 題 が 残 る 。 ま ず 根 本 的 に 、 反 事 実 条 件 文 の 意 味 理 解 とは ど う い う こ とか とい う 問 題 が あ る 。 確 か に、 「前 件 ・
計算 論 的 関連性 理論 に基 づ く反事 実条 件文 の解 釈 95 後 件 と もに偽 」 と い う解 釈 は 現 実 世 界 に対 応 させ る こ とが 可 能 な の で 、 安 定 した 理 解 と い え る 。 で は 、 言 語 で 表 現 さ れ た 内 容 そ の もの は 、 ど う扱 わ れ るべ き な の か 。 そ もそ も 反 事 実 条 件 文 全 体 を 「真 」 と して 受 理 し よ う と して い る の だ ろ う か 。 近 年 の 比 喩 理 解 の 心 理 学 的 研 究 で 、 比 喩 の 理 解 は 再 解 釈 を必 要 とす る よ うな 時 間 の か か る もの で は な く、 直 接 理 解 に 近 い 極 め て 高 速 な 処 理 で あ る こ とが 明 らか に され て きて い る 。 反 事 実 条 件 文 に 関 して も、 同様 の こ とが い え る 。 と 同 時 に 、 反 事 実 条 件 文 の 理 解 は 、 明 らか にパ ラ フ レー ズ の 解 釈 を 引 き起 こ し、 そ の 条 件 文 自体 を 「真 」 で あ る と して 受 理 し よ う と し て い る の か 、 疑 問 が 残 る 。 前 件 が 偽 で あ る(6a),(6b)の 場 合 、 さ ら に 別 の 問 題 が 起 こ る 。 真 理 表(表2)よ り、 前 件 が 偽 の 場 合 、 少 な く と も含 意 演 算 に お い て は 、 後 件 が 真 で あ っ て も 、 文 全 体 を 真 と して 受 理 可 能 で あ る 。す な わ ち 、反 事 実 条 件 文 と して 理 解 し な くて も よい 。 同値 演 算 で は 、 後 件 が 偽 で な い 限 り、 文 全 体 を真 と して 受 理 で き な い た め 、 反 事 実 条 件 文 と し て の 再 解 釈 が 強 制 され る こ と が い え るが 、 で は なぜ 、前 件 が 偽 で あ る場 合 、 同値 演 算(す な わ ち双 条 件 解 釈)を 行 わ な け れ ば な ら な い の で あ ろ う。 次 節 で は 、 計 算 論 的 関 連 性 理 論 に お け る推 論 演 算(5)を 用 い て 、 な ぜ 反 事 実 条 件 文 の 解 釈 が 生 起 し得 る の か を論 じる 。 議 論 の ポ イ ン ト と し て 、 反 事 実 条 件 文 の 解 釈 に お い て 、 再 解 釈 は 必 ず し も必 要 が な い こ と、 ま た 含 意 演 算 ・同 値 演 算 とい う区 別 を持 ち 出 さ な く て も 自 然 に解 釈 が 生 じ う る こ と を主 張 す る 。 4.4推 論 演 算 に基 づ く反 事 実 条 件 文 の 解 釈 関 連 性 理 論 の 一 つ の 重 要 な 主 張 に 、 あ る状 況 で 与 え ら れ た顕 示 的 情 報(外 的 情 報)は 、 想 定 に何 らか の 形 で 影 響 を与 え る と い う もの が あ る。 例 え ば 、前 件Xが 成 立 しな い よ う な状 況 に お い て も、 「も しXな ら ば ∼」 とい う明 示 的 表 現 が 与 え られ た 段 階 で 、 前 件 の 可 能 性 を わ ず か で も考 慮 す る よ う な 想 定 が 生 じ る。 以 下 の議 論 に お い て 、 否 定 的 な状 況 に も関 らず 顕 示 的 情 報 に よ りわ ず か に生 じる 想 定 値 をEと し て 表 す(ε彫0か つ ε≠0)。 想 定 の 確 信 度 ε は 、 反 事 実 条 件 文 を考 え る 上 で 重 要 な数 値 と な る 。 田 窪(1993)や 郡 司 (2004)が 述 べ る よ う に 、 反 事 実 解 釈 が 起 き る の は 、 状 態 形 や ア ス ペ ク トの 縮 退 に よ り、 言 明 され た 自 体 が 既 に決 定 して い る と見 な し う る(そ の 言 明 に つ い て ほ ぼ何 らか の信 念 が 持 て る)時 に 限 ら れ る か ら で あ る 。 た だ し、 本 稿 で 主 張 す る重 要 な 点 は 、 反 事 実 条 件 文 に お い て 、 現 実 に違 反 す る 言 明 に対 して 持 た れ る想 定 は 、 完 全 な 誤 り と し て 棄 却 さ れ る よ う な もの(想 定 の 確 信 度 が0)で は な く、 限 り な く誤 りに 近 い と見 な さ れ る よ う な もの (想 定 の 確 信 度 が ε)と い う と こ ろ に あ る 。 こ う した点 を 明確 に す る た め に 、 まず 前 件 が 成 立 し な い 反 事 実 条 件 文(6a),(6b)の 解 釈
過程を・(5・1)式:編=暇
・P(^1凡)一矧^一
・鞠銑
一騰
無
ヲに
した が っ て 考 察 して み よ う。 まず 、 「彼 女 が 来 て い れ ば/私 が 鳥 だ っ た ら」 と い う 前 件 に 関 す る 顕 示 的 情 報 が 与 え ら れ た 時 点 で 、 文 脈 か ら得 られ て い た 情 報 「奈 緒 美 は 来 な か っ た」 や 常 識 「人 間 は 鳥 で は な い 」 に 関 す る 想 定 を 僅 か な が らで も変 更 し な け れ ば な ら な い た め 、 詔。=ε,すな わ ち 囲η+囲 炉 εが 設 定 さ れ る 。 次 に 、 「チ ョ コ を も らえ た の に/奈緒 美 に 会 い に行 け る の に 」 とい う後 件 情 報 が 与 え ら れ た 時 点 で 、 後 件 に 関 す る真 の想 定 詔y>0(馬+図 死y>0)と い う想 定 を持 つ 。 ま た 、 文 全 体 が 顕 示 的1青報 と し て 認 知 主 体 に受 理 さ れ た た め 、 推 論 に 関 す る 真 の 想 定 図 。→y>0も 成 立 す る。 同 時 に 、 前 件 と後 件 が 共 起 し て い る た め 、図 η>0も 成 立 す る 。 こ こで 、 詔。y+図が=ε お よ び 図η>0よ り、0<図 η≦8, 0≦ 詔が≦ε に な る こ と に注 意 さ れ た い 。 こ の状 況 下 で 、認 知 主 体 は 関 連 性 理 論 に お け る 「最 適 な 関 連 性 」 に した が って 、図.→Yの 最 適 値 を探 索 す る こ と に な る 。今 、図。→y>0で あ る た め 、囲。→)'は 「ど の よ う なバ イ ア ス係 ∬【η 数 にお い て も 、図.→yが 最 大 値 に な る 」 よ う な状 態 で あ れ ば よ い 。す な わ ち 、kx ン{ η+図 酉 9{κy タ{カ は 最 大 で 、kx・ は最 小 の 値 とな れ ば よ い ・ こ こで 、o〈図。y≦ε よ り、kX 図 濁y+」月炉 タ砺+タ{xy は 不 定 に な らな い こ とが 保 証 さ れ る た め 、 こ の 部 分 を最 大 にす る に は 、 詔 ザ0で あ れ ば 訊 力 よ い(こ れ は0≦ 興 す≦ε の 条 件 に 違 反 しな い)。 ま た 、kx・ を最 小 に す る に は 、 図 死y+囲距
図ヵ=o,詔 野 ≠0で あ れ ば よい ・ 以 上 の こ とか ら、 訊。y=ε,5㌃=0,図 元y=0,詔 距=1一 ε(N1) の 状 況 下 で 、夙 κ→Yは 最 適 値kx・s(>0)と な る 。 なお 、 姦 は1以 下 の 正 の 実 数 値 で あ る の で 、0≦kx・S≦ε と な り、 渕。→Yの 想 定 値 は εを 越 え な い 。 定 性 的 に い う な ら ば 、 文 脈 や 常 識 か ら お か し な 文 だ とわ か っ て い て も、 条 件 文 の 想 定 礁 →ン を一 応 「偽 で は な い 」 と し て 受 け入 れ た 場 合(ご くわ ず か な 正 の 想 定 値 を持 っ た 場 合)、 そ こ か ら得 ら れ る 結 論 は 、 (10)a. b. C 0 「前件 が真 か つ後件 が 真」 の想 定 が わず か に得 られ る(偽 で は ない)。 「前件 が真 か つ後件 が 偽」 の想 定 は棄 却 され る。 「前件 が偽 か つ後件 が 真」 の想 定 は棄 却 され る。 「前件 が偽 かつ後 件が 偽」 の想 定 値 は最大 で あ る(ほ ぼ絶 対 的 に真 で あ る) とな る。 こ の 結 果 、最 も強 い 想 定 と して 、反 事 実 条 件 文 の 解 釈:「 奈 緒 美 は 来 な か っ た し、 チ ョ コ も も ら え な か っ た」 「鳥 で は な い し、今 、 奈 緒 美 に会 い に 行 け な い 」 を得 る 。 な お 、 上 記 の過 程 に お い て 、 一 般 に 図η+,9{Xy-=1が 成 立 す る た め 、 図測 の 値(お よ び前 件 自体 の 想 定 図 。)が ε よ りは る か に大 きな 値Tに 設 定 さ れ た 場 合 、 例元アの 確 信 度 は 頂 野=1-Tと な り、1よ り も は る か に 小 さ な値 に な る た め 、 「反 事 実 」 の 解 釈 が 支 配 的 で な くな る点 に も注 意 さ れ た い 。 こ の こ とか ら、 反 事 実 解 釈 が 生 じ る た め に は 、 あ くま で 前 件 に対 す る 想 定 値 が 微 小 な もの で な け れ ば な らず 、 前 件 の 想 定 値 が 大 き くな る の に 伴 っ て 、 反 事 実 の解 釈 は 生 じに く く な る こ と(す な わ ち反 事 実 の 解 釈 は 前 件 の想 定 度 に連 動 して 生 起 す る こ と)が 分 か る。 後 件 が 成 立 しな い 反 事 実 条 件 文(6c)の 解 釈 過 程 もほ ぼ 同様 で あ る 。 まず 、 「あ の 薬 を飲 ん で い た ら」 とい う前 件 の 顕 示 的 情 報 が 与 え ら れ た 時 点 で 、図 涯>0(ク{η+・フ{厨>0)が 設 定 され る 。 次 に 、 後 件 「今 ご ろ 死 ん で い た だ ろ う」 とい う後 件 の 顕 示 的 情 報 が 出 現 し た時 点 で 、 「今 現 在 、 話 を して い る 人 間 は生 きて い る 」 とい う常 識 に反 す る た め 、 僅 か な 想 定 値 詔y=ε,す な わ ち 図η+図 靭=ε が 設 定 され る 。 さ ら に 条 件 文 全 体 を 顕 示 的 情 報 と して 認 知 主 体 が 受 理 した 時 点 で 、 推 論 に 関 す る 真 の 想 定5弧 →y>0も 成 立 し、 ま た 前 件 と後 件 の
計 算論 的 関連性 理論 に基 づ く反事 実条 件文 の解 釈 97 共 起 想 定 図κy>0も 成 立 す る(詔xy+詔 ヵ=ε お よ び 図 η>0よ り、0<図 η≦ε,0≦ 渕ヵ≦ε も成 立 す る)。 こ の 条 件 下 で 、み →Yが 最 適 関 連 性 の値 を得 る(す な わ ち ・ バ イ ア ス 係 数 に 関 ら 3{靭 ∫【xy が 最 大 で 、kx は 最 小 ず5弧 →3'を最 大 に す る)た め に は 、 や は りkx. 詔ヵ+図 元ア 興矧+囲 厨 タ{型 の 部 分 は最 大 に な り、 詔靭二〇 の 値 と な れ ば よ い 。 こ こ で も 、侃 。,=0の 時 、k、・ 図η+ン{癖 詔力 は 最 小 に な る 。 以 上 の こ と(これ は0≦渕わ≦Eに違 反 しな い),図万 ≠0の時 、kx・頭 死y+タ{酉 か ら 、図η=s,図 ザqJ%=0,図 酉=1-8伽1)が 得 られ 、 後 件 が 成 立 し な い 場 合 も 、反 事 実 条 件 文 の 解 釈:「 薬 は飲 ま な か っ た し、 今 、 死 ん で もい な い 」 が 最 も よ い想 定 と して 得 ら れ る。 以 上 が 、 計 算 論 的 関 連 性 理 論 に よ る 反 事 実 条 件 文 の 解 釈 過 程 で あ る 。 こ こ で は 再 計 算 と い う過 程 は含 ま れ て お らず 、 ま た 含 意 が 同値 か とい う形 式 論 理 上 の 問 題 も生 起 し ない 。 反 事 実 条 件 文 の 真 理 値 に つ い て は 、 二 値 論 理 で は扱 い よ う も な い が 、 関 連 性 理 論 に した が う と、 限 りな く偽 に近 い が 、 そ の 言 明 は 棄 却 され て お らず 、 認 知 主 体 に 受 け 入 れ られ た(と りあ え ず 真 か も しれ な い とい う想 定 を 持 ち う る)と い う形 で 表 現 で き、4.3節 で 見 た 形 式 論 理 上 の 問 題 を解 消 で き る 。 4.5偽 の 想 定 値 が 変 更 され な い 場 合 前 節 で 説 明 した反 事 実 条 件 文 解 釈 の プ ロ セ ス で は 、 反 事 実 条 件 文 が 表 現 さ れ た 時 点 で 、 偽 と思 わ れ て い た想 定(す な わ ち 想 定 値0)が 想 定 値 εに 変 更 さ れ 、 そ の 結 果 、 反 事 実 条 件 文 も一 応 認 知 主 体 に受 理 され 、 か つ 反 事 実 の 強 い 理 解 を 産 み 出 す とい う も の で あ っ た 。 で は 、 も し認 知 主 体 が 偽 の想 定 を 強 く持 ち つ づ け、 想 定 値 を変 更 し な か っ た 場 合 に は ど の よ う な こ とが 起 こ る の だ ろ うか 。 前 件 が 偽 で あ る 場 合 の 反 事 実 条 件 文 を 例 に こ の 計 算 過 程 を 考 え て み よ う。 ま ず 、 前 件 が 偽 で あ る とい う想 定 は 変 更 さ れ な い た め 、 珊、=0,す な わ ち 訊η=0か つ 細 が 成立 す る・ こ鳴(5・1)式 のkx・ 轟 砺 の部蝋 ・1と な り・ 演 算 の解 が 不 定 と な っ て し ま う。 こ の 不 定 状 態 を解 消 す る方 法 は た だ 一 つ 、 バ イ ア ス 係 数 戯 を kX=0と 設 定 す る こ と で あ る 。 こ れ は 、 前 件 肯 定 の 関 与 を保 留 す る とい う こ と に他 な らな 例 η の 部 分 は00 =0と な る 。 こ こで 、(5.1)式 の 残 りの 部 分: い 。 この 結 果 、砿 ・詔 測+訊 炉0 タ{殉, は 、0か ら 一1ま で の 間 の 値 を取 る た め 、3彊。→ン≧0が 成 立 す る た め に は 、-kx-∬【 xy+詔 元, 班力 =0で な け れ ば な ら な い 。 す な わ ち 、kx=0あ る い は5㍉=0が 成 立 しな け 一kx一 図 靭+図 琢 れ ば な ら な い 。 しか し、 既 にバ イ ア ス 係 数kX=0が 設 定 さ れ て い る た め 、kx=0は 成 立 し え な い(3.6節 参 照)。 した が っ て 、5㌔ ニ0が 成 り立 た な け れ ば な ら な い 。 こ こ で 、 前 提 が 偽 で あ る とい う こ とか ら 図 η=0か つ 訊厨=0が,ま た 演 算 の 妥 当 性 よ り 詔靭=0が 得 られ た た め 、例 矧+例 が+副 殉+甜 万=1よ り、5弔万=1が 成 立 す る 。 な お 、 この 時 、 図pyニ0で あ る 。 以 上 の 流 れ を 定 性 的 に解 釈 す る と、 前 提 が 成 立 しな い 条 件 文 が あ っ た 場 合 、 前 件 肯 定
を フ レー ム か ら除 外 し、 前 件 否 定 か つ 後 件 否 定 の み が 完 全 に真 で あ り(5{王ア=1)、 か つ 条 件 文 全 体 の 真 理 値 は 偽 で あ る(乳 →ン=0)と い う結 論 を得 る 、 と い う こ と に な る 。 す な わ ち 、 反 事 実 の 解 釈 を得 る と 同 時 に 、表 現 され た 条 件 文 自体 は棄 却 さ れ る の で あ る 。3.6節 で 見 た よ う に 、推 論 過 程 にお い て 、前 件 肯 定 の情 報 を フ レ ー ム か ら 除外 す る とい うの は 、 形 式 論 理 で は あ り得 な い プ ロ セ ス で あ る 。 しか し、 自然 言 語 に お い て は 、 こ う した パ ラ メ ー タ設 定 も可 能 な の で は な い か と思 わ れ る。 こ う した 操 作 も可 能 で あ る か ら こ そ 、 認 知 主 体 が あ る 強 固 な信 念 を 持 っ て お り、偽 の 信 念 を全 く変 更 し な か っ た 場 合 で も、 反 事 実 の 解 釈 は 安 定 して 行 い 得 る と考 え られ る か らで あ る 。 しか し、 こ の 点 に つ い て は 、 反 事 実 条 件 文 の 意 味 理 解 と は何 か とい う哲 学 的 問 題 も含 め た さ ら に深 い 議 論 が 必 要 で あ り、 ま た稿 を改 め て 議 論 を行 う こ と に した い 。 4.6理 由 文 解 釈 へ の パ ラ フ レ ー ズ (6),(8)に 示 した よ う に 、 反 事 実 条 件 文 は あ る種 の 理 由文 に パ ラ フ レ ー ズ す る こ と が 可 能 で あ る 。 坂 原(1985)で は 、 「Xな の でY」 と い う理 由文 は 、 例 外 は あ る に せ よ、 基 本 的 に真 理 関 数 的 で な く、 か つ 前 件 が 真 と見 な し う る よ う な 条 件 文 「Xな らY」 が 基 底 に あ る と述 べ て い る 。 こ の 坂 原 の 立 場 を採 用 した 時 、 計 算 論 的 関 連 性 理 論 にお い て 、 理 由 文 の 性 質 が ど の よ う に仮 定 で き る の か を 考 え て み よ う。 まず 、 理 由 文 が 同 型 の 条 件 文 を基 底 に持 つ とい う こ とか ら、 理 由文 の計 算 も(5)式 で 可 能 な はず で あ る 。 た だ し、 同 型 の 条 件 文 を基 底 に持 つ た め 、 「Xな の でY」 の 理 由 文 の 計 算 式 は 、(5.1),(5.4),(55),(5.8)式 に 限 定 さ れ る 。(5。1)式 に 限 定 され な い の は 、 前 件 ・後 件 の 真 理 値 に よ っ て は 、 他 の 式 も成 立 し得 る可 能 性 を残 して い る か らで あ る 。 一 方 、 形 式 論 理 上 は 等 価 な対 偶 表 現 に相 当 す る(5.6)式 は 、 前 件 と後 件 が 入 れ 代 わ っ て お り、 「同 型 」 とは い え な い た め 、 排 除 さ れ る 。9 次 に 、 前 件 が 真 と見 な し う る よ う な条 件 文 が 基 底 に あ る い う こ と か ら 、 前 件 に 関 す る 認 知 バ イ ア スkxkzが 関 与 す る と考 え られ る 。 す な わ ち 、顕 示 的 情 報 が 「Xな ら ば ∼ 」 で あ れ ば 、 前 件 真 の 認 知 バ イ ア スkxの 値 が 大 き く、偽 の 認 知 バ イ ア ス 鮭 が 小 さ い こ とが 求 め ら れ る 。 顕 示 的 情 報 が 「Xで な い な ら ば ∼」 で あ れ ば 、 前 件 真 の 認 知 バ イ ア スkxの 値 が 大 き く、 偽 の 認 知 バ イ ア スkxが 小 さ い とい う こ と に な る 。 こ の こ と は 、 基 本 的 に真 理 関 数 的 で な い と い う性 質 も説 明 す る 。 例 え ば 、 「Xな らばY」 を 前 提 に して 「Xな の で Y」 を得 る 場 合 、(5.1)式 に お け る認 知 バ イ ア スk.の 値 が 大 き く、kxの 値 が 小 さ け れ ば 、 バ イ ア ス が 任 意 の 値 を取 っ て い る 時 よ り も 、 演 算 結 果 は よ り正 の 値 に な りや す い 。 こ こ で 問 題 に な る の は 、 理 由文 に お け る 認 知 バ イ ア ス の 値 が どの よ う に決 ま る か と い う こ と で あ る。Loetal.(2002)は 、 前 提 確 率 原 理 と い う考 え 方 を提 案 し 、 一 般 的 に 前 提 の 分 散 が 大 きい ほ ど、 確 証 度 が 上 昇 す る とい う点 に つ い て議 論 して い る 。 本 稿 で も、 こ の 考 え方 に 従 い 、理 由 文 の認 知 バ イ ア ス 値 に つ い て 、 単 純 な 分 散 を計 算 す る式(11)を 仮 定 す る。 な お 、1…1は 絶 対 値 を 表 す 。 9も ち ろ ん
、 「Xな ら ばY」 か ら 「Yで な い な ら ばXで な い 」 を導 出 し、 そ こ か ら同 型 の 「Yで な い の でX で な い 」 を 得 る こ と は 可 能 で あ る が 、 この 点 に つ い て は 稿 を改 め て 議 論 す る 。
計 算論 的 関連 性 理論 に基づ く反事 実 条件文 の解 釈 99 (11)●kx=1図xy一 図 炉1 ●kx=1図 王アー ・免靭1 ●ky=1例 矧 一 飢 殉ll ●ky=1図 野 一 詔 創 以 上 の 議 論 に 基 づ い て 、 反 事 実 条 件 文 の 理 由 文 へ の パ ラ フ レ ー ズ を 考 え て み よ う。 ま ず 、 「Xな ら ばY」 か ら 同 型 の 理 由 文 「Xな の でY」 が 作 ら れ る た め 、 考 慮 の 対 象 に な る 計 算 式 は(5.1),(5.4),(5.5),(5.8)式 で あ る 。 こ れ ら は 、 い ず れ も 認 知 バ イ ア ス 係 数 と し て 、 k、,kXを 持 つ 。 ま た 、 前 件 が 偽 と な る 場 合 で あ れ 、 後 件 が 偽 と な る 場 合 で あ れ 、 反 事 実 条 件 文 の 想 定 と し て 、 詔 η=ε 肉0),囲 炉0,例 靭=0,図 酒=1一 ε(N1)が 得 ら れ て い る 。 こ の こ と か ら 、(11)に し た が っ て 、 認 知 バ イ ア ス 値 を 計 算 す る と 、kxニs,kX=1一 ε を 得 る 。 こ の 認 知 バ イ ア ス 値 お よ び 各 想 定 値 を(5.1),(5.4),(5.5),(5.8)式 に 代 入 す る と 、 o(12)1 ・ 囲 ・→y=ε ・ ε+0-(1-s).0+(1-s) =ε(NO) 04み 一 ・=(1一 ε)噛 。+(1 一ε)一 ε'ε+。 =-E(NO) 5・ 衡=({1-s)1-S)・ 0+(1-s)一 ・ 聲 。 =1-8(N1) 01-E8 ・ 囲 ・→ ヲ=8' ε+。 一(1一 ε)° 。+(1一 ε) =ε 一1(廻 一1) を得 る 。 こ の 中 で 最 も よ い 解 と な っ て い る の は 、 み →Yで あ り、 こ の 結 果 、 反 事 実 条 件 文 は 「Xで な い の でYで な い」 とい う理 由文 とパ ラ フ レー ズ さ れ や す い こ とが い え る 。 ま た 、 こ の 理 由 文 の 想 定 値1一 εが 、4.4節 で 見 た 詔 可 の想 定 値 と全 く同 一 で あ る 点 に も注 意 され た い 。 5.総 合 論 議 反 事 実 条 件 文 や 理 由 文 の 興 味 深 い 問 題 は 、 命 題 レベ ル に お い て も単 に真 理 関 数 と して 考 え る こ とが で きな い と い う点 に あ る 。4.5節 で も述 べ た よ う に 、 こ こ が 形 式 論 理 学 の 限 界 と な っ て い る 。 こ れ に対 し、 関 連 性 理 論 は 、 な ぜ 反 事 実 条 件 文 に お い て 「Xで な くか つYで な い 」 とい う解 の み が 得 られ る の か 、 ま た 「Xで な い の でYで な い 」 と い うパ ラ フ レ ー ズ と なぜ 整 合 す る の か とい う点 に 妥 当 な 説 明 を 与 え る 。 議 論 の ポ イ ン トは 以 下 の 通 りで あ る。 (13)計 算 論 的 関連 性 理 論 に お い て 、推 論 計 算 の 一 般 形 は以 下 の 式 に よっ て与 え られ る。
(14) ゜ 乳 →y=kパP(詔)・1凡)-kx・ ・P(図ン1み) 尻 λツ 図 ヌy =kx. 一 戯 ・ ク{型+斑 琢 図 あ,+5可靭 ・kx,絵 は 認 知 的 バ イ ア ス 係 数 で あ り、 前 件 情 報 の 関 連 性 を 表 す 指 標 で あ る 。 ま た 、 演 算 の 結 果 は 推 論 の 確 信 度 で あ る 。 「Xな ら ばY」 とい う条 件 文 が 顕 示 的 情 報 と して 存 在 し、 か つXあ る い はYが 文 脈 や 知 識 と合 致 しな い 場 合 、 ・ そ れ で も、 こ の 条 件 文 は 認 知 主 体 に想 定 と して 受 理 さ れ る(完 全 に偽 と して 棄 却 さ れ る の で は な い)。 た だ し、 そ の 想 定 自体 の確 信 度 は 極 め て 小 さ い 。 ・ こ の 条 件 文 を 理 解 す る 際 に 、 使 わ れ る 論 理 が 含 意 か 同 値 か と い う と い う 問 題 は 見 せ か け の もの で あ る 。 想 定 自体 を棄 却 し な い 限 り、 「Xか つY」 お よ び 「Xで な くか つYで な い 」 と い う想 定 が 自然 に得 られ 、 他 の 想 定 は 偽 と して 棄 却 さ れ る 。 ・ 両 想 定 の う ち 、 「Xで な くか つYで な い」 と い う想 定 の確 信 度 の ほ うが 圧 倒 的 に 大 き く、 結 果 、 反 事 実 条 件 文 と して 解 釈 さ れ る 。 ・ 反 事 実 条 件 文 の 妥 当 な解 を得 る 時 、 再 解 釈 ・再 計 算 の過 程 は必 要 な い 。 ・ 理 由 文 は条 件 文 の 一 種 で あ り、 た だ し認 知 的 バ イ ア ス 係 数 の 制 限 、 お よ び 基 底 と な る 条 件 文 と 同 型 で な け れ ば な ら な い と い う 制 限 を 持 つ 。 こ の 制 限 か ら 、 反 事 実 条 件 文 とパ ラ フ レ ー ズ され る理 由 文 の 妥 当 な 表 現 を 得 る こ と が 可 能 で あ る。 本 稿 で 提 案 し た条 件 文 の 演 算 は 、 多 値 論 理 の 代 表 的 な 枠 組 み で あ る フ ァ ジ ィ理 論 に応 用 す る こ とが で き る 。 フ ァ ジ ィ論 理 に お い て もい くつ か の 推 論 計 算 法 が 提 案 さ れ て い る が 、 いず れ も 自然 言 語 の 条 件 文 を考 え る 上 で は 不 十 分 で あ る 。 本 稿 の 議 論 は 、 こ う した フ ァ ジ ィ論 理 の 欠 点 を補 う も の で あ る 。 ま た 、 「∼ か も し れ な い 」 「∼ に ち が い な い 」 と い っ た 真 理 値 を 明 確 に決 め る こ と の で き な い モ ダ リ テ ィ を 含 ん だ 条 件 文 で あ っ て も、 想 定 値 の大 き さや 演 算 結 果 の 値 とい っ た 観 点 か ら 、本 稿 の 演 算 で 取 り扱 う こ とが で き る 。 同 様 に、 認 知 的 バ イ ア ス の 値 に 関 す る コ ン トロ ー ル の 違 い や 、defaultに 与 え られ る想 定 値 の 大 き さ(本 稿 で い う ε な ど)の 違 い が 、 様 々 な 条 件 文 の 解 釈 の 違 い一 反 事 実 ・譲 歩 ・ 理 由 そ の 他 一 に 反 映 さ れ て い る とい っ た 点 で 、 条 件 文 の 細 か な違 い を扱 う こ とが 可 能 で あ る 。 さ ら に 、 条 件 文 に お け る哲 学 的 な 議 論 、 特 に 可 能 世 界 を巡 る議 論 に も、 本 稿 の 手 法 は 一 定 の 見 解 を与 え る 。 す な わ ち 、 本 稿 の 手 法 に 基 づ く と、 信 念 世 界 を連 続 量 で扱 え る た め 、 個 々 の 可 能 世 界 を 全 て 考 慮 す る必 要 は な く、 あ る 一・定 値 以 上 の 水 準 を 満 た す 世 界 の み を 解 釈 す れ ば よい とい う こ とで あ る 。 こ れ は 、 条 件 文 の 解 釈 過 程 に お け る心 的 処 理 の コス トを 節 約 す る こ と に つ な が る 。 こ れ らの 点 に 関 し て は 、 ま た 稿 を改 め て 議 論 し て み た い 。
計算 論 的関連 性理 論 に基づ く反 事実 条件 文 の解釈 101 参 考 文 献 Evans,J.St.B.T.&Lynch,J.S.(1973).Matchingbiasintheselectiontask.BritishJournal ofPsychology,64,391-397. 郡 司 隆 男(2004).日 本 語 の ア ス ペ ク ト と 反 実 仮 想.TheoreticalandAppliedLinguisticsat KobeShoin,7,21-34.