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積極的休息はパフォーマンスの向上と自覚疲労の回復を促進するのか

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積極的休息はパフォーマンスの向上と

自覚疲労の回復を促進するのか

本 多 麻 子

§

 Active rest is not an absolute rest but the strategy of promoting recovery from fatigue with physical activities. This study set both an experimental group with active rest and a control group without it. The experimental group was instructed to stretch while sitting on a chair during rest for 5 minutes, and the control group rested sitting on a chair with their eyes open. Thirty participants were divided into the said two groups and engaged in two 10-minutes mental work sessions before and after a rest. This study investigated performance, moods, and subjective fatigue in both groups. The psychophysiological responses were recorded in each period, before the experiment, first session, rest, second session, and recovery. The results showed that performance of the second session improved more than that of the first session in both groups. The experimental group showed that the scores of muddled feeling after both sessions increased more than before the experiment and after rest, while the control group showed that the scores of muddled feeling after the second session       

§白鷗大学教育学部:Faculty of education, Hakuoh University

Does active rest promote both performance and recovery

from subjective fatigue during mental work sessions?

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increased more than those of the other periods. In the experimental group, the scores of comfort before the experiment and after rest were higher than those after the sessions. The arousal scores in the experimental group increased more than those of the control group. The heart rate during sessions and rest in the experimental group increased more than that before and after the experiment. The heart rate during sessions in the control group increased more than that before and after the experiment and rest. The findings suggested that active rest encouraged recovery from subjective fatigue during mental work sessions without improvement of performance.

Keyword: active rest, performance, mood, fatigue, heart rate

目的

 疲労の回復は,心身の健康の保持・増進および学業,労働,スポーツなど のパフォーマンスの維持・向上にとって非常に重要である。疲労の回復に は休息が必要であり,休息は安静に休む消極的休息と,積極的休息(active rest)に区分できる。疲労の回復を目的とした軽い運動は積極的休息とよ ばれる(弘, 2008)。従来,激しい運動による疲労の指標には血中乳酸濃度 が用いられており,血中乳酸濃度が高い場合,身体に与えるストレスが大 きいといえる(青木, 1988)。運動後のクーリングダウンは運動によって体 内に蓄積された血中乳酸の消失を促進することから,疲労の回復を促進す ることになる(弘, 2008)。スポーツ場面ではクーリングダウンとしてラン ニング,ストレッチ,水中運動などが取り入れられてきたが,積極的休息 はアスリートのみならず,一般の人々にも有効である(山本, 2006)。スト レッチとはコンディショニング,治療,傷害予防の目的において行う柔軟 性改善および疲労回復のための伸長運動である。ストレッチには血流を増

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加させる効果があるために,ウォーミングアップの補助やクーリングダウ ンの手段として実施されている(紀平, 2012)。

 積極的休息や類似した概念である積極的回復(active recovery)の評価 には血中乳酸濃度を指標とした生化学的研究や運動生理学的研究が数多い (Greco et al., 2012; Koizumi et al., 2011; Martin et al., 1998)。しかしながら,

積極的休息を用いたスポーツ心理学的研究も行われてきた。中塚・坂入・ 荒井・稲垣・小峯(2009)は,ライフセーバーを対象として,積極的休息 として採用した軽運動がヴィジランス保持と心理的コンディショニングに 与える効果を検討した。その結果,通常の休息と比較して,積極的休息は 注意集中の保持にとって有効であった。活性度と安定度の上昇から,積極 的休息による心理的覚醒水準の回復が確認された。心理的・生理的な疲労 には積極的休息と通常の休息の間に差はなかった。中塚・坂入(2010)は, ライフセーバーを対象として水難救助活動を想定した監視シミュレーショ ン課題を実施し,覚醒水準,疲労,注意集中の指標から積極的休息の効果 を検討した。積極的休息として歩行,ストレッチ,ボール運動の3条件を 設定し,安静条件と比較した。その結果,安静条件と比較して,いずれの 積極的休息も眠気の回復効果,快適感の増加,生理的な覚醒水準の上昇, 心理的・生理的疲労の回復をもたらしたが,それらの効果はボール運動が 最も高かった。  また積極的休息を用いた実験心理的研究も行われてきた。佐田(2000a) によると,精神作業による疲労に対して,異質の精神作業の実施による疲 労の回復効果もまた積極的休息といえる。佐田(2000a)は,内田クレペリ ン精神検査を用いて積極的休息が精神作業の遂行成績に及ぼす影響を検討 した。5分間の休息時に,非利き手で不規則パターン描写課題を行う積極 的休息群と,平静に休む統制群を設定した。その結果,正答率,休憩効果, 誤答数の変化に有意差はなかったものの,積極的休息群では誤答数の変化 量が減少する傾向があった。また佐田(2000b)は朗読による精神面での積 極的休息が知覚-運動学習に及ぼす効果を検討した。積極的休息(筋)群,

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積極的休息(心)群,消極的休息群の3群を設定し,10試行の回転板追跡 課題実施における休息の効果を比較した。休息中に,積極的休息(筋)群 は非利き手でタッピングを行い,積極的休息(心)群は実験とは無関係の 書物を朗読し,消極的休息群は開眼座位安静とした。その結果,積極的休 息(心)群の課題成績が最も高いことから,休息中の朗読は有効な積極的 休息技法であると示唆された。和泉(2007)は暗算課題を用いて消極的休 息と,タッピングによる積極的休息の影響を検討した。積極的休息群,閉 眼安静の消極的休息群,タッピング実施後に閉眼安静で休息する積極的・ 消極的休息群の3群を設定した。その結果,積極的・消極的休息群の休息 効果が最も高く,積極的休息群の休息効果が最も低かった。積極的休息群 の実験参加者から暗算課題よりもタッピングが疲れたという内観報告が得 られたことから,積極的休息として採用する課題の負荷を考慮する必要が あり,主課題に対して積極的休息が一定の負荷範囲では休息効果は亢進す るものの,限度を超えた場合,休息効果は低下すると示唆された。  積極的休息と身体的な疲労の回復に関する生理学的・生化学的研究は数 多いものの,積極的休息と精神作業時の生理心理学的研究は数少ない。本 研究では,積極的休息が作業課題のパフォーマンス,自覚疲労および気分 に及ぼす影響を検討した。休息時に座位でストレッチを行う積極的休息群 と開眼座位安静で休息する統制群を設定した。質問紙によって自覚疲労と 気分を評価し,心拍数の測定によって作業課題中および休息時の身体負荷 を評価した。積極的休息によるパフォーマンスの維持・向上,自覚疲労の 回復促進,気分の改善がみられるかどうかを検討する。

方法

実験参加者  大学生30名(男性20名,女性10名,平均年齢21.7±1.2歳)であった。実 験者から実験概要の説明を受けた後,研究参加同意書に署名をすることに

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より同意を得た。実験参加者を積極的休息群と統制群にランダムに分類し た。 実験日時  2011年12月12日から12月28日に実験を行った。 実験場所および実験状況  白鷗大学813実験室で実施した。実験参加者は座位で作業課題を行った。 実験者は実験参加者の右手後方に待機した。 作業課題  作業課題には内田クレペリン精神検査を援用したエアキャップつぶしを 採用した。エアキャップとは梱包等に使用される気泡緩衝材である。課題 内容はエアキャップを1粒ずつできるだけ速くかつ正確につぶすこととし た。エアキャップを1粒ずつ横方向に1列ごとにつぶしていき,1分ごと に改行させた。課題時間は前期と後期それぞれ10分間とした。気泡緩衝材 の大きさは縦23.5㎝,横60㎝であり,エアキャップの粒数は縦方向に22個, 横方向に49個であった。 質問紙  2種類の質問紙を用いた。自覚症しらべ(城, 2002)はねむけ感,不安 定感,不快感,だるさ感,ぼやけ感の5因子25項目から構成されており, 「まったくあてはまらない⑴」から「非常によくあてはまる⑸」の5段階 で評定させた。二次元気分尺度(坂入・征矢, 2003)は,ポジティブ覚醒, ネガティブ覚醒,快適度,覚醒度の4因子8項目で構成されており,「まっ たくそうでない0」 から「非常にそう⑸」の6段階で評定させた。いずれ の質問紙も,実験前,前期作業後,休息後,後期作業後の合計4回実施し た。 積極的休息群のストレッチ内容  5分間の休息時に座位で,上腕,肩,前腕,体側,腰の5種類のストレッ チ(猪崎, 1997; 谷本・岡田・荒川・石井, 2009)を各1分間(左右対称に30 秒間ずつ)実施した。実験者がデモンストレーションし,実験参加者は実

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験者と同じ動作を行った。 生理指標の記録  心電図(elctrocardiogram, ECG)の測定には,RF-ECG ワイヤレス生体セ ンサー(株式会社医療電子科学研究所製)とディスポーザブル電極を用い た。ディスポーザブル電極を接続したRF-ECGの送信機を実験参加者の左鎖 骨下部に装着し,RF-ECGの受信機をパーソナルコンピュータ(Panasonic 製Let’s note, CF-W2)に接続した。ECG の記録と解析には,パーソナルコ ンピュータと,記録・解析プログラムMemCalc / Bonaly-Light(株式会社 ジー・エム・エス製)を用いた。 実験手続き  実験参加者が実験室に来室し,実験概要の説明を受けた後,研究参加同 意書に署名することで実験参加の同意を得た。実験参加者の左鎖骨下部に RF-ECGの送信機を装着し,ECG記録を開始した。実験前のベースラインと して質問紙に記入を求めた後,教示を与えた。教示の内容は,エアキャッ プをできるだけ速くかつ正確に横方向に1粒ずつ利き手でつぶすこと,1 分ごとに実験者が合図をするのでその度に一段下の行に移動し,気泡緩衝 材の開始点から再び作業を始めること,10分間の作業後,5分間の休息を とり,その後,同じ作業を10分間行うことなどであった。積極的休息群の 実験参加者には休息時のストレッチについて教示を与えた。教示の内容は, 実験者がストレッチのデモンストレーションをするので座位で同じ動作を 行うこと,呼吸を止めず,ゆっくりと身体を伸ばし,筋の伸長を意識する ことであった。作業課題の練習後,実験を開始した。前期作業終了後,質 問紙に記入を求めた。質問紙記入後,統制群は開眼座位安静で休息した。 積極的休息群は実験者のデモンストレーションに従って座位で5種類のス トレッチを順番に左右対称に実施した。休息後,質問紙に記入を求めた。 質問紙記入後,後期作業を実施した。後期作業終了後,質問紙に記入を求 めた。実験終了後,内観報告を聴取した。 分析・統計方法

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 作業課題のパフォーマンスについて,つぶしたエアキャップの粒数を作 業量とし,つぶし損ねたエアキャップの粒数をエラー数としてそれぞれ計 数した。群ごとに1分ごとの平均作業量を算出し,作業曲線を描いた。その 後,前期と後期の合計作業量およびエラー率の平均とSDをそれぞれ算出し た。エラー率の算出はエラー数を計数後,次式[エラー数/全作業量合計 数*100]から算出した。自覚症しらべと二次元気分尺度は,それぞれ実験 前,前期作業後,休息後,後期作業後の各時点において,各因子の得点を 算出後,群ごとに各因子の平均とSDを算出した。ECGは,記録・解析プロ グラムMemCalc / Bonaly Lightによって記録された2秒毎の平均心拍数に 基づき,群ごとに実験前,前期,休息,後期,実験後の各期間における心 拍数の平均とSDを求めた。前期10分時と後期1分時の作業量の平均とSDを それぞれ算出し,群⑵×時期⑵の2要因分散分析を行った。合計作業量と エラー率について,それぞれ群⑵×時期⑵の2要因分散分析を行った。自 覚症しらべと二次元気分尺度についてそれぞれ,群⑵×時期⑷の2要因分 散分析を行った。心拍数について,群⑵×時期⑸の2要因分散分析を行っ た。分散分析の多重比較にはLSD法を用いた。有意水準はp<.05とした。

結果

作業量とエラー率  各群の作業曲線を図1に示した。前期10分時の平均と後期1分時の平均 作業量について,群⑵×時期⑵の2要因分散分析を行った結果,時期要因 の主効果が認められた(F(1, 28)=48.57, p < .01)。群要因の主効果(F(1, 28)=0.02, n.s.)と交互作用は有意でなかった(F(1, 28)=0, n.s.)。した がって,いずれの群においても前期10分時の平均と比較して,後期1分時 では作業量が増加した。各群の合計作業量とエラー率の平均とSDを表1に 示した。合計作業量について,群⑵×時期⑵の2要因分散分析を行った結 果,時期要因の主効果が認められた(F(1, 28)=21.35, p < .01)。群要因の

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主効果(F(1, 28)=2.22, n.s.)と交互作用は有意でなかった(F(1, 28)= 0.46, n.s.)。したがって,いずれの群も前期と比較して,後期の作業量は 増加した。エラー率について,群⑵×時期⑵の2要因分散分析を行った結 果,群要因の主効果(F(1, 28)=1.70, n.s.),時期要因の主効果(F(1, 28) =0.51, n.s.),交互作用ともに有意ではなかった(F(1, 28)=0.04, n.s.)。 図1 各群における平均作業量の時系列変化 表1 各群の合計作業量とエラー率の平均とSD 群 平均 前期 SD 平均 後期 SD 合計作業量 積極的休息統制 482.00449.40 66.6187.15 559.07506.80 107.8083.83 エラー率(%) 積極的休息統制 0.420.60 0.470.63 0.480.71 0.400.63 自覚症しらべ  実験前,前期作業後,休息後,後期作業後の各時期における各群の因子 ごとの平均得点とSDを表2に示した。因子ごとに群⑵×時期⑷の2要因分 散分析を行った。その結果,ねむけ感得点では時期要因の主効果が有意傾 向であった(F(3, 84)=2.19, p < .10)。群要因の主効果(F(1, 28)=2.40, n.s.) と交互作用は有意ではなかった(F(3, 84)=0.95, n.s.)。多重比較の結

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果,実験前と比較して,前期作業後と後期作業後のねむけ感得点は低かっ た(p < .05)。だるさ感得点では時期要因の主効果が有意であった(F(3, 84)=14.80, p < .01)。群要因の主効果(F(1, 28)=0.04, n.s.) と交互作用は 有意ではなかった(F(3, 84)=0.39, n.s.)。多重比較の結果,前期作業後 のだるさ感得点が最も高かった(p < .05)。休息後と比較して,実験前と後 期作業後のだるさ感得点が高かった(p < .05)。ぼやけ感得点では,時期要 因の主効果(F(3, 84)=20.02, p < .01)と交互作用が有意であった(F(3, 84)=3.16, p < .05)。群要因の主効果(F(1, 28)=0.24, n.s.) は有意ではな かった。交互作用の分析の結果,いずれの群においても時期要因の単純主 効果が有意であった(p < .01)。多重比較の結果,積極的休息群では,実験 前および休息後と比較して,前期作業後と後期作業後のぼやけ感得点が高 かった(p < .05)。統制群では,後期作業後のぼやけ感得点が最も高かった (p < .05)。不快感得点では時期要因の主効果が有意であった(F(3, 84)= 6.14, p <.01)。群要因の主効果(F(1, 28)=0.30, n.s.)と交互作用は有意で はなかった(F(3, 84)=0.19, n.s.)。多重比較の結果,実験前および休息後 と比較して,前期作業後と後期作業後の不快感得点は高かった(p < .05)。 不安定感得点では,群要因の主効果(F(1, 28)=1.07, n.s.),時期要因の主 効果(F(3, 84)=0.94, n.s.),交互作用ともに有意ではなかった(F(3, 84) =0.50, n.s.)。 表2 各群における自覚症しらべの各因子の平均得点とSD 群 実験前 前期作業後 休息後 後期作業後 平均 SD 平均 SD 平均 SD 平均 SD ねむけ感 積極的休息統制 8.47 2.45 7.93 2.49 7.80 2.62 8.00 3.44 11.00 3.93 8.73 3.56 9.80 4.33 9.00 4.12 だるさ感 積極的休息統制 7.93 3.01 9.67 2.09 6.07 1.03 8.33 2.55 7.93 2.87 9.67 2.61 6.33 1.80 7.53 3.27 ぼやけ感 積極的休息統制 6.53 1.73 8.40 2.23 6.20 1.47 7.93 1.94 6.67 2.29 7.73 2.49 7.07 1.49 8.87 2.45 不快感 積極的休息統制 7.67 3.13 8.60 3.04 7.00 1.65 8.80 3.59 6.93 2.66 8.33 2.29 6.87 1.81 8.20 2.40 不安定感 積極的休息統制 7.20 2.01 7.53 2.13 6.40 1.40 7.27 2.91 8.33 3.77 7.93 3.15 7.80 3.12 7.93 3.31

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二次元気分尺度  実験前,前期作業後,休息後,後期作業後の各時期における各群の因子 ごとの平均得点とSDを表3に示した。因子ごとに群⑵×時期⑷の2要因分 散分析を行った。その結果,ポジティブ覚醒得点では,群要因の主効果(F (1, 28)=1.98, n.s.),時期要因の主効果(F(3, 84)=0.15, n.s.),交互作用 ともに有意ではなかった(F(3, 84)=1.14, n.s.)。ネガティブ覚醒得点で は,群要因の主効果(F(1, 28)=5.06, p < .05)と時期要因の主効果(F(3, 84)=17.96, p < .01)が有意であり,交互作用は有意傾向であった(F(3, 84)=2.38, p < .10)。交互作用の分析の結果,前期作業後と後期作業後にお ける単純主効果が有意であった(p < .05)。前期作業後と後期作業後ではい ずれも統制群と比較して,積極的休息群のネガティブ覚醒得点が高かった (p < .05)。いずれの群においても時期要因の単純主効果が有意であった(p < .05)。多重比較の結果,積極的休息群,統制群ともに,実験前および休 息後と比較して,前期作業後と後期作業後のネガティブ覚醒得点は高かっ た(p < .05)。快適度得点では時期要因の主効果が有意であり(F(3, 84) =9.06, p < .01),交互作用は有意傾向であった(F(3, 84)=2.64, p < .10)。 群要因の主効果は有意ではなかった(F(1, 28)=0.24, n.s.)。交互作用の分 析の結果,後期作業後の単純主効果が有意であり,積極的休息群と比較し て,統制群の快適度得点は高かった(p < .05)。積極的休息群における時期 要因の単純主効果が有意であった(p < .01)。多重比較の結果,積極的休息 群では,前期作業後および後期作業後と比較して,実験前と休息後の快適 度得点が高かった(p < .05)。覚醒度得点では,群要因の主効果(F(1, 28) =6.61, p < .05)と時期要因の主効果が有意であった(F(3, 84)=13.86, p < .01)。交互作用は有意ではなかった(F(3, 84)=0.89, n.s.)。いずれの時 期においても統制群と比較して,積極的休息群の覚醒度得点は高かった(p < .05)。多重比較の結果,実験前および休息後と比較して,前期作業後と後 期作業後の覚醒度得点は高かった(p < .05)。

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表3 各群における二次元気分尺度の各因子の平均得点とSD 群 実験前 前期作業後 休息後 後期作業後 平均 SD 平均 SD 平均 SD 平均 SD ポジティブ覚醒 積極的休息統制 2.20 3.30 2.53 2.53 2.67 2.66 1.53 3.36 0.67 2.85 0.93 4.18 0.40 3.20 1.27 4.01 ネガティブ覚醒 積極的休息統制 -4.93 2.87 0.13 4.63 -4.73 2.46 0.07 3.20 -5.73 3.53 -3.13 3.27 -5.47 2.97 -3.47 4.17 快適度 積極的休息統制 3.57 2.39 1.20 2.91 3.70 2.30 0.73 2.59 3.20 2.05 2.03 2.74 2.93 2.15 2.37 2.55 覚醒度 積極的休息統制 -1.37 1.96 1.33 2.40 -1.03 1.14 0.80 2.01 -2.53 2.85 -1.10 2.56 -2.53 2.22 -1.10 3.20 心拍数  各群における心拍数の推移を図2に示した。群⑵×時期⑸の2要因分散 分析を行った結果,時期要因の主効果(F(4, 112)=10.84, p < .01)と交互 作用が認められた(F(4, 112)=3.15, p < .05)。群要因の主効果は有意では なかった(F(1, 28)=0.16, n.s.)。交互作用の分析の結果,積極的休息群に おける時期要因の単純主効果と,統制群における時期要因の単純主効果が いずれも有意であった(p < .01)。多重比較の結果,積極的休息群では,実 験前および実験後と比較して,前期作業,休息,後期作業時の心拍数が高 かった(p < .05)。統制群では,実験前,休息および実験後と比較して,前 期作業と後期作業時の心拍数が高かった(p < .05)。 図2 各群における心拍数の推移

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考察

 本研究では積極的休息が作業課題のパフォーマンス,自覚疲労および気 分に及ぼす影響を検討した。休息時に座位でストレッチを行う積極的休息 群と開眼座位安静の統制群を設定した。本研究の結果,統制群では後期作 業後のぼやけ感得点が最も高く,一方,積極的休息群では前期と後期の作 業終了後のぼやけ感得点に差はなかった。積極的休息群では作業後よりも 実験前と休息後の快適度得点が高かった。統制群と比較して,積極的休息 群の覚醒度得点は高かった。積極的休息群では,実験前と実験後よりも, 前期作業,休息,後期作業時の心拍数が高く,一方,統制群では,実験前, 休息,実験後よりも前期作業と後期作業時の心拍数が高かった。パフォー マンス,だるさ感得点,不快感得点,ねむけ感得点に群差はなかった。  パフォーマンスについて,積極的休息群と統制群のいずれも,前期作業 10分時と比較して後期作業1分時の作業量は増加し,前期と比較して後期 の合計作業量も増加した。内田クレペリン精神検査には前期作業量に比べ て後期作業量が増加する一般傾向がある。本実験の作業曲線は内田クレペ リン精神検査と類似した推移を示した。したがって,本実験におけるエア キャップつぶしは作業課題として適切であったものといえる。各群のエ ラー率に有意差はなかった。本研究において各群の前期と後期のエラー率 の平均はいずれも0.42~0.71の範囲であり,もともとエラー数が少なかっ た。そのために積極的休息によるエラー率のさらなる減少は生じなかった ものと考えられる。  自覚症しらべについて,統制群では後期作業後のぼやけ感得点が最も高 いことから,自覚疲労が増加したものと考えられる。一方,積極的休息群 では,前期作業後および後期作業後と比較して,実験前と休息後のぼやけ 感得点が低いことから,積極的休息によってぼやけ感が実験前の水準まで 低下した。ぼやけ感因子は目のしょぼつき,疲れ,乾き,痛みなど目の疲 労にかんする項目であった。ストレッチによる積極的休息は血流を増加さ

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せることから(紀平, 2012),目の疲労回復にも効果をもたらした可能性が ある。ねむけ感得点,だるさ感得点,不快感得点には群による差はなかっ た。前期作業後と後期作業後のねむけ感得点は実験前よりも低かったこと から,いずれの群においても作業課題の遂行によって覚醒水準が上昇した ものと考えられる。だるさ感得点は前期作業後に最も高く,実験前と後期 作業後のだるさ感得点は休息後よりも高かった。だるさ感因子は腕や足の だるさ,手指や腰の痛み,肩のこりにかんする項目から構成されており, 本研究の作業課題によって身体的な疲労の自覚症状が増加したといえる。 不快感得点は,実験前および休息後と比較して,前期作業後と後期作業後 に増加した。不快感因子は頭が痛い,頭が重い,めまいがするなどの項目 から構成されていたことから,作業課題によって頭痛やめまいといった不 快感が生じたものと考えられる。不安定得点には有意差がなかった。不安 定因子は不安な感じがする,憂うつな気分だ,落ちつかない気分だ,いら いらするなどの項目から構成されており,本研究の作業課題は不安,抑う つ,いらいらなどの不安定感に影響を及ぼさなかったといえる。したがっ て,ぼやけ感において積極的休息による自覚疲労の回復がみられたことか ら,積極的休息による自覚疲労の回復が認められた。  二次元気分尺度について,両群ともに実験前および休息後と比較して, 前期作業後と後期作業後のネガティブ覚醒得点が高かった。また,前期作 業後と後期作業後において積極的休息群のネガティブ覚醒得点は統制群よ りも高かった。二次元気分尺度の得点は-10点から10点の範囲で変化し, ネガティブ覚醒得点が高い場合,いらいらした状態であり,負の値の場合, 落ち着いた,リラックスした状態を表す(坂入・征矢, 2003)。統制群と比較 して,積極的休息群では前期と後期の作業後のネガティブ覚醒得点が高い ものの,得点はほぼ0レベルであり,実質的にネガティブな気分は生じて いないと考えられる。この結果は,自覚症しらべの結果から,作業後に頭 が重い,めまいがするなどの不快感得点が増加したが,不安,憂うつ,い らいらなどの不安定得点に有意差はなかったことと合致する。ポジティブ

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覚醒得点が高い場合,活気にあふれた,いきいきとした状態であり,負の 値の場合,無気力,だらけた状態を表す(坂入・征矢, 2003)。本研究の結 果,ポジティブ覚醒得点には積極的休息の有無と時間経過による影響はな かった。覚醒度得点について,いずれの時期においても積極的休息群の覚 醒度得点は統制群よりも高く,両群ともに実験前および休息後と比較して, 前期作業後と後期作業後の覚醒度得点は増加した。積極的休息群では実験 前と休息後の快適度得点が前期作業後と後期作業後よりも高かった。一方, 統制群の快適度得点には時間経過による変化はなかった。後期作業後にお いて統制群の快適度得点は積極的休息群よりも高かった。覚醒度と快適度 の結果から,統制群は積極的休息群よりも覚醒水準が低く,落ち着いた状 態で作業課題を遂行したものと考えられる。統制群と比較して,積極的休 息群の快適度得点には増減が大きく,前期作業後に快適度が低下し,休息 後に快適度が実験前の水準に回復した。その後,後期作業後では統制群の 快適度得点を下回るほど急峻に積極的休息群の快適度得点は低下した。積 極的休息群でみられた後期作業後の快適度得点の低下は休憩後に増加した 快適度得点のリバウンド現象であると考えられる。  心拍数について,積極的休息群では,実験前および実験後と比較して, 前期作業,休息,後期作業時の心拍数が高かった。一方,統制群では,実 験前,休息および実験後と比較して,前期作業と後期作業時の心拍数が高 かった。作業時の心拍数の増加は作業課題による身体負荷に起因したもの と考えられる。積極的休息群では休息時の心拍数が実験前と実験後よりも 高く,作業時と同程度の水準であった。したがって,座位での5分間のスト レッチによる積極的休息は作業課題と同程度の身体負荷であったものの, 休息後の快適度得点が増加したことから,気分の改善をもたらし,後期作 業後のぼやけ感の上昇を抑制したものと考えられる。  本研究の限界点は,エアキャップつぶしという作業課題を採用した先行 研究がほとんどなく,結果を直接的に比較できないことである。しかしな がら,内田クレペリン精神検査に類似した作業曲線が得られたことから,

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エアキャップつぶしは作業課題として妥当かつ有効な課題であると思われ る。自覚疲労,気分,心拍数の結果から,ストレッチの実施により積極的 休息群の覚醒水準は統制群よりも高かった。積極的休息群はぼやけ感の上 昇を抑制し,覚醒水準と快適度を高めたことから,自覚疲労の回復を促進 したと考えられる。パフォーマンスには群による差がなかったものの,統 制群と比較して,積極的休息は作業に伴う自覚疲労を促進的に回復させる ことが明らかとなった。 引用文献

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参照

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