特別支援学校のいわゆる地域支援機能について 利用統計を見る
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(2) 盲・ろう・養護学校のセンター的機能を担当・推進する教師は常に確認した方がよいであろう。 盲・ろう・養護学校のセンター的機能について,一人一人の子どもの多様なニーズを細切れにし て,その一部を小学校や中学校等の学級担任が盲・ろう・養護学校の教師に丸投げして,盲・ろう・ 養護学校の教師がそれを丸抱えするという構図をつくってはならない。盲・ろう・養護学校の教師 の専門性は別のところにある。. そこで,本稿では,この地域支援機能について,集中的に検討した6回のある学習会の 記録をもとに,検討することを目的とする。. Ⅱ.対象とする学習会の概要. 1.学習会の趣旨や参加者の属性 この学習会は,障害児教育について広く学ぶために,筆者がまとめ役となり2000年11月 に設立した。特別支援学校の教師や寄宿舎指導員,小・中学校等(以下,小学校等)の教 師,大学院生や特別支援教育特別専攻科学生,教育委員会関係者などの参加がある。テー マに応じて,話題提供者を指定する。司会と記録は筆者が行う。記録は,公表(次回の案 内状に添付)するため,話題提供者に内容の確認を求める。. 2.開催日時やテーマの概要など. 表1. 本稿で扱った学習会の開催日時とテーマの一覧(最近3年度分). 第48回. 2005/04/15. 知的障害児学級在籍児の交流学級での学習について. 第49回. 2005/05/13. ろう学校の地域支援の実際. 第50回. 2005/06/10. 誤学習の芽だけを摘み,後は待つ,動作訓練の実際. 第51回. 2005/09/09. 養護学校の進路指導の実際-自立に関するパラダイム転換を踏まえて-. 第52回. 2005/10/14. 教員研修の在り方-初任者研修を通して-. 第53回. 2005/11/11. あらためて「特殊学級」の価値-日々の実践,特に交流活動の在り方-. 第54回. 2005/12/09. 中学校特殊学級の現状と可能性. 第55回. 2006/01/13. 「発達障害」という行政用語の空虚性と危険性,そして可能性. 第56回. 2006/03/03. 小学校の校内支援体制の実際と課題. 第57回. 2006/04/14. 子ども理解のためのよりよいフレームに私自身が気づいたとき(1). 第58回. 2006/05/12. 子ども理解のためのよりよいフレームに私自身が気づいたとき(2). 第59回. 2006/06/16. 子ども理解のためのよりよいフレームに私自身が気づいたとき(3). 第60回. 2006/07/21. 子ども理解のためのよりよいフレームに私自身が気づいたとき(4). 第61回. 2006/09/08. 「学校教育法等の一部を改正する法律」に関する行政説明を受けて. 第62回. 2006/10/13. 改正学校教育法第75条第1項と第71条の3との関係(1). 第63回. 2006/11/10. 改正学校教育法第75条第1項と第71条の3との関係(2). 第64回. 2007/02/09. 改正学校教育法第75条第1項と第71条の3との関係(3). 第65回. 2007/03/10. 改正学校教育法第75条第1項と第71条の3との関係(4). 第66回. 2007/04/13. 南アルプス市教育支援センターのこの一年間の実績と見えた課題. 第67回. 2007/06/08. 改正学校教育法第75条第1項と第71条の3との関係(5). 第68回. 2007/07/06. 改正学校教育法第75条第1項と第71条の3との関係(6). 第69回. 2007/09/14. 障害児教育の中のヒドゥン・カリキュラム(1). - 71 -. ※予定.
(3) 原則的に毎月第二金曜日19時30分から21時30分まで。山梨大学L440教室にて開催。各回, テーマの設定理由を筆者が冒頭に説明(10分程度)して,話題提供者による情報提供(60 分程度)を受けて,意見交換(50分程度)を展開する。参考に,過去3年度分の開催日時 とテーマを表1に示す。本稿執筆(2007年7月の第68回実施)時点で,128人(延べ824人) の参加。1回あたりの参加者数の平均12.1人,標準偏差4.0人である。. 3.考察のための題材として扱う学習会とその記録 2006年10月から2007月7月までの6回とする。テーマは「改正学校教育法第75条第1項と 第71条の3との関係」とした。各会の話題提供者の属性や参加者数などの情報を表2に示す。. 表2. 対象とした学習会の開催日時や話題提供者の属性等. 回. 開催日時. 話題提供者の属性. 参加者数. 62. 2006/10/13. A氏:教育行政関係者. 11人. 63. 2006/11/10. B氏:特殊学級担任. 16人. 64. 2007/02/09. C氏:盲学校教員. 65. 2007/03/10. D氏:養護学校(知的障害)教員. 67. 2007/06/08. E氏:特別支援学校(知的障害)教員. 68. 2007/07/06. F氏:大学教員. 8人 9人 10人 8人. Ⅲ.学習会を実施して得られた知見. 各話題提供者から発表された情報や意見,およびそれを踏まえて行われた討論で得られ た事柄を各会の記録をもとに記述する。. 1.A氏(教育行政関係者)からの話題提供を受けて (1)支援の要請の前に各小学校等で行うべき検討の深さの重要性 教育センターや盲・ろう・養護学校への小学校等からの教育相談は増えている。各小学 校等や各教師が悩みを抱え込んで困り果てるという構図は減っていることは評価できる。 ただ,外部機関への相談の前に行うべき,小学校等の中での検討の質が,その後の経過を 左右する。相談の前に各校で最低限押さえるべき事項が押さえられるための具体的な仕組 みをつくらなければならないであろう。 (2)教師のアイデンディティー 連携がよりよく機能するには, 「各機関が自らの専門性の範囲・役割(アイデンティティー) を自覚すること 」「他の機関のアイデンティティーを理解・受容すること 」「一人の子ど もを目の前に,関係者全員が総合的・全体的な視点が持てること」が条件となる。そして, 「多様なニーズを持つ子ども集団に対して授業を展開できる能力」という教師のアイデン ティティーについて,教師はもっと自信を持つべきであり,他職種の前で必要以上に謙虚 - 72 -.
(4) にならずにやっていくべきであろう。 (3)「個別の指導計画」と「個別指導の計画」 小学校等での特別支援教育の実施について,通常の学級から子どもを取り出して指導す る,つまり個別指導というイメージがある。「個別の指導計画」がそれに特化されて,「個 別指導の計画」として作成されることがある。しかし,小学校等での特別支援教育の実施 とは,学級という集団,あるいは学年・学校という集団の中で,その子どもがその子ども らしくよりよく活躍できる配慮について個別的に考えて,実施するものである。 学級崩壊が,特別な配慮を必要とする子どもの行動を一つのきっかけに進行することは 事実ある。その子どもを取り出して対応できるような仕組みを求める教師がいることも事 実であり,特別支援教育がそのような方向に傾斜することは防ぎたい。. 2.B氏(特殊学級担任)からの話題提供を受けて (1)小学校等の教師を支えるための仕組みとしての地域支援機能 特殊学級の新担任に顕著に問われることは,在籍する子どもの障害特性とその配慮に関 する専門的な知識というよりは,授業をそこそこ展開できるという教師に一般的に求めら れる能力,いわば授業力である。保護者は,教師がよりよい授業をして,自分の子どもが 伸びる姿を見て,その教師を認める。新担任がそのような課題を乗り越える際に,校内の 同僚・管理職,そして学外の機関(盲・ろう・養護学校など)の支えが必要になる。つま り ,「小中学校等に在籍する障害のある児童生徒等の教育(学校教育法第73条の3)」を行 う教師を支えるための地域支援機能への期待は大きい。 (2)子ども理解の枠組みを提供するための地域支援機能 小学校等の教師がもつ理解の枠組みを超える行動 ,「何でそういうことするのかな」と いうエピソードを,教師がどう読み解くかが問われる。そのためのさまざまな枠組みは盲・ ろう・養護学校などに蓄積されている。その提供こそが地域支援機能への期待ではないか。. 3.C氏(盲学校教員)からの話題提供を受けて (1)小学校等の教師の「アンテナ」の感度をあげるための地域支援機能 例えば弱視や難聴,二次的な障害のないADDやLDなどの発達上のリスクは,教師の持つ アンテナに受信されにくく,発達の偏りや歪みとなってしまうことがある。 例えば,弱視の子どもに教師が「これ見えますか」と問い,子どもが「見えます」と応 じると,教師は安心してしまい,必要な手だてを講じないままになる。例えば ,「これ見 えますか」と教師が問い,子どもが「見えません」と応じ,教師が「だったら,前の席の 方に移動しなさい」と,事例によっては問題解決には結びつかない対応に終始することが ある 。「見る」に含まれる,例えば「感覚 」「知覚 」「認知」の各レベルに関する知識がな いと,教師の持つアンテナに弱視という発達上のリスクは受信されない。発達上のリスク を最初に受信しなければならないのが,紛れもなく小学校等の教師である。そのような意 - 73 -.
(5) 味で,特別支援学校の専門性を小学校等の教師自身に向けることが急務である。 (2)地域支援機能の個別具体的な検討の必要性 人的な配置や制度の運用,校内人事などのさまざまな条件と絡む問題ではあるが,地域 支援機能の具体的なメニューとして ,「誰(子ども,保護者,担任 )」を「どこ(特別支 援学校内,校外 )」で支援するのかという判断にさまざまな見解がある。いずれにしても 一長一短があるので,個別的に十分な検討・検証が求められているのではないか。. 4.D氏(知的障害養護学校教諭)からの話題提供を受けて (1)知的障害養護学校の地域支援機能の運用の難しさ 知的障害養護学校の地域支援機能の対象は,法令上,支援を要請した小学校等(の教師) が対象である。軽度の知的障害やLD・ADHDなどの子どもはこれまでも小学校等に在籍して いて,教師は自然に対応してきた。ここに,知的障害養護学校がその該当の子どもに直接 的にかつ濃厚にかかわることには疑問がある。小学校等(の教師)を支援する際には, 「こ の子どもの学校教育の責任はあなた(担任)です」と強調する態度が必要ではないか。 (2)特別支援教育コーディネーターの適任者 何らかの原因で担任とその子ども(やその保護者)との関係に不具合が生じそうな状況 を,より早期に発見・調整できる立場にあるのが,校長や教頭である。その調整の仕方の 例として,校長が,外部の機関の意見を聞く機会を設けることがある。保護者から直接的 に相談を受ける,または,その子どもと個別的に継続的なかかわりを行う校長や教頭もい る。特別支援教育に関する会議を制御するという学校経営・運営の責任者は校長や教頭で ある。よって,小学校等での特別支援教育コーディネーターとしての役割は,本来,教頭 や校長が果たしてきたものではないか。. 5.E氏(知的障害特別支援学校教員)からの話題提供を受けて (1)「発達障害(文部科学省型)」と特別支援学校との関係 通常の学級にいる文部科学省型の発達障害の子どもは,歴史的にも,教育職員免許法上 も,盲・ろう・養護学校教諭の専門領域ではなかった。小学校等の教諭が地道に対応して きた。そして,通常の学級には通常の学級としての,特別支援学校とは異なる,特有の雰 囲気や文化がある。よって,通常の学級の中に特別支援学校に蓄積されているノウハウを 安易に勧める行為は危険かもしれない。 (2)障害児教育教諭としてのアイデンティティーのゆらぎ 特別支援学校のみならず,各学校には,さまざまな機能や業務が追加されている。それ らを,お人好し的にまたは無批判的に引き受けながら,目の前にある仕事に追われている のが,現在の教員の姿である。自らが所属する学校の子ども以外の子どもの教育にまで関 与せざるを得ない状況でもあり,自分はいったい誰だったのか,自分は何のためにこの学 校に所属しているのかと気持ちがゆらぐことが多い。 - 74 -.
(6) (3)特別支援学校自体の本来の機能の維持 以前に比べて,校内で子どもの教育について熱く語り合う機会が減ってしまった。若い 教師や赴任した教師は戸惑うが,誰に質問してよいかわからず,一年間がずるずる経過し てしまうこともあるかもしれない。そのような意味で,外の支援ではなく,内の支援にウ エイトをかけて,自校の教育力の基盤固めをしたい。. 6.F氏(大学教員)からの話題提供を受けて (1)特別支援学級教員を積極的な意味で安心させるような地域支援の模索 特別支援学級担任が感じているさまざまな困惑について,どの担任も同じような悩みを もっているものである 。「一所懸命教えているのに,何でわかってくれないの」という焦 りがからまわりすることもある。同じような悩みをお互いにもっていることがわかるだけ で焦りから解放されて,安心感をもてる。そのようなことを促進するような機会の提供と しての地域支援機能に期待がある。 (2)特別支援学級の教師の指導法 特別支援学級の教師は,就学前部分の発達理論やそれに連動する指導法を学ぶ機会がな い。これまで出会ってきた子どもたちから学んだことをヒントに,次の子どもにかかわる。 そのような経験主義となると,全く異なるタイプの子どもに出会ったときに,対応が困難 になる。そのためにも,特別支援教育に関する専門知識が必要になり,それを学べるよう な機会が望まれる。. Ⅳ.おわりに. 以上のとおり,特別支援学校の地域支援機能に期待する面は多々あることがわかる。そ の期待が,一人一人の子どもにとって最善の結果となるように,関係者には慎重な態度が 求められる。 平成18年度から山梨県で開始された,山梨県教育庁新しい学校づくり推進室を事務局と する山梨県特別支援教育体制推進事業についてふれる。筆者は,その事業の中の「聴覚障 害専門部会」の委員として参加している。平成19年度第1回会議(平成19年7月5日開催) で各委員の各立場から「支援体制に関する様子と課題」について提案するように,当部会 の事務局から事前に要請があった。そのため,本稿で考察した事項を踏まえて提案をした。 最後に,その際に配布した書面を以下に示すこととする。. - 75 -.
(7) 資料. 広域特別支援連携協議会聴覚障害専門部会に筆者が提出した書面(一部省略). 支援体制に関する様子と課題について(メモ). 私的研究会(裏面)。標記に関わるテーマ5回(のべ54人参加)。 以下,その検討より。解説は,この部会に当てはめた,あくまでも例として。. 第71条の3. 特別支援学校においては,第71条の目的を実現する※1ための教育を行うほか,. 幼稚園,小学校,中学校,高等学校又は中等教育学校の要請※2に応じて,第75条第1項に 規定する児童, 生徒又は幼児の教育※3に関し必要な助言又は援助を行うよう努めるものとする。 第75条. 小学校,中学校,高等学校,中等教育学校及び幼稚園においては,次項各号のいずれかに該当す. る児童,生徒及び幼児その他教育上特別の支援を必要とする児童,生徒及び幼児に対し,文部科学大臣の 定めるところにより,障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育※4を行うものとする。. ※1 「センター機能」などといって外に出ている場合じゃないのでは? ろう学校自身の内部は充実しているか? ろう学校の全職員が「聾」や「聴覚障害」に関する専門性を共有しているか? ※2. ろう学校への「要請」の前に,各小学校は自校の校内支援委員会でその児童生徒の諸課題を十分に検討し. て,全職員でそれを共有しているか? 「特殊にお任せ」になっていないか? ※3. ろう学校が行う必要な助言又は指導の対象は「児童生徒の教育」であり,「児童生徒」そのものではない。. 「児童生徒の教育」をつかさどるのは,その小学校(の担任)である。 ※4. 各小学校でこれができるための基盤づくりの責任は,その設置者(市町村)である。必要な手当て,例え. ば, 「スロープやエレベータ等の施設の整備」 「障害のある児童生徒の学習活動をサポートする学習機器等の設置」 「障害のある児童生徒の教育に関する専門性の高い教員の配置」「ボランティアによる援助等地域における支援」 「通学時の安全性の確保」「教育の内容と方法についての保護者との共通理解の促進」など(文部科学省「就学指 導資料」より作成)を市町村の責任で行うのが,筋である。. (文責. 古屋義博). 文献. 1) 文部科学省(2006)学校教育法等の一部を改正する法律の概要.文部科学省. 2) 文部省(2000)盲学校,聾学校及び養護学校学習指導要領(平成11年3月)解説-総 則等編-.海文堂出版. 3) 古屋義博・岡輝彦・広瀬信雄(2006)政策としての特別支援教育に関する多くの疑問. 教育実践学研究(山梨大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要).11, 51-74.. - 76 -.
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