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自己管理とその支援方法に関する行動分析学的研究

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Academic year: 2021

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Rikkyo Psychological Research

2017 Vol. 59, 61-63

博士論文要旨

自己管理とその支援方法に関する行動分析学的研究

(2016 年 9 月博士学位授与)

 

立教大学  齋藤 正樹 

Applied behavior analytic studies on self-management

Masaki Saito (Rikkyo University)

 本論文では,これまで企業や組織で主に実施 されてきたパフォーマンス・マネジメント(e.g., Daniels, 1989; Daniels & Daniels, 2004)を個人のパ フォーマンスに実施し,その行動の実行を支援す る上で着目するべき条件を探ることを目的とし た。自己管理が求められる行動の自然な結果(最 終的な成果が即時にかつ確実にはもたらされず,

反応努力が高くなりがち(Malott, 1989, 1992)な)

を明確化させることがその条件の1つであると考 えられた。その明確化をパフォーマンス・マネジ メントの代表的な手法である目標設定とパフォー マンス・フィードバックによって強め,自己管理 の促進を試みた。

 本論文の4つの研究では,大学生あるいは大学 院生を参加者として,単一事例研究法を用いて個 人単位でのデータの収集・分析を行った。またデー タ収集と研究手続きの遂行は,参加者の自己記録 とメールによるやり取りによってなされた。一般 的に自己管理が求められるものには,時間,物・

お金,健康が挙げられるため,それらに関するも のを自己管理が求められる行動として設定した。

4つの研究を通して,個人の日常的な行動の実行 を支援する上で着目するべき条件を検討した。

 研究1では,目標設定とパフォーマンス・フィー ドバックが,論文執筆への時間配分の自己管理に 与える効果を検証した。参加者は男子大学院生3 人であった。標的行動である論文執筆の定義は,

“ 論文を投稿(提出)し,受理・採択される(合 格となる)までに行われる執筆・修正と投稿準備 のこと ” であった。従属変数は,論文執筆時間と,

参加者自身が判断する自己調節可能な時間であっ た。介入方法である目標設定は,論文執筆に配分 する目標時間を設定することであり,パフォーマ ンス・フィードバックは,参加者が自身の実際の 論文執筆時間と目標時間や,それらの差を,自己 記録を通じて確認するあるいは研究実施者から メール文で知らされることであった。研究フェイ ズはそれぞれ,ベースライン期,目標設定期と自 己生成フィードバック期,そして目標設定とパ フォーマンス・フィードバック期に分かれていた。

 その結果,本研究で実施した介入の効果が見ら れたのは,3人の参加者のうち1人だけであった。

残りの2人の参加者のうち1人の,自己調節可能 な時間に占める論文執筆時間の割合の増加は,剰 余変数である公開フィードバックの影響によるも のであった。公開フィードバックを受けることが なかったもう1人の参加者の,自己調節可能な時 間に占める論文執筆時間の割合が増加することは なかった。研究1では,個人の行動の実行を促進 するために着目するべき条件として,他者(特定 の)からの言葉かけや促し,締切も挙げられるこ とが分かった。

 研究2では,目標設定が研究活動への時間配分 の自己管理に与える効果を検証した。参加者は大

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学学部生2人と,大学院博士課程後期課程修了者 1人の合計3人であった。標的行動である研究活 動の定義は “ 研究計画を生成・実施し,論文を提 出(投稿)し,合格となる(受理・採択される)

までに行われる執筆・修正と提出(投稿)準備の こと ” であった。従属変数は,研究活動時間と,

参加者自身が判断する自己調節可能な時間であっ た。介入方法である目標設定は,研究活動に配分 する目標時間を設定することであった。研究1 指摘を踏まえ,自己記録用紙に目標設定の注意事 項と称したチェック項目を設けた。チェック項目 の内容は,目標時間の写真を携帯電話の待ち受け 画面に設定したり,メモ書きにしたりすることを 促し,極力常に目に見える形にしておくようにす る教示であった。その他にも,目標設定の効果に 影響を与えるとされる変数についてのチェック項 目を設けた。研究フェイズは,ベースライン期と 目標設定期の2つに分かれていた。

 その結果目標設定は,研究活動への時間配分の 自己管理に効果を持つことが分かった。3人の参 加者のうち1人は,途中で研究を離脱したものの,

残りの2人の参加者の,自己調節可能な時間に占 める研究活動時間の割合は増加した。研究2では 着目すべき条件として,研究1と同様に締切が重 要であることが再確認された。

 研究3では,片づけの自己管理に与えるパ フォーマンス・フィードバックの効果を検証した。

参加者は大学院生3人であった。標的行動である 片づけの定義は,“ 自身が所有する生活空間に置 かれた自身が所有する物品のうち,ある時点で不 要になった物品,あるいはすでに不要ではあった が,未処分のままであった物品を自分で分類・処 分すること ” であった。従属変数は,作業の全体 遂行率と,空間の整理具合(先週の記録期間最終 日と比べてどう変化したかの7段階評価)であっ た。介入方法であるパフォーマンス・フィード バックはグラフによるもので呈示され,その内容 は,標的行動の下位項目の領域別の遂行数(最新 週の),標的行動の全体遂行率(記録開始週から 最新週までの),そして片づけを行っている場所

の整理具合の評価点の累積(記録開始週から最新 週までの)を示したものであった。研究フェイズ は,ベースライン期とパフォーマンス・フィード バック期の2つに分かれていた。

 その結果,パフォーマンス・フィードバックが 片づけの自己管理に与える効果はないことが分 かった。研究3で新たに分かった着目するべき条 件は,研究1や研究2の従属変数であった自己調 節可能な時間が十分にあるかどうかや,参加者ご とに固有の現在の随伴性であることが分かった。

 研究4では,健康行動の自己管理に与える目標 設定とパフォーマンス・フィードバックの効果を 検証した。参加者は大学生3人であった。標的行 動である健康行動の定義は “ 体重の適切な増減・

維持あるいは健康の増進・維持につながるとされ る食生活と運動習慣 ” であった。従属変数は,1 日ごとの下位項目の全体遂行率であった。介入方 法の目標設定とパフォーマンス・フィードバック はそれぞれ,研究2,研究3と同様のやり方で実 施された。研究フェイズは,ベースライン期と目 標設定 + パフォーマンス・フィードバック期の2 つに分かれていた。

 その結果,目標設定とパフォーマンス・フィー ドバックが健康行動の自己管理に効果があること が分かった。研究4までの研究で分かった着目す るべき条件は,簡便化などの,自己記録を動機づ ける仕組み作りである。また,アルバイトが健康 行動の自己管理に影響を与える可能性があると考 えられた。

 以上の知見から個人の行動の実行を支援するた めには,標的行動の機能分析を行うことが重要で あると論じた。標的行動の自然な結果を明確化す る行動,その行動を補強するもの,締切の設定,

社会的強化,自己調節可能な時間,個人ごとに固 有の現在置かれている標的行動に関する環境,標 的行動の自然な結果の明確化する自己記録などの 行動を動機づける仕組み,といった観点から被支 援者をアセスメントし,その結果に応じた環境整 備を行うことが求められる。これらの条件のうち,

標的行動の自然な結果や社会的強化への感受性

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(e.g., Malott, 2002, 2005),自己調節可能な時間の 機能(e.g., Rachlin, 2010)について,さらなる分 析の可能性が示されている。その3つについて,

介入をより効果的にするための条件や強化履歴を 同定すること(その枠組みやツールの開発も含め)

が,今後に残される研究課題であるとした。

引用文献

Daniels, A. C.(1989). Performance management:

Improving quality and productivity through positive reinforcement. (3rd ed.). Tucker, GA:

Performance Management Publications.

Daniels, A. C., & Daniels, J. E.(2004). Performance management: Changing behavior that drives organizational effectiveness. 4th ed. Tucker, GA:

Performance Management Publications.

Malott, R. W.(1989). The achievement of evasive goals: Control by rules describing contingencies that are not direct acting. In S. C. Hayes

(Ed.), Rule-governed behavior: Cognition, contingencies, and instructional control. (pp.

269-322). New York: Plenum.

Malott, R. W.(1992). A theory of rule-governed b e h a v i o r a n d o r g a n i z a t i o n a l b e h a v i o r management. Journal of Organizational Behavior Management, 12, 45-65.

Malott, R. W.(2002). What OBM needs is more Jewish mothers. Journal of Organizational Behavior Management, 22, 71-87.

Malott, R. W.(2005). Notes from an introspective behaviorist: Achieving the positive life through negative reinforcement. Journal of Organizational Behavior Management, 24, 75-112.

Rachlin, H.(2010). Teleological behaviorism and the problem of self-control. In R. R. Hassin, K.

N. Ochsner, & Y, Trope(Eds.), Self-control in society, mind, and brain. (pp. 506–521). New York: Oxford University Press.

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