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イギリス図書館ボランティア体験記

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Academic year: 2021

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イギリス図書館ボランティア体験記

著者 御船 紗子

雑誌名 同志社大学図書館学年報

号 42

ページ 160‑162

発行年 2017‑03‑31

権利 同志社大学図書館司書課程

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000015402

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 2015年の11月から2016年の5月末までの約半年間、イギリスの図書館でボランティアスタッ フとして働かせてもらった。この半年間は実に学びが多く、貴重な経験をさせていただき、ま た楽しい思い出もたくさんできたため、ここに日本からやってきた外国人である私の視点から 見たイギリスのとある図書館のことを書こうと思う。

 アッパーソープ図書館(Upperthorpe Library)はイングランドで5番目に大きな都市、シェ フィールドにある公立図書館である。私がここでボランティアをすることになったきっかけは、

当時留学していた大学の運営するウェブサイトだった。図書館情報学を学びに留学したつもり が、いざ履修手続きをしに行くと「今年からは修士課程以上の学生にしか履修を認めていない」

というなんともそっけない理由で断られてしまい、私は渡英10日目にして自分の留学した目的 を半分失ってしまった。せめて何らかの形で図書館と関われないものかと考えあぐねていたと きに見つけたのが、この図書館ボランティアのウェブ募集だった。拙い英語で必死に書いた履 歴書を送り気が気でない思いで返事を待ったが、数日経って送られてきたメールには採用も不 採用の記載もなく、ただいつから働けるか教えてほしい旨が記されていた。こうしてあっさり と、私の図書館ボランティアは始まった。

 初出勤の日に私を迎えてくれたのは、笑顔の素敵な中年の男性だった。彼はボランティアス タッフとして1年近く図書館に勤務しており、私の研修を担当してくれるということだった。

案内された図書館内はかなり小さく、中央のカウンターから館内をほぼ全て見渡せてしまえた。

館内の蔵書はサスペンスやミステリーものが一番多く、次点で恋愛ものと子供向け絵本が多かっ た。これは利用者のニーズに合わせた結果らしく、逆に物理学などの専門的な学術書はごく一 部しか置いていない。シェフィールドの公立図書館は全ての蔵書を市議会の運営するデータベー スによって管理されているため、利用者は自分の最寄りの図書館に欲しい本が無くても、市内 の全ての図書館から希望する本を取り寄せることが可能なのだ。ボランティアスタッフは基本 的に9am-6pmの時間帯にカウンターに居るが、ボランティアという性質上、常にこの時間 帯に誰かがいる状態を維持することはかなり難しく、その為自動貸出返却サービスの機械が出 入り口に置いてあった。一通りの説明を受けて印象に残ったのは、館内に入ってすぐの位置に ある、図書館の3分の1を占めようかという児童書スペースと、図書館奥のこぢんまりとした カフェスペースだった。

 働き始めて最初に気付いたことは、この図書館にはかなり多くのボランティアスタッフが勤 めているということだ。二回目の出勤時に挨拶することが出来た図書館責任者のテスはかなり 忙しい人だったが、それでもアッパーソープ図書館には正規の司書がおらず、全ての業務をボ ランティアスタッフによって成り立たせていること、図書館は現在Zestという民間施設の一 部として機能しており、プールやジムに加えミーティングルームも併設されていることなどを 教えてくれた。シェフィールドでは28館ある公立図書館のうち16館がボランティアのみで運営 されている。ボランティアとは即ち無償奉仕で図書館業務に従事するということである。私は 最初、どうやって図書館がそれほど多くのボランティアスタッフを集めているのかわからなかっ たが、後に同僚たちとの交流を通して知ることとなった。そもそも、イギリスと日本ではボラ ンティアの社会的な位置づけが違うのである。日本でボランティアというと、(あくまで私の 主観だが)社会貢献が目的でNPO団体や善意に溢れた一般市民の方々が活動しているイメー ジが強い。一方イギリスではボランティアは何かしらのコミュニティーと関わる社会活動の一 つとして捉えられており、教会や学校が率先してボランティアへの参加を促すだけでなく、学 生が就職活動の際に必須とされる履歴書の就労経験欄を埋めるのにも有効である。このため図

イギリス図書館ボランティア体験記

文学部英文学科 御 船 紗 子

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イギリス図書館ボランティア体験記

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書館には常に一定数のボランティアが存在している環境ができ、その多くは求職者や就職活動 中の学生、イギリスで職を求める移民が占める。私の研修を担当してくれたラフは、以前の勤 め先を辞めて以来転職活動とアルバイトと並行して図書館でのボランティアも続けている。ボ ランティア経験は履歴書の経歴の余白を埋めることが出来るのだ。

 図書館での仕事にも慣れてきた頃、図書館の利用者層についてある発見があった。移民系や 外国人の利用者の割合がかなり多いのだ。そもそもシェフィールドは元が工業都市という歴史 的背景や留学生の多いシェフィールド大学が街の中心部にあることなども相まって、住民の外 国人率が高い。アッパーソープ図書館のあるエリアは中心地から少し外れた、どこか寂れた印 象の住宅街である。移民が多く住んでいるエリアらしく、図書館前の通りには中東系やアジア 系の店がたち並んでおり、近くにモスクもあるが、どれも静かで今ひとつ活気を感じない。こ こら一帯はシェフィールドのスラム街なのだとテスに教えてもらったのは、勤めて半年が経と うとする帰国直前でのことだった。図書館によく来る利用者の中には求職中の方も多く、よく PCコーナーで履歴書を印刷したり、私たちボランティアに求人情報を聞きに来たりしていた(Zest では就職支援活動も行っている)。私自身、イギリスでの生活を通してよそ者の外国人として 扱われる不便さ(一方で自由さもあったが)を感じていたので、異国の地で職を探す心細さに はとても強く共感するものがあった。また、小さい子供を連れた親子の利用者も多く、学校帰 りや併設されたプールのレッスン終わりに寄る親子が多かった。図書館では毎週ボランティア による読み聞かせを行っており、また図書館の隣にはZestが所有する体育館もあったので、

こちらも簡単なお遊戯のイベントが毎週開催されていた。私は読み聞かせとお遊戯イベントの 一つを手伝っていたが、どちらもやはり移民系の子どもたちが多かった。親の多くは子どもが 友だちと少しでも長く遊べるようにと参加させている様子だったが、渡英して間もない家族は このイベントを通じて少しでも子どもに友だちができるように、そして英語に慣れるようにと いう思いもあるようだった。ある日の読み聞かせの時間、中国人のお母さんが娘に絵本を読ん でほしいと私に言ってきたことがあった。私はいつも子どもたちと一緒に本を選ぶだけで実際 読み聞かせをしたことはなかったのだが、私に声をかけてくれたことが嬉しくて一所懸命読ん だ。日本語訛りの英語できちんと物語が伝わったのか不安だったが、読み終わってから女の子 がとても喜んでくれたことと、最初はかなり不安そうに見守っていたイギリス人の同僚が微笑 みかけてくれたことがすごく嬉しかった。お遊戯の時間では最初、東アジア系の私の外見が珍 しいのか一緒に遊ぶのをためらう子どもたちもいたが、すぐに打ち解けることが出来た。子ど もたちと仲良くなるうちに、今日学校であったことや今流行っているジャスティン・ビーバー の新曲、自分の好きな遊びなどいろんなことを教えてくれるようになり、嬉しかった。私も日 本語での名前の書き方や、日本と中国の違い(子どもたちの中には中国人の子どももいた)、

折り紙の折り方などを教えた。

 アッパーソープ図書館で働く中で驚かされたことはいくつもあるが、そのうちの一つに毎月 図書館奥のカフェで開かれるミーティングがある。これは図書館責任者のテスがボランティア たちを集めて行う定例報告会のようなもので、内容は来月のイベントにどんな催し物をすれば よいかといったものから、市議会からいかに必要予算を割いてもらうかのようなかなり込み入っ たものまで実に多岐に渡った。図書館を含めたZestの施設全体の改築工事の相談や、少ない 予算でいかに利用者のニーズに合った新刊を工面するかなどもこのミーティングで話し合われ、

市内全図書館の年間利用者数のデータが出る月には反省会も行われる。当たり前ではあるが、

図書館の運営をボランティアスタッフにすべて任せるということは、こういった図書館存続の 可否に関わることもボランティアによって決められるということであり、それは我々にとって やりがいがあると同時にかなりの重責になりかねないのではないかと懸念した。実際、アッパー ソープは責任者にZestの職員(つまり給料をもらって働く正規社員)がいる為図書館運営に 問題はないが、地元メディアThe Starの記事を読んでいると、他のボランティア運営図書館 の中にはかなり存続が厳しくなっているところもあるようだ。ミーティングでは自分の担当と

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図書館学年報 第42号

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は別の曜日・時間帯のボランティアスタッフとも会えるので新鮮だった。揃ったメンツを見る と意外にもイギリス人のマダムが多く、我が子はすでにどこかで家庭を築いていて日々の時間 に余裕があり、地元のコミュニティーと関わり地域に貢献しようと参加している様子だった。

彼女らは聡明で、時に市議会の図書館に関する放任主義を痛烈に批判し、常に自分たちの図書 館のことを真剣に考えていた。また、様々なバックグラウンドを持つ同僚にも分け隔てなく接 してくれた。

 帰国した今思うことは、アッパーソープ図書館は地域思いの良い図書館だということだ。ボ ランティアの同僚たちはとても気さくで利用者思いの働き者ばかりだし、テスを始めとする Zestの職員の方々も私たちボランティアを対等に扱ってくれて、いつも助けてくれた。図書 館も蔵書エリアは小さいが、パソコンの使い方講座や母親向けの育児相談、読書クラブなど様々 な講座やイベントを絶えず行っており、蔵書の分類ラベルも文字や数字ではなくノンバーバル の絵で表記するなど、とても利用者思いの施設となっている。私はこの図書館でボランティア スタッフとして働けたことをとてもうれしく思う。最後に、私を図書館に迎えてくれたテス、

子どもたちとのイベントに私を受け入れてくれたメーガン、いつでも私を助けてくれたラフ、

図書館利用者のみなさん、ネザーソープ小学校の子どもたち、そして履歴書で私の保証人になっ てくださった佐藤翔先生にこの場を借りて感謝します。本当にどうもありがとうございました。

Tess, Megan, Raff and all people in Upperthorpe Library/Zest, I thank you very much. And children from Netherthorpe Primary School, I miss you. I hope to see you all again someday in somewhere.

参照

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