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『〈教育〉を社会学する』

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Academic year: 2021

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図書紹介  本著『〈教育〉を社会学する』は,その名のと

おり,現在の日本の教育あるいはより広く教育一 般を社会学の視点から読み解くことを試みた論文 集である。編者はまえがきで,社会学を「自明性 を問い直し意外性を見いだしていく」営みである と述べている。教育を考えるためには,つねに思 考し世界の見方を更新していく社会学の姿勢が必 要であることが説かれるのである。こうしたねら いのもとに編まれた本著の各論文のそれぞれが,

ややもすれば常識や経験則に基づいた考えに満た されがちな教育のさまざまな現象について,それ らの考えからは距離をとった,社会学の見地から の考察を丁寧に展開してくれている。

 私たちは日ごろの生活のなかで,さまざまな教 育の活動を目にしたり,耳にしたりしている。教 育の仕事に携わる人たちはもちろん,それ以外の 仕事においても私たちは,人との関わり合いのな かで(広い意味での)教育の活動に関与すること があるし,またテレビや新聞などのメディアを通 じて教育に関わる多様な報道にふれる機会を多く もっている。

 そうしたなかで私たちはまた,教育に関わる困 難に直面したり,また直接的にではないとしても 教育の問題を見聞きし,そのことに困惑すること もしばしばある。そのようなとき,私たちはその 教育の困難や問題についてどうすればよいのかと いう思いに突き当たる。このとき重要となるのは,

それらの困難や問題を教育のどのような困難や問 題として理解するか,という私たち一人ひとりの 理解のあり方である。なぜなら,教育の問題につ いての理解が,その理解を基盤とした私たち一人 ひとりのつぎの実践を生みだすわけであるし,ま たその実践の結果(問題の展開)がつぎの私たち

の理解を生みだす教育の現実となるからである。

こうした社会的行為のリフレクシヴな様相をオッ トー・ノイラートの有名なたとえでいえば,私た ちは社会という大海原で教育という船の舵を取る とき,自らの乗っている船の形を造り続けるとと もに,またそのことによってその船自体を前へ前 へと進めている,ということである。

 私たちは教育の問題に直面したとき,その問題 を解決するために,いかに実践を展開するかとい うことに目を奪われがちだ。では反対に,私たち は現在の教育に関わる問題を理解する術をどれだ け持ち合わせているだろうか。教育は私たちにと ってあまりに身近なものであるので,そこには社 会の常識や個々人の経験則が入り込みやすい。ま た教育は社会の多くの人たちにとっての関心の対 象となるため,そこで語られる言葉は多くの人た ちにとってなじみある聞き慣れた常識の言葉とな りがちである。

 しかし,社会の常識や自らの経験則のみに頼る のではなく,教育を多角的に理解する方法を持ち 合わせることもまた私たちにとっては必要とされ るはずだ。常識や経験則は学ばなくとも実践のな かで自然と外から私たちのもとへやってくる。し かし,常識から距離をとり,教育を「社会学する」

あり方は,自らが進んで学ぶことでしか手に入れ ることはできない。その意味でまさに,本著『〈教 育〉を社会学する』に収められた各論文は,教育 を「社会学する」方法を読者に提供してくれる格 好の本である。著者たちは,社会学の理論や方法 を説明するために教育現象を例にとりあげるので はなく,おのおのの論文の中で教育現象をよりよ く読み解くために社会学の理論や方法を導入して くれている。そこでとりあげられるテーマも学校,

教師,受験,いじめ,若者文化,社会化と多岐に わたる。本著は,教育社会学が何なのかまったく 知らない人,これから教育社会学を学ぼうとする 人,教育社会学をひととおり勉強してみたものの,

自分がどのような研究をしてよいか考えあぐねて いる人など,教育に関心のあるすべての人たちに とって,大きなヒントを与えてくれる一冊である。

北澤 毅 著

『〈教育〉を社会学する』

学文出版 2011 19.8×13.7×2cm 262 ¥2520(税込)

高橋靖幸

参照

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