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特集 第25回国際労働問題シンポジウム 若者と雇用 : 危機の克服に向けて : 労働者の立場から

著者 安永 貴夫

出版者 法政大学大原社会問題研究所

雑誌名 大原社会問題研究所雑誌

巻 654

ページ 17‑21

発行年 2013‑04‑25

URL http://doi.org/10.15002/00009275

(2)

皆さんこんにちは。連合本部で副事務局長をしております安永でございます。よろしくお願いい たします。

私ども連合は,私たちの目指すべき社会像を,「働くことを軸とする安心社会」と定め,その実 現に向けて取り組んでいるところです。本日は残念ながら時間の関係でその詳しい話はできません が,若者の雇用に関する課題解決も,「働くことを軸とする安心社会」の実現の一環として取り組 んでいるところです。

日本では,就業者6,250万人のうち約5,470万人,9割が雇用労働者であり,雇用社会とも言わ れています。雇用,労働の安定とその質の向上は,日本社会の安定向上に不可欠な要素であると考 えています。したがって私ども連合は,将来の日本社会を支える若者の雇用対策は重要であり,か つ急務であるという認識のもとで,すべての若者の良質な就業機会の実現に向けて,あらゆる機会 を通じて取り組んでいるところです。私事ですが,昨年,一昨年と,長男,次男が続けて就職活動 をして,その苦労を身をもって感じているところでして,それらの経験なども今後の活動に生かし ていきたい。また,私の周りの人も含めて,若者の就労のたいへんな苦労の実態を見ていますので,

生かしていきたいと思っています。

若者の雇用の実態を少し数字で見てみたいと思います。昨日の日本経済新聞の1面だったと思い ますが,大卒の内定が2年連続で増えているという報道がありました。中身を読んでみますと,そ れは大手の話で,しかもリーマンショックの前の状況からはまだ7割程度だという内容でした。文 部科学省の調査結果では,大学卒業者数約56万人のうち,正規の職につけたのは60%の約33万 5,000人,安定的な雇用につけていないのが22.9%の12万8,000人,残りは大学院に進まれた方な どだと思いますが,大学院に進まれた方の中にも,職につけなかったのでという方も少なからずい ると言われています。

日本のGDPに占める教育費の公的資金の割合は3.3%であり,OECD加盟国中,最下位です。逆 に教育費の家計負担は21.7%と最高水準にあります。高校入学から大学卒業までの一人当たりの

安永貴夫(やすなが・たかお) 日本労働組合総連合会(連合)副事務局長

昭和36年6月8日生。昭和55年に日本電信電話入社。昭和57年に全国電気通信労働組合(全電通)山口県支 部執行委員に選任後,NTT労働組合西日本本部執行委員,NTT労働組合中央本部執行委員,情報産業労働組合 連合会(情報労連)書記長を経て,平成23年10月より現職。雇用戦略対話委員,法務省法制審議会民法(債 権関係)部会委員,内閣府新成長戦略実現会議新成長分野人づくり会議委員などを務める。

労働者の立場から

安永 貴夫

【特集】若者と雇用 危機の克服に向けて

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教育費は1,059万円,世帯収入に占める在学費用の割合は37.6%とも言われていて,これも増加傾 向にあり,家計負担はますます重くなっています。

新規学卒就職者の3年以内の離職率に目を移すと,中学卒が64.7%,高校卒が37.6%,大学卒 が30%となっていて,就職することができても,早期離職に至る,かつて七五三現象と言われた 現象が続いてしまっています。また,転職者が初めて就職した会社を離職した理由は,労働時間,

休日・休暇の条件がよくなかったとするものが多いとなっています。

連合は,学校卒業後に経験したことがある雇用形態(正規のみ,正規と非正規,非正規)に関す るインターネット調査を実施しました。結果は,男女で大きく差が出ており,男性の場合,年齢を 増すごとに正規のみの割合が高くなっていますが,女性の場合は,むしろ年齢が高いところでも正 規のみの割合が低く,結婚や出産により職を離れてしまう課題を反映していると思います。いずれ にしても20代,特に女性の就労に大きな問題があるということは明らかだと思います。

図1は,私たち連合が若年雇用問題の検討を行うときに,イメージを共有化するために用いてい る図です。まず,下段に記述している「行政(労働・社会保障・教育,産業政策)」は,縦割りで なく各セクションが連携してその推進を行います。これを前提に,企業,教育機関,若者本人が家 族を含めて考え,実行すべき事項があるのですが,これらにはそれぞれ重なり合って検討して改 善・実行すべき事項,そして枠の外にあるように,地域間格差の課題など,社会全体で考えていか なければならないという俯瞰図です。また,上段に記載のある私ども労働組合は,政策面において 企業や行政に求めていくことはもちろんですが,私たち自身の社会的責任として,若者の雇用の課 題をとらえて,地域においても,中央においても,積極的にかかわっていきたいと考えています。

次は先ほど厚生労働省の朝比奈さんからもご説明がありました政府の雇用戦略対話での議論で す。野田総理大臣からは,若者の雇用に関して機会均等・キャリア教育の充実,若者のキャリアア

図1 若年者雇用問題に係る検討の視点 

○非正規雇用(雇用の質) 

○働かせ方(労働法規違   反・ハラスメント) 

○硬直的な雇用慣行 

○早期離職(753問題) 

○必要な人材像の提示 

○採用慣行 

○人材育成 

○就労イメージと現実   との乖離 

○家庭の経済状況 

○貧困の連鎖 

○自立(親・子) 

○基礎力向上 

○労働教育 

○キャリア教育 

○中途退学 

○大学進学率の上昇     

○雇用の量と質の向上 

○雇用のセーフティネット 

○起業支援  世界の若年者雇用問題 

(共通点・相違点) 

 ○地域間格差 

 ○フリーター・ニート問題   ○統計データの整備・公開 

○企業・学校間連携   

○学習環境の整備  労 働 組 合  

企 業 

行政(労働・社会保障・教育(公共職業訓練)・産業政策など) 

若年者 

教育機関 

若年者の定義? 

   マッチング 

○情報の質・量 

○大企業志向 

○ネット編重 

○キャリア形成 

○支援機関の質 

○トライアル雇用 

(4)

ップ支援,雇用のミスマッチの解消の3点を論点に検討してほしいというご指示がありました。そ のもとに政労使プラス教育界からも委員に入っていただいて,ワーキンググループを作って各論点 について検討を重ねてきました。中身については先ほど報告があったとおりです。現在もそのワー キンググループの中身は政府のインターネットテレビで公開されていますので,興味のある方はぜ ひご覧いただきたいと思います。ただ,これも朝比奈さんからもありましたが,戦略を作ったから 終わりではありません。今後どう改善されるか,どう実行が伴うかにかかっていると考えていま す。

続いて私たちがその雇用戦略対話で発言したことは概ね4つの視点となっています。一つ目が

「良質な雇用の創出」です。良質な雇用のためには経済が成長しなければならないという特に経営 側の主張もありましたが,確かに経済の成長が重要であることは十分認識していますが,そこに生 まれる良質な雇用があってこそ,私たちが求める若者の雇用戦略の基盤になるのであって,またそ のことが持続可能な経済成長にもはね返ってくるということを指摘しました。

二つ目が「若者への投資」という観点です。国で言えば予算,企業で言えばコストという課題が あるということは承知していますが,若者の雇用に関しては投資という見方をすべきです。なぜな ら,結果的に国で言えば税収や社会保障の安定に寄与し,社会全体から見ても持続可能な経済成長 につながり,その利益を全体で享受するということにつながるからです。

三つ目が「働き続けられる環境の整備」です。若者の雇用の問題を失業率の改善という短期的,

数量的な視点だけで捉えるのではなくて,労働法違反,ハラスメント,長時間労働など,劣悪な環 境の中での働かせ方の問題として,若者が早期に離職せざるを得ない実態を改善し,働きやすい職 場を実現することが重要だと指摘しました。

四つ目が「地域における連携の重要性」です。地方自治体,都道府県労働局,教育機関,産業界,

私ども労働組合などが参画して,地域においてコンソーシアム型の連携によって中小企業と求職者 のマッチングなどを促進する仕組みが必要だということを指摘させていただきました。これらの指 摘についてはおおむね全体で共有されたと認識しています。

6月に開催されたILO総会での議論については,先ほどから詳しい報告がされていますので,重 複は避け,私からは,いちばん議論となった雇用の柔軟化の捉え方について報告をさせていただき ます。

経営側委員は柔軟な雇用契約,日本では非正規労働のことだと理解していますが,柔軟な雇用契 約は安定した雇用への飛び石となり得ると主張し,決議に修正案を提出されました。しかし,労働 側委員とアフリカ,ラテンアメリカ諸国などの政府の委員の反対で,これは削除になりました。私 としては,飛び石どころか底なし沼,蟻地獄という表現ではないかと思っています。

私たち連合としては,先ほどから申し上げているとおり,すべての若者に良質な就労機会を提供 することが重要であると考えており,具体的には図2にある通り,それぞれ個別課題ごとの対応で はなくて,「働く場をつくる」「働く力をつける」「働く場とむすぶ」「働き続けられる」の4分野同 時に対策を講じなければならないと思っています。若年者雇用の問題はややもすると若者の意識の 問題に偏りがちな論議になりやすい課題ではありますが,それぞれの課題はどれを取ってもおろそ かにできない課題ばかりです。時間の関係で個別の政策については説明できませんが,各項目ごと 労働者の立場から(安永貴夫)

(5)

に具体的な政策として取りまとめていますので,その実現に向けて今後も取り組んでいきたいと思 っています。

その中でも特に私ども労働組合に課せられた役割もあると思っています。私たちとして何ができ るのか。何をしなければならないのか。

まず「働き続けられる」職場づくりという観点から今日まで取り組んできた非正規労働の皆さん の処遇改善,正社員化,労働相談などの充実強化は当然のこととして今後も推進してまいりますが,

長期間労働の撲滅に向けて各職場の取り組みを行っていきたいと思っています。

連合は年間総実労働時間1,800時間の実現に向けて中期時短指針を掲げていますが,その進捗状 況は道半ばとなっていますので,今後進め方を検討しつつ,推進したいと思っています。また,時 間外労働の割増率の引き上げなどの取り組みも進めたいと思っています。併せて,EUで取られて いる勤務間インターバル規制など,ワーク・ライフ・バランスと健康に配慮した労働時間法制のあ り方についてもさらに検討し,政府に推進を求めていきたいと思っています。同時に,公労使で構 成する労働政策審議会や,今回新設される若者雇用戦略推進協議会などを通じて,私たちの政策の 実現に向けて取り組んでいきたいと思っています。

図2 すべての若年者に良質な就労機会を実現するための施策イメージ図 

○学ぶ権利・機会の保   障 

○キャリア教育・職業   教育・労働(法)教   育の推進 

○産学連携教育・産学   協同事業の推進  働き続けられる 

働く場をつくる  職場 

働く場とむすぶ  働く力をつける 

若者 

○ワーク・ライフ・バ   ランスの実現 

○ワークルール遵守の   徹底 ○雇用期間の定めのな   い良質な直接雇用へ   の移行の促進 

○キャリア形成の強化 

○組織拡大と労使協議   の強化 

○学校による就職支援機能の   強化 

○就職支援体制の質・量向上 

○就職関連の情報開示の強化 

○訓練と就職活動の一体的融合 

○中小企業とのマッチング機能   の強化 

○通年採用も含めた新卒採用の   拡大 

○指針などによる,大学の関与   やインターンシップの単位認   定の統一的な整備 

○「働くこと」の意識の涵義 

表1 労働組合の取り組み 

・長時間労働の撲滅など働き続けられる職場づくり 

・ワーク・ライフ・バランスと健康に配慮した労働時間法制のあり方の検討 

・労働政策審議会や若者雇用戦略推進協議会などを通じた政策実現 

・地域雇用戦略会議や地域キャリア教育支援協議会など政労使による就   労支援ネットワークの構築 

・働くことの意義を含めたキャリア教育・労働(法)教育や職場体験 

・若者の労働組合への組織化 

(6)

また,「働く力をつける」という観点からは,各都道府県の地方連合会として地域雇用戦略会議 や地域キャリア教育支援協議会に積極的に対応し,具体的な施策の展開に主体的な役割を果たして いきたいと思っています。さらに働くことの意義を含めたキャリア教育・労働法教育や職場体験な どについても,これまで行ってきている寄付講座などをさらに充実させていきたいと思っています。

最後に,労働組合の本業そのものである組織化です。労働組合のないところに労働組合をつくる,

仲間を増やすということの重要性を訴えていき,実践していきたいと思っています。すべての職場 に労働組合をつくり,働き続けられる職場に改善していかなければならないと思っています。

今まで申し上げたことの実例の一つとして,連合は今年の中央メーデーで,「学生×労働組合 本音で話します!」を開催しました。内容は学生5〜6人と組合員5〜6人を1グループにして,

何グループかに分けて本音座談会です。座談会では,企業の人事担当者には聞けないことも,気軽 に意見交換していただき,時間外労働の実態,仕事に失敗したときの対処法,仕事をしていて辛い こと,うれしいことなどをざっくばらんに話していただきました。私たちがこのようなことをする ときの留意点は,なるべく近い世代同士でやっていただくということです。自分の就活経験も踏ま えたアドバイスができるからです。年齢が離れ過ぎて,私どもになると昔話になってしまったり,

お説教をしてしまうという実態もありますので,なるべくそのようにしています。

このことの副産物として,若手組合員からも,自分の働くことの振り返りができた,問題点を考 える機会になったと好評でしたし,学生の皆さんからは,労働組合のことは知らなかったけれど,

意義が理解できたという意見が多く寄せられました。ただ,こうした意見は労働組合の意義が十分 に若者に伝わっていないということ,そして,労働組合もそういう努力をしていないということと 表裏一体であると思っています。労働組合の必要性の認識,社会になくてはならないインフラとし て普及するように,今後もがんばっていきたいと思います。

連合は,今週の金曜日に連合中央女性集会の一環として,「女子学生のための,就活応援セミナ ー」を開催する予定であり,そうした場でも労働組合の意義をしっかり若者に伝えていきたいと思 います。

今申し上げた以外のイベント,研修,セミナーなども,全国の地方連合会や構成組織の皆さんに 実施しており,これもどんどん広げていきたいと思っています。これからも「働くことを軸とする 安心社会」の実現に向けて,若者の雇用の問題にも連合を挙げて取り組んでいきたいと思っており ますので,皆さんのご理解とご協力をお願いして終わりにいたします。ありがとうございました。

(拍手)

司会 安永さん,ありがとうございました。安永さん,一つ質問したいのですが,何度か出てき たタマネギみたいなお人形さんは何でしょうか(図2参照)。

安永 これは連合のキャラクターでして,タマネギをイメージしています。ユニオンとオニオン は同じ語源だそうです。1枚1枚は薄くて弱いけれども,重なりあって,支えあって,強くなると いうことで,労働者も1人ひとりは弱い立場でも労働組合として強くなれる。そういう意味を込め てユニオニオンというキャラクター名です。ユニオンとオニオンをかけたキャラクターです。あり がとうございました。(拍手)

労働者の立場から(安永貴夫)

参照

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