法政大学大学院理工学・工学研究科紀要 Vol.56(2015年3月) 法政大学
逆流保炎燃焼における排気性能に及ぼす 混合気噴射形態の影響
EFFECTS OF MIXTURE INJECTOR CONFIGURATION ON EMISSIONS IN REVERSE FLOW FLAME STABILIZED COMBUSTION
野崎 皓太 Kota NOZAKI 指導教員 林 茂
法政大学大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程
Emissions characteristic of Reverse Flow Flame Stabilized Combustion was investigated with the aim of applying it to the first stage of a multi stage lean combustor for attaining single digit NOx emissions while maintaining complete combustion over a wide range of gas turbine power. Homogeneous methane-air mixtures were injected toward the dome of a cylindrical ceramic combustion chamber from a coaxially located tubular injectors with different nozzles at mixture or air(non-premixed case) temperature ranging from 373 to 573 K, and injection velocities of air ranging from 25 to 50 m/s. Tests were conducted for different injection points, and for different gas sampling positions above injection points at equivalence ratios from 0.7 to a value very close to the blow-off limits. Additional experiments were conducted with non-premixed system.
Single digit NOx emissions were obtained with all premixed cases at leaner conditions with combustion efficiencies greater than 99.9.The NOx emissions for non-premixed cases were higher than for premixed cases.
The injector configurations and the distance from the injection point to the dome wall were critical factors for flame holding: with the premixed case injector producing a strong swirling jet, injection positions of 80 and 130 mm from the dome wall, no flames were established, even when mixture was riched up to correct fuel-air composition. For premixed case, the single hole injector was able to hold at leaner conditions than swirl-type injector while its NOx emissions level was slightly higher at larger equivalence ratios than those achieved with swirl-type injectors. The NOx emissions were practically independent of injection velocity or combustor residence time over the whole gas temperatures tested. The effects of operating parameters on flame holding and NOx emissions were discussed based on direct flame images and predictions by simple simulations of iso-thermal flows in the combustor with different injector configurations.
Key words: Reverse Flow Flame Stabilized Combustion, Methane-air reactants, Injector configurations, Flow fields, Flame holding, Ultra-low NOx emissions.
1.はじめに
ガスタービンの燃焼から排出されるNOxを抑制する燃 焼方法の1つに希薄予混合燃焼がある.この燃焼方法は 局所的に火炎温度の高い領域を形成しないことにより低 NOx排出が実現できる.
燃料濃度を希薄にすると燃焼効率が低下し未燃成分が 増加するため,エンジンの広い作動範囲において低NOx 排出と高燃焼効率を両立することが難しい.また,燃焼 振動が発生する傾向があるという問題がある.
これらの問題を解決するため,上流側で生成された高 温既燃ガス中に,下流側で希薄な予混合気を噴射・混合 させ,空間全体で反応するflameless燃焼あるいはそれに 近い状態を実現することにより,低NOx排出と高燃焼効
率が両立できる作動範囲の拡大を図ろうとする研究が盛 んに行われてきた[1], [2].実際にこの燃焼方式を採用した 再生サイクルの小型ガスタービンエンジンでは液体燃料
で10 ppmレベルのNOx排出が達成されている[3].
更に低いNOxレベル(数ppm)を実現するためには,
1 段目そのものの排出を抑えなければならない.そこで 我々は,多段燃焼における1段目の燃焼方式として逆流 保炎燃焼方式の研究を始めた.
逆流保炎燃焼方式は,混合気を燃焼室出口方向とは逆 方向のドーム壁面に向けて噴き出し,ドーム壁面にて燃 焼室出口方向に Uターンさせるというシステムである.
Uターン後の混合気は噴き出した未燃混合気の運動量に より再循環領域が形成され,高温な燃焼ガスとなる.こ
れにより噴き出した未燃混合気は高温既燃ガスと熱交換 が活発に行われるため希薄な状態においても高い燃焼効 率を保持できることがNOx排出の抑制につながると考え ている.
この燃焼方式の研究はガスタービンの保炎方式として かつて行われたことがある.比較的最近のものとしてジ ョージア工科大学のZinnらによる研究がある.彼らはこ の燃焼方式で燃料にメタンを使用し,噴射ノズル先端か らドーム壁面までの距離が300 mmの燃焼器を用い,噴 流が非予混合でも予混合の場合と同レベルのNOx排出に なるという研究結果を報告している.[4]
本論文では逆流保炎燃焼方式について,異なる先端形 状を持つ4種類の予混合気噴射ノズル,および燃料と空 気の流路が分かれており,別々に噴射する非予混合気噴 射ノズルを用意し,ノズル先端からドーム壁面までの距 離を変え,それらが流れ場,火炎形状,そして排気性能 に与える影響を報告する.
2.試験装置
2.1 燃焼室および混合気形成
燃焼室の概略および,空気とメタンの供給系統のうち,
予混合気噴射ノズルを用いたものを図1(a) に,非予混合 気噴射ノズルを用いたものを図1(b)に示す.燃焼室は窒 化ケイ素製円筒(内径80 mm,外径100 mm)を積み重 ねてできている.ドーム壁面はファイバーキャストで 敷き詰められ下端が閉じた構造になっている.円筒の ひとつにはL字型の噴射ノズルが同軸に取り付けられ,
予混合気または非予混合気をドーム壁面に向けて噴き 出すようになっている.この噴射ノズルユニットの位置 を変えることでノズルの先端からドーム壁面までの距 離を段階的に変化させた.図には示されていないが,
燃焼室の気密性を確保し断熱性を高めるために外周を ファイバーキャストで厚さ10 mm程度塗り固めている.
空気とメタンは別々に流量がマスフロメータで計測さ れ,空気はヒータによって予熱される.予混合気の場合 は空気が予熱後にメタンと合流し,10段構造1024分割 のスタティックミキサを通過することで均一な予混合 気が形成される.予混合気を噴射する場合における予混 合気温度,および非予混合気を噴射する場合における空 気温度は噴射ノズル入口付近に取り付けたK熱電対で 測定される.
2.2 噴射ノズル
噴射された予混合気および非予混合気と既燃ガスとの 干渉や混合の違いが保炎や排気性能に影響を与えると考 えられるため,噴射形態の異なる5種類の噴射ノズルを 製作し,試験した.それぞれの写真を図2に,仕様を表 1に示す.
予混合気の場合については,基準のタイプとなる直円 管の単孔ノズル(以下Single holeと呼ぶ),予混合気が
(a)
(b)
Fig.1 Schematic drawing of combustor and air-fuel(methane) supply system.
Premixed case (a), Non-Premixed case (b).
Zin : Distance from bottom to injection position.
Single hole Multi hole
Weak swirl Strong swirl
Concentric hole Fig.2 Nozzles for experiments.
既燃ガスと接触する面積を増やすことを目的とした多孔 ノズル(以下Multi holeと呼ぶ),予混合気に旋回を加え て噴き出し,高温既燃ガスと干渉させることを目的とし て,パイプ先端に異なる旋回角を持つスワーラを取り付 けた2 種類のスワールノズル(以下 Weak swirlおよび
Strong swirl と呼ぶ)である.スワーラにはヘリカルスワ
ーラを使用し,表中のSwirl typeにおけるVane angleは,
付け根における羽根の角度を表している.
非予混合気の場合については, 空気が通る円管の中に 燃料が通る円管を通した二重管ノズル(以下 Concentric holeと呼ぶ)である.
なお,Multi holeに関しては,排気性能がSingle hole と似た傾向を示したため,結果には示していない.
3.排気測定
排気測定を表2に示す試験条件で行った.排ガスの採 取は,予混合気の場合は直径2 mmの孔を持つ水冷式の 単孔プローブを,非予混合気の場合は直径0.7 mmの孔 を32個持つ水冷式の十字プローブを用いた.排ガス分
析装置はHORIBA製MEXA-9110Hを使用し,それぞれ
の成分濃度は基本的な計測方法を用いて計測された.
Zinはノズル先端からドーム壁面までの距離,Tiは,予 混合気の場合は予混合気温度,非予混合気の場合は空気 の温度を表している.UはSingle hole の開口面積に対応 した空気の断面平均流速であり,他のノズルを用いた場 合,その開口面積に応じて断面平均流速は変化するが,
質量流量は変化しない.φ は排気成分濃度から算出した 当量比である.設定した当量比になるように排ガス分析 計の酸素濃度を調節しながら測定を行った.”Near lean flammability“という表現は,保炎が可能な最も希薄側当 量比まで測定を試みたことを意味している.Zpは中心軸 上における燃焼室のドーム壁面からガスサンプリングプ ローブ先端までの距離である.各Zinでの表2のZpの値 はそれぞれ,ノズル先端から燃焼室下流方向70 mm,120
mm,170 mmの位置を表している.
4.試験結果および考察 4.1 流れ場および火炎形状
流れ場の概要を知るために,予混合気の場合について のみ,Dassault Systèmes SolidWorks Corporation製Solid
Works 2013を用いて簡単な解析を行った.流体は空気で,
燃焼反応を伴わない単純な場合である.各噴射形態での 予混合気の速度ベクトルを表した断面プロットのうちの 一例としてZin = 80 mm,Ti = 373 K,U = 37.5 m/sのもの を図3に示す.図は燃焼室の中心軸を含んだ断面を表し ている.左端から右端にかけては燃焼室内壁から中心軸 まで,下端から上端にかけてはドーム壁面から高さ 100 mmの位置までに対応している.ベクトルの長さは0m/s
から37.5 m/s の速度範囲を示している.
Table 1 Specifications of nozzles.
Premixed case (Hole type) .
Premixed case (Swirl type).
Non-premixed case.
Table 2 Test conditions.
Zin = 80 mm,Ti = 373 K,U = 37.5 m/s,φ = 0.6の火炎形 状の写真のうち,予混合気の場合を図4に,非予混合気 の場合を図5に示す.
図4より予混合気の場合について,Single holeは旋回 タイプと比較して火炎が低い位置で形成されていること が認められる.図3(a)からも予想できるが,図4(a)より,
噴き出した予混合気のほとんどがドーム壁面に衝突し側 壁まで拡がることが認められる.衝突後広がった予混合 気は,噴き出した未燃予混合気の運動量により低い位置 で再循環領域が形成され燃焼反応が促進されることで,
火炎の形成位置が低くなったと考えられる.
旋回タイプは図4よりSingle holeと比較して火炎が広 い範囲で形成されていることが認められる.図3 (c)から,
Strong swirlは噴き出した予混合気が側壁に衝突しUター
ンする流れと,ドーム壁面付近で滞留する流れの2つに 分かれることが予想される.これにより,側壁に衝突し た予混合気が形成する再循環領域での燃焼反応,ドーム 壁面付近で滞留している予混合気の燃焼反応に分かれる ことで火炎の形成範囲が広くなったと考えられる.
図3より,Weak swirlはSingle holeと似た流れ場を形 成することが予想されるが,図 4の(b)からは,Weak swirl
Single hole Multi hole
Outer diameter, mm 16 21.7
Inner diameter, mm 14 6 mm ×4
Opening area, 154 113
Circumferencial length of hole(s), mm 44 75 ( 19 mm ×4 )
Pitch circle, mm - 12
30 80 130
Ti, K U, m/s
φ
Zp, mm 100, 150, 200 150, 200, 250 200, 250, 300 373, 473, 573
25, 37.5, 50 Near lean flammability limit - 0.7
Air-tube outer diameter, mm Air-tube inner diameter, mm Air-tube opening area, Fuel-tube outer diameter, mm Fuel-tube inner diameter, mm Fuel-tube opening area,
14 110
6 4 13 Concentric hole
16
Weak swirl Strong swirl Outer diameter, mm
Diameter of vanes, mm Hub diameter, mm
Vane thickness, mm 1 0.5
Vane axial length, mm 8 4
Number of vanes 8 4
Opening area, 95 58
Vane angle ( hub ), deg 21.4 44.5
16 14 5
(a) (b) (c) Fig.3 Predicted flow fields of premixed mixture for
Single hole (a), Weak swirl (b), and Strong swirl(c).
Zin = 80 mm , Ti = 373 K, U = 37.5 m/s.
(Air, Iso-thermal).
(a) (b) (c) Fig.4 Photographs of premixed flames for
Single hole (a), Weak swirl (b), and Strong swirl(c).
Zin = 80 mm , Ti = 373 K, U = 37.5 m/s, φ = 0.6.
(Exposure time: 1/20 s).
Fig.5 Photograph of non-premixed flame for Concentric hole.
Zin = 80 mm , Ti = 373 K, U = 37.5 m/s, φ = 0.6.
(Exposure time: 1/20 s).
でもStrong swirlと同様,噴き出した予混合気のうちの一
部は側壁に衝突していることが認められる.さらに,ド ーム壁面の赤熱はWeak swirlとStrong swirlで共通して見 られたので,Weak swirlについてもドーム壁面に滞在す る予混合気があると考えられる.
図4および図5より予混合気の場合と非予混合気の場 合を比較すると,非予混合気の場合のConcentric holeが 形成する火炎の形状は予混合気の場合のSingle holeと似 ていることが認められる.しかし,噴き出した直後から 火炎を形成しているSingle holeに比べ,Concentric hole は噴き出した直後の非予混合気が燃焼反応を開始してい ないことが認められる.予混合気は噴射後,すぐに周囲 の熱の影響により燃焼を開始できるが,非予混合気の場 合は,再循環領域の既燃ガスと接する噴射直後の流体は 空気であるため,火炎を形成できないと考えられる.ま た予混合気の場合と比較して,発光が強く見えるのは,
局所的に当量比の高い混合気が存在することにより,そ れらが燃焼反応を起こしたことが原因と考えられる.
4.2 排気性能
予混合気の場合のSingle holeについて,予混合気温度 Tiと流速Uが排気性能に与える影響を示したグラフを図 5に示す.条件は Zin = 30 mm ,Zp = 200 mm である.
図よりSingle holeについては,予混合気温度を上げる
とNOx濃度は増加するが,流速を変化させてもNOx濃度 にはあまり影響しないという傾向が見られた. Weak
swirl およびStrong swirlの場合も同様の傾向が認められ
た.なお,予混合気温度の上昇は火炎温度の上昇を,流 速の上昇は滞留時間の短縮を意味する.燃焼効率が過濃 側で低下しているのは,熱解離によって
CO2がCOに変化したからである.
各噴射形態について,ノズル先端からドーム壁面まで の距離Zinが排気性能に及ぼす影響を図6のグラフに示 す.条件はU = 37.5 m/s ,Ti = 373 K,Zp = 200 mmであ る.ただし, Concentric hole のZin = 130 mmという条件
Fig.5 Effects of mixture-preheating and jet velocity on NOx emissions and combustion efficiency
for Single hole.
に限っては,インジェクタの構造上Zp = 250 mmとした.
当量比については3.2で述べた通り,排気測定は保炎が 可能な最も希薄側まで試みた.
予混合気の場合,Single holeについては図6(a)よりZin =
130 mmのとき,φ = 0.6付近までしか保炎できなかった
が,Zin = 30 mm およびZin = 80 mmのときはφ = 0.5付近 まで保炎できたことから,ノズル先端がドーム壁面に近 い方がより希薄な範囲で保炎できることが分かった.燃
焼効率は99.9 %以上と非常に高い数値を示し,NOx濃度
も2 ppmを下回る超低NOx排出を実現した.また,同じ
当量比で比較した場合,Zin = 30 mmのときが最も NOx 濃度が大きいことが分かった.これらの結果は予混合気 を低い位置から噴き出すと,予混合気はドーム壁面付近 で集中的に,高い運動量を維持したまま再循環領域を形 成し,噴射直後の予混合気と既燃ガスの熱交換がより活 発に行われるためと考えられる.Zin = 30 mmでの流れ場 を解析した結果,Zin = 80 mm およびZin = 130 mmの場合 に比べ,よりドーム壁面付近にて再循環領域が形成され る様子がうかがえた.
Weak swirlについては図6(b)より,Zin = 130 mmにおい
てφ = 0.5付近まで保炎できたが,燃焼効率が99.6 %付近
まで下がった.
Strong swirlは3形態の中では,希薄側での保炎性が最
も悪いということが図6の実験結果から分かった.Strong
swirl は4.1の考察で述べたように,噴き出した予混合気
の流れが2つに分かれていると考えられる.これにより 再循環領域はドーム壁面から離れた狭い空間で形成され,
ドーム壁面付近に滞留している既燃ガスとの熱交換が促 進されないことが保炎性の悪さに影響していると考えら れる.
U = 37.5 m/s については3形態ともいずれのZin でも 保炎できた.U = 25 m/s についてはSingle hole,Weak swirl はいずれのZin でも保炎できたが,Strong swirl は Zin = 30 mm のときしか保炎できなかった.その他のZin においては φ = 1 にしても保炎できなかった.なお,
Strong swirl については圧力損失が大きいため,本研究で
使用した実験装置では,U = 50 m/s相当の流量での試験 ができなかった.NOx濃度については,ノズル先端から ドーム壁面までの距離が短いほど,NOx濃度が大きいと いう,Single holeと同様の傾向が認められた.Strong swirl についてはノズル先端からドーム壁面までの距離を長く とると,噴き出した予混合気のうち燃焼室側壁に衝突し Uターンしたもので形成される再循環領域が高い位置で 形成されるため,燃焼室底部に滞留している既燃ガス と熱交換があまり行われなくなることが原因と考えられ る.
非予混合気の場合は図6(d)より,ノズル先端からドー ム壁面までの距離が短いほうが保炎性能は良いという結 果が得られ.NOx濃度はZin = 30 mmのときが最も高く,
(a)
(b)
(c)
(d)
Fig.6 Effects of injection position on NOx emissions and combustion efficiency for Single hole (a), Weak swirl (b), Strong swirl(c), and Concentric hole (d)
(Zp = 250)
Zin = 80 mmのときが最も低いという結果が得られた.
Zin = 80 mmのときよりZin = 130 mmのときのほうがNOx
濃度は高いことから,ノズル先端からドーム壁面までの 距離を長くとるほど,NOx濃度が下がるわけではないと いうことが分かった.また,非予混合気の場合も予混合 気の場合のStrong swirlと同様U = 50 m/s相当の流量での 試験ができなかった.
予混合気の場合の3形態が排気性能に与える影響の違 いを示したグラフを図 7(a)に,予混合気の場合のSingle holeと非予混合気の場合のConcentric holeが排気性能に 与える影響の違いを示したグラフを図7(b)に示す.条件 はZin = 80 mm ,Zp = 200 mm,U = 37.5 m/s ,Ti = 373 K で ある.
図7(a)より,予混合気の場合については予混合気の当
量比が同じ場合の 3 形態を比較すると,旋回タイプは Single hole に比べNOx濃度が低いことが分かる.Strong
swirlに特に現れやすい特徴として,旋回タイプは側壁に
衝突した予混合気が再循環領域を形成しても,ドーム壁 面に滞留している既燃ガスとの熱交換が行われにくいこ とが影響していると考えられる.
図7(b)より,予混合気の場合のSingle holeと 非予混合
気の場合のConcentric holeを比較すると,Concentric hole は保炎性に優れてはいるものの,Single holeよりも高い NOx濃度を示すことがわかった.同一当量比で比較して も,Single holeよりかなり高いNOx濃度を示した.噴き 出してから混合を開始する非予混合気の場合は局所的に 燃料濃度が高く,温度の高い領域が存在することが原因 と考えられる.
予混合気の場合のSingle holeを代表して断熱火炎温度 が排気性能に与える影響を示したグラフを図8に示す.
条件はZin = 30 mm ,Zp = 200 mm である.
図より,断熱火炎温度が支配的にNOx濃度に影響する ことがわかった.予混合気の場合の旋回タイプにおいて も同傾向の結果が得られた.
予混合気の場合で比較すると,Single holeは旋回タイ プに比べ噴きだした予混合気がドーム壁面に到達しやす く,低い位置で再循環領域が形成されるため保炎性が良 い.また,噴き出し位置がドーム壁面付近の場合,希薄 側まで保炎する.
一方,旋回タイプは予混合気が拡がって噴き出される のでドーム壁面に予混合気が到達しにくく,旋回を伴い ながらドーム壁面付近に滞留する流れと側壁に衝突し燃 焼室から出ていく流れの2つに分かれる.従ってドーム 壁面付近の高温既燃ガスと干渉しにくい再循環領域が形 成されるため保炎性はSingle holeに比べ悪い.
予混合気の場合について,Single holeは,旋回タイプ に比べ希薄側での保炎性に優れ,噴射位置を上流側に設 定するとより保炎性が良くなることから,多段燃焼での 1段目に逆流保炎燃焼方式を利用した場合,旋回タイプ
(a)
(b) Fig.7 Effects of nozzles configuration on
NOx emissions and combustion efficiency for Premixed case (a),
Single hole and Concentric hole (b).
Fig.8 Correlation of NOx emissions and combustion efficiency with calculated adiabatic flame temperature
for Single hole.
よりも適した噴射形態であるといえる.
非予混合気の場合は,局所的に燃料濃度が高く,温度 の高い領域が存在することにより,予混合気の場合より もNOxの濃度は高くなる.
5.結論
本研究では,逆流保炎燃焼方式において混合気および 非予混合気の噴射形態および噴射位置が排気性能に与え る影響を,流れ場のシミュレーション,火炎形状に基づ いて考察し、以下のことがわかった.
(1) 予混合気の場合について,Single holeは旋回タイプ と比較して希薄側での保炎性に優れており,最も低 NOx排出を実現できる.また予混合気噴射位置をドー ム壁面に近づけると保炎性は良くなるが,同じ当量比 で比較した場合,噴射位置がドーム壁面から離れた場 合に比べてNOx濃度はあがる.
(2) 旋回タイプは同じ当量比で比較した場合,Single holeに比べ低NOx排出を実現できるが,希薄側での保 炎性が悪い.
(3) 予混合気の場合は, NOx濃度は滞留時間には依存
しない.
(4) 予混合気の場合は,非予混合気の場合よりも低 NOx排出を実現し,中でも多段燃焼の1段目に逆流保 炎燃焼方式を利用する場合,最も適した噴射形態は Single holeである.
参考文献
1) N. Aida. et al.:Combustion of lean prevaporized fuel-air mixtures mixed with hot burned gas for low-NOx emissions over an extended range of fuel-air ratios, Proc. Combust.
Inst. 30:2885-2892 (2005).
2) S. Adachi. et al.:Emissions in combustion of lean methane-air and biomass-air mixtures supported by primary hot burned gas in a multi-stage gas turbine combustor,
Proc. Combust. Inst. 31:3131–3138 (2007).
3) H. Fujiwara. et al.:Development of a liquid–fueled dry low emissions combustor for 300kW class recuperated cycle gas turbine engines, presented at the ASME Turbo Exposition, ASME paper GT2005-68645.
4) M. K. Bobba. et al.:Characteristics of Combustion Processes in a Stagnation Point Reverse Flow Combustor,
ASME GT2006-91217.
発表論文
「淀み点逆流燃焼における排気性能に及ぼす噴射形態 の影響」,第42回日本ガスタービン学会定期講演会講演 論文集(2014), pp249-254.