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金融コングロマリットのコーポレートガバナンス

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神奈川大学大学 院経営学研究科 『研究年報』 第14 20103月 101

■ 研究論文

金融コングロマリットのコーポレートガバナンス

ー金融持株会社 とユニバ ーサルバ ンクに焦点 をあてて‑

AStudyonCorporateGovernanceforFinancialCoglomerates FocusonFinancialHoldingCompanyandUniversalBank

神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士前期課程

山 田 洋

YAMADA,Yoh

■キーワー ド

コーポ レー ト・ガバ ナ ンス/金融 コングロマ リッ ト/金融持株会社/ユニバ ーサルバ ンク

1は じめに

1990年代後半 か ら、経済先進 国の大規 模 な銀 行はM &Aを通 じて金融 コングロマ リッ トの形成 を進めて きた。大規模 な銀行 によるM&Aを通 じ た金融 コング ロマ リッ トの形成 に関す る動向は、

各国における金融機 関の再編 が済んだことを機 に、

近年、落 ち着 きを見せている。今後 は、経営統合 後の金融 コングロマ リッ トがいかに企業競争力 を強化す るのか、いかに企業不祥事へ対処す るの かとい う議論がな され る必要があると考 えられ る

このため、金融 コングロマ リッ トは、独 自性 があ るコーポ レー ト・ガバナ ンスの構築 を目指 さなけ ればな らない といそ る0

本稿の 目的は、金融 コ ングロマ リッ トにおける コーポ レー ト・ガバナ ンスの現状 を解明す ること である。 このため、金融 コングロマ リッ トの形態 ごとに、金融 コングロマ リッ トのコーポ レー ト ガ バナ ンスにおける問題点 と現状 を明 らかに したい。

そこで、まず、第2節で は、ユニバ ーサルバ ンク

方式の金融 コングロマ リッ トと金融持株会社方式 の金融 コングロマ リッ トにおける問題点 をそれぞ れ検討す る。つ ぎに、第3節では、金 融持株会社方 式 の金 融 コ ング ロマ リッ トにおけ るコーポ レー ト ガバ ナ ンスの現状 を、三菱UFJフ ィナ ンシャル グループを例 に挙げて考察す る。また、第4節では、

ユニバ ーサルバ ンク方式の金融 コングロマ リッ ト におけるコーポ レー ト・ガバナ ンスの現状 を、ド イツ銀行 を例 に挙 げて明 らかにす る。 そ して、金 融 コングロマ リッ トのコーポレー ト・ガバ ナ ンス における問題点 を解決す るために、企業独 自コー ポ レー ト ガバ ナ ンス原則 (以下 「企業独 自原則」

とい う)の策定が有効で あるとい う結論 を得 た。

2 金融 コングロマ リッ トの コーポ レー ト・ガバナンスの問題点

2.1 各国の金融 コングロマ リッ トと問題点 金融 コングロマ リッ トの形態は、ユニバ ーサル バ ンク方式 と金融持株会社方式の2つ に分 け られ

(2)

102 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14 2010年3

ているOユニバ ーサルバ ンク方式 は、 1つの銀行 内において銀行部門 と証券部門、保険部門 を設置 し兼業す る方式の ことをい う。一方、金融持株会 社方式 は、持株会社の傘下 に銀行 と証券会社、保 険会社 などの子会社 を設置 して兼業す る方式の こ

とをい う。

これ らの金融 コング ロマ リッ トの形態 を問わず、

金融 コングロマ リッ トには大 きな課題が2つ存在 してい る。 1つ 目は、銀行業 と証券業 を兼業 して い るため、 きわめて企業不祥事が起 こりやすい構 造 を してい ることで ある。金融 コングロマ リッ ト において最 も懸念 され る企業不祥事は利益相反行 為である。 この利益相反行為 は、銀行が自身の利 益 を確保す るため意図的に引 き起 こされ るもので あり、金融商品市場 を歪める行為である。 この こ とか ら、企業 内におけるコンプライアンス経営 を 徹底す ることに加 え、金融 コングロマ リッ ト内の 監視 ・監督体制の構築が求 め られているとい える。

2つ 目は、企業競争力の強化 を目的に金融コン グ ロマ リッ ト化 を進めて きた金融機 関のなかに、

事業分割 を行 う金融機関が現れたことである。金 融 コングロマ リッ トは、金融の業態間を越 えた合 併 によ り銀行業や証券業 を兼業 し、 コス トの シナ ジ‑効果やブラン ドの確立 などを達成 しやす くな る。 このため、経済先進国を中心に金融 コングロ マ リッ トの形成 が進め られて きたが、近年、 この 方向性が変わ りつつ あるといえる。た とえば、 シ テ ィグル ープやア リアンツによる事業部門の分割 譲渡 で ある. シテ ィグル ープは2005年 に、収益 力が低下 した年金部門 と保険部門 を分割譲渡 し、

ア リア ンツは、2008年 に ドレスナ ‑銀行 をコメ ルツ銀行 に売却 した。 この ことか ら、金融 コング ロマ リッ トを形成す る際にメ リッ トとデメ リッ ト の検討 を入念 に行 うことや、形成後 は部門間に過 度に収益力の格差 が生 じないように資本 を配分す

ることなどが経営者 に求め られ るといえよう。

2.2 金融持株会社 のコーポ レー ト・ガバナ ンス における問題点

経済先進国の大規模な銀行 は、主 に金融持株会

社方式により、金融 コングロマ リッ トを形成 して い る。金 融持株会社方式 によ る金 融 コ ング ロマ リッ トの形成 は、M&Aを通 じて既存の金融機 関 の経営権 を取得す ることによって行われ、異 なる 金融業への参入が容易であり、利便性が高いこと が特徴である。 くわえて、金融持株会社傘下にお ける金融機 関の収益力が低下 した際に、株式の売 却 を通 じて事業 か ら撤退で きることも特徴 として 挙 げ られ る。

金融持株会社方式 を採用す るメ リッ トは、上記 のように事業参入 と事業撤退の際に利便性 が高い ことや、傘下の金融機 関が破綻 して も金融持株会 社へ波及す る影響が低 く、 リスクの遮断性がユニ バ ーサルバ ンク方式 よ りも金融持株会社方式の方 が高 い ことが挙 げ られ る1。 これ らの利便性 の高 さを利 用 し、1990年代 の半 ばか ら経済先進 国で は金融 コングロマ リッ トの形成 が進展 した。

一方、金融持株会社方式 は、利益相反行為 など の企業不祥事が起 こりやすいことに加 え、傘下の 金融機 関における情報開示が社外の利害関係者へ 届 きに くい とい う問題点 を指摘す ることがで きる。

情報開示 に焦点 を当て ると、傘下 にある金融機関 の直接的な所有者 は、金融持株会社で ある。株主 などの社外の利害 関係者 は、金融持株会社の株式 を保有 し、金融機 関の間接的な所有者 となる。 こ のため、傘下の金融機 関 と利害関係者が直接的に 接点 を持つ機会 が少 ない。 また、金融機関の情報 が利害関係者へ届 くまでに歪め られて しまう可能 性 も指摘で きる。 ここでは、 コンプライアンス経 営 と情報開示 ・透明性 をいかに徹底 してい くかが 課題であるとい える。

2.3 ユニバ ーサルバ ンクの コーポ レー ト・ガバ ナンスにおける問題点

ヨ‑ロッパでは、ユニバ ーサルバ ンクが伝統 的 に存在 し、銀行が証券業 を兼業す ることが一般 的 で あった。このため、近年 の動向 としては、ユニバ ーサルバ ンクがいかに保険業 を兼業す るかが焦点 となってい るとい える。 また、金融持株会社方式 による金融 コングロマ リッ トの形成 が経済先進国

(3)

金融コングロマリッ トのコーポレー ト ガバナンス 103

で主流 となってい るが、ユニバ ーサル/I:ンク方式 を採用す る金融 コングロマ リッ トは ドイツや フラ ンス、 スイスなどヨーロッパ地域 に存看してい る。

ユニバ ーサルバ ンク方式 を採用す る金融 コ ング ロマ リッ トは、顧客 にワンス トップサービスを提 供す ることがで きる、複合 的な金融商品の開発が 可能 になる、 などの収益力の強化 に関するメ リッ

トを享受す ることがで きるとされていo このた め、金融 コングロマ リッ トの シナ ジー効果の大 き さを比較す ると金融持株会社 よ りもユニバ ーサル バ ンクが大 きい とされてい る2。

一方、ユニバ ーサルバ ンクでは、利益相反行為 に加 えて インサイダー取引や抱 き合 わヤ販売 など の企業不祥事 が発生す る可能性 が高い ことがデメ リッ トとされてい る。銀行 内に、複数の金融部門 を設置 してい るユニバ ーサルバ ンクにおいて、 コ ンプ ライア ンス経営の徹底 と部門 ごとの情報障壁 をいかに構築す るかが課題 で あると考 点られ る

3

金 融 持 株 会 社 方 式 の 金 融 コ ング ロマ リッ トにお け るコーポ レー ト・ガバ ナ

ンスの特徴

3.1 金融持株 会社 方式 の金融 コング⊂マ リッ ト にお けるコーポ レー ト・ガバナ ンス 金 融持株会 社方 式 の金 融 コ ング ロマリッ トに

おけ るコーポ レー ト ・ガバ ナ ンスは、 (1)金 融 持株会社 および各金 融機 関の企業経営機構改革 と (2)傘下金 融機 関の関係、 (3)金融持株会社 と 傘下金融機 関の関係、の3つ に分 けて考察す る必 要 が あるとい える。 まず、 (1)金 融持株会社 お よび各金融機 関の企業経営機構改革、 は一般 的な 企業 と同様 に金融持株会社 と傘下 の金 融機 関にお けるコーポ レー ト・ガバ ナ ンスの構築 が求 め られ る。金 融持株会社や傘下 の金融機 関は、世界標準 原則 と され るOECD原則3に加 え、 国 際金 融監督 機 関が策定す る原則 を検討 した うえで コーポ レー ト・ガバ ナ ンスを構築す る必要 が あるとい える。

つ ぎに、 (2)傘下金 融機 関の関係 、 は利益相 反 行為 の防止 をす るうえで最 も重視 しなければな ら ない事項で あるとい える。藤川信夫【20071は、「利 益相反行為の代表例 として、証券発行 による貸付 金回収 がある。銀行部門が融資先の業績悪化 を察 知 し、証券部門 を通 じ社債 や株式 を発行 させ調達 した資金 によ り貸 出金 を回収す る。複数 の種類の 業務 を同時に営む場合 、 こうした利益相反 が起 こ りやす い4」 と してい る。金 融 コ ング ロマ リッ ト における企業不祥事 を防止す るためには、利益相 反行為 をいかに防止す るかが、議論 され る必要 が あると考 え られ る

また、(3)金融持株会社 と傘下金融機 関の関係、

は利害 関係者 に対す る情報開示 ・透 明性 を確保す

図1 金融持株会社方式の金融コングロマ リッ トにお けるコーポ レー ト・ガバナ ンス

(出所)著者作成。

傘下金融機関の関係

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104 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』第14 2010年3月

るうえで重要で ある。企業 は、情報開示 ・透 明性 を向上 させ ることによって、利害 関係者 との接点 を確保 してい る。 そ して、利害 関係者 は企業 の情 報 を得 よ うとす る際に、企業 によって公開 された 文書や株主総会での対話 な どに頼 る しかない。 こ のため、企業 は、情報開示 ・透 明性 に対 して積極 的に取 り組 む必要 があるといえる。今 日では、機 関投資家 な ども、企業 に対 しで 情報 開示 ・透 明性 を徹底す るよ う強 く求 めている。 とりわけ、金融 持株会社方式 の金 融 コングロマ リッ トは、傘下の 金 融機 関 と利害 関係者 が直接 的な接点 を持たない ため、傘下の金融機 関の情報 が、正確 かつ迅速 に 利害 関係者 に届 かない とい う懸念 が生 じてい ると い える。

この よ うに、金融持株会社 におけるコーポ レー ト・ガバ ナ ンスの構築 は、上記の (1)金融持株 会社 および各金融機 関の企業経営機構改革 と(2) 傘下金 融機 関間の関係、 (3)金 融持株会社 と傘 下金融機 関の関係、の3つの事項 に注視 して取 り 組む必要 が あるとい える.次項では、三菱UFJフィ ナ ンシャルグル ープに焦点 をあてて金融持株会社 方式 を選択 してい る金融 コングロマ リッ トの コー ポ レー ト・ガバ ナ ンスについて検討 を行 うO

3.2 三菱 東 京UFJ銀 行 の コーポ レー ト・ガバ ナ ンス

まず、三菱東京UFJ銀行 の企業経営機構 に関す る考察 を行 う。三菱東京UFJ銀行 は、金 融持株会 社で ある三菱UFJフ ィナ ンシャル グル ープの完全 子会社で ある。 また、監査役設置会社で あ り執行 役員制度 を導入 してい る。近年、執行役員制度 は 多 くの企業 で採用 されてい るが、その 目的は、「取 締役会 を日常一般 的な業務執行の決定か ら解放す るために、執行役員制 を導入 して取締役会の規模 を縮小 し、取締役会 を重要 な業務意思決定 と取締 役 の職務執 行 の監督機 関 と して特化す る5」 こと

といえる。

取締役 と監査役 は、親会社 で ある三菱UFJフ ィ ナ ンシャル グル ープによって選任 され る。取締役 会 は、取締 役会長 と取締 役 副会長 を含 む17名 の 取締役 か ら構成 され、 うち3名 が社外取締役 であ

る。 また、監査役会 は8名の監査役 か ら構成 され、

うち4名 が社外監査役で ある。執行役会の役割 を 担 う経 営会 議 は、執 行役 員75名 か ら構成 され る が、社外取 締役 を除 く14名 の取締 役 が執行役 員 を兼任 してい る。

三菱東京UFJ銀行 は、経営の意思決定 と業務執 行の分離 を目的に執行役員制度 を導入 しなが らも、

図2 三菱東京UFJ銀行の企業経営機構

(出所)小島大徳[20091210頁,三菱東京UFJ銀行【2009】を基に筆者作成.

(5)

金融コングロマ リッ トのコーポレー ト ガバナ ンス 105

取締 役 と執行役 員 の兼任 が多 く、 この 目的を達成 で きてい る とはい えない。小 島大徳[2001]におい て、 「今 日の企 業 経 営機 構 の 中核 に位 置 す る取 締 役会 お よび代 表 取締役 の改善 点 は、取締 役会 か ら 業務執行機 能 の分離 を行 い、機 能低 下 してい る取 締 役 会 を活 性 化 させ る こ とに あ る6」 とい う指摘 が されて い るよ うに、経営 の意思決定 と業務執行 の分離 を明確 に行 い、 コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス 構築 の礎 を築 く必要 が ある とい える。

企 業 は、代表 取締 役 へ の牽制 を強化 した り、取 締役 の緊張感 を高 めた りす るために、大所高所 か らの意見、高 い見識 、市場 の声 に敏感 な感覚 を意 思決 定や経 営判 断 に反映 させ ることを 目的に、社 外取締役 を導入 してい る7。 しか し、三 菱東京UFJ 銀行 は、取締 役 会 にお け る社外取締役 の人数 が相 対 的 に少 ない ため、社外取締 役 が有 効 に機能 して い る とは い え ない。 小 島大 徳[2001]で は、「社 外 取締役 を多 く取締 役会 に入 れ るこ とに よ るコーポ レー ト ・ガバ ナ ンスの構 築 は、社外 の専 門家 が取 締 役会 の意 思決 定 に加 わ るこ とに よ り、企業競 争 力の強化 を達成 で きる。 また、副次 的要 因 と して、

社外取締 役 の導 入 は、従来 、偏 った意 思決定 を行 う可能性 が高 い取締役 会 を監視 す る役 割 を期待 す る こ とが で き る8」 と され て い る こ とか ら、専 門

的 な知識 を有 す る社 外取締 役 を機 能 させ るため に は増 員す るな どの対 策 を取 る必要 が あ る とい える

そ して、取締 役 の職務 の執行 を監査 す る監査役 (会 ) と、 計算 書 等 を監 査 して会 計 監 査 報 告 を作 成 す る と会 計監査 人 は、実 質 的 に代 表取締役 な ど の経営者 か ら指名 され、株 主総会 の承 認 に よ り選 任 され て い る。監査 役 (会) や会 計監査 人 は、実 質 的 に経営者 に よって選 ばれ て い るた め、経 営者 の意 に反す る行 動 を取 る こ とに よ り解任 され る可 能性 が ある。 その ため、監査役 (会) と会 計監査 人 が権 限 を最大 限 に発揮 す る こ とは困難 で あ る と い え る。 これ らの こ とか ら、三 菱東 京UFJ銀 行 で は、経 営者 を監視 ・監督 す る機 関 が形骸 化 し、経 営者 に権 力 が集 中 して い るため、経 営 のチ ェ ック ・ ア ン ド ・バ ラ ンスが働 いて い ない可 能性 が高 い こ とが指摘 で きよ う。

つ ぎに、企 業経 営機 構 の形 態 が三 菱東 京UFJ銀 行 と異 な る新生銀行 の企業経 営機 構 につ いて検 討 す る。経営監督 と経 営 の意 思決 定 を取締 役 会 が行 い、業務執 行 を代表 執行役 と経 営委 員会 に属 す る 執行役 が行 ってい る。委 員会設 置会社 で は、経 営 の監督 と意 思決 定 と業 務執 行 が分 離 してい るこ と か ら、経営者 に権 力 が集 中 しに くい企業 経 営機 構 を構 築 す る ことが可 能 で あ る とい える

図3 新生銀 行 の企業経 営機 構

(出所)小島大徳【2009]210貢,新生銀行[2009】を基 に筆者作成。

(6)

106 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14 2010年3月

委員会設置会社 は取締役会 内に指名委員会、監 査委員会、報酬委員会 を設置す る株式会社 をいい、

監査役 (会) を置 か ない。各委員会 は、委員3名 以上で組織 され、委員の過半数 は社外取締役でな ければな らない。指名委員会 は、株主総会 に提 出 す る取締役 の選任 および解任 に関す る議案の内容 を決定す る。 また、監査委貞会 は、執行役等の職 務の執行の監査 および監査報告の作成 を行 う。 そ して、報酬委員会 は、執行役等の個人別の報酬等 の内容 を決定す る。

委員会設置会社では、各委員会の委員の過半数 が社外取締役 でなければな らない。 そのため、監 査役設置会社 と比較す ると、社外取締役の人数 が 相対的に多 くなるといえる。 よって、取締役会 に おける社外取締役 の比率 が増加す るため、経営の 監督 と意思決定 において中立 な立場か らの意見が 反 映 されやす い とい える。新生銀行 においては、

取締役会会長 を除 く全ての取締役 が社外取締役 と なってい る。

この よ うに、新生銀行の企業経営機構 は、経営 者への権力の集 中を避 けるために経営の監督 ・意 思決定 と業務執行 の分離 を行 って きた とい える。

そ して、2008年11月に、新生銀行 の取締役会 は、

業績悪化 を理 由に代表執行役 を解任 した。 これは、

新生銀行 における取締役会 が、正常 に機能 してい た こと表 してい るとい える。 しか し、解任 された 代表執行役 の代 わ りに、取締役会会長 が代表執行 役 を兼任す ることになった ことか ら、 これ まで築 いて きた経営の意思決定 と業務執行の分離体制 が 唆味 になった と指摘 で きる。

上述 の よ うに、三菱東京UFJ銀行 の企業経営機 構 は、経営の監督 ・意思決定 と業務執行の分離が 行 われてお らず、経営者 に権力が集 中 しやすい構 造 になってい るとい える。 また、新生銀行の企業 経営機構 は、経営の監督 ・意思決定 と業務執行の 分離が行 われ、経営者 に権 力が集 中 しに くい構造 になっていたが、現在 は取締役会会長 と代表執行 役 が兼任 してい る。 よって、銀行の企業経営機構 には、経営者 に人事権 を中心 とす る権 力が集 中 し てい ること、経営の監督 ・意思決定 と業務執行の

分離 が明確 でない ことなどの問題 があるとい えよ う。

3.3 利益相反行為への取組み

金融 コング ロマ リッ トが引 き起 こす可能性 が高 い企業不祥事 に、利益相反行為 があると前述 した が、三菱UFJフ ィナ ンシャル グル ープで は利益相 反行為 に対 して、 『利益相反管理方針9』 を策定す ることによって対処 してい る。利益相反管理方針 では、利益相反行為 が行われやすい業務や子会社 を特定 し、利益相反行為 に対す る管理態勢 および 管理方法 につ いて言及 してい る。 しか し、利益相 反管理方針 は、利益相反行為の防止 に向 けた具体 的 な対処策 につ いて言 及 して いない。 た とえば、

「 4 .

利益相反の管理態勢」では、「当グル ープでは、

法令上利益相反管理体制整備義務 を負 う会社 に利 益相反 を管理 ・統括す る部署 を設置 し、利益相反 を一元 的 に管理 いた します10」 としてい るが、具 体的にどの よ うな部署で利益相反行為 に対 して取 り組むのかが明示 されていない。今後は、利益相 反管理方針 に沿 って、利益相反行為の防止への取 組み を実践す ることに加 え、方針の改訂 を進 め る 必要 があるとい える。

利益相反行為 につ いては、バ ーゼル銀行監督委 員会の 『銀行組織 に とっての コーポ レー ト・ガバ ナ ンスの強化 (以下 「バ ーゼル原則‑2006‑」 とい う)11』 の なかで も言及 されてい る。バ ーゼル原 則‑2006‑に よ る と、 まず、 「取締 役 会 は、上級 管 理職 が、潜在 的な利益相反 を把握 し、回避 し得 な い相反 を適切 に管理す るための方針 を策定 し、実 施 してい ることを確保 すべ きで ある12」 と してお り、利益相反行為 に対す る取締役会の役割 につい て言及 してい る。 また、 「取締 役会 の方針 におい て は、利 益相 反 が生 じる恐れの あ る業務活動 は、

た とえば、業務間に情報障壁 を設 けた り、別 々の 報告 ライ ンや内部 コン トロール を設 けるなどの方 法 によ り、互 いか らの独立性 を十分 に確保 した う えで行 うこ とを確 実 にす べ きで あ る13」 や、 「関 係者 との取引が独立 当事者 間の条件で行われ、銀 行、株主、 および預金者の利益 に反す る条件で行

(7)

金融コングロマリッ トのコーポレー ト・ガバナンス 107

表1 三菱UFJフィナ ンシャル グル ープ 『利益相反管理方針』

利益相反管理方針 1.利益相反

利益相反 とは、お客 さまの利益 と当グループの利益、又は当グル.‑プが義務 を負 っている複数のお客 さ ま間の利益が、競合 .対立す る状況等 をいいます○

こうした利益相反は金融 コングロマ リッ ト化の進展や多種多様 な金融取引によって 日常的に生 じてお り ますが、当グループ内の利益相反による弊害 を防止す るため、適切 な経営管理態勢や コンプライアンス態 勢 を構築 してまい りますo

2.利益相反による弊害の恐れがある取引等の特定

当グル ‑プは、以下に掲げる状況が発生 しやすい業務 を中心に、特 に完治が必要 な業務 (以下、「管理対 象業務9」 といいますo) をあらか じめ特定 しますoそ して、これ らの管理対象業務 を遂行す る場合 に生 じる 利益相反の弊害のおそれがある取引等について レピユテ‑シ ヨナル (風評).リスクにも留意 し、重点的に 管理 を行います○

(1)当グループがお客 さまへ助言業務 を提供 してい る場合等、お客 さまが自身の利益が優先 され ると合理 的な期待 を抱かれ る状況

(2)当グループがお客 さまとの取引で得 た情報 を利用す ることにより、市場等で不当に利益 を上げるおそ れが高い状況

(3)当グループがお客 さまとの取引に伴い、 レピユテ‑シ ヨナル .リスクが生 じるおそれの高い状況 管理対象業務の代表例 は、以下の とお りですOM&Aに関す る業務 資産 .債権流動化に関す る業務 シ

ンジケ‑ トローンに関す る業務 プ リンシパル インベス トメン トに関す る業務 株式 .債券引受に関す る 業務 社債管理に関する業務

3.利益相反管理の対応 を要す る会社

当グループの うち、管理対象業務 を行 う会社 を、利益相反管理の対応 を要す る会社 とし、管理体制 を整備 いた しますo対象 となる会社の代表例は、以下の とお りですo

株式会社三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行株式会社、三菱UFJ証券株式会社、株式会社泉州銀行、株式 会社大正銀行、株式会社中京銀行、株式会社岐阜銀行

4.利益相反の管理態勢

当グループでは、法令上利益相反管理体制整備義務 を負 う会社に利益相反 を管理 .統括す る部署 を設置 し、

利益相反 を一元的に管理いた しますo

また、利益相反の管理に関す る法令その他の規範 を遵守 し、態勢整備 を継続的に行 ってまい ります○

5.利益相反の管理方法

当グル∵プは、以下に掲 げる方法 を適切に組み合わせ ること等により、利益相反による弊害 を防止 し、

お客 さまの利益 を不当に害す ることがないよう取 り組んでまい ります○

(1)利益相反による弊害のおそれのある取引 を行 う部門 (会社) を他の部門 (会社)̲か ら分離す る方法 (2)利益相反による弊害のおそれのある取引の一方又は双方の条件又は方法 を変更す る方法

(3)利益相反による弊害のおそれのある取引の‑方 を中止す る方法 (4)利益相反による弊害のおそれがあることをお客 さまに開示す る方法 (出所)MUFG【2009b】

われてい ない ことを確 保 す べ きで ある

1 4

」 と して お り、利益相 反行為へ の対処 と利害 関係者 の利 益 の保 護 につ いて 言 及 して い る。 そ して、 「取締 役 会 は、利益相 反 に関す る銀行 の方 針 および潜在 的 な利益相反 の適切 な情報 開示 お よび監督 当局への 報告 を確 保 すべ きで ある15」 と し、利 益相反 と情 報開示 につ いて言及 してい る。 したがって、バ ー ゼル原則‑2006‑は利 益相 反管理方 針 に対 して、利

益相 反の防止へ の取組みが具体 的 に提示 され る内 容 となって い るとい えよ う。今後 は、金 融 コ ング ロマ リッ トにおけ る利 益相 反へ の取 り組 みがバ ー ゼル原則‑2006‑を参 照 した うえで実践 され て い く べ きで あると考 え られ る。

(8)

108 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』 第14 20103

表2 バーゼル原則‑2006‑にお ける利益相反 に関 する記述 銀行組織にとつてのコーポレー ト.ガバナンスの強化 27.(利益相反 と取締役会の役割)

利益相反は、銀行が行 う様々な活動や役割から生 じることもあれば、銀行ない し顧客の利害 と銀行の取締役な い し上級管理職の利害 との間に生 じることもあるo利益相反は、銀行がより広いグループ構造の一部 を成 して いる場合 にも生 じ得 るoたとえば、銀行がグループの一部であれば、銀行 とその親会社および親会社の他の子 会社 との報告 ラインや情報の流れが、同様の利益相反の発生につながる可能性があるo取締役会は、上級管理 職が、潜在的な利益相反を把握 し、回避 し得ない相反を適切に管理するための方針を策定 し、実施 しているこ

とを確保すべきであるo

28.(利益相反への対処および利害関係者の利益の保護)

取腐役会の方針においては、利益相反が生 じる恐れのある業務活動は、たとえば、業務間に情報障壁 を設けたり 別々の報告 ラインや内部 コン トロールを設けるなどの方法により、互いか らの独立性 を十分に確保 したうえで 行 うことを確実にすべ きであるo さらに、そのような場合 には、顧客または潜在的顧客に提供する情報が明瞭、

公正、かつ、誤解 を招 く余地がないように十分に注意 を払 うべきである○取締役会の方針においては、特に株主 執行役員、取締役、関係会社 といった関係者 といった関係者 との取引が、独立当事者間で行われ、銀行、株主、

および預金者の利益に反す る条件で行われていないことを確保すべ きであるo規制対象 となっている親会社に 対 して連結ベースで監督が行われている法域では、法律、規制、および監督プログラムを通 じてこれ らの問題 に対応す る場合が多いo

29.(利益相反 と情報開示)

取締役会は、利益相反に関す る銀行の方針および潜在的な利益相反の適切な情報開示および監督当局への報告 を確保すべきである○ これには、そうした方針に合意 しない重大な利益相反の管理に対する銀行のアプロ‑チ が含 まれるべきである○ このほか、利益相反に関する銀行の方針、グループ内の他企業 との系列関係や取引か ら生 じ得 る潜在的な利益相反、および、そうした方針に合意 しない重大な利益相反の管理に対する銀行のアブ ローチが含 まれているべ きであるo同様 に、銀行は、そうした方針 と整合的でない重大な利益相反について、

4 ユニバーサルバ ンク方式の金融 コング ロマ リッ トにおけるコーポ レー ト・ガ バナンスの特徴

4.1 ユ ニバ ーサルバ ンク方式の金融 コングロマ リッ トにおけるコーポ レー ト・ガバナ ンス ユニバ ーサルバ ンクの コーポ レー ト・ガバ ナ ン スは、 (1) ユニバ ーサルバ ンクの企業経営機構 改革、 に加 えて、 (2)各部門間の関係、 (3)敬 引先企業 との資本結合 と人 的結合、の3つ にわけ て考 察す る必要 が ある とい える。 まず、 (1) ユ ニバ ーサルバ ンクの企業経営機構改革、 は一般 的 な事業会社 と同様 にコーポ レー ト・ガバナ ンスの 構築 が求 め られ る。各金融機 関は、世界標準原則 とされ るOECD原則 に加 え、国際金融監督機 関が 策定す る原則 を検討 した うえで コーポ レー ト・ガ バ ナ ンスを構築 す る必要 が ある16。 くわ えて、ユ

ニパ ーサルバ ンクにおいて は、 「組織 の規模 が大 きく、経営者 がすべての部門に関 して専門的な知 識 を有 す る こ とは まず不 可 能 で あ り、分 業銀 行 に比べて経営 は一般 的に難 しい17」 とされてお り、

経営者 の適格性 に加 えて各部門の監視 ・牽制 をシ ステム的に行 えるよ うに改善す る必要が あるとい える。

つ ぎに、 (2)各部 門間の関係、 は利 益相 反行 為や インサイダー取引 などの防止のために銀行部 門 と証券部門、保険部門の間に情報障壁 を設 ける ことによって対処す る必要 があるOユニバ ーサル バ ンクは、銀行内で銀行業や証券業 を兼業す るた め、 「貸 付業務 で得 た イ ンサ イダー情報 を、 もっ ぱ ら自己の利益 のために利用 し、証券取引上 の顧 客 の利益 が犠牲 に され る可能性 がある18」 と指摘 がな されてい る. この ことか ら、ユニバ ーサルバ ンクにおいては、金融持株会社方式 による金融 コ

(9)

金融コングロマリットのコーポレー ト ガバナンス 109

図4 ユニバーサルバ ンク方式の金融 コングロマ リッ トにおけるコーポ レー ト・ガバナ ンス

取 引先企業 との資本結合

と人的結 合

(出所)著者作成。

ングロマ リッ トよ りも構造的に企業不祥事が発生 しやすいため、企業不祥事の防止 に向けて全面的 に取 り組む必要があるといえる。

また、(3)取引先企業 との資本結合 と人的結合、

は ドイツの コーポ レー ト・ガバ ナ ンスにおける中 心的問題 となっているものである。吉森賢【19981 によると

「(ドイツの一筆者)大銀行 は、寄託議 決権、持 ち株、融資、役員派遣 などにより日本の メインバ ンクとは比較 にな らないほどの大きな経 営監視へ の誘 因 と規律付 けへの潜在 的影響力 を (企業に対 して有す る一筆者)19」とされ、また、「銀

二 二 二 ÷ 十 一∴ ̀.̲ :‑̲;'二 機能 しえない20」 とし、他 の銀行や企業 と資本 お

よび人的に結合 しているため、 コーポ レー ト・ガ バナンスが有効 に機能 していない といえる。 した がって、 ドイツのユニバ ーサルバ ンクにおいては、

株式の相互持ち合 いを解消す る必要 があると考 え られる。

このように、ユニバ ーサルバ ンクにおけるコー ポレー ト・ガバ ナ ンスの構築は、上記の (1)ユ ニバ ーサルバ ンクの企業経営機構改革、 (2)各 部門間の関係、 (3)取引先企業 との資本結合 と 人的結合、の3つの事項 に注視 して取 り組む必要 があるといえる。次項では、 ドイツ銀行 に焦点 を

経 営 改革 よび 門間

関係

あてて、ユニバ ーサルバ ンク方式 を選択 している 金融 コングロマ リッ トのコーポ レー ト・ガバ ナ ン スについて検討 を行 う。

4.2 ドイツ銀行のコーポ レー ト・ガバナ ンス ドイ ツの企 業 経 営機 構 は、 日本 や ア メ リカ と異 な り、 二 層 制 が採 用 され て い る。 二 層 制 は、図5のよ うに、経営の監督機 関で ある監査役 会 (Aufsichtsrat)と業務執行機 関で あ る執行役 会 (Ⅵ)rstand)が明確 に分離 されてい ることが特 徴で ある21。

監査役会の機能 は、執行役会による業務執行の 監視 ・監督 をす るとともに、執行役の選任解任 と 執行役会の業務に対す る同意権 を有 してい る。監 査役会 は、執行役会 か ら人的に分離 されてい る。

このため、監査役会が持つ権限は、二元一層制 を 採用す る日本 よ りも強大であるといえる。

ドイツのコーポ レー ト・ガバ ナ ンスは、二層制 の企業経営機構 に加 え、政府 が主導 して原則 を策 定 していることに特徴 がある。政府 は、2000年 に、

コーポ レー ト・ガバ ナ ンス政府委員会 を設置 した。

この委員会の任務 は、 ドイツのコーポ レー ト・ガ バ ナ ンス ・システムの弱点 を明 らかにす ることと、

資本市場の国際化に伴 う ドイツの企業 ・市場構造 の変化に鑑みて ドイツの法制度の現代化に関す る

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110 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14 20103

図5 ドイ ツ銀 行 の ボ ー ド ・システ ム

ドイツ型 〕

(出所)平田光弘【2008】173頁,ドイ ツ銀 行【2009]を基 に筆者作成。

図6 ドイ ツ コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス規 範 の遵 守 と説 明 責任

(出所)著者作成。

(11)

金融コングロマリットのコーポレー ト・ガバナンス 111

提言 を行 うことで あった22。

その後、2002年 に、 コ‑ポ レー ト・ガバ ナ ン ス政府委員会 は、 『ドイツコーポ レー ト ・ガバ ナ ンス規 範23』 を公表 した。 ドイツコーポ レー ト・

ガバ ナ シス規 範 は、第1章 「法律 に よ る規 制 と コ‑ポ レー ト・ガバ ナ ンス規 範」、第2章 「運営 機 関」、第3章 「株主 と投資家」、第4章 「企業財 務」、第5章 「情報技術 と開示」、第6章 「会計 と 監査」の6つの章 か ら構成 されてい る。ドイツコー ポ レー ト・ガバ ナ ンス規範 は、 イギ リスの 『統合 規範24』 な どと同様 に、遵守義務 はないが∴遵守 しない場合 につ いては、その内容 に関す る説明 を しなければな らない としてい る。 また、 ドイツは 他社 と人 的結合 関係 が強 いため、 「非関係会社 の 監査役 を5つ も務 め る人が上場会社の監査役 にな ることをコーポ レー ト・ガバ ナ ンス規範 の中で禁 じるよ う勧告 す る25」 と監査役 の要件 を厳格化 し てい るとい える。

二層制の よ うな政府 による企業経営機構制度 の 構築 と ドイツコーポ レー ト・ガバ ナ ンス規範の よ

うな政府 による原則 の策定 に加 え、 ドイツ銀行 は、

『コ‑ポ レー ト・ガバ ナ ンス ・レポー ト26』 とい う企業独 自コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 を策定 してい る. ドイツ銀行 は、 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス ・レポー トを策定 し、実践す ることに よって、

企業競争力の強化 と企業不祥事への対処 を目的 と した企業経営機構 を構築 してい るので ある。小島 大徳【2004a】によると、 「経営者 が原則策定 に関与 しコーポ レー ト ・ガバ ナ ンスだけではな く企業倫 理 などの意識向上 を生 む と同時に、各企業 に直接 的かつ具体 的なコーポ レー ト・ガバ ナ ンス構築 の 道筋 を与 えて くれ る27」 ことか ら、今後 は、金 融 コングロマ リッ トにおける企業独 自原則の策定 に 関す る動向 につ いて注視す る必要 があるといえる。

5 おわ りに

本稿 では、 まず、第2節で は、金融 コングロマ リッ トにおけるコーポ レー ト ・ガバ ナ ンスの問題 点 を検討 した。 ここでは、金融 コング ロマ リッ ト

の形態 ごとに異 な る問題 を導 くことがで きた。金 融持株会社方式の問題点 として、利益相反行為 な どの不祥事 が起 こりやすい ことに加 え、情報開示 ・ 透 明性 が低 下す る可能性 が高 い ことが判 明 した。

ユニバ ーサルバ ンクの問題点 として、利益相反行 為 に加 え、内部の部門間の垣根 が低 い ことに起 因 す るインサ イダー取引が引 き起 こされ る可能性 が 高い ことを提示 した。つ ぎに、第3節では、金融 持株会 社方式 の金 融 コ ング ロマ リッ トにお け る コーポ レー ト・ガバ ナ ンスについて考察 した。 こ こで は、三菱UFJフ ィナ ンシャル グル ープにおけ る取 り組み を検討 し、企業経営機構 の欠陥 と利益 相反行為への取 り組みにつ いて明 らかに した。 そ して、第4節では、ユニバ ーサルバ ンク方式の金 融 コ ング ロマ リッ トにおけるコーポ レー ト・ガバ ナ ンスにつ いて検討 した。ここでは、ドイツの コー ポ レー ト・ガバ ナ ンス改革 に焦点 を当てて論 を進 めた。

筆者 は、金融 コング ロマ リッ トの コーポ レー ト ガバ ナ ンスが、企業不祥事 を防止 し、企業競争力 の強化 を同時に達成 で きるもの となっていない と 考 えてい る。 このため、今後、金融 コング ロマ リッ トにおけるコ‑ポ レー ト・ガバ ナ ンスへの取 り組 み として、経済先進 国の金 融 コング ロマ リッ トに よる企業独 自原則 の策定 に焦点 をあてて研究 を進 めてい きたい。

1 伊藤 隆康【2006】105頁。

2 伊藤隆康【20061105頁。

3 0ECD【20041

4 藤川信夫【2007】746頁。

5 平田光弘[2008】188頁。

6 小島大徳【2001】229頁。

7 平 田光弘【2008]187頁。

8 小島大徳【2001]240頁。

9 MUFG【2009b】

10 三菱UFJフィナ ンシャル グル ープは、管理対 象業務 を、M&Aに関す る業務、資産 ・債権

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112 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14 2010年3月

流動化に関す る・業務、 シンジケー トロー ンに 関す る業務、プ リンシパル インベス トメン ト に関す る業務、株式 ・債券引受に関す る業務、

社債管理 に関す る業務、 としている。

ll BCBS【20061 12 BCBS[20061 13 BCBS【2006】

14 BCBS【20061 15 BCBS【2006】

16筆者 は、銀行 はバ ーゼル委員会 『銀行組織 に とっての コーポ レー ト・ガバ ナ ンスの強化』

を、証券会社 は 『市場仲介業者の コンプライ アンス機能』 を、、保険会社 は 『保険監督基本 原則』 などのコーポ レー ト・ガバナ ンス原則 を参照 して各社の コーポ レ‑ 卜・ガバ ナ ンス を構築す るべ きで あると主張 している。

17 羽森直子[1998】14頁。

18 羽森直子[1998】9頁。

19 吉森 賢【1998】259頁。

20 吉森賢【1998】259頁。

21平田光弘【19951834頁。

22 平田光弘[2002170頁。

23 AxelvWeder(Hrsg)[2001】 24′nleCombinedCode[20001 25 AxelvWeder(Hrsg)【2001】 26 DeutscheBank【2008】

27 小島大徳【2004al153頁。

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参照

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